有機電界発光素子および表示装置
【課題】発光効率および色純度が十分に良好な赤色発光の有機電界発光素子、およびこれを用いてなる表示装置を提供する。
【解決手段】陽極13と陰極15との間に発光層14cを備えた有機層14を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子11において、発光層14cは、赤色の発光性ゲスト材料と共に、ホスト材料として母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物を含有している。また青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層14dが、発光層14cに隣接して設けられている。
【解決手段】陽極13と陰極15との間に発光層14cを備えた有機層14を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子11において、発光層14cは、赤色の発光性ゲスト材料と共に、ホスト材料として母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物を含有している。また青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層14dが、発光層14cに隣接して設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機電界発光素子および表示装置に関し、特には赤色発光の有機電界発光素子、およびこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で高効率のフラットパネル型表示装置として、有機電界発光素子(いわゆる有機EL素子)を用いた表示装置が注目されている。
【0003】
このような表示装置を構成する有機電界発光素子は、例えばガラス等からなる透明な基板上に設けられており、基板側から順にITO(Indium Tin Oxide:透明電極)からなる陽極、有機層、および陰極を積層してなる。有機層は、陽極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層および電子輸送性の発光層を順次積層させた構成を有している。このように構成された有機電界発光素子では、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層において再結合し、この再結合の際に生じる光が陽極を介して基板側から取り出される。
【0004】
有機電界発光素子としては、このような構成を有するものの他に、基板側から順に、陰極、有機層、陽極を順次積層した構成、さらには上方に位置する電極(陰極または陽極としての上部電極)を透明材料で構成することによって、基板と反対側の上部電極側から光を取り出すようにした、いわゆる上面発光型もある。特に、基板上に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を設けてなるアクティブマトリックス型の表示装置においては、TFTが形成された基板上に上面発光型の有機電界発光素子を設けた、いわゆるTop Emission構造とすることが、発光部の開口率を向上させる上で有利になる。
【0005】
ところで、有機ELディスプレイの実用化を考慮した場合、有機電界発光素子の開口を広げて光取り出しを高めることのほかに、有機電界発光素子の発光効率を向上させる必要性がある。そこで、発光効率を高める様々な材料および層構成の検討がなされてきた。
【0006】
例えば赤色発光素子であれば、従来から知られているDCJTBに代表されるピラン誘導体に変わる新たな赤色発光材料として、ナフタセン誘導体(ルブレン誘導体を含む)をドーパント材料として用いる構成が提案されている(例えば下記特許文献1,2参照)。
【0007】
また特許文献2には、ルブレン誘導体をドーパント材料として用いた第1の発光層に、ペニレン誘導体とアントラセン誘導体とを含む第2の発光層を積層させることにより、白色発光を得る構成も提案されている。
【0008】
さらに青色発光層に隣接された電子輸送層や正孔輸送層に、ルブレン誘導体をドープさせることにより、白色発光を得る構成も提案されている(下記特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】2000−26334号公報
【特許文献2】2003−55652号公報(特に第0353〜0357段落、表11参照)
【特許文献3】2004−134396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、以上のような表示装置においてフルカラー表示を行う上では、三原色(赤色、緑色、青色)に発光する各色の有機電界発光素子を配列して用いるか、または白色発光の有機電界発光素子と各色のカラーフィルタまたは色変換層とを組み合わせて用いることになる。このうち、発光光の取り出し効率の観点からは、各色に発光する有機電界発光素子を用いる構成が有利である。
【0011】
しかしながら、上述したナフタセン誘導体(ルブレン誘導体)を用いた赤色発光素子の発光は、電流効率は6.7cd/A程度であり、発光色は赤色発光というよりはむしろ橙色発光であった。
【0012】
そこで本発明は、発光効率および色純度が十分に良好な赤色発光の有機電界発光素子、およびこれを用いてなる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するための本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を備えた有機層を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子である。この発光層は、赤色の発光性ゲスト材料と共に、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物からなるホスト材料を含有している。また、青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層が、この発光層に隣接して設けられている。
【0014】
このような構成の有機電界発光素子においては、以降の実施例で詳細に説明するように、光増感層を設けていない構成と比較して電流効率が上昇し、しかも発光材料を含有する光増感層に影響されずに発光層で発生した赤色の発光光のみが素子から取り出されることがわかった。
【0015】
また、本発明は、上述した構成の有機電界発光素子を基板上に複数配列して設けた表示装置でもある。
【0016】
このような表示装置では、上述したように、輝度および色純度が高い有機電界発光素子を赤色発光素子として用いた表示装置が構成されるため、他の緑色発光素子および青色発光素子と組み合わせることで、色再現性の高いフルカラー表示が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の有機電界発光素子によれば、色純度を保ちつつ赤色の発光光の発光効率の向上を図ることが可能になる。
【0018】
そして、本発明の表示装置によれば、上述したように色純度および発光効率の高い赤色発光素子となる有機電界発光素子と共に、緑色発光素子および青色発光素子を1組にして画素を構成することにより、色再現性の高いフルカラー表示が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、有機電界発光素子およびこれを用いた表示装置の順に図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
≪有機電界発光素子−1≫
図1は、本発明の有機電界発光素子を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子11は、基板12上に、陽極13、有機層14、および陰極15をこの順に積層してなる。このうち有機層14は、陽極13側から順に、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、光増感層14d、および電子輸送層14eを積層してなるものである。
【0021】
本発明においては、発光層14cの構成と、これに接して光増感層14dを設けた構成とに特徴がある。以下においては、このような積層構成の有機電界発光素子11が、基板12と反対側から光を取り出す上面発光型の素子として構成されていることとし、この場合の各層の詳細を基板12側から順に説明する。
【0022】
<基板>
基板12は、その一主面側に有機電界発光素子11が配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられるこの中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。
【0023】
<陽極>
陽極13には、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の金属およびその合金さらにはこれらの金属や合金の酸化物等、または、酸化スズ(SnO2)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等が、単独または混在させた状態で用いられる。
【0024】
また、陽極13は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層構造であっても良い。
【0025】
第1層は、アルミニウムを主成分とする合金からなる。その副成分は、主成分であるアルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも一つ含むものでも良い。このような副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくないが、これらの元素を含むことで陽極の安定性が向上し、かつ陽極のホール注入性も満足する。また副成分として、ランタノイド系列元素の他に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの元素を含んでも良い。
【0026】
第1層を構成するアルミニウム合金層における副成分の含有量は、例えば、アルミニウムを安定化させるNdやNi、Ti等であれば、合計で約10wt%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム合金層においての反射率を維持しつつ、有機電界発光素子の製造プロセスにおいてアルミニウム合金層を安定的に保ち、さらに加工精度および化学的安定性も得ることができる。また、陽極13の導電性および基板12との密着性も改善することが出来る。
【0027】
また第2層は、アルミニウム合金の酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、およびタンタルの酸化物の少なくとも一つからなる層を例示できる。ここで、例えば、第2層が副成分としてランタノイド系元素を含むアルミニウム合金の酸化物層(自然酸化膜を含む)である場合、ランタノイド系元素の酸化物の透過率が高いため、これを含む第2層の透過率が良好となる。このため、第1層の表面において、高反射率を維持することが可能である。さらに、第2層は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電層であっても良い。これらの導電層は、陽極13の電子注入特性を改善することができる。
【0028】
また陽極13は、基板11と接する側に、陽極13と基板12との間の密着性を向上させるための導電層を設けて良い。このような導電層としては、ITOやIZOなどの透明導電層が挙げられる。
【0029】
そして、この有機電界発光素子11を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、陽極13は画素毎にパターニングされ、基板12に設けられた駆動用の薄膜トランジスタに接続された状態で設けられている。またこの場合、陽極13の上には、ここでの図示を省略したが絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から各画素の陽極13の表面が露出されるように構成されていることとする。
【0030】
<正孔注入層>
正孔注入層14aは、発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層14aの材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、フラーレン、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0031】
また、上記正孔注入層14aのさらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、C60、C70、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
<正孔輸送層>
正孔輸送層14bは、正孔注入層14aと同様に発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔輸送層14bは、上述した正孔注入層14aと同様の材料の中から選択した材料を用いて構成される。
【0033】
<発光層>
発光層14cは、陽極13と陰極15とに対する電圧印加時に、陽極13側から注入された正孔と、陰極15側から注入された電子とが再結合する領域である。本実施形態においては、この発光層14cの構成が一つの特徴である。つまり発光層14cは、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物をホスト材料として用いたもので、このホスト材料に対して赤色の発光性ゲスト材料がドーピングされており、赤色の発光光を発生する。
【0034】
このうち、発光層14cを構成するホスト材料は、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物であり、ピレン,ベンゾピレン,クリセン,ナフタセン,ベンゾナフタセン,ジベンゾナフタセン,ペリレン,コロネンから選択されることとする。
【0035】
また発光層14cを構成するホスト材料は、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物であり、ピレン,ベンゾピレン,クリセン,ナフタセン,ベンゾナフタセン,ジベンゾナフタセン,ペリレン,コロネンから選択されることとする。
【0036】
なかでも、下記一般式(1)に示すナフタセン誘導体をホスト材料として用いることが好ましい。
【0037】
【化1】
【0038】
ただし、一般式(1)中において、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0039】
一般式(1)におけるR1〜R8が示すアリール基は、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基,6−クリセニル基,2−フルオランテニル基,3−フルオランテニル基,2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0040】
また,R1〜R8が示す複素環基は、ヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員環または6員環の芳香族複素環基、炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられる。また、芳香族複素環基および縮合多環芳香複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾール基が挙げられる。代表的なものとしては,1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる。
【0041】
R1〜R8が示すアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0042】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していてもよい。
【0043】
また特に、上記一般式(1)で表されるナフタセン誘導体は、以下の一般式(1a)で表されるルブレン誘導体であることが好ましい。
【0044】
【化1−1】
【0045】
一般式(1a)中、R11〜R15、R21〜R25、R31〜R35、R41〜R45は、それぞれ独立に水素原子、アリール基、複素環基、アミノ基、アリールオキシ基、アルキル基またはアルケニル基を示す。ただし、R11〜R15、R21〜R25、R31〜R35、R41〜R45は、それぞれ同一であることが好ましい。
【0046】
また一般式(1a)中R5〜R8は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアルキル基またはアルケニル基であることとする。
【0047】
一般式(1a)におけるアリール基、複素環基、およびアミノ基の好ましい態様は、一般式(1)のR1〜R8と同様であって良い。尚、R11〜R15、R21〜R25、R31〜R35、R41〜R45がアミノ基である場合、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはアラルキルアミノ基であることとする。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族や1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基が挙げられる。
【0048】
発光層14cのホスト材料として好適に用いられるナフタセン誘導体のより具体的な他の例としては、一般式(1a)のルブレン誘導体の一つである下記化合物(1)-1のルブレンが挙げられるが、この他にも以下の化合物(1)-2〜(1)-4が例示される。
【0049】
【化1−2】
【0050】
また、発光層14cを構成する赤色の発光性ゲスト材料としては、次に説明する一般式(5)のペリレン誘導体、一般式(6)のジケトピロロピロール誘導体、一般式(7)のピロメテン錯体、一般式(8)のピラン誘導体、または一般式(9)のスチリル誘導体が用いられる。以下、赤色の発光性ゲスト材料の詳細を説明する。
【0051】
−ペリレン誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(5)に示す化合物(ジインデノ[1,2,3-cd]ペリレン誘導体)が用いられる。
【0052】
【化5】
【0053】
ただし、一般式(5)中において、X1〜X20はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0054】
一般式(5)におけるX1〜X20が示すアリール基は、例えば,フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基,6−クリセニル基,2−フルオランテニル基,3−フルオランテニル基,2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0055】
またX1〜X20示す複素環基は、ヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員環または6員環の芳香族複素環基、炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられる。これらの芳香族複素環基および縮合多環芳香複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾール基が挙げられる。代表的なものとしては,1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる。
【0056】
X1〜X20が示すアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0057】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良い。
【0058】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるジインデノ[1,2,3-cd]ペリレン誘導体の具体例として、以下の化合物(5)-1〜(5)-8が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0059】
【化5−1】
【0060】
−ジケトピロロピロール誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(6)に示す化合物(ジケトピロロピロール誘導体)が用いられる。
【0061】
【化6】
【0062】
ただし、一般式(6)中において、Y1およびY2は、それぞれ独立に酸素原子、または置換もしくは未置換のイミノ基を表す。また、Y3〜Y8は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0063】
また一般式(6)中において、Ar1およびAr2は、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基より選ばれる2価の基を示す。
【0064】
尚、一般式(6)における、Y3〜Y8が示す置換あるいは無置換のアリール基、Y3〜Y8が示す複素環基、さらにはY3〜Y8が示すアミノ基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。また、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良いことも同様である。
【0065】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるジケトピロロピロール誘導体の具体例として、以下の化合物(6)-1〜(6)-14が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化6−1】
【0067】
【化6−2】
【0068】
−ピロメテン錯体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(7)に示す化合物(ピロメテン錯体)が用いられる。
【0069】
【化7】
【0070】
ただし、一般式(7)中において、Z1〜Z9はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0071】
尚、一般式(7)における、Z1〜Z9が示す置換あるいは無置換のアリール基、Z1〜Z9が示す複素環基、およびZ1〜Z9が示すアミノ基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。また、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良いことも同様である。
【0072】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるピロメテン錯体の具体例として、以下の化合物(7)-1〜(7)-69が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化7−1】
【0074】
【化7−2】
【0075】
【化7−3】
【0076】
【化7−4】
【0077】
【化7−5】
【0078】
【化7−6】
【0079】
【化7−7】
【0080】
【化7−8】
【0081】
【化7−9】
【0082】
【化7−10】
【0083】
−ピラン誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(8)に示す化合物(ピラン誘導体)が用いられる。
【0084】
【化8】
【0085】
ただし、一般式(8)中において、L1〜L6はそれぞれ独立に、水素、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。また,L1とL4またはL2とL3は炭化水素を通じて環状構造をとってもよい。
【0086】
尚、一般式(8)における、L1〜L6が示す置換あるいは無置換のアリール基、L1〜L6が示す複素環基、およびL1〜L6が示すアミノ基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。L1とL4またはL2とL3は炭化水素を通じて環状構造をとっても良い他、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良い。
【0087】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるピラン誘導体の具体例として、以下の化合物(8)-1〜(8)-7が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0088】
【化8−1】
【0089】
−スチリル誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(9)に示す化合物(スチリル誘導体)が用いられる。
【0090】
【化9】
【0091】
ただし、一般式(9)中において、T1〜T3は炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基を示す。また、T4は、T2およびT3と環状構造を有してもよい置換あるいは無置換のフェニレン部位を示す。
【0092】
一般式(9)における、T1〜T3が示す置換あるいは無置換のアリール基、T1〜T3が示す複素環基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。
【0093】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良い。この場合に、さらにT1〜T4に置換される基としては、例えば、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。その他にも、アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0094】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるスチリル誘導体の具体例として、以下の化合物(9)-1〜(9)-35が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0095】
【化9−1】
【0096】
【化9−2】
【0097】
【化9−3】
【0098】
【化9−4】
【0099】
尚、以上説明したような、発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として用いる一般式(5)のペリレン誘導体、一般式(6)のジケトピロロピロール誘導体、一般式(7)のピロメテン錯体、一般式(8)のピラン誘導体、または一般式(9)のスチリル誘導体は、分子量が2000以下のものが好ましく、1500以下がさらに好ましく、1000以下が特に好ましい。この理由として、分子量が大きいと、蒸着によって素子を作成しようとした場合の蒸着性が悪くなるといった懸念が考えられるためである。
【0100】
<光増感層>
光増感層14dは、発光層14cに対してエネルギーを移動させ、発光層14cにおける発光効率を向上させるための層である。本実施形態においては、このような光増感層14dを、発光層14cに接して設けたことがもう1つの特徴である。このような光増感層14dは、青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料が、ホスト材料に対してドーピングされたものである。
【0101】
このうち発光性ゲスト材料としては、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、さらには金属錯体等の有機発光材料が用いられる。
【0102】
ここで青色の発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約400nm〜490nmの範囲にピークを有する化合物を示す。このよう化合物として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体などの有機物質が用いられる。なかでも、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体から選択されることが好ましい。
【0103】
また光増感層14dのホスト材料は、炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素の誘導体、もしくはその連結からなる有機材料である。その具体的な例としては、例えばナフタレン誘導体、インデン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、トリフェニレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ピセン誘導体、フルオランテン誘導体、アセフェナントリレン誘導体、ペンタフェン誘導体、ペンタセン誘導体、コロネン誘導体、ブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体などを用いることができる。
【0104】
以上のホスト材料は、発光性ゲスト材料毎に最も発光効率が高くなるホスト材料が選択して用いられることとする。
【0105】
尚、このような構成の光増感層14dは、発光層14cに対して接して設けられていることが重要である。このため、この光増感層14dは、上述したように発光層14cと陰極15との間に設けられることに限定されず、発光層14cと陽極13との間において発光層14cに接して設けられていても良い。
【0106】
<電子輸送層>
電子輸送層14eは、陰極15から注入される電子を発光層14cに輸送するためのものである。電子輸送層14eの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3 )、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0107】
尚、有機層14は、このような層構造に限定されることはなく、少なくとも発光層14cと、これに接して光増感層14dが設けられていれば良く、その他必要に応じた積層構造を選択することができる。
【0108】
また、発光層14cは、正孔輸送性の発光層、電子輸送性の発光層、あるいは両電荷輸送性の発光層として有機電界発光素子11に設けられていても良い。さらに、以上の有機層14を構成する各層、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、光増感層14d、および電子輸送層14eは、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
【0109】
<陰極>
次に、このような構成の有機層14上に設けられる陰極15は、例えば、有機層14側から順に第1層15a、第2層15bを積層させた2層構造で構成されている。
【0110】
第1層15aは、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、さらにはこれらの酸化物および複合酸化物の混合物を用いることができる。また、第1層15aは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物および複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物および複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0111】
第2層15bは、例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この第2層15bは、さらに、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層であっても良い。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0112】
以上のような陰極15は、この有機電界発光素子11を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陰極15は、有機層14とここでの図示を省略した上述の絶縁膜とによって、陽極13と絶縁された状態で基板12上にベタ膜状に形成され、各画素の共通電極として用いられる。
【0113】
尚、陰極15は上記のような積層構造に限定されることはなく、作製されるデバイスの構造に応じて最適な組み合わせ、積層構造を取れば良いことは言うまでもない。例えば、上記実施形態の陰極15の構成は、電極各層の機能分離、すなわち有機層14への電子注入を促進させる無機層(第1層15a)と、電極を司る無機層(第2層15b)とを分離した積層構造である。しかしながら、有機層14への電子注入を促進させる無機層が、電極を司る無機層を兼ねても良く、これらの層を単層構造として構成しても良い。また、この単層構造上にITOなどの透明電極を形成した積層構造としても良い。
【0114】
そして上記した構成の有機電界発光素子11に印加する電流は、通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子が破壊されない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
【0115】
また、この有機電界発光素子11が、キャビティ構造となっている場合、陰極15が半透過半反射材料を用いて構成される。そして、陽極13側の光反射面と、陰極15側の光反射面との間で多重干渉させた発光光が陰極15側から取り出される。この場合、陽極13側の光反射面と陰極15側の光反射面との間の光学的距離は、取り出したい光の波長によって規定され、この光学的距離を満たすように各層の膜厚が設定されていることとする。そして、このような上面発光型の有機電界発光素子においては、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能である。
【0116】
さらに、ここでの図示は省略したが、このような構成の有機電界発光素子11は、大気中の水分や酸素等による有機材料の劣化を防止するため保護層(パッシベーション層)で覆われた状態で用いることが好ましい。保護膜には、窒化珪素(代表的には、Si3N4)、酸化珪素(代表的には、SiO2)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy:組成比X>Y)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy:組成比X>Y)膜、またはDLC(Diamond like Carbon)のような炭素を主成分とする薄膜、CN(Carbon Nanotube)膜等が用いられる。これらの膜は、単層または積層させた構成とすることが好ましい。なかでも、窒化物からなる保護層は膜質が緻密であり、有機電界発光素子11に悪影響を及ぼす水分、酸素、その他不純物に対して極めて高いブロッキング効果を有するため好ましく用いられる。
【0117】
尚、以上の実施形態においては、有機電界発光素子が上面発光型である場合を例示して本発明を詳細に説明した。しかしながら、本発明の有機電界発光素子は、上面発光型への適用に限定されるものではなく、陽極と陰極との間に少なくとも発光層を有する有機層を挟持してなる構成に広く適用可能である。したがって、基板側から順に、陰極、有機層、陽極を順次積層した構成のものや、基板側に位置する電極(陰極または陽極としての下部電極)を透明材料で構成し、基板と反対側に位置する電極(陰極または陽極としての上部電極)を反射材料で構成することによって、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型と同様に対応下さい。の有機電界発光素子にも適用可能である。
【0118】
さらに、本発明の有機電界発光素子とは、一対の電極(陽極と陰極)、およびその電極間に有機層が挟持されることによって形成される素子であれば良い。このため、一対の電極および有機層のみで構成されたものに限定されることはなく、本発明の効果を損なわない範囲で他の構成要素(例えば、無機化合物層や無機成分)が共存することを排除するものではない。
【0119】
以上のように構成された有機電界発光素子11では、以降の実施例で詳細に説明するように、光増感層14dを設けていない構成の素子と比較して、電流効率が上昇することが確認された。
【0120】
しかも、赤色の発光層14cに対して、青色に発光する光増感層14dを積層させた構造をとるものの、電界を印加しても光増感層14dからの発光による混色は生じず、赤色の発光を得ることができる。これは、光増感層14dにおいては、赤色の発光層14cを貫いてきた正孔と電子輸送層14eを介在して注入された電子とが再結合しているものの、その再結合によって放出されるエネルギーは、隣接する赤色の発光層14cを構成するホスト材料の電子を励起させるように作用し、赤色の発光層14cにおいての発光に寄与しているためであると考えられる。尚、このような現象は、以下の実施例に対する比較例として示すように、光増感層14dをホスト材料のみによって構成した場合には、目的である赤色の発光層が殆ど発光しなくなる現象から類推することが出来る。
【0121】
以上から、上述した構成の有機電界発光素子11によれば、色純度を保ちつつ赤色の発光光の発光効率の向上を図ることが可能である。
【0122】
また、このような発光効率の大幅な改善により、有機電界発光素子11の輝度寿命の向上と消費電力の低減を達成可能である。
【0123】
≪有機電界発光素子−2≫
図2は、本発明の有機電界発光素子の他の例を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子11’が、図1を用いて説明した有機電界発光素子(11)と異なるところは、正孔輸送層14bの構成にあり、他の構成は同様であることとする。次に、有機電界発光素子11’における正孔輸送層14bの構成を説明する。
【0124】
<正孔輸送層>
正孔輸送層14bは、正孔注入層14aと同様に発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。ここでは特に、正孔輸送層14bが、異なる材料からなる積層構造からなり、少なくとも、正孔注入層14b側の第1正孔輸送層14b-1と、発光層14cに隣接する第2正孔輸送層14b-2との積層構造となっている。
【0125】
このうち、第1正孔輸送層14b-1は、上述した正孔注入層14aと同様の材料の中から選択した材料を用いて構成される。この第1正孔輸送層14b-1は、これ自体が積層構造であっても良い。
【0126】
また第2正孔輸送層14b-2は、発光層14cに接して設けられる層であり、第1正孔輸送層14b-1を構成する材料とは異なる材料を用いて構成される。この第2正孔輸送層14b-2を構成する材料としては、次に説明する一般式(2)のトリアリールアミン誘導体、一般式(3)のフルオレン誘導体、一般式(4)のカルバゾール誘導体が用いられる。以下第2正孔輸送層14b-2を構成する材料の詳細を説明する。
【0127】
−トリアリールアミン誘導体−
第2正孔輸送層14b-2を構成する材料として、例えば下記一般式(2)に示すトリアリールアミン誘導体が用いられる。
【0128】
【化2】
【0129】
ただし一般式(2)中におけるA1〜A3は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を示し、それぞれが無置換であっても置換基を有していても良い。またA1〜A3は、それぞれ複数の環が共役結合によって連結する伸展構造であっても良いが、総素数30以下であることが好ましい。またこれらのアリール基または複素環基に結合される置換基としては、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基が挙げられる。
【0130】
このようなトリアリールアミン誘導体の具体例として、以下の化合物(2)-1〜(2)-48が例示される。
【0131】
【化2−1】
【0132】
【化2−2】
【0133】
【化2−3】
【0134】
−フルオレン誘導体−
第2正孔輸送層14b-2を構成する材料として、例えば下記一般式(3)に示すピロリジル骨格を含むフルオレン誘導体が用いられる。
【化3】
【0135】
ただし一般式(3)中において、ピロリジル骨格に結合されるA1〜A4、およびフルオレン骨格に結合されるZ1およびZ2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基を示す。このうち、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、およびアルコキシル基は、さらに他の置換基で置換されていても良く、炭素数20以下である。またアミノ基は、さらに他の置換基で置換されていても良く、炭素数30以下である。
【0136】
またピロリジル骨格に結合されるA1〜A4は、互いに隣接する部位で環状構造を構成しても良い。
【0137】
ここで、ピロリジル骨格部の具体例を以下に示す。
【0138】
【化3−1】
【0139】
さらに一般式(3)中におけるAr1およびAr2は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を示す。またこれらのアリール基または複素環基は、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、あるいはアリール基で単置換または多置換されていても良いが、総炭素数6〜20のアリール基(炭素環式芳香族基)、または総炭素数3〜20の複素環(複素環式芳香族基)であることとする。
【0140】
好ましいAr1およびAr2としては、未置換、もしくは、ハロゲン、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、あるいは炭素数6〜10のアリール基で単置換または多置換されていてもよい総炭素数6〜20のアリール基である。
【0141】
さらに好ましいAr1およびAr2としては、未置換、もしくは、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいは炭素数6〜10のアリール基で単置換あるいは多置換されていてもよい総炭素数6〜16のアリール基である。
【0142】
さらに一般式(3)中におけるB1およびB2は、水素、アルキル基、アリール基、または複素環基を示す。このうちアルキル基は、直鎖、分岐、または環状であって良い。また、アリール基は、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアリール基であって良い。さらに複素環基は、炭素数20以下の複素環基であって良い。
【0143】
以上一般式(3)を構成する置換または未置換のアリール基の具体例としては、具体例としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
さらに一般式(3)を構成するアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
以上のようなフルオレン誘導体の具体例として、以下の化合物(3)-1〜(3)-20が例示される。
【0146】
【化3−2】
【0147】
【化3−3】
【0148】
−カルバゾール誘導体−
第2正孔輸送層14b-2を構成する材料として、例えば下記一般式(4)に示すカルバゾール誘導体が用いられる。
【0149】
【化4】
【0150】
ただし一般式(4)中において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、アリール基または複素環基を示し、これらは置換基を有しても良い。
【0151】
Ar1,Ar2のアリール基としては、例えばベンゼン環の単環または2〜5縮合環からなる基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。また複素環基としては、例えば5員環または6員環の単環、または2〜5縮合環が挙げられ、具体的にはピリジル基、トリアジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、チエニル基などが挙げられる。
【0152】
これらのアリール基または複素環基が有しうる置換基としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基)、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルケニル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素数6〜10のアリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えばベンジルオキシ基等の、炭素数7〜13のアリールオキシ基)、2級または3級アミノ基(例えばジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;メチルフェニルアミノ基等の、炭素数7〜20のアリールアルキルアミノ基、など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、芳香族炭化水素環基(例えばフェニル基、ナフチル基等の、炭素数6〜10の芳香族炭化水素環基)、および芳香族複素環基(例えばチエニル基、ピリジル基等の、5員環または6員環の単環または2縮合環からなる芳香族複素環基)、等が挙げられる。
【0153】
これらのうち、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アリール基(芳香族炭化水素環基)、複素環基(芳香族複素環基)が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリールアミノ基が特に好ましい。
【0154】
Ar1およびAr2が、例えばターフェニル基などのように、2個以上の直接結合を介して連なった、3個以上の芳香族基を含む構造である場合、−NAr1Ar2で表されるアリールアミノ基が有する正孔輸送能を低下させる虞がある。したがって、本発明に係る化合物の特性を損なわないためには、Ar1およびAr2はいずれも、3個以上のアリール基または複素環基が、直接結合していない基であるか、または短い鎖状連結基を介して直列で結合していない基であることが重要である。
【0155】
また一般式(4)中において、R1〜R8は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリール基、または複素環基を示し、隣接する部位で環状構造を構成しても良い。また可能であれば、さらに他の置換基で置換されていても良い。
【0156】
R1〜R8の具体例は、ハロゲン(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基)、アラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基等の、炭素数7〜13のアラルキル基)、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基等の、炭素数2〜7の直鎖または分岐のアルケニル基)、シアノ基、アミノ基、特に3級アミノ基(例えばジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;メチルフェニルアミノ基等の、炭素数7〜20のアリールアルキルアミノ基、など)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状の炭化水素基部分を含むアシル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数2〜7の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、カルボキシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ベンジルオキシ基等の、炭素数6〜10のアリールオキシ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基)、水酸基、アミド基(例えば、メチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基等の、炭素数2〜7のアルキルアミド基;ベンジルアミド基、ジベンジルアミド基等のアリールアミド基、など)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等の、ベンゼン環の単環または2〜4縮合環からなる芳香族炭化水素環基)、または複素環基(例えばカルバゾリル基、ピリジル基、トリアジル基、ピラジル基、キノキサリル基、チエニル基等の、5員環または6員環の、単環または2〜3縮合環からなる芳香族複素環基)である。
【0157】
このようなR1〜R8として、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(芳香族炭化水素環基)、複素環基(芳香族複素環基)が挙げられる。
【0158】
R1〜R8の例として前述した基は、さらに置換基を有していても良い。このような置換基としてはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基)、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルケニル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素数6〜10のアリールオキシ基)、ジアルキルアミノ基(例えばジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基)、芳香族炭化水素環基(例えばフェニル基等の芳香族炭化水素環基)、や芳香族複素環基(例えばチエニル基、ピリジル基等の、5員環または6員環の単環からなる芳香族複素環基)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等の、炭素数1〜6の直鎖、分岐のアシル基)、ハロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のハロアルキル基)、シアノ基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基が、より好ましい。
【0159】
また、R1〜R8は隣り合うもの同士で結合して、N−カルバゾリル基に縮合する環を形成していてもよい。R1ないしR8のうち、隣接する基同士が結合して形成する環は、通常、5〜8員環であるが、好ましくは5員環または員環、より好ましくは6員環である。また、この環は芳香族環であっても非芳香族環であってもよいが、好ましくは芳香族環である。さらに、芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよいが、好ましくは芳香族炭化水素環である。
【0160】
一般式(I)のN−カルバゾリル基において、R1〜R8のいずれかが結合してN−カルバゾリル基に結合する縮合環を形成した例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0161】
【化4−1】
【0162】
上記R1〜R8は、特に好ましくは、すべて水素原子である(つまりN−カルバゾリル基は無置換である)構造であるか、または1つ以上がメチル基、フェニル基、またはメトキシ基のいずれかであり、残りが水素原子である構造である。
【0163】
一般式(4)中のXは、2価の芳香族環基を示す。例えば、アリーレン基または2価の複素環基が1〜4個結合してなる連結基であれば良く、さらに置換されていても良い。
【0164】
このような連結基Xは、−Ar3−、−Ar4−Ar5−、−Ar6−Ar7−Ar8−、または−Ar9−Ar10−Ar11−Ar12−で表される。
【0165】
連結基Xの端部を構成するAr3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar8、Ar9およびAr12は、員数5〜6の芳香族環の単環または2〜5縮合環からなる2価の基を表し、置換されていても良い。
【0166】
このようなAr3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar8、Ar9およびAr12の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、ペリレニレン基などの2価の香族炭化水素環基、ピリジレン基、トリアジレン基、ピラジレン基、キノキサリレン基、チエニレン基、オキサジアゾリレン基などの2価の芳香族複素環基が挙げられる。
【0167】
連結基Xの中間部を構成するAr7、Ar10およびAr11は、Ar3等と同様の上述した2価の芳香族基であるか、または2価のアリールアミノ基であっても良い。ただし、2価のアリールアミノ基である場合、そのアリール基は5または6員環の芳香族基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンチル基、チエニル基、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0168】
連結基Xとして最も小さな連結基であるAr3としては、化合物の剛直性、これに起因する耐熱性を向上させるためには、3縮合環以上であることが好ましい。
【0169】
連結基Xの端部を構成するAr4、Ar5、Ar6、Ar8、Ar9およびAr12としては、単環または2〜3縮合環が好ましく、単環または2縮合環がより好ましい。
【0170】
以上の連結基Xを構成する芳香族環が有しうる置換基としては、例えば、R1〜R8として例示した各基が有しうる置換基として前述したものと同様の基が挙げられる。中でも特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である。
【0171】
以上のようなカルバゾール誘導体の具体例として、以下の化合物(4)-1〜(4)-26が例示される。
【0172】
【化4−2】
【0173】
【化4−3】
【0174】
尚、上述したような第2正孔輸送層14b-2は、上記一般式(2)〜(4)で示される有機材料のうちの複数の化合物で構成されていても良く、これ自体が積層構造であっても良い。
【0175】
尚、以上説明した第2正孔輸送層14b-1を設けた有機電界発光素子11’において、特に一般式(3),(4)を用いて第2正孔輸送層14b-1を構成した場合、光増感層14dには、ホールトラップ性の化合物を含有させることが好ましい。ホールトラップ性の化合物としては、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体が例示され、この中から選択して用いられることとする。
【0176】
以上説明した材料からなる第2正孔輸送層14b-2を備えた有機電界発光素子11’では、以降の実施例で詳細に説明するように、上記一般式(2)〜(4)以外の材料からなる単層構造の正孔輸送層を備えた構成と比較して、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化が大幅に改善されることがわかった。
【0177】
これにより、有機電界発光素子11’は、図1を用いて説明した有機電界発光素子11と同様に、光増感層14dを設けた構成による輝度寿命の向上と消費電力の低減を達成可能であるとともに、さらに正孔輸送層14bの積層構造を特定したことによる輝度寿命の向上と消費電力の低減を達成可能である。
【0178】
≪表示装置の概略構成≫
図3は、実施形態の表示装置10の一例を示す図であり、図3(A)は概略構成図、図3(B)は画素回路の構成図である。ここでは、発光素子として有機電界発光素子11を用いたアクティブマトリックス方式の表示装置10に本発明を適用した実施形態を説明する。
【0179】
図3(A)に示すように、この表示装置10の基板12上には、表示領域12aとその周辺領域12bとが設定されている。表示領域12aは、複数の走査線21と複数の信号線23とが縦横に配線されており、それぞれの交差部に対応して1つの画素aが設けられた画素アレイ部として構成されている。これらの各画素aに、有機電界発光素子11R(11),11G,11Bのうちの1つが設けられている。また周辺領域12bには、走査線21を走査駆動する走査線駆動回路bと、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線23に供給する信号線駆動回路cとが配置されている。
【0180】
図3(B)に示すように、各画素aに設けられる画素回路は、例えば各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bのうちの1つと、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)Tr2、および保持容量Csで構成されている。そして、走査線駆動回路bによる駆動により、書き込みトランジスタTr2を介して信号線23から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bに供給され、この電流値に応じた輝度で有機電界発光素子11R(11),11G,11Bが発光する。
【0181】
尚、以上のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けて画素回路を構成しても良い。また、周辺領域2bには、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路が追加される。
【0182】
≪表示装置の断面構成−1≫
図4には、上記表示装置10の表示領域における主要部の断面構成の第1の例を示す。
【0183】
有機電界発光素子11R(11),11G,11Bが設けられる基板12の表示領域には、ここでの図示を省略したが、上述した画素回路を構成するように駆動トランジスタ、書き込みトランジスタ、走査線、および信号線が設けられ(図3参照)、これらを覆う状態で絶縁膜が設けられている。
【0184】
この絶縁膜で覆われた基板12上に、有機電界発光素子11R(11),11G,11Bが配列形成されている。各有機電界発光素子11R(11)、11G、11Bは、基板12と反対側から光を取り出す上面発光型の素子として構成される。
【0185】
各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bの陽極13は、素子毎にパターン形成されている。各陽極13は、基板12の表面を覆う絶縁膜に形成された接続孔を介して画素回路の駆動トランジスタに接続されている。
【0186】
各陽極13は、その周縁部が絶縁膜30で覆われており、絶縁膜30に設けた開口部分に陽極13の中央部が露出された状態となっている。そして、陽極13の露出部分を覆う状態で、有機層14がパターン形成され、各有機層14を覆う共通層として陰極15が設けられた構成となっている。
【0187】
これらの有機電界発光素子11R(11),11G,11Bのうち、特に赤色発光素子11Rが上記図1を用いて説明した実施形態の有機電界発光素子(11)として構成されている。これに対して、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bは、通常の素子構成であって良い。
【0188】
つまり、赤色発光素子11R(11)において、陽極13上に設けられた有機層14は、例えば陽極13側から順に、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、ホスト材料としてナフタセン誘導体を用いた赤色の発光層14c-R(14c)、青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料をホスト材料にドーピングしてなる光増感層14d、および電子輸送層14eを積層させている。
【0189】
一方、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bにおける有機層は、例えば陽極13側から順に、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、各色の発光層14c-G,14c-B、および電子輸送層14eをこの順に積層させている。
【0190】
尚、赤色発光素子11R(11)における光増感層14dは、青色の発光性ゲスト材料がドーピングされたものであり、例えば青色発光素子11Bにおける青色の発光層14c-Bと同一構成(材料)であって良い。またこの他にも、発光層14c-R,14c-G,14c-B、および光増感層14d以外の各層は、陽極13および陰極15も含めて各有機電界発光素子11R,11G,11Bにおいて同一材料で構成されていて良く、図1を用いて説明した各材料を用いて構成される。
【0191】
そして、以上のように設けられた複数の有機電界発光素子11R(11),11G,11Bは、保護膜で覆われていることとする。尚、この保護膜は、有機電界発光素子11R,11G,11Bが設けられた表示領域の全体を覆って設けられていることとする。
【0192】
ここで、赤色発光素子11R(11)、緑色発光素子11G、および青色発光素子11Bを構成する陽極13〜陰極15までの各層は、真空蒸着法、イオンビーム法(EB法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、スパッタ法、Organic Vapor Phase Deposition(OVPD)法などのドライプロセスによって形成できる。
【0193】
また、有機層であれば、以上の方法に加えてレーザー転写法、スピンコート法、ディッピング法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法などの塗布法、インクジェット法、オフセット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法などの印刷法などのウエットプロセスによる形成も可能であり、各有機層や各部材の性質に応じて、ドライプロセスとウエットプロセスを併用しても構わない。
【0194】
そして、以上のように各有機電界発光素子11R(11),11G,11B毎にパターン形成された有機層14は、例えばマスクを用いた蒸着法や転写法によって形成される。
【0195】
このように構成された第1の例の表示装置10では、赤色発光素子11Rとして、図1を用いて説明した本発明構成の有機電界発光素子(11)を用いている。この赤色発光素子11R(11)は、上述したように赤色の発光色を保ちつつも発光効率が高い。このため、この赤色発光素子11R(11)と共に、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bを組み合わせることで、色表現性の高いフルカラー表示を行うことが可能になる。
【0196】
また、発光効率の高い有機電界発光素子(11)を用いたことにより、表示装置10において輝度寿命を改善できるとともに消費電力を低減させる効果をもたらす。したがって、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能となる。
【0197】
≪表示装置の断面構成−2≫
図5には、表示装置10の表示領域における主要部の断面構成の第2の例を示す。
【0198】
図5に示す第2の例の表示装置10が、図4に示した第1の例と異なるところは、各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bにおいて、発光層14c-R、14c-Gよりも上方の層を共通層として連続形成しているところにあり、それ以外は同様の構成であって良い。この場合、青色の発光層14c-B、電子輸送層14e、および陰極15が共通層として、複数の画素間にわたる連続パターンの形状で設けられている。
【0199】
共通層となる青色の発光層14c-Bは、赤色発光素子11R(11)においては光増感層14dとして設けられることになる。一方、緑色発光素子11Gに設けられた青色の発光層14c-B部分において生じた青色の発光光は、緑色の発光層14c-Gにおいて吸収されて緑色の発光に寄与する。またこの場合、各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bにおいては、有機層の構造を各色の発光光を取り出すキャビティ構造として構成することにより、取り出される発光光の色純度の向上が図られる。
【0200】
このように構成された第2の例の表示装置10では、第1の例と同様の効果が得られる。また特に、青色の発光層14c-B(光増感層14d)から上層の各層を、大口径のエリアマスクを用いて表示領域に対して一括成膜することができる。これにより、表示装置10の製造工程の簡略化を図ることが可能である。
【0201】
≪表示装置の断面構成−3≫
図6には、表示装置10の表示領域における主要部の断面構成の第3の例を示す。
【0202】
図6に示す第3の例の表示装置10では、各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bにおいて、陽極13および発光層14c-R、14c-G以外の層を共通層としており、他の構成は第1の例と同様であって良い。つまり、第2の例において共通層とした青色の発光層14c-B(光増感層14d)、電子輸送層14e、および陰極15に加えて、さらに発光層よりも下層の正孔注入層14a、正孔輸送層14bも共通層として用いているのである。
【0203】
このように構成された第3の例の表示装置10であっても、第2の例と同様の効果を得ることができ、第2の例よりもさらに製造工程の簡略化を図ることができる。
【0204】
また、以上の第1の例〜第3の例においては、アクティブマトリックス型の表示装置に本発明を適用した実施形態を説明した。しかしながら、本発明の表示装置は、パッシブマトリックス型の表示装置への適用も可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0205】
以上説明した本発明に係る表示装置は、図7に開示したような、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部である表示領域12aを囲むようにシーリング部31が設けられ、このシーリング部31を接着剤として、透明なガラス等の対向部(封止基板32)に貼り付けられ形成された表示モジュールが該当する。この透明な封止基板32には、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。尚、表示領域12aが形成された表示モジュールとしての基板12には、外部から表示領域12a(画素アレイ部)への信号等を入出力するためのフレキシブルプリント基板33が設けられていても良い。
【0206】
また、上述した表示装置において各赤色発光素子11Rは、図2を用いて説明した有機電界発光素子11’であっても良い。この場合、他の緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bの正孔輸送層も、赤色発光素子11R(11’)と同様の積層構造として良い。
【0207】
赤色発光素子11Rとして、図2を用いて説明した本発明構成の有機電界発光素子(11’)を用いることにより、この赤色発光素子11R(11’)は、上述したように発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化が低く抑えられている。このため、このため、この赤色発光素子11R(11’)と共に、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bを組み合わせることで、色表現性の高いフルカラー表示を行うことが可能になると共に、焼き付きが防止された表示が可能になる。
【0208】
また、発光効率の高い有機電界発光素子(11’)を用いたことにより、表示装置10において輝度寿命を改善できるとともに消費電力を低減させる効果をもたらす。したがって、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能となる。
【0209】
≪適用例≫
また以上説明した本発明に係る表示装置は、図8〜図12に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。以下に、本発明が適用される電子機器の一例について説明する。
【0210】
図8は、本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明に係る表示装置を用いることにより作成される。
【0211】
図9は、本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0212】
図10は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0213】
図11は、本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0214】
図12は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【実施例】
【0215】
本発明の具体的な実施例および比較例の有機電界発光素子の製造手順を、図1を参照して説明し、次にこれらの評価結果を説明する。
【0216】
<実施例1〜4>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてペリレン誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(表1参照)。
【0217】
先ず、30mm×30mmのガラス板からなる基板12上に、陽極13として、膜厚が190nmのAg合金(反射層)上に12.5nmのITO透明電極を積層した上面発光用の有機電界発光素子用のセルを作製した。
【0218】
次に、真空蒸着法により、有機層14の正孔注入層14aとして、下記構造式(101)に示されるm−MTDATAよりなる膜を12nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。ただし、m−MTDATAは、4、4'、4”−トリス(フェニル−m−トリルアミノ)トリフェニルアミンである。
【0219】
【化10】
【0220】
次いで、正孔輸送層14bとして、下記構造式(102)に示されるα−NPDよりなる膜を12nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。ただし、α−NPDは、N、N’−ビス(1−ナフチル)−N、N’−ジフェニル[1、1’-ビフェニル]−4、4’―ジアミンである。
【0221】
【化11】
【0222】
次に、正孔輸送層14b上に、膜厚30nmの発光層14cを蒸着成膜した。この際、下記化合物(1)-1のルブレンをホスト材料として用い、これに下記化合物(5)-1に示されるジベンゾ[f,f']ジインデノ[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレン誘導体を赤色の発光性ゲスト材料として相対膜厚比で1%ドーピングした。
【0223】
【化12】
【0224】
このようにして形成された発光層14c上に、膜厚25nmの光増感層14dを蒸着成膜した。この際、下記構造式(103)に示される9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)をホスト材料として用い、これに下記構造式(104)に示されるスチリルアミン誘導体を青色の発光性ゲスト材料としてドーピングした。青色の発光性ゲスト材料は、実施例1〜4において2%、5%、10%、15%の各ドーピング量(相対膜厚比)とした。
【0225】
【化13】
【0226】
次いで、電子輸送層14eとして、下記構造式(105)に示すAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)を10nmの膜厚で蒸着した。
【0227】
【化14】
【0228】
以上のようにして、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、光増感層14dおよび電子輸送層14eを順次積層してなる有機層14を形成した後、陰極15の第1層15aとして、LiFよりなる膜を真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度0.01nm/sec.)の膜厚で形成した。最後に、真空蒸着法により、第1層15a上に陰極15の第2層15bとして膜厚10nmのMgAg膜を形成した。
【0229】
以上のようにして、実施例1〜4の有機電界発光素子を作製した。
【0230】
<実施例5〜9>
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例5では相対膜厚比で5%、実施例6〜9では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0231】
【化15】
【0232】
<比較例1>
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0233】
<比較例2>
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0234】
<評価結果>
以上の実施例1〜9および比較例1,2で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、下記表1に示す。
【0235】
【表1】
【0236】
以上の表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜9の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例1,2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2倍近い高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0237】
また、実施例1〜9の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例4〜9の何れの有機電界発光素子においても、発光光の色座標が(0.64,0.34)であった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0238】
<実施例10〜13>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてジケトピロロピロール誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表2参照)。
【表2】
【0239】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(6)-5に示されるジケトピロロピロール誘導体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0240】
【化16】
【0241】
<実施例14〜18>
実施例10〜13で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例14では相対膜厚比で5%、実施例15〜18では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例10〜13と同様に行った。
【0242】
<比較例3>
実施例10〜13で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例10〜13と同様に行った。
【0243】
<比較例4>
実施例10〜13で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例10〜13と同様に行った。
【0244】
<評価結果>
以上の実施例10〜18および比較例3,4で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表2に示した。
【0245】
上記表2に示すように、本発明を適用した実施例10〜18の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例3,4の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2倍近い高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0246】
また、実施例10〜18の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例14〜18の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0247】
<実施例19〜22>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてピロメテン錯体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表3参照)。
【表3】
【0248】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(7)-21に示されるピロメテン錯体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0249】
【化17】
【0250】
<実施例23〜27>
実施例19〜22で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例23では相対膜厚比で5%、実施例24〜27では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例19〜22と同様に行った。
【0251】
<比較例5>
実施例19〜22で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例19〜22と同様に行った。
【0252】
<比較例6>
実施例19〜22で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例19〜22と同様に行った。
【0253】
<評価結果>
以上の実施例19〜27および比較例5,6で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表3に示した。
【0254】
上記表3に示したように、本発明を適用した実施例19〜27の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例5,6の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2.5倍以上の高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0255】
また、実施例19〜27の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例23〜27の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0256】
<実施例28〜31>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてピラン誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表4参照)。
【表4】
【0257】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(8)-2に示されるピラン誘導体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0258】
【化18】
【0259】
<実施例32〜36>
実施例28〜31で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例32では相対膜厚比で5%、実施例33〜36では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例28〜31と同様に行った。
【0260】
<比較例7>
実施例28〜31で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例28〜31と同様に行った。
【0261】
<比較例8>
実施例28〜31で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例28〜31と同様に行った。
【0262】
<評価結果>
以上の実施例28〜36および比較例7,8で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表4に示した。
【0263】
表4に示すように、本発明を適用した実施例28〜36の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例7,8の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が3倍以上の高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0264】
また、実施例28〜36の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例32〜36の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0265】
<実施例37〜40>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてスチリル誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表5参照)。
【表5】
【0266】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(9)-21に示されるスチリル誘導体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0267】
【化19】
【0268】
<実施例41〜45>
実施例37〜40で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例41では相対膜厚比で5%、実施例42〜45では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例37〜40と同様に行った。
【0269】
<比較例9>
実施例37〜40で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例37〜40と同様に行った。
【0270】
<比較例10>
実施例37〜40で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例37〜40と同様に行った。
【0271】
<評価結果>
以上の実施例37〜45および比較例9,10で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表5に示した。
【0272】
表5に示すように、本発明を適用した実施例37〜45の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例9,10の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2倍近い高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0273】
また、実施例37〜45の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例41〜45の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0274】
以上説明した各実施例および比較例の評価結果から、赤色の発光層14cを構成するホスト材料およびドーパント材料として公知の有機材料の中から選択された材料を使用し、この発光層14cに隣接させて種々の青色発色性ゲストを含有させた光増感層14dを設けた本発明の構成では、赤色の色純度を維持しつつも、大幅な発光効率(電流効率)の向上を図ることが可能であることが確認された。
【0275】
またこれは、この有機電界発光素子とともに、緑色発光素子および青色発光素子を1組にして画素を構成することにより、色再現性の高いフルカラー表示が可能になることを示している。
【0276】
<実施例46〜57>
図2を用いて説明した有機電界発光素子を作製した。ここでは、実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おいて、次のような積層構造として正孔輸送層14bを形成し、これ以外は実施例1〜4と同様に行った。尚、光増感層14dにおいて構造式(104)からなるゲスト材料のドーピング量は、実施例2と同様の相対膜厚比で5%とした。
【0277】
すなわち正孔輸送層14bの形成においては、先ず第1正孔輸送層14b-1として、先の構造式(102)に示したα−NPDよりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0278】
次いで、第2正孔輸送層14b-2として、実施例46〜実施例57において化合物(2)-1〜(2)-48から選択された12種類の下記化合物よりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0279】
【化20】
【0280】
<評価結果>
以上の実施例46〜57で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。また、焼き付きの指標として電流密度30mA/cm2、Duty75%駆動における100Hr後の輝度減少率を測定した。これらの結果を、下記表6に示す。尚、表6には、正孔輸送層14bが積層構造である実施例46〜57に対して、正孔輸送層14bが単層構造である以外が同様の構成である実施例2の測定結果を合わせて示した。
【0281】
【表6】
【0282】
以上の表6に示すように、一般式(2)の材料を用いた特定の積層構造として正孔輸送層14bが構成された実施例46〜57の有機電界発光素子の何れも、正孔輸送層14bが単層構造で構成された実施例2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率を維持しつつ、かつDuty75%駆動における100Hr後の輝度減少率が少なくなっている。これは、発光層14cにおける正孔と電子との再結合にかかるチャージバランスが整えられ、輝度の時間的な低下を防ぐ効果がもたらされることを示している。
【0283】
また、実施例46〜57の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることも確認された。
【0284】
以上から、一般式(2)の材料を用いた特定の積層構造として本発明を適用して正孔輸送層14bを構成することにより、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化を大幅に改善できることが確認された。
【0285】
<実施例58〜62>
図2を用いて説明した有機電界発光素子を作製した。ここでは、実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おいて、次のような積層構造として正孔輸送層14bを形成し、これ以外は実施例1〜4と同様に行った。尚、光増感層14dにおいて構造式(104)からなるゲスト材料のドーピング量は、実施例2と同様の相対膜厚比で5%とした。
【0286】
すなわち正孔輸送層14bの形成においては、先ず第1正孔輸送層14b-1として、先の構造式(102)に示したα−NPDよりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0287】
次いで、第2正孔輸送層14b-2として、実施例58〜実施例62において化合物(3)-1〜(3)-20から選択された5種類の下記化合物よりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0288】
【化21】
【0289】
<評価結果>
以上の実施例58〜62で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。また、焼き付きの指標として電流密度30mA/cm2、Duty75%駆動における100Hr後の輝度減少率を測定した。これらの結果を、下記表7に示す。尚、表7には、正孔輸送層14bが積層構造である実施例46〜57に対して、正孔輸送層14bが単層構造である以外が同様の構成である実施例2の測定結果を合わせて示した。
【0290】
【表7】
【0291】
以上の表7に示すように、一般式(3)の材料を用いた特定の積層構造として正孔輸送層14bが構成された実施例58〜62の有機電界発光素子の何れも、正孔輸送層14bが単層構造で構成された実施例2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率を維持しつつ、かつDuty75%駆動における100Hr後の輝度減少率が少なくなっている。これは、発光層14cにおける正孔と電子との再結合にかかるチャージバランスが整えられ、輝度の時間的な低下を防ぐ効果がもたらされることを示している。
【0292】
また、実施例58〜62の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることも確認された。
【0293】
以上から、一般式(3)の材料を用いた特定の積層構造として本発明を適用して正孔輸送層14bを構成することにより、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化を大幅に改善できることが確認された。
【0294】
<実施例63〜69>
図2を用いて説明した有機電界発光素子を作製した。ここでは、実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おいて、正孔輸送層14bを次のような積層構造として形成し、これ以外は実施例1〜4と同様に行った。尚、光増感層14dにおいて構造式(104)からなるゲスト材料のドーピング量は、実施例2と同様の相対膜厚比で5%とした。
【0295】
すなわち正孔輸送層14bの形成においては、先ず第1正孔輸送層14b-1として、先の構造式(102)に示したα−NPDよりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0296】
次いで、第2正孔輸送層14b-2として、実施例63〜実施例69において化合物(4)-1〜(4)-26から選択された7種類の下記化合物よりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0297】
【化22】
【0298】
<評価結果>
以上の実施例63〜69で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。また、焼き付きの指標として電流密度30mA/cm2、Duty75%駆動における100Hr後の輝度減少率を測定した。これらの結果を、下記表8に示す。尚、表8には、正孔輸送層14bが積層構造である実施例46〜57に対して、正孔輸送層14bが単層構造である以外が同様の構成である実施例2の測定結果を合わせて示した。
【0299】
【表8】
【0300】
以上の表8に示すように、一般式(4)の材料を用いた特定の積層構造として正孔輸送層14bが構成された実施例63〜69の有機電界発光素子の何れも、正孔輸送層14bが単層構造で構成された実施例2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率を維持しつつ、かつDuty75%駆動における100Hr後の輝度減少率が少なくなっている。これは、発光層14cにおける正孔と電子との再結合にかかるチャージバランスが整えられ、輝度の時間的な低下を防ぐ効果がもたらされることを示している。
【0301】
また、実施例63〜69の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることも確認された。
【0302】
以上から、一般式(4)の材料を用いた特定の積層構造として本発明を適用して正孔輸送層14bを構成することにより、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化を大幅に改善できることが確認された。
【0303】
<実施例70>
実施例1と同様の有機電界発光素子を用いた表示装置を、次のようにして作製した(図6参照)。
【0304】
先ず、基板12の表示領域上に陽極13をパターン形成し、各陽極13の中央を露出する開口部を備えた絶縁膜30を形成した。次いで、表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、実施例1と同様の手順にて、正孔注入層14aおよび正孔輸送層14bを形成した。
【0305】
次に、赤色発光素子の形成エリア(赤色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、赤色エリアのみに実施例1と同様に発光層14c(14c-R)を成膜した。また、緑色発光素子の形成エリア(緑色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、緑色エリアの発光層14c-Gを成膜した。
【0306】
その後、再び表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、実施例1と同様に光増感層14dを兼ねた青色の発光層14c-B、電子輸送層14e、さらには陰極15をこの順に成膜した。
【0307】
以上により、赤色エリアには本発明構成を適用した実施例1の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0308】
<実施例71〜73>
実施例46,58,63と同様の第2正孔輸送層に各一般式(2)〜(4)の材料を用いた有機電界発光素子を赤色発光素子として用いた各表示装置を、次のようにして作製した(図6参照)。
【0309】
先ず、基板12の表示領域上に陽極13をパターン形成し、各陽極13の中央を露出する開口部を備えた絶縁膜30を形成した。次いで、表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、正孔注入層14aを形成した後、実施例71では実施例46と同様の正孔輸送層14bを形成し、実施例72では実施例58と同様の正孔輸送層14bを形成し、実施例73では実施例63と同様の正孔輸送層14bを形成した。
【0310】
次に、赤色発光素子の形成エリア(赤色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、赤色エリアのみに実施例1と同様に発光層14c(14c-R)を成膜した。また、緑色発光素子の形成エリア(緑色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、緑色エリアの発光層14c-Gを成膜した。
【0311】
その後、再び表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、実施例1と同様に光増感層14dを兼ねた青色の発光層14c-B、電子輸送層14e、さらには陰極15をこの順に成膜した。
【0312】
以上により、実施例71においては赤色エリアに実施例46の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0313】
また、実施例72においては赤色エリアに本発明構成を適用した実施例58の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0314】
さらに、実施例73においては赤色エリアに本発明構成を適用した実施例63の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0315】
これらの表示装置を用いて特定の固定画面を表示させ、赤色の焼き付きを評価したところ、実施例71〜73の表示装置ともに焼き付きは確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0316】
【図1】実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図2】本発明の有機電界発光素子の他の例を示す断面図である。
【図3】実施形態の表示装置の回路構成の一例を示す図である。
【図4】実施形態の表示装置における主要部の断面構成の第1の例を示す図である。
【図5】実施形態の表示装置における主要部の断面構成の第2の例を示す図である。
【図6】実施形態の表示装置における主要部の断面構成の第3の例を示す図である。
【図7】本発明が適用される封止された構成のモジュール形状の表示装置を示す構成図である。
【図8】本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。
【図9】本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図10】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図11】本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。
【図12】本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【符号の説明】
【0317】
10…表示装置、11,11’…有機電界発光素子、11R…赤色発光素子、11B…青色発光素子(青色発光の有機電界発光素子)、11G…緑色発光素子(緑色発光の有機電界発光素子)、12…基板、13…陽極、14…有機層、14b…正孔輸送層、14b-1…第1正孔輸送層、14b-2…第2正孔輸送層、14c…発光層、14d…光増感層、15…陰極
【技術分野】
【0001】
有機電界発光素子および表示装置に関し、特には赤色発光の有機電界発光素子、およびこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で高効率のフラットパネル型表示装置として、有機電界発光素子(いわゆる有機EL素子)を用いた表示装置が注目されている。
【0003】
このような表示装置を構成する有機電界発光素子は、例えばガラス等からなる透明な基板上に設けられており、基板側から順にITO(Indium Tin Oxide:透明電極)からなる陽極、有機層、および陰極を積層してなる。有機層は、陽極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層および電子輸送性の発光層を順次積層させた構成を有している。このように構成された有機電界発光素子では、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層において再結合し、この再結合の際に生じる光が陽極を介して基板側から取り出される。
【0004】
有機電界発光素子としては、このような構成を有するものの他に、基板側から順に、陰極、有機層、陽極を順次積層した構成、さらには上方に位置する電極(陰極または陽極としての上部電極)を透明材料で構成することによって、基板と反対側の上部電極側から光を取り出すようにした、いわゆる上面発光型もある。特に、基板上に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を設けてなるアクティブマトリックス型の表示装置においては、TFTが形成された基板上に上面発光型の有機電界発光素子を設けた、いわゆるTop Emission構造とすることが、発光部の開口率を向上させる上で有利になる。
【0005】
ところで、有機ELディスプレイの実用化を考慮した場合、有機電界発光素子の開口を広げて光取り出しを高めることのほかに、有機電界発光素子の発光効率を向上させる必要性がある。そこで、発光効率を高める様々な材料および層構成の検討がなされてきた。
【0006】
例えば赤色発光素子であれば、従来から知られているDCJTBに代表されるピラン誘導体に変わる新たな赤色発光材料として、ナフタセン誘導体(ルブレン誘導体を含む)をドーパント材料として用いる構成が提案されている(例えば下記特許文献1,2参照)。
【0007】
また特許文献2には、ルブレン誘導体をドーパント材料として用いた第1の発光層に、ペニレン誘導体とアントラセン誘導体とを含む第2の発光層を積層させることにより、白色発光を得る構成も提案されている。
【0008】
さらに青色発光層に隣接された電子輸送層や正孔輸送層に、ルブレン誘導体をドープさせることにより、白色発光を得る構成も提案されている(下記特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】2000−26334号公報
【特許文献2】2003−55652号公報(特に第0353〜0357段落、表11参照)
【特許文献3】2004−134396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、以上のような表示装置においてフルカラー表示を行う上では、三原色(赤色、緑色、青色)に発光する各色の有機電界発光素子を配列して用いるか、または白色発光の有機電界発光素子と各色のカラーフィルタまたは色変換層とを組み合わせて用いることになる。このうち、発光光の取り出し効率の観点からは、各色に発光する有機電界発光素子を用いる構成が有利である。
【0011】
しかしながら、上述したナフタセン誘導体(ルブレン誘導体)を用いた赤色発光素子の発光は、電流効率は6.7cd/A程度であり、発光色は赤色発光というよりはむしろ橙色発光であった。
【0012】
そこで本発明は、発光効率および色純度が十分に良好な赤色発光の有機電界発光素子、およびこれを用いてなる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するための本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を備えた有機層を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子である。この発光層は、赤色の発光性ゲスト材料と共に、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物からなるホスト材料を含有している。また、青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層が、この発光層に隣接して設けられている。
【0014】
このような構成の有機電界発光素子においては、以降の実施例で詳細に説明するように、光増感層を設けていない構成と比較して電流効率が上昇し、しかも発光材料を含有する光増感層に影響されずに発光層で発生した赤色の発光光のみが素子から取り出されることがわかった。
【0015】
また、本発明は、上述した構成の有機電界発光素子を基板上に複数配列して設けた表示装置でもある。
【0016】
このような表示装置では、上述したように、輝度および色純度が高い有機電界発光素子を赤色発光素子として用いた表示装置が構成されるため、他の緑色発光素子および青色発光素子と組み合わせることで、色再現性の高いフルカラー表示が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の有機電界発光素子によれば、色純度を保ちつつ赤色の発光光の発光効率の向上を図ることが可能になる。
【0018】
そして、本発明の表示装置によれば、上述したように色純度および発光効率の高い赤色発光素子となる有機電界発光素子と共に、緑色発光素子および青色発光素子を1組にして画素を構成することにより、色再現性の高いフルカラー表示が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、有機電界発光素子およびこれを用いた表示装置の順に図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
≪有機電界発光素子−1≫
図1は、本発明の有機電界発光素子を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子11は、基板12上に、陽極13、有機層14、および陰極15をこの順に積層してなる。このうち有機層14は、陽極13側から順に、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、光増感層14d、および電子輸送層14eを積層してなるものである。
【0021】
本発明においては、発光層14cの構成と、これに接して光増感層14dを設けた構成とに特徴がある。以下においては、このような積層構成の有機電界発光素子11が、基板12と反対側から光を取り出す上面発光型の素子として構成されていることとし、この場合の各層の詳細を基板12側から順に説明する。
【0022】
<基板>
基板12は、その一主面側に有機電界発光素子11が配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられるこの中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。
【0023】
<陽極>
陽極13には、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の金属およびその合金さらにはこれらの金属や合金の酸化物等、または、酸化スズ(SnO2)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等が、単独または混在させた状態で用いられる。
【0024】
また、陽極13は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層構造であっても良い。
【0025】
第1層は、アルミニウムを主成分とする合金からなる。その副成分は、主成分であるアルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも一つ含むものでも良い。このような副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくないが、これらの元素を含むことで陽極の安定性が向上し、かつ陽極のホール注入性も満足する。また副成分として、ランタノイド系列元素の他に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの元素を含んでも良い。
【0026】
第1層を構成するアルミニウム合金層における副成分の含有量は、例えば、アルミニウムを安定化させるNdやNi、Ti等であれば、合計で約10wt%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム合金層においての反射率を維持しつつ、有機電界発光素子の製造プロセスにおいてアルミニウム合金層を安定的に保ち、さらに加工精度および化学的安定性も得ることができる。また、陽極13の導電性および基板12との密着性も改善することが出来る。
【0027】
また第2層は、アルミニウム合金の酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、およびタンタルの酸化物の少なくとも一つからなる層を例示できる。ここで、例えば、第2層が副成分としてランタノイド系元素を含むアルミニウム合金の酸化物層(自然酸化膜を含む)である場合、ランタノイド系元素の酸化物の透過率が高いため、これを含む第2層の透過率が良好となる。このため、第1層の表面において、高反射率を維持することが可能である。さらに、第2層は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電層であっても良い。これらの導電層は、陽極13の電子注入特性を改善することができる。
【0028】
また陽極13は、基板11と接する側に、陽極13と基板12との間の密着性を向上させるための導電層を設けて良い。このような導電層としては、ITOやIZOなどの透明導電層が挙げられる。
【0029】
そして、この有機電界発光素子11を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、陽極13は画素毎にパターニングされ、基板12に設けられた駆動用の薄膜トランジスタに接続された状態で設けられている。またこの場合、陽極13の上には、ここでの図示を省略したが絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から各画素の陽極13の表面が露出されるように構成されていることとする。
【0030】
<正孔注入層>
正孔注入層14aは、発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層14aの材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、フラーレン、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0031】
また、上記正孔注入層14aのさらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、C60、C70、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
<正孔輸送層>
正孔輸送層14bは、正孔注入層14aと同様に発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔輸送層14bは、上述した正孔注入層14aと同様の材料の中から選択した材料を用いて構成される。
【0033】
<発光層>
発光層14cは、陽極13と陰極15とに対する電圧印加時に、陽極13側から注入された正孔と、陰極15側から注入された電子とが再結合する領域である。本実施形態においては、この発光層14cの構成が一つの特徴である。つまり発光層14cは、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物をホスト材料として用いたもので、このホスト材料に対して赤色の発光性ゲスト材料がドーピングされており、赤色の発光光を発生する。
【0034】
このうち、発光層14cを構成するホスト材料は、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物であり、ピレン,ベンゾピレン,クリセン,ナフタセン,ベンゾナフタセン,ジベンゾナフタセン,ペリレン,コロネンから選択されることとする。
【0035】
また発光層14cを構成するホスト材料は、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物であり、ピレン,ベンゾピレン,クリセン,ナフタセン,ベンゾナフタセン,ジベンゾナフタセン,ペリレン,コロネンから選択されることとする。
【0036】
なかでも、下記一般式(1)に示すナフタセン誘導体をホスト材料として用いることが好ましい。
【0037】
【化1】
【0038】
ただし、一般式(1)中において、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0039】
一般式(1)におけるR1〜R8が示すアリール基は、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基,6−クリセニル基,2−フルオランテニル基,3−フルオランテニル基,2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0040】
また,R1〜R8が示す複素環基は、ヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員環または6員環の芳香族複素環基、炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられる。また、芳香族複素環基および縮合多環芳香複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾール基が挙げられる。代表的なものとしては,1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる。
【0041】
R1〜R8が示すアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0042】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していてもよい。
【0043】
また特に、上記一般式(1)で表されるナフタセン誘導体は、以下の一般式(1a)で表されるルブレン誘導体であることが好ましい。
【0044】
【化1−1】
【0045】
一般式(1a)中、R11〜R15、R21〜R25、R31〜R35、R41〜R45は、それぞれ独立に水素原子、アリール基、複素環基、アミノ基、アリールオキシ基、アルキル基またはアルケニル基を示す。ただし、R11〜R15、R21〜R25、R31〜R35、R41〜R45は、それぞれ同一であることが好ましい。
【0046】
また一般式(1a)中R5〜R8は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアルキル基またはアルケニル基であることとする。
【0047】
一般式(1a)におけるアリール基、複素環基、およびアミノ基の好ましい態様は、一般式(1)のR1〜R8と同様であって良い。尚、R11〜R15、R21〜R25、R31〜R35、R41〜R45がアミノ基である場合、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはアラルキルアミノ基であることとする。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族や1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基が挙げられる。
【0048】
発光層14cのホスト材料として好適に用いられるナフタセン誘導体のより具体的な他の例としては、一般式(1a)のルブレン誘導体の一つである下記化合物(1)-1のルブレンが挙げられるが、この他にも以下の化合物(1)-2〜(1)-4が例示される。
【0049】
【化1−2】
【0050】
また、発光層14cを構成する赤色の発光性ゲスト材料としては、次に説明する一般式(5)のペリレン誘導体、一般式(6)のジケトピロロピロール誘導体、一般式(7)のピロメテン錯体、一般式(8)のピラン誘導体、または一般式(9)のスチリル誘導体が用いられる。以下、赤色の発光性ゲスト材料の詳細を説明する。
【0051】
−ペリレン誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(5)に示す化合物(ジインデノ[1,2,3-cd]ペリレン誘導体)が用いられる。
【0052】
【化5】
【0053】
ただし、一般式(5)中において、X1〜X20はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0054】
一般式(5)におけるX1〜X20が示すアリール基は、例えば,フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基,6−クリセニル基,2−フルオランテニル基,3−フルオランテニル基,2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0055】
またX1〜X20示す複素環基は、ヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員環または6員環の芳香族複素環基、炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられる。これらの芳香族複素環基および縮合多環芳香複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾール基が挙げられる。代表的なものとしては,1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる。
【0056】
X1〜X20が示すアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0057】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良い。
【0058】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるジインデノ[1,2,3-cd]ペリレン誘導体の具体例として、以下の化合物(5)-1〜(5)-8が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0059】
【化5−1】
【0060】
−ジケトピロロピロール誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(6)に示す化合物(ジケトピロロピロール誘導体)が用いられる。
【0061】
【化6】
【0062】
ただし、一般式(6)中において、Y1およびY2は、それぞれ独立に酸素原子、または置換もしくは未置換のイミノ基を表す。また、Y3〜Y8は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0063】
また一般式(6)中において、Ar1およびAr2は、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基より選ばれる2価の基を示す。
【0064】
尚、一般式(6)における、Y3〜Y8が示す置換あるいは無置換のアリール基、Y3〜Y8が示す複素環基、さらにはY3〜Y8が示すアミノ基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。また、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良いことも同様である。
【0065】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるジケトピロロピロール誘導体の具体例として、以下の化合物(6)-1〜(6)-14が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化6−1】
【0067】
【化6−2】
【0068】
−ピロメテン錯体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(7)に示す化合物(ピロメテン錯体)が用いられる。
【0069】
【化7】
【0070】
ただし、一般式(7)中において、Z1〜Z9はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0071】
尚、一般式(7)における、Z1〜Z9が示す置換あるいは無置換のアリール基、Z1〜Z9が示す複素環基、およびZ1〜Z9が示すアミノ基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。また、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良いことも同様である。
【0072】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるピロメテン錯体の具体例として、以下の化合物(7)-1〜(7)-69が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化7−1】
【0074】
【化7−2】
【0075】
【化7−3】
【0076】
【化7−4】
【0077】
【化7−5】
【0078】
【化7−6】
【0079】
【化7−7】
【0080】
【化7−8】
【0081】
【化7−9】
【0082】
【化7−10】
【0083】
−ピラン誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(8)に示す化合物(ピラン誘導体)が用いられる。
【0084】
【化8】
【0085】
ただし、一般式(8)中において、L1〜L6はそれぞれ独立に、水素、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。また,L1とL4またはL2とL3は炭化水素を通じて環状構造をとってもよい。
【0086】
尚、一般式(8)における、L1〜L6が示す置換あるいは無置換のアリール基、L1〜L6が示す複素環基、およびL1〜L6が示すアミノ基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。L1とL4またはL2とL3は炭化水素を通じて環状構造をとっても良い他、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良い。
【0087】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるピラン誘導体の具体例として、以下の化合物(8)-1〜(8)-7が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0088】
【化8−1】
【0089】
−スチリル誘導体−
赤色の発光性ゲスト材料として、例えば下記一般式(9)に示す化合物(スチリル誘導体)が用いられる。
【0090】
【化9】
【0091】
ただし、一般式(9)中において、T1〜T3は炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基を示す。また、T4は、T2およびT3と環状構造を有してもよい置換あるいは無置換のフェニレン部位を示す。
【0092】
一般式(9)における、T1〜T3が示す置換あるいは無置換のアリール基、T1〜T3が示す複素環基は、一般式(5)のペリレン誘導体で示した基と同様である。
【0093】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していても良い。この場合に、さらにT1〜T4に置換される基としては、例えば、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。その他にも、アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0094】
発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として好適に用いられるスチリル誘導体の具体例として、以下の化合物(9)-1〜(9)-35が例示される。ただし本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0095】
【化9−1】
【0096】
【化9−2】
【0097】
【化9−3】
【0098】
【化9−4】
【0099】
尚、以上説明したような、発光層14cにおける赤色の発光性ゲスト材料として用いる一般式(5)のペリレン誘導体、一般式(6)のジケトピロロピロール誘導体、一般式(7)のピロメテン錯体、一般式(8)のピラン誘導体、または一般式(9)のスチリル誘導体は、分子量が2000以下のものが好ましく、1500以下がさらに好ましく、1000以下が特に好ましい。この理由として、分子量が大きいと、蒸着によって素子を作成しようとした場合の蒸着性が悪くなるといった懸念が考えられるためである。
【0100】
<光増感層>
光増感層14dは、発光層14cに対してエネルギーを移動させ、発光層14cにおける発光効率を向上させるための層である。本実施形態においては、このような光増感層14dを、発光層14cに接して設けたことがもう1つの特徴である。このような光増感層14dは、青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料が、ホスト材料に対してドーピングされたものである。
【0101】
このうち発光性ゲスト材料としては、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、さらには金属錯体等の有機発光材料が用いられる。
【0102】
ここで青色の発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約400nm〜490nmの範囲にピークを有する化合物を示す。このよう化合物として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体などの有機物質が用いられる。なかでも、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体から選択されることが好ましい。
【0103】
また光増感層14dのホスト材料は、炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素の誘導体、もしくはその連結からなる有機材料である。その具体的な例としては、例えばナフタレン誘導体、インデン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、トリフェニレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ピセン誘導体、フルオランテン誘導体、アセフェナントリレン誘導体、ペンタフェン誘導体、ペンタセン誘導体、コロネン誘導体、ブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体などを用いることができる。
【0104】
以上のホスト材料は、発光性ゲスト材料毎に最も発光効率が高くなるホスト材料が選択して用いられることとする。
【0105】
尚、このような構成の光増感層14dは、発光層14cに対して接して設けられていることが重要である。このため、この光増感層14dは、上述したように発光層14cと陰極15との間に設けられることに限定されず、発光層14cと陽極13との間において発光層14cに接して設けられていても良い。
【0106】
<電子輸送層>
電子輸送層14eは、陰極15から注入される電子を発光層14cに輸送するためのものである。電子輸送層14eの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3 )、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0107】
尚、有機層14は、このような層構造に限定されることはなく、少なくとも発光層14cと、これに接して光増感層14dが設けられていれば良く、その他必要に応じた積層構造を選択することができる。
【0108】
また、発光層14cは、正孔輸送性の発光層、電子輸送性の発光層、あるいは両電荷輸送性の発光層として有機電界発光素子11に設けられていても良い。さらに、以上の有機層14を構成する各層、例えば正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、光増感層14d、および電子輸送層14eは、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
【0109】
<陰極>
次に、このような構成の有機層14上に設けられる陰極15は、例えば、有機層14側から順に第1層15a、第2層15bを積層させた2層構造で構成されている。
【0110】
第1層15aは、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、さらにはこれらの酸化物および複合酸化物の混合物を用いることができる。また、第1層15aは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物および複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物および複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0111】
第2層15bは、例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この第2層15bは、さらに、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層であっても良い。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0112】
以上のような陰極15は、この有機電界発光素子11を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陰極15は、有機層14とここでの図示を省略した上述の絶縁膜とによって、陽極13と絶縁された状態で基板12上にベタ膜状に形成され、各画素の共通電極として用いられる。
【0113】
尚、陰極15は上記のような積層構造に限定されることはなく、作製されるデバイスの構造に応じて最適な組み合わせ、積層構造を取れば良いことは言うまでもない。例えば、上記実施形態の陰極15の構成は、電極各層の機能分離、すなわち有機層14への電子注入を促進させる無機層(第1層15a)と、電極を司る無機層(第2層15b)とを分離した積層構造である。しかしながら、有機層14への電子注入を促進させる無機層が、電極を司る無機層を兼ねても良く、これらの層を単層構造として構成しても良い。また、この単層構造上にITOなどの透明電極を形成した積層構造としても良い。
【0114】
そして上記した構成の有機電界発光素子11に印加する電流は、通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子が破壊されない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
【0115】
また、この有機電界発光素子11が、キャビティ構造となっている場合、陰極15が半透過半反射材料を用いて構成される。そして、陽極13側の光反射面と、陰極15側の光反射面との間で多重干渉させた発光光が陰極15側から取り出される。この場合、陽極13側の光反射面と陰極15側の光反射面との間の光学的距離は、取り出したい光の波長によって規定され、この光学的距離を満たすように各層の膜厚が設定されていることとする。そして、このような上面発光型の有機電界発光素子においては、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能である。
【0116】
さらに、ここでの図示は省略したが、このような構成の有機電界発光素子11は、大気中の水分や酸素等による有機材料の劣化を防止するため保護層(パッシベーション層)で覆われた状態で用いることが好ましい。保護膜には、窒化珪素(代表的には、Si3N4)、酸化珪素(代表的には、SiO2)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy:組成比X>Y)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy:組成比X>Y)膜、またはDLC(Diamond like Carbon)のような炭素を主成分とする薄膜、CN(Carbon Nanotube)膜等が用いられる。これらの膜は、単層または積層させた構成とすることが好ましい。なかでも、窒化物からなる保護層は膜質が緻密であり、有機電界発光素子11に悪影響を及ぼす水分、酸素、その他不純物に対して極めて高いブロッキング効果を有するため好ましく用いられる。
【0117】
尚、以上の実施形態においては、有機電界発光素子が上面発光型である場合を例示して本発明を詳細に説明した。しかしながら、本発明の有機電界発光素子は、上面発光型への適用に限定されるものではなく、陽極と陰極との間に少なくとも発光層を有する有機層を挟持してなる構成に広く適用可能である。したがって、基板側から順に、陰極、有機層、陽極を順次積層した構成のものや、基板側に位置する電極(陰極または陽極としての下部電極)を透明材料で構成し、基板と反対側に位置する電極(陰極または陽極としての上部電極)を反射材料で構成することによって、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型と同様に対応下さい。の有機電界発光素子にも適用可能である。
【0118】
さらに、本発明の有機電界発光素子とは、一対の電極(陽極と陰極)、およびその電極間に有機層が挟持されることによって形成される素子であれば良い。このため、一対の電極および有機層のみで構成されたものに限定されることはなく、本発明の効果を損なわない範囲で他の構成要素(例えば、無機化合物層や無機成分)が共存することを排除するものではない。
【0119】
以上のように構成された有機電界発光素子11では、以降の実施例で詳細に説明するように、光増感層14dを設けていない構成の素子と比較して、電流効率が上昇することが確認された。
【0120】
しかも、赤色の発光層14cに対して、青色に発光する光増感層14dを積層させた構造をとるものの、電界を印加しても光増感層14dからの発光による混色は生じず、赤色の発光を得ることができる。これは、光増感層14dにおいては、赤色の発光層14cを貫いてきた正孔と電子輸送層14eを介在して注入された電子とが再結合しているものの、その再結合によって放出されるエネルギーは、隣接する赤色の発光層14cを構成するホスト材料の電子を励起させるように作用し、赤色の発光層14cにおいての発光に寄与しているためであると考えられる。尚、このような現象は、以下の実施例に対する比較例として示すように、光増感層14dをホスト材料のみによって構成した場合には、目的である赤色の発光層が殆ど発光しなくなる現象から類推することが出来る。
【0121】
以上から、上述した構成の有機電界発光素子11によれば、色純度を保ちつつ赤色の発光光の発光効率の向上を図ることが可能である。
【0122】
また、このような発光効率の大幅な改善により、有機電界発光素子11の輝度寿命の向上と消費電力の低減を達成可能である。
【0123】
≪有機電界発光素子−2≫
図2は、本発明の有機電界発光素子の他の例を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子11’が、図1を用いて説明した有機電界発光素子(11)と異なるところは、正孔輸送層14bの構成にあり、他の構成は同様であることとする。次に、有機電界発光素子11’における正孔輸送層14bの構成を説明する。
【0124】
<正孔輸送層>
正孔輸送層14bは、正孔注入層14aと同様に発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。ここでは特に、正孔輸送層14bが、異なる材料からなる積層構造からなり、少なくとも、正孔注入層14b側の第1正孔輸送層14b-1と、発光層14cに隣接する第2正孔輸送層14b-2との積層構造となっている。
【0125】
このうち、第1正孔輸送層14b-1は、上述した正孔注入層14aと同様の材料の中から選択した材料を用いて構成される。この第1正孔輸送層14b-1は、これ自体が積層構造であっても良い。
【0126】
また第2正孔輸送層14b-2は、発光層14cに接して設けられる層であり、第1正孔輸送層14b-1を構成する材料とは異なる材料を用いて構成される。この第2正孔輸送層14b-2を構成する材料としては、次に説明する一般式(2)のトリアリールアミン誘導体、一般式(3)のフルオレン誘導体、一般式(4)のカルバゾール誘導体が用いられる。以下第2正孔輸送層14b-2を構成する材料の詳細を説明する。
【0127】
−トリアリールアミン誘導体−
第2正孔輸送層14b-2を構成する材料として、例えば下記一般式(2)に示すトリアリールアミン誘導体が用いられる。
【0128】
【化2】
【0129】
ただし一般式(2)中におけるA1〜A3は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を示し、それぞれが無置換であっても置換基を有していても良い。またA1〜A3は、それぞれ複数の環が共役結合によって連結する伸展構造であっても良いが、総素数30以下であることが好ましい。またこれらのアリール基または複素環基に結合される置換基としては、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基が挙げられる。
【0130】
このようなトリアリールアミン誘導体の具体例として、以下の化合物(2)-1〜(2)-48が例示される。
【0131】
【化2−1】
【0132】
【化2−2】
【0133】
【化2−3】
【0134】
−フルオレン誘導体−
第2正孔輸送層14b-2を構成する材料として、例えば下記一般式(3)に示すピロリジル骨格を含むフルオレン誘導体が用いられる。
【化3】
【0135】
ただし一般式(3)中において、ピロリジル骨格に結合されるA1〜A4、およびフルオレン骨格に結合されるZ1およびZ2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基を示す。このうち、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、およびアルコキシル基は、さらに他の置換基で置換されていても良く、炭素数20以下である。またアミノ基は、さらに他の置換基で置換されていても良く、炭素数30以下である。
【0136】
またピロリジル骨格に結合されるA1〜A4は、互いに隣接する部位で環状構造を構成しても良い。
【0137】
ここで、ピロリジル骨格部の具体例を以下に示す。
【0138】
【化3−1】
【0139】
さらに一般式(3)中におけるAr1およびAr2は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を示す。またこれらのアリール基または複素環基は、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、あるいはアリール基で単置換または多置換されていても良いが、総炭素数6〜20のアリール基(炭素環式芳香族基)、または総炭素数3〜20の複素環(複素環式芳香族基)であることとする。
【0140】
好ましいAr1およびAr2としては、未置換、もしくは、ハロゲン、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、あるいは炭素数6〜10のアリール基で単置換または多置換されていてもよい総炭素数6〜20のアリール基である。
【0141】
さらに好ましいAr1およびAr2としては、未置換、もしくは、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいは炭素数6〜10のアリール基で単置換あるいは多置換されていてもよい総炭素数6〜16のアリール基である。
【0142】
さらに一般式(3)中におけるB1およびB2は、水素、アルキル基、アリール基、または複素環基を示す。このうちアルキル基は、直鎖、分岐、または環状であって良い。また、アリール基は、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアリール基であって良い。さらに複素環基は、炭素数20以下の複素環基であって良い。
【0143】
以上一般式(3)を構成する置換または未置換のアリール基の具体例としては、具体例としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
さらに一般式(3)を構成するアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
以上のようなフルオレン誘導体の具体例として、以下の化合物(3)-1〜(3)-20が例示される。
【0146】
【化3−2】
【0147】
【化3−3】
【0148】
−カルバゾール誘導体−
第2正孔輸送層14b-2を構成する材料として、例えば下記一般式(4)に示すカルバゾール誘導体が用いられる。
【0149】
【化4】
【0150】
ただし一般式(4)中において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、アリール基または複素環基を示し、これらは置換基を有しても良い。
【0151】
Ar1,Ar2のアリール基としては、例えばベンゼン環の単環または2〜5縮合環からなる基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。また複素環基としては、例えば5員環または6員環の単環、または2〜5縮合環が挙げられ、具体的にはピリジル基、トリアジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、チエニル基などが挙げられる。
【0152】
これらのアリール基または複素環基が有しうる置換基としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基)、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルケニル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素数6〜10のアリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えばベンジルオキシ基等の、炭素数7〜13のアリールオキシ基)、2級または3級アミノ基(例えばジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;メチルフェニルアミノ基等の、炭素数7〜20のアリールアルキルアミノ基、など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、芳香族炭化水素環基(例えばフェニル基、ナフチル基等の、炭素数6〜10の芳香族炭化水素環基)、および芳香族複素環基(例えばチエニル基、ピリジル基等の、5員環または6員環の単環または2縮合環からなる芳香族複素環基)、等が挙げられる。
【0153】
これらのうち、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アリール基(芳香族炭化水素環基)、複素環基(芳香族複素環基)が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリールアミノ基が特に好ましい。
【0154】
Ar1およびAr2が、例えばターフェニル基などのように、2個以上の直接結合を介して連なった、3個以上の芳香族基を含む構造である場合、−NAr1Ar2で表されるアリールアミノ基が有する正孔輸送能を低下させる虞がある。したがって、本発明に係る化合物の特性を損なわないためには、Ar1およびAr2はいずれも、3個以上のアリール基または複素環基が、直接結合していない基であるか、または短い鎖状連結基を介して直列で結合していない基であることが重要である。
【0155】
また一般式(4)中において、R1〜R8は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリール基、または複素環基を示し、隣接する部位で環状構造を構成しても良い。また可能であれば、さらに他の置換基で置換されていても良い。
【0156】
R1〜R8の具体例は、ハロゲン(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基)、アラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基等の、炭素数7〜13のアラルキル基)、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基等の、炭素数2〜7の直鎖または分岐のアルケニル基)、シアノ基、アミノ基、特に3級アミノ基(例えばジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;メチルフェニルアミノ基等の、炭素数7〜20のアリールアルキルアミノ基、など)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状の炭化水素基部分を含むアシル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数2〜7の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、カルボキシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ベンジルオキシ基等の、炭素数6〜10のアリールオキシ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基)、水酸基、アミド基(例えば、メチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基等の、炭素数2〜7のアルキルアミド基;ベンジルアミド基、ジベンジルアミド基等のアリールアミド基、など)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等の、ベンゼン環の単環または2〜4縮合環からなる芳香族炭化水素環基)、または複素環基(例えばカルバゾリル基、ピリジル基、トリアジル基、ピラジル基、キノキサリル基、チエニル基等の、5員環または6員環の、単環または2〜3縮合環からなる芳香族複素環基)である。
【0157】
このようなR1〜R8として、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(芳香族炭化水素環基)、複素環基(芳香族複素環基)が挙げられる。
【0158】
R1〜R8の例として前述した基は、さらに置換基を有していても良い。このような置換基としてはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基)、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルケニル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素数6〜10のアリールオキシ基)、ジアルキルアミノ基(例えばジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基)、芳香族炭化水素環基(例えばフェニル基等の芳香族炭化水素環基)、や芳香族複素環基(例えばチエニル基、ピリジル基等の、5員環または6員環の単環からなる芳香族複素環基)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等の、炭素数1〜6の直鎖、分岐のアシル基)、ハロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基等の、炭素数1〜6の直鎖または分岐のハロアルキル基)、シアノ基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基が、より好ましい。
【0159】
また、R1〜R8は隣り合うもの同士で結合して、N−カルバゾリル基に縮合する環を形成していてもよい。R1ないしR8のうち、隣接する基同士が結合して形成する環は、通常、5〜8員環であるが、好ましくは5員環または員環、より好ましくは6員環である。また、この環は芳香族環であっても非芳香族環であってもよいが、好ましくは芳香族環である。さらに、芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよいが、好ましくは芳香族炭化水素環である。
【0160】
一般式(I)のN−カルバゾリル基において、R1〜R8のいずれかが結合してN−カルバゾリル基に結合する縮合環を形成した例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0161】
【化4−1】
【0162】
上記R1〜R8は、特に好ましくは、すべて水素原子である(つまりN−カルバゾリル基は無置換である)構造であるか、または1つ以上がメチル基、フェニル基、またはメトキシ基のいずれかであり、残りが水素原子である構造である。
【0163】
一般式(4)中のXは、2価の芳香族環基を示す。例えば、アリーレン基または2価の複素環基が1〜4個結合してなる連結基であれば良く、さらに置換されていても良い。
【0164】
このような連結基Xは、−Ar3−、−Ar4−Ar5−、−Ar6−Ar7−Ar8−、または−Ar9−Ar10−Ar11−Ar12−で表される。
【0165】
連結基Xの端部を構成するAr3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar8、Ar9およびAr12は、員数5〜6の芳香族環の単環または2〜5縮合環からなる2価の基を表し、置換されていても良い。
【0166】
このようなAr3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar8、Ar9およびAr12の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、ペリレニレン基などの2価の香族炭化水素環基、ピリジレン基、トリアジレン基、ピラジレン基、キノキサリレン基、チエニレン基、オキサジアゾリレン基などの2価の芳香族複素環基が挙げられる。
【0167】
連結基Xの中間部を構成するAr7、Ar10およびAr11は、Ar3等と同様の上述した2価の芳香族基であるか、または2価のアリールアミノ基であっても良い。ただし、2価のアリールアミノ基である場合、そのアリール基は5または6員環の芳香族基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンチル基、チエニル基、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0168】
連結基Xとして最も小さな連結基であるAr3としては、化合物の剛直性、これに起因する耐熱性を向上させるためには、3縮合環以上であることが好ましい。
【0169】
連結基Xの端部を構成するAr4、Ar5、Ar6、Ar8、Ar9およびAr12としては、単環または2〜3縮合環が好ましく、単環または2縮合環がより好ましい。
【0170】
以上の連結基Xを構成する芳香族環が有しうる置換基としては、例えば、R1〜R8として例示した各基が有しうる置換基として前述したものと同様の基が挙げられる。中でも特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である。
【0171】
以上のようなカルバゾール誘導体の具体例として、以下の化合物(4)-1〜(4)-26が例示される。
【0172】
【化4−2】
【0173】
【化4−3】
【0174】
尚、上述したような第2正孔輸送層14b-2は、上記一般式(2)〜(4)で示される有機材料のうちの複数の化合物で構成されていても良く、これ自体が積層構造であっても良い。
【0175】
尚、以上説明した第2正孔輸送層14b-1を設けた有機電界発光素子11’において、特に一般式(3),(4)を用いて第2正孔輸送層14b-1を構成した場合、光増感層14dには、ホールトラップ性の化合物を含有させることが好ましい。ホールトラップ性の化合物としては、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体が例示され、この中から選択して用いられることとする。
【0176】
以上説明した材料からなる第2正孔輸送層14b-2を備えた有機電界発光素子11’では、以降の実施例で詳細に説明するように、上記一般式(2)〜(4)以外の材料からなる単層構造の正孔輸送層を備えた構成と比較して、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化が大幅に改善されることがわかった。
【0177】
これにより、有機電界発光素子11’は、図1を用いて説明した有機電界発光素子11と同様に、光増感層14dを設けた構成による輝度寿命の向上と消費電力の低減を達成可能であるとともに、さらに正孔輸送層14bの積層構造を特定したことによる輝度寿命の向上と消費電力の低減を達成可能である。
【0178】
≪表示装置の概略構成≫
図3は、実施形態の表示装置10の一例を示す図であり、図3(A)は概略構成図、図3(B)は画素回路の構成図である。ここでは、発光素子として有機電界発光素子11を用いたアクティブマトリックス方式の表示装置10に本発明を適用した実施形態を説明する。
【0179】
図3(A)に示すように、この表示装置10の基板12上には、表示領域12aとその周辺領域12bとが設定されている。表示領域12aは、複数の走査線21と複数の信号線23とが縦横に配線されており、それぞれの交差部に対応して1つの画素aが設けられた画素アレイ部として構成されている。これらの各画素aに、有機電界発光素子11R(11),11G,11Bのうちの1つが設けられている。また周辺領域12bには、走査線21を走査駆動する走査線駆動回路bと、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線23に供給する信号線駆動回路cとが配置されている。
【0180】
図3(B)に示すように、各画素aに設けられる画素回路は、例えば各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bのうちの1つと、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)Tr2、および保持容量Csで構成されている。そして、走査線駆動回路bによる駆動により、書き込みトランジスタTr2を介して信号線23から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bに供給され、この電流値に応じた輝度で有機電界発光素子11R(11),11G,11Bが発光する。
【0181】
尚、以上のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けて画素回路を構成しても良い。また、周辺領域2bには、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路が追加される。
【0182】
≪表示装置の断面構成−1≫
図4には、上記表示装置10の表示領域における主要部の断面構成の第1の例を示す。
【0183】
有機電界発光素子11R(11),11G,11Bが設けられる基板12の表示領域には、ここでの図示を省略したが、上述した画素回路を構成するように駆動トランジスタ、書き込みトランジスタ、走査線、および信号線が設けられ(図3参照)、これらを覆う状態で絶縁膜が設けられている。
【0184】
この絶縁膜で覆われた基板12上に、有機電界発光素子11R(11),11G,11Bが配列形成されている。各有機電界発光素子11R(11)、11G、11Bは、基板12と反対側から光を取り出す上面発光型の素子として構成される。
【0185】
各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bの陽極13は、素子毎にパターン形成されている。各陽極13は、基板12の表面を覆う絶縁膜に形成された接続孔を介して画素回路の駆動トランジスタに接続されている。
【0186】
各陽極13は、その周縁部が絶縁膜30で覆われており、絶縁膜30に設けた開口部分に陽極13の中央部が露出された状態となっている。そして、陽極13の露出部分を覆う状態で、有機層14がパターン形成され、各有機層14を覆う共通層として陰極15が設けられた構成となっている。
【0187】
これらの有機電界発光素子11R(11),11G,11Bのうち、特に赤色発光素子11Rが上記図1を用いて説明した実施形態の有機電界発光素子(11)として構成されている。これに対して、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bは、通常の素子構成であって良い。
【0188】
つまり、赤色発光素子11R(11)において、陽極13上に設けられた有機層14は、例えば陽極13側から順に、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、ホスト材料としてナフタセン誘導体を用いた赤色の発光層14c-R(14c)、青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料をホスト材料にドーピングしてなる光増感層14d、および電子輸送層14eを積層させている。
【0189】
一方、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bにおける有機層は、例えば陽極13側から順に、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、各色の発光層14c-G,14c-B、および電子輸送層14eをこの順に積層させている。
【0190】
尚、赤色発光素子11R(11)における光増感層14dは、青色の発光性ゲスト材料がドーピングされたものであり、例えば青色発光素子11Bにおける青色の発光層14c-Bと同一構成(材料)であって良い。またこの他にも、発光層14c-R,14c-G,14c-B、および光増感層14d以外の各層は、陽極13および陰極15も含めて各有機電界発光素子11R,11G,11Bにおいて同一材料で構成されていて良く、図1を用いて説明した各材料を用いて構成される。
【0191】
そして、以上のように設けられた複数の有機電界発光素子11R(11),11G,11Bは、保護膜で覆われていることとする。尚、この保護膜は、有機電界発光素子11R,11G,11Bが設けられた表示領域の全体を覆って設けられていることとする。
【0192】
ここで、赤色発光素子11R(11)、緑色発光素子11G、および青色発光素子11Bを構成する陽極13〜陰極15までの各層は、真空蒸着法、イオンビーム法(EB法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、スパッタ法、Organic Vapor Phase Deposition(OVPD)法などのドライプロセスによって形成できる。
【0193】
また、有機層であれば、以上の方法に加えてレーザー転写法、スピンコート法、ディッピング法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法などの塗布法、インクジェット法、オフセット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法などの印刷法などのウエットプロセスによる形成も可能であり、各有機層や各部材の性質に応じて、ドライプロセスとウエットプロセスを併用しても構わない。
【0194】
そして、以上のように各有機電界発光素子11R(11),11G,11B毎にパターン形成された有機層14は、例えばマスクを用いた蒸着法や転写法によって形成される。
【0195】
このように構成された第1の例の表示装置10では、赤色発光素子11Rとして、図1を用いて説明した本発明構成の有機電界発光素子(11)を用いている。この赤色発光素子11R(11)は、上述したように赤色の発光色を保ちつつも発光効率が高い。このため、この赤色発光素子11R(11)と共に、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bを組み合わせることで、色表現性の高いフルカラー表示を行うことが可能になる。
【0196】
また、発光効率の高い有機電界発光素子(11)を用いたことにより、表示装置10において輝度寿命を改善できるとともに消費電力を低減させる効果をもたらす。したがって、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能となる。
【0197】
≪表示装置の断面構成−2≫
図5には、表示装置10の表示領域における主要部の断面構成の第2の例を示す。
【0198】
図5に示す第2の例の表示装置10が、図4に示した第1の例と異なるところは、各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bにおいて、発光層14c-R、14c-Gよりも上方の層を共通層として連続形成しているところにあり、それ以外は同様の構成であって良い。この場合、青色の発光層14c-B、電子輸送層14e、および陰極15が共通層として、複数の画素間にわたる連続パターンの形状で設けられている。
【0199】
共通層となる青色の発光層14c-Bは、赤色発光素子11R(11)においては光増感層14dとして設けられることになる。一方、緑色発光素子11Gに設けられた青色の発光層14c-B部分において生じた青色の発光光は、緑色の発光層14c-Gにおいて吸収されて緑色の発光に寄与する。またこの場合、各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bにおいては、有機層の構造を各色の発光光を取り出すキャビティ構造として構成することにより、取り出される発光光の色純度の向上が図られる。
【0200】
このように構成された第2の例の表示装置10では、第1の例と同様の効果が得られる。また特に、青色の発光層14c-B(光増感層14d)から上層の各層を、大口径のエリアマスクを用いて表示領域に対して一括成膜することができる。これにより、表示装置10の製造工程の簡略化を図ることが可能である。
【0201】
≪表示装置の断面構成−3≫
図6には、表示装置10の表示領域における主要部の断面構成の第3の例を示す。
【0202】
図6に示す第3の例の表示装置10では、各有機電界発光素子11R(11),11G,11Bにおいて、陽極13および発光層14c-R、14c-G以外の層を共通層としており、他の構成は第1の例と同様であって良い。つまり、第2の例において共通層とした青色の発光層14c-B(光増感層14d)、電子輸送層14e、および陰極15に加えて、さらに発光層よりも下層の正孔注入層14a、正孔輸送層14bも共通層として用いているのである。
【0203】
このように構成された第3の例の表示装置10であっても、第2の例と同様の効果を得ることができ、第2の例よりもさらに製造工程の簡略化を図ることができる。
【0204】
また、以上の第1の例〜第3の例においては、アクティブマトリックス型の表示装置に本発明を適用した実施形態を説明した。しかしながら、本発明の表示装置は、パッシブマトリックス型の表示装置への適用も可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0205】
以上説明した本発明に係る表示装置は、図7に開示したような、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部である表示領域12aを囲むようにシーリング部31が設けられ、このシーリング部31を接着剤として、透明なガラス等の対向部(封止基板32)に貼り付けられ形成された表示モジュールが該当する。この透明な封止基板32には、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。尚、表示領域12aが形成された表示モジュールとしての基板12には、外部から表示領域12a(画素アレイ部)への信号等を入出力するためのフレキシブルプリント基板33が設けられていても良い。
【0206】
また、上述した表示装置において各赤色発光素子11Rは、図2を用いて説明した有機電界発光素子11’であっても良い。この場合、他の緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bの正孔輸送層も、赤色発光素子11R(11’)と同様の積層構造として良い。
【0207】
赤色発光素子11Rとして、図2を用いて説明した本発明構成の有機電界発光素子(11’)を用いることにより、この赤色発光素子11R(11’)は、上述したように発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化が低く抑えられている。このため、このため、この赤色発光素子11R(11’)と共に、緑色発光素子11Gおよび青色発光素子11Bを組み合わせることで、色表現性の高いフルカラー表示を行うことが可能になると共に、焼き付きが防止された表示が可能になる。
【0208】
また、発光効率の高い有機電界発光素子(11’)を用いたことにより、表示装置10において輝度寿命を改善できるとともに消費電力を低減させる効果をもたらす。したがって、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能となる。
【0209】
≪適用例≫
また以上説明した本発明に係る表示装置は、図8〜図12に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。以下に、本発明が適用される電子機器の一例について説明する。
【0210】
図8は、本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明に係る表示装置を用いることにより作成される。
【0211】
図9は、本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0212】
図10は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0213】
図11は、本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0214】
図12は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【実施例】
【0215】
本発明の具体的な実施例および比較例の有機電界発光素子の製造手順を、図1を参照して説明し、次にこれらの評価結果を説明する。
【0216】
<実施例1〜4>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてペリレン誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(表1参照)。
【0217】
先ず、30mm×30mmのガラス板からなる基板12上に、陽極13として、膜厚が190nmのAg合金(反射層)上に12.5nmのITO透明電極を積層した上面発光用の有機電界発光素子用のセルを作製した。
【0218】
次に、真空蒸着法により、有機層14の正孔注入層14aとして、下記構造式(101)に示されるm−MTDATAよりなる膜を12nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。ただし、m−MTDATAは、4、4'、4”−トリス(フェニル−m−トリルアミノ)トリフェニルアミンである。
【0219】
【化10】
【0220】
次いで、正孔輸送層14bとして、下記構造式(102)に示されるα−NPDよりなる膜を12nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。ただし、α−NPDは、N、N’−ビス(1−ナフチル)−N、N’−ジフェニル[1、1’-ビフェニル]−4、4’―ジアミンである。
【0221】
【化11】
【0222】
次に、正孔輸送層14b上に、膜厚30nmの発光層14cを蒸着成膜した。この際、下記化合物(1)-1のルブレンをホスト材料として用い、これに下記化合物(5)-1に示されるジベンゾ[f,f']ジインデノ[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレン誘導体を赤色の発光性ゲスト材料として相対膜厚比で1%ドーピングした。
【0223】
【化12】
【0224】
このようにして形成された発光層14c上に、膜厚25nmの光増感層14dを蒸着成膜した。この際、下記構造式(103)に示される9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)をホスト材料として用い、これに下記構造式(104)に示されるスチリルアミン誘導体を青色の発光性ゲスト材料としてドーピングした。青色の発光性ゲスト材料は、実施例1〜4において2%、5%、10%、15%の各ドーピング量(相対膜厚比)とした。
【0225】
【化13】
【0226】
次いで、電子輸送層14eとして、下記構造式(105)に示すAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)を10nmの膜厚で蒸着した。
【0227】
【化14】
【0228】
以上のようにして、正孔注入層14a、正孔輸送層14b、発光層14c、光増感層14dおよび電子輸送層14eを順次積層してなる有機層14を形成した後、陰極15の第1層15aとして、LiFよりなる膜を真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度0.01nm/sec.)の膜厚で形成した。最後に、真空蒸着法により、第1層15a上に陰極15の第2層15bとして膜厚10nmのMgAg膜を形成した。
【0229】
以上のようにして、実施例1〜4の有機電界発光素子を作製した。
【0230】
<実施例5〜9>
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例5では相対膜厚比で5%、実施例6〜9では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0231】
【化15】
【0232】
<比較例1>
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0233】
<比較例2>
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0234】
<評価結果>
以上の実施例1〜9および比較例1,2で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、下記表1に示す。
【0235】
【表1】
【0236】
以上の表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜9の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例1,2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2倍近い高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0237】
また、実施例1〜9の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例4〜9の何れの有機電界発光素子においても、発光光の色座標が(0.64,0.34)であった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0238】
<実施例10〜13>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてジケトピロロピロール誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表2参照)。
【表2】
【0239】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(6)-5に示されるジケトピロロピロール誘導体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0240】
【化16】
【0241】
<実施例14〜18>
実施例10〜13で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例14では相対膜厚比で5%、実施例15〜18では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例10〜13と同様に行った。
【0242】
<比較例3>
実施例10〜13で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例10〜13と同様に行った。
【0243】
<比較例4>
実施例10〜13で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例10〜13と同様に行った。
【0244】
<評価結果>
以上の実施例10〜18および比較例3,4で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表2に示した。
【0245】
上記表2に示すように、本発明を適用した実施例10〜18の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例3,4の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2倍近い高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0246】
また、実施例10〜18の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例14〜18の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0247】
<実施例19〜22>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてピロメテン錯体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表3参照)。
【表3】
【0248】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(7)-21に示されるピロメテン錯体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0249】
【化17】
【0250】
<実施例23〜27>
実施例19〜22で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例23では相対膜厚比で5%、実施例24〜27では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例19〜22と同様に行った。
【0251】
<比較例5>
実施例19〜22で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例19〜22と同様に行った。
【0252】
<比較例6>
実施例19〜22で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例19〜22と同様に行った。
【0253】
<評価結果>
以上の実施例19〜27および比較例5,6で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表3に示した。
【0254】
上記表3に示したように、本発明を適用した実施例19〜27の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例5,6の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2.5倍以上の高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0255】
また、実施例19〜27の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例23〜27の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0256】
<実施例28〜31>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてピラン誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表4参照)。
【表4】
【0257】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(8)-2に示されるピラン誘導体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0258】
【化18】
【0259】
<実施例32〜36>
実施例28〜31で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例32では相対膜厚比で5%、実施例33〜36では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例28〜31と同様に行った。
【0260】
<比較例7>
実施例28〜31で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例28〜31と同様に行った。
【0261】
<比較例8>
実施例28〜31で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例28〜31と同様に行った。
【0262】
<評価結果>
以上の実施例28〜36および比較例7,8で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表4に示した。
【0263】
表4に示すように、本発明を適用した実施例28〜36の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例7,8の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が3倍以上の高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0264】
また、実施例28〜36の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例32〜36の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0265】
<実施例37〜40>
発光層における赤色の発光性ゲスト材料としてスチリル誘導体を用いて有機電界発光素子を作製した(下記表5参照)。
【表5】
【0266】
実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おける発光層14cの形成において、赤色の発光性ゲスト材料として、下記化合物(9)-21に示されるスチリル誘導体を相対膜厚比で1%ドーピングした。これ以外は、実施例1〜4と同様に行った。
【0267】
【化19】
【0268】
<実施例41〜45>
実施例37〜40で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料として上記構造式(106)〜構造式(110)に示す材料をそれぞれ用いて光増感層14dを形成した。ゲスト材料のドーピング量は、実施例41では相対膜厚比で5%、実施例42〜45では相対膜厚比で1%とした。これ以外は、実施例37〜40と同様に行った。
【0269】
<比較例9>
実施例37〜40で説明した有機電界発光素子の作製手順における光増感層14dの形成を行わず、代わりにAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる電子輸送層の膜厚を45nmに厚膜化した。これ以外は、実施例37〜40と同様に行った。
【0270】
<比較例10>
実施例37〜40で説明した有機電界発光素子の作製手順おける光増感層14dの形成で、青色の発光性ゲスト材料をドーパントせずにホスト材料のみで光増感層14dを形成した。これ以外は、実施例37〜40と同様に行った。
【0271】
<評価結果>
以上の実施例37〜45および比較例9,10で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。この結果を、上記表5に示した。
【0272】
表5に示すように、本発明を適用した実施例37〜45の有機電界発光素子の何れにおいても、本発明の適用がない比較例9,10の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率が2倍近い高い値を示した。このことは、ホスト材料(ADN)と発光性ゲスト材料とで構成された光増感層14dで再結合されたエネルギーが、発光層14cにおいての光増感(発光量増加)の効果をもたらすことを示している。
【0273】
また、実施例37〜45の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標において赤色発光が確認され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。特に、光増感層14dにドーパントする発光性ゲスト材料の種類を変更した実施例41〜45の何れの有機電界発光素子においても、赤色発光が確認され、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることが確認された。
【0274】
以上説明した各実施例および比較例の評価結果から、赤色の発光層14cを構成するホスト材料およびドーパント材料として公知の有機材料の中から選択された材料を使用し、この発光層14cに隣接させて種々の青色発色性ゲストを含有させた光増感層14dを設けた本発明の構成では、赤色の色純度を維持しつつも、大幅な発光効率(電流効率)の向上を図ることが可能であることが確認された。
【0275】
またこれは、この有機電界発光素子とともに、緑色発光素子および青色発光素子を1組にして画素を構成することにより、色再現性の高いフルカラー表示が可能になることを示している。
【0276】
<実施例46〜57>
図2を用いて説明した有機電界発光素子を作製した。ここでは、実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おいて、次のような積層構造として正孔輸送層14bを形成し、これ以外は実施例1〜4と同様に行った。尚、光増感層14dにおいて構造式(104)からなるゲスト材料のドーピング量は、実施例2と同様の相対膜厚比で5%とした。
【0277】
すなわち正孔輸送層14bの形成においては、先ず第1正孔輸送層14b-1として、先の構造式(102)に示したα−NPDよりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0278】
次いで、第2正孔輸送層14b-2として、実施例46〜実施例57において化合物(2)-1〜(2)-48から選択された12種類の下記化合物よりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0279】
【化20】
【0280】
<評価結果>
以上の実施例46〜57で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。また、焼き付きの指標として電流密度30mA/cm2、Duty75%駆動における100Hr後の輝度減少率を測定した。これらの結果を、下記表6に示す。尚、表6には、正孔輸送層14bが積層構造である実施例46〜57に対して、正孔輸送層14bが単層構造である以外が同様の構成である実施例2の測定結果を合わせて示した。
【0281】
【表6】
【0282】
以上の表6に示すように、一般式(2)の材料を用いた特定の積層構造として正孔輸送層14bが構成された実施例46〜57の有機電界発光素子の何れも、正孔輸送層14bが単層構造で構成された実施例2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率を維持しつつ、かつDuty75%駆動における100Hr後の輝度減少率が少なくなっている。これは、発光層14cにおける正孔と電子との再結合にかかるチャージバランスが整えられ、輝度の時間的な低下を防ぐ効果がもたらされることを示している。
【0283】
また、実施例46〜57の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることも確認された。
【0284】
以上から、一般式(2)の材料を用いた特定の積層構造として本発明を適用して正孔輸送層14bを構成することにより、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化を大幅に改善できることが確認された。
【0285】
<実施例58〜62>
図2を用いて説明した有機電界発光素子を作製した。ここでは、実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おいて、次のような積層構造として正孔輸送層14bを形成し、これ以外は実施例1〜4と同様に行った。尚、光増感層14dにおいて構造式(104)からなるゲスト材料のドーピング量は、実施例2と同様の相対膜厚比で5%とした。
【0286】
すなわち正孔輸送層14bの形成においては、先ず第1正孔輸送層14b-1として、先の構造式(102)に示したα−NPDよりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0287】
次いで、第2正孔輸送層14b-2として、実施例58〜実施例62において化合物(3)-1〜(3)-20から選択された5種類の下記化合物よりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0288】
【化21】
【0289】
<評価結果>
以上の実施例58〜62で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。また、焼き付きの指標として電流密度30mA/cm2、Duty75%駆動における100Hr後の輝度減少率を測定した。これらの結果を、下記表7に示す。尚、表7には、正孔輸送層14bが積層構造である実施例46〜57に対して、正孔輸送層14bが単層構造である以外が同様の構成である実施例2の測定結果を合わせて示した。
【0290】
【表7】
【0291】
以上の表7に示すように、一般式(3)の材料を用いた特定の積層構造として正孔輸送層14bが構成された実施例58〜62の有機電界発光素子の何れも、正孔輸送層14bが単層構造で構成された実施例2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率を維持しつつ、かつDuty75%駆動における100Hr後の輝度減少率が少なくなっている。これは、発光層14cにおける正孔と電子との再結合にかかるチャージバランスが整えられ、輝度の時間的な低下を防ぐ効果がもたらされることを示している。
【0292】
また、実施例58〜62の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることも確認された。
【0293】
以上から、一般式(3)の材料を用いた特定の積層構造として本発明を適用して正孔輸送層14bを構成することにより、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化を大幅に改善できることが確認された。
【0294】
<実施例63〜69>
図2を用いて説明した有機電界発光素子を作製した。ここでは、実施例1〜4で説明した有機電界発光素子の作製手順おいて、正孔輸送層14bを次のような積層構造として形成し、これ以外は実施例1〜4と同様に行った。尚、光増感層14dにおいて構造式(104)からなるゲスト材料のドーピング量は、実施例2と同様の相対膜厚比で5%とした。
【0295】
すなわち正孔輸送層14bの形成においては、先ず第1正孔輸送層14b-1として、先の構造式(102)に示したα−NPDよりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0296】
次いで、第2正孔輸送層14b-2として、実施例63〜実施例69において化合物(4)-1〜(4)-26から選択された7種類の下記化合物よりなる膜を6nmの膜厚(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)で形成した。
【0297】
【化22】
【0298】
<評価結果>
以上の実施例63〜69で作製した各有機電界発光素子について、電流密度10mA/cm2での駆動時における駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)、色座標(x、y)を測定した。また、焼き付きの指標として電流密度30mA/cm2、Duty75%駆動における100Hr後の輝度減少率を測定した。これらの結果を、下記表8に示す。尚、表8には、正孔輸送層14bが積層構造である実施例46〜57に対して、正孔輸送層14bが単層構造である以外が同様の構成である実施例2の測定結果を合わせて示した。
【0299】
【表8】
【0300】
以上の表8に示すように、一般式(4)の材料を用いた特定の積層構造として正孔輸送層14bが構成された実施例63〜69の有機電界発光素子の何れも、正孔輸送層14bが単層構造で構成された実施例2の有機電界発光素子よりも、同程度の駆動電圧で電流効率を維持しつつ、かつDuty75%駆動における100Hr後の輝度減少率が少なくなっている。これは、発光層14cにおける正孔と電子との再結合にかかるチャージバランスが整えられ、輝度の時間的な低下を防ぐ効果がもたらされることを示している。
【0301】
また、実施例63〜69の有機電界発光素子では、ホスト中に青色の発光性ゲストをドーパントした光増感層14dを赤色の発光層14cに積層させたにもかかわらず、発光光の色座標は(0.64,0.34)の赤色の発光が観測され、青色の発光に由来する混色の影響はなかった。このことからすれば、本発明の構成によれば、光増感層14dの発光性ゲスト材料にかかわらず、赤色の発光層14cで発生した赤色の発光が取り出されることも確認された。
【0302】
以上から、一般式(4)の材料を用いた特定の積層構造として本発明を適用して正孔輸送層14bを構成することにより、発光効率および色純度を維持しつつ、輝度寿命の初期劣化を大幅に改善できることが確認された。
【0303】
<実施例70>
実施例1と同様の有機電界発光素子を用いた表示装置を、次のようにして作製した(図6参照)。
【0304】
先ず、基板12の表示領域上に陽極13をパターン形成し、各陽極13の中央を露出する開口部を備えた絶縁膜30を形成した。次いで、表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、実施例1と同様の手順にて、正孔注入層14aおよび正孔輸送層14bを形成した。
【0305】
次に、赤色発光素子の形成エリア(赤色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、赤色エリアのみに実施例1と同様に発光層14c(14c-R)を成膜した。また、緑色発光素子の形成エリア(緑色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、緑色エリアの発光層14c-Gを成膜した。
【0306】
その後、再び表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、実施例1と同様に光増感層14dを兼ねた青色の発光層14c-B、電子輸送層14e、さらには陰極15をこの順に成膜した。
【0307】
以上により、赤色エリアには本発明構成を適用した実施例1の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0308】
<実施例71〜73>
実施例46,58,63と同様の第2正孔輸送層に各一般式(2)〜(4)の材料を用いた有機電界発光素子を赤色発光素子として用いた各表示装置を、次のようにして作製した(図6参照)。
【0309】
先ず、基板12の表示領域上に陽極13をパターン形成し、各陽極13の中央を露出する開口部を備えた絶縁膜30を形成した。次いで、表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、正孔注入層14aを形成した後、実施例71では実施例46と同様の正孔輸送層14bを形成し、実施例72では実施例58と同様の正孔輸送層14bを形成し、実施例73では実施例63と同様の正孔輸送層14bを形成した。
【0310】
次に、赤色発光素子の形成エリア(赤色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、赤色エリアのみに実施例1と同様に発光層14c(14c-R)を成膜した。また、緑色発光素子の形成エリア(緑色エリア)に対応する開口部を備えたストライプ状マスクを用い、緑色エリアの発光層14c-Gを成膜した。
【0311】
その後、再び表示領域全面に対応する開口部を備えた大開口のマスクを用い、実施例1と同様に光増感層14dを兼ねた青色の発光層14c-B、電子輸送層14e、さらには陰極15をこの順に成膜した。
【0312】
以上により、実施例71においては赤色エリアに実施例46の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0313】
また、実施例72においては赤色エリアに本発明構成を適用した実施例58の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0314】
さらに、実施例73においては赤色エリアに本発明構成を適用した実施例63の有機電界発光素子が赤色発光素子として形成され、緑色エリアには緑色発光素子が形成され、青色エリアには青色発光素子が形成された表示装置が得られた。
【0315】
これらの表示装置を用いて特定の固定画面を表示させ、赤色の焼き付きを評価したところ、実施例71〜73の表示装置ともに焼き付きは確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0316】
【図1】実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図2】本発明の有機電界発光素子の他の例を示す断面図である。
【図3】実施形態の表示装置の回路構成の一例を示す図である。
【図4】実施形態の表示装置における主要部の断面構成の第1の例を示す図である。
【図5】実施形態の表示装置における主要部の断面構成の第2の例を示す図である。
【図6】実施形態の表示装置における主要部の断面構成の第3の例を示す図である。
【図7】本発明が適用される封止された構成のモジュール形状の表示装置を示す構成図である。
【図8】本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。
【図9】本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図10】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図11】本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。
【図12】本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【符号の説明】
【0317】
10…表示装置、11,11’…有機電界発光素子、11R…赤色発光素子、11B…青色発光素子(青色発光の有機電界発光素子)、11G…緑色発光素子(緑色発光の有機電界発光素子)、12…基板、13…陽極、14…有機層、14b…正孔輸送層、14b-1…第1正孔輸送層、14b-2…第2正孔輸送層、14c…発光層、14d…光増感層、15…陰極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に発光層を備えた有機層を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子において、
前記発光層は、赤色の発光性ゲスト材料と共に、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物からなるホスト材料を含有し、
青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層が、前記発光層に隣接して設けられた
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層のホスト材料を構成する多環式芳香族炭化水素化合物の母骨格が、ピレン、ベンゾピレン、クリセン、ナフタセン、ベンゾナフタセン、ジベンゾナフタセン、ペリレン、コロネンから選択された
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項3】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層のホスト材料として、下記一般式(1)に示す化合物が用いられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】
ただし、一般式(1)中において、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【請求項4】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記光増感層は、前記発光層に隣接して当該発光層と前記陰極との間に設けられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層で発生した赤色の発光光が、前記陽極と陰極との間の何れかの層間において多重干渉して当該陽極または陰極の一方側から取り出される
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項6】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に含有される赤色の発光性ゲスト材料として、ペリレン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、ピロメテン錯体、ピラン誘導体、またはスチリル誘導体が用いられる
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項7】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に隣接して設けられた正孔輸送層は、異なる材料からなる積層構造からなると共に、前記発光層に隣接する層が下記一般式(2)で示される有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化2】
ただし一般式(2)中におけるA1〜A3は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を示す。
【請求項8】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に隣接して設けられた正孔輸送層は、異なる材料からなる積層構造からなると共に、前記発光層に隣接する層が下記一般式(3)で示される有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化3】
ただし一般式(3)中、
A1〜A4,Z1,およびZ2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基を示し、
A1〜A4は、互いに隣接する部位で環状構造を構成しても良く、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、アリール基または複素環基を示し、
B1およびB2は、水素、アルキル基、アリール基、または複素環基を示す。
【請求項9】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に隣接して設けられた正孔輸送層は、異なる材料からなる積層構造からなると共に、前記発光層に隣接する層が下記一般式(4)で示される有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化4】
ただし一般式(4)中、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、アリール基または複素環基を示し、
R1〜R8は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリール基、または複素環基を示し、隣接する部位で環状構造を構成しても良く、
Xは、2価の芳香族環基を示す。
【請求項10】
陽極と陰極との間に発光層を備えた有機層を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子を基板上に複数形成してなる表示装置において、
前記発光層は、赤色の発光性ゲスト材料と共に、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物からなるホスト材料を含有し、
青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層が、前記発光層に隣接して設けられた
ことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項10記載の表示装置において、
前記有機電界発光素子が、赤色発光素子として複数の画素のうちの一部の画素に設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項11記載の表示装置において、
前記赤色発光素子として設けられた前記有機電界発光素子の光増感層は、前記基板上に設けられた当該赤色発光素子以外の有機電界発光素子における発光層として、複数の画素にわたる連続パターンの形状で設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項11記載の表示装置において、
前記基板上には、前記赤色発光素子と共に、青色発光性の有機電界発光素子および緑色発光性の有機電界発光素子が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項1】
陽極と陰極との間に発光層を備えた有機層を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子において、
前記発光層は、赤色の発光性ゲスト材料と共に、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物からなるホスト材料を含有し、
青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層が、前記発光層に隣接して設けられた
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層のホスト材料を構成する多環式芳香族炭化水素化合物の母骨格が、ピレン、ベンゾピレン、クリセン、ナフタセン、ベンゾナフタセン、ジベンゾナフタセン、ペリレン、コロネンから選択された
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項3】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層のホスト材料として、下記一般式(1)に示す化合物が用いられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】
ただし、一般式(1)中において、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【請求項4】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記光増感層は、前記発光層に隣接して当該発光層と前記陰極との間に設けられている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層で発生した赤色の発光光が、前記陽極と陰極との間の何れかの層間において多重干渉して当該陽極または陰極の一方側から取り出される
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項6】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に含有される赤色の発光性ゲスト材料として、ペリレン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、ピロメテン錯体、ピラン誘導体、またはスチリル誘導体が用いられる
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項7】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に隣接して設けられた正孔輸送層は、異なる材料からなる積層構造からなると共に、前記発光層に隣接する層が下記一般式(2)で示される有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化2】
ただし一般式(2)中におけるA1〜A3は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を示す。
【請求項8】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に隣接して設けられた正孔輸送層は、異なる材料からなる積層構造からなると共に、前記発光層に隣接する層が下記一般式(3)で示される有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化3】
ただし一般式(3)中、
A1〜A4,Z1,およびZ2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボニルエステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基を示し、
A1〜A4は、互いに隣接する部位で環状構造を構成しても良く、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、アリール基または複素環基を示し、
B1およびB2は、水素、アルキル基、アリール基、または複素環基を示す。
【請求項9】
請求項1記載の有機電界発光素子において、
前記発光層に隣接して設けられた正孔輸送層は、異なる材料からなる積層構造からなると共に、前記発光層に隣接する層が下記一般式(4)で示される有機材料を用いて構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【化4】
ただし一般式(4)中、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、アリール基または複素環基を示し、
R1〜R8は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリール基、または複素環基を示し、隣接する部位で環状構造を構成しても良く、
Xは、2価の芳香族環基を示す。
【請求項10】
陽極と陰極との間に発光層を備えた有機層を挟持してなる赤色発光性の有機電界発光素子を基板上に複数形成してなる表示装置において、
前記発光層は、赤色の発光性ゲスト材料と共に、母骨格が環員数4〜7の多環式芳香族炭化水素化合物からなるホスト材料を含有し、
青色領域の発光を生じる発光性ゲスト材料を含有する光増感層が、前記発光層に隣接して設けられた
ことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項10記載の表示装置において、
前記有機電界発光素子が、赤色発光素子として複数の画素のうちの一部の画素に設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項11記載の表示装置において、
前記赤色発光素子として設けられた前記有機電界発光素子の光増感層は、前記基板上に設けられた当該赤色発光素子以外の有機電界発光素子における発光層として、複数の画素にわたる連続パターンの形状で設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項11記載の表示装置において、
前記基板上には、前記赤色発光素子と共に、青色発光性の有機電界発光素子および緑色発光性の有機電界発光素子が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−177145(P2008−177145A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152329(P2007−152329)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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