説明

有機ELパネルの定電力駆動装置

【課題】定格入力の異なる有機EL照明パネルのそれぞれ対応して、各有機ELパネルの定格入力に応じた定電力駆動がなされる定電力駆動装置を提供すること。
【解決手段】電源回路12からの直流駆動電流を受けて、有機ELパネル1に加える直流電力を定電力制御する定電力出力部13と、前記定電力出力部から出力されて、前記有機ELパネルに加わる直流電圧値vを検出する電圧検出部15と、前記定電力出力部から前記有機ELパネルに供給される直流電流値iを検出する電流検出部16と、前記電圧検出部および前記電流検出部からの各検出出力v,i、ならびに前記有機ELパネルに加える定電力量を指示する電力設定情報pをそれぞれ受けて、前記定電力出力部に与える制御信号cを生成するマイコン制御部14とが具備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機EL(Electro Luminescence)パネルを定電力により発光駆動させる定電力駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より点光源である白熱電球や、線光源である蛍光灯等が照明用の光源として多用されている。前者の白熱電球は歴史が古く、長期にわたって利用されているが、エネルギー効率(発光効率)が低く、寿命が短いなどの諸問題を抱えており、近年において注目されている温室効果ガスの排出削減などの理由から一部のメーカーにおいては製造中止の動きがでている。
【0003】
また、後者の蛍光灯は、前者の白熱電球に比べて発光効率および演色性などにおいて改善はされているものの、廃棄時における水銀の処理等で、やはり環境問題において負担が大きい。
【0004】
そこで、昨今においては、面発光光源としての有機EL素子が注目されている。この有機EL素子は直流の低電圧で駆動されることで高い発光効率を有し、軽量かつ薄型化が可能であることから、一部の携帯型機器などにおけるフラットパネルディスプレイ(FPD)に利用されており、また同素子を例えば液晶表示素子のバックライトとして利用する形態のものも提供されている。
【0005】
また、有機EL素子は発光層に用いる素材の選択により、種々の発光色を得ることができ、したがって各発光色を単独で、または二種以上の発光色を組み合わせることにより、白色もしくはこれに近い発光色を得ることも可能となる。それ故、有機EL素子を面発光光源(発光パネル)として構成することで、例えば装飾用の光源や、室内等を照明する高効率な面光源として利用することができる。
【0006】
この場合、より発光輝度を高めると共に演色性を改善する手段として、いわゆるマルチフォトン素子が提案されている。このマルチフォトン素子は、陽極電極と陰極電極との間に複数の有機発光素子層を積層すると共に、隣り合う有機発光素子層の間に、中間導電層を設け、等価的に直列に接続された構成になされる。このようなマルチフォトン素子については、次に示す先行技術文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−329748号公報
【特許文献2】特開2003−45676号公報
【特許文献3】特開2003−272860号公報
【0008】
図6および図7は、前記したマルチフォトン素子を照明用光源に応用した例を模式的な断面図で示したものである。まず図6に示す有機ELパネル1は、2層の有機発光素子層によりマルチフォトン素子が形成されると共に、マルチフォトン素子が5つ直列接続された構成にされており、これは2段5直のマルチフォトン構成とも称呼されている。
【0009】
すなわち、図6における符号2は、例えばガラス等の透明素材により形成された基板を示しており、この基板2上には、5つの領域に分けて透明電極(陽極電極)3が互いに分離された状態に形成されている。また、それぞれの透明電極3上には、順に有機発光素子層4a、中間導電層5、有機発光素子層4b、対向電極(陰極電極)6が積層形成されており、これにより2段のマルチフォトン素子が形成されている。
【0010】
さらに、前記対向電極6と、隣接する素子を構成する透明電極3との間には、導電体7がそれぞれ形成されて、素子が直列に接続されており、これにより前記した2段5直のマルチフォトン素子が構成されている。そして、導電体7により直列接続された素子の一端部における透明電極3と他端部における対向電極6との間に、直流電源Eが接続されることで、各素子の発光層4a,4bが発光し、その光は透明基板1を介して導出される。
【0011】
一方、図7に示す有機ELパネル1は、5層の有機発光素子層によりマルチフォトン素子が構成されており、これは5段マルチフォトン構成とも称呼されている。すなわち、符号2で示す透明基板上には透明電極(陽極電極)3が形成されており、この透明電極上には、有機発光素子層4a〜4eが、中間導電層5a〜5dを介して順次積層され、最上の有機発光素子層4e上には、対向電極6が積層されている。
【0012】
そして、透明電極3と対向電極6との間に、直流電源Eが接続されることで、各発光層4a〜4eがそれぞれ発光し、その光は透明基板1を介して導出される。
【0013】
本件出願人の試作による前記したマルチフォトン構成の有機ELパネルにおいては、図6および図7に示す構成における縦横の発光面の寸法は、それぞれ140mmの正方形になされている。そして、図6に示す2段5直の構成においては、定格入力が33V/0.94Aになされ、図7に示す5段構成のものにおいては、定格入力が21.5V/1.45Aになされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記した例で示すように、有機ELパネルは、たとえ同一の外形寸法になされていても、前記したマルチフォトン素子を用いた場合、面内の配列に応じて、定格電圧および電流がそれぞれ異なるものとなる。また同一構成の発光パネルであっても経時変化により発光効率が低下する。さらに有機ELパネルは、温度依存性を有していることは周知のとおりであり、環境温度が高いほど効率が高く、低温時は低いという特性を有している。
【0015】
この出願の発明は、定格電圧および電流が異なる前記した有機ELパネルのそれぞれ対して、各有機ELパネルに供給する出力電力を可変設定するこができる定電力駆動装置を提供しようとするものであり、また有機ELパネルの温度依存性を補償することができる定電力駆動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記した課題を解決するためになされたこの出願の発明にかかる定電力駆動装置は、電源回路からの駆動電流を受けて、有機ELパネルに加える直流電力を定電力制御する定電力出力部と、前記定電力出力部から出力されて、前記有機ELパネルに加わる直流電圧値を検出する電圧検出部と、前記定電力出力部から前記有機ELパネルに供給される直流電流値を検出する電流検出部と、前記電圧検出部および前記電流検出部からの各検出出力、ならびに前記有機ELパネルに加える定電力量を指示する電力設定情報をそれぞれ受けて、前記定電力出力部に与える制御信号を生成するマイコン制御部とが具備され、前記定電力出力部は、前記マイコン制御部からの前記制御信号に基づいて、前記有機ELパネルに加える直流電力量を制御するように構成したことを特徴とする。
【0017】
この場合、好ましい形態においては、前記マイコン制御部には、前記電圧検出部および前記電流検出部からの各検出出力に基づくデータを乗算する演算部と、当該演算部よる乗算出力データと前記電力設定情報に基づくデータとの差分を検出する差分検出部とが備えられ、前記差分検出部の出力に基づいて、前記定電力出力部に与える制御信号を生成するように構成される。
【0018】
加えて前記マイコン制御部には、前記有機ELパネルのパネル温度を検知するパネル温度センサからのパネル温度検知信号が供給されるように構成され、前記マイコン制御部は前記パネル温度検知信号を利用して、前記有機ELパネルの温度補償制御を実行するように構成することが望ましい。
【0019】
また、前記マイコン制御部には、前記有機ELパネルが設置された周囲温度を検知する周囲温度センサからの周囲温度検知信号がさらに供給されるように構成される場合もあり、前記マイコン制御部は前記周囲温度検知信号と前記パネル温度検知信号とを利用して、前記有機ELパネルの温度補償制御を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0020】
前記した構成による定電力駆動装置によると、有機ELパネルに対して直流の定電力を供給する定電力出力部は、マイコン制御部からの制御信号に基づいて、前記した有機ELパネルに供給する電力量が制御されるように動作する。そして、前記マイコン制御部には、有機ELパネルに加える定電力量を指示する電力設定情報が供給され、これにより有機ELパネルは発光輝度が制御され、調光制御が実現される。
【0021】
また、前記した定電力駆動装置は、例えば図6および図7に示した異なったマルチフォトン構成により定格電圧がそれぞれ異なる有機ELパネルに対しても、それぞれの定格電圧に応じた駆動電力を供給することができる。したがって、前記した定電力駆動装置によれば、定格電圧が異なる各種の有機ELパネルに対して汎用性を持たせた定電力駆動装置を提供することができる。
【0022】
さらに、前記した定電力駆動装置においては、有機ELパネルのパネル温度に基づいて、有機ELパネルに加わる直流電力量の補償制御を実行するようになされるので、有機EL照明パネルの温度依存性を補償した照明設備を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明にかかる定電力駆動装置と有機ELパネルを示したブロック図である。
【図2】図1におけるマイコン制御部と定電力出力部のより詳細な例を示したブロック図である。
【図3】図1におけるマイコン制御部と定電力出力部の他の構成例を示したブロック図である。
【図4】定電力駆動装置における温度補償動作を説明する特性線図である。
【図5】温度補償動作を実現させるメモリー構成の一例を示した模式図である。
【図6】マルチフォトン素子構造による有機ELパネルの例を模式的に示した断面図である。
【図7】マルチフォトン素子構造による有機ELパネルの他の例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明にかかる有機ELパネルの定電力駆動装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1はその全体構成をブロック図で示したものであり、符号1は例えば図6および図7に示した有機ELパネルを示しており、符号11はこの有機ELパネル1を点灯駆動する定電力駆動装置を示している。
【0025】
前記定電力駆動装置11には、電源回路12が具備されており、この電源回路12は、例えば交流電源(AC商用電源)の供給を受けて、定電力出力部13に対して直流出力を供給するように動作する。前記定電力出力部13は、マイクロコンピュータにより構成されたマイコン制御部14からの制御信号cを受けて直流の出力制御がなされ、その出力は前記した有機ELパネル1に供給されるように構成されている。
【0026】
前記定電力駆動装置11には、前記有機ELパネル1に加わる直流電圧値を検出する電圧検出部15と、前記有機ELパネル1に供給される直流電流値を検出する電流検出部16が具備されており、電圧検出部15により得られる電圧検出出力v、および電流検出部16により得られる電流検出出力iは、前記したマイコン制御部14に供給されるように構成されている。
【0027】
また、マイコン制御部14には、前記有機ELパネル1に加える定電力量を指示する電力設定情報pが与えられるように構成されており、マイコン制御部14は、この電力設定情報p、および前記した電圧検出出力v、電流検出出力iを利用して前記定電力出力部13に与える制御信号cを生成するように動作する。
【0028】
さらに、前記マイコン制御部14には、点灯駆動中における前記有機ELパネル1のパネル温度を検知する温度センサA、すなわちパネル温度センサ17からのパネル温度検知信号taが供給されるように構成されている。またマイコン制御部14には、前記有機ELパネル1が設置された周囲温度、例えば室内温度を検知する温度センサB、すなわち周囲温度センサ18からの周囲温度検知信号tbが供給されるように構成されている。
【0029】
前記パネル温度センサ17および周囲温度センサ18からの各温度検知信号ta,tbは、後で詳細に説明するとおり、マイコン制御部14から前記定電力出力部13に供給される前記制御信号cを補正し、前記有機EL照明パネル1の温度補償制御を実行するように作用する。
【0030】
図2は、図1に示した定電力出力部13およびマイコン制御部14におけるさらに詳しいブロック構成を示したものである。前記マイコン制御部14には、演算部14aが具備されており、この演算部14aには前記した電圧検出部15からの電圧検出出力v、電流検出部16からの電流検出出力iが供給される。そして、前記両出力情報v,iは、この演算部14aにおいて乗算され、その乗算結果としてデータd1を出力するように作用する。
【0031】
すなわち、前記演算部14aは、前記有機ELパネル1に供給される直流電力量を演算し、その演算結果(乗算データd1)は、差分検出部14bの一方の入力端に供給されるように構成されている。
【0032】
また前記マイコン制御部14には、電力設定部14cが具備されており、この電力設定部14cには、有機ELパネル1に加える定電力量を指示する前記した電力設定情報pが供給される。すなわち、電力設定部14cは前記電力設定情報pを受けて、前記した差分検出部14bにおいて演算可能なデータd2を出力するインターフェースとして機能する。そして、前記データd2は、前記差分検出部14bの他方の入力端に供給されるように構成されている。
【0033】
前記差分検出部14bは、前記データd1およびデータd2を受けて、d0=d2−d1の値を演算する。すなわち、前記した電力設定情報pに対する有機ELパネル1に加わ電力量の差分d0を演算することになる。
【0034】
前記差分検出部14bからの差分出力d0は、温度補償部14dに供給されるように構成されている。この温度補償部14dには、前記したパネル温度検知信号taおよび周囲温度検知信号tbが供給される。前記パネル温度検知信号taおよび周囲温度検知信号tbは、前記差分検出部14bからの差分出力d0を補正(温度補償)して、後段の制御信号部14eに供給され、この制御信号部14eを介してPWM部14fに供給されるように構成されている。なお、前記温度補償部14dによる温度補償の作用については、後で図4に基づいて説明する。
【0035】
前記した温度補償部14dからの出力は、例えばレベルシフト回路等を含む制御信号部14eを介してPWM部14fに供給され、当該PWM部14fは、自己の発生する鋸歯状波と、前記制御信号部14eからもたらされる直流電圧とにより、前記直流電圧に対応したデューティ比のパルス信号を生成し、このパルス信号が定電力出力部13に対して制御信号cとして供給される。
【0036】
図2に示す定電力出力部13は、スイッチングレギュレータにより構成されており、図1に示す電源回路12からの直流出力は、スイッチング素子Q1によりスイッチングされて、パルス幅制御がなされる。そのパルス幅制御がなされた出力はダイオードD1、コイルL1およびコンデンサC1による整流・平滑回路を介して出力され、前記した有機ELパネル1に供給される。
【0037】
以上説明した図1および図2に示した定電力駆動装置によると、有機ELパネル1に加える定電力量を指示する前記した電力設定情報pに対して、実際に有機ELパネル1に加わる電力量(v・i)との差分(エラー分)d0が演算され、この差分に基づいて、定電力出力部13からの出力電力が制御されることになる。
【0038】
これにより、前記した有機ELパネル1には、前記電力設定情報pに基づく定電力が供給され、有機ELパネル1は前記電力設定情報pにより輝度制御、すなわち調光制御がなされる。また前記差分d0は、温度補償回路によって補正され、結果として有機ELパネル1に加わる電力量は、有機ELパネル1の温度依存性を補償するようになされる。
【0039】
なお、図3は図1に示したマイコン制御部14と、定電力出力部13の他の構成例をブロック図で示したものであり、図2に示した各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。すなわち、図3に示す例においては、定電力出力部13内にPWM部13aが配置されており、他は図2に示した構成と同様である。
【0040】
図4は、前記した温度補償部14dによってなされる有機ELパネル1に加わる駆動電力の温度補償の作用について説明するものである。すなわち、図4は有機ELパネル1の電流i−電圧V特性を示すものであり、横軸はパネル1への印加電圧(駆動電圧)Vを示しており、縦軸はこの時に流れるパネルの1平方メートル(1m2)に換算した駆動電流値i、すなわち電流密度(A/m2)を示している。
【0041】
有機ELパネルは、周知のとおり発光閾値電圧以上の駆動電圧を印加することにより、急激に電流が流れて発光する性質を有している。そして、駆動電圧が発光閾値電圧以上の場合においては、駆動電流値にほぼ比例した輝度で発光することが知られている。また有機ELパネルは、高温になるほど発光閾値電圧が小さくなり、低温になるほど発光閾値電圧が大きくなる。そして、同じ発光可能な印加電圧を与えても高温時には明るく、低温時は暗いという輝度の温度依存性を有している。
【0042】
図4に示す特性曲線aは、図6に示した2段5直のマルチフォトン構成によるELパネル〔定格入力33V/0.94A(約31W)〕のi−V特性を示すものであり、曲線ahは高温時、また曲線alは低温時のi−V特性をそれぞれ示している。また、図4に示す特性曲線bは、図7に示した5段のマルチフォトン構成によるELパネル〔定格入力21.5V/1.45A(約31W)〕のi−V特性を示すものであり、曲線bhは高温時、また曲線blは低温時のi−V特性をそれぞれ示している。
【0043】
ここで、図6に示した2段5直のマルチフォトン構成によるELパネルを例にして、その温度補償作用について説明する。このELパネル1は、前記したとおり定格入力が33V/0.94Aであり、図1に示すマイコン制御部14におけるマイコン制御部14には、電力設定情報pとして、“31W”(1m2換算で1584W=33V/48A)の電力値を設定する。図4には、これにより設定される等電力曲線をpaで示している。
【0044】
前記した有機ELパネルのi−V特性は、前記した温度依存性により、ah〜alの範囲で変化する。すなわち、図1に示すパネル温度センサ17により得られるパネル温度検知信号taおよび周囲温度センサ18により得られる周囲温度検知信号tbを利用し、マイコン制御部14内の温度補償部14dは定電力出力部13に与える制御信号cの値を補償するように動作する。
【0045】
この場合、図4に示すように高温時(特性ah)の状態においては、有機ELパネル1には駆動電圧としてv1(図4に示す例においては、約30V)を加えるように作用する。また、低温時(特性al)の状態においては、有機ELパネル1に加える駆動電圧としてv2(図4に示す例においては、約36V)を加えるように作用する。
【0046】
斯くして、有機ELパネル1には前記電力設定情報pに基づく定電力が供給されるように作用し、また前記した定電力制御を実行する制御信号cは、温度補償部14dによって補正され、有機ELパネル1に加わる電力量は、有機ELパネルの温度依存性を補償するようになされる。
【0047】
なお、図1に示すマイコン制御部14に与える電力設定情報pを適宜選択することで、有機ELパネル1の発光輝度(調光度合い)を変えることができ、前記電力設定情報pに基づく図4に示す等電力曲線をpaに応じて、前記と同様の温度補償動作を実現させることができる。
【0048】
図5は、有機ELパネル1の温度補償動作を実現させる場合に利用されるルックアップテーブルの例を示した模式図である。このルックアップテーブルは、例えばフラッシュメモリーを用いて構築され、このフラッシュメモリーは、一例として各有機ELパネル1に搭載される。そして、図1には示していないが、マイコン制御部14からの指令により、有機ELパネル1に搭載された前記フラッシュメモリーから有機ELパネルの点灯累積時間(経時データ)および温度補償データ等を読み出すと共に、フラッシュメモリーに対して前記点灯累積時間を書き込む等の操作が行われる。
【0049】
前記フラッシュメモリーに構築されるルックアップテーブルは、図5に示すように二次元に構築されたデータマップが複数枚用意されている。そして、有機ELパネル1の点灯累積時間のデータがメモリーの一部に格納されており、この点灯駆動時間に応じて、二次元に構築されたマップのいずれかが採用される。すなわち図5に模式的に示した構成においては、有機ELパネル1の点灯累積時間に伴って、矢印Pで示す方向のデータマップが順次採用されることになる。
【0050】
前記各データマップには、パネル温度センサ17により得られるパネル温度検知信号taの値を横軸に、前記パネル温度検知信号taと、周囲温度センサ18により得られる周囲温度検知信号tbとの差分(ta−tb)に対応した値を縦軸にして、二次元の状態に温度補償データが記述されている。
【0051】
ところで、前記有機ELパネル1の温度補償動作は、前記パネル温度センサ17により得られるパネル温度検知信号taの値に応じて実行することが可能であるものの、周囲温度が常温から極端に離れるような場合、例えば極端に寒冷な雰囲気の場合には、この周囲温度の影響を受けてパネル温度検知信号taのみでは、有機ELパネル1に対する正確な温度補償動作を実現することが不可能になる。
【0052】
そこで、パネル温度検知信号taと周囲温度検知信号tbとの差分(ta−tb)を求め、パネル温度検知信号taに対応させると共に、前記差分に応じた温度補償データを求めることで、より正確な温度補償動作を実現することが可能となる。
【0053】
斯くして、図1に示すマイコン制御部14は、前記した点灯累積時間、前記パネル温度検知信号ta、周囲温度検知信号tbに基づいて、前記ルックアップテーブルより温度補償データを読み出し、読み出した温度補償データに基づいて、前記定電力出力部13に供給する制御信号cを補正するようになされる。
【0054】
これにより、有機ELパネルの点灯累積時間に対応した経時変化および温度依存性を補償した照明設備を実現させることができる。
【0055】
なお、前記した実施の形態においては、有機ELパネル1に加える直流電力としては、平滑化された直流出力が用いられているが、これは直流パルス波であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 有機ELパネル
11 定電力駆動装置
12 電源回路
13 定電力出力部
13a PWM部
14 マイコン制御部
14a 演算部
14b 差分検出部
14c 電力設定部
14d 温度補償部
14e 制御信号部
14f PWM部
15 電圧検出部
16 電流検出部
17 パネル温度センサ
18 周囲温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路からの駆動電流を受けて、有機ELパネルに加える直流電力を定電力制御する定電力出力部と、
前記定電力出力部から出力されて、前記有機ELパネルに加わる直流電圧値を検出する電圧検出部と、
前記定電力出力部から前記有機ELパネルに供給される直流電流値を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部および前記電流検出部からの各検出出力、ならびに前記有機ELパネルに加える定電力量を指示する電力設定情報をそれぞれ受けて、前記定電力出力部に与える制御信号を生成するマイコン制御部と、が具備され、
前記定電力出力部は、前記マイコン制御部からの前記制御信号に基づいて、前記有機ELパネルに加える直流電力量を制御するように構成したことを特徴とする有機ELパネルの定電力駆動装置。
【請求項2】
前記マイコン制御部には、前記電圧検出部および前記電流検出部からの各検出出力に基づくデータを乗算する演算部と、当該演算部よる乗算出力データと前記電力設定情報に基づくデータとの差分を検出する差分検出部とが備えられ、前記差分検出部の出力に基づいて、前記定電力出力部に与える制御信号を生成するように構成したことを特徴とする請求項1に記載された有機ELパネルの定電力駆動装置。
【請求項3】
前記マイコン制御部には、前記有機ELパネルのパネル温度を検知するパネル温度センサからのパネル温度検知信号が供給されるように構成され、前記マイコン制御部は前記パネル温度検知信号を利用して、前記有機ELパネルの温度補償制御を実行するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された有機ELパネルの定電力駆動装置。
【請求項4】
前記マイコン制御部には、前記有機ELパネルが設置された周囲温度を検知する周囲温度センサからの周囲温度検知信号がさらに供給されるように構成され、前記マイコン制御部は前記周囲温度検知信号と前記パネル温度検知信号とを利用して、前記有機ELパネルの温度補償制御を実行するように構成したことを特徴とする請求項3に記載された有機ELパネルの定電力駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−134468(P2011−134468A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290625(P2009−290625)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【出願人】(509353643)株式会社プリンシプル (2)
【Fターム(参考)】