説明

有機電界発光素子及びその製造方法

【課題】有機電界発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】背面基板35と、背面基板の一面に形成され、第1電極32、有機層31及び第2電極30が順次に積層されて形成された有機電界発光部とを備える有機電界発光素子において、背面基板と第1電極32との間に、第1の屈折格子34’及び前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折格子34”が背面基板に対して平行した方向に交互に繰り返されて形成された回折格子層34と、回折格子層上に形成された前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層33と、を備えることを特徴とする有機電界発光素子である。回折格子層の製造過程で形成された孔隙及び屈曲を最小化することにより光取り出し率を向上させ、回折格子層と第1電極との間に屈折層を備えるため、光分布を屈折層に誘導して第1電極による光損失を防止し、回折格子層での光分布を増大させることにより光取り出し率を最大化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及びその製造方法に係り、より詳細には、有機層により発生した光の取り出し率が画期的に改善された有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機電界発光素子は、蛍光性有機化合物を電気的に励起させて発光させる自発光型のディスプレイとして、低電圧で駆動が可能であり、薄型化が容易であり、広視野角、速い応答速度など、液晶表示装置において指摘される問題点を解決できる次世代のディスプレイとして注目されている。
【0003】
このような有機電界発光素子は、イーストマン・コダック社(Eastman Kodak)により積層型として開発され、パイオニア社(Pioneer)により寿命が改善された環境に優しいディスプレイとして商品化され、多様な分子構造を有する新規な有機材料が開発され、直流低電圧駆動、薄型、自発光性などに優れた特性を有するカラーディスプレイへの研究が活発に進んでいる。
【0004】
一般的に、有機電界発光素子は、ガラスやその他の透明な絶縁基板に、所定パターンの有機層を形成し、前記有機層の上下部に電極層を形成することにより製造される。有機層を形成する材料としては、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウムなどが利用される。
【0005】
有機電界発光素子の画像形成の原理は、次の通りである。すなわち、電極に正極電圧及び負極電圧が印加されることにより、正極電圧が印加された電極から注入された正孔は、正孔輸送層を経て発光層に移動し、電子は、負極電圧が印加された電極から電子輸送層を経て発光層に注入される。発光層では、電子と正孔とが再結合して励起子を生成させ、このような励起子が、励起状態から基底状態に変化することにより、発光層の蛍光性分子が発光して画像が形成される。
【0006】
前記のように駆動される有機電界発光素子の光効率は、内部効率と外部効率とに分類されるが、内部効率は、有機発光物質の光電変換効率に依存し、外部効率は、素子を構成する各層の屈折率に依存する。このような外部効率は、光取り出し率と言い、有機電界発光素子の光取り出し率は、CRT(Cathod Ray Tube)、PDP(Plasma Display Pannel)、FED(Field Emission Display)など、他のディスプレイ素子に比べて低く、これにより、輝度、寿命など、ディスプレイの特性面で改善の余地が多い。
【0007】
図1(Luラ、APL 78(13)、p.1927、2001)に示すように、有機電界発光素子において、有機層から発生した光は、ITO(インジウムスズ酸化物:Indium Tin Oxide)/ガラス界面と、ガラス/空気界面とで、それぞれ各によって全反射が発生する。従来の有機電界発光素子の場合、光取り出し率は約23%であり、残りの光は、外部に出られずに消滅する。
【0008】
したがって、有機電界発光素子の光取り出し率を向上させるために、さまざまな方法が提案されており、最近では、回折格子の導入と関連した多数の方法が、研究及び報告されている。
【0009】
特許文献1には、正極と負極との間に、一層の有機層または複数層の有機層を有する有機電界発光素子において、構成要素として、回折格子またはゾーンプレートを備える構成が開示されている。
【0010】
このような有機電界発光表示装置は、基板や微細な電極パターン層の表面に凹凸を形成するか、または別途の回折格子を設置せねばならないため、製造工程は難しく、生産性の向上を図りえない。また、凹凸の上部に有機層を成膜する場合、有機層の表面粗度が凹凸により大きくなるため、有機電界発光素子の耐久性及び信頼性が低下する。
【0011】
また、特許文献2には、第1電極層、有機層、及び第2電極層のうち、屈折率の大きい層の間に、屈折率の異なる領域を有する光損失防止層を備えた有機電界発光素子を開示している。これは、図2に示すように、基板上に回折格子を形成して、導かれた光を回折させることにより、全反射臨界角より小さい回折角をつくりだして外部に取り出させる原理を利用する。
【0012】
しかし、このような有機電界発光素子においても、回折格子層の製造過程で形成された孔隙及び屈曲によって乱反射が発生すれば、前面(外部方向)に出る光量が減少して、発光効率が低下する。また、これを防止するために高屈折材料を使用して、回折格子に蒸着またはコーティングさせる場合、屈折層と第1電極との界面で屈曲が形成されれば、第1電極も屈曲を有し、外部光取り出しの効率面で、発光効率が低下するという問題点がある。
【0013】
また、前記従来技術に係る有機電界発光素子の場合には、光分布が第1電極に集中することにより、回折格子層による光効率向上の効果が相対的に低いという問題点がある。
【特許文献1】特開平11−283751号公報
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2003−0070985号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、回折格子層の製造過程で形成された孔隙及び屈曲を最小化することにより光取り出し率を向上させ、回折格子層と第1電極との間に屈折層を備えることにより、光分布を屈折層に誘導して、第1電極による光損失を防止し、回折格子層での光分布を増大させることにより光取り出し率を最大化することができる有機電界発光素子及びその製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、一具現例で、背面基板と、前記背面基板の一面に形成され、第1電極、有機層及び第2電極が順次に積層されて形成された有機電界発光部とを備える有機電界発光素子において、前記背面基板と前記第1電極との間に、第1の屈折格子及び前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する第2の屈折格子が前記背面基板に対して平行した方向に、交互に繰り返されて形成された回折格子層と、前記回折格子層上に形成された前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層と、を備えることを特徴とする有機電界発光素子を提供する。
【0016】
また、本発明は、他の具現例で、背面基板上に屈折膜を成膜する工程と、前記第2の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記背面基板上に前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する第2の屈折格子を形成する工程と、前記第2の屈折格子上に第1の屈折膜を成膜する工程と、前記第1の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記第2の屈折格子間に第1の屈折格子を形成することにより回折格子層を形成する工程と、前記回折格子層上に前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層を成膜する工程と、前記屈折層上に第1電極、有機層及び第2電極を順次に積層させる工程と、を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、さらに他の具現例で、背面基板上に第1の屈折膜を成膜する工程と、前記第1の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記背面基板上に第1の屈折格子を形成する工程と、前記第1の屈折格子上に前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する第2の屈折膜を成膜する工程と、前記第2の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記第1の屈折格子間に第2の屈折格子を形成することにより回折格子層を形成する工程と、前記回折格子層上に前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層を成膜する工程と、前記第2の屈折層上に第1電極、有機層及び第2電極を順次に積層させる工程と、を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回折格子層の製造過程で形成された孔隙及び屈曲を最小化することにより光取り出し率を向上させ、回折格子層と第1電極との間に、回折格子層34を形成する第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層(以下、「高屈折層」と称する。)を含むことで、光分布を高屈折層に誘導して第1電極による光損失を防止し、回折格子層での光分布を増大させることにより光取り出し率を最大化できる有機電界発光素子及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面及び実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、本発明は、下記図面及び実施例のみに制限されるものと解釈されてはならない。
【0020】
本発明に係る有機電界発光素子の一具現例を図3に示す。
【0021】
図3に示すように、本発明に係る有機電界発光素子は、ガラスなどの背面基板35上に、第1電極32、有機層31及び第2電極30が順次に積層され、背面基板と第1電極との間には、回折格子層34及び高屈折層33を備える構造を有する。本発明に係る有機電界発光素子は、回折格子層の屈曲が最小化されることにより光取り出し率は向上し、回折格子層での光分布が増大することにより、光取り出し率を最大化することができるという長所がある。
【0022】
本発明に係る有機電界発光素子の光取り出し率が向上する原理を、下記の通り簡略に説明する。
【0023】
図3に示すように、回折格子層34を有する有機電界発光素子は、第1電極32及び第2電極30のどちらか一方の電極に所定の電圧を印加すれば、正極の第1電極32から注入された正孔は、有機層31内の正孔輸送層(図示せず)を経て発光層(図示せず)に移動し、電子は、第2電極30から有機層31内の電子輸送層(図示せず)を経て発光層(図示せず)に注入される。次いで、発光層で、電子と正孔とが再結合して励起子を生成させ、生成された励起子が、励起状態から基底状態に変化することにより、蛍光性の分子が発光する。この時に発生した光は、透明な第1電極32及び基板35を通って外部に取り出される。基板35と第1電極32との間には、回折格子層34が形成されているため、界面で光が反射される損失を防止できる。
【0024】
すなわち、発光層を含む有機層31または第1電極32の屈折率が、背面基板35より高いため、背面基板35の界面で反射される。しかし、第1電極32と背面基板35との間に、屈折率の異なる第2の屈折格子(以下、「高屈折格子」と称する。)34’及び第1の屈折格子(以下、「低屈折格子」と称する。)34”が交互に繰り返される回折格子層34が形成されている場合には、高屈折格子34’及び低屈折格子34”の屈折率差により、光が散乱され、界面での反射を防止できる。特に、前記回折格子層34は、発光層から臨界角以上の角度で界面に照射される光を回折させて、臨界角以下の角度に変化させることにより、界面において、光の反射率を大幅に下げることができる。
【0025】
また、屈折率が異なる2つの物質、すなわち、高屈折格子34’及び低屈折格子34”が交互に形成されることにより、平均反射率は、全反射角を大きくする屈折率にする調節が可能である。これにより、非反射効果を付与して、光取り出し率を大きく向上させうる。したがって、有機層31から発生した光は、基板35を通って取り出される光取り出し率を向上させうる。
【0026】
本発明に係る有機電界発光素子は、このような回折格子層34以外にも、前記回折格子層34上に形成された高屈折層33をさらに備え、高屈折層33の存在は、下記のように、大きく2つの面で光取り出し率の向上に寄与する。
【0027】
第一に、本発明に係る有機電界発光素子は、前記高屈折層33が回折格子層34の存在により発生する孔隙及び屈曲を最小化にする役割をもつことにより、光取り出し率を向上させる。
【0028】
すなわち、従来技術に係る回折格子層を備える有機電界発光素子において、回折格子層を構成する高屈折回折格子と低屈折回折格子との間に孔隙が存在すれば、誘導された光が回折されて、外部に取り出される時に完全に出ずに、散乱または反射されて光取り出し率を低下させる。したがって、高屈折回折格子と低屈折回折格子との間に孔隙がなく、正しく密着した形態に回折格子層を形成することが非常に重要である。
【0029】
また、回折格子の形成によって屈曲を有する高屈折の回折格子上に第1電極を形成する場合、第1電極も前記屈曲によって同様に屈曲を有するため、前面に出る光量が減少し、光取り出し率が低下する。したがって、このような屈曲を解決し、第1電極と高屈折層との界面が平坦化された有機電界発光素子を製造することが非常に重要である。
【0030】
本発明では、前記のように、高屈折層の屈曲により第1電極が屈曲を有することを防止するために2つの方法を使用する。一方法では、エッチバック工程により前記低屈折格子と高屈折格子との高さを同じくすることにより屈曲をなくした後、高屈折層を成膜し、他の方法では、屈曲を有する回折格子上が、スピンコーティング方式によって成膜されることにより、平坦化された高屈折層を形成する。
【0031】
第二に、本発明に係る有機電界発光素子は、光分布を高屈折層33へ誘導して、第1電極による光損失を防止し、回折格子層での光分布を増大させることにより、光取り出し率を向上させる。このような効果をさらに明確に説明するために、図4A及び図4Bに、従来技術に係る有機電界発光素子及び本発明に係る高屈折層を備える有機電界発光素子における素子内の光分布度を概略的に比較して示す。
【0032】
図4Aに示すように、従来技術に係る有機電界発光素子において、有機層41から発光されて外部に出る光は、一般的に屈折率が高く、吸収係数の大きい第1電極42(例えば、ITO電極の場合、632.8nmの波長で屈折率は、1.8であり、吸収係数は、0.02である)で最も大きい光分布度を有する。したがって、このような光分布度を有する場合には、発光された光のうち、回折格子層44での光分布度も相対的に低下するため、外部に取り出される光量が減少して、回折格子層44による光取り出し率向上の効果が十分に得られないという問題点がある。
【0033】
これに対し、本発明に係る有機電界発光素子の場合には、第1電極より吸収係数が低く、屈折率の高い高屈折層43を第1電極42と回折格子層44との間に備えるため、好ましくは光分布度が高屈折層43で最も高くなり、これにより、回折格子層44での光分布度も向上して、さらに多量の光取り出しが可能になるという効果がある。
【0034】
前記回折格子層のうち高屈折格子の屈折率は、低屈折格子の屈折率よりは大きい。また、高屈折格子の屈折率は、前記回折格子層上に形成された高屈折層の屈折率よりは大きくても小さくても良いが、光分布度が高屈折層43で最も高くなるためには、第1電極よりは大きくなければならない。
【0035】
前記回折格子層の層厚は、10nmないし10μmであることが好ましい。前記回折格子層の層厚が前記範囲を逸脱する場合には、光取り出し率向上の効果及び工程性は何れも低下するため、好ましくない。
【0036】
前記高屈折層の層厚は、10nmないし5μmであることが好ましい。前記高屈折層の層厚が10nm未満である場合には、平坦化する程度が低下するという問題点があり、5μmを超える場合には、工程上の製造コストの増大、及び膜の表面張力などの問題点があるため、好ましくない。
【0037】
前記回折格子層34は、10nmないし1μmの周期ごとに規則的に繰り返される低屈折格子を備え、このような低屈折格子の幅は、前記周期の10ないし90%の範囲、すなわち、1nmないし900nmであることが好ましい。低屈折格子が前記周期範囲未満で繰り返される場合、すなわち、10nm以下の場合、または低屈折格子が前記周期範囲を超えて繰り返される場合、すなわち、1μmを超える場合には、光が回折格子を認識できないため、光取り出し率の向上を期待することはできない。また、低屈折格子の幅が小さすぎるか、または大きすぎる場合も、光取り出し率が向上する程度が著しく減少するため、好ましくない。前記低屈折格子、高屈折格子及び高屈折層の屈折率は、例えばそれぞれ1.4以下、1.8ないし2.2、及び1.8ないし2.2であるが、これに制限されるものではない。
【0038】
特に、光取り出し率を極大化するためには、前記高屈折格子の屈折率は、前記低屈折格子の屈折率との差が大きいことが好ましい。前記屈折率の差が小さい場合には、界面での光分散効果が低下し、有機層から照射される光の反射率が向上して、基板を通過する光取り出し量が減少するという問題点があり、好ましくない。
【0039】
前記条件を満たす物質として、前記低屈折格子は、シリケート及び多孔質シリカからなる群から選択され、前記高屈折格子は、SiN、TiO、Ta及びNbからなる群から選択され、前記高屈折層は、スピンコーティングが可能なTiOゾル等である。
【0040】
前記第1電極は、透明な基板の上面に形成される正極であり、透明な導電性材質であるITOまたはIZO(インジウム亜鉛酸化物:Indium Zinc Oxide)であることが好ましく、相互平行に設置されるストライプ状の電極から形成されても良い。背面基板としても、ガラス基板またはプラスチック基板などの材質から形成されたものが使用されうる。
【0041】
本発明に係る有機電界発光素子に備えられる第2電極及び有機層は、当業界で通常的に使用される方法を利用することで製造でき、前記有機層は、前記第1電極の上面から順次に積層される正孔注入層、正孔輸送層、発光層、及び電子注入層を備える。前記有機層は、有機化合物として8−ヒドロキシキノリノ−アルミニウム(Alq)のような低分子、またはポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)などの高分子が使用されうる。
【0042】
前記第2電極は、導電性金属から形成されたものであり、前記第1電極と直交する方向に形成される複数のストライプ状の電極から形成される。
【0043】
本発明に係る有機電界発光素子は、前面発光型、背面発光型、または両面発光型の何れにも適用可能であり、その駆動方式が特別に制限されないため、パッシブマトリックス(PM)駆動方式及びアクティブマトリックス(AM)駆動方式の何れにも適用できる。
【0044】
また、本発明は、前記有機電界発光素子を製造する方法を提供し、本発明の一具現例に係る有機電界発光素子の製造方法は、背面基板上に第1の屈折膜より高い屈折率を有する第2の屈折膜(以下、「高屈折膜」と称する。)を成膜する工程と、前記高屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って前記背面基板上に高屈折格子を形成する工程と、前記高屈折格子上に第1の屈折膜(以下、「低屈折膜」と称する。)を成膜する工程と、前記低屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記高屈折格子間に低屈折格子を形成することにより回折格子層を形成する工程と、前記回折格子層上に高屈折層を成膜する工程と、前記高屈折層上に第1電極、有機層及び第2電極を順次に積層させる工程と、を含む。
【0045】
図5は、本発明に係る有機電界発光素子の製造方法の一具現例についての概略的な工程図である。図5に示すように、まず、基板上に乾式または湿式エッチングが可能な高屈折膜を、蒸着またはスピンコーティングなどの方法によって成膜し(図5の(A)工程)、成膜された高屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って規則的なパターンを形成した後(図5の(B)工程)、乾式または湿式エッチングを行い(図5の(C)工程)、フォトレジストを除去して(図5の(D)工程)高屈折格子を形成する。次いで、前記高屈折格子上に低屈折膜を、蒸着またはスピンコーティングなどの方法によって成膜し(図5の(E)工程)、成膜された低屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記高屈折格子間に低屈折格子を形成する。
【0046】
前記フォトレジスト工程に使用される組成物としては、当業界で通常的に使用されるものが使用され、例えば、感光性ポリカーボネート樹脂を使用することにより熱分解による現象を可能にするもの等が使用されうる。感光性ポリカーボネート樹脂の熱分解は、200℃ないし500℃で30分ないし3時間行うことができる。
【0047】
このような低屈折格子の形成は、好ましくはエッチバック工程を利用して行われることにより、前記高屈折格子と低屈折格子との厚さは同じくなる(図5の(F)工程)。このように、本発明に係る有機電界発光素子は、同じ厚さの高屈折格子及び低屈折格子を備える回折格子層を形成することにより、前記回折格子層上に形成される高屈折層と第1電極との界面を平坦化でき、結果的に第1電極の屈曲も減らし得るため、光取り出し率を向上させうる。
【0048】
前記回折格子層を製造した後には、前記回折格子層上に高屈折層を蒸着またはスピンコーティングなどの方法によって成膜し(図5の(G)工程)、その上に順次に第1電極、有機層及び第2電極を積層させ(図5の(H)工程)、密封層を形成した後、前記背面基板を前面基板と合着させることにより本発明に係る有機電界発光素子を製造できる。
【0049】
また、本発明の他の具現例に係る有機電界発光素子の製造方法は、背面基板上に低屈折膜を成膜する工程と、前記低屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記背面基板上に低屈折格子を形成する工程と、前記低屈折格子上に高屈折膜を成膜する工程と、前記高屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記低屈折格子間に高屈折格子を形成することにより回折格子層を形成する工程と、前記回折格子層上に高屈折層を成膜する工程と、前記高屈折層上に第1電極、有機層及び第2電極を順次に積層させる工程と、を含む。
【0050】
本具現例に係る製造方法は、前記の製造方法と基本的には類似した方式によって製造されるが、背面基板上に高屈折膜の代わりに低屈折膜をまず成膜し、平坦化された回折格子層を製造するためのエッチバック工程を行う代わりに、屈曲を有する回折格子層上に高屈折層をスピンコーティング方式によって成膜することで、高屈折層と第1電極との界面が屈曲を有しないという点が異なる。
【0051】
本方法によって製造された有機電界発光素子のうち、第1電極62と、高屈折層63と、高屈折回折格子64’及び低屈折回折格子64”とを備える回折格子層に対する断面図が図6に示されており、図6に示すように、回折格子層のうち、高屈折回折格子64’の上面は屈曲を有するが、その上に高屈折層63がスピンコーティング方式によって成膜されることにより、第1電極62と高屈折層63との界面が平坦化されたことが分かる。
【0052】
低屈折膜の成膜、フォトレジスト工程、高屈折膜の成膜、及び高屈折層の成膜は、前記の方法と同じ方式で行える。
【0053】
以下、本発明を、実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明が下記の実施例のみに制限されるものではない。
【実施例】
【0054】
(有機電界発光素子の製造)
高屈折回折格子として、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)で製作された屈折率1.9のSiN、低屈折回折格子として多孔質シリカから形成されてスピンコーティング可能な屈折率1.38のSOG(Spin On Glass)、高屈折層としてTiOゾルから形成されてスピンコーティングの可能な屈折率1.985のSOG、吸収係数0.000569のSOGを使用して有機電界発光素子を製造した。高屈折回折格子は、化学蒸着法以外に、スパッタ、E−ビーム、サーマルエバポレーションのPVD(Physical Vapor Deposition)工法によっても製作できる。低屈折回折格子SOGは、スピンコーティングされて、100℃ないし130℃のホットプレートで溶媒を除去するベイキング工程を経た後、真空または窒素雰囲気の200℃ないし400℃のオーブンでゾル−ゲル反応を誘導するキュアリング工程を経た。また、高屈折層SOG材料も低屈折層SOG材料と同様の工程を経た。
【0055】
(性能評価)
回折格子層を有しない従来技術に係る有機電界発光素子(比較例1)、回折格子層を有し、高屈折層を有しない従来技術に係る有機電界発光素子(比較例2)、及び前記実施例から製造された本発明に係る有機電界発光素子に対して、光取り出し率を測定した。蛍光物質としては緑色蛍光体を使用し、下記表1にその結果を表した。
【0056】
【表1】

【0057】
前記表1の結果から分かるように、本発明のように、回折格子層及び高屈折層を共に備える場合に、光取り出し率の向上が最も目立つ。このような結果は、有機電界発光素子の具体的な構造によっても影響される。例えば、形成される高屈折層の厚さによっても光取り出し率の差が発生しうる。図7は、前記実施例と同じ構造を有し、それぞれ異なる高屈折層の厚さを有する有機電界発光素子に対する光取り出し率のシミュレーション結果を示すグラフである。したがって、本発明に係る有機電界発光素子に適用する場合、選択される高屈折層の材料を、光学的な特性による最適の厚さに選択することによって、光取り出し率向上の効果を極大化できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、有機電界発光素子に関連した技術分野に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一般的な有機電界発光素子において、光取り出し率の低下問題を概略的に説明する図面である。
【図2】従来技術に係る回折格子を備える有機電界発光素子についての概略的な図面である。
【図3】本発明の一具現例に係る有機電界発光素子についての概略的な断面図である。
【図4A】回折格子層と第1電極の間に、高屈折層を含んでいない場合の光分布度を概略的に示す図面である。
【図4B】回折格子層と第1電極の間に、高屈折層を含む場合の光分布度を概略的に示す図面である。
【図5】本発明に係る有機電界発光素子の製造工程図を概略的に示す図面である。
【図6】本発明の他の具現例に係る有機電界発光素子についての概略的な断面図である。
【図7】本発明に係る有機電界発光素子の光効率シミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
30、40 第2電極、
31、41 有機層、
32、42、62 第1電極、
33、43、63 高屈折層、
34、44 回折格子層、
34’、44’、64’ 高屈折回折格子、
34”、44”、64” 低屈折回折格子、
35、45 背面基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面基板と、前記背面基板の一面に形成され、第1電極、有機層及び第2電極が順次に積層されて形成された有機電界発光部とを備える有機電界発光素子において、
前記背面基板と前記第1電極との間に、
第1の屈折格子及び前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する第2の屈折格子が前記背面基板に対して平行した方向に、交互に繰り返されて形成された回折格子層と、
前記回折格子層上に形成された前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層と、
を備えることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記屈折層の屈折率は、前記第1電極の屈折率よりさらに大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記屈折層の吸収係数は、前記第1電極の吸収係数より小さいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記第2の屈折格子の屈折率は、前記第1の屈折格子の屈折率及び前記屈折層の屈折率より大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記第2の屈折格子の屈折率は、前記第1の屈折格子の屈折率よりは大きく、前記屈折層の屈折率よりは小さいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記回折格子層の層厚は、10nmないし10μmであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記屈折層の層厚は、10nmないし5μmであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記第1の屈折格子は、10nmないし1μmの周期ごとに規則的に繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記第1の屈折格子の幅は、1nmないし900nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記第1の屈折格子の屈折率は、1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記第2の屈折格子の屈折率は、1.8ないし2.2であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記屈折層の屈折率は、1.8ないし2.2であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記第1の屈折格子は、シリケート及び多孔質シリカからなる群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記第2の屈折格子は、SiN、TiO、Ta及びNbからなる群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
前記屈折層は、スピンコーティングの可能なTiOゾルであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項16】
前記第1電極は、ITO電極またはIZO電極であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項17】
前記背面基板は、ガラス基板またはプラスチック基板であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項18】
背面基板上に第1の屈折膜より高い屈折率を有する第2の屈折膜を成膜する工程と、
前記第2の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記背面基板上に第2の屈折格子を形成する工程と、
前記第2の屈折格子上に前記第1の屈折膜を成膜する工程と、
前記第1の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記第2の屈折格子間に第1の屈折格子を形成することにより回折格子層を形成する工程と、
前記回折格子層上に前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層を成膜する工程と、
前記屈折層上に第1電極、有機層及び第2電極を順次に積層させる工程と、
を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1の屈折格子は、エッチバック工程によって形成されることにより、前記第2の屈折格子と同じ厚さを有することを特徴とする請求項18に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記第2の屈折膜、前記第1の屈折膜、及び前記屈折層の成膜は、蒸着またはスピンコーティング方式によって行われることを特徴とする請求項18に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項21】
背面基板上に第1の屈折膜を成膜する工程と、
前記第1の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記背面基板上に第1の屈折格子を形成する工程と、
前記第1の屈折格子上に前記第1の屈折膜より高い屈折率を有する第2の屈折膜を成膜する工程と、
前記第2の屈折膜に対してフォトレジスト工程を行って、前記第1の屈折格子間に第2の屈折格子を形成することにより回折格子層を形成する工程と、
前記回折格子層上に前記第1の屈折格子より高い屈折率を有する屈折層を成膜する工程と、
前記屈折層上に第1電極、有機層及び第2電極を順次に積層させる工程と、を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項22】
前記屈折層の成膜は、スピンコーティング方式によって行われることにより、第1電極との界面が屈曲を有していないことを特徴とする請求項21に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項23】
前記第1の屈折膜及び前記第2の屈折膜の成膜は、蒸着またはスピンコーティング方式によって行われることを特徴とする請求項21に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−156400(P2006−156400A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344359(P2005−344359)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】