説明

有機電界発光素子の作製方法及び有機電界発光素子

【課題】光取り出し効率が高い有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】アスペクト比が3以上の発光材料と、液晶性を発現可能なホスト材料を含む発光層を、該ホスト材料が液晶性を発現する温度範囲にて塗布成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子の作製方法及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、有機EL素子ともいう)は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
通常の有機EL素子においては、発光材料の遷移双極子モーメントの方向はランダムであるため、全体として等方的に発光している。
【0003】
有機EL素子は、一般に、発光層を含め素子を構成する各層や素子の基板(ガラス基板)の屈折率は空気より高く、例えば、有機電界発光素子では、発光層などの有機層の屈折率は1.6〜2.1である。このため、発光材料の遷移双極子モーメントがランダム配向で全体として等方的に発光する場合、発光した光の多くは界面で全反射してしまうため、発光層で発光した光のうちの約20%しか素子外に取り出すことができない。この状態で高い輝度を得るためには、過剰に発光させる必要があり、結果として素子の耐久性が低下してしまう問題がある。
これに対して、発光材料の遷移双極子モーメントを基板に水平配向させることで、基板面に垂直な方向の発光成分が増える異方性発光が得られるので、界面での全反射を抑えられ、光取り出し効率が原理的に向上することが知られている。
【0004】
このような水平配向型の素子は、液晶性のホスト材料を塗布することで配向させ、発光材料の遷移双極子モーメントの向きを制御して作製することができる。
例えば、特許文献1には、光取り出し効率が高く、耐久性に優れ、得られる光線の指向性に優れた有機EL素子を得ることを目的とし、発光層として発光性ディスコティック液晶層を使用することが記載されている。
また、特許文献2には、光取り出し効率の向上を目的とし、ディスコティック相又はスメクチック相を示す液晶化合物に平面分子骨格を有する燐光発光性化合物を混合して、蒸着により発光層を形成した発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−321371号公報
【特許文献2】特開2002−43056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機EL素子は、発光層及びその他の有機層を、蒸着などの乾式法や塗布などの湿式法により成膜することで作製することができるが、生産性などの観点から湿式法が注目されている。例えば、特許文献1では、ディスコティック液晶組成物をスピンコートすることで発光層を形成している。
しかしながら、塗布による成膜では塗布ムラによる液晶性材料の配向性が低下することがある。また、スピンコート法などでは、通常、溶剤の揮発によるムラを抑えるために室温で塗布が行われるが、室温では液晶性材料の配向性が低い。このため、塗布後、加温することにより液晶性材料の配向性を高めることが行われるが、加温によりかえって結晶化してしまうことがある。したがって、塗布による成膜では、これら配向性の低下や結晶化などによる、光取り出し効率の低下を改善することが求められている。
【0007】
本発明の目的は、光取り出し効率が高い有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記状況を鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行なったところ、液晶性のホスト材料を塗布する際に該材料が液晶性を発現する温度とすることにより、ムラなく高い配向性の発光層を成膜でき、更に予想外にも該材料の結晶化も防止できることを見出した。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1]
アスペクト比が3以上の発光材料と、液晶性を発現可能なホスト材料とを含む発光層を有する有機光電発光素子の作製方法であって、
前記ホスト材料が液晶性を発現する温度範囲にて前記発光層を塗布成膜する、有機電界発光素子の作製方法。
[2]
前記発光層を塗布成膜する際の温度範囲が、40℃よりも高い温度かつ前記ホスト材料の液晶相から等方相への相転移温度よりも5℃以上低い温度である、[1]記載の有機電界発光素子の作製方法。
[3]
前記ホスト材料のアスペクト比が3以上である、[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[4]
前記ホスト材料がディスコティック液晶性材料である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[5]
前記ディスコティック液晶性材料がディスコティックネマチック液晶相を発現する、[4]に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[6]
前記発光材料が燐光発光材料である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[7]
前記燐光発光材料が白金錯体である、[6]に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[8]
前記燐光発光材料が下記一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択される少なくとも1つである、[6]又は[7]に記載の有機電界発光素子の作製方法。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、gは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜R及びR30、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、gが2以上の場合、複数のR〜R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
一般式(5)
【化5】

(一般式(5)中、Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。m、n、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R、R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、gが2以上の場合、複数のR、R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
[9]
前記有機電界発光素子が陽極と陰極との間に前記発光層を有する有機電界発光素子であって、前記燐光発光材料の遷移双極子モーメントが前記陽極に対して水平に配向されている、[6]〜[8]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[10]
前記発光層がフッ素原子含有化合物を0.0001質量%〜10質量%含有する、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
[11]
[1]〜[10]のいずれか1項に記載の作製方法により作製された有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光取り出し効率が高い有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0013】
[有機電界発光素子の作製方法]
本発明の有機電界発光素子の作製方法は、アスペクト比が3以上の発光材料と、液晶性を発現可能なホスト材料を含む発光層を有する有機光電発光素子の作製方法であって、該ホスト材料が液晶性を発現する温度範囲にて前記発光層を塗布成膜する。
ホスト材料が液晶性を発現する温度で塗布することにより、該ホスト材料を結晶化させることなくムラなく配向させることができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0014】
ホスト材料の配向性の向上と結晶化抑制の観点から、発光層を塗布成膜する際の温度範囲は、40℃よりも高い温度かつホスト材料の液晶相から等方相への相転移温度よりも5℃以上低い温度であることが好ましい。より好ましくは、45℃よりも高い温度かつホスト材料の液晶相から等方相への相転移温度よりも10℃以上低い温度である。例えば、発光層を塗布成膜する際の温度範囲は40℃〜120℃であることが好ましく、60℃〜100℃であることがより好ましい。
【0015】
発光層の塗布成膜は、ホスト材料と、必要に応じて他の材料等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を基板上に塗布することで行うことができる。この場合、塗布時の基板温度を上記温度範囲とすることで、塗布成膜時の温度を調整することができる。基板を加熱する手段は特に限定されず、公知の加熱手段を用いることができる。
塗布液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、インクジェット法などが挙げられる。
【0016】
以下、発光層形成用の塗布液に用いることのできる材料について説明する。
(ホスト材料)
本発明に用いるホスト材料は液晶性を発現可能なホスト材料(以下、液晶性ホスト材料という)である。本発明の方法で発光層を作製することにより、液晶性ホスト材料が配向し、これにより発光材料の遷移双極子モーメントの配向性も向上させることができ、光取り出し率が向上する。
配向性の観点から、液晶性ホスト材料は平面性の高い材料であることが好ましく、アスペクト比が2.5以上であることが好ましく、2.5〜30がより好ましく、3〜20が更に好ましい。
アスペクト比とは、液晶性ホスト材料の分子直径と分子厚みとの比(分子直径/分子厚み)である。
ここで、分子直径とは最も長い分子長を意味し、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さを液晶性ホスト材料の分子直径と定義する。
また、分子厚みとは、上記分子直径をx軸と仮定し、その状態でy軸方向の分子長さが最大となるようにy軸をとり、該x及びy軸と直交する方向をz軸としたときの、該z軸方向の分子の厚みを意味する。分子厚みについても、分子直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子厚みと定義する。
【0017】
平面性の高い液晶性ホスト材料としては、ディスコティック液晶性材料(円盤状液晶性材料)が好ましい。
【0018】
(ディスコティック液晶性材料)
ディスコティック液晶性材料は、平面性の高い円盤状の分子からなる液晶性材料であり、屈折率が、負の光学一軸性である。
ディスコティック液晶性材料が発現する液晶相としては、カラムナー液晶相、ディスコティックネマチック液晶相(N相)などが挙げられる。これらの中でも、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック液晶相が好ましい。
なお、材料の液晶性の発現の有無は、偏光顕微鏡を観察することで判別することができる。
【0019】
ディスコティック液晶性材料には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0020】
ディスコティック液晶性材料としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶性材料は、最終的に有機電界発光素子に含まれる化合物が液晶性を示す必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合又は架橋し、高分子化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性材料の好ましい例としては、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性材料の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0021】
ディスコティック液晶性材料のディスコティック液晶相−等方相転移温度は、50〜300℃が好ましく、70〜300℃がより好ましく、100℃〜300℃が特に好ましい。
【0022】
ディスコティック液晶性材料としては、例えば下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
上記化合物(D1)〜(D11)において、Lは下記で述べる一般式(T−I)においてRと同義である。
上記化合物(D1)〜(D11)において、(D1)、(D3)、(D5)、(D9)、(D11)が好ましく、(D3)で表されるトリフェニレン誘導体がより好ましい。
【0026】
(液晶性を示すトリフェニレン誘導体)
以下、前記(D3)で表されるトリフェニレン誘導体について説明する。以降、前記(D4)を改めて下記一般式(T−I)として記載する。
【0027】
【化8】

【0028】
上記一般式(T−I)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はR−O−CO−を意味する。これら基を持つ化合物が全てディスコティック液晶性ではないが、公知技術等に基づきディスコティック液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0029】
としては、具体的には、R−、R−O−Ph−、R−Ph−、R−(O−RnT−、R−(O−RnT−O−、R−O−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、R−CH=CH−COO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−COO−が挙げられる。ここで、Rは重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0030】
重合性基としては、スチリル基、アリル基、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基等が挙げられ、有機EL素子での発光効率・耐久性の観点で、スチリル基、アリル基がより好ましい。
で表される重合性基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは1〜10の範囲である。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは2〜8の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、液晶性発現の観点で、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜8の範囲であり、更に好ましくは1〜5の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0031】
としては、液晶相発現の観点で、R−、R−O−Ph−、R−Ph−、R−(O−RnT−、R−(O−RnT−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−R)n−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、R−CH=CH−COO−が好ましく、有機EL素子性能の観点で、R−、R−O−Ph−、R−Ph−、R−(O−RnT−、R−(O−RnT−O−、が更に好ましい。
【0032】
ディスコティック液晶性材料としては、下記のピレン誘導体も好ましい例として挙げられる。
【0033】
(液晶性を示すピレン誘導体)
液晶性を示すピレン誘導体としては、従来から知られているディスコティック液晶性のピレン誘導体であれば使用できるが、例えば下記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体を挙げることができる。
【0034】
【化9】

【0035】
上記一般式(P−I)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はを意味する。pは、置換基数であり、1〜5の整数を表す。これら基を持つ化合物が全てディスコティック液晶性ではないが、公知技術等に基づきディスコティック液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0036】
としては、具体的には、R−、R−O−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnP−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−COO−、R−CH=CH−COO−が挙げられる。ここで、Rは重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0037】
は重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、重合性基を有する場合、アルキル基の最末端に重合性基を有することがN相の発現性の観点で好ましい。重合性基としては、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基等が挙げられ、重合の速度、合成の容易性及びコストの点で、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基が好ましく、アクリル酸エステル基がより好ましい。
で表される重合性基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは1〜10の範囲である。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜9の範囲であり、更に好ましくは2〜8の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、液晶性発現の観点で、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜8の範囲であり、更に好ましくは1〜5の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0038】
としては、液晶相安定化の観点で、R−O−が好ましい。
pは、置換基数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2の整数である。一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、少なくともベンゼン環の4位に置換基を有することが分子サイズ拡大によるアスペクト比向上の観点で好ましい。
【0039】
上記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、液晶温度域拡大という点で、下記一般式(P−II)で表されるピレン誘導体であることが好ましい。
【0040】
【化10】

【0041】
上記一般式(P−II)中、Rは、一般式(P−I)におけるRと同義である。
【0042】
一般式(P−II)におけるRの具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(P−I)におけるものと同様である。
【0043】
ディスコティック液晶性材料の分子半径としては、0.4nm〜3nmが好ましく、1.0nm〜2.5nmがより好ましく、1.0nm〜2.0nmが特に好ましい。
ディスコティック液晶性ホスト材料の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
分子半径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、ディスコティック液晶性材料の分子半径を求める。
【0044】
発光層形成用の塗布液中における液晶性ホスト材料の含有量は、全固形分に対して70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0045】
(発光材料)
発光層形成用の塗布液には、発光材料を含有させることができる。
発光材料としては、液晶性ホスト材料の配向を乱さないで自身の配向性を向上させる観点から、分子コア直径と分子コア厚みとのアスペクト比(分子コア直径/分子コア厚み)としては、少なくとも3であり、3〜30がより好ましく、4〜20が特に好ましい。前記分子コア直径とは、クロモフォア(共役系でつながった発色団、発光骨格)の最も長い分子長を意味する。
前記分子コア直径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZ
にて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さを前記燐光発光性化合物の分子コア直径と定義する。
前記分子コア厚みとは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。
前記分子コア厚みについても、前記分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0046】
発光材料の分子半径としては、0.40nm〜3.0nmが好ましく、0.80nm〜2.5nmがより好ましく、1.20nm〜2.0nmが特に好ましい。この範囲であることは、配向性の向上、発光強度と発光波長の制御し易さ等の観点から好ましい。
ここで、発光材料の分子半径は、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
分子半径としては、前記分子コア直径と同様に、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて構造最適化計算を行う。前記構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、発光材料の分子半径を求める。
分子コア厚みとは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。分子コア厚みについても、分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0047】
発光材料の分子半径と液晶性ホスト材料の分子半径とのサイズ比(発光材料の分子半径/液晶性ホスト材料の分子半径)としては、0.8〜1.2であり、0.85〜1.15がより好ましく、0.9〜1.1が特に好ましい。前記サイズ比がこの範囲であると、有機電界発光素子の正面方向の輝度が上昇する。これは、液晶性ホスト材料に発光材料を混合しても、液晶性ホスト材料の配向秩序度(オーダーパラメーター)を低下させないため、成膜後、モノドメインかつ分子全体の平均が水平配向となり、発光材料分子の配向方向が均一になるためと推測している。なお、有機電界発光素子の正面方向とは、有機電界発光素子を立てて配置し、基板側から前記発光層へ垂線を引き、この方向から見た方向のことをいう。
【0048】
発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、燐光発光材料が好ましい。
発光材料としては、例えば遷移金属原子を含む錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0049】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
配位子としては、例えば、芳香族炭素環配位子、含窒素ヘテロ環配位子、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、アルコラト配位子、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
芳香族炭素環配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなどが挙げられる。
含窒素ヘテロ環配位子としては、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。
ジケトン配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。
カルボン酸配位子としては、例えば、酢酸配位子などが挙げられる。
アルコラト配位子としては、例えば、フェノラト配位子などが挙げられる。
【0050】
遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、前記アスペクト比が3以上となる点で、平面状の配位構造である4座となる白金(白金錯体)が好ましく、サレン系、ポルフィリン系骨格の白金錯体がより好ましい。
【0051】
前記白金錯体としては、下記一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択されることが好ましい。
一般式(1)
【0052】
【化11】

【0053】
(一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
【0054】
一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。好ましくは、Zが炭素原子、Yが窒素原子、Xが炭素原子である。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。nは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。pは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。qは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0055】
〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭化水素基で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
また、R及びRとしては、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基又はシリル基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、フェニル基であることが好ましい。
及びRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0056】
Arが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。Arが表すアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子)である。Arとしてより好ましくは、置換基を有するフェニル基であり、該置換基としては、メチル基、t−ブチル基、4−ペンチル−シクロヘキシル基、4−ペンチル−シクロヘキシルメトキシ基などが好ましい。
m、n、p、q、が2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
一般式(2)
【0057】
【化12】

【0058】
(一般式(2)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0059】
一般式(2)中、X,Y,Zは、一般式(1)のX,Y,Zと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0060】
〜Rは、一般式(1)のR〜Rと同義である。
及びRとしては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子、シアノ基が好ましい。
及びRが表すアルキル基としては、置換基を有してもよい、メチル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが好ましく、ブチル基、トリフルオロメチル基、オクチル基、デシル基がより好ましい。
及びRが表すアルコキシ基としては、デシルオキシ基が好ましい。
及びRが表すアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基が好ましく、該置換基としては、アルキル基が好ましく、プロピル基、ブチル基がより好ましい。
及びRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0061】
r、s、t、u、は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、rは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。sは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。tは0又は1が好ましく、uは0又は1が好ましい。
r、s、t、u、が2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。該環状構造としては、ベンゾフラン環が挙げられる。
【0062】
とWとは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
とWが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
また、WとWが結合して形成する環状構造としては、シクロヘキシル環状構造が挙げられる。
とWとしては、高アスペクト比の観点でメチル基、シクロヘキシル環状構造が好ましい。
一般式(3)
【0063】
【化13】

【0064】
(一般式(3)中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0065】
一般式(3)中、R〜R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、ペンチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0066】
〜R10は、水素原子あるいはRとR11、R10とR12がそれぞれ結合したヘテロ芳香環が好ましい。該へテロ芳香環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。好ましくは、ピリジン環である。
13、R14、R15、R16は、R13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環であることが好ましい。該芳香環としては、ベンゼン環が挙げられる。
11とR12は、水素原子、アルキル基、又はR11とR12が結合した芳香環を表すことが好ましい。R11とR12が結合した芳香環としては、ベンゼン環又はナフタレン環が挙げられる。
とR11、R10とR12がそれぞれ結合したヘテロ芳香環、及びR13、R14、R15、R16は、R13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子などが挙げられ、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ウンデシル基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フッ素原子が好ましい。
これらの中でも、アスペクト比及び分子サイズの観点でR13とR16、R14とR15、R11とR12がそれぞれ結合した芳香環が好ましい。
【0067】
一般式(3)で表される化合物のより好ましい態様としては、下記一般式(6)の化合物が挙げられる。
一般式(6)
【0068】
【化14】

【0069】
前記構造式(6)中、Bは、芳香族及び非芳香族の6員環のいずれかを形成してもよい。
17〜R26は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26は互いに結合して環状構造を形成してもよい。
17、R20、R21、R24は、水素原子、アルキル基が好ましい。
18、R19、R22、R23は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基が好ましく、アルキル基、アルコキ基がより好ましく、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基が更に好ましい。
25〜R26は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はR25とR26が結合した芳香環が好ましい。
Bは非芳香族6員環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。該環には置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基(メチル基、ブチル基)が挙げられる。
アススペクト比の観点からは、R17〜R26は、鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
一般式(4)
【0070】
【化15】

【0071】
(一般式(4)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、gは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜R及びR30、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、gが2以上の場合、複数のR〜R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
【0072】
一般式(4)中、R〜R、Ar、X、Y、Z、m、n、pは一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。
gは、0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0073】
30は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基は、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
30としては、フッ素原子が好ましい。
アススペクト比の観点からは、R30は、鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
一般式(5)
【0074】
【化16】

【0075】
(一般式(5)中、Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。m、n、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R、R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、gが2以上の場合、複数のR、R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
【0076】
一般式(5)中、R、R、Ar、Z、m、nは一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同じである。また、M、Q、R30、gは一般式(4)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0077】
一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

【0080】
【化19】

【0081】
一般式(1)〜(5)で表される白金錯体は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0082】
発光層形成用の塗布液における発光材料の含有量は、全固形分に対して、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0083】
(その他の化合物)
発光層形成用の塗布液には、更に、フッ素原子含有化合物や他の添加剤を含有させてもよい。
【0084】
(フッ素原子含有化合物)
フッ素原子含有化合物は、発光層中の空気界面側に局在する性質を有し、前記フッ素原子含有化合物を発光層に含有させることで、液晶性ホスト材料及び発光材料を前記陽極に対して効果的に水平方向に配向させることができ、光取り出し効率向上の観点で好ましい。
【0085】
フッ素原子含有化合物としては、空気界面側への局在性や溶剤溶解性、成膜性の観点から、フッ素原子を4個以上含む側鎖置換基を3個以上有することが好ましく、3個〜18個含んでいることがより好ましく、4個〜12個含んでいることが特に好ましい。また、同様な観点から、側鎖置換基1個あたり、フッ素原子を4個以上含むことが好ましく、6個〜30個含むことがより好ましく、8個〜25個含むことが特に好ましい。フッ素原子の数は、元素分析、MASS、H−NMR、19F−NMRで測定することができる。
【0086】
フッ素原子含有化合物としては、例えば以下の構造式(A)及び(B)で表される化合物が好ましい。
【0087】
【化20】

【0088】
構造式(A)中、R27、R28は、各々独立にフッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基を表し、−CH(CFH、−CH(CFH、−CH(CFH、−(CH、−CHCHOCHCH13などが好ましい。
【0089】
【化21】

【0090】
構造式(B)中、R29はフッ素原子を4個以上有する置換又は無置換のアルキル基、アシル基を表し、−CH(CFH、−CH(CFH、−CH(CFH、−(CH、−CHCHOCHCH13などが好ましい。
【0091】
発光層形成用の塗布液におけるフッ素原子含有化合物の含有量は、全固形分に対して0.0001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜2質量%がより好ましく、0.01質量%〜1質量%が特に好ましい。
【0092】
(溶剤)
発光層形成用の塗布液の溶剤としては、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
ケトン系溶媒しては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどが挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0093】
本発明の有機電界発光素子の作製方法により、燐光発光材料の遷移双極子モーメントを陽極に対して水平に配向させるが好ましい。発光材料の遷移双極子モーメントが陽極に対して水平に配向されることで、陽極に対して垂直方向への発光成分が増加し、光取り出し効率を向上させる点で有利である。
遷移双極子モーメントの方向としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて行う。計算に使用する分子構造は、構造最適化計算を行って生成エネルギーが最小となる構造を用い、遷移双極子モーメントの方向を求めることができる。
あるいは、発光層を形成した後、ATR−IR測定法や斜入射UV測定法により測定することもできる。
【0094】
本発明の有機電界発光素子の作製方法においては、液晶性ホスト材料が液晶相を発現可能な温度で塗布成膜した後、液晶性ホスト材料の分子の配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、重合反応により実施する方法や、液晶相−ガラス転移を利用して行うことが好ましい。重合反応としては、重合開始剤を用いた熱重合反応や光重合反応などを用いることができるが、素子性能の観点からは重合開始剤を用いない方法が好ましく、スチリル基による熱重合反応やシランカップリング剤によるゾルゲル硬膜法が挙げられる。
【0095】
重合開始剤としては、例えば、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
発光層形成用の塗布液における重合開始剤の含有量は、全固形分に対して、0.001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜1質量%がより好ましい。
【0096】
本発明の有機電界発光素子の作製方法においては、塗布成膜された発光層に、更に光を照射することで液晶性ホスト材料の少なくとも一部を一軸配向させてもよい。照射する光としては、一方向に直線偏光した紫外線、又は電子線などが挙げられる。これらの中でも、紫外線が好適に用いられる。光照射の照射エネルギーとしては、20mJ/cm〜50J/cmが好ましく、20〜5,000mJ/cmがより好ましく、100mJ/cm〜800mJ/cmが特に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0097】
〔有機電界発光素子〕
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子は、前述の有機電界発光素子の作製方法により形成した発光層を含む。好ましい態様としては、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子である。
【0098】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であり、発光層と陽極の間に更に少なくとも一層の有機層を含むが、これら以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0099】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、陽極上に又は陰極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、陽極又は陰極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0100】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0101】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0102】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0103】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0104】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0105】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0106】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層以外の各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0107】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0108】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は少なくとも1つ以上の液晶性ホスト材料と発光材料とを含むことが好ましい。
発光材料としては、配向性の観点から、前述した平面性の高い発光材料が好ましく、燐光発光材料であることが好ましく、白金錯体であることが更に好ましい。発光材料は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0109】
発光層中の発光材料の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であるのがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0110】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から発光材料へエネルギー移動が起こり、その結果、該発光材料を発光させる化合物である。また、ホールあるいは電子を伝達し、発光材料上で再結合させて、発光材料が励起状態となるのを補助する化合物であっても良い。
本発明では、前述した液晶性ホスト材料を含有する。該液晶性ホスト材料の発光層中での含有量は、70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0111】
ホスト材料としては、前述の液晶性ホスト材料以外の材料を含有させてもよく、その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0112】
また、発光層には前述のフッ素原子含有化合物を含有させてもよい。発光層におけるフッ素原子含有化合物の含有量は、全固形分に対して0.0001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜2質量%がより好ましく、0.01質量%〜1質量%が特に好ましい。
【0113】
発光層の厚みは、駆動電圧上昇を抑え、また短絡を防止する観点から、10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。
【0114】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有してもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0115】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0116】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0117】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0118】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0119】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0120】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0121】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0122】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
以下、溶媒の混合比は体積比を表す。
【0124】
(合成例1)
<燐光発光性化合物1の合成>
【0125】
【化22】

【0126】
−化合物1aの合成−
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(20g)、n−デシルブロミド(32g)及び炭酸カリウム(20g)を200mlのDMAc(ジメチルアセトアミド)中に混合させ、60℃で4時間反応させた。反応液を濾過し、得られた濾液を酢酸エチル/飽和食塩水に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)することにより、化合物1a(20.3g)を得た。
−化合物1bの合成−
化合物1a(3g)、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン(0.73g)のエタノール溶液(30ml)に酢酸5滴を1ml駒込ピペットで滴下し、80℃で6時間反応させた。析出した固体を濾取し、エタノールで再結晶することにより、化合物1b(2.7g)を得た。
−燐光発光性化合物1の合成−
化合物1b(1.5g)、酢酸ナトリウム(0.19g)のアセトニトリル溶液(30ml)に、PtCl(0.61g)のDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液(15ml)を80℃にて滴下し、7時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=8/1)し、酢酸エチルで再結晶することにより、燐光発光性化合物1(0.72g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色固体であった。
燐光発光性化合物1の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0127】
(合成例2)
<燐光発光性化合物2の合成>
【0128】
【化23】

【0129】
−化合物2bの合成−
実施例1で合成した化合物1a(4g)、エチレンジアミン(0.43g)のエタノール溶液(40ml)に酢酸3滴を1ml駒込ピペットで滴下し、80℃で6時間反応させた。析出した固体を濾取し、エタノールで再結晶することにより、化合物2b(3.9g)を得た。
−燐光発光性化合物2の合成−
化合物2b(3.7g)、酢酸ナトリウム(0.52g)のアセトニトリル溶液(60ml)に、PtCl(1.7g)のDMSO溶液(30ml)を80℃にて滴下し、7時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=9/1)し、イソプロピルアルコールで加熱洗浄することにより、燐光発光性化合物2(2.1g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色固体であった。
燐光発光性化合物2の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、4.5であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0130】
(合成例3)
<燐光発光性化合物3の合成>
【0131】
【化24】

【0132】
−化合物3bの合成−
実施例1で合成した化合物1a(4.37g)、o-フェニレンジアミン(0.85g)のエタノール溶液(45ml)に酢酸2滴を1ml駒込ピペットで滴下し、80℃で3時間反応させた。析出した固体を濾取し、エタノールで再結晶することにより、化合物3b(3.7g)を得た。
−燐光発光性化合物3の合成−
化合物3b(3g)、酢酸ナトリウム(0.39g)のアセトニトリル溶液(60ml)に、PtCl(1.27g)のDMSO溶液(30ml)を80℃にて滴下し、7時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、得られた固体をエタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=6/1)し、酢酸エチルで再結晶することにより、燐光発光性化合物3(1.8g)を得た。なお、化合物の同定は、元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色固体であった。
燐光発光性化合物3の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0133】
(合成例4)
<燐光発光性化合物4の合成>
【0134】
【化25】

【0135】
−化合物4aの合成−
1,2−ジニトロベンゼン(4.6g)、硫酸銀(17g)の硫酸溶液(46ml)に、臭素(5ml)を滴下し、100℃で30分反応後、120℃で30分反応させ、更に180℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を氷水に注加し、析出した固体を濾過した。得られた濾液に酢酸エチルを加え、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/5)し、ヘキサン/酢酸エチル=6/1で再結晶することにより、化合物4a(1.6g)を得た。
−化合物4bの合成−
化合物4a(0.6g)、ヨウ化銅(35mg)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(106mg)のTHF(テトラヒドロフラン)溶液(24ml)に、トリエチルアミン(1.27ml)を滴下した後、1−ウンデシル(0.77ml)を滴下し、窒素雰囲気下室温で12時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/40、展開後1/20)することにより、化合物4b(0.34g)を得た。
−化合物4cの合成−
10%Pd/C(63mg)に、化合物4b(0.33g)のエタノール溶液(10ml)を滴下した後、飽水ヒドラジン(4.93g)を滴下し、85℃で5時間反応させた。反応液をセライト濾過後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)することにより、化合物4c(0.27g)を得た。
−化合物4dの合成−
化合物4c(0.19g)、化合物1a(0.15g)のエタノール溶液(3ml)に、70℃にて酢酸1滴を1ml駒込ピペットで滴下し、6時間反応させた。減圧にて濃縮後、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/6)することにより、化合物4d(0.28g)を得た。
−燐光発光性化合物4の合成−
化合物4d(0.2g)、酢酸ナトリウム(37mg)のアセトニトリル溶液(7ml)に、PtCl(62mg)のDMSO溶液(3.5ml)を80℃にて滴下し、5時間反応させた。反応液を減圧にて濃縮し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/1)することにより、燐光発光性化合物4(0.22g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は黄色アモルファス固体であった。
燐光発光性化合物4の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、12.3であり、分子半径は、1.91nmであった。
【0136】
(合成例5)
<燐光発光性化合物5の合成>
【0137】
【化26】

【0138】
−化合物5aの合成−
LAH(水素化アルミニウムリチウム)の1MのTHF溶液(130ml)をTHF100mlと混合し、氷冷下で、トランス−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸(23.5g)のTHF溶液(80ml)を1.5時間かけて滴下した。滴下後、室温にて1.5時間反応させ、その後、80℃にて2時間反応させた。反応液を1N塩酸氷水に注加し、酢酸エチルにて抽出を行った。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/40、展開後酢酸エチル/ヘキサン=1/5)することにより、化合物5a(21.9g)を得た。
−化合物5bの合成−
化合物5a(21.9g)のアセトニトリル溶液(360ml)に室温にて、三臭化リン(16.8ml)を滴下し、45℃で3時間撹拌させた。室温まで冷却後、臭化カリウム(50g)を15分かけて添加した。更にピリジン(30ml)を滴下後、80℃にて3時間反応させた。反応液を酢酸エチル/氷水(混合比:酢酸エチル/氷水=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:ヘキサン)することにより、化合物5b(25.1g)を得た。
−化合物5cの合成−
化合物5b(24.1g)と2,6−ジメチル−4−ニトロフェノール(17.9g)のNMP(N-メチルピロリドン)溶液(240ml)に炭酸カリウム(20.2g)を加え、90℃で3.5時間反応後、100℃にて2.5時間反応させた。更に、130℃にて2時間反応させた後、1N塩酸水/酢酸エチル(混合比:1N塩酸水/酢酸エチル=1/1)に注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:ヘキサン、展開後酢酸エチル/ヘキサン=1/10)し、得られた粗体をメタノール洗浄することで、化合物5c(23.7g)を得た。
−化合物5dの合成−
還元鉄(27.8g)、塩化アンモニウム(2.7g)、イソプロピルアルコール(290ml)及び水(29ml)を三ツ口フラスコにいれ、95℃にてメカニカルスターラーで撹拌(300rpm)した。濃塩酸を少量滴下し、活性化させた後、化合物5c(23.7g)を少しずつ添加した。加熱還流下で3時間撹拌後、反応液をセライト濾過した。濾液を酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液(混合比:酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム水溶液=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10、展開後1/5)することで、化合物5d(21.3g)を得た。
−化合物5eの合成−
4−メチルピラゾール(5.0g)、1−クロロ−3−ヨードベンゼン(9.68g)、CuO(0.29g)炭酸セシウム(26.46g)及びサリチルアルデヒドオキシム(関東化学製)(1.11g)のDMAc溶液(100ml)を窒素雰囲気下にて140℃にて5時間反応した。反応液に酢酸エチルを加え、セライト濾過した。濾液を飽和食塩水に注加し、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/7)することで、化合物5e(6.35g)を得た。
−化合物5fの合成−
化合物5e(1.0g)、化合物5d(0.72g)、t−ブトキシカリウム(1.1
3g)、Pd(dba)(27mg)及び2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル(和光純薬製)(56.4mg)のトルエン溶液(10ml)を窒素雰囲気下にて110℃で6時間反応した。反応液に酢酸エチル及び水を加え、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)することで、化合物5f(0.65g)を得た。
−燐光発光性化合物5の合成−
化合物5f(0.4g)及びPtCl(0.17g)のベンゾニトリル溶液(3ml)を窒素雰囲気下にて190℃で24時間反応させた。反応後、ベンゾニトリルを減圧留去し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=7/1)した。得られた固体をエタノールで洗浄後、酢酸エチルで洗浄することで、燐光発光性化合物5(0.3g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物5の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、3.1であり、分子半径は、1.93nmであった。
【0139】
(合成例6)
<燐光発光性化合物6の合成>
【0140】
【化27】

【0141】
−化合物6aの合成−
p−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ブロモベンゼン(東京化成製)(4g)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(関東化学製)(0.135g)、Pd(dba)(0.15g)、塩化リチウム(0.33g)及び亜鉛ビス[ビス(トリメチルシリル)アミド](ALDRICH製)(3g)のTHF溶液(40ml)を窒素雰囲気下にて50℃で6時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え、1N塩酸水に注加した。炭酸カリウムで中和後、分液した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3.5)することで、化合物6a(3.1g)を得た。
−化合物6bの合成−
化合物5e(1.0g)、化合物6a(0.58g)、t−ブトキシカリウム(1.13g)、Pd(dba)(27mg)及び2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル(和光純薬製)(56.4mg)のトルエン溶液(10ml)を窒素雰囲気下にて110℃で6時間反応した。反応液に酢酸エチル及び水を加え、分液後、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)することで、化合物6b(0.57g)を得た。
−燐光発光性化合物6の合成−
化合物6b(0.3g)及びPtCl(0.14g)のベンゾニトリル溶液(3ml)を窒素雰囲気下にて190℃で24時間反応させた。反応後、ベンゾニトリルを減圧留去し、濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=7/1)した。得られた固体をエタノールで洗浄後、酢酸エチルで洗浄することで、燐光発光性化合物6(0.27g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
燐光発光性化合物6の分子コア直径、分子コア厚み及び分子半径は、Gaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、アスペクト比は、3.1であり、分子半径は、1.74nmであった。
【0142】
(合成例7)
<ディスコティック液晶性材料1の合成>
【0143】
【化28】

【0144】
−ホスト1a(host−1a)の合成−
エチルジエチルホスホノアセテート(和光純薬製)(20ml)のDME(ジメチルエーテル)溶液(200ml)に、氷冷下でNaH(4.0g)を添加し、室温にて10分攪拌後、再び氷冷下でデカナール(和光純薬製)(18.9ml)のDME溶液(60ml)を滴下した。80℃で3時間反応後、反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、ホスト1a(18.9g)を得た。
−ホスト1b(host−1b)の合成−
ホスト1a(10.6g)のDME溶液(100ml)に、水酸化リチウム1水和物(4.3g)水溶液(40ml)を滴下し、80℃にて5時間反応させた。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)し、ノルマルヘキサンにて再結晶することにより、ホスト1b(7.0g)を得た。
−ディスコティック液晶性材料1の合成−
ホスト1b(8.6g)、ジイソプロピルエチルアミン(7.9ml)のTHF溶液(80ml)に、−15℃下でメシルクロリド(3.2ml)を滴下した。1時間攪拌後、反応液にジイソプロピルエチルアミン(7.9ml)を加え、続いて2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン水和物(2g)のTHF溶液(80ml)を滴下し、触媒量のジメチルアミノピリジンを加え、室温にて6時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/8)し、エタノール/ノルマルヘキサン=95/5にて再結晶することにより、ディスコティック液晶性ホスト化合物1(5.0g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。ディスコティック液晶性材料1の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.80nmであった。また、アスペクト比は9.1であった。
偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Cr 48℃ Nd 79℃ Iso
(Cr:結晶、Nd:ディスコティックネマチック相、Iso:等方相)
即ち、48〜79℃の温度範囲で液晶相を発現し、液晶相から等方相への相転移温度は79℃であった。
(合成例8)
<ディスコティック液晶性材料2の合成>
【0145】
【化29】

【0146】
−ディスコティック液晶性材料2の合成−
ヘキサブロモトリフェニレン(1g)、4−オクチルオキシフェニルホウ酸(3.2g)のキシレン/水=1/1溶液(20ml/20ml)に、Pd(PPh(0.17g)及び炭酸カリウム(1.2g)を加え、窒素雰囲気下・120℃で12時間撹拌した。反応液を酢酸エチル/希塩酸(混合比:酢酸エチル/希塩酸=1/1)に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/98)し、エタノール/ノルマルヘキサン=95/5にて再結晶することにより、ディスコティック液晶性ホスト化合物2(1.3g)を得た。なお、化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。外観は白色固体であった。ディスコティック液晶性材料2の分子半径をGaussian03(米ガウシアン社)にて構造最適化を行うことにより算出した結果、分子半径は、1.89nmであった。また、アスペクト比は3.1であった。偏光顕微鏡を用いた液晶相の観察をおこなったところ、下記温度域にて液晶相を示した。
Cr 70℃ D 125℃ Iso
(Cr:結晶相、D:ディスコティック相(詳細な相は不明)、Iso:等方相)
即ち、70〜125℃の温度範囲で液晶相を発現し、液晶相から等方相への相転移温度は125℃であった。
【0147】
(実施例1)
<基板の作製>
25mm×25mm×0.7mmの石英ガラス基板を洗浄し、UVオゾン処理した後、配向膜(日産化学製水平配向膜SE−130)をスピンコート塗布し、100℃で10分、その後180℃で1時間加熱することで下地基板(配向膜の膜厚200nm)を得た。
<塗布液1〜6の調製>
ディスコティック液晶性材料1(93mg)、燐光発光性化合物1(7mg)及び下記構造式で表されるフッ素原子含有化合物1(0.2mg)の固形分含有率2質量%のクロロホルム溶液(塗布液1)を調製した。
塗布液1において燐光発光性化合物1を燐光発光性化合物2〜6に変更した以外は塗布液1と同様にして、塗布液2〜6を調製した。
【0148】
【化30】

【0149】
<塗布液7、8の調製>
塗布液1において、ディスコティック液晶性材料1をディスコティック液晶性材料2に変更した以外は塗布液1と同様にして、塗布液7を調製した。また、塗布液5において、ディスコティック液晶性材料1をディスコティック液晶性材料2に変更した以外は塗布液5と同様にして、塗布液8を調製した。
【0150】
<塗布液9の調製>
塗布液1において燐光発光性化合物1を燐光発光性化合物7に変更した以外は塗布液1と同様にして、塗布液9を調製した。
【0151】
【化31】

【0152】
<試料1〜44の作製>
各発光層形成用塗布液1〜9を、窒素雰囲気下で作製した下地基板上にスピンコート(1500rpm、20秒間)させた。スピンコートの際の基板温度は表1に示す温度とした。その後、基板室温にて真空乾燥し、各試料を得た。
各試料の配向度Sを偏光ATR−IR法にて測定した。
配向性の評価は以下の基準で行った。
○:秩序度S≧0.6
△:秩序度0.2≦S<0.6
×:秩序度0≦S<0.2
【0153】
【表1】

【0154】
表1に示すように、基板温度を液晶性ホスト材料の液晶相が発現する温度とし、該基板にスピンコートにより塗布液を塗布し層形成した場合、該層中で液晶性ホスト材料は基板に対して水平配向していることが分かる。
【0155】
(実施例2)
−発光層形成用塗布液の調製−
燐光発光性化合物1(0.1質量%)、ディスコティック液晶性材料1(0.9質量%)に、MEK(メチルエチルケトン)(99質量%)を混合し、発光層形成用塗布液10を得た。
発光層形成用塗布液1において燐光発光性化合物1を燐光発光性化合物2〜7に変更した以外は発光層形成用塗布液10と同様にして、発光層形成用塗布液11〜15及び18を調製した。
また、発光層形成用塗布液10及び14において、ディスコティック液晶性材料1をディスコティック液晶性材料2に変更した以外は発光層形成用塗布液10及び14と同様にして、発光層形成用塗布液16及び17をそれぞれ調製した。
【0156】
<有機電界発光素子の作製>
−有機電界発光素子1の作製−
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、下記構造式で表されるPTPDES−2(ケミプロ化成製、Tg=205℃)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解し、厚みが約40nmとなるようにスピンコート(2,000rpm、20秒間、)した後、120℃で30分間乾燥と160℃で10分間アニール処理することで、正孔注入層を成膜した。
【0157】
【化32】

【0158】
この正孔注入層上に前記発光層形成用塗布液10を厚みが約40nmとなるようにスピンコート(1,300rpm、30秒間)し、発光層とした。スピンコートの際の基板温度は表2に示す温度とした。
次いで、発光層上に、電子輸送層として、下記構造式で表されるBAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))を、厚みが40nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
【0159】
【化33】

【0160】
電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法にて形成した。更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子1を作製した。
【0161】
−有機電界発光素子2〜27の作製−
発光層形成用塗布液及び発光層形成時の基板温度を表2に示すように変更した以外は、有機電界発光素子1と同様にして有機電界発光素子2〜27を作製した。
【0162】
<光取り出し効率の測定>
浜松ホトニクス社製PL量子収率測定装置に、有機電界発光素子1をいれ、燐光発光性化合物の主吸収波長で励起させ、量子収率(PL量子効率)を測定した。有機電界発光素子2〜27も同様にして、測定を行った。結果を表2に示す。なお、結果は、同じ発光層塗布液から得た素子のうち室温で塗布したものを0.5として相対値で示した。
【0163】
<素子耐久性評価>
初期の発光輝度500cd/mで、室温において、有機電界発光素子1〜18に定電流を印加して連続的に駆動を行い、発光輝度が1/2に低下するまでの時間を測定した。測定した値を基に、素子1〜3については素子1の輝度半減期を1として相対的に評価した。素子4〜6、素子7〜9、10〜12、13〜15、16〜18、19〜21、22〜24、25〜27についてもそれぞれ最初の素子の輝度半減期を1として相対的に評価した。結果を表2に示す。
【0164】
【表2】

【0165】
表2からわかるように、比較例の有機電界発光素子と比較して、本発明の有機電界発光素子の方が、光取り出し効率及び素子耐久性(輝度半減期)に優れる結果となった。同じ塗布液から作製した有機電界発光素子の材料の電子親和力及びイオン化ポテンシャルは同じであることから、素子耐久性の差は、燐光発光性化合物の遷移双極子モーメントが、陽極に対して水平に配向されていることによる光取り出し効率の向上に起因すると推測される。
本発明の有機電界発光素子は光取り出し効率が向上しているため、外部量子効率が高く、輝度の経時安定性にも優れる。
【符号の説明】
【0166】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペクト比が3以上の発光材料と、液晶性を発現可能なホスト材料とを含む発光層を有する有機光電発光素子の作製方法であって、
前記ホスト材料が液晶性を発現する温度範囲にて前記発光層を塗布成膜する、有機電界発光素子の作製方法。
【請求項2】
前記発光層を塗布成膜する際の温度範囲が、40℃よりも高い温度かつ前記ホスト材料の液晶相から等方相への相転移温度よりも5℃以上低い温度である、請求項1記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項3】
前記ホスト材料のアスペクト比が3以上である、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項4】
前記ホスト材料がディスコティック液晶性材料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項5】
前記ディスコティック液晶性材料がディスコティックネマチック液晶相を発現する、請求項4に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項6】
前記発光材料が燐光発光材料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項7】
前記燐光発光材料が白金錯体である、請求項6に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項8】
前記燐光発光材料が下記一般式(1)〜(5)で表される燐光発光性化合物から選択される少なくとも1つである、請求項6又は7に記載の有機電界発光素子の作製方法。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、uは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。WとWとは、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、X,Y,Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、gは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R〜R及びR30、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、p、gが2以上の場合、複数のR〜R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
一般式(5)
【化5】

(一般式(5)中、Zは、炭素原子又は窒素原子を表す。m、n、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arはアリール基を表す。R、R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、m、n、gが2以上の場合、複数のR、R及びR30は各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。)
【請求項9】
前記有機電界発光素子が陽極と陰極との間に前記発光層を有する有機電界発光素子であって、前記燐光発光材料の遷移双極子モーメントが前記陽極に対して水平に配向されている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項10】
前記発光層がフッ素原子含有化合物を0.0001質量%〜10質量%含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の作製方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の作製方法により作製された有機電界発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−79533(P2012−79533A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223256(P2010−223256)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】