説明

有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】高い発光効率を示す有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】基板上に、第1の電極、少なくとも1種の発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する有機電界発光素子であって、前記第1の電極の表面粗さRaが1.4nm以下であり、かつ前記発光層に含まれる少なくとも1種の発光材料がオーダーパラメーター0.3以上で配向している、有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセンス素子」、「有機EL素子」、「素子」と称することもある)、及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に用いられる。有機電界発光素子を用いたディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高い、視野角依存性が少ないといった表示性能の利点を有する。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できるといった利点もある。
有機電界発光素子は、軽量化、薄層化という利点に加え、フレキシブル基板を用いることで、これまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を持っている。
【0003】
一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0004】
近年は、有機電界発光素子多様な用途に適用可能な、より発光効率に優れた有機電界発光素子が求められており、さまざまな検討が成されている。
有機EL素子の発光層に用いるホスト材料及び発光材料、特に発光材料を基板に対して水平に分子配向させると、基板の外に取り出される光の量が増加する、すなわち光取り出し効率が向上することが知られている。これはガラス基板又は有機膜内での内部導波モードが低減するためと考えられている。
また、発光層内の発光材料が水平に配向している素子では、発光材料が全く配列していないランダム状態の素子と比較して、光取り出し効率が向上する傾向にある。発光層内の発光材料の配向度(オーダーパラメーター)が増加するほど、光取り出し効率(発光効率)が大きくなると考えられている。
【0005】
しかしながら、これまで提案されている素子よりも発光層におけるホスト材料及び発光材料の配向度が大きく、より高い光取り出し効率を得ることができる有機電界発光素子が求められている。
【0006】
特許文献1には、第1基材の上に陽極が形成された第1部材と、第2基材の上に陰極が形成された、前記第1部材と貼合する面の表面粗さRaが3.0nm以下である第2部材とを貼り合わせることで有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することが記載されている。そして、該素子により、電流のリーク特性が改良されることが記載されている。
特許文献2には、第1の基板と第2の基板と、該基板間隔を保持する複数のギャップ保持材とを備えた電気光学装置であって、前記複数のギャップ保持材の前記第1の基板あるいは前記第2の基板側のいずれか一方の上面が、化学機械研磨によって平坦化された電気光学装置が記載されている。
特許文献3には、電極上に配向制御層を設けることで液晶性有機材料を配向させた発光素子について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第08/102867号公報
【特許文献2】特開平10−339889号公報
【特許文献3】特開2000−289000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、発光層において発光材料又はホスト材料を配向させることは記載されていない。また、たとえ発光層に配向性を示す材料を用いたとしても、貼り合わせにより有機EL素子を作製するため、貼り合わせ時の押しつけ圧力、基板のひずみ、又は加熱処理等により配向状態が乱されるため高い配向度は得られず、発光効率が低下することが懸念される。
また、特許文献2に記載の技術は主に液晶表示素子を対象としており、「基板間隔を保持する複数のギャップ保持材」は膜内でのキャリアの移動を阻害するため有機EL素子には適さない。
したがって、高い発光効率を示す有機電界発光素子の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
更に、特許文献3では液晶性有機材料を配向させるために配向制御層を別途設置することが必要であり、素子作製が煩雑となり、生産性に劣るという問題点を有する。
従って、配向性化合物が配向した発光素子において、従来の配向していない発光素子と同様に簡便な方法で発光素子を作製できることが望まれている。
【0009】
本発明は、高い発光効率を示す有機電界発光素子を簡便な方法により提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
【0011】
1.
基板上に、第1の電極、少なくとも1種の発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する有機電界発光素子であって、前記第1の電極の表面粗さRaが1.4nm以下であり、かつ前記発光層に含まれる少なくとも1種の発光材料がオーダーパラメーター0.3以上で配向している、有機電界発光素子。
2.
前記発光層を含む少なくとも一層の有機層が逐次成膜法によって製造されたものである、上記1に記載の有機電界発光素子。
3.
前記発光層が、更に、少なくとも1種のホスト材料を含有する、上記1又は2に記載の有機電界発光素子。
4.
前記発光層に含まれる少なくとも1種のホスト材料がオーダーパラメーター0.3以上で配向している、上記3に記載の有機電界発光素子。
5.
前記ホスト材料及び前記発光材料のうち少なくとも一方が液晶性を有する、上記3又は4に記載の有機電界発光素子。
6.
前記ホスト材料がトリフェニレン誘導体である、上記3〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
7.
前記発光材料が金属錯体である、上記1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
8.
前記発光材料が白金錯体である、上記1〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
9.
前記発光材料が金属を含有しない蛍光発光材料である上記1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
10.
基板上に、第1の電極、少なくとも1種の発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する有機電界発光素子の製造方法であって、前記第1の電極として表面粗さRaが1.4nm以下の電極を用い、かつ前記発光層に含有させる少なくとも1種の発光材料としてオーダーパラメーター0.3以上で配向する化合物を用いる、有機電界発光素子の製造方法。
11.
前記少なくとも一層の発光層を含む有機層を逐次成膜法によって製造する工程を含む、上記10に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い発光効率を示す有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、第1の電極、少なくとも1種の発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する有機電界発光素子であって、前記第1の電極の表面粗さRaが1.4nm以下であり、かつ前記発光層に含まれる少なくとも1種の発光材料がオーダーパラメーター0.3以上で配向している。
【0015】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/励起子ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
有機電界発光素子の基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0017】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。基板を構成する材料が有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0018】
<電極>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、第1の電極、発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する。第1の電極及び第2の電極は、陽極又は陰極であることが好ましく、有機EL素子の製造のしやすさの観点から第1の電極が陽極で、第2の電極が陰極であることがより好ましい。
また、第1の電極は基板に隣接していることが電極表面の平滑性及び素子の製造適性の観点から好ましい。
【0019】
本発明においては、第1の電極の表面粗さRaは1.4nm以下である。ここで表面粗さRaは、ここで表面粗さRaは、JIS−B0601(1994、2001)に基づく算術平均粗さRaであり、例えば小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500を用いて測定することができる。
第1の電極の表面粗さRaが1.4nm以下であると有機電界発光素子の発光効率が向上する。これは、第1の電極の表面粗さRaを1.4nm以下とすることで、平滑性が向上し、該第1の電極上に設けられた発光層に配向性の化合物を用いた場合、該化合物の配向乱れが抑制されるとともに、電極表面の突起による電流のリークやショートが抑制されるためであると考えられる。
第1の電極の表面粗さRaは、発光層又は発光層以外の有機層を構成する分子の配向乱れ抑制の観点から好ましくは0.1〜1.4nmであり、より好ましくは0.1〜1.2nmであり、更に好ましくは0.1〜0.8nmである。表面荒さRaが0.1nm以上であれば、電極表面を平滑化させる加工処理が煩雑とならず、生産性の観点で好ましい。
第1の電極において、表面粗さRaが1.4nm以下である表面は、基板側の表面でも、発光層側の表面でもよく、両方の表面の表面粗さRaが1.4nm以下であってもよい。第1の電極表面に隣接する有機層を構成する分子の配向乱れをより抑制しやすいという観点から、発光層側の表面の表面粗さRaが1.4nm以下であることが好ましい。
【0020】
<第1の電極の作製方法>
表面粗さRaが1.4nm以下である第1の電極は、基板上にスパッタリングにより電極を形成する方法、電極表面を研磨する方法などにより得ることができる。
また、本発明においては表面粗さRaが1.4nm以下である市販の電極を用いることもできる。
【0021】
<陽極>
前記陽極としては、前記発光層に正孔を供給する電極としての機能を有していれば特に制限されない。本発明の有機電界発光素子の性質上、前記陽極及び前記陰極のうち少なくとも一方は透明であることが好ましい。
前記陽極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記陽極を構成する材料としては、例えば、導電性金属酸化物、金属、これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質、有機導電性材料、これらとITOとの積層物などが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、銀、クロム、ニッケルなどが挙げられる。
前記無機導電性物質としては、例えば、ヨウ化銅、硫化銅などが挙げられる。
前記有機導電性材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。
【0022】
前記陽極の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、湿式方式、化学的方式、物理的方式などが挙げられる。
前記湿式方式としては、例えば、印刷方式、コーティング方式などが挙げられる。
前記化学的方式としては、例えば、CVD、プラズマCVD法などが挙げられる。
前記物理的方式としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
【0023】
なお、前記陽極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0024】
前記陽極の厚みとしては、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜10μmが好ましく、50nm〜5μmがより好ましい。前記厚みは、例えば、水晶振動子(QCM)や触針式膜厚計を用いて測定することができる。
【0025】
前記陽極の抵抗値としては、発光層などに確実に正孔を供給するために、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
【0026】
<陰極>
前記陰極としては、前記発光層に電子を注入する電極としての機能を有していれば特に制限されない。
前記陰極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、その他の金属、これらの金属の合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することが好ましい。
前記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウムなどが挙げられる。
前記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
前記その他の材料としては、例えば、金、銀、鉛、アルミニウムなどが挙げられる。
前記希土類金属としては、例えば、インジウム、イッテルビウムなどが挙げられる。
前記合金としては、例えば、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金などが挙げられる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを含有する材料が特に好ましい。前記アルミニウムを含有する材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)を意味する。
【0027】
前記陰極の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、湿式方式、化学的方式、物理的方式などが挙げられる。
前記湿式方式としては、例えば、印刷方式、コーティング方式などが挙げられる。
前記化学的方式としては、例えば、CVD、プラズマCVD法などが挙げられる。
前記物理的方式としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
【0028】
なお、前記陰極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタなどをして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0029】
前記陰極の厚みとしては、10nm〜1,000nmが好ましく、20nm〜500nmがより好ましく、50nm〜100nmが特に好ましい。
前記厚みが、10nm未満であると、酸化して劣化することがあり、1,000nmを超えると、成膜時に放射熱を得ることで劣化することがある。前記厚みは、触針式段差計で測定することができる。
【0030】
<有機層>
本発明の有機電界発光素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する。有機電界発光素子における有機層について説明する。
【0031】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、真空蒸着法やスパッタリング法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、コート法、インクジェット法、スプレー法等の溶液塗布プロセス(湿式法)のいずれによっても好適に形成することができる。
本発明の有機電界発光素子において、有機層のいずれか一層は湿式法により成膜することが好ましく、少なくとも発光層が湿式法により成膜されることが好ましく、発光層に加え、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方も湿式法により成膜されることがより好ましく、これら両方が湿式法により成膜されることが更に好ましい。
また、上記以外の他の層については乾式法又は湿式法を適宜選択して成膜することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。
【0032】
湿式法としては、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法など)、ディッピング法、コート法(例えば、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、ワイアーバーコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、ノズルコート法など)が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0033】
〔溶媒〕
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる組成物(塗布液)は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶媒を含んでなる。溶媒は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、水、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒などが挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0034】
ハロゲン系溶媒としては、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどが挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、クメンエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン等が挙げられ、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼンがより好ましい。芳香族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、3以下である。
【0035】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル、酢酸アミルなどが挙げられる。
【0036】
エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、アニソールなどが挙げられる。
【0037】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等が挙げられ、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。アルコール系溶媒の比誘電率は通常、10〜40である。
【0038】
ケトン系溶媒としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ブタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。ケトン系溶媒の比誘電率は通常、10〜90である。
【0039】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、1.5〜2.0である。
【0040】
アミド系溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。アミド系溶媒の比誘電率は通常、30〜40である。
【0041】
スルホキシド系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0042】
本発明においては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明においては、芳香族炭化水素系溶媒(以下、“第一の溶媒”ともいう)と、第一の溶媒より比誘電率の高い第二の溶媒とを混合して使用してもよい。このような混合溶媒を使用することで、アルコキシシランの加水分解が促進され、縮合の反応性が向上する。
第二の溶媒としては、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒を使用することが好ましく、アルコール系溶媒を使用することがより好ましい。
第一の溶媒と第二の溶媒との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜70/30である。
【0044】
本発明においては、発光層中に配向性を示す化合物を含有するが、下層の配向状態を上層に伝えやすい(発光層中の化合物が配向しやすい)という理由から、発光層を含む少なくとも一層の有機層が逐次成膜法によって製造されたものであることが好ましい。発光層の配向度が高くなると有機EL素子の発光効率が向上するため好ましい。また、逐次成膜法では界面の接触抵抗を小さくすることが可能であり、この点でも発光効率を向上させることができるため好ましい。なお、本発明における「逐次成膜法」とは湿式成膜法、乾式成膜法に限定されず、第1の電極から順に各層を連続して成膜して製造する方法のことを言う。
【0045】
<発光層>
本発明の有機電界発光素子における発光層について説明する。
本発明では、発光層に含まれる成分のうち少なくとも1種の発光材料が配向している。すなわち、発光層には配向性を示す少なくとも1種の発光材料が含有される。本発明においては、前記表面粗さRaが1.4nm以下である電極を用いることで、発光層の配向性を示す化合物の配向度(オーダーパラメーター)が上昇し、素子の発光効率が向上する。
発光効率向上の観点から、発光層に含まれる発光材料のうち少なくとも1種が、オーダーパラメーター0.3以上で配向しており、オーダーパラメーター0.4以上0.9以下で配向していることが更に好ましく、0.5以上0.9以下で配向していることが特に好ましくい。
オーダーパラメーターは配向の度合いを表すパラメーターであり、単結晶のように分子の方向性に分布がない場合には1、等方液体状態のように完全にランダムな場合には0となる。オーダーパラメーターは偏光ラマン分光法、偏向赤外分光法、エリプソメトリー分光法、偏向吸収スペクトル分光法等により測定することができる。
【0046】
発光層に含有される成分としては、発光材料に加え、ホスト材料が挙げられる。発光層においてホスト材料及び発光材料の両方が配向していることが好ましい。
【0047】
また、オーダーパラメーターをより高くすることができるという観点でホスト材料と発光材料の少なくとも一方が液晶性を有することが好ましく、ホスト材料と発光材料の両方が液晶性を有することがより好ましい。
【0048】
<ホスト材料>
有機電界発光素子において、発光層には少なくとも1種のホスト材料を含有することが好ましい。
発光層においてホスト材料はオーダーパラメーター0.3以上で配向していることが好ましい。
配向性の観点から、本発明に用いるホスト材料は平面性の高い材料であることが好ましく、アスペクト比が3以上であることが好ましく、3〜30がより好ましく、4〜20が更に好ましい。
アスペクト比とは、液晶性ホスト材料の分子直径と分子厚みとの比(分子直径/分子厚み)である。
ここで、分子直径とは最も長い分子長を意味し、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さをホスト材料の分子直径と定義する。
また、分子厚みとは、上記分子直径をx軸と仮定し、その状態でy軸方向の分子長さが最大となるようにy軸をとり、該x及びy軸と直交する方向をz軸としたときの、該z軸方向の分子の厚みを意味する。分子厚みについても、分子直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子厚みと定義する。
平面性の高いホスト材料としては、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられるが、平面分子のz軸を中心軸とした回転運動性が高く配向性が高い点からトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
トリフェニレン誘導体としては、例えば、下記一般式(T−I)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(T−I)で表される化合物の中でも、液晶性を発現可能な化合物がより好ましい。液晶性を発現可能な化合物をホスト材料として用いることで、ホスト材料が配向し、これにより発光材料の配向性も向上させることができ、光取り出し率が向上するためである。
【0049】
ディスコティック液晶性材料としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶性材料は、最終的に有機電界発光素子に含まれる化合物が液晶性を示す必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合又は架橋し、高分子化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性材料の好ましい例としては、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性材料の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0050】
ディスコティック液晶性材料のディスコティックネマティック液晶相−等方相転移温度は、80〜300℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、120〜300℃が特に好ましい。
【0051】
〔一般式(T−I)で表される化合物〕
【0052】
【化1】

【0053】
上記一般式(T−I)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はR−O−CO−を意味する。これら基を持つ化合物が全てディスコティック液晶性ではないが、公知技術等に基づきディスコティック液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0054】
としては、具体的には、R−、R−O−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−COO−が挙げられる。ここで、Rは重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0055】
は重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、重合性基を有する場合、アルキル基の最末端に重合性基を有することがN相の発現性の観点で好ましい。重合性基としては、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基等が挙げられ、重合の速度、合成の容易性及びコストの点で、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基が好ましく、アクリル酸エステル基がより好ましい。
で表される重合性基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0056】
としては、N相の発現性の観点で、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−が好ましく、R−O−Ph−COO−が更に好ましい。
【0057】
上記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体は、N相を発現するという点で、下記一般式(T−II)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0058】
【化2】

【0059】
上記一般式(T−II)において、R’は、R−O−Ph−CO−、R−(O−RnT−O−Ph−CO−、又はR−O−Ph−CH=CH−CO−を表す。R、Ph、R、及びnの定義は、前記一般式(T−I)におけるR、Ph、R、及びnと同義である。また上記一般式(T−II)におけるR、Ph、R、及びnの具体例及び好ましい範囲も、前記一般式(T−I)におけるものと同様である。
【0060】
’は、N相の発現が良好であることから、以下の一般式(T−II−1)〜(T−II−5)のいずれかで表されることがより好ましい。
【0061】
【化3】

【0062】
上記一般式(T−II−1)〜(T−II−5)中、n及びn’はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
は、重合性基を表す。
【0063】
nは、1以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜20の整数であり、より好ましくは1〜15の整数であり、更に好ましくは3〜10の整数である。
n’は、1以上の整数を表す。n’は、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
は、重合性基を表し、その具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(T−I)においてRで表されるアルキル基が有していてもよい重合性基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0064】
本発明における液晶性を示すトリフェニレン誘導体の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、更に好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃を含む場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃を含む場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0065】
本発明の発光層における液晶性を示すトリフェニレン誘導体の含有量は、発光層中15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0066】
以下に、トリフェニレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【化4】

【0068】
カルバゾール誘導体としては、一般式(V)で表される化合物が好ましい。
以下、一般式(V)で表される化合物について説明する。
【0069】
【化5】

【0070】
(一般式(V)中、R51〜R58は水素原子、重水素原子、若しくは、置換基であり、R51〜R58は隣接する置換基どうしで縮合環を形成しても良い。Aは連結基を表し、n51は2〜6の整数を表す。)
【0071】
51〜R58で表される置換基としては特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、シリル基、シリルオキシ基などが挙げられる。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0072】
51〜R58として好ましくは水素原子、重水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、シリル基であり、より好ましくは水素原子、重水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、シリル基であり、特に好ましくは水素原子、重水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、シリル基である。R51〜R58は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0073】
51〜R58のアルキル基として好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルであり、より好ましくはメチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルであり、特に好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルである。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0074】
51〜R58のヘテロアリール基として好ましくはイミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリル、イソキノリニル、ピロリル、インドリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルであり、より好ましくはイミダゾリル、ピラゾリル、キノリル、インドリル、フリル、チエニル、ベンズイミダゾリル、カルバゾリル、アゼピニルであり、特に好ましくはインドリル、フリル、チエニル、ベンズイミダゾリル、カルバゾリル、アゼピニルである。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、縮環構造を形成していてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0075】
51〜R58のシリル基として好ましくはトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルジフェニルシリル、ジメチル−tert−ブチルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジフェニル−tert−ブチルシリル、トリフェニルシリルであり、より好ましくはトリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチル‐tert−ブチルシリル、ジフェニル−tert−ブチルシリル、トリフェニルシリルであり、特に好ましくはトリメチルシリル、ジメチル−tert−ブチルシリル、トリフェニルシリルである。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0076】
51として好ましくは、2〜4であり、より好ましくは、2〜3であり、特に好ましくは2である。
【0077】
Aで表される連結基としては、好ましくは、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、シリレンであり、より好ましくは、アリーレン、ヘテロアリーレンであり、特に好ましくは、アリーレンであり、これらの連結基は、例えば、前述のR51〜R58で表される置換基により、更に置換されていても良い。
【0078】
アリーレンとして好ましくは、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ターフェニレンであり、より好ましくは、フェニレン、ビフェニレンであり、特に好ましくは、フェニレンである。
【0079】
フェニレンとして好ましくは、1,2,3,4,5,6‐六置換フェニレン、1,2,4,5‐四置換フェニレン、1,3,5‐三置換フェニレン、1,2‐二置換フェニレン、1,3‐二置換フェニレン、1,4‐二置換フェニレンであり、より好ましくは、1,2‐二置換フェニレン、1,3‐二置換フェニレン、1,4‐二置換フェニレンであり、特に好ましくは、1,3‐二置換フェニレン、1,4‐二置換フェニレンである。
【0080】
ヘテロアリーレンとして好ましくは、二置換ピリジレン、二置換N−フェニルカルバゾリレンであり、より好ましくは、2,6−二置換ピリジレン、3,5−二置換ピリジレン、3,6−二置換N−フェニルカルバゾリレンであり、特に好ましくは、3,6−二置換N−フェニルカルバゾリレンである。
カルバゾール基を有する化合物としては、例えば以下に示す化合物が挙げられる。
【0081】
【化6】

【0082】
【化7】

【0083】
発光層形成用の塗布液中におけるホスト材料の含有量は、全固形分に対して70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0084】
<発光材料>
有機電界発光素子において、発光層には少なくとも1種の発光材料を含有し、該少なくとも1種の発光材料はオーダーパラメーター0.3以上で配向している。
発光材料としては、液晶性ホスト材料の配向を乱さないで自身の配向性を向上させる観点から、前記発光材料の分子コア直径と分子コア厚みとのアスペクト比(分子コア直径/分子コア厚み)としては、少なくとも3であり、3〜30がより好ましく、4〜20が特に好ましい。
前記アスペクト比が3以上であると分子揺らぎが小さくなり、配向性が向上するため好ましく、30以下であるとホスト材料への溶解性に優れ、配向性が向上するため好ましい。
【0085】
前記分子コア直径とは、クロモフォア(共役系でつながった発色団、発光骨格)の最も長い分子長を意味する。
前記分子コア直径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さを前記燐光発光性化合物の分子コア直径と定義する。
【0086】
前記分子コア厚みとは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。
前記分子コア厚みについても、前記分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0087】
前記発光材料の分子半径としては、0.40nm〜3.0nmが好ましく、0.80nm〜2.5nmがより好ましく、1.20nm〜2.0nmが特に好ましい。
前記分子半径が、0.40nm以上であると、液晶中での配向性向上、発光強度の向上及び可視域に発光波長を制御できるため好ましく、3.0nm以下であると、成膜時の配向性向上や液晶への相溶性向上の観点から好ましい。
発光材料の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
【0088】
前記分子半径としては、前記分子コア直径と同様に、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、前記発光材料の分子半径を求める。
【0089】
発光材料の分子半径とホスト材料の分子半径とのサイズ比(発光材料の分子半径/液晶性ホスト材料の分子半径)としては、0.8〜1.2であり、0.85〜1.15がより好ましく、0.9〜1.1が特に好ましい。前記サイズ比がこの範囲であると、有機電界発光素子の正面方向の輝度が上昇する。これは、ホスト材料に発光材料を混合しても、ホスト材料の配向秩序度(オーダーパラメーター)を低下させないため、成膜後、モノドメインかつ分子全体の平均が水平配向となり、発光材料分子の配向方向が均一になるためと推測している。なお、有機電界発光素子の正面方向とは、有機電界発光素子を立てて配置し、基板側から前記発光層へ垂線を引き、この方向から見た方向のことをいう。
【0090】
前記発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、蛍光発光材料でも燐光発光材料でもよい。
発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、燐光発光材料が好ましい。
【0091】
〔蛍光発光材料〕
蛍光発光材料としては平面性の高い化合物であることが好ましい。平面性の高い蛍光発光材料としてはピレン誘導体、ペリレン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フタロシアニン誘導体等が挙げられ、ピレン誘導体が平面分子のz軸を中心軸とした回転運動性が高いことからホスト材料の配向に追随しやすい点で好ましい。また、該ピレン誘導体は液晶性を発現することが好ましい。
【0092】
(ピレン誘導体)
ピレン誘導体としては、従来から知られているピレン誘導体を使用できるが、下記一般式(P−1)で表される化合物が好ましく使用される。
【0093】
【化8】

【0094】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基、置換基を有していても良いアルケニル基、置換基を有していても良いアルキニル基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いシリル基、置換基を有していても良い複素環基、置換基を有していても良いアリールアミノ基を表し、R〜Rの少なくとも1つは水素原子以外の置換基である。)
【0095】
<R〜R
(置換基R〜Rの種類)
〜Rはそれぞれ独立に水素原子、若しくは置換基を有していても良い芳香族炭化水素基、置換基を有していても良いアルケニル基、置換基を有していても良いアルキニル基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いシリル基、置換基を有していても良い複素環基、置換基を有していても良いアリールアミノ基を表す。
〜Rの少なくとも1つは水素原子以外の置換基である。
【0096】
〜Rの2以上が水素原子以外の置換基である場合、複数の水素原子以外の置換基は同一であっても異なっても良い。合成の容易さの点では同一であることが好ましく、発光波長のチューニングが可能な点では異なることが好ましい。
【0097】
また、高い発光効率を得るという点で、R〜Rの水素原子以外の置換基は、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基、置換基を有していても良いシリル基であることが好ましく、特に置換基を有していても良い芳香族炭化水素基であることが好ましい。また、半値幅の狭い発光を得るという点では、R〜Rの水素原子以外の置換基は、置換基を有していても良いアルキニル基、置換基を有していても良いアルキル基が好ましく、発光波長の長いものを得るという点では、R〜Rの水素原子以外の置換基は、置換基を有していても良いアルケニル基、置換基を有していても良い複素環基が好ましい。
【0098】
〜Rの芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜16のものが好ましく、これらは単環基に何ら限定されず、縮合多環式炭化水素基、環縮合炭化水素基、であっても良い。具体例としてはフェニル基等の単環基、ビフェニル基、フェナントリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等の縮合多環式炭化水素基、ビフェニル基等の環縮合炭化水素基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはスチリル基、ジフェニルビニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、具体例としてはメチルエチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、具体例としてはi−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
シリル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、具体例としてはトリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、メチルジブチルシリル基等が挙げられる。
複素環基としては、炭素数5〜20のものが好ましく、具体例としてはピリジル基、チエニル基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、イミダゾイル基、フェニルカルバゾイル基等が挙げられる。
アリールアミノ基としては、炭素数6〜30のものが好ましく、具体例としては、ジフェニルアミノ基、カルバゾイル基、フェニルナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0099】
これらの置換基は更に置換基を有していても良い。更に有しても良い置換基としては、アリール基、アリールアミノ基、アルキル基、パーフルオロアルキル基、ハライド基、カルボキシル基、シアノ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルボン酸基、複素環基などが挙げられる。好ましくは、炭素数6〜16のアリール基、炭素数12〜30のアリールアミノ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基、フルオライド基、炭素数1〜10のオキシカルボニル基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数2〜16のカルボニル基、炭素数5〜20の複素環基などが挙げられる。
【0100】
更に有しても良い置換基のうち、炭素数6〜16のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基などが挙げられる。
炭素数12〜30のアリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、カルバゾイル基、フェニルカルバゾイル基などが挙げられる。
炭素数1〜12のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
炭素数1〜10のオキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。
炭素数1〜10のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜16のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基などが挙げられる。
炭素数2〜16のカルボニル基の例としては、アセチル基、フェニルカルボニル基などが挙げられる。
炭素数5〜20の複素環基の例としては、ピリジル基、チエニル基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、イミダゾイル基などが挙げられる。
以上に説明したR〜R及びR〜Rが有しても良い置換基のうち、アリールアミノ基やアルコキシ基などの電子供与性の基、チエニル基、ベンゾチエニル基などの複素環基は、化合物(P−1)の発光波長の長波長化に寄与する。よってR〜RやR〜Rが有しても良い置換基として、これらの置換基を選択することによって、緑色発光を呈するものを得ることもできる。
【0101】
なお、化合物(P−1)のうち、特に好ましいものは次の一般式(P−1a)又は(P−1b)で表される構造からなるものである(以下の一般式(P−1a),(P−1b)において、R,R,R,Rは一般式(P−1)におけると同義である。以下において、一般式(P−1a)で表される構造からなる化合物を「化合物(P−1a)」と称し、一般式(P−1b)で表される構造からなる化合物を「化合物(P−1b)」と称す場合がある。)。
【0102】
【化9】

【0103】
ピレン誘導体としては、液晶性を示すピレン誘導体であることがより好ましい。液晶性を示すピレン誘導体としては、例えば下記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体を挙げることができる。
【0104】
【化10】

【0105】
上記一般式(P−I)において、Rは、R−、又はR−CO−を意味する。pは、置換基数であり、1〜5の整数を表す。これら基を持つ化合物が全て液晶性ではないが、公知技術等に基づき液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0106】
としては、具体的には、R−、R−O−R−、R−O−Ph−CO−、R−(O−RnP−O−Ph−CO−、R−O−Ph−CH=CH−CO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−CO−が挙げられる。ここで、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0107】
で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。Rで表されるアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、液晶性の点で直鎖であることが好ましい。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0108】
としては、溶解性の観点で、R−が好ましい。
pは、置換基数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2の整数である。一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、少なくともベンゼン環の4位に置換基を有することが液晶性の付与、溶解性の観点で好ましい。
【0109】
上記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、高い溶解性の点で、下記一般式(P−II)で表されるピレン誘導体であることが好ましい。
【0110】
【化11】

【0111】
上記一般式(P−II)中、Rは、一般式(P−I)におけるRと同義である。
【0112】
一般式(P−II)におけるRの具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(P−I)におけるものと同様である。
【0113】
本発明で使用できるピレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
【化12】

【0115】
【化13】

【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
【化16】

【0119】
【化17】

【0120】
【化18】

【0121】
【化19】

【0122】
【化20】

【0123】
【化21】

【0124】
本発明の発光層における一般式(P−I)で表されるピレン誘導体の含有量は発光層中0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、1.5〜10質量%であることが更に好ましい。
一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、例えば、Advanced Functional Materials、2004年、14(7)、649−659に記載の方法により合成することができる。
【0125】
〔燐光発光材料〕
燐光発光材料としては、例えば遷移金属原子、ランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0126】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
配位子としては、例えば、ハロゲン配位子、芳香族炭素環配位子、含窒素ヘテロ環配位子、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、アルコラト配位子、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
ハロゲン配位子としては、例えば、塩素配位子などが挙げられる。
芳香族炭素環配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなどが挙げられる。
含窒素ヘテロ環配位子としては、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。
ジケトン配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。
カルボン酸配位子としては、例えば、酢酸配位子などが挙げられる。
アルコラト配位子としては、例えば、フェノラト配位子などが挙げられる。
【0127】
遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、前記アスペクト比が3以上となる点で、平面状の配位構造である4座となる白金(白金錯体)が好ましく、サレン系、ポルフィリン系骨格の白金錯体がより好ましい。
【0128】
〔金属錯体〕
本発明において、発光材料は金属錯体であることが好ましい。
金属錯体としては、例えば遷移金属原子、ランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
前記金属錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
前記配位子としては、例えば、ハロゲン配位子、芳香族炭素環配位子、含窒素ヘテロ環配位子、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、アルコラト配位子、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
前記ハロゲン配位子としては、例えば、塩素配位子などが挙げられる。
前記芳香族炭素環配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなどが挙げられる。
前記含窒素ヘテロ環配位子としては、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。
前記ジケトン配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。
前記カルボン酸配位子としては、例えば、酢酸配位子などが挙げられる。
前記アルコラト配位子としては、例えば、フェノラト配位子などが挙げられる。
【0129】
前記遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、前記アスペクト比が3以上となる点で、平面状の配位構造である4座となる白金(白金錯体)が好ましく、サレン系、ポルフィリン系骨格の白金錯体がより好ましい。
【0130】
白金錯体として好ましくは、下記一般式(C−1)で表される白金錯体である。
【0131】
【化22】

【0132】
(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【0133】
一般式(C−1)について説明する。Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであっても良い。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
、Q、Q及びQで表される基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0134】
、Q、Q及びQで表される基として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0135】
、L及びLは、単結合又は二価の連結基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。R、R’は置換基を表す。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基であり、最も好ましくは単結合である。
【0136】
として好ましくはアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくはアルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくはアルキレン基、イミノ基であり、更に好ましくはメチレン基、イミノ基である。これらは置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
として更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基、アリールイミノ基であり、更に好ましくはジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基、フェニルイミノ基、4−t−ブチルフェニルイミノ基、3,5−ジ−t−ブチルフェニルイミノ基であり、特に好ましくはジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニルイミノ基である。
【0137】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0138】
【化23】

【0139】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22、B21、B22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表すが、2つ以上が窒素原子を表す。Z21、Z22はそれぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24はそれぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。)
【0140】
一般式(C−2)について説明する。L21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0141】
21、A22、B21、B22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表すが、2つ以上が窒素原子を表し、2つ又は3つが窒素原子を表すことが好ましく、2つが窒素原子を表すことがより好ましい。錯体の安定性の観点からA21及びA22窒素原子を表す、又はB21及びB22が窒素原子であることを表すことが好ましい。
【0142】
21、Z22、Z23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22、Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0143】
前記Z21、Z22、Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。
【0144】
炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、又はシアノ基が更に好ましい。
【0145】
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記トリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メトキシ基、ブチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換の含窒素芳香族へテロ環基を表し、縮環していてもよく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、カルバゾール環などが挙げられ、カルバゾール環が好ましい。
前記ジアリールアミノ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のジアリールアミノ基を表し、縮環していてもよく、ジフェニルアミノ基、ジトルイルアミノ基、ジナフチルアミノ基などが挙げられる。
前記ジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記ジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジt−アミルアミノ基、ジs−ブチルアミノ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0146】
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素基、シアノ基、トリフルオロアルキル基などが選択される。
【0147】
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、又はアリール基が好ましい。
【0148】
前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0149】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0150】
【化24】

【0151】
(式中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。Y,Z、Mは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子である。)
【0152】
一般式(C−3)について説明する。
31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0153】
301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子がより好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はシアノ基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。。該アルキル基、及びアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)である。A302、A305がC−Rである場合、該A302、A305のRとしては、素子の耐久性向上の観点からはアリール基が好ましく、発光波長が短いという観点では水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、フッ素基、シアノ基が好ましい。
301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0154】
307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308が窒素原子であることが好ましい。
【0155】
一般式(C−3)において2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなる点で有利である。
【0156】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
311、A312及びA313のうち少なくとも一つは窒素原子であることが好ましく、特にA311が窒素原子であることが好ましい。
【0157】
一般式(C−3)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3−1)で表される白金錯体である。
【0158】
【化25】

【0159】
(一般式(C−3−1)中、X,Y,Z、Mはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arは置換又は無置換のアリール基を表す。R〜R及びR30はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。Qはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子である。)
【0160】
一般式(C−3−1)について説明する。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。nは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。pは、0〜2が好ましく、1〜2がより好ましい。qは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
Arが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。Arが表すアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)である。これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及びアルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。Arとしてより好ましくは、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基を挙げることができる。
〜R及びR30として好ましくは、一般式(C−3)におけるRと同様のものを挙げることができ、好ましくは、R〜Rは、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基、シリル基を表す。Rは、トリフルオロアルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子が好ましく、トリフルオロアルキル基が更に好ましい。R30はトリフルオロアルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子が更に好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
m、n、p、q、が2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0161】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0162】
【化26】

【0163】
(一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0164】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。
またはRで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
401〜A406として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A401〜A406がC−Rである場合に、A402、A405のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素基である。A401、A403、A404、A406のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましく水素原子である。
41は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0165】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、N(窒素原子)の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408及びA412のいずれかがN原子であることが好ましく、A408とA412が共にN原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、トリフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、フェニル基、トリフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、トリフルオロアルキル基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フェニル基、フッ素基である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素基であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。
【0166】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0167】
【化27】

【0168】
(一般式(C−5)中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。Y及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、Z又はYが、窒素原子である)
【0169】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−4)におけるA401〜A406及びL41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0170】
507、A508、A509、A510、A511及びA512は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A507、A508、A509、A510、A511及びA512がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。A507、A508、A509、A510、A511及びA512のうち少なくとも一つはNであることが好ましく、特にA510又はA507がNであることが好ましい。
【0171】
一般式(C−5)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5−1)で表される白金錯体である。
【0172】
【化28】

【0173】
(一般式(C−5−1)中、X、Y、及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p及び、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arは置換又は無置換のアリール基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、m、n、p、及びqが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
【0174】
及びRは、前記一般式(C−4)におけるA401〜A406及びL41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
及びRとして好ましくは、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
Arは一般式(C−3−1)におけるArと同義であり好ましいものも同様である。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。nは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。pは、0〜2が好ましく、1がより好ましい。qは、0〜2が好ましく、1がより好ましい。
【0175】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0176】
【化29】

【0177】
(一般式(C−6)中、X,Y,及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。r、s、t、及びuは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、r、s、t、及びuが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。W及びWはそれぞれ独立に、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0178】
r、s、t、u、は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、rは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。sは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。tは、0又は1が好ましく、uは、0又は1が好ましい。
及びRとして好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、トリフルオロアルキル基、ハロゲン原子であり、該アリール基はアルキル基を置換基として有していてもよい。
及びRとして好ましくは、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、アリール基が好ましく、該アリール基はアルキル基を置換基として有していてもよい。。
及びWとして好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基等を挙げることができ、メチル基が好ましい。また、該アルキル基は、互いに連結して環状構造(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、好ましくはシクロプロパン)を形成してもよい。
【0179】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0180】
【化30】

【0181】
(式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。A61はC−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Z61、Z62はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0182】
一般式(C−7)について説明する。L61は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0183】
61は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA61は炭素原子であることが好ましい。
【0184】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0185】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。
炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0186】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0187】
一般式(C−7)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−8)で表される白金錯体である。
【0188】
【化31】

【0189】
(一般式(C−8)中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0190】
一般式(C−8)について説明する。L71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−4)におけるA401〜A410と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0191】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、別の好ましい態様の1つとして下記一般式(C−9)で表される白金錯体が挙げられる。
【0192】
【化32】

【0193】
(一般式(C−9)中、R〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16はそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0194】
とR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16はそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成することが好ましい。RとR11、R12とR10、R14とR15、及びR13とR16がそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成することがより好ましい。
とR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16が、互いに結合して形成する環状構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、又はナフタレン環である。
また、R14とR15、R11とR12、R13とR16が互いに結合して環状構造を形成することが好ましい。
該環状構造は更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用でき、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基がより好ましく、炭素数5〜15のアルキル基、炭素数5〜15のアルコキシ基が更に好ましい。
【0195】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の〔0143〕〜〔0152〕、〔0157〕〜〔0158〕、〔0162〕〜〔0168〕に記載の化合物、特開2006−256999号公報の〔0065〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−73891号公報の〔0063〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2007−324309号公報の〔0079〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−96255号公報の〔0055〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2006−313796号公報の〔0043〕〜〔0046〕が挙げられ、その他以下に例示する白金錯体が挙げられる。なお、例示化合物におけるアルキル基及びアルキル基は直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基を含むものとし、好ましくは直鎖アルキル基である。
【0196】
【化33】

【0197】
【化34】

【0198】
【化35】

【0199】
【化36】

【0200】
【化37】

【0201】
【化38】

【0202】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0203】
本発明の発光層における一般式(C−1)で表される化合物の含有量は発光層中1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
【0204】
白金錯体として好ましくは、下記一般式(C−1)で表される白金錯体である。
【0205】
前記燐光発光性化合物の含有量としては、発光層の全質量における含有量が、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.1質量%以上であると十分な発光輝度が得られ、30質量%以下であるとホスト材料への相溶性の向上、会合や濃度消光による発光効率の低下が生じにくい。
【0206】
前記燐光発光性化合物の分子半径と前記ホスト材料の分子半径とのサイズ比(燐光発光性化合物の分子半径/ホスト材料の分子半径)としては、0.8〜1.2であり、0.85〜1.15がより好ましく、0.9〜1.1が特に好ましい。
前記サイズ比が、0.8〜1.2であると有機電界発光素子の正面方向の輝度が向上する。これは、燐光発光性化合物を混合することにより、ホスト材料のオーダーパラメーターが向上するため、成膜後、モノドメインかつ分子全体の平均が水平配向となって、個々の分子の配向方向にばらつきが生じにくいためであると推測している。なお、有機電界発光素子の正面方向とは、有機電界発光素子を立てて配置し、基板側から前記発光層へ垂線を引き、この方向から見た方向のことをいう。
【0207】
燐光発光性化合物の遷移双極子モーメントとしては、前記陽極に対して水平に配向されていることが好ましい。水平に配向されることで、陽極に対して垂直方向への発光成分が増加する点で有利である。
【0208】
遷移双極子モーメントの方向としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて行う。計算に使用する分子構造は、構造最適化計算を行って生成エネルギーが最小となる構造を用い、遷移双極子モーメントの方向を求める。
【0209】
前記発光層の厚みとしては、10nm〜100nmが好ましく、15nm〜50nmがより好ましく、20nm〜40nmが特に好ましい。
前記厚みが、10nm未満であると、正孔と電子の再結合が発光層で起こりにくくなるため、発光効率が低下することがあり、100nmを超えると、駆動電圧が高くなることがある。前記厚みは、例えば、水晶振動子(QCM)や触針式膜厚計を用いて測定することができる。
【0210】
前記発光層の形成方法としては、必要に応じて、溶液プロセスによって成膜された発光層用膜に光を照射することでディスコティック液晶性ホスト化合物の少なくとも一部を一軸配向させて、発光層を形成させるようにしてもよい。前記照射する光としては、一方向に直線偏光した紫外線、又は電子線などが挙げられる。これらの中でも、紫外線が好適に用いられる。
【0211】
前記光照射の照射エネルギーとしては、20mJ/cm〜50J/cmが好ましく、20〜5,000mJ/cmがより好ましく、100mJ/cm〜800mJ/cmが特に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0212】
<その他の層>
前記その他の層としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、基板などが挙げられる。
【0213】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、また、無機化合物であってもよい。
前記正孔注入材料及び正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、イリジウム錯体、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、三酸化モリブデンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、イリジウム錯体、三酸化モリブデンが好ましい。
【0214】
前記正孔注入層及び正孔輸送層としては、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属、金属酸化物などが挙げられる。
前記ハロゲン化金属としては、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどが挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、五酸化バナジウム、三酸化モリブデンなどが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどが挙げられる。
これらの電子受容性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0215】
前記電子受容性ドーパントの使用量としては、材料の種類によって異なるが、正孔輸送材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜50質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0216】
前記正孔注入層及び正孔輸送層の平均厚みとしては、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0217】
−電子輸送層−
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層であり、上述したように、前記電子輸送層の三重項エネルギーは、陰極側隣接層の三重項エネルギーよりも大きいことが好ましい。
【0218】
前記電子輸送層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ベンゾニトリル系化合物、イミダゾピリジン誘導体などが挙げられる。
前記キノリン誘導体としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン;BCP)、BCPにLiをドープしたもの、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)などの8−キノリノール又はその誘導体を配位子とする有機金属錯体、BAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))などが挙げられる。これらの中でも、BCPにLiをドープしたもの、BAlqが特に好ましい。
【0219】
前記電子輸送層の形成方法としては、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0220】
前記電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1nm〜500nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましい。
前記電子輸送層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0221】
−電子注入層−
前記電子注入層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子注入層は、1種又は2種以上の材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。 前記電子注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1nm〜200nmが好ましく、0.2nm〜100nmがより好ましく、0.5nm〜50nmが特に好ましい。
【0222】
−電子ブロック層−
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物としては、例えば前述の正孔輸送性ホスト材料として挙げたものが利用できる。また、前記電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子ブロック層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記電子ブロック層の厚みとしては、1nm〜200nmが好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、3nm〜10nmが特に好ましい。
【0223】
−保護層−
本発明の有機電界発光素子は、保護層によって全体が保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO、SiNx、SiNxOy、MgF、LiF、AlF、CaF、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質などが挙げられる。
【0224】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0225】
−封止容器−
本発明の有機電界発光素子としては、封止容器を用いて全体が封止されていてもよい。更に、前記封止容器と有機電界発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類などが挙げられる。
【0226】
−樹脂封止層−
本発明の有機電界発光素子としては、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制するようにしてもよい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0227】
前記樹脂封止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法などが挙げられる。
【0228】
(有機電界発光素子の層構成)
図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機電界発光素子10としては、基板2上に形成された陽極3と、正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、陰極9とをこの順に積層してなる。なお、陽極3と陰極9とは電源を介して互いに接続されている。
【0229】
(用途)
本発明の有機電界発光素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に利用できる。
前記有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機電界発光素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法などが知られている。
【0230】
また、本発明の有機電界発光素子としては、前記燐光発光性化合物などにより得られる異なる発光色を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色を得ることができる。例えば、青色、緑色及び赤色用の有機電界発光素子とする場合、所望の波長付近に発光ピークを有する燐光発光性化合物を発光層に含有させればよい。
また、例えば、白色用の有機電界発光素子とする場合、燐光発光性化合物として、420nm〜500nmに発光ピークを有する青色燐光発光性化合物、500nm〜570nmに発光ピークを有する緑色燐光発光性化合物、及び570nm〜650nmに発光ピークを有する赤色燐光発光性化合物を含有させるようにしてもよい。
【実施例】
【0231】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0232】
(合成例1)
<化合物B1の合成>
【0233】
【化39】

【0234】
−化合物1aの合成−
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(20g)、n−デシルブロミド(32g)及び炭酸カリウム(20g)を200mlのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中に混合させ、60℃で4時間反応させた。反応液を濾過し、得られた濾液を酢酸エチル/飽和食塩水に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)することにより、化合物1a(20.3g)を得た。
【0235】
−化合物1bの合成−
化合物1a(3g)、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン(0.73g)のエタノール溶液(30ml)に酢酸5滴を1ml駒込ピペットで滴下し、80℃で6時間反応させた。析出した固体を濾取し、エタノールで再結晶することにより、化合物1b(2.7g)を得た。
【0236】
−燐光発光性化合物B1の合成−
化合物1b(1.5g)、酢酸ナトリウム(0.19g)のアセトニトリル溶液(30ml)に、PtCl(0.61g)のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(15ml)を80℃にて滴下し、7時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=8/1)し、酢酸エチルで再結晶することにより、化合物B1(0.72g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色固体であった。
化合物B1の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0237】
(合成例2)
<ホスト材料:化合物A2の合成>
【0238】
【化40】

【0239】
−ホスト1a(host−1a)の合成−
エチルジエチルホスホノアセテート(和光純薬製)(20ml)の1,2−ジメトキシエタン(DME)溶液(200ml)に、氷冷下でNaH(4.0g)を添加し、室温にて10分攪拌後、再び氷冷下でデカナール(和光純薬製)(18.9ml)のDME溶液(60ml)を滴下した。80℃で3時間反応後、反応液を酢酸エチル/希塩酸(酢酸エチル/希塩酸=1/1(体積比))に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30(体積比))することにより、ホスト1a(18.9g)を得た。
【0240】
−ホスト1b(host−1b)の合成−
ホスト1a(10.6g)のDME溶液(100ml)に、水酸化リチウム1水和物(4.3g)水溶液(40ml)を滴下し、80℃にて5時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(酢酸エチル/希塩酸=1/1(体積比))に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3(体積比))し、ノルマルヘキサンにて再結晶することにより、ホスト1b(7.0g)を得た。
【0241】
−ディスコティック液晶性ホスト化合物A2の合成−
ホスト1b(8.6g)、ジイソプロピルエチルアミン(7.9ml)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(80ml)に、−15℃下でメシルクロリド(3.2ml)を滴下した。1時間攪拌後、反応液にジイソプロピルエチルアミン(7.9ml)を加え、続いて2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン水和物(2g)のTHF溶液(80ml)を滴下し、触媒量のジメチルアミノピリジンを加え、室温にて6時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/希塩酸(酢酸エチル/希塩酸=1/1(体積比))に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/8(体積比))し、エタノール/ノルマルヘキサン=95/5(体積比)にて再結晶することにより、ディスコティック液晶性ホスト化合物A2(5.0g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。ディスコティック液晶性ホスト化合物A2の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.80nmであった。
偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Col 48 Nd 79 Iso
(Col:カラムナー相、Nd:ディスコティックネマチック相、Iso:等方相)
【0242】
〔実施例1〕
<有機電界発光素子の作製>
0.7mmの厚み、25mm角のガラス基板上に陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタ蒸着したのち、エッチング及び洗浄した。ITOを成膜した基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に以下の各層を形成した。
なお、スピンコートと乾燥、アニール処理は、グローブボックス(露点−60℃、酸素濃度1ppm)内で行った。
次に、陽極(ITO)上に、下記構造式で表されるPTPDES(ケミプロ化成製、質量平均分子量=13000。nは括弧内の構造の繰り返し数を意味し、整数である。)2質量部を、電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解乃至分散させた正孔注入層塗布液をスピンコートした後、120℃で10分間乾燥し、160℃で60分間アニール処理することで、厚み40nmの正孔注入層を形成した。
次に、下記構造式の正孔輸送材料:化合物B(米国特許US2008/0220265に記載のHTL−1)の化合物4質量部を、電子工業用2−ブタノン(関東化学製)996質量部に溶解させて、正孔輸送層塗布液を調製した。
この正孔輸送層塗布液を正孔注入層上にスピンコートし、150℃で30分間乾燥することで厚み10nmの正孔輸送層を形成した。
【0243】
次に、正孔輸送層上に、ホスト材料としての下記化合物A2を9質量部と、燐光発光材料としての下記化合物B1を1質量部とを、キシレン990質量部に溶解又は分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ3A 1/16、和光純薬株式会社製)を90質量部添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、グローブボックス中でスピンコートし、180℃で30分間乾燥して、厚み30nmの発光層を形成した。
次に、発光層上に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み40nmの電子輸送層を形成した。
次に、電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0244】
〔実施例2〜21、比較例1〜10〕
陽極の表面粗さRa、ホスト材料及び発光材料(発光ドーパント)を表2及び3に記載したように変更した以外は実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
【0245】
【化41】

【0246】
【化42】

【0247】
【化43】

【0248】
【化44】

【0249】
【化45】

【0250】
【化46】

【0251】
【化47】

【0252】
【化48】

【0253】
【化49】

【0254】
【化50】

【0255】
(化合物A2、A4、A5、A7、A9〜A12、化合物B1〜B5の評価)
<液晶性>
スライドガラス上に載せたそれぞれの化合物をホットステージにセットし、昇温過程又は降温過程における相変化をクロスニコル状態の偏光顕微鏡にて観察した。昇温過程又は降温過程のうち少なくともいずれか一方で液晶相が発現すれば液晶性有りの材料と記載する。
【0256】
【表1】

【0257】
<素子評価>
【0258】
(a)配向状態の評価
特開2009−198666号公報に記載の方法に従って、偏光ラマン散乱から発光層に含有される化合物の配向の有無又はそのオーダーパラメーターを算出した。
【0259】
(b)電極の表面粗さの評価
陽極の発光層側の表面粗さRaは、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500を用いて測定した。
【0260】
(c)効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に電流密度2.5mA/cmの外部量子効率を輝度換算法により算出した。
効率は、以下に記載するように実施例4で得られた値を10として相対的に示した。
【0261】
【表2】

【0262】
【表3】

【0263】
表2及び3からわかるように、本発明の有機電界発光素子は、比較例1〜10と比較して、外部量子効率(輝度半減期)に優れる結果となった。本発明の有機電界発光素子と比較例の有機電界発光素子とは、ホスト材料及び発光材料の組み合わせの選択が異なるだけで、同様のホスト材料と発光材料を使用していることから、陽極の表面粗さRaが1.4nm以下であることが発光材料のオーダーパラメーターの向上につながり、結果的に光取り出し効率向上により発光効率が向上したものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0264】
本発明の有機電界発光素子は、高い発光効率を示すことができるので、例えば、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0265】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・電子輸送層
8・・・電子注入層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1の電極、少なくとも1種の発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する有機電界発光素子であって、前記第1の電極の表面粗さRaが1.4nm以下であり、かつ前記発光層に含まれる少なくとも1種の発光材料がオーダーパラメーター0.3以上で配向している、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記発光層を含む少なくとも一層の有機層が逐次成膜法によって製造されたものである、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層が、更に、少なくとも1種のホスト材料を含有する、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記発光層に含まれる少なくとも1種のホスト材料がオーダーパラメーター0.3以上で配向している、請求項3に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記ホスト材料及び前記発光材料のうち少なくとも一方が液晶性を有する、請求項3又は4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記ホスト材料がトリフェニレン誘導体である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光材料が金属錯体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記発光材料が白金錯体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記発光材料が金属を含有しない蛍光発光材料である請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
基板上に、第1の電極、少なくとも1種の発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び第2の電極をこの順に有する有機電界発光素子の製造方法であって、前記第1の電極として表面粗さRaが1.4nm以下の電極を用い、かつ前記発光層に含有させる少なくとも1種の発光材料としてオーダーパラメーター0.3以上で配向する化合物を用いる、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも一層の発光層を含む有機層を逐次成膜法によって製造する工程を含む、請求項10に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−104553(P2012−104553A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249826(P2010−249826)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】