説明

有機電界発光素子および表示装置

【課題】生産性を確保しつつも薄型化した電極の導電性を十分に補うことが可能な有機材料膜を設けたことにより、発光効率の向上が図られた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】無機導電性材料からなる陽極5および陰極9との間に、有機発光層7bを含む有機発光機能層7が挟持され、陰極9の外側に接して有機電極膜11が設けられている。有機電極膜11は、多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとを積層させている。多環式芳香族炭化水素化合物は、母骨格が環員数3〜7の化合物であることとする。ベンゾイミダゾール誘導体は、ベンゼン環に置換基を有する化合物であることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(いわゆる有機EL素子)および表示装置に関し、特には無機材料からなる薄型の電極を導電性の有機材料で保護してなる有機電界発光素子および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下ELと記す)を利用した有機電界発光素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に有機正孔輸送層や有機発光層を積層させた有機発光機能層を設けてなり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
このような有機電界発光素子においては、ITOやIZO等の無機透明導電性膜や極薄膜の金属材料膜を用いて構成される陽極や陰極の導電性を補うために、陰極や陽極に導電性有機膜を積層させる構成が提案されている。積層させる導電性有機膜としては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を用いる構成が示されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また上記有機電界発光素子においては、水分浸入による有機材料の劣化を防止するために、陽極および陰極のうちの基板と反対側に配置される電極上に、有機キャッピング膜を積層する構成が提案されている。このような有機キャッピング膜としては、アリレンジアミン誘導体、トリアミン誘導体、CBP、およびアルミキノリノール錯体(Alq3)を用いる構成が示されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−235585号公報
【特許文献2】特開2006−156390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらPEDOTからなる導電性有機膜を電極上に設ける構成では、PEDOTが高分子のため、蒸着速度が遅く生産性に劣る。またPEDOTからなる導電性有機膜は、湿式での成膜が可能ではあるが、溶剤によって有機発光層などの有機層がダメージを受けてしまう。
【0007】
さらにアリレンジアミン誘導体、トリアミン誘導体、CBP、およびアルミキノリノール錯体(Alq3)等からなる有機キャッピング膜を電極上に設ける構成では、これらの材料の導電性が低いため、陽極や陰極の導電性を補うことができない。
【0008】
そこで本発明は、生産性を確保しつつも薄型化した電極の導電性を十分に補うことが可能な有機材料膜を設けたことにより、発光効率の向上が図られた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の有機電界発光素子は、無機導電性材料からなる陽極および陰極との間に、有機発光層を含む有機発光機能層が挟持され、陽極および前記陰極のうちの少なくとも一方の電極の外側に接して有機電極膜が設けられている。そして特に、この有機電極膜が、多環式芳香族炭化水素化合物およびベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせはまたは、アザトリフェニレン誘導体の少なくとも一方を用いて構成されていることを特徴としている。ただし、多環式芳香族炭化水素化合物は、母骨格が環員数3〜7の化合物であることとする。ベンゾイミダゾール誘導体は、ベンゼン環に置換基を有する化合物であることとする。
【0010】
また本発明は、このような構成の有機電界発光素子を基板上に配列形成してなる表示装置でもある。
【0011】
以上のような構成の有機電界発光素子は、陰極または陽極に接して設けられる有機電極膜が、低分子材料を用いて構成されている。このため、高分子を用いた場合と比較して、より高速度での蒸着成膜によって有機電極膜が得られるため生産性が確保される。また、このような有機電極膜は十分な導電性を有しているため、この有機電極膜が接して設けられた電極の導電性を補うことができ、以降の実施例で示すようにこの有機電極膜を備えた有機電界発光素子が低電圧で駆動されることが確認された。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、生産性を確保しつつも薄型化した電極の導電性を十分に補うことが可能な有機材料膜を設けたことにより、有機電界発光素子における発光効率の向上を図ることが可能になる。そして、このような有機電界発光素子を用いて構成された表示装置における表示特性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図2】第2実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図3】第3実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図4】第4実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図5】第5実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図6】第6実施形態の有機電界発光素子の断面図である。
【図7】本発明が適用される有機電界発光素子を用いた表示装置の構成図である。
【図8】本発明が適用される封止された構成のモジュール形状の表示装置を示す構成図である。
【図9】本発明の表示装置を用いたテレビを示す斜視図である。
【図10】本発明の表示装置を用いたデジタルカメラを示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図11】本発明の表示装置を用いたノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図12】本発明の表示装置を用いたビデオカメラを示す斜視図である。
【図13】本発明の表示装置を用いた携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す斜視図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた除隊での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の各実施の形態を以下の順序で説明する。
1.第1実施形態(上部電極となる陰極側に有機電極膜を設けた有機電界発光素子の例)
2.第2実施形態(上部電極となる陽極側に有機電極膜を設けた有機電界発光素子の例)
3.第3実施形態(陽極と陰極との両側に有機電極膜を配置した有機電界発光素子の例)
4.第4実施形態(陽極と陰極との両側に有機電極膜を配置した逆積みの有機電界発光素子の例)
5.第5実施形態(下部電極となる陽極側に有機電極膜を設けた有機電界発光素子の例)
6.第6実施形態(下部電極となる陰極側に有機電極膜を設けた有機電界発光素子の例)
7.第7実施形態(表示装置の構成例)
8.第8実施形態(電子機器への適用例)
【0015】
≪1.第1実施形態≫
図1は、本発明の有機電界発光素子1-1を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1-1は、上面発光構造に適する第1例であり、次のように構成されている。すなわち、基板3上には下部電極としての陽極5、この陽極5上に重ねて設けられた有機発光機能層7、この有機発光機能層7上に設けられた上部電極としての陰極9を備えている。陰極9上には、さらに有機電極膜11および陰極配線13が設けられており、この有機電極膜11が以降に説明する材料を用いて構成されているといるところが特徴的である。
【0016】
以下においては、このような積層構成の有機電界発光素子1-1が、基板3と反対側の陰極11側から光を取り出す上面発光型の素子として構成されていることとし、この場合の各層の詳細を基板3側から順に説明する。
【0017】
<基板3>
まず、有機電界発光素子1-1が設けられる基板3は、ガラスのような透明基板や、シリコン基板、さらにはフィルム状のフレキシブル基板等の中から適宜選択して用いられることとする。また、この有機電界発光素子1-1を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、基板3として、画素毎にTFTを設けてなるTFT基板が用いられる。
【0018】
<陽極5>
そして、この基板3上に下部電極として設けられる陽極5は、無機材料からなるものであり、有機発光機能層7に対して効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きい材料ものが選択して用いられる。このような電極材料としては、例えばクロム(Cr)、金(Au)、酸化スズ(SnO2)とアンチモン(Sb)との合金、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、銀(Ag)合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等を、単独または混在させた状態で用いることができる。
【0019】
有機電界発光素子1-1が上面発光方式の場合は、陽極5を高反射率材料で構成することで、干渉効果及び高反射率効果で外部への光取り出し効率を改善することが可能であり、このような電極材料には、例えばAl、Ag等を主成分とする電極を用いることが好ましい。これらの高反射率材料層上に、例えばITOのような仕事関数が大きい透明電極材料層を設けることでキャリア注入効率を高めることも可能である。
【0020】
以上の他にも、陽極5は、有機発光機能層7に対して正孔を注入可能な材料であれば良いため、例えばMgとAgとの合金を用いて構成しても良い。
【0021】
尚、この有機電界発光素子1-1を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、下部電極となる陽極5は、TFTが設けられている画素毎にパターニングされていることとする。そして、陽極5の上層には、ここでの図示を省略した絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から、各画素の陽極5表面を露出させていることとする。
【0022】
<有機発光機能層7>
陽極5上に設けられた有機発光機能層7は、少なくとも有機発光層7bを備えたものであり、必要に応じて他の層を積層した構成となっている。ここでは一例として、陽極5側から順に正孔輸送層7aと有機発光層7bとを積層してなることとする。
【0023】
このうち正孔輸送層7aは、有機発光層7bへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層7aを構成する材料としては、一般的な正孔輸送材料が用いられる。例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0024】
尚、陽極5と正孔輸送層7aとの間に正孔注入層を設ける場合には、これらの材料を適宜選択して積層させることにより、正孔注入層と正孔輸送層7aとすることができる。
【0025】
また有機発光層7bは、陽極5と陰極9とに対する電圧印加時に、陽極5側から注入された正孔と、陰極9側から注入された電子とが再結合する領域である。本実施形態においては、従来公知のものから任意のものを選択して用いることができる。このような発光材料としては、例えば、多環縮合芳香族化合物、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキサノイド化合物、ジスチリルベンゼン系化合物などの薄膜形成性の良い化合物を用いることができる。ここで、上記多環縮合芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン骨格を含む縮合環発光物質や、約8個の縮合環を含む他の縮合環発光物質などを挙げることができる。具体的には、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、4,4’−(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルなどを用いることができる。この発光層は、これらの発光材料の1種又は2種以上からなる1層で構成されてもよいし、あるいは該発光層とは別種の化合物からなる発光層を積層したものであってもよい。
【0026】
また、有機発光層7bは、正孔輸送性の発光層、電子輸送性の発光層、あるいは両電荷輸送性の発光層として有機電界発光素子1-1に設けられていても良い。例えば有機発光層7bが電子輸送性の発光層であれば、アルミキノリノール錯体(Alq3)が用いられる。
【0027】
尚、有機発光層7bと陰極9との間には、必要に応じて電子輸送層や電子注入層を挟持させても良い。
【0028】
<陰極9>
陰極9は、仕事関数が小さい材料を用いて有機発光機能層7と接する層が構成されており、かつ光透過性が良好な構成で有ればよい。このような構成として、例えば、陰極9は、有機発光機能層7側から順に第1層および第2層を積層した構造となっている。
【0029】
第1層は、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばLi2O、Cs2Co3、Cs2SO4、MgF、LiFやCaF2等のアルカリ金属酸化物、アルカリ金属弗化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類弗化物が挙げられる。
【0030】
また、第2層は、薄膜のMg−Ag電極やCa電極などの、光透過性を有しかつ導電性が良好な材料で構成される。また、この有機電界発光素子1-1が、特に陽極5と陰極9との間で発光光を共振させて取り出す共振器構造で構成される上面発光素子の場合には、例えばMg−Agのような半透過性反射材料を用いて第2層を構成し、第2層と陽極5の間で発光光を共振させる。この際、第2層と陽極5の間の膜厚が共振波長に合わせて調整されることになる。
【0031】
<有機電極膜11>
この有機電極膜11は本発明に特徴的な膜である。有機電極膜11は、1)多環式芳香族炭化水素化合物および2)ベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせか、3)アザトリフェニレン誘導体の、少なくとも一方を用いて構成されているところが特徴的である。
【0032】
特に、1)多環式炭化水素化合物と2)ベンゾイミダゾール誘導体とを用いる場合には、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとを積層させて有機電極膜11とする。この場合の積層順は、陰極9側から1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11a、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bの順で有ることが好ましい。これにより、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bから、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aに対して電子を移動させる。
【0033】
また3)アザトリフェニレン誘導体を用いて有機電極膜11を構成する場合には、3)アザトリフェニレン誘導体らなる層に、4)アミン系材料をドープした構成とすることが好ましい。
【0034】
さらに有機電極膜11は、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとに対して、さらに3)アザトリフェニレン誘導体らなる層を積層させて構成であっても良い。この場合3)アザトリフェニレン誘導体らなる層の積層位置が限定されることはない。
【0035】
以下、有機電極膜11を構成する1)多環式芳香族炭化水素化合物、2)ベンゾイミダゾール誘導体、3)アザトリフェニレン誘導体、および4)アミン系材料の具体例を示す。
【0036】
1)多環式芳香族炭化水素化合物は、母骨格が環員数3〜7であることとし、母骨格としては、アントラセン、ピレン、ベンゾピレン、クリセン、ナフタセン、ベンゾナフタセン、ジベンゾナフタセン、ペリレン、またはコロネンから選択される。中でも、下記一般式(1)で示されるアントラセンを母骨格として有するアントラセン誘導体をホスト材料とすることが好ましい。
【0037】
【化3】

【0038】
ただし、一般式(1)中において、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のカルボニル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のカルボニルエステル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のアルケニル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有しても良い炭素数30以下のシリル基,置換基を有しても良い炭素数30以下のアリール基、置換基を有しても良い炭素数30以下の複素環基、または置換基を有しても良い炭素数30以下のアミノ基を示す。尚、上記置換基を有しても良い基の場合には、置換基の炭素数を含めた炭素数であることとする。
【0039】
一般式(1)におけるR1〜R6が示すアリール基は、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基,6−クリセニル基,2−フルオランテニル基,3−フルオランテニル基,2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0040】
また,R1〜R6が示す複素環基は、ヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員または6員環の芳香族複素環基、炭素数3〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられる。また、芳香族複素環基及び縮合多環芳香複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾール基が挙げられる。代表的なものとしては,1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる。
【0041】
1〜R6が示すアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族および1〜4環の芳香族炭素環の少なくとも一方を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0042】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していてもよい。
【0043】
以上のようなホスト材料として適するアントラセン誘導体の具体例としては、下記構造式(1)-1〜(1)-28が例示される。
【0044】
【化4−1】

【0045】
【化4−2】

【0046】
【化4−3】

【0047】
2)ベンゾイミダゾール誘導体は、ベンゼン環に置換基を有するもので、下記一般式(2)で示す化合物であることとする。
【0048】
【化5】

【0049】
ただし一般式(2)中において、A1,A2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数60以下のアリール基、置換基を有しても良い複素環基、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、または置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。
【0050】
また一般式(2)中のBは、置換基を有しても良い炭素数60以下のアリーレン基、置換基を有しても良いピリジニレン基、置換基を有しても良いキノリニレン基、または置換基を有しても良いフルオレニレン基を示す。
【0051】
さらに一般式(2)中のArは、置換基を有しても良い炭素数6〜60のアリール基、置換基を有しても良い炭素数3〜60の複素環基、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。
【0052】
このような一般式(2)のベンゾイミダゾール誘導体の具体例を、下記表1-1〜1-6の構造式(2)-1〜(2)-48、および構造式(2)-49〜(2)-59に示す。尚、表1-1〜1-6において、Ar(α)は、一般式(2)中における[ベンゾイミダゾール構造+A1+A2]を示す。
【0053】
【表1−1】

【0054】
【表1−2】

【0055】
【表1−3】

【0056】
【表1−4】

【0057】
【表1−5】

【0058】
【表1−6】

【0059】
【化6−1】

【0060】
【化6−2】

【0061】
3)アザトリフェニレン誘導体は、下記一般式(3)に示す化合物である。
【0062】
【化7】

【0063】
上記一般式(3)に示すアザトリフェニレン誘導体は、一般式(3)中におけるR1〜R6が、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換もしくは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換もしくは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換もしくは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換もしくは無置換の複素環基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基を示す。そして隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。一般式(3)中のX1〜X6は、それぞれ独立に炭素もしくは窒素(N)原子である。この化合物は、特にXがN原子のとき、化合物中のN含有率が高くなるため、正孔注入層14aに好適に用いられる。
【0064】
ここで、アザトリフェニレン誘導体の具体例としては、下記構造式(3)-1に示すヘキサニトリルアザトリフェニレンが挙げられる。
【0065】
【化8】

【0066】
4)アミン系材料は、例えばα−NPDのように、一般的に有機電界発光素子を構成する材料として用いられている化合物のうち低分子系のものが用いられる。またこの他にも、m−MTDATAが用いられる。
【0067】
<陰極配線13>
陰極配線13は、導電性が高い材料を用いて光透過性良好に構成されていることが重要である。このような陰極配線13は、例えば陰極9と同様の構成であって良く、陰極9および有機電極膜11との積層構造全体で実質的な陰極が構成される。そして、この陰極配線13と陽極5とに対して、有機電界発光素子1-1を発光させるための電圧印加がなされる構成であって良い。尚、有機電界発光素子1-1が基板上に複数配列された表示装置において、表示領域の中央部においての電圧降下の影響の懸念がない場合には、陰極配線13と共に陰極9に対しても負電圧を印加する構成としても良い。
【0068】
尚、この有機電界発光素子1-1を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、上部電極となる陰極9、有機電極膜11、および陰極配線13は、複数の画素に設けられた各有機電界発光素子1-1に共通の電極としてベタ膜状に設けられていて良い。ここでは、陰極9と陰極配線13とが直接接することのないように、陰極9と陰極配線13との間に、確実に有機電極膜11が挟持された状態となっていることが重要である。
【0069】
以上のような構成の有機電界発光素子1-1では、陰極9の外側に接して設けられる有機電極膜11が、低分子材料を用いて構成されている。このため、高分子を用いた場合と比較して、より高速度での蒸着成膜によって有機電極膜11が得られるため生産性が確保される。また上述した材料で構成される有機電極膜11は十分な導電性を有しているため、この有機電極膜11が接して設けられた陰極9の導電性を補うことができる。したがって、陰極9側から光を取り出すために、無機材料からなる陰極9や陰極配線13の膜厚を薄膜化した場合であっても、薄膜化による導電性の低下を有機電極膜11で十分に補うことが可能になる。この結果、以降の実施例で示すように、この有機電極膜11を備えた有機電界発光素子1-1の低電圧駆動が可能になり、発光効率の向上を図ることができる。
【0070】
≪2.第2実施形態≫
図2は、本発明の有機電界発光素子1-2を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1-2は、上面発光構造に適する第2の例であり、第1実施形態との異なるところは、陰極9を下部電極とし陽極5を上部電極とした逆積みの積層順にある。尚、有機電界発光素子1-2を構成する各層には第1実施形態と同様の符号を付して説明を行なう。また各層を構成する材料は第1実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0071】
すなわち有機電界発光素子1-2は、基板3上に下部電極としての陰極9、この陰極9上に重ねて設けられた有機発光機能層7、この有機発光機能層7上に設けられた上部電極としての陽極5を備えている。そしてこの陽極8上にさらに有機電極膜11および陽極配線15が設けられており、有機電極膜11が上述した材料を用いて構成されているといるところが特徴的である。
【0072】
以上のように、基板3上における陰極9−陽極5間の積層順が、第1実施形態とは逆の積層順で有る場合、各層のそれぞれが積層構造であればその積層順も第1実施形態とは逆積みとなる。
【0073】
例えば有機発光機能層7であれば、陰極9側から順に有機発光層7bと正孔輸送層7aとが積層されることになる。
【0074】
また特に本発明に特徴的な構成である有機電極層11が、1)多環式芳香族炭化水素化合物および2)ベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせか、3)アザトリフェニレン誘導体の、少なくとも一方を用いて構成されていることは、第1実施形態と同様である。
【0075】
ただし、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとを積層させて有機電極膜11とする場合の積層順は、陽極5側から2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11b、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aの順で有ることが好ましい。これにより、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bから、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aに対して電子を移動させる構成とする。
【0076】
また3)アザトリフェニレン誘導体を用いて有機電極膜11を構成する場合には、3)アザトリフェニレン誘導体らなる層に、4)アミン系材料をドープした構成とすることが好ましい。さらに有機電極膜11は、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとに対して、さらに3)アザトリフェニレン誘導体らなる層を積層させて構成であっても良い。この場合3)アザトリフェニレン誘導体らなる層の積層位置が限定されることはない。以上についても、第1実施形形態と同様である。
【0077】
尚、この有機電極膜11上に設けた陽極配線15は、導電性が高い材料を用いて光透過性良好に構成されていることが重要である。このような陽極配線15は、例えば陽極5と同様の構成であって良い。そして、陽極5、有機電極膜11、および陽極配線15との積層構造全体で実質的な陽極が構成される。そして、この陽極配線15と陰極9とに対して、有機電界発光素子1-2を発光させるための電圧印加がなされる構成であって良い。尚、有機電界発光素子1-2が基板上に複数配列された表示装置において、表示領域の中央部においての電圧降下の影響の懸念がない場合には、陽極配線15と共に陽極5に対しても正電圧を印加する構成としても良い。
【0078】
また、この有機電界発光素子1-2を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、下部電極となる陰極9は、TFTが設けられている画素毎にパターニングされていることとする。そして、陰極9の上層には、ここでの図示を省略した絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から、各画素の陰極9表面を露出させていることとする。一方、上部電極となる陽極5、有機電極膜11、および陽極配線15は、複数の画素に設けられた各有機電界発光素子1-2に共通の電極としてベタ膜状に設けられていて良い。ここでは、陽極5と陽極配線15とが直接接することのないように、陽極5と陽極配線15との間に、確実に有機電極膜11が挟持された状態となっていることが重要である。
【0079】
以上のような構成の有機電界発光素子1-2では、陽極5の外側に接して設けられる有機電極膜11が、低分子材料を用いて構成されている。このため、高分子を用いた場合と比較して、より高速度での蒸着成膜によって有機電極膜11が得られるため生産性が確保される。また上述した材料で構成される有機電極膜11は十分な導電性を有しているため、この有機電極膜11が接して設けられた陽極5の導電性を補うことができる。したがって、陽極5側から光を取り出すために、無機材料からなる陽極5や陽極配線15の膜厚を薄膜化した場合であっても、薄膜化による導電性の低下を有機電極膜11で十分に補うことが可能になる。この結果、以降の実施例で示すように、この有機電極膜11を備えた有機電界発光素子1-2の低電圧駆動が可能になり、発光効率の向上を図ることができる。
【0080】
≪3.第3実施形態≫
図3は、本発明の有機電界発光素子1-3を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1-3は、両面発光構造に適する第1の例であり、第1実施形態で示した構成に対して、下部電極となる陽極5側にも有機電極膜11’を設けたものである。尚、有機電界発光素子1-3を構成する各層には第1実施形態と同様の符号を付して説明を行なう。また各層を構成する材料は第1実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0081】
すなわち有機電界発光素子1-3は、基板3上に、陽極配線15および有機電極膜11’がこの順で設けられ、この上部に第1実施形態で示した陽極5、有機発光機能層7、陰極9、有機電極膜11、および陰極配線13が積層された構成となっている。
【0082】
このうち陽極配線15は、導電性が高い材料を用いて光透過性良好に構成されていることが重要である。このような陽極配線15は、例えば陽極5と同様の構成であって良く、陽極5および有機電極膜11’との積層構造全体で実質的な陽極が構成される。また、この陽極配線15と陽極5とに対して、有機電界発光素子1-3を発光させるための電圧印加がなされる構成であって良い。
【0083】
また特に本第3実施形態に特徴的である、有機電極膜11’が、1)多環式芳香族炭化水素化合物および2)ベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせか、3)アザトリフェニレン誘導体の、少なくとも一方を用いて構成されていることは、他の実施形態で説明した有機電極膜11と同様である。
【0084】
また、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとを積層させて有機電極膜11’とする場合の積層順は、陽極5側から2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11b、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aの順で有ることが好ましい。これにより、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bから、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aに対して電子を移動させる構成とする。
【0085】
また3)アザトリフェニレン誘導体を用いて有機電極膜11’を構成する場合には、3)アザトリフェニレン誘導体らなる層に、4)アミン系材料をドープした構成とすることが好ましい。さらに有機電極膜11’は、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとに対して、さらに3)アザトリフェニレン誘導体らなる層を積層させて構成であっても良い。この場合3)アザトリフェニレン誘導体らなる層の積層位置が限定されることはない。以上についても、他の実施形態で説明した有機電極膜11と同様である。
【0086】
尚、この有機電界発光素子1-3を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、下部電極となる陽極5、有機電極膜11’、および陽極配線15は、TFTが設けられている画素毎にパターニングされていることとする。ここでは、陽極5と陽極配線15とが直接接することのないように、陽極5と陽極配線15との間に、確実に有機電極膜11’が挟持された状態となっていることが重要である。一方、上部電極となる陰極9、有機電極膜11、および陰極配線13は、複数の画素に設けられた各有機電界発光素子1-3に共通の電極としてベタ膜状に設けられていて良い。ここでは、陰極9と陰極配線13とが直接接することのないように、陰極9と陰極配線13との間に、確実に有機電極膜11が挟持された状態となっていることが重要である。また、陰極配線13と陽極配線15とに対して有機電界発光素子1-3を発光させるための電圧印加がなされる構成であって良く、電圧降下の影響が無い場合には、陰極配線13および陰極9と、陽極配線15および陽極5とに対して電圧印加しても良い。
【0087】
以上のような構成の有機電界発光素子1-3では、陽極5の外側に接して設けられる有機電極膜11’、および陰極9の外側に接して設けられる有機電極膜11が、低分子材料を用いて構成されている。このため、高分子を用いた場合と比較して、より高速度での蒸着成膜によって有機電極膜11,11’が得られるため生産性が確保される。また上述した材料で構成される有機電極膜11,11'は十分な導電性を有しているため、この有機電極膜11,11’が接して設けられた陽極5および陰極9の導電性を補うことができる。したがって、陽極5および陰極9側から光を取り出すために、無機材料からなる陽極5や陽極配線15、さらには陰極9や陰極配線13の膜厚を薄膜化した場合であっても、薄膜化による導電性の低下を有機電極膜11,11’で十分に補うことが可能になる。この結果、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様に、これらの有機電極膜11,11’を備えた有機電界発光素子1-3の低電圧駆動が可能になり、発光効率の向上を図ることができる。
【0088】
≪4.第4実施形態≫
図4は、本発明の有機電界発光素子1-4を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1-4は、両面発光構造に適する第2の例であり、第2実施形態で示した逆積み構成に対して、下部電極となる陰極9側にも有機電極膜11’を設けたものである。尚、有機電界発光素子1-4を構成する各層には第1実施形態と同様の符号を付して説明を行なう。また各層を構成する材料は第1実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0089】
すなわち有機電界発光素子1-4は、基板3上に、陰極配線13および有機電極膜11’がこの順で設けられ、この上部に第2実施形態で示した陰極9、発光機能層7、陽極5、有機電極膜11、および陽極配線15が積層された構成となっている。
【0090】
このうち陰極配線13は、導電性が高い材料を用いて光透過性良好に構成されていることが重要である。このような陰極配線13は、例えば陰極9と同様の構成であって良く、陰極9および有機電極膜11’との積層構造全体で実質的な陰極が構成される。また、この陰極配線13と陰極9に対して、有機電界発光素子1-4を発光させるための電圧印加がなされる構成であって良い。
【0091】
また特に本第4実施形態に特徴的である、有機電極膜11’が、1)多環式芳香族炭化水素化合物および2)ベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせか、3)アザトリフェニレン誘導体の、少なくとも一方を用いて構成されていることは、他の実施形態で説明した有機電極膜11と同様である。
【0092】
また、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aと、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとを積層させて有機電極膜11’とする場合の積層順は、陰極9側から1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11a、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bの順で有ることが好ましい。これにより、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bから、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層11aに対して電子を移動させる構成とする。
【0093】
また3)アザトリフェニレン誘導体を用いて有機電極膜11’を構成する場合には、3)アザトリフェニレン誘導体らなる層に、4)アミン系材料をドープした構成とすることが好ましい。さらに有機電極膜11’は、1)多環式芳香族炭化水素化合物からなる層と11a、2)ベンゾイミダゾール誘導体からなる層11bとに対して、さらに3)アザトリフェニレン誘導体らなる層を積層させて構成であっても良い。この場合3)アザトリフェニレン誘導体らなる層の積層位置が限定されることはない。以上についても、他の実施形態で説明した有機電極膜11と同様である。
【0094】
尚、この有機電界発光素子1-4を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、下部電極となる陰極9、有機電極膜11’、および陰極配線13は、TFTが設けられている画素毎にパターニングされていることとする。ここでは、陰極9と陰極配線13とが直接接することのないように、陰極9と陰極配線13との間に、確実に有機電極膜11’が挟持された状態となっていることが重要である。一方、上部電極となる陽極5、有機電極膜11、および陽極配線15は、複数の画素に設けられた各有機電界発光素子1-4に共通の電極としてベタ膜状に設けられていて良い。ここでは、陽極5と陽極配線15とが直接接することのないように、陽極5と陽極配線15との間に、確実に有機電極膜11が挟持された状態となっていることが重要である。また、陰極配線13と陽極配線15とに対して有機電界発光素子1-4を発光させるための電圧印加がなされる構成であって良く、電圧降下の影響が無い場合には、陰極配線13および陰極9と、陽極配線15および陽極5とに対して電圧印加しても良い。
【0095】
以上のような構成の有機電界発光素子1-4では、第3実施形態と同様に陽極5の外側に接して設けられる有機電極膜11’、および陰極9の外側に接して設けられる有機電極膜11が、低分子材料を用いて構成されている。したがって、陽極5および陰極9側から光を取り出すために、無機材料からなる陽極5や陽極配線15、さらには陰極9や陰極配線13の膜厚を薄膜化した場合であっても、薄膜化による導電性の低下を有機電極膜11,11’で十分に補うことが可能になる。この結果、他の実施形態と同様に、これらの有機電極膜11,11’を備えた有機電界発光素子1-3の低電圧駆動が可能になり、発光効率の向上を図ることができる。
【0096】
≪5.第5実施形態≫
図5は、本発明の有機電界発光素子1-5を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1-5は、基板側から光を取り出す透過型構造に適する第1の例であり、第3実施形態で示した構成において、上部電極となる陰極9側の有機電極膜(11)および陰極配線(13)を除去したものである。
【0097】
以上のような構成の有機電界発光素子1-5であっても、下部電極となる陽極5の外側に接して設けられる有機電極膜11が、低分子材料を用いて構成されている。このため、他の実施形態と同様に、基板3を透過させて陽極5側から光を取り出すために、無機材料からなる陽極5や陽極配線15の膜厚を薄膜化した場合であっても、薄膜化による導電性の低下を有機電極膜11で十分に補うことが可能になる。この結果、この有機電極膜11を備えた有機電界発光素子1-5の低電圧駆動が可能になり、発光効率の向上を図ることができる。
【0098】
≪6.第6実施形態≫
図6は、本発明の有機電界発光素子1-6を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1-6は、基板側から光を取り出す透過型構造に適する第2の例であり、第4実施形態で示した構成において、上部電極となる陽極5側の有機電極膜(11)および陽極配線(15)を除去したものである。
【0099】
以上のような構成の有機電界発光素子1-6では、上部電極となる陰極9の外側に接して設けられる有機電極膜11’が、低分子材料を用いて構成されている。このため、他の実施形態と同様に、基板3を透過させて陰極9側から光を取り出すために、無機材料からなる陰極9や陰極配線13の膜厚を薄膜化した場合であっても、薄膜化による導電性の低下を有機電極膜11’で十分に補うことが可能になる。この結果、この有機電極膜11’を備えた有機電界発光素子1-6の低電圧駆動が可能になり、発光効率の向上を図ることができる。
【0100】
≪7.第7実施形態≫
図7は、上述した第1〜第6実施形態の有機電界発光素子を用いて構成される表示装置の一例を示す回路構成図である。ここでは、有機電界発光素子を用いたアクティブマトリックス方式の表示装置21に本発明を適用した実施形態を説明する。
【0101】
この図に示すように、この表示装置21の基板3上には、表示領域3aとその周辺領域3bとが設定されている。表示領域3aには、複数の走査線23と複数の信号線24とが縦横に配線されており、それぞれの交差部に対応して1つの画素が設けられた画素アレイ部として構成されている。また周辺領域3bには、走査線23を走査駆動する走査線駆動回路25と、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線24に供給する信号線駆動回路26とが配置されている。
【0102】
走査線23と信号線24との各交差部に設けられる画素回路は、例えばスイッチング用の薄膜トランジスタTr1、駆動用の薄膜トランジスタTr2、保持容量Cs、および有機電界発光素子ELで構成されている。この有機電界発光素子ELとして、上記第1実施形態〜第6実施形態で例示した構成の有機電界発光素子(1-1〜1-6)の何れかが設けられている。
【0103】
そして、走査線駆動回路25の駆動により、スイッチング用の薄膜トランジスタTr1を介して信号線24から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持される。また、保持された信号量に応じた電流が駆動用の薄膜トランジスタTr2から有機電界発光素子ELの下部電極または下部電極側の配線側に供給され、この電流値に応じた輝度で有機電界発光素子ELが発光する構成となっている。尚、駆動用の薄膜トランジスタTr2と保持容量Csとは、共通の電源供給線(Vcc)27に接続されている。また有機電界発光素子ELの上部電極および上部電極側の有機電極膜および配線は、全画素に共通の電極として設けられGNDに接続されている。
【0104】
尚、以上のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けて画素回路を構成しても良い。また、周辺領域3bには、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路が追加される。
【0105】
また以上説明した本発明に係る表示装置21は、図8に開示したような、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部である表示領域3aを囲むようにシーリング部31が設けられ、このシーリング部31を接着剤として、透明なガラス等の対向部(封止基板33)に貼り付けられ形成された表示モジュールが該当する。この透明な封止基板33には、カラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。尚、表示領域3aが形成された表示モジュールとしての基板3には、外部から表示領域3a(画素アレイ部)への信号等を入出力するためのフレキシブルプリント基板35が設けられていても良い。
【0106】
以上のような構成の表示装置21は、上述した第1〜第6実施形態で説明した発行効率の良好な有機電界発光素子を基板上に配列させた構成である。このため表示特性の向上を基体することができる。
【0107】
尚、以上の実施形態においては、アクティブマトリックス型の表示装置に本発明を適用した実施形態を説明した。しかしながら、本発明の表示装置は、パッシブマトリックス型の表示装置への適用も可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0108】
≪8.第8実施形態≫
図9〜13には、以上説明した本発明に係る表示装置を表示部として用いた電子機器の一例を示す。本発明の表示装置は、電子機器に入力された映像信号、さらに電子機器内で生成した映像信号を表示するあらゆる分野の電子機器における表示部に適用することが可能である。以下に、本発明が適用される電子機器の一例について説明する。
【0109】
図9は、本発明が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0110】
図10は、本発明が適用されるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0111】
図11は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0112】
図12は、本発明が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【0113】
図13は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明に係る表示装置を用いることにより作製される。
【実施例】
【0114】
次に、本発明の具体的な実施例1〜7およびこれらの実施例に対する比較例1,2の有機電界発光素子の製造手順を説明し、その後これらの評価結果を説明する。
【0115】
<実施例1>
以下のようにして図1を用いて説明した上面発光に適する有機電界発光素子1-1を作製した。
【0116】
(a)陽極5を次のように形成した。ガラス基板3上に、ITO(膜厚200nm)からなる陽極5をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。
【0117】
(b)有機発光機能層7を次のように形成した。陽極5上に、下記αNPDからなる正孔輸送層7aを膜厚60nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.1nm/秒とした。さらに下記Alq3からなる電子輸送性の有機発光層7bを膜厚40nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.1nm/秒とした。
【0118】
【化9】

【0119】
(c)陰極9を次のように形成した。有機発光機能層7上に、LiFからなる陰極9の第1層を膜厚0.3nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.01nm/秒とした。さらに、Mg・Agからなる陰極9の第2層を膜厚4nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着した。
【0120】
(d)有機電極膜11を次のように形成した。陰極9上に、多環式芳香族炭化水素化合物として下記ADNからなる層11aを膜厚100nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.3nm/秒とした。次にベンゾイミダゾール誘導体として下記化合物(2)-13からなる層11bを膜厚5nmで蒸着成膜した。
【0121】
【化10】

【0122】
(e)陰極配線13を次のように形成した。有機電極膜11上に、LiFからなる陰極配線13の第1層を膜厚0.3nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.01nm/秒とした。さらに、Mg・Agからなる陰極配線13の第2層を膜厚10nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着した。
【0123】
(f)以上のようにして得られた図1の上面発光に適する有機電界発光素子1-1を、プラズマCVD法によって成膜した窒化シリコン膜(膜厚1000nm)で覆った。
【0124】
このようにして得られた有機電界発光素子1-1に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧7.8Vで輝度430cd/m2の発光が得られた。
【0125】
<実施例2>
実施例1の(d)有機電極膜11の形成を次のように変更した。陰極9上に、アザトリフェニレン誘導体として下記化合物(3)-1を膜厚5nmで蒸着した。蒸着速度は0.3nm/秒とした。その後は実施例1と同様に、ADNからなる層11aと、化合物(2)-13からなる層11bとを順次成膜し、3層構造の有機電極膜11を形成した。これ以外は、実施例1と同様の手順で図1の上面発光に適する有機電界発光素子1-1を形成した。
【0126】
【化11】

【0127】
このようにして得られた有機電界発光素子1-1に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧7.5Vで輝度425cd/m2の発光が得られた。
【0128】
<実施例3>
実施例1の(d)有機電極膜11の形成を次のように変更した。陰極9上に、アザトリフェニレン誘導体としての上記化合物(3)-1と、アミン系材料としてのαNPDとを膜厚100nmで共蒸着した。化合物(3)-1の蒸着速度は0.28nm/秒、αNPDの蒸着速度は0.01nm/秒とした。これにより、単層構造の有機電極膜11を形成した。これ以外は、実施例1と同様の手順で図1の上面発光に適する有機電界発光素子1-1を形成した。
【0129】
このようにして得られた有機電界発光素子1-1に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧7.7Vで輝度406cd/m2の発光が得られた。
【0130】
<実施例4>
実施例1の(d)有機電極膜11の形成を次のように変更した。陰極9上に、多環式芳香族炭化水素化合物として下記ルブレンからなる層11aを膜厚100nmで蒸着成膜した。次に、ベンゾイミダゾール誘導体として上記化合物(2)-13からなる層11bを膜厚5nmで蒸着成膜した。これにより、積層構造の有機電極膜11を形成した。これ以外は、実施例1と同様の手順で図1の上面発光に適する有機電界発光素子1-1を形成した。
【0131】
【化12】

【0132】
このようにして得られた有機電界発光素子1-1に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧8.2Vで輝度427cd/m2の発光が得られた。
【0133】
<実施例5>
以下のようにして図2を用いて説明した上面発光に適する逆積みの有機電界発光素子1-2を作製した。
【0134】
(a)陰極9を次のように形成した。ガラス基板3上に、ITOをRFマグネトロンスパッタ法により膜厚200nmで成膜した。次に、Mg・Agを膜厚4nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着した。さらに、LiFを膜厚0.3nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.01nm/秒とした。
【0135】
(b)有機発光機能層7を次のように形成した。陰極9上に、Alq3からなる電子輸送性の有機発光層7bを膜厚40nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.1nm/秒とした。次に、αNPDからなる正孔輸送層7aを膜厚60nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.1nm/秒とした。さらに、正孔注入層として上記化合物(3)-1のヘキサニトリルアザトリフェニレンを膜厚10nmで蒸着成膜した。成膜速度は0.01nm/秒とした。
【0136】
(c)陽極5を次のように形成した。有機発光機能層7上に、Mg・Agを膜厚4nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着して陽極5とした。
【0137】
(d)有機電極膜11を次のように形成した。陽極5上に、ベンゾイミダゾール誘導体として上記化合物(2)-13からなる層11bを膜厚5nmで蒸着成膜した。次に、多環式芳香族炭化水素化合物として上記ADNからなる層11aを膜厚100nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.3nm/秒とした。
【0138】
(e)陽極配線15を次のように形成した。有機電極膜11上に、Mg・Agを膜厚10nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着した。
【0139】
(f)以上のようにして得られた図2の上面発光に適する逆積みの有機電界発光素子1-2を、プラズマCVD法によりって成膜した窒化シリコン膜(膜厚1000nm)によって覆った。
【0140】
このようにして得られた有機電界発光素子1-2に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧7.9Vで輝度380cd/m2の発光が得られた。
【0141】
<実施例6>
以下のようにして図4を用いて説明した両面発光に適する逆積みの有機電界発光素子1-4を作製した。
【0142】
(a)陰極配線13を次のように形成した。ガラス基板3上に、ITOをRFマグネトロンスパッタ法により膜厚200nmで成膜した。次に、Mg・Agを膜厚4nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着した。
【0143】
(b)有機電極膜11’を次のように形成した。陰極配線13上に、ベンゾイミダゾール誘導体として上記化合物(2)-13からなる層11bを膜厚5nmで蒸着成膜した。次に、多環式芳香族炭化水素化合物として上記ADNからなる層11aを膜厚100nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.3nm/秒とした。
【0144】
(c)陰極9を次のように形成した。有機電極膜11’上に、Mg・Agを膜厚4nm、Mg:Ag=10:1の比率で共蒸着した。さらに、LiFを膜厚0.3nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.01nm/秒とした。
【0145】
以降、実施例5の(b)〜(f)と同様の手順で、有機発光機能層7、陽極5、有機電極膜11、および陽極配線15の形成を行い、図4の両面発光に適する逆積みの有機電界発光素子1-4を作製し、さらに窒化シリコン膜の成膜を行った。
【0146】
このようにして得られた有機電界発光素子1-4に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧8.0Vで輝度320cd/m2の発光が得られた。
【0147】
<実施例7>
実施例6の(a)陰極配線13の形成を次のように変更した。ガラス基板3上に、ITOのみをRFマグネトロンスパッタ法により膜厚200nmで成膜した。
【0148】
実施例6の(b)有機電極膜11’の形成を次のように変更した。陰極配線13上に、アザトリフェニレン誘導体としての上記化合物(3)-1と、アミン系材料としてのαNPDとを膜厚100nmで共蒸着した。アザトリフェニレン誘導体の蒸着速度は0.28nm/秒、αNPDの蒸着速度は0.01nm/秒とした。これにより、単層構造の有機電極膜11を形成した。これ以外は、実施例6と同様の手順で図4に示した両面発光に適する逆積みの有機電界発光素子1-4を形成した。
【0149】
このようにして得られた有機電界発光素子1-4に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧8.0Vで輝度380cd/m2の発光が得られた。
【0150】
<比較例1>
実施例1の(d)有機電極膜11の形成を次のように変更した。陰極9上に、ベンゾイミダゾール誘導体である下記化合物(2)-17を膜厚100nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.3nm/秒とした。次に、Alq3(5nm)を蒸着成膜した。これ以外は、実施例1と同様の手順で上面発光に適する有機電界発光素子を形成した。尚、ここでの有機電極膜11の形成に用いたAlq3は、本発明が特徴としているベンゾイミダゾール誘導体と組み合わせて用いる「母骨格が環員数3〜7の多環式芳香族炭化水素化合物」にはあたらない。
【0151】
【化13】

【0152】
このようにして得られた有機電界発光素子に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧9.8Vで輝度340cd/m2の発光が得られた。
【0153】
<比較例2>
実施例1の(d)有機電極膜11の形成を次のように変更した。陰極9上に、多環式芳香族炭化水素化合物として上記ADNからなる層を膜厚100nmで蒸着成膜した。蒸着速度は0.3nm/秒とした。次に、下記化合物(4)を5mmの膜厚で蒸着成膜した。これ以外は、実施例1と同様の手順で上面発光に適する有機電界発光素子を形成した。尚、ここでの有機電極膜11の形成に用いた化合物(4)は、本発明が特徴としている多環式芳香族炭化水素化合物と組み合わせて用いる「ベンゼン環に置換基を有するベンゾイミダゾール誘導体」にはあたらない。
【0154】
【化14】

【0155】
このようにして得られた有機電界発光素子に、100mA/cm2の電流を流したところ、駆動電圧9.6Vで輝度420cd/m2の発光が得られた。
【0156】
<評価結果>
下記表2には、上記実施例1〜7および比較例1,2の構造および特徴的な材料構成と共に、100mA/cm2の電流駆動においての駆動電圧と輝度とを示す。
【0157】
【表2】

【0158】
この表2に示すように、本発明を適用した実施例1〜7の有機電界発光素子では、本発明を適用していない比較例1,2よりも低い駆動電圧での駆動が可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0159】
1-1〜1-6…有機電界発光素子、3…基板、5…陽極、9…陰極、7…有機発光機能層、7b…有機発光層、11,11’…有機電極膜、11a…多環式芳香族炭化水素化合物からなる層、11b…ベンゾイミダゾール誘導体からなる層、21…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機導電性材料からなる陽極および陰極と、
前記陽極と陰極との間に挟持された有機発光層を含む有機発光機能層と、
前記陽極および前記陰極のうちの少なくとも一方の電極の外側に接して設けられた有機電極膜とを有し、
前記有機電極膜が、母骨格が環員数3〜7の多環式芳香族炭化水素化合物およびベンゼン環に置換基を有するベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせと、アザトリフェニレン誘導体との少なくとも一方を用いて構成された
有機電界発光素子。
【請求項2】
前記有機電極膜は、前記多環式芳香族炭化水素化合物からなる層と、前記ベンゾイミダゾール誘導体からなる層とを積層させた構成を有する
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記陰極に接して設けられる前記有機発光機能層は、当該陰極側から前記多環式芳香族炭化水素化合物からなる層と前記ベンゾイミダゾール誘導体からなる層とがこの順に配置されている
請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記陽極に接して設けられる前記有機発光機能層は、当該陽極側から前記ベンゾイミダゾール誘導体からなる層と前記多環式芳香族炭化水素化合物からなる層とがこの順に配置されている
請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記有機電極膜を構成する多環式芳香族炭化水素化合物の母骨格が、アントラセン、ピレン、ベンゾピレン、クリセン、ナフタセン、ベンゾナフタセン、ジベンゾナフタセン、ペリレン、コロネンから選択される
請求項1〜4の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記多環式芳香族炭化水素は、下記一般式(1)で示されるアントラセン誘導体である
請求項5に記載の有機電界発光素子。
【化1】

ただし、一般式(1)中において、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のカルボニル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のカルボニルエステル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のアルケニル基、置換基を有しても良い炭素数20以下のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有しても良い炭素数30以下のシリル基,置換基を有しても良い炭素数30以下のアリール基、置換基を有しても良い炭素数30以下の複素環基、または置換基を有しても良い炭素数30以下のアミノ基を示す。
【請求項7】
前記ベンゾイミダゾール誘導体は、下記一般式(2)で示される
請求項1〜4の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【化2】

ただし一般式(2)中において、
1,A2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数60以下のアリール基、置換基を有しても良い複素環基、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、または置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルコキシ基を示し、
Bは、置換基を有しても良い炭素数60以下のアリーレン基、置換基を有しても良いピリジニレン基、置換基を有しても良いキノリニレン基、または置換基を有しても良いフルオレニレン基を示し、
Arは、置換基を有しても良い炭素数6〜60のアリール基、置換基を有しても良い炭素数3〜60の複素環基、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。
【請求項8】
前記有機電極膜は、前記アザトリフェニレン誘導体からなる層にアミン系材料をドープした構成を有する
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記陽極および前記陰極のうち前記有機電極膜が接する電極は、光取り出し側の電極として構成されている
請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記有機発光層で発生させた光を前記陽極と前記陰極との間で共振させて当該陽極および当該陰極の一方から取り出す
請求項9記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記有機電極膜の外側に電極配線が設けられている
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
基板上に配列形成された複数の有機電界発光素子が、
無機導電性材料からなる陽極および陰極と、
前記陽極と陰極との間に挟持された有機発光層を含む有機発光機能層と、
前記陽極および前記陰極のうち光取り出し側となる少なくとも一方の電極の外側に接して設けられた有機電極膜とを有し、
前記有機電極膜が、母骨格が環員数3〜7の多環式芳香族炭化水素化合物およびベンゼン環に置換基を有するベンゾイミダゾール誘導体の組み合わせと、アザトリフェニレン誘導体との少なくとも一方を用いて構成された
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−244868(P2010−244868A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92853(P2009−92853)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】