説明

有機顔料分散液の製造方法、有機顔料分散液及び有機顔料組成物

【課題】色相が良好な、α結晶度の高い結晶状態の有機顔料分散液の製造方法と、この方法により得られる有機顔料分散液、これを含有する有機顔料組成物を提供する。
【解決手段】有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液と前記有機顔料の貧溶媒液とを混合し、有機顔料ナノ粒子分散液を調製する方法であって、有機溶媒を60〜99.9質量%、水性媒体を0.1〜40質量%含有する貧溶媒液を前記の有機顔料溶液と混合して結晶性有機顔料のナノ粒子を生成、分散する有機顔料分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機顔料分散液の製造方法、この製造方法で製造された有機顔料分散液及び有機顔料組成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー撮像素子、カラー液晶表示装置等の画像関連精密機器の高品質化および用途の拡大が急速に進でいる。それを反映して、カラーフィルタについても表示性能の高品位化が強く求められるようになってきた。カラーフィルタの色材についてみると、染料に代わって有機顔料が用いられるようになってきており、最近ではナノメートルサイズレベルで、しかも単分散で安定な顔料微粒子が求められている。そして、インクジェット技術を利用した新規のカラーフィルタの製造方法が検討されている。これにより性能及び設計自由度の著しい向上、コストの大幅な低減が期待される。しかしこれらの点を十分に満足できるインクジェット用の顔料微粒子の分散物はまだない。
【0003】
ここで有機顔料粒子の製造方法としては、ビーズミル法やソルトミリング法などのブレークダウン法が一般的である。上記ミリング法では、有機顔料を十分に微細化し組成物中で分散させるために多大な時間とエネルギーとを要する。また用いることができる顔料種が限られる。そして顔料の微細化にともないその分散組成物が高粘度を示すことがあり、場合によっては貯蔵中にゲル化して使用できなくなることもある。
【0004】
特許文献1には、顔料をジメチルスルホキシド中に溶解させ再沈法により顔料懸濁物を得る工程が記載されているが、粒子形成後の粒子はアモルファスであり、結晶変換に不利である。
特許文献2では、有機顔料を有機酸に溶解し貧溶媒と混合し、ナノメートルサイズの微粒子を析出させる方法が提案されている。この方法では、良溶媒として有機酸、貧溶媒として有機溶媒を使用する。この方法によりナノメートルサイズの微粒子を析出させ、有機溶媒を除去して有機顔料粉末を得ることができるが、形成される粒子はアモルファスであり、結晶化粒子を形成する手段については記載がない。
特許文献3に記載の技術では、良溶媒に有機溶媒(+酸orアルカリ)、貧溶媒に水+ポリマーを使用する。溶剤(PGMEA)抽出法で単離する。単分散で分散性良好・高コントラストな分散液が得られるが、やはり粒子形成後の粒子はアモルファスであり、結晶変換工程を有さないため、結晶度、特にα結晶度が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3853860号公報
【特許文献2】特開2007−321106号公報
【特許文献3】特開2007−262378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、色相が良好な、結晶度、特にα結晶度の高い結晶状態の有機顔料の分散液の製造方法と、この方法により得られる有機顔料分散液、これを含有する有機顔料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記の手段によって達成された。
(1)有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液と前記有機顔料の貧溶媒液とを混合し、有機顔料ナノ粒子分散液を調製する方法であって、
有機溶媒を60〜99.9質量%、水性媒体を0.1〜40質量%含有する貧溶媒液を前記の有機顔料溶液と混合して結晶性有機顔料のナノ粒子を生成、分散することを特徴とする有機顔料分散液の製造方法。
(2)さらに水を混和し相分離させた後、水を除去する工程を有する(1)記載の有機顔料分散液の製造方法。
(3)水を除去する工程の後に乾燥工程を有しない(2)に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(4)前記貧溶媒液の有機溶媒が、エーテル化合物溶媒及びエステル化合物溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(5)前記貧溶媒液の有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(6)前記有機顔料溶液の良溶媒が塩基成分を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(7)前記貧溶媒液が酸成分を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(8)前記貧溶媒液が、アルコール及びケトンから選ばれる少なくとも1種の補助溶剤を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(9)前記有機顔料が、ジケトピロロピロール又はキナクリドン顔料であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(10)前記有機顔料溶液が顔料誘導体、及び/または高分子分散剤を含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(11)前記有機顔料溶液が少なくとも非プロトン性極性溶剤とアルカリを含有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(12)結晶性有機顔料のナノ粒子の分散液を濃縮して得たナノ粒子ペーストを再分散する工程を有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法により得られた有機顔料分散液。
(14)(13)に記載の有機顔料分散液を用いた有機顔料組成物。
(15)カラーフィルター用である(14)記載の有機顔料組成物。
【発明の効果】
【0008】
また、本発明の製造方法によれば、結晶度の高い、色相の良好な有機顔料ナノ粒子分散液を効率的に、必要により工業的規模で大量に生産することができ、コストパフォーマンスにも優れる。とりわけ、本発明方法によればα結晶度の高い、色相の良好な有機顔料ナノ粒子の分散液を得ることができる。
上記方法により製造される有機顔料分散液はコントラストと安定性に優れ、カラーフィルタなどに好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施態様について説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
本発明の有機顔料分散液の製造方法は、有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液と前記有機顔料の貧溶媒液とを混合し、有機顔料ナノ粒子分散液を調製するに当り、前記貧溶媒液を有機溶媒を主成分とし該貧溶媒液を前記の有機顔料溶液と混合して結晶性有機顔料のナノ粒子を分散、生成することを特徴とする。
【0010】
(有機顔料)
本発明に用いられる有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン化合物顔料、ペリノン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、キナクリドンキノン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、アントアントロン化合物顔料、ベンズイミダゾロン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、ジスアゾ化合物顔料、アゾ化合物顔料、インダントロン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、トリアリールカルボニウム化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、チオインジゴ化合物顔料、イソインドリン化合物顔料、イソインドリノン化合物顔料、ピラントロン化合物顔料、イソビオラントロン化合物顔料、それらの混合物などが挙げられる。
【0011】
なかでも、ペリレン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料がより好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料、またはキナクリドン化合物顔料が特に好ましい。
【0012】
本発明の分散液においては、2種類以上の有機顔料を組み合わせて用いることもでき、また通常の染料と組み合わせて用いることもできる。本発明の分散液物において有機顔料の含有率は特に限定されないが、1〜60質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましい。
【0013】
(良溶媒)
良溶媒は、前記の有機顔料を溶解することが可能で、貧溶媒と相溶する(均一に混ざる)ものであれば特に限定されない良溶媒に対する水不溶性色材の溶解度は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この溶解度に特に上限はないが、通常用いられる水不溶性色材を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0014】
良溶媒と貧溶媒との相溶性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。なお、水不溶性化合物の溶液と適宜に加える分散剤の溶液とを別々に準備するときには、両者の溶解に用いる溶液を上記良溶媒の範囲に属する水から選択することが好ましく、両溶媒を同一種の溶媒とすることが好ましい。
【0015】
良溶媒としては、特に限定されないが、有機酸(例えば、ギ酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸等)、有機塩基(例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、ナトリウムメトキシド等)、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶
媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
【0016】
これらの中でも、有機酸、有機塩基、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、有機酸、有機塩基、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。
【0017】
具体的には、例えば特開2009−79158公報の段落番号[0076]〜[0087]記載の化合物などが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0018】
有機顔料溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0019】
有機顔料を、良溶媒中に均一に溶解するとき、一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられることが好ましい。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料は、アルカリ性で、フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解することができる。
【0020】
本発明においては良溶媒が塩基成分を含有することが好ましい。
アルカリ性で溶解するときに用いられる塩基として、前記有機塩基以外に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基を用いることも可能である。使用する塩基の量は特に限定されないが、無機塩基の場合、水不溶性化合物に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、水不溶性化合物に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であることがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0021】
酸性で溶解するときに用いられる酸として、前記有機酸以外に、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸を用いることも可能である。使用する酸の量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多く、水不溶性化合物に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
【0022】
無機塩基または無機酸を有機溶媒と混合して、有機顔料の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、水不溶性化合物溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0023】
有機顔料溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0024】
有機顔料溶液は、良溶媒に有機顔料と必要により高分子化合物とを溶解したものであれば特に限定されず、他の成分を含んでいても構わない。
他の成分としては、特に限定されないが、酸性基を有する有機化合物、塩基性を有する有機化合物などが好適に挙げられる。これらの成分は、前記有機顔料溶液と前記貧溶媒とを混合することにより顔料を析出させた際に、析出させた顔料に素早く吸着し、顔料表面を酸性あるいは塩基性に処理する作用を有するものである。上記他の成分の前記貧溶媒への溶解性は特に制限されないが、前記貧溶媒が上記他の成分にとっても貧溶媒となるような化合物であることが好ましい。
【0025】
本発明に用いうる酸性基を有する有機化合物の酸性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、ホスホン酸基、水酸基、スルフィド基、などがあげられるがこれらに限定されるものではない。また、分子中に1種単独でも、2種以上の同一、または異なる官能基を含んでいてもよい。またこれら酸性基を有する有機化合物は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するものが好ましい。
【0026】
これらの化合物としては具体的には、例えば特開2009−79158公報の段落番号[0063]〜[0067]に記載の化合物が挙げられる。
【0027】
本発明において、酸性基を有する有機化合物の添加量として、水不溶性化合物に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0028】
塩基性基を有する有機化合物としては、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルアミン、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体などが挙げられ、好ましくはアルキルアミン、アリールアミン、イミダゾール誘導体が挙げられる。
【0029】
前記塩基性基を有する有機化合物の炭素数としては、6以上が好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。
前記塩基性基を有する有機化合物において、アルキルアミン、アリールアミン、及びイミダゾール誘導体として具体的には、例えば特開2009−79158公報の段落番号[0054]〜[0056]に記載の化合物などが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0030】
前記塩基性基を有する有機化合物としては、水不溶性化合物に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0031】
また塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物を添加することも好ましい。
このような有機化合物としては、具体的には、例えば特開2009−79158公報の段落番号[0060]に記載の化合物などが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0032】
前記塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物の添加量としては、水不溶性化合物に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0033】
本発明においては良溶媒が、少なくとも非プロトン性の極性溶剤とアルカリとを含有することが好ましい。
非プロトン性極性溶剤としては本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能であるが、水に対する溶解度が5%以上であるものが好ましい。具体的にはジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶剤として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン又はアセトニトリルが好ましい。また、これらは1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
非プロトン性極性溶剤の含有量は特に限定されるものではないが、有機顔料のより良好な溶解状態を達成することや、粒子形成時における貧溶媒量との観点から、顔料溶液調製後に溶解している有機顔料1質量部に対して2〜500質量部、さらには5〜100質量部の範囲であるのが好ましい。
【0034】
本発明においては良溶媒が顔料誘導体を含有することが好ましい。
【0035】
本発明において顔料誘導体(以下、「顔料誘導体型分散剤」ともいう)とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。一般に、シナジスト型分散剤ともいわれている。
具体的には例えば、特開2007−9096号公報や特開平7−331182号公報等に記載の顔料誘導体を挙げることができる。ここで言う顔料誘導体とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型の化合物、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型の化合物を指す。市販品としては、例えば、EFKA社製「EFKA6745(フタロシアニン誘導体))」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)」等を挙げることができる(いずれも商品名)。顔料誘導体を用いる場合、その使用量としては、顔料に対し0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0036】
また、本発明において良溶媒は高分子分散剤を含有することが好ましい。
高分子分散剤としては例えば、直鎖状高分子、ブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子等を挙げることができる。分散剤は、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
高分子化合物の例として、ブロック型高分子としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−2000、2001」、EFKA社製「EFKA4330、4340」等を挙げることができる。グラフト型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース24000、28000、32000、38500、39000、55000」、BYK Chemie社製「Disperbyk−161、171、174」等が挙げられる。末端変性型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース3000、17000、27000」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
高分子分散剤の含有量は顔料に対し0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0037】
(貧溶媒液)
本発明において用いられる貧溶媒は有機溶媒を主成分とし、水性媒体を副成分として含有する。この場合、有機溶媒と水性媒体の割合は、好ましくは有機溶媒が60〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.5質量%、特に好ましくは90〜99質量%、水性媒体が好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%とする。この貧溶媒液において水性媒体が多すぎると、結晶性の有機顔料粒子における結晶型の変換が進行しない場合があり、少なすぎるとアモルファスのものしか得られない。
本発明において、貧溶媒液について、有機溶媒を主成分とする、とは、貧溶媒液が結晶性の有機顔料ナノ粒子を形成、析出するのに十分な量の有機溶媒を含有することをいう。これは一般的には特定の有機溶媒を選びその割合を塩酸等の他の成分より多くすることにより実現できる。
貧溶媒液は特に限定されないが、貧溶媒液に対する有機顔料の溶解度は、0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料の貧溶媒液への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.0001質量%以上が実際的である。有機顔料の貧溶媒液への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.001質量%以上が実際的である。
【0038】
貧溶媒液の有機溶媒の主溶剤としては、特に限定されないが、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
これらの中でも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが主成分であるものが特に好ましい。ここで用いる貧溶媒は、次工程の分散液の調製における分散媒にも用いるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは最終分散液の汎用溶媒であり、両工程でこれを使用することでコストパフォーマンスが向上する。
【0039】
水性媒体とは、水単独または水と水に可溶な無機酸(酸成分)や無機塩の溶解液をいう、例えば、水、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
無機酸や無機塩を含む場合、それらの水性媒体中の濃度は0.05〜10モル濃度が好ましく、0.1〜5モル濃度がより好ましい。
【0040】
良溶媒の具体例として列挙したものと貧溶媒液の主成分として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒液の主成分としたものと同じものを組み合わせることはなく、前記の結晶性の有機顔料粒子を生成することに加えて、採用する各有機顔料との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒液に対する溶解度より十分高ければよく、有機顔料に関しては、例えば、その溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒液に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0041】
貧溶媒液は、補助溶剤として、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)イオン性液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合することが好ましい。
この補助溶剤を用いるときは、前記の主溶剤に対し、20質量%以下で用いるのが好ましく、0.01〜10質量%で用いるのがより好ましい。
【0042】
貧溶媒液の状態は特に限定されず、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。水不溶性化合物溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0043】
(有機顔料溶液と貧溶媒液の混合)
有機顔料溶液と貧溶媒液とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液を貧溶媒液に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0044】
有機顔料溶液と貧溶媒液との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる顔料ナノ粒子の粒子径を制御することができる。レイノルズ数については、特開2008−138194公報に説明があり、関連する値の好ましい範囲についても該公報記載と同様である。
【0045】
有機顔料微粒子を析出させ分散液を調製するに当り、有機顔料溶液及び貧溶媒液の少なくとも一方に、少なくとも貧溶媒液が良溶媒(貧溶媒液に対する溶解度が4.0質量%以上)となるような化合物(以下、粒径調整剤と称することがある)を含有させてもよい。
【0046】
高分子粒径調整剤、アニオン粒径調整剤(アニオン性界面活性剤)、カチオン性の粒径調整剤(カチオン性界面活性剤)、両イオン性の粒径調整剤、およびノニオン性の粒径調整剤(ノニオン性界面活性剤)としては、特開2008−138194公報に開示されているものと、好ましい範囲についても同様である。
【0047】
粒径調整剤の含有量は、水不溶性化合物微粒子の粒径制御をより一層向上させるために、顔料に対して0.1〜100質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。また粒径調整剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(分散液の調製工程)
上記のようにして、結晶性の有機顔料微粒子の分散液を得る。
【0049】
有機顔料微粒子析出後の混合液からの溶媒分の除去工程としては、特に限定されないが、例えば、フィルタなどによりろ過する方法、遠心分離によって有機顔料微粒子を沈降させて濃縮する方法などが挙げられる。
フィルタろ過の装置は、例えば、減圧あるいは加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどを挙げることができる。
遠心分離機は水不溶性化合物微粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
また、溶媒分の除去工程として、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法、それらを組合せた方法などを用いることもできる。
【0050】
有機顔料の微粒子は例えばビヒクル中で分散させた状態で用いることができる。前記ビヒクルとは、塗料でいえば、液体状態にあるときに有機顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記水不溶性化合物と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。なお本発明においては、微粒子形成時に用いる高分子化合物および/または再分散化に用いる有機顔料分散剤を総称してバインダーと称する。
【0051】
再分散化後の微粒子の分散組成物の微粒子濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは分散組成物全量に対して微粒子が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記のようなビヒクル中に分散させる場合に、バインダーおよび溶解希釈成分の量は水不溶性化合物の種類などにより適宜定められるが、分散組成物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。溶解希釈成分は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0052】
本発明の有機顔料の微粒子を貧溶媒液に用いたのと同一の有機溶媒に再分散させることができ、別の分散剤等を添加しなくても、貧溶媒と同一の有機溶媒中で有機顔料微粒子の凝集状態が自発的に解かれ媒体中に分散する性質を有することが好ましく、この性質があることを「自己分散しうる」ないし「自己分散性を有する」という。ただし、本発明において再分散性を一層向上させるために、微粒子の再分散時に顔料分散剤等を添加してもよい。
【0053】
このような凝集状態にある微粒子を再分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて顔料ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0054】
本発明においては、上記分散液にさらに水を混和し、相分離させた後、水を除去する工程を行うことが好ましい。
【0055】
上記の水相を除去する工程の後には、乾燥工程を有しないことが好ましい。
【0056】
本発明で得られる分散液中の微粒子は、水に不溶な化合物で、分散媒体中にて安定に分散できるものが望ましい。微粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。本発明の分散液中の微粒子(一次粒子)の平均粒径は100nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、50nm以下である50nm以下であることが特に好ましい。本発明の分散液中の微粒子は、その大きさの単結晶または多結晶、会合体である。
【0057】
粒子の均一性(単分散性)を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。本発明の有機ナノ粒子(一次粒子)の単分散性(本発明において、単分散性とは粒径が揃っている度合いをいう。)、つまりMv/Mnは1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0058】
有機粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズ(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0059】
本発明の分散液中の微粒子は分散媒中での微粒子の結晶化度が65%以上であるが、この結晶化度は80〜100%であることが好ましく、90〜100%であることがより好ましい。本発明の分散液中の微粒子の結晶子径は特に限定されないが、20〜500オングストロームであることが好ましく、20〜200オングストロームであることがより好ましい。本発明において分散液中の微粒子の結晶化度及び結晶子径は特に断らない限り、後述する実施例で作用した測定方法により測定するものとする。
【0060】
本発明の有機顔料組成物は、上記の製造方法で得られた有機顔料分散液を含有することを特徴とする。
有機顔料組成物には、顔料の分散性をより向上させる目的で、従来から公知の顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤などを本発明の効果を損なわない限りにおいて加えることもできる。
顔料分散剤としては、高分子分散剤(例えば、直鎖状高分子、ブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等)、顔料誘導体等を挙げることができる。分散剤は、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。高分子分散剤及び顔料誘導体の具体例は、上記良溶媒が好ましく含有することができる成分としてあげたものと同様である。
線状高分子としては、後述するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができ、上記顔料誘導体と併用することも好ましい。
顔料分散剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
【0061】
光硬化性組成物は、前記水不溶性化合物の微粒子の分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤(以下、光重合開始剤系と称する場合もある)とを含み、好ましくは、更に、アルカリ可溶性樹脂を含む。以下、光硬化性組成物の各成分について説明する。
【0062】
有機顔料微粒子および、その分散組成物を作製する方法については既に詳細に述べた。光硬化性組成物中の微粒子の含有量は、全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
【0063】
光重合性化合物(以下、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーと称する場合がある)としては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合する多官能モノマーであることが好ましい。そのような光重合性化合物としては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。また、特開平10−62986号公報に一般式(1)および(2)に記載のように、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化した化合物も好適なものとして挙げられる。
【0064】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0065】
光重合性化合物は、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、光硬化性組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0066】
光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
【0067】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
【0068】
光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。光硬化性組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。
【0069】
アルカリ可溶性樹脂としては、光硬化性組成物ないし、カラーフィルタ用インクジェットインクの調製時に添加することもできるが、前記微粒子の分散組成物を製造する際、または微粒子形成時に添加することも好ましい。水不溶性化合物の溶液および水不溶性化合物の溶液を添加して水不溶性化合物の微粒子を生成させるための貧溶媒の両方もしくは一方にアルカリ可溶性樹脂を添加することもできる。またはアルカリ可溶性樹脂溶液を別系統で水不溶性化合物の微粒子形成時に添加することも好ましい。
【0070】
アルカリ可溶性樹脂としては、酸性基を有するバインダーが好ましく、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するアルカリ可溶性のポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩などを有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4,139,391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0071】
アルカリ可溶性樹脂は、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、水不溶性化合物の微粒子100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
【0072】
その他、架橋効率を向上させるために、アルカリ可溶性樹脂の側鎖に重合性基を有していてもよく、UV硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等も有用である。更に、アルカリ可溶性樹脂として、側鎖の一部に水溶性の原子団を有する樹脂を用いることもできる。
【0073】
光硬化性組成物においては、上記成分の他に、更に光硬化性組成物調製用の有機溶媒(第4溶媒)を用いてもよい。第4溶媒の例としては、特に限定されないが、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられるが、なかでも、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、またはこれらの混合物などがより好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセルソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、n−オクタン等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。有機溶媒の含有量は、光硬化性組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0074】
また、光硬化性組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0075】
光硬化性組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、特開2008−138194公報に開示されている熱重合防止剤が、好適なものとして挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して1質量%以下が好ましい。
【0076】
光硬化性組成物には、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、着色剤(染料、顔料)を添加することができる。着色剤のうち顔料を用いる場合には、光硬化性組成物中に均一に分散されていることが望ましい。染料ないし顔料としては、具体的には、前記顔料として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。補助的に使用する染料もしくは顔料の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0077】
光硬化性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0078】
また、光硬化性組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0079】
光硬化性組成物はその組成を適宜に調節して、インクジェットインクとすることができる。インクジェットインクとしてはカラーフィルタ用以外にも、印字用等、通常のインクジェットインクとしてもよいが、なかでもカラーフィルタ用インクジェットインクとすることが好ましい。
インクジェットインクは前記の水不溶性化合物微粒子を含むものであればよく、重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含む媒体に、前記の水不溶性化合物微粒子を含有させたものであることが好ましい。ここで重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーとしては、先に光硬化性組成物において説明したものを用いることができる。
このとき、用いられる射出時のインク特性、インク吹き付け方法、インクジェットヘッド形態や、カラーフィルタのパターン形状およびその形成方法については、特開2008−138194公報に開示されているものと、好ましい範囲についても同様である。
【0080】
光硬化性組成物を用いた塗布膜における含有成分については、既に記載したものと同様である。また、光硬化性組成物を用いた塗布膜の性状、基盤への塗布方法については、特開2008−138194公報に開示されているものと、好ましい範囲についても同様である。
【0081】
本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物を用いたカラーフィルタは、コントラストに優れることが好ましい。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0082】
カラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0083】
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0084】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0085】
カラーフィルタを備えた液晶表示装置はコントラストが高く、黒のしまり等の描写力に優れ、とくにVA方式であることが好ましい。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置等としても好適に用いることができる。また、上記カラーフィルタはCCDデバイスに用いることができ、優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。
【0087】
(実施例1)
<有機顔料ナノ粒子分散液の調製>
ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)を良溶媒とし、良溶媒1000gに顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red イルガジンレッド、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50gを分散させ、ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%メタノール溶液52.3gを滴下して顔料溶液を調製した。この顔料溶液を、ビスコメイトVM−10A−L(商品名、CBCマテリアルズ社製)を用いて粘度を測定した結果、顔料溶液の液温が24.5℃の時の粘度が14.3mPa・sであった。これとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸水溶液(和光純薬社製)19gを含有したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1000mlを用意した。
ここで、10℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した貧溶媒1000mlに、顔料溶液をNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて、流路径1.1mmの送液配管から流速400ml/minで100ml注入することにより、平均粒径25nmの有機顔料粒子を形成し、結晶性有機顔料ナノ粒子の分散液Aを調製した。
前記有機顔料ナノ粒子分散液Aを5℃に温度コントロールし2時間攪拌し平均粒径25nmの有機顔料ナノ粒子分散液A2を調製した。
【0088】
<有機顔料粉末の調製>
上記の手順で調製した有機顔料ナノ粒子分散液A2をH−112型(商品名、(株)コクサン社製)遠心濾過機およびP89C型(商品名、敷島カンバス(株)社製)濾布を用いて5000rpmで90分濃縮し、次いでイオン交換水を1100g加え混合し、同様に遠心濾過した。再度、イオン交換水を1100g加え混合し遠心濾過した。得られた有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストAを回収した。
前記有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストAをオーブンにより100℃で2時間乾燥することにより平均粒径25nmの有機顔料粉末Aを得た。
【0089】
<有機顔料分散組成物の調製>
前記有機顔料粉末Aを乳鉢で180μm以下に粉砕した後、下記組成の有機顔料分散組成物Aとし、均一に撹拌混合した。
前記有機顔料粉末A 9.7g
顔料誘導体1 2.0g
顔料誘導体2 2.3g
分散剤樹脂1 11.3g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
24.7g
【0090】
顔料誘導体1の構造を以下に示す。
【0091】
【化1】

【0092】
顔料誘導体2の構造を以下に示す。
【0093】
【化2】

【0094】
分散剤樹脂1の構造を以下にに示す。
【0095】
【化3】

【0096】
上記組成の有機顔料分散組成物AをサンドグラインダーミルBSG−01(商品名、AIMEX社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、1500rpmで1時間、次いで直径0.05mmのジルコニアビーズを用い、2500rpmで2時間分散し、有機顔料分散組成物A2を得た。
【0097】
(実施例2)
実施例1の有機顔料ナノ粒子分散液A2に対し、イオン交換水を1600g加え混合し、分液漏斗により相分離した下相の水溶液を除去した。再び、イオン交換水を1200g加え混合し、下相の水溶液を除去し、良溶媒および水溶性イオンの除去を行った。この有機顔料ナノ粒子分散液B2を、直径9cmのヌッチェろ紙(アドバンテック社製、No.2(商品名))を用いて、アスピレーターで減圧ろ過することにより、微粒子状の色素物質を含むペーストを得た。次いでペースト重量の2倍量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え混合した後、同様にヌッチェろ過により濃縮した。この手順を2回繰り返すことにより、有機顔料ナノ粒子ペーストBを得た。
有機顔料ナノ粒子ペーストBを用い、下記組成の有機顔料分散組成物Bとし、均一に撹拌混合した。
【0098】
有機顔料ナノ粒子ペーストB 10.0g
顔料誘導体1 2.0g
顔料誘導体2 2.3g
分散剤樹脂1 11.3g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
24.4g
【0099】
上記組成の有機顔料分散組成物BをサンドグラインダーミルBSG−01(商品名、AIMEX社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、1500rpmで1時間、次いで直径0.05mmのジルコニアビーズを用い、2500rpmで2時間分散し、有機顔料分散組成物B2を得た。
【0100】
(実施例3)
実施例1の有機顔料ナノ粒子分散液A2の調製方法に対し、良溶媒をN-メチルピロリドン(和光純薬社製)に変更したこと以外は実施例1と同様に平均粒径25nmの結晶性有機顔料ナノ粒子分散液C2を調整した。
前記有機顔料ナノ粒子分散液C2を用い、実施例2の有機顔料ナノ粒子ペーストBの調製方法と同様に有機顔料ナノ粒子ペーストCを調整した。
前記調製した有機顔料ナノ粒子ペーストCを用い、実施例2の有機顔料分散組成物B2の調製方法と同様に有機顔料組成物C2を得た。
【0101】
(比較例1)
実施例1の有機顔料ナノ粒子分散液Aの調製方法に対して、貧溶媒を1mol/l塩酸水溶液15mlを含有したメタノール1000mlに変更したこと以外は実施例1と同様に平均粒径25nmの有機顔料ナノ粒子分散液Dを調整した。
前記有機顔料ナノ粒子分散液Dを用い、実施例1の有機顔料粉末Aの調製方法と同様に有機顔料粉末Dを調製し、実施例1の有機顔料分散組成物A2の調製方法と同様に平均粒径25nmの有機顔料分散組成物D2を得た。
【0102】
(比較例2)
実施例1の有機顔料ナノ粒子分散液Aの調製方法に対して、貧溶媒をイオン交換水1000mlに変更したこと以外は実施例1と同様に有機顔料ナノ粒子分散液Eを調整した。
前記有機顔料ナノ粒子分散液Eを用い、実施例1の有機顔料粉末Aの調製方法と同様に有機顔料粉末Eを調製し、実施例1の有機顔料分散組成物A2の調製方法と同様に有機顔料分散組成物E2を得た。
【0103】
(比較例3)
実施例1の有機顔料ナノ粒子分散液Aの調整方法に対して、良溶媒をメタンスルホン酸に変更したところ、顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)は溶解しなかった。
【0104】
(結晶化度評価)
上記有機顔料ナノ粒子分散液A〜Eを濾過、乾燥して得られた有機顔料粉末A〜Eと、有機顔料ナノ粒子分散液A〜Eを上記方法で攪拌し調製し得られた有機顔料粉末A〜EそれぞれのX線回折測定よりα結晶化度の評価を行った。
α結晶化度は、α型結晶の特徴的なブラッグ角(2θ)である28±0.5°のピーク強度Iαとβ型結晶の特徴的なブラッグ角(2θ)である27°のピーク強度Iβから下式により算出した。
(α結晶化度)=(Iα)/(Iα+Iβ
α型結晶の特徴的なブラッグ角(2θ)である28±0.5°のピーク強度Iαとβ型結晶の特徴的なブラッグ角(2θ)である27°のピーク強度Iβは次のようにして求めた。
【0105】
X線回折測定により得られた回折パターンからバックグラウンドを次のようにして除去した。α型結晶のブラッグ角の低角度側のすその23°付近と高角度側のすその30°付近に接する直線を引き、この直線をバックグラウンドとして除去した。バックグラウンドを除去した回折パターンから、ピーク強度IαとIβを求め上記式によりα結晶化度を算出した。
【0106】
(コントラスト測定)
得られた有機顔料分散組成物試料を、それぞれガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製 FWL18EX−N(商品名))に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板 HLC2−2518(商品名))の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製 BM−5(商品名))を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/mになるように設定した。
【0107】
(経時コントラスト評価)
さらに上記顔料分散組成物を30日間、25℃で保持したのち、再度上記と同様の方法で塗布し、上記と同様の方法でコントラストを測定し、経時コントラストとした。
得られた結果を下表に示した。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
上記表1、2の結果より、有機顔料溶液と貧溶媒液を混合し有機顔料ナノ粒子を生成させる方法において、貧溶媒液の主成分として有機溶媒を用いることにより粒子生成時にα結晶化度の高い有機顔料粒子を生成できた。また、貧溶媒液の主成分とした有機溶媒を有機顔料の分散液に用いるものと同一とすることが可能となり、生産効率を高めることができることが分かる。さらに、表2より、α結晶化度の高い有機顔料ナノ粒子を用いた有機顔料分散組成物は従来の方法により得られた有機顔料分散組成物と比較し高いコントラストを得られ経時変化も小さく安定性が高いことが分かる。さらに、実施例2記載の有機顔料ペーストの調製方法から明らかなように有機顔料ペーストの乾燥工程を省略することができ、さらに有機顔料分散組成物のコントラストが従来の方法により調製された有機顔料分散組成物のものに比べ優れていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液と前記有機顔料の貧溶媒液とを混合し、有機顔料ナノ粒子分散液を調製する方法であって、
有機溶媒を60〜99.9質量%、水性媒体を0.1〜40質量%含有する貧溶媒液を前記の有機顔料溶液と混合して結晶性有機顔料のナノ粒子を生成、分散することを特徴とする有機顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
さらに水を混和し相分離させた後、水を除去する工程を有する請求項1記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
水を除去する工程の後に乾燥工程を有しない請求項2に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記貧溶媒液の有機溶媒が、エーテル化合物溶媒及びエステル化合物溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記貧溶媒液の有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
前記有機顔料溶液の良溶媒が塩基成分を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項7】
前記貧溶媒液が酸成分を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項8】
前記貧溶媒液が、アルコール及びケトンから選ばれる少なくとも1種の補助溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項9】
前記有機顔料が、ジケトピロロピロール又はキナクリドン顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項10】
前記有機顔料溶液が顔料誘導体、及び/または高分子分散剤を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項11】
前記有機顔料溶液が少なくとも非プロトン性極性溶剤とアルカリを含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項12】
結晶性有機顔料のナノ粒子の分散液を濃縮して得たナノ粒子ペーストを再分散する工程を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機顔料分散液の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法により得られた有機顔料分散液。
【請求項14】
請求項13に記載の有機顔料分散液を用いた有機顔料組成物。
【請求項15】
カラーフィルター用である請求項14記載の有機顔料組成物。

【公開番号】特開2011−12214(P2011−12214A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159235(P2009−159235)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】