説明

有機電界発光素子用ドナーシート、有機電界発光素子、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】高い配向度、高い外部量子効率および高い耐久性を満足することができる有機電界発光素子を転写により作製するためのドナーシートを提供すること。
【解決手段】支持体上に、少なくとも、電荷輸送性化合物を含有する有機層と、ホスト化合物及びアスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層とをこの順に有し、前記少なくとも2層の有機層は転写により同時に転写される層である、有機電界発光素子用ドナーシート。なお、前記発光性化合物のアスペクト比は、前記ホスト化合物として、非液晶性のホスト化合物を使用する際は(分子長/分子厚み)と定義し、液晶性のホスト化合物を使用する際は(分子コア直径/分子コア厚み)と定義する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用ドナーシート、有機電界発光素子、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に用いられる。有機電界発光素子を用いたディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高い、視野角依存性が少ないといった表示性能の利点を有する。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できるといった利点もある。
有機電界発光素子は、軽量化、薄層化という利点に加え、フレキシブル基板を用いることで、これまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を持っている。
【0003】
このように有機電界発光素子は、上記の事項をはじめとした優れた特徴を有するが、一般に、発光層を含め有機電界発光素子を構成する各層の屈折率は空気より高い。例えば、有機電界発光素子では、発光層などの有機層の屈折率は1.6〜2.1である。このため、発光した光は界面で全反射しやすく、その光取り出し効率は20%程度であり、大部分の光を損失してしまう。
例えば、一般的に知られる有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極層の間に配される有機層を備えて構成されている。この有機層は、発光層を含み、有機電界発光素子は、この発光層から発光される光を光取り出し面側から出射させている。この場合、光取り出し面や電極層と有機層の界面において、臨界角以上の光である全反射成分を取り出すことができないため、光取り出し効率が低いという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、液晶性のホスト材料を用いることで発光性化合物そのものの形状や発光性化合物の配向を制御することで光取り出し効率を向上させる方法が提案されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この提案では、偏光発光比を上げるために棒状の蛍光材料を用いており、かつ一軸に配向させた為に、フェルスター型のエネルギー移動(蛍光共鳴エネルギー移動)及び発光再吸収により発光効率が低下するという問題があった。また、蛍光材料の電気的励起子生成効率は約25%と低いため、結果として外部量子効率を向上させることができないという問題もあった。
【0006】
発光層を蒸着で成膜すると、分子が水平に配列することが知られている(非特許文献2)。しかし、より効率を向上させるには、分子を更に水平に配列させる必要がある。
また、燐光発光材料を液晶性のホスト材料中で水平配列させた発光素子が提案されている(特許文献1及び2)。液晶性ホスト材料と平板状燐光発光材料を用いることで、高い発光効率を有するランダム発光を得ることができる。液晶性ホスト材料を用いて膜を作製するには、溶液プロセスが用いられる。この際、発光層と下層の界面混合を防ぐために、下層には高分子化合物を用いることが一般的であるが、高分子化合物を用いた素子は駆動耐久性が低いという問題があった。したがって、下層に低分子化合物を用い、かつ下層と発光層の界面が混合しない素子が求められている。
【0007】
この解決策として、転写による素子作製が提案されており、該方法では、ドナーシートに発光層を成膜し、アクセプター基板に転写することで、素子を作製する(特許文献3及び4)。転写はドライプロセスであるので発光層と下層の界面混合は生じない。これにより、発光層を塗布プロセスで作製することができ、かつ発光層の下層に低分子化合物を使用した素子を作製することができる。
【0008】
従来の転写法にかかるドナーシートは、「支持体/離型層/発光層」からなる(図6参照)。離型性を高めるために、離型層にはフッ素系樹脂やシリコン系樹脂が用いられることが一般的である。しかし、これら離型層は表面エネルギーが小さいため、この上に発光層を成膜すると、発光性化合物の水平配列が乱れることが問題であった。
【0009】
このように、高い配向度、高い外部量子効率及び高い耐久性を満足することができる有機電界発光素子の開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−321371号公報
【特許文献2】特開2002−43056号公報
【特許文献3】特表2004−525493号公報
【特許文献3】特開2005−79087号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Polymers For Advanced Technologies,9,443−450(1998)
【非特許文献2】Advanced Functional Materials,20,386−391(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い配向度、高い外部量子効率及び高い耐久性を満足することができる有機電界発光素子を転写により作製するためのドナーシート、該ドナーシートを用いて作製された有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、転写法により作製された有機電界発光素子の発光層は、蒸着法により作製されたものよりも発光性化合物が水平配列することを見出した。これは転写時にせん断応力が膜に印加されることで発光性化合物が水平配列したと考えている。また、転写法にかかるドナーシートにおいて、離型層と発光層の間に有機層(中間層とも呼ぶ)を挿入した、「支持体/離型層/中間層/発光層」という構成を見出した。発光層を中間層の上に成膜することで、離型層の表面エネルギーの影響を受けずに発光層中の発光性化合物が水平配列することが分かった。また、発光性化合物の形状として、アスペクト比が3より大きいものが、ドナーシートにおいて高い配向度を示すことが分かった。
【0014】
前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。即ち、
【0015】
〔1〕
支持体上に、少なくとも、電荷輸送性化合物を含有する有機層と、ホスト化合物及びアスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層とをこの順に有し、前記少なくとも2層の有機層は転写により同時に転写される層である、有機電界発光素子用ドナーシート。なお、前記発光性化合物のアスペクト比は、前記ホスト化合物として、非液晶性のホスト化合物を使用する際は(分子長/分子厚み)と定義し、液晶性のホスト化合物を使用する際は(分子コア直径/分子コア厚み)と定義する。
〔2〕
前記発光性化合物が燐光発光性化合物である上記〔1〕に記載のドナーシート。
〔3〕
前記燐光発光性化合物が白金錯体である上記〔2〕に記載のドナーシート。
〔4〕
前記発光性化合物の分子半径と前記ホスト化合物の分子半径のサイズ比(発光性化合物の分子半径/ホスト化合物の分子半径)が0.8〜1.2である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のドナーシート。
〔5〕
前記ホスト化合物がディスコティック液晶性ホスト化合物である上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のドナーシート。
〔6〕
前記支持体がフレキシブル基板である上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のドナーシート。
〔7〕
前記支持体が離型層を含有する、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のドナーシート。
〔8〕
前記離型層がフッ素原子又はケイ素原子を含有する上記〔7〕に記載のドナーシート。
〔9〕
上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のドナーシートの前記有機層側が、電極と有機膜を含有する基板の被成膜面に対面するように、前記ドナーシートを前記基板に重ねて、加熱及び加圧のうち少なくとも一方を行い、前記支持体を引き剥がすことにより前記支持体上の有機層を前記基板の被成膜面に転写して作製された有機電界発光素子。
〔10〕
前記ドナーシートを前記基板に重ねて加圧されてなる上記〔9〕に記載の有機電界発光素子であって、前記加圧の範囲が2.0kgw/cm以上6.0kgw/cm以下である、有機電界発光素子。
〔11〕
前記ホスト化合物として非液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物のガラス転移点をTgとすると、Tg−200℃≦転写温度≦Tg+20℃の範囲で加熱され、
前記ホスト化合物として液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物の液晶相から等方相へ転移する温度をTisoとすると、Tiso−80℃≦転写温度≦Tiso−30℃の範囲で加熱されて作製された上記〔9〕又は〔10〕に記載の有機電界発光素子。
〔12〕
上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のドナーシートの有機層側が、電極と有機膜を含有する基板の被成膜面に対面するように、前記ドナーシートを前記基板に重ねて加熱及び加圧のうち少なくとも一方を行う工程、及び前記支持体を引き剥がすことにより前記支持体上の有機層を前記基板の被成膜面に転写する工程を含む有機電界発光素子の製造方法。
〔13〕
前記加圧の範囲が2.0kgw/cm以上6.0kgw/cm以下である、上記〔12〕に記載の有機電界発光素子の製造方法。
〔14〕
前記ホスト化合物として非液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物のガラス転移点をTgとすると、Tg−200℃≦転写温度≦Tg+20℃の範囲で加熱する工程を有し、
前記ホスト化合物として液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物の液晶相から等方相へ転移する温度をTisoとすると、Tiso−80℃≦転写温度≦Tiso−30℃の範囲で加熱する工程を有する、上記〔12〕又は〔13〕に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い配向度、高い外部量子効率、及び高い耐久性を満足することができる有機電界発光素子を転写により作製するためのドナーシート、該ドナーシートを用いて作製された有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【図2】材料の分子長を説明するための模式図である。
【図3】材料の分子半径を説明するための模式図である。
【図4】材料の分子半径を説明するための模式図である。
【図5】材料の分子半径を説明するための模式図である。
【図6】従来技術での転写手法を示す概略図である。
【図7】本発明での転写手法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0019】
まず、本明細書において、置換基群A、置換基群Bを下記のように定義する。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げられる。該更なる置換基が複数ある場合には、該置換基同士は互いに連結して環を形成してもよい。
【0020】
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられる。)、シアノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Aから選択される基を挙げることができる。該更なる置換基が複数ある場合には、該置換基同士は互いに連結して環を形成してもよい。
【0021】
[ドナーシート]
本発明の、有機電界発光素子用ドナーシートは、支持体上に、少なくとも、電荷輸送性化合物を含有する有機層と、アスペクト比が3より大きい発光性化合物及びホスト化合物を含有する有機層とをこの順に有し、前記少なくとも2層の有機層は転写により同時に転写される層である。なお、前記アスペクト比は、前記ホスト化合物として、非液晶性のホスト化合物を使用する際は、(分子長/分子厚み)と定義する。液晶性のホスト化合物を使用する際は、(分子コア直径/分子コア厚み)と定義する。
【0022】
(発光性化合物)
本発明のドナーシートは、アスペクト比が3より大きい発光性化合物(発光材料、ゲストともいう)を含有する有機層を有する。該発光性化合物を含有する有機層は、転写により有機電界発光素子において発光層となる。発光性化合物のアスペクト比が3より大きいと発光層において発光性化合物が高い配向度を示す。前記アスペクト比が3未満であると、分子揺らぎが大きくなり、配向性が低下することがある。発光性化合物のアスペクト比は好ましくは5以上であり、より好ましくは5〜30であり、更に好ましくは5〜20である。前記アスペクト比が30以下であると配向性の観点で好ましい。
【0023】
発光性化合物のアスペクト比は、非液晶性のホスト化合物を使用する際は、(分子長/分子厚み)と定義し、液晶性のホスト化合物を使用する際は、(分子コア直径/分子コア厚み)と定義する。
【0024】
本発明において、非液晶性のホスト材料を用いた場合の発光性化合物の「分子長」とは、図2に示すように、材料の分子を平板構造と仮定したときに最も近接する四角形における2辺の長さa、bの平均値[(a+b)/2]を意味する。ここで、「最も近接する四角形」とは、2辺が分子に接する四角形(長方形又は正方形)のうち、a、bの平均値[a+b)/2]が最小となるときの四角形と定義する。この「分子長」は、理論計算により下記のように規定される。即ち、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZにて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、ボール&スティック表示で最も近接する四角形における2辺の平均長さを分子長と定義する。
また、非液晶性のホスト材料を用いた場合の発光性化合物の「分子厚み」とは、前記平板構造の平板部位をx軸、y軸(例えば、図2の長さaの辺の方向をy軸、長さbの辺の方向をx軸)と仮定したときの、該x軸及びy軸と直交するz軸方向の分子の厚みを意味する。分子厚みについても、分子長と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子厚みと定義する。
【0025】
本発明において、液晶性のホスト材料を用いた場合の発光性化合物の「分子コア直径」とは、クロモフォア(共役系でつながった発色団、発光骨格)の最も長い分子長を意味する。
前記分子コア直径としては、理論計算により下記のように規定される。ここでいう理論計算は、密度汎関数法を用いて行い、具体的には、Gaussian03(米ガウシアン社)を用いて、基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZ
にて、構造最適化計算を行う。構造最適化計算により得られた最適化構造を用い、最も長い分子長のボール&スティック表示における長さを前記燐光発光性化合物の分子コア直径と定義する。
また、液晶性のホスト材料を用いた場合の発光性化合物の「分子コア厚み」とは、前記クロモフォアを平面としたときの分子の厚みを意味する。
前記分子コア厚みについても、前記分子コア直径と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示における分子の厚み方向の長さを分子コア厚みと定義する。
【0026】
次に、発光性化合物とホスト化合物のサイズ比の定義について述べる。サイズ比とは、発光材料の分子半径とホスト材料の分子半径の比(発光材料の分子半径/ホスト材料の分子半径)を意味する。
【0027】
発光性化合物と非液晶性ホスト化合物について、「分子半径」とは、分子中心から自由回転結合が2個連続する基の該自由回転結合に連結する原子までの距離を意味する。自由回転結合が2個連続する基が存在しない場合(0個又は1個の場合)には、分子中心から最も遠い原子を意味する。
ここで、「分子中心」とは、クロモフォア又は分子コア部の中心位置を意味する。例えば、下記で発光材料として例示する白金錯体のような金属錯体の場合には、該錯体の中心金属が分子中心である。また、下記でホスト材料として例示する縮環構造のコアに対して置換基を有する材料の場合には、該縮環構造が分子中心である。
「自由回転結合」とは、自由回転可能な結合軸であり、例えば、メチル基が連結する結合軸は自由回転結合であるが、フェニル基など剛直な基が連結する結合軸は自由回転可能でない。
したがって、図3に示すように、分子中心側のフェニル基からメチレン基が2個以上連続して連結した場合[(分子中心)−Ph−CH−CH−CH−・・・]を例に取ると、「分子中心から2個連続する基までの距離」(即ち、「分子半径」)とは、分子中心から該分子中心側より2番目のメチレン基の炭素原子(図3中、円で囲った原子)までの距離を意味する。また、フェニル基(Ph)が2個以上連続して連結した場合、例えば、図4に示すように4個連続して連結した場合[(分子中心)−Ph−Ph−Ph−Ph]を例に取ると、自由回転結合がないため、分子中心より4個目のフェニル基のうち4位の炭素原子(図4中、円で囲った原子)が分子中心から最も遠い原子となり、分子中心から該炭素原子までの距離が「分子半径」となる。更にまた、図5に示すように、フェニル基とメチレン基が連結した場合[(分子中心)−Ph−Ph−CH−CH−Ph]を例に取ると、分子中心から2番目のフェニル基と3番目のフェニル基の間に結合軸が自由回転可能なメチレン基が2個連続して結合しているので、分子中心から該分子中心側より2番目のメチレン基の炭素原子(図5中、円で囲った原子)までの距離が「分子中心から2個連続する原子までの距離」(即ち、「分子半径」)となる。
【0028】
なお、結合軸が自由回転可能な軸となる基としては、上記のメチル基(メチレン基)以外に、アミノ基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基などが挙げられる。また、結合軸が自由回転可能でない軸となる基としては、上記のフェニル基以外に、シクロヘキサン環、縮環アリール基、複素環などが挙げられる。
分子半径についても、分子長と同様の手法で求められ、ボール&スティック表示において、前述のz軸方向から見たときの分子中心から自由回転結合が2個連続する基の該自由回転結合に連結する原子までの長さにより求めることができる。
【0029】
また、液晶性ホスト化合物について、「分子半径」とは、側鎖を含む分子全体を円盤としたときの半径と定義する。
【0030】
発光材料の分子半径としては、0.40nm〜3.0nmが好ましく、0.80nm〜2.5nmがより好ましく、1.20nm〜2.0nmが特に好ましい。この範囲であることは、配向性の向上、発光強度と発光波長の制御し易さ等の観点から好ましい。
【0031】
また、発光材料の分子半径とホスト材料の分子半径とのサイズ比(発光材料の分子半径/ホスト材料の分子半径)としては、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.82〜1.15であり、更に好ましくは0.84〜1.1である。前記サイズ比が上記範囲であると、有機電界発光素子の正面方向の輝度が上昇する。これは、ホスト材料に発光材料を混合しても、ホスト材料の配向秩序度(オーダーパラメーター)を低下させないため、成膜後、モノドメインかつ分子全体の平均が水平配向となり、発光材料の配向方向が均一になるためと推測している。なお、有機電界発光素子の正面方向とは、有機電界発光素子を立てて配置し、基板側から前記発光層へ垂線を引き、この方向から見た方向のことをいう。
【0032】
上記のように、非液晶性ホスト化合物を用いる場合と、液晶性ホスト化合物を用いる場合とで、発光性化合物のアスペクト比の定義が異なる。これは、ホスト化合物が支配的であり、液晶・非液晶の両者で分子配列の仕方が異なるためである。
液晶性ホスト化合物は、分子コア間の適切な分子間相互作用と側鎖の運動によって分子自身が回転しており、自己組織化により分子が配列する。このため、液晶性ホスト化合物は分子コア間の適切な相互作用が重要であり、アスペクト比が高いことが重要となる。ゲスト材(発光性化合物)もそれに伴い分子コア部の平面性を考慮しなければならない。
一方、非液晶性ホスト化合物は、分子の自己組織化で配列するのではなく、分子間相互作用と立体構造因子によって、配列する。したがって、分子コア部だけではなく、分子全体のアスペクト比が高いことが重要になる。ゲスト材(発光性化合物)もそれに伴い側鎖も含めた分子全体の平面性を考慮しなければならない。
【0033】
発光材料としては、例えば遷移金属原子を含む錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0034】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
配位子としては、例えば、芳香族炭素環配位子、含窒素ヘテロ環配位子、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、アルコラト配位子、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
芳香族炭素環配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなどが挙げられる。
含窒素ヘテロ環配位子としては、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。
ジケトン配位子としては、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。
カルボン酸配位子としては、例えば、酢酸配位子などが挙げられる。
アルコラト配位子としては、例えば、フェノラト配位子などが挙げられる。
【0035】
遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、亜鉛、白金などが挙げられる。
【0036】
発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、燐光発光性化合物が好ましく、前記アスペクト比が3より大きくなる点で、平面状の配位構造である4座となる白金(白金錯体)が好ましく、サレン系、ポルフィリン系骨格の白金錯体がより好ましい。
【0037】
前記白金錯体としては、一般式(C−1)で表される白金錯体であることが好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
式中、Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、Ptに配位する配位子を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表す。
【0040】
一般式(C−1)について説明する。
、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、Ptに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであってもよい。
、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
【0041】
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
、Q、Q及びQで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していてもよい。QとQが有する置換基同士が連結した場合、一般式(C−1)で表される白金錯体は環状四座配位子のPt錯体になる。
【0042】
、Q、Q及びQで表される配位子として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0043】
、L及びLは、単結合、二重結合、二価の連結基、又はこれらの組合せからなる基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、カルボニル基、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。R及びR’はそれぞれ独立に、置換基を表す。これら置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。該置換基が複数ある場合には、該置換基同士は互いに連結して環を形成してもよい。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更により好ましくは単結合、2つの水素原子が置換されたメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、最も好ましくは単結合である。
【0044】
として好ましくはアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基、カルボニル基であり、より好ましくはアルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくはアルキレン基、イミノ基であり、特に好ましくはメチレン基、イミノ基である。これらは置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。該置換基が複数ある場合には、該置換基同士は互いに連結して環を形成してもよい。
として更に好ましくは単結合、2つの水素原子が置換されたメチレン基、置換されてもよいアリールイミノ基であり、更に好ましくはジメチルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオロメチルメチレン基、フェニルイミノ基であり、特に好ましくはジメチルメチレン基、フェニルイミノ基である。これらの基は可能であれば更に前記置換基群Aで挙げた基で置換されていてもよい。
【0045】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、好ましい態様としては、下記一般式(C−2)で表される白金錯体が挙げられる。
【0046】
【化2】

【0047】
式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22、B21、及びB22は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、A21、A22、B21、及びB22のうち2つ以上は窒素原子を表す。Z21、Z22、Z23、及びZ24は、それぞれ独立に、ベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。
【0048】
一般式(C−2)について説明する。
21は単結合又は二価の連結基を表し、好ましい範囲は前記一般式(C−1)中のLと同様である。
【0049】
21、A22、B21、B22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表すが、そのうち2つ以上は窒素原子を表す。更に、A21、A22、B21、B22のうち、2つ又は3つが窒素原子を表すことが好ましく、2つが窒素原子を表すことがより好ましい。錯体の安定性の観点から、A21及びA22が窒素原子を表す、又は、B21及びB22が窒素原子であることを表すことが好ましい。
【0050】
21、Z22、Z23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。
21、Z22、Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。
配向性及び有機電界発光素子用材料としての安定性の観点から、Z21、Z22で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環である。
錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、Z23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0051】
前記Z21、Z22、Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。
【0052】
炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、へテロ環基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、又はシアノ基が更に好ましい。
【0053】
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メトキシ基、ブチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換の含窒素芳香族へテロ環基を表し、縮環していてもよく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、カルバゾール環などが挙げられ、カルバゾール環が好ましい。
前記ジアリールアミノ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のジアリールアミノ基を表し、縮環していてもよく、ジフェニルアミノ基、ジトルイルアミノ基、ジナフチルアミノ基などが挙げられる。
前記ジアルキルアミノ基としては、炭素数2〜20の置換又は無置換のジアルキルアミノ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記ジアルキルアミノ基としては、炭素数2〜12が好ましく、具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジt−アミルアミノ基、ジs−ブチルアミノ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0054】
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素原子、シアノ基、トリフルオロアルキル基などが選択される。
【0055】
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、又はアリール基が好ましい。
【0056】
21、Z22、Z23、Z24上の置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。Z23とZ24が有する置換基同士が連結した場合、一般式(C−2)で表される白金錯体は環状四座配位子のPt錯体になる。
【0057】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0058】
【化3】

【0059】
式中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。Y、Z、Mは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子である。
【0060】
一般式(C−3)について説明する。
31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0061】
301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していてもよい。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子がより好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はシアノ基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。該アルキル基、及びアリール基は更に置換基を有してもよく、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)である。A302、A305がC−Rである場合、該A302、A305のRとしては、素子の耐久性向上の観点からはアリール基が好ましく、発光波長が短いという観点では水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基が好ましい。
301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0062】
307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308が窒素原子であることが好ましい。
【0063】
一般式(C−3)において2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなる点で有利である。
【0064】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
311、A312及びA313のうち少なくとも一つは窒素原子であることが好ましく、特にA311が窒素原子であることが好ましい。
【0065】
一般式(C−3)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3−1)で表される白金錯体である。
【0066】
【化4】

【0067】
式中、X、Y、Z、Mは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、ZとYのいずれか一方は窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。m、n、p、及びqは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Arは置換又は無置換のアリール基を表す。R〜R及びR30は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。m、n、p、qが2以上の場合、複数のR、R、R及びR30は各々隣同士が互いに連結して環状構造を形成してもよい。Qは、炭素原子又は窒素原子である。
【0068】
一般式(C−3−1)について説明する。
X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。好ましくは、Zが炭素原子、Yが窒素原子、Xが炭素原子である。
m、n、pは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。nは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。pは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0069】
〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭化水素基で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
また、R及びRとしては、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基又はシリル基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、フェニル基であることが好ましい。
は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0070】
Arが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。Arが表すアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子)である。Arとしてより好ましくは、置換基を有するフェニル基であり、該置換基としては、メチル基、t−ブチル基、4−ペンチル−シクロヘキシル基、4−ペンチル−シクロヘキシルメトキシ基などが好ましい。
m、n、pが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
M、Qとしては、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子である。
qは、0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0071】
30は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、n−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、具体的には、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基は、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
30としては、フッ素原子が好ましい。
アススペクト比の観点からは、R30は、鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
【0072】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0073】
【化5】

【0074】
式中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。
【0075】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
401〜A406として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A401〜A406がC−Rである場合に、A402、A405のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基である。A401、A403、A404、A406のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましく水素原子である。
41は、前記一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0076】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、窒素原子の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、トリフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、フェニル基、トリフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、トリフルオロアルキル基、フッ素原子、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フェニル基、フッ素原子である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素原子であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していてもよく、形成される環としては例えばベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
【0077】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0078】
【化6】

【0079】
式中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。Y及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、少なくとも一方が、窒素原子である。
【0080】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−4)におけるA401〜A406及びL41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0081】
507、A508、A509、A510、A511及びA512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A507、A508、A509、A510、A511及びA512がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
507、A508、及びA509のうちの少なくとも一つ、A510、A511及びA512のうち少なくとも一つは窒素原子である態様も好ましく、この態様の場合にはA510又はA507が窒素原子であることが好ましい。
【0082】
一般式(C−5)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5−1)で表される白金錯体である。
【0083】
【化7】

【0084】
式中、X、Y、及びZは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、ZとYのいずれか一方は、窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、及びqは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Arは置換又は無置換のアリール基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。m、n、p、qが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士が互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0085】
一般式(C−5−1)について説明する。
X、Y、Zは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。好ましくは、Zが炭素原子、Yが窒素原子、Xが炭素原子である。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。nは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。pは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。qは0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0086】
〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、又はヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えばメチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭化水素基で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
また、R及びRとしては、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基又はシリル基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
及びRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0087】
Arが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。Arが表すアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子である。Arとしてより好ましくは、置換基を有するフェニル基であり、該置換基としては、メチル基、t−ブチル基、4−メチル−シクロヘキシル基などが好ましい。
m、n、p、q、が2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0088】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0089】
【化8】

【0090】
式中、X、Y、及びZは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、ZとYのいずれか一方は、窒素原子である。Yが窒素原子のときは、Xは炭素原子である。r、s、t、及びuは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表す。r、s、t、uが2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。W及びWは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0091】
一般式(C−6)について説明する。
X、Y、Zは、一般式(C−5−1)のX、Y、Zと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0092】
〜Rは、一般式(C−5−1)のR〜Rと同義である。
及びRとしては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子、シアノ基が好ましい。
及びRが表すアルキル基としては、置換基を有してもよい、メチル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが好ましい。
及びRが表すアルコキシ基としては、デシルオキシ基が好ましい。
及びRが表すアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基が好ましく、該置換基としては、アルキル基が好ましく、プロピル基、ブチル基がより好ましい。
及びRは、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0093】
r、s、t、u、は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、rは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。sは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。tは0又は1が好ましく、uは0又は1が好ましい。
r、s、t、u、が2以上の場合、複数のR〜Rは各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。該環状構造としては、ベンゼン環、ベンゾフラン環、及びZを有する6員環とともにフルオレン環などを形成する構造が挙げられる。
【0094】
とWとしては、炭素数1〜10のアルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
とWが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
また、WとWが結合して形成する環状構造としては、シクロヘキシル環状構造が挙げられる。
とWとしては、高アスペクト比の観点でメチル基であるか、互いに結合してシクロヘキシル環状構造を形成することが好ましい。
【0095】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0096】
【化9】

【0097】
式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。A61は炭素原子又は窒素原子を表す。Z61、Z62は、それぞれ独立に、含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。QはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。
【0098】
一般式(C−7)について説明する。
61は、単結合又は二価の連結基を表し、好ましい範囲は前記一般式(C−1)中のLと同様である
【0099】
61は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA61は炭素原子であることが好ましい。
【0100】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0101】
QはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Q中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。
炭素原子でPtに結合するQとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するQとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するQとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するQとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Qで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0102】
Qで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0103】
一般式(C−7)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−8)で表される白金錯体である。
【0104】
【化10】

【0105】
式中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。QはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。
【0106】
一般式(C−8)について説明する。
71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−4)におけるA401〜A410と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0107】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、別の好ましい態様の1つとして下記一般式(C−9)で表される白金錯体が挙げられる。
【0108】
【化11】

【0109】
式中、A及びBは、環状構造を表し、Aは芳香環を表し、Bは芳香族ヘテロ環を表す。A及びBの一方が環を形成するとき、他方は環を形成しなくてもよい。R13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はヘテロ環基を表し、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0110】
一般式(C−9)について説明する。
Aは芳香環を表す。芳香環としては、芳香族炭化水素環、芳香族ヘテロ環が挙げられ、芳香族炭化水素環が好ましい。Aが表す芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。Aが表す芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環が好ましい。
Bは芳香族ヘテロ環を表す。Bが表す芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環が好ましい。
A及びBの組合せとしては、Aがベンゼン環でBが非環(環を形成しない)、Aがナフタレン環でBが非環であることが好ましく、Aがベンゼン環かつBがピリジン環、又はAが非環かつBがピリジン環であることより好ましい。
13〜R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R14とR15、R13とR16は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えばメチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0111】
13、R14、R15、R16は、置換又は無置換のアリール基、又はR13とR16、R14とR15がそれぞれ結合した芳香環であることが好ましい。該芳香環としては、ベンゼン環が挙げられる。該芳香環は更に置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基(メチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)等が挙げられる。
これらの中でも、アスペクト比及び分子サイズの観点でR13とR16、R14とR15、がそれぞれ結合した芳香環が好ましい。
【0112】
一般式(C−9)で表される化合物のより好ましい態様としては、下記一般式(C−9−1)の化合物が挙げられる。
【0113】
【化12】

【0114】
式中、Bは、芳香族の6員ヘテロ環を形成してもよい。
17〜R26は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26は互いに結合して環状構造を形成してもよい。R17〜R26が表す、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基の好ましい例は、R13〜R26が表す各基の例と同じである。
17、R20、R21、R24は、水素原子、アルキル基が好ましい。
18、R19、R22、R23は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基が好ましく、アルキル基、アルコキ基がより好ましく、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基が更に好ましい。
25〜R26は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はR25とR26が結合した芳香環が好ましい。
Bが表す芳香族6員ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。該環には置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基(メチル基、ブチル基)、アリール基(フェニル基)が挙げられる。
アススペクト比の観点からは、R17〜R26は、鎖状アルキル基、又はアルキル基以外の基の場合にはアルキル基を置換基として有することが好ましい。
【0115】
一般式(C−1)で表される白金錯体としては、一般式(C−2)、(C−7)、及び(C−9)のいずれかで表される白金錯体であることが好ましく、一般式(C−2)又は(C−9)で表される白金錯体であることがより好ましい。一般式(C−2)で表される白金錯体は、一般式(C−3)、(C−4)、(C−5)、及び(C−6)のいずれかで表される白金錯体であることが好ましく、一般式(C−3−1)、(C−5−1)、及び(C−6)のいずれかで表される白金錯体であることがより好ましく、一般式(C−5−1)又は(C−6)で表される白金錯体であることが特に好ましい。
【0116】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の〔0143〕〜〔0152〕、〔0157〕〜〔0158〕、〔0162〕〜〔0168〕に記載の化合物、特開2006−256999号公報の〔0065〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−73891号公報の〔0063〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2007−324309号公報の〔0079〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−96255号公報の〔0055〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2006−313796号公報の〔0043〕〜〔0046〕に記載の化合物が挙げられる。
以下に、一般式(C−1)で表される白金錯体、及びその他のアスペクト比が3より大きな白金錯体を例示する。なお、例示化合物におけるアルキル基及びアルキル基は直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基を含むものとし、好ましくは直鎖アルキル基である。
【0117】
【化13】

【0118】
【化14】

【0119】
【化15】

【0120】
一般式(C−1)で表される白金錯体は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0121】
本発明においては、発光材料として亜鉛錯体を用いることもできる。亜鉛錯体としては、例えば特開平10−321371号公報に記載されている化合物を使用することができる。
【0122】
また、蛍光発光材料としては、4つ以上の縮合環から形成される縮環多環芳香族化合物であることが好ましく、ピレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ジベンゾフルオランテン、アセフェナンスリレン、アセアンスリレン、トリフェニレン、アセナフトトリフェニレン、クリセン、ペリレン、ベンゾクリセン、ナフタセン、プレイアデン、ピセン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、トリナフチレン、ベンゾフェナントレン、ジベンゾナフタセン、ベンゾアントラセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾナフタセン、ナフトピレン、ベンゾピレン、ジベンゾピレン、ベンゾシクロオクテン、アントラナフタセン、アセナフトフルオランテン、及びこれらの誘導体が挙げられ、対称性の観点から、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、トリフェニレン誘導体又はクリセンが好ましく、ピレン誘導体がより好ましい。
【0123】
[ピレン誘導体]
ピレン誘導体としては、従来から知られているピレン誘導体を使用できるが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく使用される。
【0124】
【化16】

【0125】
(式中、R〜R10は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。R〜R10のうち隣り合う2つが互いに結合して環を形成してもよい。)
【0126】
〜R10は、同じでも異なっていてもよい。
〜R10が表すアルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
〜R10が表すアラルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、具体例としてはベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、フルフリル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−n−ヘキシルベンジル基、4−ノニルベンジル基、3,4−ジメチルベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−n−ブトキシベンジル基、4−n−ヘキシルオキシベンジル基、4−ノニルオキシベンジル基、4−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、2−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基等が挙げられる。
〜R10が表すアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基などが挙げられる。
〜R10が表す複素環基としては、炭素数5〜20のものが好ましく、具体例としてはピリジル基、チエニル基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、イミダゾイル基、フェニルカルバゾイル基等が挙げられる。
〜R10が表すアルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
〜R10が表すアリールオキシ基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、具体例としては、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基などが挙げられる。
〜R10が表すアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が挙げられ、炭素数12〜30のアリールアミノ基が好ましく、具体例としては、ジフェニルアミノ基、カルバゾイル基、フェニルカルバゾイル基などが挙げられる。
〜R10が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0127】
〜R10のうち隣り合う2つが互いに結合して環を形成してもよい。形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0128】
〜R10が置換基を有する場合、該置換基としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、シアノ基、パーフルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アルキル基が挙げられる。R〜R10が置換基を有するアルキル基を表す場合、置換基としてはフッ素原子が好ましい。
【0129】
好ましい態様として以下の〔1〕〜〔5〕が挙げられる。
【0130】
〔1〕R、R、R、Rが水素原子以外の基(好ましくは置換又は無置換のアリール基)を表し、R、R、R、R、R、R10が水素原子を表す場合。
【0131】
〔2〕R、R、R、R10が水素原子以外の基(好ましくは置換又は無置換のアリール基)を表し、R、Rが水素原子以外の基(好ましくは置換又は無置換のアルキル基)を表し、R、R、R、Rが水素原子を表す場合。
【0132】
〔3〕R、R10が水素原子以外の基(好ましくは置換又は無置換のアリール基)を表し、R、Rが水素原子以外の基(好ましくは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基)を表し、R、Rが水素原子、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R、R、R、Rが水素原子を表す場合。
【0133】
〔4〕RとR、及び、RとR10が環を形成し、R、Rが水素原子以外の基(好ましくは置換又は無置換のアルキル基)を表し、R、R、R、Rが水素原子を表す場合。RとR、及びRとR10が結合しているベンゼン環とともに、フルオレン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、又はカルバゾール環を形成することが好ましい。これらの環は置換基を有してもよく、該置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基が好ましく、該アルキル基、アリール基は更に置換基を有してもよく、該更なる置換基としてはアルキル基、フッ素原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基が好ましい。
【0134】
〔5〕RとR、及び、RとRが互いに結合して芳香環を形成し、R、R、R、R、R、R10が水素原子を表す場合。
【0135】
また、発光材料は、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表されることがより好ましい。
【0136】
【化17】

【0137】
(式中、R11〜R20は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。R11〜R20のうち隣り合う2つが互いに結合して環を形成してもよい。)
【0138】
一般式(2)において、R11〜R20は同じでも異なっていてもよい。
一般式(2)において、R11〜R20としては、ハロゲン原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アルキル基が好ましく挙げられる。
一般式(2)において、R11〜R14は水素原子、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表すことが好ましい。該アリール基としては炭素数6〜20のものが好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基などが挙げられ、フェニル基が特に好ましい。該アリール基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、シアノ基、パーフルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、トリフルオロメチル基が特に好ましい)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい)、アリール基(炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基が挙げられる)、複素環基(好ましくは炭素数5〜20の複素環基であり、ピリジル基、チエニル基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、イミダゾイル基、フェニルカルバゾイル基がより好ましく、ピリジル基が特に好ましい)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる)が挙げられ、ハロゲン原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルキル基がより好ましい。
また、R11〜R14は複数存在してもよく、複数のR11〜R14は同じでも異なっていてもよい。R11〜R14は複数存在する場合は互いに結合して環を形成してもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。環を形成する場合は、R11〜R14が結合しているベンゼン環とともに、フルオレン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、又はカルバゾール環を形成することが好ましい。これらの環は置換基を有してもよく、該置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基が好ましく、該アルキル基、アリール基は更に置換基を有してもよく、該更なる置換基としてはアルキル基、フッ素原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基が好ましい。
一般式(2)において、R15〜R20は水素原子を表すことが好ましい。
【0139】
【化18】

【0140】
(式中、R21〜R30は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。R21〜R30のうち隣り合う2つが互いに結合して環を形成してもよい。)
【0141】
一般式(3)において、R21〜R30は同じでも異なっていてもよい。
一般式(3)において、R21〜R30としては、ハロゲン原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アルキル基が好ましく挙げられる。
一般式(3)において、R21〜R24は前記一般式(2)のR11〜R14と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)において、R26とR29はアルキル基又はアリール基であることが好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。該アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基が挙げられる。
一般式(3)において、R25、R27、R28、R30は水素原子を表すことが好ましい。
【0142】
【化19】

【0143】
(式中、R31〜R40は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。R31〜R40のうち隣り合う2つが互いに結合して環を形成してもよい。)
【0144】
一般式(4)において、R31〜R40は同じでも異なっていてもよい。
一般式(4)において、R31〜R40としては、ハロゲン原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アルキル基が好ましく挙げられる。
一般式(4)において、R31〜R32は前記一般式(2)のR11〜R14と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(4)において、R34とR38はアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(4)において、R36とR40は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、該アルキル基としては炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(4)において、R33、R35、R37、R39は水素原子を表すことが好ましい。
【0145】
【化20】

【0146】
(式中、R41〜R50は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。R41〜R50のうち隣り合う2つが互いに結合して環を形成してもよい。)
【0147】
一般式(5)において、R41〜R50は同じでも異なっていてもよい。
一般式(5)において、R41〜R50としては、ハロゲン原子、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アルキル基が好ましく挙げられる。
一般式(4)において、R43、R46、R47、R50は置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表すことが好ましい。該アリール基としては炭素数6〜20のものが好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基などが挙げられ、フェニル基が特に好ましい。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、具体例としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。前記アリール基又はアルキル基が有してもよい置換基は、前記一般式(2)のR11〜R14が有してもよい置換基と同様である。
一般式(5)において、R41、R42は前記一般式(2)のR11〜R14と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(5)において、R44、R45、R48、R49は水素原子を表すことが好ましい。
【0148】
本発明に好ましく用いられるピレン誘導体の具体例を下記置換基a−1〜a−16を用いて以下に示すが、これらに限定されない。
【0149】
【化21】

【0150】
【化22】

【0151】
【化23】

【0152】
【化24】

【0153】
また、ピレン誘導体の具体例として以下の化合物も挙げられる。
【0154】
【化25】

【0155】
【化26】

【0156】
[ペリレン誘導体]
ペリレン誘導体としては、従来から知られているペリレン誘導体を使用できるが、下記一般式(PE−1)で表される化合物が好ましく使用される。
【0157】
【化27】

【0158】
式中、RPE〜RPEは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、シリル基、エステル基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、これらは更に置換基を有していても良い。また、これらは互いに結合して環を形成しても良い。
PE〜nPEは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。nPE〜nPEが2以上のとき、複数のRPE〜RPEはそれぞれ互いに結合して環を形成しても良い。
また、式中の水素原子は重水素原子であっても良い。
【0159】
PE〜RPEは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、シリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、シリル基がより好ましい。こられの基は置換基を有していてもよく、置換基としては前述の置換基群Aで挙げた基が挙げられる。置換基を複数有する場合には、該置換基同士が連結して環を形成してもよい。
PE〜nPEは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0160】
一般式(PE−1)で表される化合物としては、以下の一般式(PE−1a)〜(PE−1f)のいずれかで表される化合物が好ましい。
一般式(PE−1a)〜(PE−1f)において、Rpeは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、シリル基、エステル基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。これらは更に置換基を有していてもよい。更に、一般式(PE−1d)〜(PE−1f)におけるRpeは、それぞれ独立に、5員又は6員の環を形成し、該環は更に置換基を有してもよい。
また、一般式(PE−1a)〜(PE−1f)中の水素原子は重水素原子であってもよい。
【0161】
peとしては、好ましくは、アルキル基(メチル基、プロピル基、ブチル基など)、アリール基(フェニル基、ナフチル基など)、ヘテロ環基(ピリジル基など)、アミノ基、シリル基、アミド基である。
pe及びRpeが形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基(メチル基、ブチル基など)、アリール基(フェニル基など)が挙げられる。
【0162】
【化28】

【0163】
以下に、本発明で使用できるペリレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0164】
【化29】

【0165】
一般式(PE−1)で表されるペリレン誘導体は、下記スキームに従い合成することができる。
【0166】
【化30】

【0167】
上記スキーム中、Rpeは、一般式(PE−1)におけるRPE〜RPEと同義である。Xはハロゲン原子を表す。
【0168】
本発明のドナーシートの発光性化合物を含有する有機層中の発光性化合物の含有量は特に制限されないが、該層中、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であるのがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0169】
(ホスト化合物)
本発明のドナーシートにおいて、アスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層には、更にホスト化合物(ホスト材料)を含有する。ホスト化合物とは、その励起状態から発光材料へエネルギー移動が起こり、その結果、該発光を発光させる化合物である。
【0170】
ホスト材料の分子半径としては、0.40nm〜3.0nmが好ましく、0.80nm〜2.5nmがより好ましく、1.20nm〜2.0nmが特に好ましい。この範囲であることは、配向性の向上、発光強度と発光波長の制御し易さ等の観点から好ましい。
【0171】
前述のとおり、発光性化合物の分子半径とホスト化合物の分子半径のサイズ比(発光性化合物の分子半径/ホスト化合物の分子半径)が0.8〜1.2であることが好ましい。好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.82〜1.15であり、更に好ましくは0.84〜1.1である。
【0172】
ホスト材料としては、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられ、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体が好ましい。カルバゾール誘導体としては、CBP(4,4’−ジカルバゾール−ビフェニル)、NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)、mCP(1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼンなどが好ましく挙げられる。
ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
ホスト材料としては、非液晶性ホスト材料、液晶性ホスト材料が挙げられる。
【0173】
(非液晶性ホスト材料)
非液晶性ホスト材料について説明する。なお、材料の液晶性の有無(液晶性の発現の有無)は、DSC測定及び偏光顕微鏡を観察することで判別することができる。
例えば、中心に、環状構造を有するもので、好ましくは該環状構造が置換基を有することにより2方向以上に広がった分子構造を有するものが挙げられる。
【0174】
上記環状構造としては、少なくとも芳香環、複素環を有していればよく、好ましくは縮環構造を有しているものが挙げられる。より具体的には、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環の他に、トリフェニレン、フェナントレン、トルクセン、フルオランテン、ピレン等が挙げられる。
環状構造が置換基を有する場合、該置換基は環状構造を中心として少なくとも2方向にあることが好ましく、3方向以上にあることがより好ましい。この置換基を有する方向は環状構造を中心に対称にあることが好ましいが、非対称であってもよい。これらは互いに結合して環を形成しても良い。
【0175】
[置換基群C]
該置換基は、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、イソプロピル、t−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルが好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、フェナントレン、アントラセン等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜12のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、炭素数2〜10のヘテロアリール基が好ましく、具体的には、チオフェン、チアゾール、チアジアゾール、フラン、オキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ベンゾチオール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、キノリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ベンゾピロール、ベンゾピラゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
アミノ基としては、具体的には、ジアリールアミノ基、N−アリール−N−アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜6のアルキルチオ基が好ましく、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数6〜12のアリールチオ基が好ましく、具体的には、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
シリル基としては、炭素数3〜18のシリル基が好ましく、具体的には、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
これらの置換基は更に置換基を有してもよく、該更なる置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソブチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基)、シリル基(トリメチルシリル基)等が挙げられる。
【0176】
環状構造が置換基を複数有する場合、該複数の置換基は同じでも異なってもよいが、同じであることが好ましい。
【0177】
非液晶性ホスト材料としては、好ましくは、下記一般式(H−1)〜(H−4)のいずれかで表される化合物である。
【0178】
【化31】

【0179】
一般式(H−1)中、Z103〜Z105は、それぞれ独立に、置換又は無置換の5員又は6員の芳香環を表し、これらは更に芳香環で縮環されてもよい。
【0180】
【化32】

【0181】
一般式(H−2)中、Z106及びZ107は、それぞれ独立に、置換又は無置換の5員又は6員の芳香環を表し、これらは更に芳香環で縮環されてもよい。
【0182】
【化33】

【0183】
一般式(H−3)中、Z100〜Z102は、それぞれ独立に、置換又は無置換の5員又は6員の芳香環を表し、これらは更に芳香環で縮環されてもよい。A〜Aは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。
【0184】
一般式(H−1)中、Z103〜Z105は置換又は無置換の5員又は6員の芳香環を表す。該芳香環としては、シクロペンタン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環等が挙げられ、シクロペンタン環、ベンゼン環が好ましい。これらは更に芳香環で縮環されてもよい。
これらの環が有しても良い置換基としては、前記置換基群Cの置換基が挙げられる。好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、より好ましくはアリール基である。
【0185】
一般式(H−2)中、Z106及びZ107は置換又は無置換の5員又は6員の芳香環を表す。該芳香環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環等が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。これらは更に芳香環で縮環されてもよい。
これらの環が有しても良い置換基としては、前記置換基群Cの置換基が挙げられる。好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、より好ましくはアリール基である。
【0186】
一般式(H−3)中、Z100〜Z102は置換又は無置換の5員又は6員の芳香環を表す。該芳香環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環等が挙げられ、チアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環が好ましい。これらは更に芳香環で縮環されてもよい。
これらの環が有しても良い置換基としては、前記置換基群Cの置換基が挙げられる。好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、より好ましくはアリール基である。
【0187】
以下に、非液晶性ホスト材料の具体例を下記に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
(一般式H−1の具体例)
【0188】
【化34】

【0189】
(一般式H−2の具体例)
【0190】
【化35】

【0191】
(一般式H−3の具体例)
【0192】
【化36】

【0193】
一般式(H−1)で表される化合物は、特開平8−27284号公報、特開2007−223921号公報、特表2008−543086号公報、Synthetic Communications,1997,vol.27,#11 p.2021−2031、Journal of Materials Chemistry,2005,vol.15,#24 p.2329−2398等に記載の方法で合成することができる。
一般式(H−2)で表される化合物は、特開2010−111620号公報、特開2008−101182号公報等に記載の方法で合成することができる。
一般式(H−3)で表される化合物は、特開2000−26436号公報、Tetraheron Letters,2010,vol.51,#18 p.2396−2399、Journal of Organic Chemistry,2009,vol.74,#2 p.530−544、Magnetic Resonance in CHemistry,1997,vol.35,#8 p.539−552等に記載の方法で合成することができる。
【0194】
(液晶性ホスト材料)
ホスト化合物としては、発光性化合物の配向度の観点から、液晶性ホスト化合物であることが好ましく、ディスコティック液晶性ホスト化合物であることがより好ましい。ディスコティック液晶性ホスト化合物は、平面性の高い円盤状の分子からなる液晶相であり、屈折率が、負の光学一軸性である。
ディスコティック液晶性ホスト化合物が発現する液晶相としては、カラムナー液晶相、ディスコティックネマチック液晶相(ND液晶相)などが挙げられる。これらの中でも、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック液晶相が好ましい。
【0195】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0196】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物から形成される本発明の有機電界発光素子用材料としては、最終的に有機電界発光素子用材料に含まれる化合物がディスコティック液晶性ホスト化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合又は架橋し、高分子化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性ホスト化合物の好ましい例としては、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性ホスト化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0197】
前記ディスコティック液晶性ホスト化合物としては、例えば下記一般式(D1)〜(D15)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
【化37】

【0199】
【化38】

【0200】
【化39】

【0201】
上記一般式(D1)〜(D15)において、Lは水素原子又は置換基を表し、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜19のアシルオキシ基、炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、それらの組み合わせからなる群より選ばれる置換基が好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アシルオキシ基としては、例えば、オクタノイルオキシ基、デカノイルオキシ基、ウンデカノイルオキシ基、2−オクテノイルオキシ基、2−デセノイルオキシ基、2−ウンデセノイルオキシ基、2−ドデセノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、4−ヘキシルベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基などが挙げられる。 前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基、4−ペンチルフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
これらの中でも、アルコキシ基、アシルオキシ基が好ましい。
上記一般式(D1)〜(D15)中、(D1)、(D4)、(D6)、(D13)、(D15)が好ましく、(D4)がより好ましい。
【0202】
ディスコティック液晶性ホスト化合物としてはトリフェニレン系のディスコティック液晶性化合物であることが好ましい。
液晶性を示すトリフェニレン誘導体としては、従来から知られているディスコティック液晶性のトリフェニレン誘導体であれば使用できるが、例えば下記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体を挙げることができる。
【0203】
【化40】

【0204】
上記一般式(T−I)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はR−O−CO−を意味する。これら基を持つ化合物が全てディスコティック液晶性ではないが、公知技術等に基づきディスコティック液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アリール基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0205】
としては、具体的には、R−、R−O−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−COO−が挙げられる。ここで、Rは重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0206】
は重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、重合性基を有する場合、アルキル基の最末端に重合性基を有することがN相の発現性の観点で好ましい。重合性基としては、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基等が挙げられ、重合の速度、合成の容易性及びコストの点で、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基が好ましく、アクリル酸エステル基がより好ましい。
で表される重合性基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0207】
としては、N相の発現性の観点で、R−O−Ph−COO−、R−(O−R)n−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−が好ましく、R−O−Ph−COO−が更に好ましい。
【0208】
上記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体は、N相を発現するという点で、下記一般式(T−II)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0209】
【化41】

【0210】
上記一般式(T−II)において、R’は、R−O−Ph−CO−、R−(O−R)n−O−Ph−CO−、又はR−O−Ph−CH=CH−CO−を表す。R、Ph、R、及びnの定義は、前記一般式(T−I)におけるR、Ph、R、及びnと同義である。また上記一般式(T−II)におけるR、Ph、R、及びnの具体例及び好ましい範囲も、前記一般式(T−I)におけるものと同様である。
【0211】
’は、N相の発現が良好であることから、以下の一般式(T−II−1)〜(T−II−5)のいずれかで表されることがより好ましい。
【0212】
【化42】

【0213】
上記一般式(T−II−1)〜(T−II−5)中、n及びn’はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
は、重合性基を表す。
【0214】
nは、1以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜20の整数であり、より好ましくは1〜15の整数であり、更に好ましくは3〜10の整数である。
n’は、1以上の整数を表す。n’は、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
は、重合性基を表し、その具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(T−I)においてRで表されるアルキル基が有していてもよい重合性基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0215】
上記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体は、電気的酸化に強いという点で、下記一般式(T−III)で表されるトリフェニレン誘導体であることもまた好ましい。
【0216】
【化43】

【0217】
上記一般式(T−III)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はR−O−CO−を意味する。Rとしては、アルキル基、アリール基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。R、Ph、R、及びnの定義は、前記一般式(T−I)におけるR、Ph、R、及びnと同義である。また上記一般式(T−III)におけるR、Ph、R、及びnの具体例及び好ましい範囲も、前記一般式(T−I)におけるものと同様である。
【0218】
以下に、液晶性を示すトリフェニレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0219】
【化44】

【0220】
本発明のドナーシートの発光性化合物を含有する有機層におけるホスト材料の含有量は、70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0221】
(電荷輸送性化合物)
本発明のドナーシートは、電荷輸送性化合物を含有する有機層(中間層)を有する。電荷輸送性化合物としては電子輸送性化合物、正孔輸送性化合物などが挙げられる。
電荷輸送性化合物としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alqと略記する)、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))(CBPと略記する)等のカルバゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体、(N,N’−ジ−α−ナフチル−N,N’−ジフェニル)−ベンジジン)(NPDと略記する)等が挙げられる。
発光性化合物の配向性の観点から、中間層の電荷輸送性化合物としては球状分子が好ましく、Alq又はBAlqが特に好ましい。
【0222】
本発明のドナーシートの有機層を塗布で作製する場合は、中間層の電荷輸送性化合物は、発光性化合物を含有する有機層を塗布した場合に溶解しないものが好ましい。例えば、低分子を架橋したものなどが挙げられる。
【0223】
本発明のドナーシートでは、少なくとも中間層と発光層の2層を一度に転写することができるが、この手法で作製した有機電界素子の駆動耐久性が大幅に向上することが分かった。これは、従来の発光層に比べ、発光性化合物がより水平配列し、発光効率が向上したために駆動耐久性が向上したとも考えられるが、発光効率の向上の程度から予想されるよりも大きく駆動耐久性が向上した。この理由は定かではないが、離型層上に直接発光層が接しないことで中間層と発光層の界面が均質にできたため、離型層上に付着した不純物の発光層への混入を抑制できたため、と推定している。
【0224】
電荷輸送性化合物を含有する有機層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0225】
(支持体)
本発明のドナーシートにおいて、支持体は特に限定されないが、化学的・熱的に安定であり、可撓性を有する材料で構成することが好ましい。具体的には、PET、PEN、PES、PTFEなどがあるが、これに限らない。支持体は加工性、素子作製時のハンドリング性等の観点からフレキシブル基板であることが好ましく、支持体の曲げ弾性率が1×10Mpa〜1×10Mpa、及び/又は引っ張り弾性率が1×10Mpa〜1×10Mpaであるものが好ましい。
本発明のドナーシートにおいて、支持体は離型層を含んでなることが好ましく、該離型層は特開2004−55533号公報に記載されている離型層が使用できる。その中でも特に離型性が優れているということで、フッ素原子又はケイ素原子を含有することが好ましい。
【0226】
本発明のドナーシートにおいて、離型層と中間層、中間層と発光層の純水接触角差をそれぞれΔ1、Δ2とすると、Δ1>Δ2であることが好ましい。
【0227】
〔有機電界発光素子の製造方法〕
本発明における有機電界発光素子の製造方法について説明する。
本発明における有機電界発光素子の製造方法は、前記ドナーシートの有機層側が、電極と有機膜を含有する基板の被成膜面に対面するように、前記ドナーシートを前記基板に重ねて加熱及び加圧のうち少なくとも一方を行う工程、及び前記支持体を引き剥がすことにより前記支持体上の有機層を前記基板の被成膜面に転写する工程を含む(図7参照)。
「電極と有機膜を含有する基板」とは、本発明のドナーシートに対して、「アクセプター基板」ともいうことができ、ドナーシートから転写される、少なくとも、電荷輸送性化合物を含有する有機層(中間層)と、ホスト化合物とアスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層(発光層)とともに、有機電界発光素子を形成するための電極と有機膜とを有するものである。なお、ドナーシートから転写される層は少なくとも2層であり、3層以上でもよい。
【0228】
ドナーシートを基板に重ねて加熱及び加圧のうち少なくとも一方を行う工程では、加熱のみ行ってもよいし、加圧のみ行ってもよいし、加熱と加圧を両方行ってもよい。
発光性化合物の配向度の観点から、前記加圧の範囲が1.0kgw/cm≦転写圧力≦10.0kgw/cmであることが好ましく、2.0kgw/cm≦転写圧力≦8.0kgw/cmであることがより好ましく、2.0kgw/cm≦転写圧力≦6.0kgw/cmであることが更に好ましい。
また、熱を印加しながら転写を行なうと、より配向度が向上する。その理由は定かではないが、熱を印加することで、膜が軟化し、よりせん断応力が膜に印加されやすくなるためと考えている。
前記加熱は、ホスト化合物として非液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物のガラス転移点をTgとすると、Tg−200℃≦転写温度≦Tg+20℃の範囲で加熱することが好ましく、Tg−150℃≦転写温度≦Tgがより好ましく、Tg−100℃≦転写温度≦Tgが更に好ましい。
また、ホスト化合物として液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物の液晶相から等方相へ転移する温度をTisoとすると、Tiso−100℃≦転写温度≦Tiso−40℃の範囲で加熱することが好ましくTiso−90℃≦転写温度≦Tiso−35℃がより好ましく、Tiso−80℃≦転写温度≦Tiso−30℃が更に好ましい。
【0229】
〔有機電界発光素子〕
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子は、前記製造方法によって得られるものであり、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層と中間層を含む少なくとも2層の有機層を有する有機電界発光素子であることが好ましい。
【0230】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であり、発光層以外に少なくとも1層の有機層を含むが、これら以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0231】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、陽極上に又は陰極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、陽極又は陰極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0232】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0233】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0234】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0235】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0236】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0237】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
本発明における有機電界発光素子の好ましい態様としては、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層と中間層を含む少なくとも2層の有機層を有する有機電界発光素子である。
【0238】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、少なくとも、電荷輸送性化合物を含有する有機層と、アスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層とは、本発明におけるドナーシートを用いて転写により形成される。これらの層以外の各有機層は、真空蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。乾式法としては真空蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。
これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。
湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0239】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0240】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は前述のドナーシートにおけるアスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層を転写して得られる。
【0241】
発光層中の発光材料の含有量は特に制限されないが、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であるのがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
発光層中のホスト材料の含有量は特に制限されないが、70質量%〜99.9質量%が好ましく、75質量%〜99質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。
【0242】
発光層の厚みは、駆動電圧上昇を抑え、また短絡を防止する観点から、10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。
【0243】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有してもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる正孔注入材料、正孔輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0244】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0245】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0246】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0247】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0248】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0249】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0250】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0251】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
本発明の有機電界発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【実施例】
【0252】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
以下、溶媒の混合比は質量比を表す。
【0253】
<ドナーシートを蒸着で作製する場合>
(比較例1)
石英基板(25mm×25mm×1.1mm)を洗浄容器に入れ、中性洗剤中で超音波洗浄した後、純水中で超音波洗浄し、120分間120℃で熱処理を行った。
この基板表面をUVオゾン処理し、その上に真空蒸着法により、中間層材料1(BAlq)を10nmに成膜した。その上に91質量%のホスト材4と9質量%ゲスト材1をドープした発光層を30nm成膜した。なお本発明の比較例・実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は1Å/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。
作製した石英基板上のゲスト材のオーダパラメータを測定した結果、0.25という値を得た。
【0254】
<オーダパラメータの測定手法>
詳細な理論・測定手法は特開2004−126109号公報に記載されている。特開2004−126109号公報に記載されている、fxz(膜厚方向の配向係数)を本発明におけるオーダパラメータとする。なお、本発明において、測定装置はVarian製FTS−7000を使用した。また、測定条件は、検出器はMCTを、ATR結晶はGeを使用し、入射角45°とした。積算は128回とした。
【0255】
ゲスト材のアスペクト比は本文記載の方法で算出した。
【0256】
比較例2〜5もホスト材の種類を変更した以外は比較例1と同様に作製した。
【0257】
(実施例1)
支持体としてPENフィルム(帝人DupontFilm製Q65F)のプレーン面を使用した。これを25mm×25mmの大きさにカットしてから、イソプロパノール(IPA)に浸し表面を洗浄した。支持体の上に、以下の離型層用塗布液1を、バーコータを用いて塗布し、80℃で2時間真空乾燥して厚さ3.0μmの離型層1を得た。
離型層用塗布液1
ポリエステル樹脂(日本合成化学社製HP320):30質量%
フッ素系離型剤(三井フロロケミカル社製FC430):1質量%
メチルエチルケトン:35質量%
トルエン:35質量%
この支持体を25mm×25mm×0.7mmの無アルカリガラスに両面テープで貼り付け、真空蒸着法により、中間層材料1(BAlq)を10nmに成膜した。その上に91質量%のホスト材4と9質量%のゲスト材1をドープした発光層を30nm成膜した。
窒素雰囲気下で、上記記載のドナーシート(支持体/離型層/中間層/発光層)の有機膜面と、石英基板(25mm×25mm×1.1mm)を向かい合わせてから貼り合わせ、ローラーの間を2.0 kgw/cmの圧力で加圧しながら0.05m/minの速度で転写を行なった。この際、加熱はせずに室温20℃での転写を行なった。加圧した後、石英基板からドナーシートを引き剥がし、石英基板上に中間層/発光層を転写した。なお、ロールラミ装置は大成ラミネータ社製VA−4003を使用した。
転写前のドナーシート上ゲスト材のオーダパラメータと、転写後の石英基板上ゲスト材のオーダパラメータをATR−IR法で測定した。
【0258】
実施例2及び3もホスト材の種類を変更した以外は実施例1と同様に作製した。実施例4、5では実施例1に対してホスト材の種類を変更し、更に転写時に熱を各々50℃、80℃と印加した。実施例6、7では実施例1に対してホスト材の種類を変更し、更に転写時に熱を80℃印加した。
【0259】
(比較例6)
実施例5において、中間層を用いずに離型層上に発光層を成膜したこと以外は、実施例5と同様にドナーシートを作製し、転写を行なった。
【0260】
比較例7、8もホスト材の種類を変更した以外は比較例6と同様に作製した。
【0261】
(比較例9)
実施例5において、ホスト材としてホスト材3を、ゲスト材としてゲスト材2を使用したこと以外は、実施例5と同様にドナーシートを作製し、転写を行なった。
【0262】
比較例10、実施例8〜10もゲスト材の種類を変更した以外は比較例9と同様に作製した。
【0263】
(実施例11)
実施例10において、中間層材として中間層材2を用いたこと以外は、実施例10と同様にドナーシートを作製し、転写を行なった。
【0264】
実施例12〜14も中間層材の種類を変更した以外は実施例11と同様に作製した。
【0265】
(実施例15)
実施例1に記載の方法で支持体を洗浄した後、以下の離型層用塗布液2を、バーコータを用いて塗布し、80℃で2時間真空乾燥して厚さ3.0μmの離型層2を得た。
離型層用塗布液2
ポリエステル樹脂(日本合成化学社製HP320):30質量%
シリコーン変性アクリル樹脂溶液(東亜合成化学社製US3700):10質量%
メチルエチルケトン:30質量%
トルエン:30質量%
この支持体を25mm×25mm×0.7mmの無アルカリガラスに両面テープで貼り付け、真空蒸着法により、中間層材料1(BAlq)を10nmに成膜した。その上に91質量%のホスト材3と9質量%のゲスト材6をドープした発光層を30nm成膜した。
転写手法・オーダパラメータ測定は実施例5と同様の手法で行なった。
【0266】
(実施例16)
実施例1に記載の方法で支持体を洗浄した後、25mm×25mm×0.7mmの無アルカリガラスに両面テープで貼り付けた。これの上に、真空蒸着法により、アルミニウムを300nmの厚みに成膜し、離型層3を得た。
この支持体を25mm×25mm×0.7mmの無アルカリガラスに両面テープで貼り付け、真空蒸着法により、中間層材料1(BAlq)を10nmに成膜した。その上に91質量%のホスト材3と9質量部のゲスト材6をドープした発光層を30nm成膜した。
転写手法・オーダパラメータ測定は実施例5と同様の手法で行なった。
【0267】
【表1】

【0268】
【表2】

【0269】
比較例1〜5、実施例1〜7の結果より、石英上に発光層を蒸着で作製するよりも、転写で作製した方が、配向度が向上することが分かる。また、転写時に熱をかけると、より配向度が向上する(実施例3〜5)。
比較例6〜8より、中間層を設けず、発光層のみの1層転写だと、発光材料のオーダパラメータが低いことが分かる。
比較例9〜10、実施例8〜10より、発光材料のアスペクト比が3未満であると発光材料のオーダパラメータが低いことが分かる。また、発光材料のアスペクト比が5以上であるとオーダパラメータが非常に高くなることが分かる。
実施例10〜14より、中間層の種類によらず、中間層上に設けられた発光層は配向度に優れることが分かる。
実施例15及び16より、離型層の種類によらず、中間層と発光層の2層転写だと配向度が高いことが分かる。
【0270】
支持体として石英ガラス(25mm×25mm×1.0mm)を用い、実施例7に準じて同様の実験を行なった結果、転写前後でのオーダパラメータが実施例7と同様の値となった。これにより石英ガラス基板においても、フレキシブル基板と同様の効果を確認することができた。
【0271】
実施例7において、離型層を用いずに、2層転写を実施した。転写前後でのオーダパラメータは離型層を用いた場合と同様の値となった。これにより離型層を用いない場合においても、離型層を用いた場合と同様の効果を確認することができた。
【0272】
<ドナーシートを塗布で作製する場合>
(比較例11)
比較例1に記載の方法で石英基板を洗浄し、UVオゾン処理をした。
非液晶性ホスト材6(91.0mg)とゲスト材11(9.0mg)の固形分含有率2質量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液を調液した。窒素雰囲気下で、石英基板の上に、調液した溶媒をスピンコート塗布(2000rpm、20秒)し、自然乾燥させ膜厚30nmの発光層を成膜した。
作製した石英基板上のゲスト材のオーダパラメータを測定した結果、0.25という値を得た。
【0273】
比較例12〜22もホスト材、ゲスト材の種類を変更した以外は比較例11と同様に作製した。
【0274】
(実施例17)
非液晶性ホスト材6(91.0mg)ゲスト材11(9.0mg)の固形分含有率2質量%のTHF溶液を調液した。窒素雰囲気下で、実施例1に記載の手法で作製した支持体/離型層1/中間層(BAlq)の上に、調液した溶媒をスピンコート塗布(2000rpm、20秒)し、自然乾燥させ膜厚30nmの発光層を成膜した。転写手法・オーダパラメータ測定は実施例1と同様の手法で行なった。
【0275】
実施例18〜30もホスト材、ゲスト材の種類を変更した以外は実施例17と同様に作製した。また、実施例23、24では転写時に熱を30℃・40℃と印加した。実施例25〜29では転写時に熱を40℃印加し、実施例30では転写時に熱を60℃印加した。
【0276】
(比較例23)
ディスコティック液晶性ホスト材7(91.0mg)と比較燐光発光材料9(9.0mg)の固形分含有率3質量%のTHF溶液を調液した。窒素雰囲気下で、実施例1に記載の手法で作製した支持体/離型層1の上に、調液した溶媒をスピンコート塗布(1000rpm、20秒)し、自然乾燥させ膜厚30nmの発光層を成膜した。転写手法・オーダパラメータ測定は実施例24と同様の手法で行なった。
【0277】
比較例24〜29もホスト材、ゲスト材の種類を変更した以外は比較例23と同様に作製した。また、比較例29では転写時に熱を60℃印加した。
【0278】
(比較例30)
実施例24において、ゲスト材として比較1を使用したこと以外は、実施例17と同様にドナーシートを作製し、転写・オーダパラメータ測定を実施した。
【0279】
比較例31もホスト材、ゲスト材の種類を変更した以外は比較例30と同様に作製した。なお、転写時に熱を60℃印加した。
【0280】
【表3】

【0281】
【表4】

【0282】
【表5】

【0283】
比較例11〜実施例30より、石英基板上に発光層を塗布で作製するよりも、転写で作製した方が、配向度が向上するということが分かる。また、非液晶性ホストを用いて塗布・転写をした場合は、液晶性ホストを用いた場合より、配向度が低い(比較例11・実施例17)。熱をかけると、より配向度が向上する(実施例22〜24)。
比較例23〜29より、中間層を設けず、発光層のみの1層転写だと、発光材料のオーダパラメータが低いことが分かる。
比較例30〜31より、発光材料のアスペクト比が3未満であると発光材料のオーダパラメータが低いことが分かる。
【0284】
<ドナーシートを蒸着で作製した際の、素子の作製(燐光材料)>
(比較例32)
2.5cm×2.5cm×t0.7mmのガラス基板にITO(IndiumTinOxide)を膜厚100nmにスパッタした。このITO付ガラス基板を洗浄容器に入れ、中性洗剤中で超音波洗浄した後、純水中で超音波洗浄し、120分間120℃で熱処理を行った。
この基板表面をUVオゾン処理し、その上に、2TNATA(4,4’,4’’−Tris(N−(2−naphtyl)−N−phenyl−amino)−triphenyla mine)を正孔注入層として、膜厚40nmに蒸着した。
正孔注入層の上に、α−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−pheny]benzidine)を正孔輸送層として膜厚10nmに蒸着した。これによりアクセプター基板1を得た。
窒素雰囲気下で、アクセプター基板1の有機膜面と、比較例8で作製したドナーシート(支持体/離型層/発光層)上の有機膜面を向かい合わせてから貼り合わせ、ローラーの間を0.5kgw/cmの圧力で加圧しながら0.05m/minの速度で転写を行なった。この際、加熱はせずに室温20℃での転写を行なった。加圧した後、アクセプター基板1からドナーシートを引き剥がし、アクセプター基板1上に発光層(EML)を転写した。
得られた発光層の上に、真空蒸着法によりBAlqを厚み40nmに成膜した(電子輸送層)。電子輸送層の上に、電子注入層として、フッ化リチウム(LiF)を厚み1nmに蒸着した。電子注入層の上に、パタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を用いて、金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
作製した積層体を、窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ社製)を用いて封止した。
こうして、比較例32の有機電界発光素子1を作製した。最終的に作製した有機電界発光素子1の素子構成は以下の通りである:ITO(100)/2TNATA(40)/NPD(10)/EML(30)/BAlq(40)/LiF(1)/Al(100)。
なお、ホスト化合物3のTgは213℃である。
【0285】
(比較例33)
比較例32において、転写時の圧力を0.5kgw/cmから1.0kgw/cmに代えたこと以外は、比較例32と同様の手法で有機電界発光素子2を作製した。
【0286】
(比較例34)
比較例32において、転写時の圧力を0.5kgw/cmから2.0kgw/cmに代えたこと以外は、比較例32と同様の手法で有機電界発光素子3を作製した。
【0287】
(実施例31)
比較例32に記載の手法でアクセプター基板を得た。
実施例7で得たドナーシートを使用し、比較例33に記載の手法で中間層/EMLをアクセプター基板に転写した。
得られた電子輸送層の上に、真空蒸着法により、電子注入層として、フッ化リチウム(LiF)を厚み1nmに蒸着した。電子注入層の上に、パタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を用いて、金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
作製した積層体を、窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ社製)を用いて封止した。
こうして、実施例31の有機電界発光素子4を作製した。
【0288】
(実施例32)
実施例31において、転写時の圧力を1.0kgw/cmから2.0kgw/cmに代えたこと以外は、実施例31と同様の手法で有機電界発光素子5を作製した。
【0289】
(実施例33)
実施例32において、転写時の温度を20℃から80℃に代えたこと以外は、実施例32と同様の手法で有機電界発光素子6を作製した。
【0290】
(実施例34)
実施例32において、転写時の温度を20℃から120℃に代えたこと以外は、実施例32と同様の手法で有機電界発光素子7を作製した。
【0291】
(実施例35)
実施例7に記載の方法で作製したドナーシートを用い、EMLの上に真空蒸着法によりα−NPDを厚さ10nmに成膜し、ドナーシートを得た。
比較例32に記載の方法で、2TNATAまで成膜したアクセプター基板2を得た。アクセプター基板2とドナーシートを用い、圧力2.0kgw/cm、印加温度120℃の下で転写を行い、”BAlq/EML/NPD”の三層を同時に転写した。
得られた電子輸送層(BAlq)の上に、比較例32で記載と同様の方法で、電子注入層・陰極を作製し、封止した。こうして有機電界発光素子8を得た。
【0292】
<発光面の評価方法>
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、電圧10Vを印加し、発光面を実態顕微鏡で観察した。
【0293】
<外部量子効率(EQE)の測定方法>
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電流を各有機電界発光素子に印加し、発光させた。発光時の輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は、浜松ホトニクス株式会社製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらの数値をもとに、外部量子効率を輝度換算法により算出した。
【0294】
<駆動耐久性の測定方法>
初期輝度1000cd/mにて輝度が半分になるまで定電流駆動し、輝度半減期を駆動耐久性とした。
【0295】
<素子特性の結果>
素子作製時に使用したドナーシート構成と転写条件(温度・圧力)、及び転写後素子の発光面、1000cd/mにおける外部量子効率、初期輝度1000cd/mでの駆動耐久性の値を示す。なお、比較例34で作製した素子3の1000cd/mにおけるEQE測定値を1とし、以下相対値を示した。また、比較例34で作製した素子3の1000cd/mにおける駆動耐久性を1とし、以下相対値を示した。
発光面について×は所望の発光層からの発光が観察できなかった(発光層が転写されていない)、△は所望の発光層からの発光が観察できるが全面均一には発光していなかった(発光層が部分的に転写された)、○は発光層からの発光が全面均一に発光していた(発光層が転写された)ことを示す。
【0296】
【表6】

【0297】
<ドナーシートを蒸着で作製した際の、素子の実施例(蛍光材料)>
(比較例35)
比較例32に記載の手法で、アクセプター基板を得た。
実施例1に記載の手法で得た支持体/離型層1を、25mm×25mm×0.7mmの無アルカリガラスに両面テープで貼り付け、真空蒸着法により、95質量%の非液晶性のホスト材10と5質量%の蛍光発光性化合物であるゲスト材16をドープした発光層を30nm成膜した。こうしてドナー基板を得た。
窒素雰囲気下で、アクセプター基板の有機膜面とドナー基板の有機面を向かい合わせ、ローラーの間を2.0kgw/cmの圧力で加圧しながら0.05m/minの速度で転写を行なった。この際、熱は印加せずに室温20℃での転写を行なった。加圧した後、アクセプター基板からドナーシートを引き剥がし、アクセプター基板上に発光層(EML)を転写した。
得た発光層の上に、比較例32に記載の手法で、電子輸送層・電子注入層・陰極を蒸着した。比較例32の記載の手法で封止し、こうして有機電界発光素子9を得た。
なお、ホスト材10のTgは185℃である。
【0298】
(実施例36)
比較35に記載の手法でアクセプター基板を得た。
実施例1に記載の手法で得た支持体/離型層1/中間層の上に、真空蒸着法により、95質量%のホスト材10と5質量%のゲスト材16をドープした発光層を30nm成膜した。こうしてドナー基板を得た。
窒素雰囲気下で、アクセプター基板の有機膜面とドナー基板の有機面を向かい合わせ、ローラーの間を2.0kgw/cmの圧力で加圧しながら0.05m/minの速度で転写を行なった。この際、熱は印加せずに室温20℃での転写を行なった。加圧した後、アクセプター基板からドナーシートを引き剥がし、アクセプター基板上に中間層/発光層(EML)/を転写した。
得た電子輸送層の上に、実施例31に記載の手法で、電子注入層・陰極を蒸着した。比較例32の記載の手法で封止し、こうして有機電界発光素子10を得た。
【0299】
<転写前後でのオーダパラメータ>
まず、比較例35及び実施例36で作製した、転写前のゲスト材のオーダパラメータを表4に示す。測定手法は上記と同様、ATR−IR測定を用いた。
【0300】
【表7】

【0301】
2層転写によりオーダパラメータが向上していることが分かる。
【0302】
<素子特性の結果>
素子作製時に使用したドナーシート構成と転写条件(温度・圧力)、及び転写後素子の発光面、1000cd/mにおける外部量子効率、初期輝度1000cd/mでの駆動耐久性の値を示す。なお、比較例35で作製した素子9の1000cd/mにおけるEQE測定値を1とし、以下相対値を示した。また、比較例35で作製した素子9の1000cd/mにおける駆動耐久性を1とし、以下相対値を示した。
【0303】
【表8】

【0304】
比較例35・実施例36より、発光層に蛍光発光材料を用いても、2層転写によりEQE・耐久性が改善されることが分かる。
【0305】
<ドナーシートを塗布で作製した際の、素子の実施例(燐光材料)>
(比較例36)
比較例32において、比較例22で作製したドナーシートを用いたこと以外は、比較例32と同様の手法で有機電界発光素子11を作製した。なお、ホスト化合物8のTisoは97℃である。
【0306】
(比較例37)
比較例36において、転写時の圧力を0.5kgw/cmから1.0kgw/cmに代えたこと以外は、比較例36と同様の手法で有機電界発光素子12を作製した。
【0307】
(比較例38)
比較例36において、転写時の圧力を0.5kgw/cmから2.0kgw/cmに代えたこと以外は、比較例36と同様の手法で有機電界発光素子13を作製した。
【0308】
(実施例37)
実施例31において、ドナーシートとして、実施例30で作製したドナーシートを用いたこと以外は、実施例31と同様の手法で有機電界発光素子14を作製した。
【0309】
(実施例38)
実施例37において、転写時の圧力を1.0kgw/cmから2.0kgw/cmに代えたこと以外は、実施例37と同様の手法で有機電界発光素子15を作製した。
【0310】
(実施例39)
実施例38において、転写時の温度を20℃から30℃に代えたこと以外は、実施例38と同様の手法で有機電界発光素子16を作製した。
【0311】
(実施例40)
実施例38において、転写時の温度を20℃から40℃に代えたこと以外は、実施例38と同様の手法で有機電界発光素子17を作製した。
【0312】
(実施例41)
実施例30に記載の方法で作製したドナーシートを用い、EMLの上に真空蒸着法によりα−NPDを厚さ10nmに成膜し、ドナーシートを得た。
比較例32に記載の方法で、2TNATAまで成膜したアクセプター基板2を得た。アクセプター基板2とドナーシートを用い、圧力2.0kgw/cm、印加温度40℃の下で転写を行い、”BAlq/EML/NPD”の三層を同時に転写した。
得られた電子輸送層の上に、比較例32で記載と同様の方法で、電子注入層・陰極を作製し、封止した。こうして有機電界発光素子18を得た。
【0313】
素子作製時に使用したドナーシート構成と転写条件(温度・圧力)、及び転写後素子の発光面、1000cd/mにおける外部量子効率、初期輝度1000cd/mでの駆動耐久性の値を示す。なお、比較例38で作製した素子3の1000cd/mにおけるEQE測定値を1とし、以下相対値を示した。また、比較例38で作製した素子3の1000cd/mにおける駆動耐久性を1とし、以下相対値を示した。
【0314】
【表9】

【0315】
【化45】

【0316】
【化46】

【0317】
【化47】

【0318】
【化48】

【0319】
【化49】

【0320】
【化50】

【0321】
ホスト材1〜6、10は非液晶性ホスト化合物であり、ホスト材7〜9はディスコティック液晶性ホスト化合物である。
ゲスト材1〜15は燐光性発光材料であり、ゲスト材16は蛍光発光材料である。
中間層材料1〜5は電荷輸送性化合物である。
【符号の説明】
【0322】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも、電荷輸送性化合物を含有する有機層と、ホスト化合物及びアスペクト比が3より大きい発光性化合物を含有する有機層とをこの順に有し、前記少なくとも2層の有機層は転写により同時に転写される層である、有機電界発光素子用ドナーシート。なお、前記発光性化合物のアスペクト比は、前記ホスト化合物として、非液晶性のホスト化合物を使用する際は(分子長/分子厚み)と定義し、液晶性のホスト化合物を使用する際は(分子コア直径/分子コア厚み)と定義する。
【請求項2】
前記発光性化合物が燐光発光性化合物である請求項1に記載のドナーシート。
【請求項3】
前記燐光発光性化合物が白金錯体である請求項2に記載のドナーシート。
【請求項4】
前記発光性化合物の分子半径と前記ホスト化合物の分子半径のサイズ比(発光性化合物の分子半径/ホスト化合物の分子半径)が0.8〜1.2である請求項1〜3のいずれか1項に記載のドナーシート。
【請求項5】
前記ホスト化合物がディスコティック液晶性ホスト化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のドナーシート。
【請求項6】
前記支持体がフレキシブル基板である請求項1〜5のいずれか1項に記載のドナーシート。
【請求項7】
前記支持体が離型層を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のドナーシート。
【請求項8】
前記離型層がフッ素原子又はケイ素原子を含有する請求項7に記載のドナーシート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のドナーシートの前記有機層側が、電極と有機膜を含有する基板の被成膜面に対面するように、前記ドナーシートを前記基板に重ねて、加熱及び加圧のうち少なくとも一方を行い、前記支持体を引き剥がすことにより前記支持体上の有機層を前記基板の被成膜面に転写して作製された有機電界発光素子。
【請求項10】
前記ドナーシートを前記基板に重ねて加圧されてなる請求項9に記載の有機電界発光素子であって、前記加圧の範囲が2.0kgw/cm以上6.0kgw/cm以下である、有機電界発光素子。
【請求項11】
前記ホスト化合物として非液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物のガラス転移点をTgとすると、Tg−200℃≦転写温度≦Tg+20℃の範囲で加熱され、
前記ホスト化合物として液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物の液晶相から等方相へ転移する温度をTisoとすると、Tiso−80℃≦転写温度≦Tiso−30℃の範囲で加熱されて作製された請求項9又は10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のドナーシートの有機層側が、電極と有機膜を含有する基板の被成膜面に対面するように、前記ドナーシートを前記基板に重ねて加熱及び加圧のうち少なくとも一方を行う工程、及び前記支持体を引き剥がすことにより前記支持体上の有機層を前記基板の被成膜面に転写する工程を含む有機電界発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記加圧の範囲が2.0kgw/cm以上6.0kgw/cm以下である、請求項12に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記ホスト化合物として非液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物のガラス転移点をTgとすると、Tg−200℃≦転写温度≦Tg+20℃の範囲で加熱する工程を有し、
前記ホスト化合物として液晶性ホスト化合物を使用する場合は、ホスト化合物の液晶相から等方相へ転移する温度をTisoとすると、Tiso−80℃≦転写温度≦Tiso−30℃の範囲で加熱する工程を有する、請求項12又は13に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−234956(P2012−234956A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102255(P2011−102255)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】