説明

有機EL素子用の封止キャップ及びその製造方法

【課題】有機EL素子を収容している空間を汚染させずに、低コスト且つ高吸湿率で有機EL素子を防湿できる吸湿膜を形成した有機EL素子用の封止キャップ及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の封止キャップ17は、封止基板14の表面に、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を分散させた吸湿膜形成用塗料を塗布し乾燥させて封止基板14の表面に吸湿膜15を形成したものである。吸湿膜形成用塗料は、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を密閉容器中で分散させることによって製造される。乾燥剤として、金属酸化物からなる粒子、好適に酸化カルシウム粒子が含まれる。バインダー樹脂として、破断伸度200%以上のポリウレタン系樹脂が含まれ、好適に、ポリウレタン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが含まれる。樹脂溶液は、架橋剤として、ブロックタイプのイソシアネートを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)表示装置の有機EL素子を防湿するための吸湿膜を形成した有機EL素子用の封止キャップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置では、有機分子が酸素や水分(湿気)と反応して劣化し、表示装置の寿命が短くなるため、ガラス基板上に透明電極層、有機EL発光層及び対向電極層を積層して組み立てた有機EL素子を防湿している。この防湿は、有機EL素子を組み立てたガラス基板と封止キャップとを貼り合わせ、ガラス基板と封止キャップとの間の空間に有機EL素子を収容して、この空間を封止キャップで封止し、この封止キャップに形成した吸湿膜によって行われている(特許文献1、2、3、4、非特許文献1を参照)。
【0003】
一つの従来技術では、封止キャップに塗布した粘着剤に乾燥剤(無水硫酸カルシウム粒子など)を固定して封止キャップに吸湿膜を形成し、この吸湿膜で有機EL素子の防湿が行われている(特許文献1、2、3を参照)。
【0004】
しかし、この従来技術では、乾燥剤を粘着剤に粘着させた後、余分な乾燥剤を振動により振り落している。このため、この振り落とされた乾燥剤が封止キャップに付着したままの状態で、有機EL素子を収容している空間が封止されていると、封止キャップに付着している乾燥剤が剥離して物品収容空間内を浮遊し、有機EL素子に付着して、有機EL素子が汚染されるという問題が生じる。また、有機EL素子の温度変化によって粘着剤中の溶剤が揮発し、この揮発ガスが有機EL素子に付着するという問題も生じる。
【0005】
また、他の従来技術では、乾燥剤を樹脂溶液中に分散した吸湿膜形成用塗料を封止キャップに塗布し乾燥させて吸湿膜を形成しているが、有機EL表示装置の温度変化による吸湿膜と封止キャップとの熱膨張差により吸湿膜が局所的に剥離するという問題が生じるため、吸湿膜と封止キャップとの間に、吸湿膜と封止キャップのそれぞれの熱膨張率の中間の大きさの熱膨張率を有する応力緩和層を介在させている(特許文献4を参照)。
【0006】
しかし、この従来技術では、応力緩和層を設けるための手間とコストがかかるだけでなく、応力緩和層の表面に、単に、吸湿膜形成用塗料を塗布し乾燥させて吸湿膜を形成しているだけなので、吸湿膜中の乾燥剤が水分を吸収して膨張し、これにより、吸湿膜自体が破壊され、乾燥剤が吸湿膜から脱落し、有機EL素子に付着して、有機EL素子が汚染されるという問題が生じる。
【0007】
上記問題に鑑みて、シート状の基材(プラスチックシート)の表面に、高い破断伸度を有するバインダー樹脂(固形分)で乾燥剤を固定した吸湿膜を形成した吸湿シートが検討されている(例えば、特願2005−185843、出願日:平成17年6月27日、出願人:本願の出願人と同一)。
【0008】
この吸湿シートは、高い破断伸度を有するバインダー樹脂で乾燥剤を固定しているので、乾燥剤の水分吸収により吸湿膜自体が破壊されるという問題が生じない。
【0009】
しかし、この吸湿シートを有機EL素子の防湿に使用する場合、吸湿シートは封止キャップに塗布した粘着剤(粘着剤の層の厚さが吸湿シートの厚さの約10%)で固定しなければならないので、有機EL素子と封止キャップとの間に形成されている空間が大きくなるだけでなく、有機EL素子の温度変化によって粘着剤中の溶剤が揮発し、この揮発ガスが有機EL素子に付着するという問題が生じる。
【0010】
また、この吸湿シートは、樹脂溶液中に乾燥剤を分散した吸湿膜形成用塗料をシート状の基材の表面に塗布し乾燥させて基材の表面に吸湿膜を形成することによって製造されるもの(すなわち、吸湿材の原反)であり、製造後、ロール巻きされて保管される。そして、その後、このロール巻きした吸湿シートをカッターで所定の形状にカットした後に吸湿材として使用されるので、吸湿シートを製造してから、有機EL素子の吸湿材として使用されるまでの間に乾燥剤が水分を吸収し、このため、使用時における吸湿材の吸湿率が低下するという問題がある。
【0011】
そして、この問題は、吸湿シート(吸湿材の原反)の製造から、カット工程を経て、有機EL素子の吸湿材として使用するまでの全工程を乾燥環境下で行うことによって解決し得るが、このための設備にかかるコストが膨大となり、実用的ではない。
【特許文献1】特開2001−185349号公報
【特許文献2】特開2001−23507号公報
【特許文献3】特開平10−34791号公報
【特許文献4】特開2004−55365号公報
【非特許文献1】有機EL表示装置、ナノエレクトロニクス、今後の課題と展望、http//www.nanoelectronics.jp/kaitai/oel/7.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、有機EL素子を収容している空間を汚染させずに、低コスト且つ高吸湿率で有機EL素子を防湿できる吸湿膜を形成した有機EL素子用の封止キャップ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
<封止キャップ> 上記目的を達成する本発明の有機EL素子用の封止キャップは、封止基板、及びこの封止基板の表面に形成した吸湿膜から構成され、吸湿膜は、乾燥剤、及びこの乾燥剤を固定するバインダー樹脂から構成される。
【0014】
乾燥剤として、金属酸化物からなる粒子、好適に酸化カルシウムからなる粒子が含まれる。
【0015】
バインダー樹脂として、破断伸度が200%以上の範囲、より好ましくは300%以上の範囲にある樹脂が含まれる。
【0016】
バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂が含まれる。
【0017】
また、バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが含まれ、バインダー樹脂の全量を100重量%として、ポリウレタン系樹脂の含有量が70重量%以上の範囲にあり、ポリオレフィン系樹脂の含有量が30重量%以下の範囲にある。
【0018】
<製造方法> 上記本発明の封止キャップは、封止基板の表面に、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を分散させた吸湿膜形成用塗料を塗布し、封止基板の表面に塗布した吸湿膜形成用塗料を乾燥させることによって製造される。
【0019】
吸湿膜形成用塗料は、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を分散させることによって製造されるものであり、この分散は、密閉容器内で行われる。
【0020】
樹脂溶液には、架橋剤が含まれ、この架橋剤として、ブロックタイプのイソシアネートが含まれる。ここで、樹脂溶液に架橋剤を含めることで、封止キャップの封止基材への吸湿膜の密着性が高くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明が以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0022】
本発明の封止キャップの製造に使用される吸湿膜形成用塗料は、密閉容器内で容易に製造でき、さらに、吸湿膜形成用塗料の製造後、外気に晒されることなく別の密閉容器に入れて、気密に保管できるものなので、本発明の封止キャップを製造する現場へ吸湿膜形成用塗料を運ぶことができ、本発明の封止キャップの製造時まで、吸湿膜形成用塗料の品質を維持できる。
【0023】
そして、吸湿材の原反を製造してから、カット工程を経て、有機EL素子の吸湿材として使用するまでの全工程を乾燥環境下で行わずに、本発明の封止キャップの製造ラインで、この吸湿膜形成用塗料を封止基板に塗布し乾燥させて封止基板の表面に吸湿膜を形成することができ、本発明の封止キャップの製造直後に、有機EL素子を形成したガラス基板と貼り合わせて有機EL素子をガラス基板と封止キャップとの間の空間に封止できるので、この空間内の有機EL素子を低コスト且つ高吸湿率で防湿できる。
【0024】
本発明の封止キャップの吸湿膜は、破断伸度が200%以上の範囲にあるバインダー樹脂(固形分)によって乾燥剤を固定したものなので、乾燥剤が水分を吸収して膨張しても、吸湿膜が破壊されて乾燥剤が脱落することがない。このことから、有機EL素子を汚染させずに、有機EL素子を防湿できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<封止キャップ> 図1に示すように、有機EL表示装置10の部品である有機EL素子12は、ガラス基板11上に形成される。そして、有機EL素子12を形成したガラス基板11は、エポキシ樹脂などの接着剤13により本発明の封止キャップ17と貼り合わされ、これにより、有機EL素子12は、ガラス基板11と本発明の封止キャップ17との間の空間内に収容され、この空間は、本発明の封止キャップ17の封止基板14の表面に形成した吸湿膜15によって吸湿され、これにより、有機EL素子12が防湿される。
【0026】
図示のように、本発明の封止キャップは、封止基板14、及び封止基板14の表面に形成した吸湿膜15から構成される。
【0027】
封止基板14は、金属又はガラスからなる板状のものである。有機EL素子12と吸湿膜15との接触を防止するため、図示のように、有機EL素子12を形成した領域に対応した封止基板14の部分にポケット部16を形成し、このポケット部16に吸湿膜15を形成してもよい。
【0028】
吸湿膜15は、乾燥剤、及び乾燥剤を固定するバインダー樹脂から構成される。
【0029】
吸湿膜15の厚さは、特に限定されないが、10μm以上、200μm以下の範囲にある。
【0030】
乾燥剤として、金属酸化物からなる粒子が含まれる。金属酸化物からなる粒子として、水分と不可逆的な化学反応を起こし、また樹脂溶液中で安定し、しかも安価に入手できる、高い吸湿性を有する酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどから選択される粒子が使用される。乾燥剤の平均粒径は0.01μm以上、5μm以下の範囲にある。好適に、乾燥剤として、酸化カルシウムからなる粒子が含まれる。
【0031】
バインダー樹脂として、破断伸度が200%以上の範囲、より好ましくは300%以上の範囲にある樹脂が含まれる。
【0032】
ここで、乾燥剤は、水分を吸収すると、その体積が膨張する(例えば、酸化カルシウムからなる粒子は、水分を吸収してその全量が水酸化カルシウムとなると、粒子の体積は約2倍になる)。このため、吸湿膜において、バインダー樹脂の破断伸度が200%未満であると、乾燥剤の体積膨張により吸湿膜が破壊され、吸湿膜に亀裂が生じ、乾燥剤が脱落する。ここで、破断伸度(%)は、バインダー樹脂(固形分)の試験片を引き伸ばし、この試験片が破断したときの試験片の伸びを試験片の元の長さで割ったものである(測定基準ASTM D882)。
【0033】
乾燥剤とバインダー樹脂(固形分)の重量比(乾燥剤:バインダー樹脂)は、40重量%:60重量%〜90重量%:10重量%の範囲にある。
【0034】
バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂が含まれる。
【0035】
また、バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが使用され、バインダー樹脂の全量を100重量%として、ポリウレタン系樹脂の量が、70重量%以上の範囲にあり、ポリオレフィン系樹脂の量が、30重量%以下の範囲にある。ここで、ポリオレフィン系樹脂の量が30重量%を超えると、ポリウレタン系樹脂の破断伸度を低下させることになる。
【0036】
このように、バインダー樹脂として、性質の異なる樹脂(ポリウレタン系樹脂とポリオレフィン系樹脂)を含めることで、吸湿膜15中のバインダー樹脂に微細な亀裂が生じ、吸湿膜15の内部に固定されている乾燥剤が外部に晒され、その結果、吸湿率が高くなる。
【0037】
<製造方法> 本発明の封止キャップ17は、封止基板14の表面に、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を分散させた吸湿膜形成用塗料を塗布し、この封止基板14の表面に塗布した吸湿膜形成用塗料を乾燥させて、封止基板14の表面に吸湿膜15を形成することによって製造される。
【0038】
本発明の封止キャップ17は、ライン生産できるものであり、封止キャップ17の製造直後に、有機EL素子12を形成したガラス基板11と貼り合わせ、ガラス基板11と封止キャップ17との間の空間内に収容されている有機EL素子12を吸湿膜15で防湿できる。
【0039】
<吸湿膜形成用塗料> 吸湿膜形成用塗料は、バインダー樹脂を含む樹脂溶液、及びこの樹脂溶液中に分散される乾燥剤から構成されるものである。
【0040】
樹脂溶液には、架橋剤が含まれ、架橋剤として、吸湿膜形成用塗料中の乾燥剤が触媒となって過度に架橋反応が進むことなく、一定の温度以上になってから架橋反応が開始されるものが含まれ、このような架橋剤として、好適に、ブロックタイプのイソシアネートが含まれる。
【0041】
この吸湿膜形成用塗料は、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を分散させることによって製造される。この分散は、密閉容器内で行われ、吸湿膜形成用塗料は、吸湿膜形成用塗料の製造後、外気に晒さずに、別の密閉容器内に入れて、気密に保管できる。このことから、吸湿膜形成用塗料は、その使用時(すなわち、本発明の封止キャップ17の製造時)まで、その品質を維持できる。
【0042】
樹脂溶液は、メチエチルケトンなどの溶剤でバインダー樹脂(固形分)を溶かしたものであり、吸湿膜形成用塗料を乾燥させると、吸湿膜形成用塗料中の溶剤は蒸発し、乾燥剤がバインダー樹脂により固定される。
【0043】
架橋剤は、樹脂溶液中に含まれていてもよいし、また吸湿膜形成用塗料の使用直前(すなわち、本発明の封止キャップ17の製造直前)に添加してもよい。
【0044】
<実施例1> 平均粒径0.15μmの酸化カルシウム粒子(100重量部)と、破断伸度500%のポリウレタン系樹脂の30重量%濃度の溶液(110重量部)と、メチルエチルケトン(60重量部)とをポットミルに入れて48時間混合して吸湿膜形成用塗料を製造し、この吸湿膜形成用塗料を厚さ2mmのガラス板にスピンコータで塗布し、熱風乾燥機(150℃)で3分間乾燥して、ガラス板の表面に厚さ80μmの吸湿膜を形成し、実施例1の試験材を製造した。
【0045】
<実施例2> 平均粒径0.15μmの酸化カルシウム粒子(100重量部)と、破断伸度500%のポリウレタン系樹脂の30重量%濃度の溶液(90重量部)と、ポリオレフィン系樹脂(常温で軟化するので破断伸度は測定できない)の40重量%濃度の溶液(16重量部)と、メチルエチルケトン(60重量部)とをポットミルに入れて48時間混合して吸湿膜形成用塗料を製造し、この吸湿膜形成用塗料を厚さ2mmのガラス板にスピンコータで塗布し、熱風乾燥機(150℃)で3分間乾燥して、ガラス板の表面に厚さ80μmの吸湿膜を形成し、実施例2の試験材を製造した。
【0046】
<実施例3> 平均粒径0.15μmの酸化カルシウム粒子(100重量部)と、破断伸度500%のポリウレタン系樹脂の30重量%濃度の溶液(66重量部)と、ポリオレフィン系樹脂(常温で軟化するので破断伸度は測定できない)の40重量%濃度の溶液(11重量部)と、ポリエステルポリオール(2.1重量部)と、メチルエチルケトン(51重量部)とをポットミルに入れて48時間混合した後、これに、ブロックタイプのイソシアネートの50重量%濃度の溶液(18.5重量部)を加えて攪拌して吸湿膜形成用塗料を製造し、この吸湿膜形成用塗料を厚さ2mmのガラス板にスピンコータで塗布し、熱風乾燥機(150℃)で3分間乾燥して、ガラス板の表面に厚さ80μmの吸湿膜を形成し、実施例3の試験材を製造した。
【0047】
<比較例1> 平均粒径0.15μmの酸化カルシウム粒子(100重量部)と、破断伸度5%のポリウレタン系樹脂の30重量%濃度の溶液(110重量部)と、メチルエチルケトン(60重量部)とをポットミルに入れて48時間混合して吸湿膜形成用塗料を製造し、この吸湿膜形成用塗料を厚さ2mmのガラス板にスピンコータで塗布し、熱風乾燥機(150℃)で3分間乾燥して、ガラス板の表面に厚さ80μmの吸湿膜を形成し、比較例1の試験材を製造した。
【0048】
<比較例2> 平均粒径0.15μmの酸化カルシウム粒子(100重量部)と、破断伸度3%のポリウレタン系樹脂の30重量%濃度の溶液(80重量部)と、ポリエステルポリオール(2.1重量部)と、メチルエチルケトン(51重量部)とをポットミルに入れて48時間混合した後、これに、ブロックタイプのイソシアネートの50重量%濃度の溶液(19.5重量部)を加えて攪拌して吸湿膜形成用塗料を製造し、この吸湿膜形成用塗料を厚さ2mmのガラス板にスピンコータで塗布し、熱風乾燥機(150℃)で3分間乾燥して、ガラス板の表面に厚さ80μmの吸湿膜を形成し、比較例2の試験材を製造した。
【0049】
<比較試験> 実施例1〜3と比較例1、2のそれぞれの試験材をシャーレの底に置いて、25℃、60%相対湿度の恒温恒湿槽内に放置して、これら試験材の吸湿率を比較した。
【0050】
<試験結果> 実施例1〜3と比較例1、2の試験材のそれぞれの時系列的な重量変化と吸湿率を下記の表1及び表2に示す。ここで、吸湿率は、下記の式1を用いて計算した。
【0051】
【数1】

【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
360分間の吸湿試験後における実施例1〜3と比較例1、2の試験材のそれぞれの状態について比較すると、実施例1、2の試験材では、試験材のエッジの一部に波形の変形がみられたが、吸湿膜からの乾燥剤の脱落はみられなかった。実施例3の試験材では、吸湿膜の変形がみられず、吸湿膜からの乾燥剤の脱落もみられなかった。一方、比較例1の試験材では、吸湿膜の大半がガラス板から剥離し、乾燥剤が脱落していた。比較例2の試験材では、吸湿膜の一部がガラス板から剥離し、乾燥剤が脱落していた。
【0055】
吸湿力について比較すると、表1、表2及び図2に示すように、実施例1〜3の試験材は、比較例1、2の試験材と比較して、高い吸湿力(吸湿率)を有している。
【0056】
なお、比較例1、2において、試験時間240分以降の吸湿率が急激に上昇している(図2を参照)。これは、吸湿膜の破壊、剥離及び乾燥剤の脱落により、吸湿膜中の乾燥剤が外部に多量に露出したために、吸湿率が急激に上昇したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明に従った有機EL表示装置の部分拡大側面図である。
【図2】図2は、試験結果のグラフを示す。
【符号の説明】
【0058】
10・・・有機EL表示装置
11・・・ガラス基板
12・・・有機EL素子
13・・・接着剤
14・・・封止基板
15・・・吸湿膜
16・・・ポケット部
17・・・封止キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子用の封止キャップであって、
封止基板、及び
前記封止基板の表面に形成した吸湿膜、
から成り、
前記吸湿膜が、
乾燥剤、及び
前記乾燥剤を固定するバインダー樹脂、
から成り、
前記乾燥剤として、金属酸化物からなる粒子が含まれ、
前記バインダー樹脂として、破断伸度が200%以上の範囲にある樹脂が含まれる、
ところの封止キャップ。
【請求項2】
請求項1の封止キャップであって、
前記乾燥剤として、酸化カルシウムからなる粒子が含まれる、
ところの封止キャップ。
【請求項3】
請求項1の封止キャップであって、
前記破断伸度が300%以上の範囲にある、
ところの封止キャップ。
【請求項4】
請求項1の封止キャップであって、
前記バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂が含まれる、
ところの封止キャップ。
【請求項5】
請求項1の封止キャップであって、
前記バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが含まれ、
前記バインダー樹脂の全量を100重量%として、
前記ポリウレタン系樹脂の含有量が、70重量%以上の範囲にあり、
前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が、30重量%以下の範囲にある、
ところの封止キャップ。
【請求項6】
有機EL素子用の封止キャップを製造するための方法であって、
封止基板の表面に、バインダー樹脂を含む樹脂溶液中に乾燥剤を分散させた吸湿膜形成用塗料を塗布する工程、及び
前記封止基板に塗布した前記吸湿膜形成用塗料を乾燥させて、前記封止基板の表面に、前記乾燥剤を前記バインダー樹脂で固定した吸湿膜を形成する工程、
から成り、
前記乾燥剤として、金属酸化物からなる粒子が含まれ、
前記バインダー樹脂として、破断伸度が200%以上の範囲にある樹脂が含まれる、
ところの方法。
【請求項7】
請求項6の方法であって、
前記乾燥剤として、酸化カルシウムからなる粒子が含まれる、
ところの方法。
【請求項8】
請求項6の方法であって、
前記破断伸度が300%以上の範囲にある、
ところの方法。
【請求項9】
請求項6の方法であって、
前記バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂が含まれる、
ところの方法。
【請求項10】
請求項6の方法であって、
前記バインダー樹脂として、ポリウレタン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが含まれ、
前記バインダー樹脂の全量を100重量%として、
前記ポリウレタン系樹脂の含有量が、70重量%以上の範囲にあり、
前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が、30重量%以下の範囲にある、
ところの方法。
【請求項11】
請求項6の方法であって、
前記樹脂溶液が、架橋剤を含む、
ところの方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、
前記架橋剤として、ブロックタイプのイソシアネートが含まれる、
ところの方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−141474(P2007−141474A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329366(P2005−329366)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(390037165)日本ミクロコーティング株式会社 (79)
【Fターム(参考)】