説明

有機EL素子の製造方法及び有機EL素子

【課題】全層をスピンコート法で積層した素子と比較して同等の性能を有し、かつ、材料コストを大幅に低減できる有機EL素子の製造方法及び有機EL素子を提供する。
【解決手段】有機EL素子の製造方法は、第1電極と第2電極との間に有機EL材料からなる有機発光層を含んだ複数の有機層からなる有機機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、基板上に第1電極を形成する工程(ステップS10)と、第1電極上に有機機能層を形成する工程(ステップS20〜S40)と、を含み、有機機能層を形成する工程では、有機発光層の液状の形成材料をスピンコート法で所定の位置に配した後、これを固化して有機発光層を形成し、有機発光層を除く複数の有機層のうちの少なくとも1層の液状の形成材料を液滴吐出法で所定の位置に配した後、これを固化して有機発光層を除く複数の有機層のうちの少なくとも1層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子の製造方法及び有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electroluminescence)素子は、薄型、全固体型、面状自発光及び高速応答であるといった特徴を有する発光装置であり、フラットディスプレイパネルやバックライトへの応用が期待されている。また、近年では、発光材料の三重項励起状態に起因する燐光を発光に用いる高効率な有機EL素子が提案されている。燐光材料が注目されているのは、燐光材料が原理的に高効率化を実現しやすい材料であると考えられているからである。すなわち、キャリア再結合により生成される励起子が一重項励起子と三重項励起子とからなり、その確率が1:3である。一重項を利用した有機EL素子では、一重項励起子から基底状態に遷移する際の蛍光を発光として取り出していたが、原理的にその発光収率が生成された励起子数に対して25%であってこれが原理的上限であった。しかし、三重項から発生する励起子からの燐光を用いれば、原理的に少なくとも3倍の収率が期待される。さらに、燐光を用いることにより、エネルギー的に高い一重項から三重項への項間交差による転移を考え合わせれば、原理的には4倍の100%の発光収率が期待できる。
【0003】
ところで、このような有機EL素子における有機発光層を構成する材料としては、大きく分けて高分子系のものと低分子系のものとに分類される。高分子系材料は、有機溶媒に対する溶解性が比較的高いため、インクジェット法等の液滴吐出法による選択塗布が可能となる。一方、低分子系材料は、高分子系材料と比較して発光特性に優れている。
【0004】
そして、液滴吐出法等の湿式法により形成された高分子系材料を用いた有機EL素子では、正孔注入層から発光層への正孔注入を促進するために高い導電性を有する有機膜を正孔注入層として用いている。
【0005】
また、このような有機発光層を形成する方法としては、蒸着と塗布とに大別される。その蒸着の場合は、真空蒸着法によって主に溶解性の悪い低分子材料を用い有機薄膜を形成している。
【0006】
一方、塗布の場合は、溶解性の高い高分子材料や低分子材料を溶媒に溶解あるいは分散させて、スピンコート法やインクジェット法により有機発光層を形成している。特にインクジェット法は、スピンコート法と比較して有機発光材料を無駄にせず、かつオンデマンドで微細パターニングを成膜する手段として大変有効である。
【0007】
しかしながら、インクジェット法で作成した素子は高沸点溶媒の使用や成膜プロセス等の起因により、スピンコート法で作成した素子と比較して素子特性が大幅に低下してしまう傾向がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.Sekine,FPD international 2008 Forum B-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、インクジェット法で作成した素子は高沸点溶媒の使用や成膜プロセス等の起因により、スピンコート法で作成した素子と比較して素子特性が大幅に低下してしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]第1電極と第2電極との間に有機EL材料からなる有機発光層を含んだ複数の有機層からなる有機機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、基板上に前記第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に前記有機機能層を形成する工程と、を含み、前記有機機能層を形成する工程では、前記有機発光層の液状の形成材料をスピンコート法で所定の位置に配した後、これを固化して前記有機発光層を形成し、前記有機発光層を除く前記複数の有機層のうちの少なくとも1層の液状の形成材料を液滴吐出法で所定の位置に配した後、これを固化して前記有機発光層を除く前記複数の有機層のうちの少なくとも1層を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0012】
発明者は、液滴吐出法において素子特性の低下をもたらしているのは発光層形成工程にあることを突き止めた。そこで鋭意研究の結果、正孔注入層及び正孔輸送層(又は注入輸送層)までを液滴吐出法で形成し、発光層をスピンコート法で形成する手法を得ることに成功し、その知見をもとに本発明を完成した。
【0013】
これによれば、正孔注入層と正孔輸送層までを液滴吐出法で積層し、発光層をスピンコート法で積層することで、全層をスピンコート法で積層した素子と比較して同等の性能を有し、かつ、材料コストを大幅に低減できる有機EL素子の製造方法を提供することができる。
【0014】
[適用例2]上記有機EL素子の製造方法であって、前記有機機能層を形成する工程では、前記有機機能層のうちの前記有機発光層を除く全ての前記複数の有機層を液滴吐出法で形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0015】
これによれば、材料コストを大幅に低減できる。
【0016】
[適用例3]上記有機EL素子の製造方法であって、前記有機機能層を形成する工程では、全ての前記複数の有機層を高分子材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0017】
これによれば、有機溶媒に対する溶解性が比較的高いため、液滴吐出法による選択塗布が容易になる。
【0018】
[適用例4]上記有機EL素子の製造方法であって、前記有機機能層を形成する工程では、全ての前記複数の有機層を低分子材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0019】
これによれば、発光特性の高い有機発光層を形成できる。
【0020】
[適用例5]上記有機EL素子の製造方法であって、前記有機機能層を形成する工程では、前記複数の有機層を高分子材料で構成する第1の層と低分子材料で構成する第2の層とで形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0021】
これによれば、スピンコート法や液滴吐出法による塗布方法の使い分けが容易になる。
【0022】
[適用例6]上記有機EL素子の製造方法であって、前記有機機能層を形成する工程では、前記有機発光層を蛍光材料を含有する液状の形成材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0023】
これによれば、発光特性の高い有機発光層を容易に形成できる。
【0024】
[適用例7]上記有機EL素子の製造方法であって、前記有機機能層を形成する工程では、前記有機発光層を燐光材料を含有する液状の形成材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0025】
これによれば、より発光特性の高い有機発光層を容易に形成できる。
【0026】
[適用例8]上記1〜7のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法によって製造されていることを特徴とする有機EL素子。
【0027】
これによれば、全層をスピンコート法で積層した素子と比較して同等の性能を有し、かつ、材料コストを大幅に低減できる有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1、2の実施形態に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図。
【図2】第1、2、9の実施形態に係る有機EL素子を拡大して示す側断面構成図。
【図3】(A)は、実施例1、5、9、11、13に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート、(B)は、実施例2、6、10、12、14に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。
【図4】(A)は、比較例1、7、11、13、15に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート、(B)は、比較例2、8、12、14、16に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。
【図5】第3、4の実施形態に係る有機EL素子を拡大して示す側断面構成図。
【図6】実施例3、4、15に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。
【図7】(A)は、比較例3、5、17に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート、(B)は、比較例4、6、18に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。
【図8】第5、7、8の実施形態に係る有機EL素子を拡大して示す側断面構成図。
【図9】第6の実施形態に係る有機EL素子を拡大して示す側断面構成図。
【図10】(A)は、実施例7に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート、(B)は、実施例8に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。
【図11】(A)は、比較例9に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート、(B)は、比較例10に係る有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。
【図12】第10の実施形態に係る有機EL素子を拡大して示す側断面構成図。
【図13】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図。
【図14】(A)は、本実施形態に係る携帯電話の一例を示した斜視図、(B)は、本実施形態に係るワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図、(C)は、本実施形態に係る腕時計型電子機器の一例を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、実施形態について図を参照しつつ説明する。実施形態の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、構造の特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造はその寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせて示す場合がある。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る有機EL装置2の配線構造を示す模式図である。本実施形態の有機EL装置2は、スイッチング素子として薄膜トランジスター(以下、TFTと称す)を用いたアクティブマトリクス方式のものである。有機EL装置2は、図1に示すように、複数の走査線10と、走査線10に直交して延びる複数の信号線12と、それぞれの信号線12に並列に延びる複数の電源線14と、を備えている。信号線12には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を有する信号線駆動回路16が接続されている。また、走査線10には、シフトレジスター及びレベルシフターを有する走査線駆動回路18が接続されている。
【0031】
また、走査線10及び信号線12により区画される領域には、画素20が設けられている。画素20は、発光素子として機能する有機EL素子4と、有機EL素子4に供給される電気信号をスイッチングするスイッチング素子と、前記電気信号を保持する保持容量24と、を備えている。本実施形態では、前記スイッチング素子として、第1スイッチング素子26と第2スイッチング素子28とを備えている。
【0032】
第1スイッチング素子26のソース電極は、信号線12から分岐されたものであり、第1スイッチング素子26のドレイン電極は、第2スイッチング素子28のゲート電極に電気的に接続されている。また、第1スイッチング素子26の能動層は、ゲート絶縁膜を介して信号線12と重なり合うように設けられており、重なり合う部分の信号線12がゲート電極として機能するようになっている。
【0033】
第2スイッチング素子28のソース電極は、電源線14から分岐されたものであり、第2スイッチング素子28のドレイン電極は、有機EL素子4の画素電極(後述する)と電気的に接続されている。保持容量24は、その一端が第1スイッチング素子26のドレイン電極と第2スイッチング素子28のゲート電極との間に電気的に接続されているともに、他端が電源線14に電気的に接続されている。保持容量24により、第2スイッチング素子28のゲート電極に印加された電圧を一定期間保持することができるようになっている。
【0034】
このような構成により、走査線駆動回路18から所定のタイミングで発せられた電気信号は、走査線10を介して第1スイッチング素子26のゲート電極に供給され、第1スイッチング素子26をオンにする。第1スイッチング素子26がオンになると、信号線駆動回路16からの電気信号は、信号線12を介して第1スイッチング素子26のソース電極に供給され、第1スイッチング素子26の能動層及びドレイン電極を介して、第2スイッチング素子28のゲート電極に供給されこれをオンにする。第2スイッチング素子28がオンになると、電源線14からの電気信号は、第2スイッチング素子28のソース電極及びドレイン電極を介して有機EL素子4の画素電極に供給される。このように、有機EL素子4に所定の電気信号が所定のタイミングで供給されるようになっている。
【0035】
図2は、本実施形態に係る有機EL素子4を拡大して示す側断面構成図である。本実施形態の有機EL素子4は、図2に示すように、TFT基板22上に順に形成された画素電極(第1電極)30、有機機能層32、及び共通電極(第2電極)34を備えている。画素電極30は島状に形成されており、画素電極30の間には、シリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)等からなる絶縁部36が形成されている。絶縁部36は、画素電極30の端部を覆うとともに、画素電極30の中央部上を開口させて形成されている。この開口内に露出した画素電極30上が発光領域Lとなっており、発光領域Lの間が非発光領域Bとなっている。また、有機機能層32は、発光領域L及び非発光領域Bに配設されている。
【0036】
本実施形態では、画素電極30が陽極として機能するようになっており、共通電極34が陰極として機能するようになっている。画素電極30は、第2スイッチング素子28のドレイン電極に電気的に接続されている。第2スイッチング素子28のソース電極は、電源線14を介して有機EL装置2の内部又は外部に設けられた電源(図示略)と接続可能とされており、共通電極34は、配線等を介して電源と接続可能とされている。
【0037】
TFT基板22は、ガラス等からなる基板上に、図1に示した第1スイッチング素子26や第2スイッチング素子28等のスイッチング素子、走査線10や信号線12、電源線14等の各種配線等が形成されたものである。
【0038】
画素電極30は、仕事関数が高い(例えば5eV以上)導電材料、具体的にはITO(インジウム錫酸化物)等からなっており、画素電極30から有機機能層32に正孔(キャリア)が効率的に供給されるようになっている。また、ITOは透光性を有する材料であり、有機機能層32から発せられた光を画素電極30側から取り出すことが可能となっている。
【0039】
共通電極34は、仕事関数が低い(例えば5eV以下)材料からなっている。仕事関数が低い材料としては、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物であるフッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体等が挙げられる。本実施形態では、有機機能層32上に図示略のカルシウム層及びアルミニウム層が順に形成された多層構造となっている。カルシウム層は、有機機能層32に電子を注入する電子注入層、あるいは有機機能層32に電子を輸送する電子輸送層等として機能するようになっており、アルミニウム層は共通電極34を低抵抗化するとともに有機機能層32から発せられた光を画素電極30側に反射する反射層としても機能するようになっている。
【0040】
有機機能層32は、有機EL材料からなる有機発光層42を有するものである。有機機能層32は、画素電極30側から正孔注入層38、有機発光層42が順次積層された構造や、正孔注入層38と有機発光層42との間に正孔輸送層40を設けた構造、正孔注入層38に替えて正孔注入輸送層を設けた構造、さらに有機発光層42の共通電極34側に電子注入(輸送)層を設けた構造等を用いることができる。
【0041】
有機機能層32の形成材料としては、公知のものを用いることができ、具体的には以下のようなものが挙げられる。
【0042】
正孔注入層38の形成材料として、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体等が挙げられる。
【0043】
正孔輸送層40の形成材料としては、TAPC、TPD、α−NPD、m−MTDATA、2−TNATA、TCTA、スピロ−TAD、(DTP)DPPD、HTM1、TPTE1、NTPA、TFLTF、ポリフルオレン誘導体(PF)やポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系有機高分子材料等が挙げられる。
【0044】
有機発光層42の形成材料としては、前記した正孔輸送層40の形成材料の他、ペニレン系色素や、クマリン系色素、ローダミン系色素等の有機高分子材料、あるいはこれら有機高分子材料に例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子有機材料をドープしたもの、CBP(4.4.−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体、PtOEP(白金ポルフィリン錯体)誘導体、Ir(ppy)3(イリジウム錯体)誘導体、FIrpic(イリジウム錯体)誘導体等の燐光材料等が挙げられる。
【0045】
具体的には、高分子材料を有機発光層42として用いた場合、Poly[{2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylenephenylene)}-co-{2,5-bis(N,N'-diphenylamino)-1,4-phenylenel]等の赤色発光材料や、Poly[(9,9-dioctylfuorenyl-2,7-diyl)-co-(1,4-benzo-(2,1’,3)-thiadiazole)]等の緑色発光材料、Poly[(9,9-dihexylfuorenyl)-co-(9,10-anthracene)]等の青色発光材料等が挙げられる。
【0046】
また、低分子材料を有機発光層42として用いた場合、ホスト材料としてCBP等、蛍光ゲスト材料としてDCM等の赤色発光材料が、キナクリドン等の緑色発光材料、ペリレン等の青色発光材料が、燐光ゲスト材料としてPtOEP等の赤色発光材料、IrPPy等の緑色発光材料、FIrpic等の青色発光材料等が挙げられる。
【0047】
電子輸送層56の材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フェナンソロリン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ヒドロキシキノリン誘導体等が挙げられる。
【0048】
以上のような構成により、有機EL素子4が電源と電気的に接続された状態で第2スイッチング素子28のゲート電極に電気信号が伝わりこれがオンになると、画素電極30と共通電極34との間に所定の電圧(電気信号)が印加(供給)される。これにより、画素電極30から正孔注入層38に正孔が供給され、この正孔は正孔注入層38及び正孔輸送層40を通って有機発光層42に運ばれる。正孔注入層38は、PEDOT/PSSからなる低抵抗のものであり、正孔はその厚さ方向に良好に輸送されて有機発光層42に注入される。
【0049】
有機発光層42においては、注入された正孔が共通電極34側から供給された電子と再結合することにより、前記電気信号に応じた光を発するようになっている。
【0050】
画素電極30側に発せられた光がTFT基板22側から取り出されるとともに、共通電極34側に発せられた光も共通電極34により反射されてTFT基板22側から取り出されるようになっている。取り出された光は、画像形成や画像表示等に用いることができるようになっている。
【0051】
ここで、赤色の画素20における積層体には、赤色の色光を発する発光層が形成されている。同様に、緑色の画素20の積層体には緑色の色光を発する発光層が形成されており、青色の画素20の積層体には青色の色光を発する発光層が形成されている。なお、各発光層が赤色、緑色、青色の異なる色光を発する3色方式に限定するものではなく、例えば、発光層は白色の単色で、画素ごとに赤色、緑色、青色のカラーフィルターを備えたカラーフィルター方式であってもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、ボトムエミッション型の有機EL装置2の構成例を説明したが、トップエミッション型の有機EL装置を採用することもでき、いずれの型を採用した場合でも本実施形態の効果を得ることができる。
【0053】
[第2の実施形態]
次に、第1の実施形態の有機EL素子4に基づいて有機EL素子の製造方法を説明する。本実施形態に係る有機EL素子4の製造方法は、全有機機能層32の形成材料として、高分子材料が用いられる。
【0054】
(実施例1)
図3(A)は、本実施例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS10)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS20)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS30)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS40)と、共通電極34を形成する工程(ステップS50)とを備えている。
【0055】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入層38を形成し、スピンコート法を用いて、正孔輸送層40及び有機発光層42を形成する。以下、図3(A)のフローチャートに従い、図1及び図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0056】
まず、有機EL素子形成用の基板を用意する。本実施例では、前記のTFT基板22を基板に用いる。TFT基板22は、例えばガラス等からなる基板上に、図1に示した第1スイッチング素子26や第2スイッチング素子28等のスイッチング素子、走査線10や信号線12、電源線14等の各種配線等が形成されたものである。これらは公知の形成材料や形成方法を用いて形成することができる。
【0057】
次に、図2に示すように、TFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する(ステップS10)。具体的には、TFT基板22上にITO等の導電材料を成膜した後、この膜を公知のフォトリソグラフィ法及びエッチング技術等を用いてパターニングすることにより島状の画素電極30を形成する。そして、画素電極30及びTFT基板22を覆ってシリコン酸化物を成膜した後、この膜をパターニングして画素電極30上を開口する。これにより、画素電極30の周縁部を覆うとともに、画素電極30の所定の部分を露出させる開口部を有する絶縁部36を形成する。ここでは、開口部内に露出した画素電極30上が発光領域Lとし、発光領域Lの間が非発光領域Bとする。
【0058】
次に、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS10)。隔壁48は、公知の形成材料や形成方法を用いて形成することができる。例えば画素電極30及び絶縁部36を覆って樹脂材料を成膜した後、この樹脂膜をパターニングして画素電極30や必要に応じて絶縁部36の周縁部を露出させる開口部を形成することにより隔壁48を形成する。なお、TFT基板22及び画素電極30を覆って絶縁部36の形成材料を成膜した後、この膜上に隔壁48の形成材料を成膜し、次いで隔壁48の材料膜及び絶縁部36の材料膜を順にパターニングするようにしてもよい。
【0059】
次に、隔壁48の間に配した溶液に150℃で焼成処理を行って、正孔注入層38を形成する(ステップS20)。具体的には、有機機能層32の液状の形成材料を液滴吐出ヘッド(図示せず)から吐出して、これを隔壁48の間に層厚50〜60nmの層を選択的に配する。本実施例では、正孔注入層38の形成材料として、安定した吐出を可能にするため、前記第1の実施形態で用いたPEDOT/PSS分散液に溶媒を添加して粘度を調整した溶液を用いる。溶液としては、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスソルアミド(HMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類の高沸点溶媒等を用いることができる。溶液の粘度を、1〜3wt%の溶液において2〜20cps程度とすることが好ましく、7〜10cps程度とすることがより好ましい。このようにすれば、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに詰まりを生じることなく溶液を安定に吐出することができる。
【0060】
次に、正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS30)。具体的には、正孔輸送層40の形成材料であるTFBを1.5wt%のキシレン溶液とし、この溶液を正孔注入層38上にスピンコート法で塗布し、次いでこの塗布膜を窒素雰囲気において180℃程度の温度で1時間程度加熱して乾燥させる。次いで、その表面をキシレン溶媒で洗浄し、キシレン溶媒に対して可溶な表層を除去するとともに不溶な層を残して、厚さが10〜20nm程度の正孔輸送層40を形成する。
【0061】
正孔輸送層40の形成材料としては、TFBが好適に用いられる。TFBは、正孔注入層38と有機発光層42の間に配設されることにより、正孔注入層38から有機発光層42への正孔の輸送を容易にする機能を有しており、したがって得られる有機EL装置2(有機EL素子4)の発光特性をより良好にすることができる。
【0062】
正孔輸送層40の形成材料については前記材料に限定されることなく、TFBに代えて、例えばF8−TPA等、従来公知の種々の正孔輸送材料を用いることができる。なお、このような正孔輸送層40にも、後述するように、前記正孔注入層38中に含まれている金属成分が、量的には少ないものの含まれている。
【0063】
次に、正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS40)。具体的には、高分子材料の赤色発光材料を、1.8wt%のキシレン溶液とし、この溶液を正孔輸送層40上にスピンコート法で塗布し、次いでこの塗布膜を窒素雰囲気において130℃程度の温度で30分程度加熱して焼成し、厚さが60〜80nm程度の有機発光層42を形成する。
【0064】
次に、有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS50)。具体的には、有機発光層42上に、例えば真空度が10-6Torr(1.33×10-4Pa)の雰囲気でカルシウムを真空蒸着法により10nm程度の厚さに成膜した後、同様の条件下でアルミニウム(Al)を200nm程度の厚さに成膜して、カルシウム膜とアルミニウム膜とからなる共通電極34(図2参照)を形成する。このようにして、図2に示した有機EL素子4が得られる。
【0065】
(実施例2)
次に、実施例1と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図3(B)は、本実施例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS60)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS70)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS80)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS90)と、共通電極34を形成する工程(ステップS100)とを備えている。
【0066】
本実施例が実施例1と異なる点は、液滴吐出法を用いて、正孔輸送層40を形成する点である。以下、図3(B)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0067】
まず、図2に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS60)。
【0068】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に、正孔注入層38を形成する(ステップS70)。
【0069】
次に、正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS80)。具体的には、正孔輸送層40の形成材料として、実施例1で用いたTFBを0.9wt%のシクロヘキシルベンゼン溶液とし、これを正孔注入層38と同様に液滴吐出法で隔壁48の間に配する。次いで、配した溶液を窒素雰囲気において180℃程度の温度で1時間程度加熱して乾燥させる。次いで、その表面をキシレン溶媒で洗浄し、キシレン溶媒に対して可溶な表層を除去するとともに不溶な層を残して、厚さが10〜20nm程度の正孔輸送層40を形成する。
【0070】
次に、実施例1と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS90)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS100)。このようにして、図2に示した有機EL素子4が得られる。
【0071】
(比較例1)
次に、実施例1及び2と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(A)は、本比較例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS110)と、正孔注入層38をスピンコート法で形成する工程(ステップS120)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS130)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS140)と、共通電極34を形成する工程(ステップS150)とを備えている。
【0072】
本比較例が実施例1及び2と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(A)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0073】
まず、図2に示すように、本比較例においても、実施例1及び2と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS110)。
【0074】
次に、隔壁48の間に正孔注入層38を形成する(ステップS120)。具体的には、画素電極30が形成されたTFT基板22上に、正孔注入層38を形成した後、この上に正孔輸送層40を形成し、次いでこの上に有機発光層42を形成する。具体的には、例えばポリチオフェン誘導体である3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)をポリスチレンスルフォン酸(PSS)に分散させ、さらにこれを水に分散させたPEDOT/PSS溶液を画素電極30及びTFT基板22上に一括して成膜する。ここでは、PEDOT/PSS溶液をスピンコート法で塗布しこの塗布膜を150℃程度で焼成して、厚さが50〜60nm程度の正孔注入層38を形成する。
【0075】
正孔注入層38の形成材料としては、特に、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液が好適に用いられる。このPEDOT/PSSは、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に、ポリチオフェン誘導体である3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させたものである。このPEDOT/PSSは、特にポリスチレンスルフォン酸(PSS)が水との結合によって強酸性を呈するものである。ここで、この正孔注入層38中には、後述する手法により、金属イオン等の金属成分がほぼ均一に分布した状態で含まれている。
【0076】
なお、正孔注入層38の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体等を、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0077】
次に、実施例1と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS130)。
次に、実施例1と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS140)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS150)。
【0078】
(比較例2)
次に、実施例1及び2と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(B)は、本比較例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS160)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS170)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS180)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS190)と、共通電極34を形成する工程(ステップS200)とを備えている。
【0079】
本比較例が実施例1及び2と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(B)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0080】
まず、図2に示すように、本比較例においても、実施例1及び2と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS160)。
【0081】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS170)。
次に、実施例2と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS180)。
【0082】
次に、正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS190)。具体的には、有機発光層42の形成材料として、赤色発光材料を1.5wt%のシクロヘキシルベンゼン溶液とし、これを正孔注入層38等と同様に液滴吐出法で隔壁48の間に配する。ここでも、溶液の粘度を調整することにより溶液を安定に吐出することができる。次いで、配した溶液を窒素雰囲気において130℃程度の温度で30分程度加熱して焼成し、厚さが60〜80nm程度の有機発光層42を形成する。ここで、赤色発光材料として、実施例1と同様な材料が用いられる。
【0083】
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS200)。
【0084】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4を初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表1に示す。なお、表1には、全層スピンコート法で作成した比較例1の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0085】
【表1】

【0086】
本実施形態によれば、表1に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した素子より半減時間が22%まで低下した。一方、正孔注入層38を液滴吐出法で積層し、正孔輸送層40及び有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4と同等の半減時間が得られた。
【0087】
さらには正孔注入層38及び正孔輸送層40を液滴吐出法で積層し、有機発光層42のみをスピンコート法で積層すれば全層スピンコート法で作成した有機EL素子4と同等の寿命特性を得ることが可能となった(図示しないが、他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0088】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4の材料利用効率を表2に示す。なお、表2には、全層スピンコート法で作成した比較例1の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0089】
【表2】

【0090】
本実施形態によれば、表2に示すように、材料利用効率は、正孔注入層38のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の40倍となった。さらに、正孔注入層38及び正孔輸送層40まで液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の50倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0091】
[第3の実施形態]
次に、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
図5は、本実施形態に係る有機EL素子4Aを拡大して示す側断面構成図である。本実施形態に係る有機EL素子4Aの製造方法は、全有機機能層32の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。なお、有機発光層42の形成材料として、蛍光材料が用いられている。
【0092】
(実施例3)
図6は、本実施例に係る有機EL素子4Aの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Aの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS210)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS220)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS230)と、共通電極34を形成する工程(ステップS240)とを備えている。
【0093】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入輸送層52を形成し、スピンコート法を用いて、有機発光層42を形成する。以下、図6のフローチャートに従い、図5を用いて有機EL素子4Aの製造方法について説明する。
【0094】
まず、図5に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS210)。
【0095】
次に、隔壁48の間に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS220)。具体的には、正孔注入輸送層52の形成材料として、VB−TCTAを0.3wt%のジクロロベンゼン溶液とし、この溶液を液滴吐出法で隔壁48の間に配する。ここでも、溶液の粘度を調整することにより溶液を安定に吐出することができる。次いで、配した溶液を窒素雰囲気において180℃程度の温度で30分程度加熱して乾燥させ有機溶媒に対して不溶な厚さが20nm程度の正孔注入輸送層52を形成する。
【0096】
次に、正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS230)。具体的には、赤色発光材料のCBP−DCMを、0.5wt%のトルエン溶液とし、この溶液を正孔注入輸送層52上にスピンコート法で塗布し、次いでこの塗布膜を窒素雰囲気において130℃程度の温度で30分程度加熱して焼成し、厚さが30〜40nm程度の有機発光層42を形成する。ここで、ホスト材料にはCBP(ビフェニル)、蛍光ゲスト材料には4一(ジシアノ−メチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4−ピラン(DCM)が用いられる。
【0097】
次に、有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS240)。具体的には、有機発光層42上に、例えば真空度が10-6Torr(1.33×10-4Pa)の雰囲気で真空蒸着法により、層厚30nmのBCP(バソキュプロイン)層を積層して正孔ブロック層54を形成し、その上に層厚30nmのAlq3(トリス−8−キノリノラトアルミニウム錯体)層及び層厚1nmのLiF(フッ化リチウム)層を順次積層して電子輸送層56を形成し、その上に層厚200nmのAl層を積層して共通電極34を形成する。このようにして、図5に示した有機EL素子4Aが得られる。
【0098】
(比較例3)
次に、実施例3と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図7(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Aの製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4Aの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS250)と、正孔注入輸送層52をスピンコート法で形成する工程(ステップS260)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS270)と、共通電極34を形成する工程(ステップS280)とを備えている。
【0099】
本比較例が実施例3と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図7(A)のフローチャートに従い、図5を用いて有機EL素子4Aの製造方法について説明する。
【0100】
まず、図5に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS250)。
【0101】
次に、隔壁48の間に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS260)。具体的には、画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52としてVB−TCTAを0.9wt%塩化メチレン溶液としスピンコート法により20nm形成し、窒素雰囲気下において180℃、30分、加熱し塗布膜を焼成し、有機溶媒に不溶な正孔注入輸送層52を形成する。
【0102】
次に、実施例3と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS270)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS280)。
【0103】
(比較例4)
次に、実施例3と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図7(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Aの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Aの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS290)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS300)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS310)と、共通電極34を形成する工程(ステップS320)とを備えている。
【0104】
本比較例が実施例3と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図7(B)のフローチャートに従い、図5を用いて有機EL素子4Aの製造方法について説明する。
【0105】
まず、図5に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS290)。
【0106】
次に、実施例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS300)。
【0107】
次に、正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS310)。具体的には、赤色発光材料のCBP−DCMを、0.5wt%のジクロロベンゼン溶液とし、この溶液を正孔注入輸送層52上に液滴吐出法で吐出し、次いでこの吐出膜を窒素雰囲気において130℃程度の温度で30分程度加熱して焼成し、厚さが30〜40nm程度の有機発光層42を形成する。ここで、ホスト材料にはCBP、蛍光ゲスト材料にはDCMが用いられる。
【0108】
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS320)。
【0109】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Aを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表3に示す。なお、表3には、全層スピンコート法で作成した比較例3の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0110】
【表3】

【0111】
本実施形態によれば、表3に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Aより半減時間が40%まで低下した。一方、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で積層し、有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Aの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Aと同等の半減時間が得られた(他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0112】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Aの材料利用効率を表4に示す。なお、表4には、全層スピンコート法で作成した比較例3の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0113】
【表4】

【0114】
本実施形態によれば、表4に示すように、材料利用効率は、正孔注入輸送層52のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の30倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0115】
[第4の実施形態]
次に、第3の実施形態と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。本実施形態が第3の実施形態と異なる点は、全有機機能層32の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。なお、有機発光層42の形成材料として、燐光材料が用いられている。
【0116】
(実施例4)
図6は、本実施例に係る有機EL素子4Aの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Aの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS210)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS220)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS230)と、共通電極34を形成する工程(ステップS240)とを備えている。
【0117】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入輸送層52を形成し、スピンコート法を用いて、有機発光層42を形成する。以下、図6のフローチャートに従い、図5を用いて有機EL素子4Aの製造方法について説明する。
【0118】
まず、図5に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS210)。
【0119】
次に、実施例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS220)。
【0120】
次に、正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS230)。具体的には、赤色発光材料のCBP−PtOEPを、0.5wt%の塩化メチレン溶液とし、この溶液を正孔注入輸送層52上にスピンコート法で塗布し、次いでこの塗布膜を窒素雰囲気において130℃程度の温度で30分程度加熱して焼成し、厚さが30〜40nm程度の有機発光層42を形成する。ここで、ホスト材料にはCBP、燐光ゲスト材料にはPtOEPが用いられる。
【0121】
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS240)。このようにして、図5に示した有機EL素子4Aが得られる。
【0122】
(比較例5)
次に、実施例4と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図7(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Aの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Aの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS250)と、正孔注入輸送層52をスピンコート法で形成する工程(ステップS260)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS270)と、共通電極34を形成する工程(ステップS280)とを備えている。
【0123】
本比較例が実施例3と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図7(A)のフローチャートに従い、図5を用いて有機EL素子4Aの製造方法について説明する。
【0124】
まず、図5に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS250)。
【0125】
次に、比較例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS260)。
次に、実施例4と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS270)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS280)。
【0126】
(比較例6)
次に、実施例4と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図7(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Aの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Aの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS290)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS300)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS310)と、共通電極34を形成する工程(ステップS320)とを備えている。
【0127】
本比較例が実施例3と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図7(B)のフローチャートに従い、図5を用いて有機EL素子4Aの製造方法について説明する。
【0128】
まず、図5に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS290)。
【0129】
次に、実施例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS300)。
【0130】
次に、正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS310)。具体的には、赤色発光材料のCBP−PtOEPを、0.5wt%のジクロロベンゼン溶液とし、この溶液を正孔注入輸送層52上に液滴吐出法で吐出し、次いでこの吐出膜を窒素雰囲気において130℃程度の温度で30分程度加熱して焼成し、厚さが30〜40nm程度の有機発光層42を形成する。ここで、ホスト材料にはCBP、燐光ゲスト材料にはPtOEPが用いられる。
【0131】
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS320)。
【0132】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Aを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表5に示す。なお、表5には、全層スピンコート法で作成した比較例5の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0133】
【表5】

【0134】
本実施形態によれば、表5に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Aより半減時間が26%まで低下した。一方、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で積層し、有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Aの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Aと同等の半減時間が得られた(他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0135】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Aの材料利用効率を表6に示す。なお、表6には、全層スピンコート法で作成した比較例5の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0136】
【表6】

【0137】
本実施形態によれば、表6に示すように、材料利用効率は、正孔注入輸送層52のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の30倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0138】
[第5の実施形態]
次に、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
図8は、本実施形態に係る有機EL素子4Bを拡大して示す側断面構成図である。本実施形態に係る有機EL素子4Bの製造方法は、正孔注入層38の形成材料として、高分子材料が用いられ、正孔輸送層40及び有機発光層42の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。なお、有機発光層42の形成材料として、燐光材料が用いられている。
【0139】
(実施例5)
図3(A)は、本実施例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS10)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS20)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS30)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS40)と、共通電極34を形成する工程(ステップS50)とを備えている。
【0140】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入層38を形成し、スピンコート法を用いて、正孔輸送層40及び有機発光層42を形成する。以下、図3(A)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0141】
まず、図8に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS10)。
【0142】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS20)。
【0143】
次に、正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS30)。具体的には、正孔輸送層40の形成材料として、VB−TCTAを0.9wt%の塩化メチレン溶液とし、この溶液を正孔注入層38上にスピンコート法で塗布し、次いでこの塗布膜を窒素雰囲気において180℃程度の温度で30分程度加熱して乾燥させ有機溶媒に対して不溶な厚さが20nm程度の正孔輸送層40を形成する。
【0144】
次に、実施例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS40)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS50)。このようにして、図8に示した有機EL素子4Bが得られる。
【0145】
(実施例6)
次に、実施例5と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図3(B)は、本実施例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS60)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS70)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS80)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS90)と、共通電極34を形成する工程(ステップS100)とを備えている。
【0146】
本実施例が実施例5と異なる点は、液滴吐出法を用いて、正孔輸送層40を形成する点である。以下、図3(B)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0147】
まず、図8に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS60)。
【0148】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS70)。
【0149】
次に、正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS80)。具体的には、正孔輸送層40の形成材料として、VB−TCTAを0.3wt%のジクロロベンゼン溶液とし、この溶液を正孔注入層38上に液滴吐出法で吐出し、次いでこの吐出膜を窒素雰囲気において180℃程度の温度で30分程度加熱して乾燥させ有機溶媒に対して不溶な厚さが20nm程度の正孔輸送層40を形成する。
【0150】
次に、実施例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS90)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS100)。このようにして、図8に示した有機EL素子4Bが得られる。
【0151】
(比較例7)
次に、実施例5及び6と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS110)と、正孔注入層38をスピンコート法で形成する工程(ステップS120)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS130)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS140)と、共通電極34を形成する工程(ステップS150)とを備えている。
【0152】
本比較例が実施例5及び6と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(A)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0153】
まず、図8に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS110)。
【0154】
次に、比較例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS120)。ここで、正孔注入層38の材料として、比較例1と同様な材料が用いられる。
次に、実施例5と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS130)。
次に、実施例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS140)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS150)。
【0155】
(比較例8)
次に、実施例5及び6と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS160)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS170)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS180)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS190)と、共通電極34を形成する工程(ステップS200)とを備えている。
【0156】
本比較例が実施例5及び6と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(B)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0157】
まず、図8に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS160)。
【0158】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS170)。
次に、実施例6と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS180)。
次に、比較例6と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS190)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS200)。
【0159】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Bを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表7に示している。なお、表7には、全層スピンコート法で作成した比較例7の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0160】
【表7】

【0161】
本実施形態によれば、表7に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Bより半減時間が30%まで低下した。一方、正孔注入層38を液滴吐出法で積層し、正孔輸送層40及び有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Bの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Bと同等の半減時間が得られた。
【0162】
さらには正孔注入層38及び正孔輸送層40を液滴吐出法で積層し、有機発光層42のみをスピンコート法で積層すれば全層スピンコート法で作成した有機EL素子4Bと同等の寿命特性を得ることが可能となった(図示しないが、他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0163】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Bの材料利用効率を表8に示す。なお、表8には、全層スピンコート法で作成した比較例7の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0164】
【表8】

【0165】
本実施形態によれば、表8に示すように、材料利用効率は、正孔注入層38のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の40倍となった。さらに、正孔注入層38及び正孔輸送層40まで液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の50倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0166】
[第6の実施形態]
次に、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
図9は、本実施形態に係る有機EL素子4Cを拡大して示す側断面構成図である。本実施形態に係る有機EL素子4Cの製造方法は、正孔注入層38の形成材料として、高分子材料が用いられ、正孔注入輸送層52及び有機発光層42の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。なお、有機発光層42の形成材料として、蛍光材料が用いられている。
【0167】
(実施例7)
図10(A)は、本実施例に係る有機EL素子4Cの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Cの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS330)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS340)と、正孔注入輸送層52をスピンコート法で形成する工程(ステップS350)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS360)と、共通電極34を形成する工程(ステップS370)とを備えている。
【0168】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入層38を形成し、スピンコート法を用いて、正孔注入輸送層52及び有機発光層42を形成する。以下、図10(A)のフローチャートに従い、図9を用いて有機EL素子4Cの製造方法について説明する。
【0169】
まず、図9に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS330)。
【0170】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS340)。
次に、比較例3と同様に正孔注入層38上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS350)。
次に、実施例3と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS360)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS370)。このようにして、図9に示した有機EL素子4Cが得られる。
【0171】
(実施例8)
次に、実施例7と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図10(B)は、本実施例に係る有機EL素子4Cの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Cの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS380)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS390)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS400)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS410)と、共通電極34を形成する工程(ステップS420)とを備えている。
【0172】
本実施例が実施例7と異なる点は、液滴吐出法を用いて、正孔注入輸送層52を形成する点である。以下、図10(B)のフローチャートに従い、図9を用いて有機EL素子4Cの製造方法について説明する。
【0173】
まず、図9に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS380)。
【0174】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS390)。
次に、実施例3と同様に正孔注入層38上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS400)。
次に、実施例3と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS410)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS420)。このようにして、図9に示した有機EL素子4Cが得られる。
【0175】
(比較例9)
次に、実施例7及び8と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図11(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Cの製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4Cの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS430)と、正孔注入層38をスピンコート法で形成する工程(ステップS440)と、正孔注入輸送層52をスピンコート法で形成する工程(ステップS450)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS460)と、共通電極34を形成する工程(ステップS470)とを備えている。
【0176】
本比較例が実施例7及び8と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図11(A)のフローチャートに従い、図9を用いて有機EL素子4Cの製造方法について説明する。
【0177】
まず、図9に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS430)。
【0178】
次に、比較例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS440)。
次に、比較例3と同様に正孔注入層38上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS450)。
次に、実施例3と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS460)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS470)。
【0179】
(比較例10)
次に、実施例7及び8と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図11(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Cの製造方法を示すフローチャートである。本比較例の有機EL素子4Cの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS480)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS490)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS500)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS510)と、共通電極34を形成する工程(ステップS520)とを備えている。
【0180】
本比較例が実施例7及び8と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図11(B)のフローチャートに従い、図9を用いて有機EL素子4Cの製造方法について説明する。
【0181】
まず、図9に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS480)。
【0182】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS490)。
次に、実施例3と同様に正孔注入層38上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS500)。
次に、比較例4と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS510)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS520)。
【0183】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Cを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表9に示す。なお、表9には、全層スピンコート法で作成した比較例9の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0184】
【表9】

【0185】
本実施形態によれば、表9に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Cより半減時間が28%まで低下した。一方、正孔注入層38を液滴吐出法で積層し、正孔注入輸送層52及び有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Cの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Cと同等の半減時間が得られた。
【0186】
さらには正孔注入層38及び正孔注入輸送層52を液滴吐出法で積層し、有機発光層42のみをスピンコート法で積層すれば全層スピンコート法で作成した有機EL素子4Cと同等の寿命特性を得ることが可能となった(他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0187】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Cの材料利用効率を表10に示す。なお、表10には、全層スピンコート法で作成した比較例9の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0188】
【表10】

【0189】
本実施形態によれば、表10に示すように、材料利用効率は、正孔注入層38のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の40倍となった。さらに、正孔注入層38及び正孔注入輸送層52まで液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の50倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0190】
[第7の実施形態]
次に、第5の実施形態と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。本実施形態が第5の実施形態と異なる点は、正孔注入層38及び正孔輸送層40の形成材料として、高分子材料が用いられ、有機発光層42の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。なお、有機発光層42の形成材料として、燐光材料が用いられている。
【0191】
(実施例9)
図3(A)は、本実施例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS10)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS20)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS30)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS40)と、共通電極34を形成する工程(ステップS50)とを備えている。
【0192】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入層38を形成し、スピンコート法を用いて、正孔輸送層40及び有機発光層42を形成する。以下、図3(A)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0193】
まず、図8に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS10)。
【0194】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS20)。
次に、実施例1と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS30)。
次に、実施例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS40)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS50)。このようにして、図8に示した有機EL素子4Bが得られる。
【0195】
(実施例10)
次に、実施例9と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図3(B)は、本実施例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローである。本実施例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS60)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS70)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS80)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS90)と、共通電極34を形成する工程(ステップS100)とを備えている。
【0196】
本実施例が実施例9と異なる点は、液滴吐出法を用いて、正孔輸送層40を形成する点である。以下、図3(B)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0197】
まず、図8に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS60)。
【0198】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS70)。
次に、実施例2と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS80)。
次に、実施例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS90)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS100)。このようにして、図8に示した有機EL素子4Bが得られる。
【0199】
(比較例11)
次に、実施例9及び10と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS110)と、正孔注入層38をスピンコート法で形成する工程(ステップS120)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS130)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS140)と、共通電極34を形成する工程(ステップS150)とを備えている。
【0200】
本比較例が実施例9及び10と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(A)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0201】
まず、図8に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS110)。
【0202】
次に、比較例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS120)。
次に、実施例1と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS130)。
次に、実施例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS140)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS150)。
【0203】
(比較例12)
次に、実施例9及び10と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS160)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS170)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS180)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS190)と、共通電極34を形成する工程(ステップS200)とを備えている。
【0204】
本比較例が実施例9及び10と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(B)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0205】
まず、図8に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS160)。
【0206】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS170)。
次に、実施例2と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS180)。
次に、比較例6と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS190)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS200)。
【0207】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Bを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表11に示す。なお、表11には、全層スピンコート法で作成した比較例11の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0208】
【表11】

【0209】
本実施形態によれば、表11に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Bより半減時間が32%まで低下した。一方、正孔注入層38を液滴吐出法で積層し、正孔輸送層40及び有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Bの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Bと同等の半減時間が得られた。
【0210】
さらには正孔注入層38及び正孔輸送層40を液滴吐出法で積層し、有機発光層42のみをスピンコート法で積層すれば全層スピンコート法で作成した有機EL素子4Bと同等の寿命特性を得ることが可能となった(他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0211】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Bの材料利用効率を表12に示す。なお、表12には、全層スピンコート法で作成した比較例11の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0212】
【表12】

【0213】
本実施形態によれば、表12に示すように、材料利用効率は、正孔注入層38のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の40倍となった。さらに、正孔注入層38及び正孔輸送層40まで液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の50倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0214】
[第8の実施形態]
次に、第5及び7の実施形態と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。本実施形態が第5及び7の実施形態と異なる点は、正孔注入層38及び正孔輸送層40の形成材料として、高分子材料が用いられ、有機発光層42の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。なお、有機発光層42の形成材料として、蛍光材料が用いられている。
【0215】
(実施例11)
図3(A)は、本実施例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS10)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS20)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS30)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS40)と、共通電極34を形成する工程(ステップS50)とを備えている。
【0216】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入層38を形成し、スピンコート法を用いて、正孔輸送層40及び有機発光層42を形成する。以下、図3(A)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0217】
次に、図8に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS10)。
【0218】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS20)。
次に、実施例1と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS30)。
次に、実施例3と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS40)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS50)。このようにして、図8に示した有機EL素子4Bが得られる。
【0219】
(実施例12)
次に、実施例11と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図3(B)は、本実施例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローである。本実施例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS60)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS70)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS80)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS90)と、共通電極34を形成する工程(ステップS100)とを備えている。
【0220】
本実施例が実施例11と異なる点は、液滴吐出法を用いて、正孔輸送層40を形成する点である。以下、図3(B)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0221】
まず、図8に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS60)。
【0222】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS70)。
次に、実施例2と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS80)。
次に、実施例3と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS90)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS100)。このようにして、図8に示した有機EL素子4Bが得られる。
【0223】
(比較例13)
次に、実施例11及び12と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS110)と、正孔注入層38をスピンコート法で形成する工程(ステップS120)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS130)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS140)と、共通電極34を形成する工程(ステップS150)とを備えている。
【0224】
本比較例が実施例11及び12と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(A)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0225】
まず、図8に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS110)。
【0226】
次に、比較例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS120)。
次に、実施例1と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS130)。
次に、実施例3と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS140)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS150)。
【0227】
(比較例14)
次に、実施例11及び12と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Bの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Bの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS160)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS170)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS180)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS190)と、共通電極34を形成する工程(ステップS200)とを備えている。
【0228】
本比較例が実施例11及び12と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(B)のフローチャートに従い、図8を用いて有機EL素子4Bの製造方法について説明する。
【0229】
まず、図8に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS160)。
【0230】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS170)。
次に、実施例2と同様にして正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS180)。
次に、比較例4と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS190)。
次に、実施例3と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS200)。
【0231】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Bを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表13に示す。なお、表13には、全層スピンコート法で作成した比較例13の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0232】
【表13】

【0233】
本実施形態によれば、表13に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Bより半減時間が32%まで低下した。一方、正孔注入層38を液滴吐出法で積層し、正孔輸送層40及び有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Bの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Bと同等の半減時間が得られた。
【0234】
さらには正孔注入層38及び正孔輸送層40を液滴吐出法で積層し、有機発光層42のみをスピンコート法で積層すれば全層スピンコート法で作成した有機EL素子4Bと同等の寿命特性を得ることが可能となった(他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0235】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Bの材料利用効率を表14に示す。なお、表14には、全層スピンコート法で作成した比較例13の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0236】
【表14】

【0237】
本実施形態によれば、表14に示すように、材料利用効率は、正孔注入層38のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の40倍となった。さらに、正孔注入層38及び正孔輸送層40まで液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の50倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0238】
[第9の実施形態]
次に、第2の実施形態と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、正孔注入層38及び有機発光層42の形成材料として、高分子材料が用いられ、正孔輸送層40の形成材料として、低分子材料が用いられる点である。
【0239】
(実施例13)
図3(A)は、本実施例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローである。本実施例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS10)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS20)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS30)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS40)と、共通電極34を形成する工程(ステップS50)とを備えている。
【0240】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入層38を形成し、スピンコート法を用いて、正孔輸送層40及び有機発光層42を形成する。以下、図3(A)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0241】
まず、図2に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS10)。
【0242】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS20)。
次に、実施例5と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS30)。
次に、実施例1と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS40)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS50)。このようにして、図2に示した有機EL素子4が得られる。
【0243】
(実施例14)
次に、実施例13と異なる態様の有機EL素子の製造方法を説明する。
図3(B)は、本実施例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローである。本実施例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS60)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS70)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS80)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS90)と、共通電極34を形成する工程(ステップS100)とを備えている。
【0244】
本実施例が実施例13と異なる点は、液滴吐出法を用いて、正孔輸送層40を形成する点である。以下、図3(B)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0245】
まず、図2に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に、島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS60)。
【0246】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS70)。
次に、実施例6と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS80)。
次に、実施例1と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS90)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS100)。このようにして、図2に示した有機EL素子4が得られる。
【0247】
(比較例15)
次に、実施例13及び14と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(A)は、本比較例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS110)と、正孔注入層38をスピンコート法で形成する工程(ステップS120)と、正孔輸送層40をスピンコート法で形成する工程(ステップS130)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS140)と、共通電極34を形成する工程(ステップS150)とを備えている。
【0248】
本比較例が実施例13及び14と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(A)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0249】
まず、図2に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS110)。
【0250】
次に、比較例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS120)。
次に、実施例5と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS130)。
次に、実施例1と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS140)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS150)。
【0251】
(比較例16)
次に、実施例13及び14と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図4(B)は、本比較例に係る有機EL素子4の製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4の製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS160)と、正孔注入層38を液滴吐出法で形成する工程(ステップS170)と、正孔輸送層40を液滴吐出法で形成する工程(ステップS180)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS190)と、共通電極34を形成する工程(ステップS200)とを備えている。
【0252】
本比較例が実施例13及び14と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図4(B)のフローチャートに従い、図2を用いて有機EL素子4の製造方法について説明する。
【0253】
まず、図2に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS160)。
【0254】
次に、実施例1と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入層38を形成する(ステップS170)。
次に、実施例6と同様に正孔注入層38上に正孔輸送層40を形成する(ステップS180)。
次に、比較例2と同様に正孔輸送層40上に有機発光層42を形成する(ステップS190)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS200)。
【0255】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4を初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表15に示す。なお、表15には、全層スピンコート法で作成した比較例15の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0256】
【表15】

【0257】
本実施形態によれば、表15に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4より半減時間が22%まで低下した。一方、正孔注入層38を液滴吐出法で積層し、正孔輸送層40及び有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4の半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4と同等の半減時間が得られた。
【0258】
さらには正孔注入層38及び正孔輸送層40を液滴吐出法で積層し、有機発光層42のみをスピンコート法で積層すれば全層スピンコート法で作成した有機EL素子4と同等の寿命特性を得ることが可能となった(他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0259】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4の材料利用効率を表16に示す。なお、表16には、全層スピンコート法で作成した比較例15の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0260】
【表16】

【0261】
本実施形態によれば、表16に示すように、材料利用効率は、正孔注入層38のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の40倍となった。さらに、正孔注入層38及び正孔輸送層40まで液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の50倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0262】
[第10の実施形態]
次に、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
図12は、本実施形態に係る有機EL素子4Dを拡大して示す側断面構成図である。本実施形態に係る有機EL素子4Dの製造方法は、正孔注入輸送層52の形成材料として、低分子材料が用いられ、有機発光層42の形成材料として、高分子材料が用いられる点である。
【0263】
(実施例15)
図6は、本実施例に係る有機EL素子4Dの製造方法を示すフローチャートである。本実施例の有機EL素子4Dの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS210)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS220)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS230)と、共通電極34を形成する工程(ステップS240)とを備えている。
【0264】
本実施例では、液滴吐出法を用いて、正孔注入輸送層52を形成し、スピンコート法を用いて、有機発光層42を形成する。以下、図6のフローチャートに従い、図12を用いて有機EL素子4Dの製造方法について説明する。
【0265】
まず、図12に示すように、本実施例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS210)。
【0266】
次に、実施例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS220)。
次に、実施例1と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS230)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS240)。このようにして、図12に示した有機EL素子4Dが得られる。
【0267】
(比較例17)
次に、実施例15と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図7(A)は、本比較例に係る有機EL素子4Dの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Dの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS250)と、正孔注入輸送層52をスピンコート法で形成する工程(ステップS260)と、有機発光層42をスピンコート法で形成する工程(ステップS270)と、共通電極34を形成する工程(ステップS280)とを備えている。
【0268】
本比較例が実施例15と異なる点は、スピンコート法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図7(A)のフローチャートに従い、図12を用いて有機EL素子4Dの製造方法について説明する。
【0269】
まず、図12に示すように、本比較例においても、実施例3と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS250)。
【0270】
次に、比較例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS260)。
次に、実施例1と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS270)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS280)。
【0271】
(比較例18)
次に、実施例15と異なる態様の有機EL素子の製造方法を比較例として説明する。
図7(B)は、本比較例に係る有機EL素子4Dの製造方法を示すフローである。本比較例の有機EL素子4Dの製造方法は、画素電極30等を形成する工程(ステップS290)と、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で形成する工程(ステップS300)と、有機発光層42を液滴吐出法で形成する工程(ステップS310)と、共通電極34を形成する工程(ステップS320)とを備えている。
【0272】
本比較例が実施例15と異なる点は、液滴吐出法を用いて、全有機機能層32を形成する点である。以下、図7(B)のフローチャートに従い、図12を用いて有機EL素子4Dの製造方法について説明する。
【0273】
まず、図12に示すように、本比較例においても、実施例1と同様にTFT基板22上に島状の画素電極30を形成し、次いで画素電極30の間に絶縁部36を形成する。そして、絶縁部36上に隔壁48を形成する(ステップS290)。
【0274】
次に、実施例3と同様に画素電極30が形成されたTFT基板22上に正孔注入輸送層52を形成する(ステップS300)。
次に、比較例2と同様に正孔注入輸送層52上に有機発光層42を形成する(ステップS310)。
次に、実施例1と同様に有機発光層42上に共通電極34を形成する(ステップS320)。
【0275】
ここで、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Dを初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間を表17に示す。なお、表17には、全層スピンコート法で作成した比較例17の半減時間を1とするように規格化して示している。
【0276】
【表17】

【0277】
本実施形態によれば、表17に示すように、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した有機EL素子4Dより半減時間が20%まで低下した。一方、正孔注入輸送層52を液滴吐出法で積層し、有機発光層42をスピンコート法で積層した有機EL素子4Dの半減時間は、全層スピンコート法で積層した有機EL素子4Dと同等の半減時間が得られた(図示しないが、他の発光色に関しても同様の結果が得られた)。
【0278】
さらに、本実施形態の実施例及び比較例で作成した有機EL素子4Dの材料利用効率を表18に示す。なお、表18には、全層スピンコート法で作成した比較例17の材料利用効率を1とするように規格化して示している。
【0279】
【表18】

【0280】
本実施形態によれば、表18に示すように、材料利用効率は、正孔注入輸送層52のみ液滴吐出法で積層した場合、スピンコート法で積層した際の30倍となった。上記利用効率は、本実施形態の実施例及び比較例に基づくものであり、この限りではない。
【0281】
上記実施形態の有機EL素子の製造方法にあっては、液滴吐出法を用いて有機機能層32の液状の形成材料を配するので、材料の無駄を無くすことができ低コストで有機EL素子を製造することができる。また、グリコールエーテル類の高沸点溶媒等を添加することにより吐出する溶液の粘度を調整しているので、この溶液を安定に吐出させることができ、高信頼性の有機EL素子を製造することができる。前記のような溶媒が添加された形成材料で有機機能層32を形成すると、溶媒を添加しない場合よりも有機機能層32の抵抗値が2〜3桁程度小さくなる。そのため、優れた電気特性の有機EL素子を製造することができる。
【0282】
[電子機器]
次に、上記実施形態の有機EL素子を有するラインヘッド(有機EL装置)を備えた画像形成装置(電子機器)について説明する。
図13は、本実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。
【0283】
画像形成装置100は、転写媒体102の走行経路の近傍に、像担持体としての感光体ドラム104を備えている。感光体ドラム104の周囲には、感光体ドラム104の回転方向(図中に矢印で示す)に沿って、露光装置106、現像装置108及び転写ローラー110が順次配設されている。感光体ドラム104は、回転軸112の周りに回転可能に設けられており、その外周面には、回転軸方向中央部に感光面104Aが形成されている。露光装置106及び現像装置108は感光体ドラム104の回転軸112に沿って長軸状に配置されており、その長軸方向の幅は、感光面104Aの幅と概ね一致している。
【0284】
この画像形成装置100では、まず、感光体ドラム104が回転する過程において、露光装置106の上流側に設けられた図示略の帯電装置により感光体ドラム104の表面(感光面104A)が例えば正に帯電され、次いで露光装置106により感光体ドラム104の表面が露光されて表面に静電潜像LAが形成される。さらに、現像装置108の現像ローラー114により、トナー(現像剤)116が感光体ドラム104の表面に付与され、静電潜像LAの電気的吸着力によって静電潜像LAに対応したトナー像が形成される。なお、トナー粒子は正に帯電されている。
【0285】
現像装置108によるトナー像の形成後は、感光体ドラム104の更なる回転によりトナー像が転写媒体102に接触し、転写ローラー110により転写媒体102の背面からトナー像のトナー粒子とは逆極性の電荷(ここでは負電荷)が付与され、これに応じて、トナー像を形成するトナー粒子が感光体ドラム104の表面から転写媒体102に吸引され、トナー像が転写媒体102の表面に転写される。
【0286】
露光装置106は、複数の発光素子118を有するラインヘッド120と、ラインヘッド120から放射された光Lを正立等倍結像させる複数のレンズ素子122を有する結像光学素子124とを備えている。ラインヘッド120と結像光学素子124とは、互いにアライメントされた状態で図示略のヘッドケースによって保持され、感光体ドラム104上に固定されている。
【0287】
ラインヘッド120は、複数の発光素子118を感光体ドラム104の回転軸112に沿って配列してなる発光素子列126と、発光素子118を駆動させる図示略の駆動素子からなる駆動素子群と、これら駆動素子(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群128とを備えている。発光素子118、駆動素子群及び制御回路群128は長細い矩形の素子基板(基体)120A上に一体形成されている。
【0288】
結像光学素子124は、日本板硝子株式会社製のセルフォック(登録商標)レンズ素子と同様の構成からなるレンズ素子122を感光体ドラム104の回転軸112に沿って千鳥状に2列配列(配置)してなるレンズ素子列130を備えている。
【0289】
一般に、ラインヘッドに用いられる発光素子には高輝度であることが求められており、通常は高輝度とするほど発光にじみが顕著となる。
【0290】
この画像形成装置100は、ラインヘッド120が上記実施形態の有機EL素子で構成されている。
【0291】
次に、上記実施形態の有機EL素子を有する画像表示装置(有機EL装置)を表示部に用いた電子機器について説明する。
【0292】
図14(A)は、本実施形態に係る携帯電話の一例を示した斜視図である。携帯電話200は表示部202を備えており、表示部202は上記実施形態の有機EL装置により構成されている。
図14(B)は、本実施形態に係るワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。情報処理装置300は、キーボードなどの入力部302、表示部304、筐体306等を備えている。また、表示部304は、上記実施形態の有機EL装置により構成されている。
図14(C)は、本実施形態に係る腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。時計400は表示部402を備えている。表示部402は、上記実施形態の有機EL装置により構成されている。
【0293】
図14(A)〜(C)に示す電子機器はいずれも、その表示部が上記実施形態の有機EL装置により構成されているので、良好な表示が可能なものとなっている。
【0294】
なお、電子機器としては、前記電子機器に限られることなく、種々の電子機器に適用することができる。例えば、ディスクトップ型コンピューター、液晶プロジェクター、マルチメディア対応のパーソナルコンピューター(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャー、ワードプロセッサー、テレビ、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することができる。
【0295】
また、上記実施形態を適用した有機EL素子は、発光効率の高い発光素子を有しており、照明装置として用いることもできる。
【0296】
なお、上記実施形態の実施例及び比較例で用いた発光材料は赤に限定されるものではなく緑及び青でも可能である。また正孔注入層38、正孔輸送層40、正孔注入輸送層52、有機発光層42、正孔ブロック層54、電子輸送層56、共通電極34は本実施例、比較例に記載の高分子材料、低分子材料、電極材料に限定されるものではない。
【0297】
また、上記実施形態で作成した素子を初期輝度1000cd/m2で寿命測定した際の半減時間において、液滴吐出法で有機発光層42まで全て積層した場合、スピンコート法で全て積層した素子より半減時間が20〜40%まで低下している。
【符号の説明】
【0298】
2…有機EL装置 4,4A〜4D…有機EL素子 10…走査線 12…信号線 14…電源線 16…信号線駆動回路 18…走査線駆動回路 20…画素 22…TFT基板 24…保持容量 26…第1スイッチング素子 28…第2スイッチング素子 30…画素電極 32…有機機能層 34…共通電極 36…絶縁部 38…正孔注入層 40…正孔輸送層 42…有機発光層 48…隔壁 52…正孔注入輸送層 54…正孔ブロック層 56…電子輸送層 100…画像形成装置 102…転写媒体 104…感光体ドラム 104A…感光面 106…露光装置 108…現像装置 110…転写ローラー 112…回転軸 114…現像ローラー 116…トナー(現像剤) 118…発光素子 120…ラインヘッド 120A…素子基板(基体) 122…レンズ素子 124…結像光学素子 126…発光素子列 128…制御回路群 130…レンズ素子列 200…携帯電話 202…表示部 300…情報処理装置 302…入力部 304…表示部 306…筐体 400…時計 402…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極との間に有機EL材料からなる有機発光層を含んだ複数の有機層からなる有機機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、
基板上に前記第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に前記有機機能層を形成する工程と、
を含み、
前記有機機能層を形成する工程では、前記有機発光層の液状の形成材料をスピンコート法で所定の位置に配した後、これを固化して前記有機発光層を形成し、
前記有機発光層を除く前記複数の有機層のうちの少なくとも1層の液状の形成材料を液滴吐出法で所定の位置に配した後、これを固化して前記有機発光層を除く前記複数の有機層のうちの少なくとも1層を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記有機機能層を形成する工程では、前記有機機能層のうちの前記有機発光層を除く全ての前記複数の有機層を液滴吐出法で形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記有機機能層を形成する工程では、全ての前記複数の有機層を高分子材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記有機機能層を形成する工程では、全ての前記複数の有機層を低分子材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記有機機能層を形成する工程では、前記複数の有機層を高分子材料で構成する第1の層と低分子材料で構成する第2の層とで形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記有機機能層を形成する工程では、前記有機発光層を蛍光材料を含有する液状の形成材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記有機機能層を形成する工程では、前記有機発光層を燐光材料を含有する液状の形成材料を用いて形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法によって製造されていることを特徴とする有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−277765(P2010−277765A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127584(P2009−127584)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】