説明

有機ELディスプレイの中間体、および、有機ELディスプレイの製造方法

【課題】プローブによって容易に動作チェックをすることができる、有機ELディスプレイの中間体を提供すること。そのような中間体を用いて、定められた大きさを持つ有機ELディスプレイを製造する方法を提供すること。
【解決手段】有機ELディスプレイの中間体10は、ガラス基板11と、透明である複数の第1電極121と、複数の有機EL膜13と、複数の第2電極14と、複数の第1電極チェックパッド122と、複数の第2電極チェックパッド125と、ドライバIC18を実装するための複数の実装パッドと、複数の制御用配線123と、複数のチェック用接続部152と、それぞれ、上記第2電極14の1つと上記制御用配線123の1つとを電気的に接続させる、複数の制御用接続部151と、それぞれ、上記制御用接続部151のいずれとも分離されており、かつ、上記第2電極14の1つと上記チェック用配線124の1つとを電気的に接続させる、複数のチェック用接続部152と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機EL素子からなる有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
図4から図6は、従来の有機ELディスプレイの中間体、すなわち製造工程の途中における製作物、を示している。有機ELディスプレイは、この中間体90を製造した後、中間体90を切断線Lに沿って切断し、切断片を廃棄することによって得られる。図4に示すように、中間体90は、透明なガラス基板91、絶縁膜96、保護膜97、および、制御回路を有する。
【0003】
図5を参照して、当該制御回路について具体的に説明する。制御回路は、それぞれy方向に延びるストリップの形状を有する複数の第1電極921と、それぞれy方向と直交するx方向に延びるストリップの形状を有する複数の第2電極94と、を具備している。このうち、各第1電極921は、透明な材料からなるものであり、ガラス基板91の上面に密着するように設けられている。一方、各第2電極94は、不透明な金属材料からなる。マトリクス状に配列する複数の有機EL膜93は、それぞれ、1つの第1電極921と1つの第2電極94とによって挟まれている。陽極として機能する第1電極921と、陰極として機能する第2電極94とを介して、1つの有機EL膜93に電圧が印加された時、その有機EL膜93は光を発する。この光は、順に、第1電極921およびガラス基板91を透過してユーザの方へ放射され、ユーザによって画像として認識される。
【0004】
図5では省略され図4に示されている絶縁膜96は、第1電極921と第2電極94の間に設けられている。保護膜97は、第2電極94の上面を覆っている。これらの膜は、各第1電極921および各第2電極94を、不当な短絡から守るためのものである。
【0005】
図5に戻り、ドライバIC98は、各第1電極921および各第2電極94の電圧を制御するためのものであり、ガラス基板91の上に設けられた実装パッドの上に実装されている。各第1電極921は、ドライバIC98と直接的に接続されている。一方、各第2電極94は、接続部951および制御用配線923を順に経由して、ドライバIC98と接続される。制御用配線923は、実装パッドおよび第1電極921と同様に、ガラス基板91の上に設けられている。
【0006】
図6は、図4のVI−VI線に沿った断面図である。同図に示すように、接続部951は、絶縁膜96に設けられた貫通孔に形成されており、第2電極94と制御用配線923とを接続する。
【0007】
有機ELディスプレイを製造する際、回路の短絡や断線に見舞われた欠陥品ができることがある。欠陥の具体的な内容は、たとえば、隣接する第1電極921どうしの短絡、隣接する第2電極94どうしの短絡、第1電極921と第2電極94との短絡、第1電極921とドライバIC98との間の断線、あるいは、第2電極94とドライバIC98との間の断線、などである。これらの欠陥が中間体90の画像表示機能を不能にすることは、明白である。したがって、高価なドライバIC98をガラス基板91に実装する最後の工程に先立って、中間体90が正常に動作するか否かをチェックする必要がある。
【0008】
動作チェックは、計測器に繋がれた2本のプローブにより行う。すなわち、当該2本のプローブを、各第1電極921および各第2電極94の中から選択された、いずれか2つに当てることにより、それらの2箇所の間の導通または絶縁が正常であるか否かを調べる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5から明らかなように、第1電極921にプローブを当てることは容易である。なぜなら、第1電極921に接続されている第1電極チェックパッド922を使用すればよいからである。チェックが終了した後、当該第1電極チェックパッド922は切断されて廃棄される。これに対し、第2電極94にプローブを当てることは容易ではない。なぜなら、ドライバIC98の近傍の制御用配線923を使用せざるを得ないからである。密集する微細な制御用配線923の1つに、正確にプローブを当てることは困難である。仮に、第2電極94のためのチェックパッドを制御用配線923に設けようとすれば、制御用配線923は大きな領域を必要とする。この領域は切断して廃棄することができないため、定められた有機ELディスプレイの製品の大きさを満足させることができなくなる。
【0010】
したがって、本発明は、プローブによって容易に動作チェックをすることができる、有機ELディスプレイの中間体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような中間体を用いて、定められた大きさを持つ有機ELディスプレイを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る有機ELディスプレイの中間体は、ガラス基板と、それぞれ、第1方向に延びるストリップの形状を有し、かつ、上記ガラス基板と密着し、かつ、透明である、複数の第1電極と、マトリクス状に配列し、かつ、それぞれが上記第1電極のいずれかに密着する、複数の有機EL膜と、それぞれ、第1方向に直交する第2方向に延びるストリップの形状を有し、かつ、上記有機EL膜のいずれかに密着する、複数の第2電極と、それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記第1電極のいずれかに電気的に接続する、複数の第1電極チェックパッドと、それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記第2電極のいずれかに電気的に接続する、複数の第2電極チェックパッドと、ドライバICを実装するための複数の実装パッドと、それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記実装パッドの1つに電気的に接続する、複数の制御用配線と、それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記第2電極チェックパッドの1つに電気的に接続する、複数のチェック用配線と、それぞれ、上記第2電極の1つと上記制御用配線の1つとを電気的に接続させる、複数の制御用接続部と、それぞれ、上記制御用接続部のいずれとも分離されており、かつ、上記第2電極の1つと上記チェック用配線の1つとを電気的に接続させる、複数のチェック用接続部と、を具備する。上記複数の制御用配線は、上記複数の第1電極と、上記複数のチェック用配線と、の間に位置している。
【0012】
好ましくは、中間体は、有機ELディスプレイの最終製品に加工されるまでに切り取られて廃棄される廃棄部位を含んでいる。上記各第1電極チェックパッドおよび上記各第2電極チェックパッドは、いずれも、上記廃棄部位に設けられている。
【0013】
好ましくは、中間体は、上記複数の制御用配線を覆い、かつ、上記各制御用接続部を収容する複数の貫通孔を有する絶縁膜を、さらに具備している。
【0014】
本発明に係る、有機ELディスプレイを製造する方法は、上述した中間体を準備する工程と、上記複数の第1電極チェックパッドおよび上記複数の第2電極チェックパッドのうちの2つにプローブを当てることにより、絶縁または導通を確認する工程と、上記廃棄部位を切り取る工程と、からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1から図3は、本発明の実施形態を示している。図1は、有機ELディスプレイの中間体10の構造を示している。有機ELディスプレイは、この中間体10を製造した後、中間体10を切断線Lに沿って切断し、切断片を廃棄することによって得られる。中間体10は、透明なガラス基板11、絶縁膜16、保護膜17、および、制御回路を有する。
【0016】
図2を参照して、当該制御回路について具体的に説明する。制御回路は、それぞれy方向に延びるストリップの形状を有する複数の第1電極121と、それぞれy方向と直交するx方向に延びるストリップの形状を有する複数の第2電極14と、を具備している。このうち、各第1電極121は、透明な材料からなるものであり、ガラス基板11の上面に密着するように設けられている。一方、各第2電極14は、不透明な金属材料からなる。マトリクス状に配列する複数の有機EL膜13は、それぞれ、1つの第1電極121と1つの第2電極14とによって挟まれている。陽極として機能する第1電極121と、陰極として機能する第2電極14とを介して、1つの有機EL膜13に電圧が印加された時、その有機EL膜13は光を発する。この光は、順に、第1電極121およびガラス基板11を透過してユーザの方へ放射され、ユーザによって画像として認識される。
【0017】
図2では省略され図1に示されている絶縁膜16は、第1電極121と第2電極14の間に設けられている。保護膜17は、第2電極14の上面を覆っている。これらの膜は、各第1電極121および各第2電極14を、不当な短絡から守るためのものである。
【0018】
図2に戻り、ドライバIC18は、各第1電極121および各第2電極14の電圧を制御するためのものであり、ガラス基板11の上に実装されている。したがって、各第1電極121は、ドライバIC18と直接的に接続されている。各第1電極121は、さらに、第1電極チェックパッド122と接続されている。
【0019】
一方、各第2電極14は、制御用接続部151および制御用配線123を順に経由して、ドライバIC18と接続される。さらに、各第2電極14は、特徴的に、チェック用接続部152およびチェック用配線124を順に経由して、第2電極チェックパッド125とも接続されている。各制御用接続部151と各チェック用接続部152は、分離して設けられている。この構成により、ガラス基板11の上で、制御用接続部151とチェック用接続部152の間に、制御用配線123を設けることができる。
【0020】
このように、第1電極121、第1電極チェックパッド122、制御用配線123、チェック用配線124、および第2電極チェックパッド125はすべて、ガラス基板11の上に密着するように設けられている。これらは、例えばITOなどの透明な材料から、フォトリソグラフィーによって同時に形成されている。
【0021】
図3に示すように、制御用接続部151は、絶縁膜16に設けられた貫通孔に形成されており、第2電極14と制御用配線123とを接続する。チェック用接続部152もまた、絶縁膜16に設けられた貫通孔に設けられており、第2電極14とチェック用配線124とを接続する。
【0022】
このような構成によれば、動作チェックの際に、第1電極チェックパッド122のみならず、第2電極チェックパッド125にもプローブを容易に当てることができる。第2電極チェックパッド125は、隣接する2つの第2電極14の間の絶縁のチェック、および、第1電極121と第2電極14との間の絶縁のチェックに利用することができる。さらに、1つの第1電極チェックパッド122と1つの第2電極チェックパッド125とに電圧を印加することにより、複数の有機EL膜13のうちの所望の1つが正常に発光することをチェックできる。前述したように、チェックが終わった後は、中間体10は切断線Lに沿って切断され、第1電極チェックパッド122および第2電極チェックパッド125を有する切断片は廃棄される。これにより、望まれる有機ELディスプレイの大きさを実現することができる。
【0023】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明の各部の具体的な構成は、適宜に変更可能である。たとえば、検査の仕様に応じて、複数の第1電極チェックパッド122どうしは互いに接続されていてもよい。複数の第2電極チェックパッド125についても同様である。制御用配線123のレイアウトは、図示したものに限られず、目的を達成できる範囲で任意に変更してよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機ELディスプレイ中間体の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の有機ELディスプレイ中間体の構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】従来の有機ELディスプレイの構造を示す斜視図である。
【図5】従来の有機ELディスプレイの構造を示す分解斜視図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 有機ELディスプレイ中間体
11 ガラス基板
121 第1電極
122 第1電極チェックパッド
123 制御用配線
124 チェック用配線
125 第2電極チェックパッド
13 有機EL膜
14 第2電極
151 制御用接続部
152 チェック用接続部
16 絶縁膜
17 保護膜
18 ドライバIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
それぞれ、第1方向に延びるストリップの形状を有し、かつ、上記ガラス基板と密着し、かつ、透明である、複数の第1電極と、
マトリクス状に配列し、かつ、それぞれが上記第1電極のいずれかに密着する、複数の有機EL膜と、
それぞれ、第1方向に直交する第2方向に延びるストリップの形状を有し、かつ、上記有機EL膜のいずれかに密着する、複数の第2電極と、
それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記第1電極のいずれかに電気的に接続する、複数の第1電極チェックパッドと、
それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記第2電極のいずれかに電気的に接続する、複数の第2電極チェックパッドと、
ドライバICを実装するための複数の実装パッドと、
それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記実装パッドの1つに電気的に接続する、複数の制御用配線と、
それぞれ、上記ガラス基板と密着し、かつ、上記第2電極チェックパッドの1つに電気的に接続する、複数のチェック用配線と、
それぞれ、上記第2電極の1つと上記制御用配線の1つとを電気的に接続させる、複数の制御用接続部と、
それぞれ、上記制御用接続部のいずれとも分離されており、かつ、上記第2電極の1つと上記チェック用配線の1つとを電気的に接続させる、複数のチェック用接続部と、
を具備し、
上記複数の制御用配線は、上記複数の第1電極と、上記複数のチェック用配線と、の間に位置している、
有機ELディスプレイの中間体。
【請求項2】
有機ELディスプレイの最終製品に加工されるまでに切り取られて廃棄される廃棄部位を含んでおり、
上記各第1電極チェックパッドおよび上記各第2電極チェックパッドは、いずれも、上記廃棄部位に設けられている、請求項1に記載の有機ELディスプレイの中間体。
【請求項3】
上記複数の制御用配線を覆い、かつ、上記各制御用接続部を収容する複数の貫通孔を有する絶縁膜を、さらに具備している、請求項2に記載の有機ELディスプレイの中間体。
【請求項4】
有機ELディスプレイを製造する方法であって、
請求項3に記載の中間体を準備する工程と、
上記複数の第1電極チェックパッドおよび上記複数の第2電極チェックパッドのうちの2つにプローブを当てることにより、絶縁または導通を確認する工程と、
上記廃棄部位を切り取る工程と、
からなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−48856(P2009−48856A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213534(P2007−213534)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】