説明

有機電界発光素子および表示装置

【課題】安価な構成で高発光効率と高信頼性とを両立させることが可能な有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】積層構造からなる陽極41において、発光層53を含む有機層50側に、アルミニウムを主成分とする合金からなる第2陽極層41Cを設ける。これにより、発光層53からの発光光が、高い反射率で反射される。また、この第2陽極層41Cの有機層53とは反対側に、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とすると共に第2陽極層41Cよりも抵抗率が低い第1陽極層41Aを設ける。これにより、例えば陽極41を補助配線14と同一層に形成する場合であっても、陽極41全体の膜厚が小さく抑えられ、陽極41の表面の凹凸化(ラフネス)が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極と陰極との間に発光層を含む有機層を有する有機電界発光素子、およびそのような有機電界発光素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence;EL)を利用した有機電界発光素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に、有機正孔輸送層や有機発光層等を積層させた有機層を設けた積層構造を有している。この有機電界発光素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
図16は、このような有機電界発光素子のうち、いわゆる上面発光型のものの断面構成例を表したものである。この有機電界発光素子101は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)などの駆動回路を有する駆動基板102上に、光反射性の陽極103、有機層104、および光透過性の陰極105がこの順で積層された構成を有している。有機層104は、例えば、陽極103側から順に、正孔輸送層104A、発光層104Bおよび電子輸送層104Cが積層した構成を有している。
【0004】
これにより、駆動回路を含む駆動基板102の反対側(陰極105側)から発光光を取り出せるため、発光部の開口率を向上させるうえで有利となる。この開口率の向上によって、有機電界発光素子に印加する電流密度を低く抑えても、十分な発光輝度が得られるため、寿命特性の向上に繋がることになる。
【0005】
そこで、この有機電界発光素子101においては、基板102側に設けられる陽極103が反射電極として用いられ、陰極105が透明あるいは半透明電極として用いられている。そして、陰極105側から発光光を効率的に取り出すためには、反射率の高い材料で陽極103を構成する必要がある。
【0006】
このような陽極103を構成する材料としては、例えば銀(Ag)または銀を含む合金を用いることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)または白金(Pt)を副成分金属としたアルミニウム(Al)合金を用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。更に、アルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素(例えばネオジム(Nd))を副成分金属としたアルミニウム合金を用いることも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
ここで、アルミニウム(Al)合金を陽極として用いた場合には、耐熱性や耐ヒロック性を補うために、Al以外の例えば希土類元素(Nd)や、高融点金属等を含有する材料が採用可能である。このような高融点金属としては、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W))、シリコン(Si)等が挙げられる。この中でも、より好適には、AlとNdとを含有するAlNd系合金や、AlTa系合金、AlNi系合金(例えばAlCNi合金)またはAlSi系合金を採用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−77681号公報
【特許文献2】特開2003−234193号公報
【特許文献3】特開2006−79836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、有機電界発光素子を用いた表示装置を駆動させる際に、表示部の中心において輝度が低下してしまう問題点があるため、解決策として、補助配線を形成する場合がある。そのような補助配線には、上記理由から低抵抗な材料が求められるため、アルミニウム合金よりもアルミニウムのほうが望ましい。しかしながら、プロセスの簡便化および低コスト化を図るには、陽極を構成する際に、同一層に(同一プロセスで)補助配線を形成することが求められる。
【0010】
ここで、アルミニウム合金はアルミニウムよりも抵抗が高いため、同一の配線幅でアルミニウム合金により形成した補助配線の抵抗を下げるには、補助配線の膜厚を厚くする必要がある。また、補助配線の膜厚が厚くなると、それに伴い、同一プロセスで形成している陽極の膜厚も厚くなる。ところが、陽極の膜厚を厚くすると、陽極表面のラフネスが悪化するため、反射率(発光効率)や信頼性等が低下してしまうことになる。
【0011】
すなわち、陽極としてアルミニウム合金を用いた場合、アルミニウム単体を用いた場合と比べて耐熱性に優れると共に耐ヒロック性を有し、かつアルミニウム単体を用いた場合と同等の高反射率であるという利点がある。その一方で、陽極としてアルミニウム合金を用いた場合、逆に、アルミニウム単体を用いた場合と比べて高抵抗であるという欠点があった。したがって、プロセスの簡便化や低コスト化のために陽極と補助配線とを同一プロセスで形成するような場合には、高発光効率と高信頼性とを両立させるのが困難であった。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、安価な構成で高発光効率と高信頼性とを両立させることが可能な有機電界発光素子、およびそのような有機電界発光素子を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、発光層を含む有機層を備えたものである。また、この陽極は、アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金からなる第1の層と、この第1の層と上記有機層との間に設けられ、アルミニウムを主成分とする合金からなる第2の層とを含む積層構造を有しており、第1の層の抵抗率が第2の層の抵抗率よりも低くなっている。
【0014】
本発明の表示装置は、上記有機電界発光素子を備えたものである。
【0015】
本発明の有機電界発光素子および表示装置では、積層構造からなる陽極において、発光層を含む有機層側に、アルミニウムを主成分とする合金からなる第2の層が設けられていることにより、発光層から発せられた光が高い反射率で反射される。また、この第2の層の有機層とは反対側に、アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とすると共に第2の層よりも抵抗率が低い第1の層が設けられていることにより、例えば陽極を補助配線と同一層に形成する場合であっても、陽極全体の膜厚が小さく抑えられ、陽極表面の凹凸化が軽減される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機電界発光素子および表示装置によれば、陽極が上記第1の層と上記第2の層とを含む積層構造を有するようにしたので、発光層から発せられた光を高い反射率で反射することができると共に、例えば陽極を補助配線と同一層に形成する場合であっても、陽極表面の凹凸化を軽減することができる。よって、安価な構成で高発光効率と高信頼性とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図2】実施の形態の変形例に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図3】図1に示した有機電界発光素子を備えた表示装置の構成例を表す断面図である。
【図4】保護層に対する電喰対策について説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の実施例および比較例に係る有機電界発光素子における特性結果を表す図である。
【図6】本発明の実施例および比較例に係る有機電界発光素子における駆動時間と相対輝度との関係を表す特性図である。
【図7】図6の一部を拡大して表す特性図である。
【図8】実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図9】図8に示したモジュールにおける表示装置の駆動回路の構成を表す平面図である。
【図10】図10に示した画素駆動回路の一例を表す等価回路図である。
【図11】実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図12】実施の形態の表示装置の適用例2の外観を表す斜視図である。
【図13】実施の形態の表示装置の適用例3の外観を表す斜視図である。
【図14】実施の形態の表示装置の適用例4の外観を表す斜視図である。
【図15】実施の形態の表示装置の適用例5の外観を表す斜視図である。
【図16】従来の有機電界発光素子の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(有機電界発光素子の陽極を三層構造とした場合の例)
変形例(有機電界発光素子の陽極を三層構造とした場合の例)
実施例
2.モジュールおよび電子機器への適用例
【0019】
<1.実施の形態>
[有機電界発光素子の構成例(上面発光型の例)]
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機電界発光素子(有機電界発光素子4)の断面構成を表すものである。この有機電界発光素子(有機EL素子)4は、例えばカラーディスプレイなどの表示装置に用いられるものであり、例えば、基板40上に、陽極41と、発光層53を含む有機層50と、陰極61とをこの順で備えている。ここでは、発光層53から発せられる光(以下、発光光という)が陰極31側から取り出される上面発光型(トップエミッション型)の有機電界発光素子の場合について説明する。
【0020】
基板40は、例えば、ガラスなどの透明基板や、シリコン基板や、フィルム状のフレキシブル基板などを含んで構成されている。
【0021】
(陽極41)
陽極41は、基板40側から順に、第1陽極層41A(第1の層)、中間層である保護層41Bおよび第2陽極層41C(第2の層)を積層した三層構造を有している。なお、この陽極41は、可視光(発光層53からの発光光)の実質的な全波長成分を反射できるように形成されていることが好ましい。
【0022】
第1陽極層41Aは、アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金により構成されており、特にアルミニウムにより構成されているのが好ましい。この第1陽極層41Aの抵抗率は、以下の第2陽極層41Aの抵抗率よりも低くなっている。
【0023】
第2陽極層41Cは、アルミニウムを主成分とする合金により構成されており、この第2陽極層41Cの合金の副成分は、その合金の主成分よりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも1つ含んでいるのが好ましい。反射率が高く、比較的安価であるからである。このような合金の副成分としては、希土類元素であるネオジウム(Nd)、高融点金属であるタンタル(Ta)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)もしくはタングステン(W)、シリコン(Si)のうちの少なくとも1つの元素を含むものが挙げられる。また、この副成分の含有量は、10重量%以下であることが好ましい。良好な反射率が得られ、導電性も高く、基板40との密着性も高いからである。また、有機電界発光素子4を製造する際に、その反射率が良好かつ安定的に維持される共に、高い加工精度および化学的安定性が得られるからである。このような構成により第2陽極層41Cは、上記第1陽極層41Aと比べ、熱安定性に優れると共に耐ヒロック性を有しており、また同等程度の高反射率を有している。言い換えると、この第2陽極層41Cでは、第1陽極層41Aと比べて熱安定性および耐ヒロック性がいずれも高くなっていると共に、第1陽極層41Aと同等程度の高反射率となっている。
【0024】
保護層41Bは、成膜時の熱ストレスを遮断する役割を果たす中間層であり、これにより、ヒロックの作成を抑え、耐熱性を向上させることが可能となっている。このような保護層41Bは、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)またはこれらを主成分とする合金により構成されている。
【0025】
なお、例えば図2に示した有機電界発光素子5における陽極41−1のように、この保護層41Cは必ずしも設けられていなくてもよい。すなわち、この陽極41−1は、基板40側から順に、第1陽極層41Aおよび第2陽極層41Bを積層した二層構造を有している。
【0026】
(有機層20)
有機層20は、陽極41側から順に、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53および電子輸送層54を積層した積層構造を有している。
【0027】
正孔注入層51は、陽極41において生じた正孔を正孔輸送層52に効率よく注入するためのものであり、例えば4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。具体的には、この正孔注入層51は、例えば、以下の式(1)で表される化合物を含むように構成することができる。
【0028】
【化2】

(ただし、式(1)中において、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、イソシアノ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)
【0029】
正孔輸送層22は、正孔注入効率を高めるためのものであり、例えば4,4’−ビス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)ビフェニル(α−NPD)により構成されている。
【0030】
発光層53は、電界をかけることにより、陽極41側から注入された正孔の一部と、陰極61側から注入された電子の一部とを再結合して、光を発生するものである。この発光層53は、スチリルアミン誘導体、芳香族アミン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機材料を含んで構成されている。
【0031】
電子輸送層54は、発光層53への電子注入効率を高めるためのものであり、例えば8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。
【0032】
なお、このような有機層50における電子輸送層54と陰極61との間に、電子注入効率を高めるための電子注入層(図示せず)が更に設けられていてもよい。このような電子注入層の構成材料としては、例えばLi2O、Cs2O、LiFやCaF2等のアルカリ金属酸化物、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類フッ化物が挙げられる。
【0033】
(陰極61)
陰極61は、発光層53に電界を印加する一方の電極であり、光透過性の材料(発光層53からの発光光に対して透過性を有する材料)により構成されている。これにより、発光層53からの発光光および陽極11表面において反射した発光光が、陰極61から外側へ取り出されることとなる。この陰極61は、発光層53側に仕事関数が小さい材料を用いた層が形成されており、発光層53側から順に、第1陰極層61Aおよび第2陰極層61Bが積層されている。
【0034】
第1陰極層61Aは、光透過性が良好であると共に、仕事関数が小さく、かつ電子輸送層54に電子を効率よく注入することが可能な材料により構成されている。このような材料としては、例えば、Li2 O、Cs2 O、LiFあるいはCaF2 などのアルカリ金属酸化物、アルカリ金属弗化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類弗化物などが挙げられる。
【0035】
また、第2陰極層61Bは、薄膜のMgAg電極材料やCa電極材料などの光透過性を有し、かつ導電性が良好な材料により構成されている。また、この有機電界発光素子4が、特に陽極41と陰極61との間で発光光を共振させて取り出すキャビティ構造を備える場合には、第2陰極層61Bは、例えば、Mg−Ag(9:1)10nm厚のような半透過性反射材料を用いて構成してもよい。
【0036】
なお、陰極61は、必要に応じて、第2陰極層61B上に、電極の劣化抑制のための封止電極として第3陰極層(図示せず)を積層した構造でもよい。
【0037】
このような陰極61の各層(第1陰極層61A、第2陰極層61Bおよび必要に応じて第3陰極層)を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法あるいはプラズマCVD法などが挙げられる。
【0038】
[有機電界発光素子の製造方法例]
このような有機電界発光素子4は、例えば、以下のように製造することができる。
【0039】
まず、基板40上に、前述した材料よりなる陽極41を、蒸着法やスパッタリング法などにより形成する。続いて、この陽極41上に、有機層50を形成する。この場合には、まず、陽極41上に、前述した材料よりなる正孔注入層51を、スピンコート法などの湿式方式により形成する。続いて、この正孔注入層51上に、真空蒸着法など気相方式により、それぞれ前述した材料よりなる正孔輸送層52、発光層53および電子輸送層54を、この順で積層する。これにより、有機層50が形成される。最後に、電子輸送層54上に、蒸着法などにより、第1陰極層61Aおよび第2陰極層61Bをこの順で積層して、陰極61を形成する。これにより、図1に示した有機電界発光素子4が完成する。
【0040】
なお、ここでは、有機層50のうち、正孔輸送層52、発光層53および電子輸送層54を真空蒸着法など気相方式により形成したが、湿式方式により形成してもよい。
【0041】
[表示装置の構成例]
次に、図3および図4を参照して、上記有機電界発光素子4を備えた表示装置(有機EL表示装置)の一例について説明する。図3は、このような表示装置1の断面構成を表すものである。
【0042】
この表示装置1は、薄型の有機ELディスプレイとして好適に用いられ、マトリクス状に配設された複数の画素を個別に駆動して表示を行うアクティブマトリクス方式の表示装置である。この表示装置1では、例えばガラスなどよりなる駆動側基板10上に、R(Red:赤),G(Green:緑),B(Blue:青)の各画素を構成する上記有機電界発光素子4(有機EL素子10)が、順に全体としてマトリクス状に設けられている。すなわち、R画素としての有機電界発光素子4R(有機EL素子10R)、G画素としての有機電界発光素子4R(有機EL素子10G)、およびB画素としての有機電界発光素子4B(有機EL素子10B)が、順に全体としてマトリクス状に設けられている。この駆動側基板10上にはまた、上記有機EL素子10R,10G,10Bのそれぞれを駆動するためのTFT11を含む画素駆動回路(詳細は後述)と、平坦化層12とが形成されている。この平坦化層12上に、上記有機EL素子10R,10G,10Bが設けられている。駆動側基板10上の有機EL素子10R,10G,10Bは、保護膜30および接着層31を介して封止側基板20によって封止されている。
【0043】
TFT11は、有機EL素子10R,10G,10Bを、アクティブマトリクス方式により駆動するための駆動素子であり、ボトムゲート型であってもトップゲート型であってもよい。このTFT11のゲートは走査線駆動回路に接続され、ソースおよびドレイン(いずれも図示せず)は、例えば酸化シリコンあるいはPSG(Phospho-Silicate Glass)などよりなる層間絶縁膜11Aを介して設けられた配線層11Bに接続されている。配線層11Bは、例えばアルミニウム(Al)単体もしくはアルミニウム合金による単層膜、チタン(Ti)/アルミニウムの積層膜、もしくはチタン/アルミニウム/チタンの3層膜により構成される。このようなTFT11、層間絶縁膜11Aおよび配線層11B上には、平坦化層12が形成されている。
【0044】
平坦化層12は、TFT11が形成された駆動側基板10の表面を平坦化する共に、有機EL素子10R,10G,10Bの各層の膜厚を均一に形成するためのものである。この平坦化層12は、絶縁材料により構成されている。このような絶縁材料としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂およびノボラック樹脂等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2)などの無機材料を用いることができる。このような平坦化層12には、画素ごとにコンタクトホール12aが設けられており、このコンタクトホール12aに第1電極13(陽極41)が埋設されることによって、上記配線層11Bとの電気的接続が確保されている。
【0045】
有機EL素子10R,10G,10Bでは、例えば、平坦化層12上に、第1電極13(陽極41)と補助配線14とが配設され、これらの上に、画素間絶縁膜15、前述の発光層53を含む有機層50および第2電極18(陰極61)が、この順に積層されている。これらのうち有機層16および第2電極18は、各画素に共通の層として、全画素にわたって設けられている。
【0046】
第1電極13は、平坦化層12上に画素ごとに配設されている。
【0047】
補助配線14は、第2電極18における電圧降下を抑制するためのものであり、第1電極13と電気的に絶縁される一方、第2電極18と導通して設けられている。例えば、補助配線14は、平坦化層12上において、第1電極13の周辺領域に配設されている。一方、補助配線14上に設けられた画素間絶縁膜15および有機層16には、補助配線14まで貫通してコンタクトホール16Aが設けられ、このコンタクトホール16Aにより、補助配線14と第2電極18とが導通している。このような補助配線14は、各画素同士の間の画素間領域に配設されると共に、マトリクス状に配列した全ての画素領域、すなわち表示領域を取り囲む外周領域に配設されている。
【0048】
本実施の形態では、この補助配線14は、第1電極13(陽極41)と同一材料により構成されている。これにより、補助配線14と第1電極13とが同一材料で構成されることにより、補助配線14と第1電極13とを同一工程でパターニング形成することができ、工数の削減につながる。したがって、プロセスの簡便化および低コスト化を図ることができ、簡易な構成となる。
【0049】
また、この場合、例えば図4(A)に示したように、補助配線14における保護層41Bの側面は、画素間絶縁膜15によって被覆されているようにするのが好ましい。これにより、特に保護層41Bとしてモリブデンを用いた場合に、陽極41および補助配線14の電喰が回避されるため、第2陽極層41Cにおける反射率の低下を防ぐことができるからである。すなわち、逆に例えば図4(B)に示したように、補助配線14における保護層41Bの側面がむき出しになっている場合、陽極41および補助配線14において電喰が生じてしまい、第2陽極層41Cにおける反射率が低下してしまうおそれがあるためである。
【0050】
画素間絶縁膜15は、第1電極13と第2電極18、第1電極13と補助配線14とをそれぞれ電気的に絶縁させるものである。画素間絶縁膜15は、例えば酸化シリコン(SiO2)あるいはポリイミドなどの絶縁材料により構成されている。この画素間絶縁膜15には、第1電極13に対応して開口部15A、補助配線14に対応して開口部15Bがそれぞれ設けられている。開口部15Aには、有機層16および第2電極18がこの順に積層され、開口部15Bには、第2電極18が埋設されている。すなわち、開口部15Aに対応する領域が、有機EL素子10R,10G,10Bにおける発光領域となり、開口部15Bは、上記コンタクトホール16Aの一部として機能している。
【0051】
有機層16は、画素間絶縁膜15の側面および上面と、開口部15Aによって露出した第1電極13の上面とを覆うように形成されている。但し、有機層16は、画素間絶縁膜15の開口部15Bの直上付近において断絶されており、コンタクトホール16Aの一部を構成している。
【0052】
保護膜30は、透明誘電体からなり、例えば、酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。接着層31は、例えば熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂などにより構成されている。
【0053】
封止側基板20は、接着層31と共に有機EL素子10R,10G,10Bを封止するためのものである。封止側基板20は、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光(発光光LR,LG,LB)に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。この封止側基板20には、有機EL素子10R,10G,10Bの配置に対応して、赤色、緑色および青色の各色カラーフィルタ(図示せず)が設けられている。これにより、有機EL素子10R,10G,10Bのそれぞれで発生した白色光が3原色の光として取り出されると共に、各層において反射された外光が吸収され、コントラストが改善される。なお、このようなカラーフィルタは、駆動側基板10に設けられていてもよい。また、各色カラーフィルタ同士の間に、ブラックマトリクスが設けられていてもよい。
【0054】
[有機電界発光素子の作用・効果]
続いて、本実施の形態の有機電界発光素子4の作用および効果について説明する。
【0055】
この有機電界発光素子4では、陽極41と陰極61との間に電圧が印加され、有機層50に電界がかかると、陽極41からの正孔が正孔注入層51により、正孔輸送層52へ効率よく注入される。この注入された正孔を正孔輸送層52が発光層へ効率よく輸送する。その一方で、陰極61からの電子が電子輸送層54を介して効率よく発光層53に輸送される。このように陽極41側から移動してきた正孔と、陰極61側から移動してきた電子とが、発光層53において再結合し、光を発することとなる。この発光層53からの発光光と、陽極41の表面で反射されたこの発光光とが、陰極61を透過して射出する。
【0056】
ここでは、積層構造からなる陽極41において、発光層53を含む有機層50側に、アルミニウムを主成分とする合金からなる第2陽極層41Cが設けられていることにより、発光層53からの発光光が、高い反射率で反射される。また、この第2陽極層41Cの有機層53とは反対側に、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とすると共に第2陽極層41Cよりも抵抗率が低い第1陽極層41Aが設けられていることにより、例えば陽極41を補助配線14と同一層に形成する場合であっても、陽極41全体の膜厚が小さく抑えられ、陽極41の表面の凹凸化(ラフネス)が軽減される。
【0057】
以上のように本実施の形態では、陽極41が上記第1陽極層41Aと上記第2陽極層41Cとを含む積層構造を有するようにしたので、発光層53からの発光光を高い反射率で反射することができると共に、例えば陽極41を補助配線14と同一層に形成する場合であっても、陽極41の表面の凹凸化を軽減することができる。よって、安価な構成で高発光効率と高信頼性とを両立させることが可能となる。
【0058】
また、第1陽極層41A第2陽極層41Cとの間に保護層41Bを設けるようにした場合には、成膜時の熱ストレスを遮断することができ、ヒロックの作成を抑え、耐熱性を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0059】
続いて、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0060】
(実施例1〜4)
以下の手順により、図1に示した有機電界発光素子4(または図2に示した有機電界発光素子5)を作製した。なお、各実施例および後述する比較例においては、陽極41(または陽極41−1)として、図5に示す材料および積層構造を用いた。
【0061】
まず、25mm×25mmのガラスからなる基板40上に、陽極41または陽極41−1を形成した。
【0062】
ここで、実施例1では、ランタノイド系元素であるネオジム(Nd)を含むアルミニウム合金層を用いた二層構造の陽極41−1を形成した。具体的には、図5に示すように、第1陽極層41A(下層)であるAl層(膜厚:150nm)と、第2陽極層41B(上層)であるAl−Nd層(膜厚:100nm)とより形成した。
【0063】
また、実施例2,3では、ランタノイド系元素であるネオジム(Nd)を含むアルミニウム合金層を用いた三層構造の陽極41を形成した。具体的には、図5に示すように、第1陽極層41A(下層)であるAl層(膜厚:150nm)と、第2陽極層41C(上層)であるAl−Nd層(膜厚:100nm)との間に、保護層41B(中間層)であるモリブデン(Mo)を挿入して形成した。この保護層41Bの膜厚は、実施例2では50nmとし、実施例3では25nmとした。
【0064】
また、実施例4では、ランタノイド系元素であるネオジム(Nd)を含むアルミニウム合金層を用いた三層構造の陽極41を形成した。具体的には、図5に示すように、第1陽極層41A(下層)であるAl層(膜厚:150nm)と、第2陽極層41C(上層)であるAl−Nd層(膜厚:100nm)との間に、保護層41B(中間層)であるモリブデン(Mo)を挿入して形成した。この保護層41Bの膜厚は、50nmとした。
【0065】
次に、以上のようにして形成された実施例1〜4の構成の陽極41または陽極41−1を用いて、ポリイミド成膜により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした、有機電界発光素子用のセルを作製した。
【0066】
その後、各実施例の陽極41,41−1上に、正孔注入層51を形成した。この際、図5に示したように、以下の式(2)に示す材料を蒸着成膜(蒸着速度0.2〜0.4nm/秒)することにより、膜厚8nmの正孔注入層51を形成した。
【0067】
【化3】

【0068】
次いで、正孔注入層51上に、正孔輸送層52、発光層53および電子輸送層54を積層した構成の有機層50を形成したのち、この有機層50上に、二層構造の陰極61を形成した。具体的には、第1陰極層61Aとして、LiFを真空蒸着法により約0.3nmの膜厚で形成し、次いで、第2陰極層61Bとして、MgAgを真空蒸着法により9nmの膜厚で形成した。以上により、図1,図2に示した有機電界発光素子4,5が完成した。
【0069】
(比較例1,2)
比較例1,2では、上述した実施例1〜4の有機電界発光素子4,5と同様の作製手順において、陽極41,41−1の代わりに、アルミニウム合金の単層を用いた陽極を有する有機電界発光素子を作製した。
【0070】
(評価結果1)
このようにして作製した実施例1〜4および比較例1,2の有機電界発光素子について発光効率を測定し、測定結果を図5に併せて示した。なお、図5中の発光効率(cd/A)は、電流密度が10(mA/cm2)であるときに測定された値である。
【0071】
この結果から、実施例1〜4のように、陽極が、AlとAl合金との二層構造である場合、および、中間層(保護層)としてMoを挟んだ三層構造の場合のいずれであっても、比較例1,2のAl合金の単層構造と同等の発光効率が得られることが確認された。
【0072】
また、波長450nm,650nmの光に対する陽極の反射率が85%以上と高反射率であるため、発光層53での発光光が効率良く外部に取り出されていることも確認された。
【0073】
(評価結果2)
実施例1〜4および比較例1,2の有機電界発光素子について、駆動時間と相対輝度との関係を測定し、測定結果を図5中の「信頼性」の欄に示すと共に、図6,図7(図6中の符号P3部分の拡大図)に併せて示した。なお、有機電界発光素子の信頼性とは、電流密度が90(mA/cm2)の状態で600時間が経過した後の相対輝度を表している。
【0074】
この結果から、実施例1〜4のように、陽極が、AlとAl合金との二層構造である場合、および、中間層(保護層)としてMoを挟んだ三層構造の場合のいずれであっても、比較例2のAl合金(膜厚:500nm)を上回る信頼性が得られることが確認された。
【0075】
また、図6,7中に示したように、実施例1,3,4と比べ、実施例2における信頼性が特に高いことも確認された。
【0076】
(評価結果3)
実施例1〜4および比較例1,2の陽極におけるシート抵抗を、四端子法により測定し、測定結果を図5中の「シート抵抗」の欄に示した。実施例1〜4における全ての積層構造において、シート抵抗が0.2Ω/□であった。これにより、陽極を積層構造にすることによって、Al合金500nm(比較例2)よりも膜厚が薄いにも関わらず、同等の低抵抗が得られることが確認された。
【0077】
これらの評価結果1〜3により、陽極を、低抵抗の純アルミニウムと、熱安定性に優れて耐ヒロック性を有しており、反射率が高いアルミニウム合金との積層構造にすることで、膜厚を薄くして低抵抗化が可能となると共に、高発光効率化も可能となる。また、この膜厚が薄くなることで、陽極表面の凹凸が軽減され、信頼性が向上する。よって、簡易な構成で、高発光効率と高信頼性との両立が可能となる。
【0078】
<2.モジュールおよび電子機器への適用例>
以下、上記実施の形態および実施例で説明した有機電界発光素子4を備えた表示装置1のモジュールおよび電子機器への適用例について説明する。
【0079】
この表示装置1は、テレビジョン装置,デジタルスチルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。すなわち、この表示装置1は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0080】
(モジュール)
表示装置1は、例えば図8に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、駆動側基板10の一辺に、封止側基板20から露出した領域210を設け、この領域210に後述する信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0081】
駆動側基板10には、例えば、図9に示したように、表示領域110と、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されている。表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。表示領域110は、有機EL素子10R,10G,10Bを全体としてマトリクス状に配置したものである。
【0082】
画素駆動回路140は、図10に示したように、第1電極13の下層に形成されている。この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csとを有している。また、画素駆動回路140は、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された、有機EL素子10R(または10G,10B)を有している。すなわち、この画素駆動回路140は、アクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT)により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく、特に限定されない。
【0083】
画素駆動回路140では、列方向に信号線120Aが複数配置され、行方向に走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0084】
(適用例1)
図11は、上記実施の形態等の表示装置1が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有している。
【0085】
(適用例2)
図12は、上記実施の形態等の表示装置1が適用されるデジタルスチルカメラの外観を表したものである。このデジタルスチルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有している。
【0086】
(適用例3)
図13は、上記実施の形態等の表示装置1が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有している。
【0087】
(適用例4)
図14は、上記実施の形態等の表示装置1が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有している。
【0088】
(適用例5)
図15は、上記実施の形態等の表示装置1が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。
【0089】
以上、実施の形態、実施例および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0090】
例えば、上記実施の形態等では、第1陽極層41Aがアルミニウム単体である場合で説明したが、第1陽極層41Aのほうが第2陽極層41Cよりも抵抗率が低いのであれば、第1陽極層41Aとして、アルミニウムを主成分とする合金を用いるようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態等では、有機層50を構成する正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53および電子輸送層54をそれぞれ単層で形成する場合について主に説明したが、各層を複数層で形成するようにしてもよい。
【0092】
さらに、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0093】
加えて、上記実施の形態等では、上面発光型の有機電界発光素子について説明したが、下面発光型としてもよい。この場合、基板を透明材料により構成すると共に、この透明基板上に上記実施の形態と同様に、陽極、有機層および陰極の順で積層する。ただし、この場合、陰極を反射電極として、上記実施の形態で説明した陽極における積層構造を有するようにすると共に、陽極を透明電極とする。具体的には、この場合の陰極では、例えば、有機層側から順に、第2陰極層(第2陽極層41Cに対応する層)および第1陰極層(第1陽極層41Aに対応する層)を積層させる。あるいは、有機層側から順に、第1陰極層(第1陽極層41Aに対応する層)および第2陰極層(第2陽極層41Cに対応する層)を積層させる。そして、場合に応じてこれら第1陰極層と第2陰極層との間に、保護層(中間層)を形成する。このような構成の下面発光型の有機電界発光素子においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0094】
加えてまた、上記実施の形態等では、有機層50の発光層53として、赤色発光層,緑色発光層および青色発光層の3層を含む場合について説明したが、白色発光用の発光層の構成はこれに限定されない。すなわち、橙色発光層および青色発光層、あるいは、青緑色発光層および赤色発光層など、互いに補色関係にある2色の発光層を積層した構造としてもよい。また、上記実施の形態では、3色の層を厚み方向に積層した構成を例に挙げて説明したが、R,G,Bの各画素に対応して、各色発光層を画素ごとに塗り分けて形成するようにしてもよい。
【0095】
加えてさらに、上記した実施の形態等では、アクティブマトリックス方式の表示装置について説明したが、パッシブ方式の表示装置であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…表示装置、10…駆動側基板、11…TFT、11A…層間絶縁膜、11B…配線層、12…平坦化層、13…第1電極(陽極)、14…補助配線、15…画素間絶縁膜、16…有機層、16A…コンタクトホール、18…第2電極(陰極)、20…封止側基板、30…保護膜、31…接着層、4,4R(10R),4G(10G),4B(10B),5…有機電界発光素子(有機EL素子)、40…基板、41,41−1…陽極、41A…第1陽極層、41B…保護層、41C…第2陽極層、50…有機層、51…正孔注入層、52…正孔輸送層、53…発光層、54…電子輸送層、61…陰極、61A…第1陰極層、61B…第2陰極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に、発光層を含む有機層を備え、
前記陽極は、
アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金からなる第1の層と、
前記第1の層と前記有機層との間に設けられ、アルミニウムを主成分とする合金からなる第2の層と
を含む積層構造を有し、
前記第1の層の抵抗率が、前記第2の層の抵抗率よりも低くなっている
有機電界発光素子。
【請求項2】
前記陽極は、前記第1の層と前記第2の層との間に、保護層を有する
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記保護層は、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)またはこれらを主成分とする合金により構成されている
請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記第2の層では、前記第1の層と比べ、熱安定性および耐ヒロック性がいずれも高くなっている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記第2の層の合金の副成分は、その合金の主成分よりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも1つ含んでいる
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記第2の層の合金の副成分は、ネオジウム(Nd)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)およびシリコン(Si)のうちの少なくとも1つの元素を含んでいる
請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記陽極、前記有機層および前記陰極の順に上層へ向けて積層されており、
前記陰極が、前記発光層から発せられた光に対して透過性を有する材料により構成されている
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機層のうちの前記陽極と接する層が、以下の式(1)で表される化合物を含んで構成されている
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化1】

(ただし、式(1)中において、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、イソシアノ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)
【請求項9】
陽極と陰極との間に発光層を含む有機層を有する有機電界発光素子を備え、
前記陽極は、
アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金からなる第1の層と、
前記第1の層と前記有機層との間に設けられ、アルミニウムを主成分とする合金からなる第2の層と
を含む積層構造を有し、
前記第1の層の抵抗率が、前記第2の層の抵抗率よりも低くなっている
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−192413(P2010−192413A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42084(P2009−42084)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】