説明

有機ELディスプレイ装置の駆動装置

【課題】有機ELディスプレイ装置の駆動装置において、消費電力を小さくして駆動装置の発熱を抑える。
【解決手段】電源回路30は、信号電極ドライバ部22に、信号電極ドライバ部22が備える定電流回路を正常に動作させるための電源電圧VCCr,VCCg,VCCbを供給する。信号電極ドライバ部22は、電源回路30から、定電流回路がR,G,Bのどの有機EL素子に対応しているのかに応じて、定電流回路が正常に動作するために必要な電圧を別々に供給される。信号電極ドライバ部22では、供給されたそれぞれの電圧が、対応する定電流回路に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence )ディスプレイ装置の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機薄膜を有する。陰極が陽極よりも高電位となるように両電極間に電圧を印加しても、有機薄膜にはほとんど電流が流れず、有機薄膜は発光しない。逆に、陽極が陰極よりも高電位となるように両極間に所定電圧(発光開始電圧)以上の電圧を印加すると、有機薄膜に電流が流れ、有機薄膜は発光する。この発光を利用した有機ELディスプレイ装置が知られている。
【0003】
有機ELディスプレイ装置では、例えば、陽極と陰極とのうちのいずれか一方を走査電極とし、他方を信号電極として、複数の走査電極と複数の信号電極とが有機薄膜を挟んで直交するように配置される。このような有機ELディスプレイ装置では、各走査電極と各信号電極との交差部分の有機EL素子が発光する。また、有機EL素子はマトリクス状に配置されることになる。この場合、線順次駆動によって、有機ELディスプレイ装置を駆動する。すなわち、各走査電極を順次選択し、選択行の表示データに応じて信号電極から選択された走査電極に電流を流す。
【0004】
有機EL素子を駆動するために、一般に、駆動IC(ドライバIC)が用いられる。走査電極には、走査電極を駆動するためのドライバIC(以下、行電極ドライバ部と表記する。)が接続される。信号電極には、信号電極を駆動するためのドライバIC(以下、信号電極ドライバ部と表記する。)が接続される。信号電極ドライバ部は、各信号電極に対応する定電流回路を備える。なお、行電極ドライバ部と信号電極ドライバ部とが、1つのワンチップドライバICとして形成されることもある。
【0005】
走査電極には、行電極ドライバ部から選択電圧または非選択電圧が印加される。ある走査電極に選択電圧が印加されているとき、すなわちある走査電極が選択されているときに、各信号電極には、選択行の表示データに応じた定電流が流される。行電極ドライバ部から選択行の走査電極に印加される電圧と定電流が流されているときの信号電極の電圧との差分が、有機EL素子に印加される駆動電圧になる。
【0006】
以下、有機ELディスプレイ装置は、互いに異なる発色で表示を行う有機EL素子を含むものとする。例えば、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3色のカラー表示を行う有機ELディスプレイ装置は、Rを発色する有機EL素子、Gを発色する有機EL素子およびBを発色する有機EL素子を含むものとする。以下、3つの有機EL素子RGBのまとまりを1画素(RGB)と表記する。互いに異なる色を発色する有機EL素子を含む有機ELディスプレイ装置では、発色する色によって、同程度の輝度で発光させる場合であっても、有機EL素子を駆動するために必要な駆動装置の出力が異なる。
【0007】
図4は、一般的な有機ELディスプレイ装置とその駆動装置とを示す模式図である。有機ELディスプレイ装置(以下、有機ELセルと表記する。)910は、1画素として、互いに異なる色を発色する3つの有機EL素子9101,9102,9103を有する。例えば、有機EL素子9101は赤色(R)、有機EL素子9102は緑色(G)、有機EL素子9103は青色(B)をそれぞれ発色する有機EL素子である。なお、有機ELセルは複数の画素を含むが、図4では模式的に一つの画素のみを示している。図4では、駆動装置として、行電極ドライバ部921と、信号電極ドライバ部922とを示す。また、図4に示す信号電極ドライバ部922は、定電流回路9221,9222,9223を有する。なお、一般に、定電流回路はそれぞれスイッチに接続される。スイッチ制御信号にしたがって、点灯の場合にはスイッチがAに接続されて各有機EL素子に定電流が流され、非点灯またはリセット時にはスイッチがBに接続されて各有機EL素子にオフ電圧VSSが供給される。なお、リセット時とは、選択行が変わる際に全ての行電極ドライバ出力と信号電極ドライバ出力とを同じ電位にして、各有機EL素子の容量成分を放電する時間を示す。
【0008】
図4に示すように、信号電極ドライバ部922には、各定電流回路を動作させるための電源電圧VCCが電源回路(図示略。)から供給される。また、有機EL素子9101,9102,9103を駆動するために必要な駆動電圧をそれぞれV,V,Vとする。すなわち、有機EL素子9101,9102,9103に定電流を流しているときに有機EL素子に印加される電圧をそれぞれV,V,Vとする。
【0009】
図5は、一般的な有機ELディスプレイ装置の駆動波形の例を示す説明図である。図5では、行電極ドライバ部921の出力電圧の駆動波形を実線で表し、有機EL素子ごとの信号電極の電圧の駆動波形をそれぞれ破線で表している。また、定電流回路を動作させるための電源電圧VCCを二点鎖線で表している。
【0010】
定電流回路が正常に動作するためには、定電流を流したときに有機EL素子に印加される駆動電圧に対してマージンが必要となる。すなわち、定電流回路が有機EL素子に正常に定電流を流すためには、有機EL素子に印加される駆動電圧に必要なマージンを加えた電圧が、電源回路から定電流回路に供給される必要がある。なお、定電流が流されているときに有機EL素子に印加される駆動電圧は、有機EL素子が発光する色によって異なる。したがって、電源回路から定電流回路に供給される電圧は、駆動電圧のうち最大の電圧に必要なマージンを加えた電圧となる。
【0011】
電源回路は、有機EL素子9101,9102,9103を駆動するために必要な駆動電圧V,V,Vのうち最も大きな値であるVと、定電流回路を正常に動作させるために必要な電圧との和を定電流回路を動作させるための電源電圧VCCとして供給する。なお、図5に示す例では、行電極ドライバ部921に供給される非選択電位をVCHとしている。また、行電極ドライバ部921に供給される選択電位(非点灯電位)および信号電極ドライバ部922に供給されるオフ電圧(非点灯電位)をVSSとしている。VSSは、例えば接地電位(0V)である。
【0012】
上述したように、発色する色によって、有機EL素子を駆動するために必要な駆動装置の出力が異なる。例えば、R、GおよびBのそれぞれを発色する有機ELディスプレイ装置において、同程度の輝度で発光させる場合、Rを発色する有機EL素子を駆動するために必要な駆動電流および駆動電圧は、GまたはBを発色する有機EL素子を駆動するために必要な駆動電流および駆動電圧よりも大きいことが知られている。
【0013】
発色する色により有機EL素子に流す電流量を変えることによって、複数の色の輝度を合わせることを容易にするエリアカラー表示を行う有機EL表示装置が提供されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された有機EL表示装置は、例えば、輝度特性が最も低いRを発光する有機EL素子の信号電極に接続するドライバ出力端子の数を、Bを発光する有機EL素子の信号電極に接続するドライバ出力端子の数より多くすることにより、Rを発光する有機EL素子に多くの電流を流すことができる。
【0014】
【特許文献1】特開2004−247076号公報(段落0058−0060)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
一般に、定電流回路を動作させるための電源電圧VCCは、有機EL素子を駆動するために必要な駆動電圧のうち、最も大きい値にあわせて決定される。すなわち、図5に示す例では、各電圧の大小関係がVCC>V>V>Vであることから、Rを発色する有機EL素子を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路9221を正常に動作させるために必要な電圧との和が電源電圧VCCとして設定される。
【0016】
一般に、定電流回路9221,9222,9223が正常に動作するために必要な電圧マージンは、出力する電流量にも依存するが、それぞれほぼ等しい。したがって、必要な駆動電圧が最も大きい有機EL素子にあわせて電源電圧を決定すると、必要な駆動電圧が小さい有機EL素子に接続される定電流回路では、供給される電源電圧と正常に動作するために必要な電圧とに差が生じることになり、無駄な電力を消費することになる。また、その結果、駆動装置の発熱が大きくなるという問題がある。
【0017】
また、R,G,Bの輝度を同程度とする場合以外にも、同様の問題が生じる。例えば、R,G,Bの組み合わせにより白色表示を行う場合、R,G,Bの輝度の比が所定の比になるように定められるが、この場合にも同様に、無駄な消費電力の発生等の問題が生じる。
【0018】
そこで、本発明は、有機ELディスプレイ装置の駆動装置において、消費電力が小さく、駆動装置の発熱を抑えることができる有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の態様1は、複数の走査電極と複数の信号電極との間に有機薄膜が配置され、信号電極ごとに複数種類の有機薄膜のうちのいずれかが配置された有機ELディスプレイ装置の駆動装置であって、各信号電極に対して定電流を流す定電流回路を各信号電極ごとに有する信号電極ドライバと、定電流回路を動作させるための電圧を信号電極ドライバに供給する電源回路とを備え、電源回路は、複数種類の有機薄膜のいずれかが配置された各信号電極に対応する各定電流回路に応じた複数の電圧であって、有機薄膜の種類に対応する複数の電圧を信号電極ドライバに供給し、信号電極ドライバは、電源回路から供給される電圧を、当該電圧に対応する有機薄膜が配置された信号電極に定電流を流す定電流回路に供給することを特徴とする有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【0020】
本発明の態様2は、態様1において、有機ELディスプレイ装置に配置される複数種類の有機薄膜が、発色する色が異なる複数種類の有機薄膜であり、電源回路が、発色する色が異なる複数種類の有機薄膜のいずれかが配置された各信号電極に対応する各定電流回路に応じた複数の電圧であって、有機薄膜の種類に対応する複数の電圧を信号電極ドライバに供給する有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【0021】
本発明の態様3は、態様2において、電源回路は、有機薄膜の種類に対応する複数の電圧として、それぞれの有機薄膜に定電流を流したときに有機薄膜に印加される電圧に所定の電圧を加算した電圧を信号電極ドライバに供給する有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、電源回路が有機EL素子の色によって異なる値の電源電圧を供給することから、電源回路が有機EL素子の色によらず同じ値の電源電圧を供給する場合と比較して、ドライバICの消費電力を小さくすることができ、ドライバICの発熱を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図である。
【0024】
有機ELセル(有機ELディスプレイ装置)10は、複数の走査電極(図示略。)と複数の信号電極(図示略。)とを備える。各走査電極と各信号電極とは、有機薄膜(有機EL素子)を挟んで直交するように配置される。各走査電極と各信号電極との交差部分が発光する部分となる。有機ELセル10は、互いに異なる色を発色する有機EL素子を有する。例えば、有機EL素子は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のいずれかの色を発色する。信号電極側から走査電極側に電流が流れることにより、その有機EL素子が発光する。なお、ここでは、信号電極が有機EL素子の陽極になり、走査電極が有機EL素子の陰極になるように配置されているものとするが、逆であってもよい。
【0025】
駆動装置は、ドライバIC20と、電源回路30とを備える。ドライバIC20は、行電極ドライバ部21と、信号電極ドライバ部22と、コントローラ23とを含む。コントローラ23は、表示される画像の表示データを記憶するメモリ24を有する。
【0026】
行電極ドライバ部21は、コントローラ23に従って、個々の走査電極を一本ずつ選択し、選択行および非選択行の走査電極の電位をそれぞれ設定する。そして、各走査電極を選択しながら走査電極を走査していく。各走査電極の電位を設定するための電圧は、電源回路30から供給される。行電極ドライバ部21は、選択行の走査電極を選択時電位VSSに設定する。また、行電極ドライバ部21は、ある走査電極の選択期間中、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。
【0027】
信号電極ドライバ部22は、定電流回路を有し、コントローラ23および選択行の表示データに従って、選択期間中、発光させるべき有機EL素子が存在する信号電極から選択行走査電極に定電流を流す。すなわち、信号電極ドライバ部22は、発光させるべき有機EL素子が存在する信号電極から選択されている走査電極上の有機薄膜に定電流を流す。
【0028】
定電流回路が正常に動作するためには、定電流を流したときに有機EL素子に印加される駆動電圧に対して必要なマージンを加えた電圧が、電源回路30から定電流回路に供給される必要がある。定電流を流したときに有機EL素子に印加される駆動電圧は、素子が発光する色によって異なるため、定電流回路が正常に動作するために必要な電圧は、定電流回路がR,G,Bのどの有機EL素子に定電流を流すのかによって異なる。信号電極ドライバ部22には、電源回路30から、定電流回路が正常に動作するために必要な電圧として、複数種類の電圧が供給される。信号電極ドライバ部22では、供給されたそれぞれの電圧が、対応する定電流回路に供給される。
【0029】
なお、定電流回路を動作させるとは、定電流回路が定電流を出力できるようにすることを意味し、定電流回路を動作させるための電圧とは、定電流回路が定電流を出力可能な電圧を意味する。
【0030】
コントローラ23は、行電極ドライバ部21と、信号電極ドライバ部22とを制御することにより、有機ELセル10に画像を表示させる。また、コントローラ23には、外部MPU(Micro Processing Unit )40が接続される。外部MPU40は、メモリ24に記憶される表示データを書き換える処理及びコントローラ23の持つレジスタ値の設定を行う。レジスタ値は、例えば、行選択の数、定電流値およびリセット時間等を示す値である。
【0031】
本実施の形態では、電源回路30は、信号電極ドライバ部22に、電源電圧VCCr,VCCg,VCCbとオフ電圧(非点灯電位)VSSとを供給する。電源電圧VCCr,VCCg,VCCbは、信号電極ドライバ部22が備える定電流回路を正常に動作させるための電圧である。また、電源回路30は、行電極ドライバ部21に、非選択電位VCHと選択電位(非点灯電位)VSSとを供給する。本実施の形態では、選択電位とオフ電圧とは等しい電位であり、例えば接地電位(0V)である。
【0032】
図2は、本発明による有機ELディスプレイ装置における有機ELセル10と駆動装置とを示す模式図である。図2には、駆動装置として、行電極ドライバ部21と、信号電極ドライバ部22とを示し、電源回路30(図1参照。)については図示を省略している。図2に示す有機ELセル10は、互いに異なる色を発色する3つの有機EL素子101,102,103を有する。例えば、有機EL素子101は赤色(R)を発色する有機EL素子であり、有機EL素子102は緑色(G)を発色する有機EL素子であり、有機EL素子103は青色(B)を発色する有機EL素子である。また、図2に示す信号電極ドライバ部22は、定電流回路221,222,223を有する。なお、一般に、定電流回路はそれぞれスイッチに接続される。スイッチ制御信号にしたがって、点灯の場合にはスイッチがAに接続されて各有機EL素子に定電流が流され、非点灯またはリセット時にはスイッチがBに接続されて各有機EL素子にオフ電圧VSSが供給される。
【0033】
図2を参照すると、定電流回路221は、信号電極を介して、Rを発光する有機EL素子101に接続されている。定電流回路222は、信号電極を介して、Gを発光する有機EL素子102に接続されている。定電流回路223は、信号電極を介して、Bを発光する有機EL素子103に接続されている。また、各有機EL素子は、走査電極を介して、行電極ドライバ部21に接続される。なお、図2には、定電流回路および有機EL素子が3つずつの場合を例示したが、これに限られない。
【0034】
図2に例示するように、定電流回路221には電源回路30(図1参照。図2では図示せず。)から電源電圧VCCrが供給され、定電流回路222には電源回路30から電源電圧VCCgが供給され、定電流回路223には電源回路30から電源電圧VCCbが供給される。また、有機EL素子101,102,103を駆動するために必要な駆動電圧をそれぞれV,V,Vとする。
【0035】
図3は、本発明による有機ELディスプレイ装置の駆動波形の例を示す説明図である。図3では、行電極ドライバ部21の出力電圧の駆動波形を実線で表し、有機EL素子ごとの信号電極の電圧の駆動波形をそれぞれ破線で表している。また、定電流回路を動作させるための電源電圧VCCr,VCCg,VCCbを二点鎖線で表している。
【0036】
ここで、電源回路30は、Rを発色する有機EL素子101を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路221を正常に動作させるために必要な電圧マージンとの和を定電流回路221を動作させるための電源電圧VCCrとして供給し、Gを発色する有機EL素子102を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路222を正常に動作させるために必要な電圧マージンとの和を定電流回路222を動作させるための電源電圧VCCgとして供給し、Bを発色する有機EL素子103を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路223を正常に動作させるために必要な電圧マージンとの和を定電流回路223を動作させるための電源電圧VCCbとして供給する。従って、電源電圧VCCr,VCCg,VCCbは、複数種類の有機薄膜(ここでは、発色する色が異なる複数種類の有機EL素子101〜103)に対応する電圧である。
【0037】
なお、図3に示す例では、行電極ドライバ部21に供給される非選択電位はVCHである。また、行電極ドライバ部21に供給される選択電位および信号電極ドライバ部22に供給されるオフ電圧はVSSであって、例えば接地電位である。
【0038】
次に、具体例を説明する。Rを発色する有機EL素子101、Gを発色する有機EL素子102およびBを発色する有機EL素子103を有し、96画素×64ラインからなる有機ELセル10を用いる場合を例に説明する。また、有機ELセル10のピクセルのサイズ(ドットサイズ)を0.3mm×0.1mmとし、ドライバIC20を用いて、輝度100cd/m、1/64デューティで駆動する場合を例にする。なお、白色を適正に表示するため、各色を発光する有機EL素子の発光輝度は、Rが15cd/m、Gが60cd/m、Bが25cd/mであるものとする。
【0039】
このとき、信号電極1本(1ピン)あたりの駆動電流および駆動電圧は、信号電極が接続される有機EL素子が発色する色によって異なる。ここでは、Rを発色する有機EL素子101の駆動電流Iおよび駆動電圧Vがそれぞれ88μAおよび15.1V、Gを発色する有機EL素子102の駆動電流Iおよび駆動電圧Vがそれぞれ28μAおよび8.4V、Bを発色する有機EL素子103の駆動電流Iおよび駆動電圧Vがそれぞれ20μAおよび9.4Vである場合を例にして説明する。また、各定電流回路が正常に動作するために必要な電圧マージンはそれぞれ2.0Vであるものとする。
【0040】
まず、図4に示す従来技術のように、電源回路が、有機EL素子の色によらず同じ値の電源電圧VCCを供給する場合のドライバIC20の消費電力を算出する。電源電圧VCCは、有機EL素子9101,9102,9103を駆動するために必要な駆動電圧V,V,Vのうち最も大きな値であるVと、定電流回路を正常に動作させるために必要な電圧マージン2.0Vとの和で算出される。ここで、V=15.1Vより、VCC=15.1+2.0=17.1Vと算出される。
【0041】
定電流回路9221,9222,9223に流れる電流I,I,Iは、信号電極を介して接続される有機EL素子の駆動電流と同じであり、それぞれI=88μA、I=28μA、I=20μAである。
【0042】
したがって、1画素あたりの定電流回路の消費電力は、以下のように算出される。
【0043】
×(VCC−V)+I×(VCC−V)+I×(VCC−V
=88μA×(17.1−15.1)V+28μA×(17.1−8.4)V+20μA×(17.1−9.4)V
=(176.0+243.6+154.0)μW
=573.6μW
【0044】
ドライバIC20の消費電力は、96画素あたりの定電流回路の消費電力として算出される。したがって、全画素が点灯する場合のドライバIC20の消費電力は、573.6μW×96=55.0656mWと算出される。
【0045】
次に、本発明の駆動回路において、電源回路が、有機EL素子の色によって異なる値の電源電圧VCCr,VCCg,VCCbを供給する場合のドライバIC20の消費電力を算出する。電源電圧VCCrは、Rを発色する有機EL素子101を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路221を正常に動作させるために必要な電圧マージンとの和で算出され、電源電圧VCCgは、Gを発色する有機EL素子102を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路222を正常に動作させるために必要な電圧マージンとの和で算出され、電源電圧VCCbは、Bを発色する有機EL素子103を駆動するために必要な駆動電圧Vと定電流回路223を正常に動作させるために必要な電圧マージンとの和で算出される。
【0046】
ここで、定電流回路221,222,223を正常に動作させるために必要な電圧マージンはそれぞれ2.0Vである。また、V=15.1V、V=8.4V、V=9.4Vであることから、VCCr=15.1+2.0=17.1V、VCCg=8.4+2.0=10.4V、VCCb=9.4+2.0=11.4Vと算出される。
【0047】
また、定電流回路221,222,223に流れる電流I,I,Iは、信号電極を介して接続される有機EL素子の駆動電流と同じであり、それぞれI=88μA、I=28μA、I=20μAである。
【0048】
したがって、1画素あたりの定電流回路の消費電力は、以下のように算出される。
【0049】
×(VCCr−V)+I×(VCCg−V)+I×(VCCb−V
=88μA×(17.1−15.1)V+28μA×(10.4−8.4)V+20μA×(11.4−9.4)V
=(176.0+56.0+40.0)μW
=272.0μW
【0050】
ドライバIC20の消費電力は、96画素あたりの定電流回路の消費電力として算出される。したがって、全画素が点灯する場合のドライバIC20の消費電力は、272.0μW×96=26.112mWと算出される。この消費電力(26.112mW)と、電源回路が有機EL素子の色によらずに同じ値の電源電圧を供給する場合の消費電力(55.0656mW)とを比較すると、本発明では消費電力を低減できていることがわかる。
【0051】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、電源回路が有機EL素子の色によって異なる値の電源電圧を供給することから、電源回路が有機EL素子の色によらず同じ値の電源電圧を供給する場合と比較して、ドライバICの消費電力を小さくすることができるという効果がある。その結果、ドライバICの発熱を抑えることもできる。
【0052】
なお、本実施の形態では、ドライバICとしてワンチップドライバICを例示したが、ワンチップドライバICに限られない。また、各有機EL素子を駆動するために必要な駆動電圧V,V,Vの大小関係は一例であって、その他の関係であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、有機ELディスプレイ装置に適用可能であり、特に、消費電力を小さくして駆動装置の発熱を抑えることが要求される有機ELディスプレイ装置への適用が有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図。
【図2】本発明による有機ELディスプレイ装置における有機ELセルと駆動装置とを示す模式図。
【図3】本発明による有機ELディスプレイ装置の駆動波形の例を示す説明図。
【図4】一般的な有機ELディスプレイ装置における有機ELセルと駆動装置とを示す模式図。
【図5】一般的な有機ELディスプレイ装置の駆動波形の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0055】
10 有機ELセル
20 ドライバIC
21 行電極ドライバ部
22 信号電極ドライバ部
23 コントローラ
24 メモリ
30 電源回路
40 外部MPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査電極と複数の信号電極との間に有機薄膜が配置され、信号電極ごとに複数種類の有機薄膜のうちのいずれかが配置された有機ELディスプレイ装置の駆動装置であって、
各信号電極に対して定電流を流す定電流回路を各信号電極ごとに有する信号電極ドライバと、
定電流回路を動作させるための電圧を信号電極ドライバに供給する電源回路とを備え、
電源回路は、複数種類の有機薄膜のいずれかが配置された各信号電極に対応する各定電流回路に応じた複数の電圧であって、有機薄膜の種類に対応する複数の電圧を信号電極ドライバに供給し、
信号電極ドライバは、電源回路から供給される電圧を、当該電圧に対応する有機薄膜が配置された信号電極に定電流を流す定電流回路に供給する
ことを特徴とする有機ELディスプレイ装置の駆動装置。
【請求項2】
有機ELディスプレイ装置に配置される複数種類の有機薄膜は、発色する色が異なる複数種類の有機薄膜であり、
電源回路は、発色する色が異なる複数種類の有機薄膜のいずれかが配置された各信号電極に対応する各定電流回路に応じた複数の電圧であって、有機薄膜の種類に対応する複数の電圧を信号電極ドライバに供給する
請求項1に記載の有機ELディスプレイ装置の駆動装置。
【請求項3】
電源回路は、有機薄膜の種類に対応する複数の電圧として、それぞれの有機薄膜に定電流を流したときに有機薄膜に印加される電圧に所定の電圧を加算した電圧を信号電極ドライバに供給する
請求項2に記載の有機ELディスプレイ装置の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−93870(P2007−93870A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281701(P2005−281701)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】