説明

有機電界発光素子

【課題】 第1及び第2電極間の発光層に一つ以上の燐光ドーパントを含む有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】 発光層は、ホストとして正孔輸送物質と電子輸送物質の混合物を含み、かつ、発光層の上部に積層されている青色発光層を含むことを特徴とする有機電界発光素子である。これにより、発光層上部に青色発光層の共通層を形成することによって、従来構造に比べて効率及び寿命特性を向上させることができ、青色発光領域に対する微細パターニングを必要とせずに、工程数を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光(EL)素子に係り、さらに詳細には、青色共通発光層を使用する有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機EL素子は、第1及び第2電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などのさまざまな層から構成される。有機EL素子は、使用する材料によって、高分子と低分子とに分けられるが、低分子有機ELディバイスの場合には、真空蒸着によって各層が形成され、高分子有機ELディバイスの場合には、スピンコーティング工程を利用して発光素子が設けられる。
【0003】
低分子型有機EL素子は、各層の機能によって、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔抑制層、電子注入層などの多層の有機膜を蒸着工程により積層し、最後にカソード電極を蒸着して素子を完成する。
【0004】
既存工程として、低分子素子を製作するときは、正孔注入層並びに正孔輸送層まで蒸着した後、シャドーマスクにより、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の領域をそれぞれ蒸着してパターニングした後、さらに共通層として正孔抑制層と電子注入層とを順に蒸着してカソードを蒸着する。
【0005】
低分子有機ELディバイスの場合には、真空蒸着によって各層を形成し、蛍光または燐光素子が設けられるが、フルカラー素子を設ける場合、マスクを利用して各層を蒸着するため、量産に不利であるという点がある。これに関わる特許としては、特許文献1〜3がある。
【0006】
一方、高分子を利用した有機EL素子は、それぞれ赤色、緑色、青色の高分子をパターニングせねばならないが、インクジェット技術やレーザ転写法を利用するとき、効率や寿命のような発光特性が悪くなるという問題点がある。
【0007】
従って、有機EL素子を製造するためには、赤色、緑色、青色の別に微細パターン化をせねばならないため、どのような発光層の形成工程を行っても、工程上の制約が生じる。
【0008】
図1は、従来技術による有機EL素子の構造を表す断面図である。図1を参照すると、まず基板10上にアノード電極12を蒸着してパターニングする。前記アノード電極12は、画素領域を定義する。その後、絶縁膜14で画素領域を定義し、有機膜で正孔注入層16及び/または正孔輸送層18を真空蒸着のような方法で基板全面に塗布する。かかる正孔注入層16及び/または正孔輸送層18は、共通層として、赤色、緑色、青色の全領域にわたって塗布される。塗布された正孔注入層16及び/または正孔輸送層18の上部に、真空蒸着、スピンコーティングまたはレーザ熱転写法を使用し、赤色領域100、緑色領域200、青色領域300を形成する。真空蒸着法を利用する場合には、シャドーマスクを使用して赤色領域、緑色領域、青色領域をパターン化し、レーザ熱転写法を使用する場合には、レーザのスキャニングにより所望の部分だけ転写するので、特にシャドーマスクを使用する必要はない。
【0009】
その後、基板全面にわたって、共通層として、正孔抑制層20及び/または電子輸送層22を塗布し、最後に上部電極としてカソード電極24を積層する。
【0010】
このように、従来技術の場合、画素領域で、赤色領域100、緑色領域200、青色領域300を形成するとき、少なくとも三回の蒸着または転写によるパターニング工程が必要となり、画素領域に赤色領域、緑色領域、青色領域をパターンするときには、微細なパターンを形成せねばならないので、ミスアラインが発生する余地があるという問題点がある。また、前記画素領域で、正孔の移動が電子の移動より速くなり、発光層の上部に正孔の移動を防止する正孔抑制層を必ず必要とするため、1工程が追加されるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,310,360号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第6,097,147号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の問題点を解決するために、本発明は、青色共通層を発光層の上部領域に導入し、このために正孔輸送型ホストに電子輸送型ホスト物質を添加した新しい構造の有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、第1及び第2電極間の発光層に一つ以上の燐光ドーパントを含む有機EL素子において、前記発光層は、ホストであり、正孔輸送物質及び電子輸送物質が混合されており、前記発光層の上部に青色発光層が共通に積層されていることを特徴とする有機EL素子を提供する。
【0014】
また、本発明は、第1電極及び第2電極の間の発行層に一つ以上の燐光ドーパントを含む有機電界発光素子において、前記発光層はホストとして正孔輸送物質及び電子輸送物質が混合されており、赤色及び緑色画素上にそれぞれ赤色及び緑色発光層が積層され、前記赤色及び緑色発光層の上部に青色共通層が積層されており、また、青色画素上に青色共通層だけが積層されてなることを特徴とする有機電界発光(EL)素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構造を有する有機EL素子は、混合ホスト物質を使用する燐光発光層の上部に青色発光層の共通層を形成することによって、下記のような効果を得ることができる。
【0016】
第一に、燐光発光素子で正孔が電子輸送層に広がることを防止するために、必要な正孔抑制層を形成しなくともよいので、発光層の蒸着工程を減らすことができる。
【0017】
第二に、発光層を青色発光領域に対する微細パターニングを不要とし、全体的に工程数を減らすことができる。
【0018】
第三に、混合ホスト物質を使用することによって、赤色発光層の場合にも、青色共通層との混色現象を防止できる。
【0019】
第四に、ディバイスの効率が従来構造に比べて30%以上向上し、さらに寿命特性も200%向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術による有機EL素子の構造を表す断面図である。
【図2】本発明の一実施例による有機EL素子の構造を表す断面図である。
【図3】従来の緑色発光物質として燐光発光物質だけを使用した場合のエネルギーバンドダイヤグラムを表す図面である。
【図4】本発明により、緑色発光物質として燐光発光物質を使用して青色発光物質を共通層に使用した場合のエネルギーバンドダイヤグラムの一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、発光層は、赤色発光層及び緑色発光層であり、ホスト物質として使われる正孔輸送物質は、カルバゾール系化合物であることが望ましい。
【0023】
前記カルバゾール系化合物は、1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル、ポリビニルカルバゾール、m−ビスカルバゾリルフェニル、4,4’−ビスカルバゾリル−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1,3,5−トリ(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン及びビス(4−カルバゾリルフェニル)シランよりなる群から選択された一つ以上でありうる。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、発光層は、赤色発光層及び緑色発光層であり、ホスト物質として使われる電子輸送物質は、有機金属錯体、オキサジアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、及びスピロフルオレン系化合物よりなる群から選択された一つ以上の化合物であることが望ましい。
【0025】
前記有機金属錯体は、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシ金属、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシ金属、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシ金属、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシ金属)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)金属、及びビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)金属よりなる群から選択された一つ以上であり、前記金属は、Al、Zn、Be、またはGaであることが望ましい。
【0026】
前記有機金属錯体は、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)亜鉛、またはビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウムであることがさらに望ましい。
【0027】
前記オキサジアゾール系化合物は、(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールで、前記フェナントロリン系化合物は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリンであり、前記トリアジン系化合物は、2,4,6−トリス(ジアリールアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリカルバゾロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、または2,4,6−トリスビフェニル−1,3,5−トリアジンであり、前記トリアゾール系化合物は、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールであることが望ましい。
【0028】
前記スピロフルオレン化合物は、下記の化学式2で示されうる:
【0029】
【化1】

【0030】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立にHであるか、または炭素数1ないし22個のアルキル基、アルコキシ基、CN基、NO基、及び−O−Arのうちから選択され、ここで、前記Arは、フェニル、ビフェニル、1−ナフチル、及び2−ナフチルのうちから選択され、Xは、O、CR、NR、S、またはN=Nである。
【0031】
前記スピロフルオレン化合物の非制限的な例は、フェニルスピロフルオレン、ビフェニルスピロフルオレン、及びメチルスピロフルオレンなどよりなる群から選択された一つ以上でありうる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記赤色及び緑色発光層に使われる燐光ドーパントは、ビスチエニルピリジンアセチルアセトネートイリジウム、ビス(ベンゾチエニルピリジン)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネート、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムよりなる群から選択された一つ以上であることが望ましい。
【0033】
本発明の有機EL素子に使われる正孔輸送物質及び電子輸送物質の質量混合比は、1:9ないし9:1であることが望ましい。さらに望ましくは、2.5:7.5ないし7.5:2.5である。前記範囲を外れる場合には、青色共通層と発光層との混色現象が発生して望ましくない。
【0034】
前記赤色発光層100及び緑色発光層200の厚さは、100ないし800Åの範囲にあることが望ましい。もし発光層の厚さが100Å未満ならば、励起子の再結合領域が十分でなくて効率が落ち、800Åを超えれば、駆動電圧が上昇して望ましくない。しかし、これは現在知られている発光層のケースに該当し、電荷輸送能力にさらにすぐれる材料である場合には、駆動電圧の上昇が大きくならず、さらに厚い範囲も使用可能である。
【0035】
前記赤色及び緑色発光物質は、真空蒸着、湿式コーティング、インクジェット及びレーザ熱転写法よりなる群から選択される1種の方法で形成可能である。一方、赤色及び緑色発光層は、真空蒸着法を使用する場合には、シャドーマスクを使用して微細パターン化し、スピンコーティングまたはレーザ熱転写法を使用する場合には、シャドーマスクを使用してパターン化する必要はない。
【0036】
このように、赤色及び緑色発光層を形成した後に、基板全面にわたり、共通層として、青色発光物質を塗布して青色発光層300を形成する。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記青色発光層に使われるホストは、下記の化学式1で示されうる:
【0038】
【化2】

【0039】
ただし、式中、Rは、水素または炭素数1ないし20個のフェニル誘導体、ビフェニル誘導体、ナフチル誘導体、アリール誘導体から選択される置換体であり、Xは、ナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、フェニルナフタレン誘導体、フェニルアントラセン誘導体から選択される単位体である。
【0040】
前記青色共通発光層のホスト物質としては、アントラセンジナフタレン、アントラセンジビフェニル、アントラセンナフタレンビフェニル、及びアントラセンジフェニルのうちから選択された一つ以上であることが望ましい。
【0041】
前記青色発光層のホスト物質の含有量は、青色発光層の総質量100質量部を基準として、80ないし99質量部の範囲にあることが望ましい。青色発光層ホスト物質の含有量が99質量部を超える場合には、エネルギー伝達がなされず、発光効率が低下して望ましくなく、一方、80質量部未満である場合には、消光現象により発光効率が低下して望ましくない。
【0042】
前記青色発光層に発光物質として使われる蛍光ドーパントは、低分子としては、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、スピロ−DPVBi、スピロ−6P、ジスチルベンゼン(DSB)、及びジスチリルアリーレン(DSA)よりなる群から選択される1種の物質であるか、またはDPVBi、スピロ−DPVBi、スピロ−6P、DSB、DSA系、及びDSA系三価アミンよりなる群から選択されるホスト/ドーパントの2種以上からなる低分子であり、高分子としては、PFO(perfluorooctanoate)系高分子またはPPV(poly(p−phenylenevinylene))系高分子のうちいずれか1つであることが望ましい。
【0043】
また、前記青色共通発光層に使われる燐光ドーパントは、フルオロフェニルピリジンイリジウムピコリネート、ジフルオロフェニルピリジンイリジウムピコリネート、またはジフルオロシアノフェニルピリジンイリジウムピコリネートなどである。
【0044】
前記青色共通発光層の厚さは、100ないし300Åの範囲にあることが望ましい。前記青色発光層の厚さが100Å未満の場合には、安定性が低下して望ましくなく、300Åを超える場合には、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0045】
図3は、従来技術により、発光層において燐光発光物質だけを使用した場合のエネルギーバンドダイヤグラムを表す図面である。図4は、本発明により、緑色発光物質として燐光発光物質を使用し、青色発光物質を共通層として使用した場合のエネルギーバンドダイヤグラムを表す図面である。
【0046】
燐光発光素子の場合には、発光層200の最高被占軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)値(5.80eV)が電子輸送層22のHOMO値(5.78eV)より大きいため、正孔が電子輸送層22に伝達される場合が発生する。従って、発光層で電子と正孔とが結合し、励起子を発生させずに、正孔が電子輸送層に伝えられることにより、色純度が悪くなるという現象が発生する。
【0047】
従って、発光層として蛍光発光物質を使用する蛍光発光素子の場合には、発光層を形成した後すぐに電子輸送層22を導入できるが、燐光発光素子の場合、発光層200のHOMOより大きいHOMO値を有する正孔抑制層が必要になる。これを改善するために、従来技術では、正孔抑制層20を発光層と電子輸送層22との間に導入し、HOMO値が5.92eVである正孔抑制層20は、正孔が電子輸送層22に伝達されることを抑制して色純度を高めようとした。
【0048】
しかし、本発明によれば、新しく正孔抑制層20を導入せず、正孔が電子輸送層に移動することを防止するために、赤色発光層100及び緑色発光層200の上部に青色発光層300を共通層として使用する。それ以外に、正孔注入層16、正孔輸送層18は同一に使用する。
【0049】
図4を参照すれば、緑色発光層200と電子輸送層22との間に青色発光層300が共通層として導入され、青色発光層300のHOMO値が5.85eVであり、緑色発光層200のHOMO値が5.80eVであるものより高いため、正孔の移動を抑制できるので、図3に示された正孔抑制層20を導入したものとほぼ同じ効果を得ることができるということが分かる。前記は、緑色発光層200を例に説明したが、赤色発光層100の場合にも同じ効果が示される。また、電子輸送物質と正孔輸送物質との混合層を使用することによって、発光領域が正孔輸送層領域に移動するようになり、青色共通層での発光が抑制される。
【0050】
以下、本発明の有機EL素子の製造方法について述べる。
【0051】
図2は、本発明の一実施例による有機EL素子の構造を表す断面図である。図2を参照すれば、まず下部基板10の上部に第1電極12のアノード用物質をコーティングしてアノードを形成する。
【0052】
前記基板10は、一般的な有機EL素子で使われる基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取扱い容易性及び防水性にすぐれるガラス、有機基板、または透明プラスチック基板が望ましい。
【0053】
第1電極のアノード12用の物質は、前面発光構造の場合には、反射膜の金属膜を使用し、背面発光構造の場合には、透明であって伝導性にすぐれる酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。その後、画素領域を定義する絶縁膜14を形成する。絶縁膜を形成した後、正孔注入層16及び/または正孔輸送層18を基板全面にわたって有機膜で積層する。
【0054】
前記アノード12の上部に、正孔注入層16の物質を真空熱蒸着またはスピンコーティングして正孔注入層を選択的に形成する。前記正孔注入層16用の物質は、特に制限されず、銅フタロシアニン(CuPc)またはスターバスト型アミン類であるTCTA(下記の化学式3参照)、m−MTDATA(下記の化学式4参照)、IDE 406(出光社製)などを使用できる。
【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
ここで、正孔注入層16の厚さは、50ないし1500Åの範囲にあることが望ましい。もし正孔注入層の厚さが50Å未満である場合には、正孔注入特性が低下し、1500Åを超える場合には、駆動電圧上昇のために望ましくない。
【0058】
前記過程によって形成された正孔注入層16の上部に、正孔輸送層18用の物質を真空熱蒸着またはスピンコーティングし、正孔輸送層を選択的に形成する。前記正孔輸送層16用の物質は、特に制限されず、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD(下記の化学式5参照))、またはN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(下記の化学式6参照)、IDE 320(出光社製)などが使われる。
【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
ここで、正孔輸送層18の厚さは、50ないし1500Åの範囲にあることが望ましい。もし正孔輸送層18の厚さが50Å未満である場合には、正孔伝達特性が低下し、1500Åを超える場合には、駆動電圧上昇のために望ましくない。
【0062】
次に、正孔注入層16及び/または正孔輸送層18を形成した後、画素領域のうち赤色領域100、緑色領域200領域には赤色発光物質と緑色発光物質とをパターン化して画素領域の発光層を形成する。
【0063】
前記発光材料は、2種類以上の混合ホスト物質を使用できる。前述のように、燐光ホストとして正孔輸送物質及び電子輸送物質を使用し、蛍光または燐光ドーパントを使用して発光層を形成する。前記発光層の形成方法は、特に制限されないが、真空蒸着、インクジェットプリンティング、レーザ転写法、フォトリソグラフィなどの方法を利用できる。
【0064】
発光層の厚さは、100ないし800Åの範囲にあることが望ましく、さらに望ましくは300ないし400Åの範囲にある。もし発光層の厚さが100Å未満ならば、効率及び寿命が低下し、800Åを超えれば、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0065】
赤色及び緑色発光層を形成した後、基板全面にわたって、共通層として、青色発光物質を前記発光層の上部に塗布し、青色発光層300を形成する。このように、青色発光物質が発光層の上部に塗布されるので、青色発光領域を別途に微細パターン化する必要がないので、パターン化工程が減り、また青色発光物質が基板全面に塗布されることにより、発光物質の劣化が少なくなるので、安定性が既存の有機EL素子に比べて優れている。
【0066】
塗布される青色発光層300の厚さは、赤色領域、緑色領域、青色領域の色座標効率によって最適化が必要であるが、100ないし300Åの範囲にあることが望ましい。100Å未満である場合には、青色発光層効果が得られず、300Åを超える場合には、赤色及び緑色画素の駆動電圧上昇と色座標に変化が生じるので望ましくない。
【0067】
前記青色発光層300上に、真空蒸着方法、またはスピンコーティング方法でもって電子輸送層を形成する。電子輸送層20の物質は、特に制限されず、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を利用できる。前記電子輸送層20の厚さは、50ないし600Åであることが望ましい。もし電子輸送層20の厚さが50Å未満である場合には、寿命特性が低下し、600Åを超える場合には、駆動電圧上昇のために望ましくない。
【0068】
また、前記電子輸送層20上に電子注入層が選択的に積層されうる。前記電子注入層22の物質は、特に制限されず、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、またはLiq(下記の化学式7参照)のような物質を利用できる。前記電子注入層22の厚さは、1ないし100Åであることが望ましい。もし電子注入層の厚さが1Å未満である場合には、効果的な電子注入層として役割を果たせずに駆動電圧が高く、100Åを超える場合には、絶縁層として作用して駆動電圧が高くて望ましくない。
【0069】
【化7】

【0070】
次に、前記電子注入層22の上部に第2電極であるカソード用金属を真空熱蒸着し、第2電極のカソード24を基板全面にわたって塗布して封止すると、有機EL素子が完成する。前記カソード金属としては、Li、Mg、Al、Al−Li、Ca、Mg−In、Mg−Agなどが利用される。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の望ましい実施例を提示する。ただし、実施例は、本発明をさら良好に理解するために提示されるのみであり、本発明が実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
パターニングされているテストセルに、正孔注入層(IDE 406,出光社製)30nmと正孔輸送層(IDE320,出光社製)とを30nm以下に積層し、まず燐光発光層のホストとして、CBP(UDC社製造)90質量部とBAlq(Bis(2−methyl−8−quinolinolato−N1,O8)−(1,1’−Biphenyl−4−olato)aluminum)10質量部とを、ドーパントとしてIr(piq)2(acac)を10質量%のドーピング濃度でドーピングした物質を、35nm厚さに積層した後にパターニングした。その上部に、青色蛍光発光物質としてIDE 105(出光社製)をドーピングしたIDE 140(出光社製)を10nmの厚さにテストセルの全面にわたって積層した。前記燐光発光層は、レーザ熱転写法により積層してパターニングした。その後、20nm厚さにAlq3(新日鉄化学社製)を電子輸送層として積層し、カソードを蒸着した後にガラスで封止してテストセルを完成した。
【0073】
(実施例2)
発光層の形成時にCBPの含有量が75質量部であり、BAlqの含有量が25質量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、有機EL素子を製造した。
【0074】
(実施例3)
発光層の形成時にCBPの含有量が50質量部であり、BAlqの含有量が50質量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機EL素子を製造した。
【0075】
(実施例4)
発光層の形成時にCBPの含有量が25質量部であり、BAlqの含有量が75質量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機EL素子を製造した。
【0076】
(実施例5)
発光層の形成時にCBPの含有量が10質量部であり、BAlqの含有量が90質量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機EL素子を製造した。
【0077】
(比較例1)
パターニングされているテストセルに、正孔注入層(IDE 406,出光社製)30nmと正孔輸送層(IDE 320,出光社製)とを30nmに積層し、発光層のホストとしてCBP(UDC社製)100質量部を、ドーパントとしてIr(piq)2(acac)を10質量%のドーピング濃度にドーピングした物質を35nm厚さに積層した後にパターニングした。前記発光層は、レーザ熱転写法により積層してパターニングした。その後、正孔抑制層としてBalq(UDC社製)を共通層で基板全面にわたって5nm厚さに形成し、その上に20nm厚さにAlq3(新日鉄化学社製)を電子輸送層として積層してカソードを蒸着した後にガラスで封止してテストセルを完成した。
【0078】
(比較例2)
発光層のホスト物質としてBAlq 100質量部だけを使用したことを除いては、比較例1と同じ方法で実施した。
【0079】
(比較例3)
パターニングされているテストセルに正孔注入層(IDE 406,出光社製)30nmと正孔輸送層(IDE 320,出光社製)とを30nmに積層し、まず赤色及び緑色発光層のホスト物質としてCBP(UDC社製)100質量部を、ドーパントとしてIr(ppy)3を10質量%のドーピング濃度にドーピングした物質を35nm厚さに積層した後にパターニングし、その上部に青色蛍光発光物質としてIDE 105(出光社製)をドーピングしたIDE 140(出光社製)を10nmの厚さにテストセル全面にわたって積層した。前記燐光発光層は、レーザ熱転写法により積層してパターニングした。その後、20nm厚さにAlq3(新日鉄化学社製)を電子輸送層として積層し、カソードを蒸着した後にガラスで封止してテストセルを完成した。
【0080】
(比較例4)
赤色及び緑色発光層のホスト物質としてBAlqだけを使用したことを除いては、実施例3と同じ方法で実施した。
【0081】
実施例1ないし実施例5及び比較例1ないし比較例5によって製造された有機EL素子において、発光効率、色座標及び寿命特性を調べた。発光効率は、スペクトルメータを利用して測定し、寿命は、フォトダイオードを利用して評価し、その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から次のことがわかる。
【0084】
比較例1ないし比較例4の有機EL素子の発光効率は、それぞれ約3.1cd/Aないし4.8cd/Aであり、実施例1ないし実施例5の有機EL素子は、発光効率は5.1cd/Aないし5.9cd/Aであり、比較例の場合に比べて効率が30%ほど改善されることを確認することができた。
【0085】
実施例1ないし実施例5は、本発明による発光の色純度を表している。比較例3の場合には、色純度が若干低いが、燐光発光物質と正孔抑制層とを使用して発光の色純度を表す比較例1、比較例2と、単一ホスト物質と共に共通層を使用した比較例4と比較すると、実施例は、色純度の差がほとんど無いことが分かる。
【0086】
また、寿命特性は、最初の発光輝度が50%ラインまで減少する時間で表すことができる。実施例1ないし実施例5の有機EL素子は、1,000cd/mで400ないし600時間であり、比較例1ないし比較例4の有機EL素子は、それぞれ1,000cd/mで80時間ないし150時間と示された。実施例は、比較例の場合に比べて、寿命特性が200%ほど改善されることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の有機EL素子は、例えば、表示装置分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 基板、
12 アノード、
14 絶縁層、
16 正孔注入層、
18 正孔輸送層、
20 電子輸送層、
22 電子注入層、
24 カソード、
100 赤色発光層、
200 緑色発光層、
300 青色発光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2電極間の発光層に一つ以上の燐光ドーパントを含む有機電界発光素子において、
前記発光層は、ホスト物質として正孔輸送物質及び電子輸送物質の混合物を含み、かつ、前記発光層の上部に青色発光層が共通に積層されてなることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記発光層は、赤色発光層または緑色発光層であり、前記正孔輸送物質は、カルバゾール系化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記カルバゾール系化合物は、1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル、ポリビニルカルバゾール、m−ビスカルバゾリルフェニル、4,4’−ビスカルバゾリル−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1,3,5−トリ(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン及びビス(4−カルバゾリルフェニル)シランよりなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記発光層は、赤色発光層または緑色発光層であり、前記電子輸送物質は、有機金属錯体、オキサジアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、及びスピロフルオレン系化合物よりなる群から選択された一つ以上の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記有機金属錯体は、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシ金属、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシ金属、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシ金属、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシ金属)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)金属、及びビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)金属よりなる群から選択された一つ以上であり、前記金属は、Al、Zn、Be、またはGaであることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記有機金属錯体は、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)亜鉛、またはビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記オキサジアゾール系化合物は、(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールであり、前記フェナントロリン系化合物は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリンであることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記トリアジン系化合物は、2,4,6−トリス(ジアリールアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリカルバゾロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、または2,4,6−トリスビフェニル−1,3,5−トリアジンであり、前記トリアゾール系化合物は、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールであることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記スピロフルオレン系化合物は、フェニルスピロフルオレン、ビフェニルスピロフルオレン及びメチルスピロフルオレンよりなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記発光層で燐光ドーパントは、ビスチエニルピリジンアセチルアセトネートイリジウム、ビス(ベンゾチエニルピリジン)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネート、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムよりなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記正孔輸送物質及び電子輸送物質の混合比が、1:9ないし9:1であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記赤色及び緑色燐光発光層の厚さは、100ないし800Åの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記赤色及び緑色燐光発光物質は、真空蒸着、湿式コーティング、インクジェット及びレーザ熱転写法よりなる群から選択される1種の方法で形成されるものであることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記青色発光層に使われるホストは、下記の化学式1で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子:
【化1】

ただし、式中、Rは、水素、炭素数1ないし20個のフェニル誘導体、ビフェニル誘導体、ナフチル誘導体、及びアリール誘導体から選択される少なくとも一つであり、Xは、ナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、フェニルナフタレン誘導体、及びフェニルアントラセン誘導体から選択される少なくとも一つである。
【請求項15】
前記青色発光層のホスト物質の含有量は、青色発光層の総質量100質量部を基準として、80ないし99質量部の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項16】
前記青色発光層に発光物質として使われる蛍光ドーパントは、低分子としては、DPVBi、スピロ−DPVBi、スピロ−6P、ジスチルベンゼン(DSB)、及びジスチリルアリーレン(DSA)よりなる群から選択される1種の物質であるか、またはDPVBi、スピロ−DPVBi、スピロ−6P、ジスチルベンゼン(DSB)、ジスチリルアリーレン(DSA)系、及びジスチリルアリーレン系三価アミンよりなる群から選択されるホスト/ドーパントの2種以上からなる低分子、または高分子としては、PFO系高分子またはPPV系高分子のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項17】
前記青色発光層に使われる燐光ドーパントは、フルオロフェニルピリジンイリジウムピコリネート、ジフルオロフェニルピリジンイリジウムピコリネート、及びジフルオロシアノフェニルピリジンイリジウムピコリネートよりなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項18】
前記青色発光層の厚さは、100ないし300Åの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項19】
第1電極及び第2電極の間の発行層に一つ以上の燐光ドーパントを含む有機電界発光素子において、
前記発光層はホストとして正孔輸送物質及び電子輸送物質が混合されており、赤色及び緑色画素上にそれぞれ赤色及び緑色発光層が積層され、前記赤色及び緑色発光層の上部に青色共通層が積層されており、また、青色画素上に青色共通層だけが積層されてなることを特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−160003(P2011−160003A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107737(P2011−107737)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2005−169945(P2005−169945)の分割
【原出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】