説明

有機高分子材料、有機複合材料、有機圧電材料、その形成方法及び超音波探触子

【課題】有機高分子材料及び有機圧電材料の提供。
【解決手段】有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、下記一般式(1)に示される化合物からなる有機圧電材料。


(式中、Xはアミノ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基のいずれかを表し、Rは炭素原子、ヘテロ原子、またはそれら原子の酸化体、もしくは−CR1(R2)−を表し、R1及びR2は各々独立に水素原子、アルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、R1、R2が同時に水素原子でない。L1〜L4は各々独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子材料、有機複合材料、有機圧電材料、その形成方法及び超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子は非破壊検査装置の他、医療用の超音波診断装置として急速に利用が高まっている。例えば超音波内視鏡等の探触子は、超音波トランスデューサから高周波の音響振動を被検体内に放射し、反射して戻ってきた超音波を超音波トランスデューサで受信し、わずかな界面特性の違いによって異なる情報を処理することにより、生体内部の断面像を得るものである。
【0003】
近年では、超音波探触子から被検体内へ送信された超音波の周波数(基本周波数)成分ではなく、その高調波周波数成分によって被検体内の内部状態の画像を形成するハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)技術が研究、開発されている。このハーモニックイメージング技術は、(1)基本周波数成分のレベルに比較してサイドローブレベルが小さく、S/N比(signal to noise ratio)が良くなってコントラスト分解能が向上すること、(2)周波数が高くなることによってビーム幅が細くなって横方向分解能が向上すること、(3)近距離では音圧が小さくて音圧の変動が少ないために多重反射が抑制されること、および、(4)焦点以遠の減衰が基本波並みであり高周波を基本波とする場合に較べて深速度を大きく取れることなどの様々な利点を有している。
【0004】
このような超音波探触子には超音波を発生させる圧電体が使われている。従来、圧電体としては、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3などの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O3系などの焼結体を分極処理した、いわゆる無機材質の圧電セラミックスが広く利用されている。
【0005】
これに対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリ尿素などの有機系高分子物質を利用した有機圧電体(「圧電高分子材料」、「ポリマー圧電物質」ともいう。)も開発されている(例えば特許文献1参照)。この有機圧電体は、セラミックス圧電体と比較して、可撓性が大きく、薄膜化、大面積化、長尺化が容易で任意の形状、形態のものを作ることができる、誘電率εが小さく、静水圧電圧出力係数(gh定数)は極めて大となるので感度特性に優れる、さらに低密度、低弾性であるため、効率のよいエネルギー伝播が可能である。
【0006】
有機圧電体(圧電性樹脂)膜を形成する方法としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)のようなジイソシアナート化合物と、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)のようなジアミン化合物を同時に蒸発させてポリ尿素膜を形成する、いわゆる蒸着重合法が知られている(例えば特許文献2、3参照)。
【0007】
特許文献2に開示されている方法の場合、ジイソシアナート化合物と、ジアミン化合物の2種類のモノマーを同時に蒸発させてポリ尿素を形成するようにしているため、各モノマーの蒸発温度が異なることにより形成されるポリ尿素膜内のモノマーの組成比が、化学量論組成比とは異なったものになってしまうという問題があり、各モノマーを別々に設定し、温度をコントロールしながら蒸着する必要があった。またジイソシアナート化合物と、ジアミン化合物の組み合わせによっては、反応性が思わしくないときがあり、蒸着する基板の温度を適切に調整しないと重合が進行せず、所望の有機圧電体膜は得られない。更に蒸着重合では、厚い膜を形成するには時間がかかること、大きな真空設備が必要であり、基板温度調整用の装置が必要となること、多大な設備投資および製造時間が必要となることが大きな問題となる。
【0008】
上記のような問題を解決するために、特許文献4に開示されているような、蒸着重合ではなく熱重合により有機圧電体膜を得る方法が見出された。この方法では、大きな双極子を有する架橋剤を含有するポリマーを基板に塗布し、分極処理を行いながら熱重合を行うため、蒸着重合のような大きな設備投資は必要ではなく、容易に有機圧電体膜を作製することができる。
【0009】
しかしながら、上記方法では、有機圧電体膜に含まれる架橋剤中の大きな双極子をもつ構造の架橋剤のみが配向し圧電性を誘発するので、有機圧電体膜全体としての圧電性は低い。また通常の架橋剤ではなく、大きな双極子を有する架橋剤を準備する必要があり、多大な費用が必要となる。
【特許文献1】特開平6−216422号公報
【特許文献2】特開平7−258370号公報
【特許文献3】特開平5−311399号公報
【特許文献4】特開2006−49418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐熱性・溶解性に優れ、かつ低コストで容易に形成(製造)できる有機高分子材料、有機複合材料、有機圧電材料及び超音波探触子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
1.有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、下記一般式(1)に表される化合物であることを特徴とする有機高分子材料。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Xはアミノ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基のいずれかを表し、Rは炭素原子、ヘテロ原子、またはそれら原子の酸化体、もしくは−CR1(R2)−を表し、R1及びR2は各々独立に水素原子、アルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、R1、R2が同時に水素原子であることはない。L1〜L4は各々独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン原子を表す。)
2.有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、前記一般式(1)のXがともにアミノ基である化合物と、前記一般式(1)のXがともにイソシアネート基もしくは、ともにイソチオシアネート基である化合物であることを特徴とする前記1記載の有機高分子材料。
【0015】
3.有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、前記一般式(1)のXがともにイソシアネート基もしくは、ともにイソチオシアネート基である化合物と、下記一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物若しくはこれらの化合物の誘導体のいずれかであることを特徴とする前記1に記載の有機高分子材料。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R11及びR12は、各々独立に水素原子、アルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、これらの基は更に置換基を有しても良い。R21〜R26は各々独立に水素原子、アルキル基、又は電子吸引性基を表す。)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R13は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基を表し、これらの活性水素は更にアルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基で置換されてもよく、また、R13は、カルボニル基、スルホニル基、チオカルボニル基、スルホン基を表し、これらの基は水素原子、アリール基、またはヘテロアリール基を結合する。R21〜R26は上記一般式(2)のR21〜R26と同義の基を表す。)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Yは、ケト基、オキシム基、置換ビニリデン基を表し、R21〜R26は上記一般式(2)のR21〜R26と同義の基を表す。)
4.前記1、2又は3に記載の有機高分子材料が1つ以上の他の材料と混合されて形成されることを特徴とする有機複合材料。
【0022】
5.前記1、2又は3に記載の有機高分子材料を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【0023】
6.前記1、2又は3に記載の有機高分子材料を溶媒に溶解させた液を用いて有機圧電材料を形成することを特徴とする有機圧電材料の形成方法。
【0024】
7.有機高分子材料を溶媒に質量比で0.01〜80%の割合で溶解することを特徴とする前記6に記載の有機圧電材料の形成方法。
【0025】
8.前記1、2又は3に記載の有機高分子材料が、更に可塑剤を含有することを特徴とする前記5に記載の有機圧電材料。
【0026】
9.前記1、2又は3に記載の有機高分子材料の構造中に脂肪族尿素構造が含まれることを特徴とする前記5又は8に記載の有機圧電材料。
【0027】
10.前記1、2又は3に記載の有機高分子材料、又は前記4に記載の有機複合材料、或いは前記5又は8に記載の有機圧電材料から選ばれる少なくとも1種の材料を用いて構成されることを特徴とする超音波探触子。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、を提供することができた。
【0029】
本発明の上記手段により、耐熱性・溶解性に優れ、かつ低コストで容易に形成(製造)できる有機高分子材料、有機複合材料、有機圧電材料及び超音波探触子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0031】
(一般式(1)で示される化合物)
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができるが本発明はこれらに限定されない。
【0032】
Xがアミノ基である化合物としては、
1−1:4,4’−ジアミノベンゾフェノン、
1−2:4,4’−ジメチルアミノ−3,3’−ジクロロベンゾフェノン、
1−3:4,4’−ジアミノ−5,5’−ジエチル−3,3’−ジフルオロベンゾフェノン、
1−4:4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラフルオロベンゾフェノン、
1−5:2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、
1−6:2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、
1−7:2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
1−8:2,2−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1−9:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、
1−10:4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラクロロジフェニルエーテル、
1−11:4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
1−12:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジブロモジフェニルスルフィド、
1−13:4,4’−ジアミノジフェニルジスルフィド、
1−14:4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラフルオロジフェニルジスルフィド、
1−15:ビス(4−アミノフェニル)スルホン、
1−16:ビス(4−アミノ−3−クロロ−5−メチルフェニル)スルホン、
1−17:ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、
1−18:ビス(4−アミノ−3−ブロモフェニル)スルホキシド、
1−19:1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロプロパン、
1−20:1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロオクタン、
1−21:1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、
1−22:1,1−ビス(4−アミノ−3,5−ジフルオロフェニル)シクロヘキサン、
1−23:4,4’−(シクロヘキシルメチレン)ジアニリン、
1−24:4,4’−(シクロヘキシルメチレン)ビス(2,6−ジクロロアニリン)、
1−25:2,2−ビス(4−アミノフェニル)マロン酸ジエチル、
1−26:2,2−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)マロン酸ジエチル、
1−27:4−(ジp−アミノフェニルメチル)ピリジン、
1−28:1−(ジp−アミノフェニルメチル)−1H−ピロール、
1−29:1−(ジp−アミノフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−30:2−(ジp−アミノフェニルメチル)オキサゾール等を挙げることができる。
【0033】
Xがイソシアネート基である化合物としては、
1−40:ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアン酸、
1−41:3,3’−ジクロロベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアン酸、
1−42:5,5’−ジエチル−3,3’−ジフルオロベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアン酸、
1−43:2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)プロパン、
1−44:2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソシアネートフェニル)プロパン、
1−45:2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
1−46:2,2−ビス(3−フルオロ−4−イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
1−47:ビス(4−イソシアネートフェニル)エーテル、
1−48:ビス(3,5−ジフルオロ−4−イソシアネートフェニル)エーテル、
1−49:ビス(4−イソシアネートフェニル)スルフィド、
1−50:ビス(3,5−ジブロモ−4−イソシアネートフェニル)スルフィド、
1−51:ビス(4−イソシアネートフェニル)ジスルフィド、
1−52:ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン、
1−53:ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホキシド、
1−54:ビス(3,5−ジフルオロ−4−イソシアネートフェニル)スルホキシド、
1−55:1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロプロパン、
1−55:1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロオクタン、
1−56:1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロヘキサン、
1−57:1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソシアネートフェニル)シクロヘキサン、
1−58:4,4’−(シクロヘキシルメチレン)ビス(イソシアネートベンゼン)、
1−59:4,4’−(シクロヘキシルメチレン)ビス(1−イソシアネート−2−クロロベンゼン)、
1−60:2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、
1−61:2,2−ビス(3−クロロ−4−イソシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、
1−62:4−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)ピリジン、
1−63:1−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)−1H−ピロール、
1−64:1−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−65:2−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)オキサゾール等を挙げることができる。
【0034】
Xがイソチオシアネート基である化合物としては、
1−70:ベンゾフェノン−4,4’−ジイソチオシアン酸、
1−71:3,3’−ジフルオロベンゾフェノン−4,4’−ジイソチオシアン酸、
1−72:2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソチオシアネートフェニル)プロパン、
1−73:ビス(4−イソチオシアネートフェニル)エーテル、
1−74:ビス(4−イソチオシアネートフェニル)スルホン、
1−75:ビス(4−イソチオシアネートフェニル)スルホキシド、
1−76:ビス(3,5−ジフルオロ−4−イソチオシアネートフェニル)スルホキシド、
1−77:1,1−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)シクロプロパン、
1−78:1,1−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)シクロオクタン、
1−79:4,4’−(シクロヘキシルメチレン)ビス(イソチオシアネートベンゼン)、
1−80:2,2−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、
1−81:1−(ジp−イソチオシアネートフェニルメチル)−1H−ピロール、
1−82:2−(ジp−イソチオシアネートフェニルメチル)オキサゾール等を挙げることができる。
【0035】
(共重合体)
本発明の有機複合材料は、上記本発明の一般式(1)に示されるモノマーを含む共重合体が好ましい。これらの共重合体は本発明の一般式(1)に示される2種以上のモノマーから成る共重合体であっても、一種は一般式(1)に示されるモノマーであるが、他のモノマーは共重合できるモノマーであれば、いずれのモノマーでもよい。
【0036】
例えば、本発明の一般式(1)に示されるモノマーがジアミンタイプのモノマーであれば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソチオシアネート、芳香族ジイソチオシアネート等を挙げることができる。そして、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PMDI)、1,7−ヘプタメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジクロロフェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモフェニルイソシアネート)(2−BrMDI)、4,4’−メチレンビス(2−クロロ−6−フルオロフェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルイソシアネート)、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(イソシアネートベンゼン)、1,5−ペンタメチレンジイソチオシアネート、1,7−ヘプタメチレンジイソチオシアネート、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(1−イソシアネート−2−フルオロベンゼン)、4,4’−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、4,4’−メチレンビス(2,6−ジクロロフェニルイソチオシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(1−イソチオシアネート−2−フルオロベンゼン)等が特に好ましい。
【0037】
一方、本発明の一般式(1)に示されるモノマーがイソシアネートタイプ又はジイソチオシアネートタイプのモノマーであれば、脂肪族ジアミン、N置換脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、N置換芳香族ジアミン、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,3−トリメチレンジアミン(TMDA)、1,9−ジアミノノナン(DAN)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジクロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−クロロ−6−フルオロアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルアニリン)、4,4’−(フェニルメチレン)ジアニリン、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(2−フルオロアニリン)、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(2−フルオロアニリン)、フルオレン骨格を有するジアミン化合物等、エチレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、4,4−メチレンビスフェノールなどのアルコール化合物等、さらにアミノ基と水酸基の両方を有するエターノルアミン、アミノブチルフェノール、4−(4−アミノベンジル)フェノール(ABP)などのアミノアルコール類、アミノフェノール類を挙げることができる。特にフルオレン骨格を有するジアミン化合物が好ましく、前記一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物若しくはこれらの化合物の誘導体を挙げることができる。
【0038】
本願において、「電子吸引性基」とは、電子吸引性の度合いを示す指標としてハメット置換基定数(σp)が0.10以上である置換基をいう。ここでいうハメットの置換基定数σpの値としては、Hansch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16、1207(1973);ibid.20、304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
【0039】
例えば、σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えばトリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族、芳香族もしくは芳香族複素環アシル基(例えばホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族・芳香族もしくは芳香族複素環スルホニル基(例えばトリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、置換アリール基(例えばペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、芳香族複素環基(例えば2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えばフェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えばジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)などが挙げられる。
【0040】
本発明において、好ましい電子吸引性基すなわち好ましい置換基Rについては、下記の具体例において示す。
【0041】
一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
〈一般式(2)で表される化合物〉
一般式(2)で表される化合物としては、
2−1:2,7−ジアミノフルオレン、
2−2:2,7−ジアミノ−4,5−ジニトロフルオレン、
2−3:2,7−ジアミノ−3,4,5、6−テトラクロロフルオレン、
2−4:2,7−ジアミノ−3,6−ジフルオロフルオレン、
2−5:2,7−ジアミノ−9−(n−ヘキシル)フルオレン、
2−6:9、9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、
2−7:2,7−ジアミノ−9−ベンジルフルオレン、
2−8:9,9−ビスフェニル−2,7−ジアミノフルオレン、
2−9:2,7−ジアミノ−9−メチルフルオレン、
2−10:9,9−ビス(3,4−ジクロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレン、
2−11:9,9−ビス(3−メチル−4−クロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレン、
2−12:9,9−ビス(メチルオキシエチル)−2,7−ジアミノフルオレン、
2−13:2,7−ジアミノ−3,6−ジメチル−9−アミノメチルフルオレン、
などが挙げられるがこの限りではない。
【0043】
〈一般式(3)で表される化合物〉
一般式(3)で表される化合物としては、
3−1:2,7−ジアミノ−9−フルオレンカルボン酸、
3−2:2,7−ジアミノ−9−フルオレンカルボキシアルデヒド、
3−3:2,7−ジアミノ−9−ヒドロキシフルオレン、
3−4:2,7−ジアミノ−3,6−ジフルオロ−9−ヒドロキシフルオレン、
3−5:2,7−ジアミノ−4,5−ジブロモ−9−メルカプトフルオレン、
3−6:2,7,9−トリアミノフルオレン、
3−7:2,7−ジアミノ−9−ヒドロキシメチルフルオレン、
3−8:2,7−ジアミノ−9−(メチルオキシ)フルオレン、
3−9:2,7−ジアミノ−9−アセトキシフルオレン、
3−10:2,7−ジアミノ−3,6−ジエチル−9−(パーフルオロフェニルオキシ)フルオレン、
3−11:2,7−ジアミノ−4,5−ジフルオロ−9−(アセトアミド)フルオレン、
3−12:2,7−ジアミノ−N−イソプロピルフルオレン−9−カルボキシアミド、
3−13:2,7−ジアミノ−4,5−ジブロモ−9−メチルスルフィニルフルオレンなどが挙げられるがこの限りではない。
【0044】
〈一般式(4)で表される化合物〉
一般式(4)で表される化合物としては、
4−1:9、9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレノン、
4−2:2,7−ジアミノ−9−ベンジルフルオレノン、
4−3:9,9−ビスフェニル−2,7−ジアミノフルオレノン、
4−4:2,7−ジアミノ−9−メチルフルオレノン、
4−5:9,9−ビス(3,4−ジクロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレノン、
4−6:9,9−ビス(3−メチル−4−クロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレノン、
4−7:9−ヘキシリデン−2,7−ジアミノ−4,5−ジクロロフルオレン、
4−8:1−(2,7−ジアミノ−9−フルオレニリデン)−2−フェニルヒドラジン、
4−9:2−((2,7−ジアミノ−1,8−ジメチル−9−フルオレニリデン)メチル)ピリジン、などが挙げられるがこの限りではない。
【0045】
(複合材料)
本発明で用いられる有機複合材料を形成する際、本発明の有機高分子材料以外に、他の材料を混合してもよい。すなわち請求項1に記載の材料より形成される材料を混合した有機高分子材料、前記(共重合体)に記載の材料より形成される共重合体を混合した有機高分子材料の他に、一般的な無機材料、有機材料、可塑剤、結晶核剤、結晶化促進剤と本発明の有機高分子材料の混合物が例として挙げられる。
【0046】
(溶媒)
本発明で使用し得る溶媒としては、例えば、非プロトン性溶媒であるジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ヘキサンなどを挙げることができる。ジアミン化合物とカルボニル基又はチオカルボニル基を2つ以上有する化合物との両方を溶解させられる溶媒なら特に限定はない。
【0047】
(有機圧電材料)
本発明において、好ましい有機圧電材料としては、前記原料の下記組合せにより形成されるもの、あるいは下記組み合わせで重合した材料を混合したものを挙げることができる。
【0048】
4,4’−メチレンビス(2−クロロ−6−フルオロアニリン)/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)/ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアン酸、ビス(4−アミノ−3−クロロ−5−メチルフェニル)スルホン/ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホキシド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン/2−(ジp−イソチオシアネートフェニルメチル)オキサゾール、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)/ビス(4−イソシアネートフェニル)エーテル、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(2−フルオロアニリン)/2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン/2,2−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、2−(ジp−アミノフェニルメチル)オキサゾール/ベンゾフェノン−4,4’−ジイソチオシアン酸、2,2−ビス(4−アミノフェニル)マロン酸ジエチル/2,2−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン/4,4’−メチレンビス(2−ブロモフェニルイソシアネート)、4−(ジp−アミノフェニルメチル)ピリジン/2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソチオシアネートフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラフルオロジフェニルジスルフィド/1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロプロパン、などが挙げられるがこの限りではない。
【0049】
(基板)
本発明に係る有機高分子材料、有機複合材料及び有機圧電材料の用途・使用方法等により基板の選択は異なる。ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板又はフィルムでもよいし、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、ニッケル、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。またアルミニウム、金、銅、ニッケル、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板又はフィルムでもかまわない。
【0050】
更に複層圧電素子の上に形成してもよい。圧電素子を積相する複層の使用方法においては、セラミック圧電素子の上に本発明の有機高分子材料、有機複合材料及び有機圧電材料を重畳層する方法がある。この際、層間に電極を介してもよい。セラミック圧電素子としては、PZTが使用されているが、近年は鉛を含まないものが推奨されている。PZTは、Pb(Zr1XTiX)O3(0.47≦X≦1)の式の範囲以内であることが好ましく、脱鉛としては、天然又は人工の水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O3]、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等である。各種セラミック材料はその使用性能において組成を適宜選択することができる。
【0051】
(有機高分子材料、有機複合材料及び有機圧電材料の形成方法)
本発明に係る有機高分子材料、有機複合材料及び有機圧電材料の形成方法は、一般式(1)で示される化合物と、前記化合物と逐次反応が可能である化合物を適当な溶媒に溶解させ重合を行い、形成するものであり、場合によっては適当な他の材料と混合することで形成することを特徴とする。
【0052】
(分極処理)
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の種々の方法が適用され得るが、コロナ放電処理法が好ましい。
【0053】
コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0054】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましいが、高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cmが好ましく、印加電圧は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。
【0055】
コロナ放電用の電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0056】
またコロナ放電中に有機高分子材料、有機複合材料及び有機圧電材料に加熱を行うと、重合がさらに進み、分極処理により配向した構造を維持することが可能となる。加熱温度は、30〜250℃であることが好ましい。より好ましくは、70〜180℃であることが好ましい。加熱を行う場合は、コロナ放電の電極に絶縁体を介して、ヒーターを設置する必要がある。
【0057】
なお、本発明において前記原料溶液の溶媒が残留している状態で、分極処理としてコロナ放電処理をする場合には、引火爆発などの危険性を避けるために溶媒の揮発成分が除去されるように十分換気しながら行うことが安全上必要である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
実施例1
《分極処理膜1〜13の作製》
25℃に調温された2つの200mlのフラスコに各々50mlのN−メチルピロリドンを加え、一方に2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.3gを、他方に4,4’−メチレンビス(2−ブロモフェニルイソシアネート)4.1gを加え、溶解した。その後、前者の溶液を攪拌しながら後者の溶液を20分かけて全量を滴下混合した。1時間後、本重合溶液を回収し、厚さ20μmのポリイミド膜上に厚さ50nmのアルミニウム電極を施した基板のアルミニウム電極面に、乾燥膜厚20μmになるよう本溶液を塗布し、乾燥させ、有機高分子膜1を作製した。次に前記有機高分子膜1に、140℃まで5℃/分の割合で昇温し、5分間停滞した後、自然冷却し、25℃にした。この間、高圧電源装置 HARb−20R60(松定プレシジョン(株)製)と針状電極を用い、1.0MV/mの電界でコロナ放電分極処理を行い、その後得られた膜の本発明の有機高分子材料側の表面に蒸着によりアルミニウム電極を施し、分極処理膜1を作製した。また分極処理膜2〜13においても表1に記載の条件にて作製した。
【0060】
《分極処理膜14〜17の作製》
表1に記載の材料(モノマー)について、上述した《分極処理膜1〜13の作製》と同様にそれぞれの材料で重合を行い、最後に二つの重合液を混合し、有機高分子材料溶液とした。以降の製膜、分極操作についても上述した《分極処理膜1〜13の作製》と同様に行い、分極処理膜14〜17を作製した。
【0061】
《比較膜1の作製》
25℃に調温された2つの200mlのフラスコに各々50mlのN−メチルピロリドンを加え、一方に4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)2.0gを、他方に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)2.5gを加え、溶解した。その後、前者の溶液を攪拌しながら後者の溶液を20分かけて全量を滴下混合した。1時間後、本重合溶液を回収し、厚さ20μmのポリイミド膜上に厚さ50nmのアルミニウム電極を施した基板のアルミニウム電極面に、最終乾燥膜厚20μmになるよう本溶液を重層塗布し、乾燥させ、膜を作製した。次に前記膜に、140℃まで5℃/分の割合で昇温し、5分間停滞した後、自然冷却し、25℃にした。この間、高圧電源装置 HARb−20R60(松定プレシジョン(株)製)と針状電極を用い、1.0MV/mの電界でコロナ放電分極処理を行い、その後得られた膜の本発明の有機高分子材料側の表面に蒸着によりアルミニウム電極を施し、比較膜1を作製した。
【0062】
《作製した膜の評価》
得られた分極処理膜1〜17、比較膜1の評価は、Nano−R2/I2クローズドループ・リニアスキャナ搭載多機能AFM(PACIFIC NANOTECHNOLOGY社製)とFCE−1型強誘電体特性評価システム(東陽テクニカ社製)で圧電性を測定し、比較膜1を100として相対値で示す。
【0063】
《有機高分子材料の溶解性評価》
上述した《分極処理膜1〜13の作製》、及び《分極処理膜14〜17の作製》で重合した有機高分子材料溶液をそれぞれメタノールを用いた再沈殿法により精製し、乾燥させ、それぞれ対応する有機高分子材料1〜17を作製した。また《比較膜1の作製》で重合した溶液においても同様の操作を行い、比較高分子材料1を作製した。その後、有機高分子材料1〜17、比較高分子材料1のN−メチルピロリドンへの溶解性を評価し、比較高分子材料1を100として相対値で示す。
【0064】
上記評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例では、溶解性・圧電性が比較例に比べ優れていることが分かる。
【0067】
実施例2
〈送信用圧電振動子の作製〉
成分原料であるCaCO3、La23、Bi23とTiO2、及び副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti415となるように秤量した。次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0068】
(受信用圧電振動子の作製)
前記実施例1において作製した分極処理膜1に、ポリエステルフィルムを貼り合わせた圧電振動子を作製した。
【0069】
次に、常法に従って、上記の送信用圧電振動子上に受信用圧電振動子を積層し、かつバッキング層と音響整合層を設置し超音波探触子を試作した。
【0070】
なお、比較例として、上記受信用圧電振動子の分極処理膜1の代わりに、比較膜1を用いた受信用圧電振動子を、上記受信用圧電振動子の作製と同様に超音波探触子を作製した。
【0071】
(評価)
上記2種の超音波探蝕子について受信感度の測定をして評価した。
【0072】
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数f1を発信させ、受信2次高調波f2として10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzの受信相対感度を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0073】
上記評価において、本発明に係る分極処理膜を具備した探触子は、比較例に対して約1.5倍の相対受信感度を有していることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、下記一般式(1)に表される化合物であることを特徴とする有機高分子材料。
【化1】

(式中、Xはアミノ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基のいずれかを表し、Rは炭素原子、ヘテロ原子、またはそれら原子の酸化体、もしくは−CR1(R2)−を表し、R1及びR2は各々独立に水素原子、アルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、R1、R2が同時に水素原子であることはない。L1〜L4は各々独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、前記一般式(1)のXがともにアミノ基である化合物と、前記一般式(1)のXがともにイソシアネート基もしくは、ともにイソチオシアネート基である化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機高分子材料。
【請求項3】
有機高分子材料を形成するモノマーの一部もしくは全てが、前記一般式(1)のXがともにイソシアネート基もしくは、ともにイソチオシアネート基である化合物と、下記一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物若しくはこれらの化合物の誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機高分子材料。
【化2】

(式中、R11及びR12は、各々独立に水素原子、アルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、これらの基は更に置換基を有しても良い。R21〜R26は各々独立に水素原子、アルキル基、又は電子吸引性基を表す。)
【化3】

(式中、R13は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基を表し、これらの活性水素は更にアルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基で置換されてもよく、また、R13は、カルボニル基、スルホニル基、チオカルボニル基、スルホン基を表し、これらの基は水素原子、アリール基、またはヘテロアリール基を結合する。R21〜R26は上記一般式(2)のR21〜R26と同義の基を表す。)
【化4】

(式中、Yは、ケト基、オキシム基、置換ビニリデン基を表し、R21〜R26は上記一般式(2)のR21〜R26と同義の基を表す。)
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料が1つ以上の他の材料と混合されて形成されることを特徴とする有機複合材料。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【請求項6】
請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料を溶媒に溶解させた液を用いて有機圧電材料を形成することを特徴とする有機圧電材料の形成方法。
【請求項7】
有機高分子材料を溶媒に質量比で0.01〜80%の割合で溶解することを特徴とする請求項6に記載の有機圧電材料の形成方法。
【請求項8】
請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料が、更に可塑剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の有機圧電材料。
【請求項9】
請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料の構造中に脂肪族尿素構造が含まれることを特徴とする請求項5又は8に記載の有機圧電材料。
【請求項10】
請求項1、2又は3に記載の有機高分子材料、又は請求項4に記載の有機複合材料、或いは請求項5又は8に記載の有機圧電材料から選ばれる少なくとも1種の材料を用いて構成されることを特徴とする超音波探触子。

【公開番号】特開2009−179649(P2009−179649A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17387(P2008−17387)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】