説明

有機EL表示素子および有機EL表示素子の製造方法

【課題】画素を区画するバンクの線幅を所望の細さで一定に保ち、バンクのエッジ部分の凹凸を抑制した有機EL表示素子を提供する。
【解決手段】基板2と、基板2上に設けられたアクティブ素子であるTFT3と、基板2上でTFT3の上方を被覆する平坦化膜4と、平坦化膜4上に配設されてTFT3と接続する陽極6と、陽極6上に配設された有機発光層9と、有機発光層9の配置領域を規定して画素を区画するバンク8と、有機発光層9の上に配設された陰極10とから有機EL表示素子1を構成する。そして、平坦化膜4には、平坦化膜4を貫通しない凹部13を形成し、凹部13の上にバンク8を形成して、この凹部13がバンク8をガイドしてその形状を制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)表示素子および有機EL表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示素子は、有機化合物による電界発光を利用した自発光型の表示素子であり、バックライトを必要とせず、広視角で高速応答の画像表示が可能である。そして、低消費電力であり、薄型、軽量などの優れた特徴を有する。
【0003】
これらの特徴から、有機EL表示素子は、近年盛んに開発が進められているが、その構造の特徴として、陽極と陰極、並びにそれら両極の間に配置された有機発光層を有する。有機発光層は両極間に形成された電界によって発光するが、構成材料としては、低分子系材料を用いたものと、高分子系材料を用いたものとに大別される。
【0004】
低分子系材料を用いた有機発光層は、真空蒸着法などを利用したドライプロセスにより形成される場合が多い。一方、高分子系材料を用いた有機発光層は、例えば、有機発光材料および溶剤を含む発光材料組成物を、インクジェット法などの技術を用い、表示素子の画素毎に塗布し、乾燥することにより形成することが可能である。インクジェット法を利用した場合、塗布する材料の使用効率を格段に向上させることができる。そして、高分子系材料を用いた有機発光層を備えた有機EL表示素子は、比較的低電圧での駆動が可能であり、消費電力が少なく、表示素子の大画面化に対応しやすいなどの特徴を備える。
【0005】
有機発光層をインクジェット法などの塗布法によって形成する場合、隣接する他の色の光を発光するための画素に発光材料組成物が浸入しないようにすることが求められる。
隣接する他の色の光を発するための画素に発光材料組成物が浸入しないようにするため、隔壁(以下、バンクと称する。)を形成し、このバンクによって規定された領域内に有機発光材料を含む発光材料組成物を滴下する技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。バンクによって規定された領域内に、正確に発光材料組成物を塗布することで、隣接する他の色の光を発するための画素への発光材料組成物の浸入を防止することができる。
【0006】
図4は、従来の有機EL表示素子の主要部分の構造を模式的に示す断面図である。
【0007】
図4に示すように、従来のアクティブマトリクス型の有機EL表示素子100は、無アルカリガラスなど透明な基板102上に、各画素部分において、アクティブ素子である薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)103を有する。そして、TFT103の上方を被覆するよう平坦化膜104が配設され、TFT103の形成された基板面を平坦化する。この平坦化膜104の上には、画素電極をなす陽極106が配置される。陽極106は、平坦化膜104を貫通するように平坦化膜104中に設けられたスルーホール107を介してTFT103の電極部分と接続している。
【0008】
TFT103の上方には、障壁となるバンク108が形成され、このバンク108に規定される領域内に有機発光層109が配置されている。バンク108は、有機発光層109の周囲を包囲し、互いに隣接する各画素を区画する。そして、有機発光層109を覆い、画素区画用のバンク108を覆って陰極110が形成されている。陰極110は、複数の画素を共通に覆って形成され、共通電極をなす。陰極110上には、パッシベーション膜111が設けられている。このように構成された基板102の、有機発光層109が配置された主面は、外周端部付近に塗布されたシール剤(図示されない)を用い、封止基板112により封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−004743号公報
【特許文献2】特開2010−282899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の構成を有する有機EL表示素子であるが、バンク108は、平坦化膜104の上方で有機発光層109の形成領域を規定する。バンク108は、有機発光層109の有効な面積を十分に確保し、また、有機発光層109の形状が各画素間で均一となるよう、有機発光層109の形成領域を規定することが求められる。したがって、バンク108に対しては、制御された均一な形状を備えることが求められる。すなわち、バンク108は、線幅が狭く均一でばらつきが無く、その結果、エッジ部分の形状にガタつきが生じていないことが求められる。
【0011】
このようなバンク108は、フォトリソグラフィー法によって形成することができる。フォトリソグラフィー法によりバンク108を形成する方法は、基板上に適当な感光性樹脂膜を形成する工程、この感光性樹脂膜を露光および現像する工程、および現像した樹脂膜を加熱硬化する工程を有する。しかしながら、樹脂膜を加熱硬化する工程において、バンク108の裾部分が陽極106上で広がって変形してしまうことがあった。そして、こうしたフォトリソグラフィー法を利用したバンク108の形成にあたっては、製造工程数が多く、無駄となる材料も多くなるため、製造コストが増大し、さらに、製造歩留まりの低下を招いていた。
【0012】
そこで、インクジェット法を利用してバンク108を形成する検討がなされている。インクジェット法を用いる場合、バンク108は、バンク108の形成材料および溶剤を含むインク状のバンク材料組成物を、有機EL表示素子100の陽極106上、画素の有機発光層109の形成領域の周囲に塗布し、乾燥することにより形成することが可能である。インクジェット法を利用した場合、製造工程数は少なくなり、また、塗布する材料の使用効率を格段に向上させることができる。
【0013】
しかし、インクジェット法を用いて、陽極106上、バンク108の形成を行う場合、バンク108においてパターン形状の制御が十分とならない場合があった。
図5は、バンクの一部形状を模式的に示す平面図である。図5(a)は、凹凸の無い好ましいエッジ形状を有するバンクの一部形状を模式的に示す平面図であり、図5(b)は、凹凸のある好ましくないエッジ形状を有するバンクの一部形状を模式的に示す平面図である。
【0014】
すなわち、インクジェット法を用いた場合、インク状のバンク材料組成物の塗膜を均一な形状に制御することが難しい。例えば、塗布後のバンク形成材料組成物が拡がって、バンク108の線幅が所望の値より太くなることや、図5(b)に示すように、バンク108の線幅が均一とならず、バンク108のエッジ部分に凹凸が発生する場合があった。そうした場合、バンク108は、有機発光層109の有効な面積を十分に確保し、かつ、有機発光層109の形状を各画素間で均一となるよう、有機発光層109の形成領域を規定することができなくなることがある。
【0015】
このような状況から、所望の細い線幅を有し、有機発光層の有効な面積を十分に確保するとともに、有機発光層の形状を各画素間で均一にするよう、有機発光層の形成領域を規定できるバンクの実現が強く望まれている。
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、バンクの線幅を所望の細さに保ち、バンクのエッジ部分での凹凸発生を抑えた有機EL表示素子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、基板と、基板上に設けられたアクティブ素子と、そのアクティブ素子を被覆する平坦化膜と、平坦化膜上に配設されてその平坦化膜を貫通するスルーホールを介してアクティブ素子と接続する陽極と、陽極上に配設された有機発光層と、有機発光層の配置領域を規定するバンクと、有機発光層の上に配設された陰極とを有する有機EL表示素子であって、
平坦化膜は有機発光層の配置領域の周囲の少なくとも一部に、平坦化膜を貫通することが無いように形成された凹部を有し、バンクは少なくとも一部が凹部の上に形成されていることを特徴とする有機EL表示素子に関する。
【0017】
本発明の第1の態様において、バンクは、インクジェット法により形成されたものであることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、バンクの幅(t1)と平坦化膜の凹部の幅(t2)との関係は、0.8×(t2)≦(t1)≦1.2×(t2)であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の態様において、平坦化膜は、感放射線性樹脂組成物によって形成される有機膜であることが好ましい。
【0020】
本発明の第1の態様において、感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)溶剤を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の第1の態様において、感放射線性樹脂組成物の含有する(A)アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系ポリマー、ポリシロキサンおよびポリイミドからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0022】
本発明の第2の態様は、基板と、基板上に設けられたアクティブ素子と、そのアクティブ素子を被覆する平坦化膜と、平坦化膜上に配設されてアクティブ素子と接続する陽極と、陽極上に配設された有機発光層と、有機発光層の配置領域を規定するバンクと、有機発光層の上に配設された陰極とを有する有機EL表示素子の製造方法であって、
[1]感放射線性樹脂組成物をアクティブ素子の形成された基板上に塗布する工程、
[2]感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
[3]放射線が照射された塗膜を現像し、基板上に平坦化膜を形成するとともに平坦化膜を貫通することが無いよう平坦化膜に凹部を形成する工程、
[4]平坦化膜の凹部の上にバンクを形成する工程、並びに
[5]バンクに規定された領域に有機発光層の材料を含むインク状の発光材料組成物を塗布して、有機発光層を形成する工程
を有することを特徴とする有機EL表示素子の製造方法に関する。
【0023】
本発明の第2の態様において、平坦化膜は、感放射線性樹脂組成物によって形成される有機膜であることが好ましい。
【0024】
本発明の第2の態様において、感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)溶剤を含むことが好ましい。
【0025】
本発明の第2の態様において、感放射線性樹脂組成物の含有する(A)アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系ポリマー、ポリシロキサンおよびポリイミドからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0026】
本発明の第2の態様において、[4]工程では、インクジェット法を用い、平坦化膜の凹部の上にバンクを形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、バンクの線幅を所望の細さに保ち、バンクのエッジ部分での凹凸発生を抑えた有機EL表示素子およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態の有機EL表示素子の主要部の構造を模式的に説明する断面図である。
【図2】本実施の形態の有機EL表示素子の画素部分の構造を模式的に示す平面図である。
【図3】図2に示すA−A'線に沿った断面図である。
【図4】従来の有機EL表示素子の主要部分の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)および(b)は、バンクの一部形状を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態について、以下で説明する。
尚、本発明において、露光に際して照射される「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
【0030】
<有機EL表示素子>
本実施の形態の有機EL表示素子の構造について、図面を用いて説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態の有機EL表示素子の主要部の構造を模式的に説明する断面図である。
本実施の形態の有機EL表示素子1は、アクティブマトリクス型の有機EL表示素子である。有機EL表示素子1は、トップエミッション型、ボトムエミッション型のいずれでもよい。有機EL表示素子1は、基板2上の各画素部分において、アクティブ素子である薄膜トランジスタ(以下、TFTとも称する。)3を有する。
【0032】
有機EL表示素子1では、基板2上のTFT3の上方を被覆するよう平坦化膜4が配設されている。この平坦化膜4は、基板2上に形成されたTFT3による凹凸を平坦化する機能を備える。そして、本実施の形態の有機EL表示素子1においては、この平坦化膜4の上部表面には、平坦化膜4を貫通することが無いように形成された凹部13が設けられている。そして、凹部13は、TFT3の上方を含む領域であって、平坦化膜4の、後述する有機発光層9の配置領域の周囲の領域の少なくとも一部に形成されている。平坦化膜4上には、画素電極をなす陽極6が配置される。陽極6は、平坦化膜4の少なくとも一部を覆うとともに、平坦化膜4を貫通するよう平坦化膜4に設けられたスルーホール7を介してTFT3の電極部分と接続している。
【0033】
有機EL表示素子1において、平坦化膜4の凹部13の上の陽極6上には、バンク8が形成されている。このバンク8に規定される領域内には、電界発光する有機発光層9が配置されている。有機EL表示素子1において、バンク8は、有機発光層9の周囲を包囲する障壁となって、互いに隣接する各画素を区画する。
【0034】
図2は、本実施の形態の有機EL表示素子の画素部分の構造を模式的に示す平面図である。
図2では、平面構造が明確となるよう、後述する有機EL表示素子1の封止基板12、陰極10およびパッシベーション膜11は省略されている。
【0035】
図3は、図2に示すA−A'線に沿った断面図である。
尚、既に説明した図1は、図2に示すB−B’線に沿った断面図であって、封止基板12、陰極10およびパッシベーション膜11を省略せずに示した有機EL表示素子1の断面図に相当する。
【0036】
図2に示すように、有機発光層9がインクジェット法などの塗布法によって形成される場合、隣接する他の色の光を発光するための画素に発光材料組成物が浸入しないよう、バンク8は、有機発光層9の周囲を取り囲んで障壁となり、各画素を区画している。
図1および図3に示すように、本実施の形態の有機EL表示素子1では、基板2上に平坦化膜4が配設されている。そして、その上部平面に平坦化膜4を貫通することが無いように形成された凹部13が設けられ、平坦化膜4上に陽極6が形成された後、その凹部13上の陽極6の上にバンク8は形成される。すなわち、バンク8は、平坦化膜4の凹部13による有機発光層9周囲の凹み構造にガイドされ、形状が制御されて形成される。
【0037】
そして、有機発光層9を覆い、画素区画用のバンク8を覆って陰極10が形成されている。陰極10は、複数の画素を共通に覆って形成され、共通電極をなす。陰極10上には、パッシベーション膜11が設けられている。このように構成された基板2の、有機発光層9が配置された主面は、外周端部付近に塗布されたシール剤(図示されない)を用い、封止基板12により封止される。
以下、本実施の形態の有機EL表示素子1の主な構成要素について、より詳しく説明する。
【0038】
有機EL表示素子1の基板2については、有機EL表示素子1がボトムエミッション型である場合、基板2は透明であることが求められるため、基板2の材料の例として、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)などの透明樹脂や無アルカリガラス等のガラスなどが用いられる。一方、有機EL表示素子1がトップエミッション型の場合には、基板2は透明である必要はないので、基板2の材料として任意の絶縁体を用いることができる。ボトムエミッション型と同様、無アルカリガラスなど、ガラス材料を用いることも可能である。基板2の上には、平坦化膜4が形成されるが、平坦化膜4については、後に詳述する。
【0039】
平坦化膜4上に形成される陽極6は、導電性の材料からなる。陽極6の材料は、有機EL表示素子1が、ボトムエミッション型かトップエミッション型かによって異なる特性のものが選択される。ボトムエミッション型の場合には、陽極6が透明であることが求められるので、陽極6の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)、酸化スズなどが選択される。一方、有機EL表示素子1がトップエミッション型の場合には、陽極6に光反射性が求められ、陽極6の材料としては、APC合金(銀、パラジウム、銅の合金)やARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが選択される。陽極6の厚さは、100nm〜500nmとすることが好ましい。
【0040】
有機EL表示素子1において、TFT3上方の、平坦化膜4の凹部13の上には、バンク8が形成されている。バンク8は、上述のように、有機発光層9の配置領域を規定する隔壁である。バンクの高さ(バンクの上面と有機発光層9の配置領域での陽極6の上面との距離)は、0.1μm〜2μmであることが好ましく、0.8μm〜1.2μmであることがより好ましい。バンクの高さが2μm以上であった場合、封止基板12がバンク8とぶつかる恐れがある。また、バンク8の高さが0.1μm以下であった場合、バンク8によって規定された領域内にインクジェット法によって塗布されたインク状の発光材料組成物がバンク8から漏れ出すおそれがある。
【0041】
有機EL表示素子1のバンク8は、樹脂から形成することができる。バンク8の材料となる樹脂の例には、クレゾール−ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂およびこれらの組み合わせが含まれる。またバンク8は、上述したように有機発光材料を含むインク状の発光材料組成物が塗布される領域を規定することから、濡れ性が低いことが好ましい。バンク8の濡れ性を低くするには、バンク8をフッ素ガスでプラズマ処理してもよいし、バンク8の樹脂原料に撥液剤を含有させてもよい。プラズマ処理は有機EL表示素子の構成部材に悪影響を与えることがあるので、バンク8の樹脂原料に撥液剤を含有させるほうが好ましい場合がある。
【0042】
撥液剤の例には、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化エチレンなどのフッ素化
合物や、フッ素含有ポリマーなどが含まれる。
【0043】
バンク8に規定される領域内には、電界発光する有機発光層9が配置されている。有機発光層9は、電界発光する有機発光材料を含む層である。有機発光層9は、バンク8によって規定された領域内で陽極6上に配置される。有機発光層9の厚さは50nm〜100nmであることが好ましい。ここで有機発光層の厚さとは陽極上の有機発光層の底面から、陽極上の有機発光層の上面までの距離を意味する。
【0044】
有機発光層9に含まれる有機発光材料は低分子有機発光材料であっても、高分子有機発光材料であってもよいが、インクジェット法による塗布に好適な高分子有機発光材料であることが好ましい。高分子有機発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレン(Poly acetylene)およびその誘導体、ポリフェニレン(Poly phenylene)およびその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン(Poly para phenylene ethylene)およびその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン(Poly 3−hexyl thiophene(P3HT))およびその誘導体、ポリフルオレン(Poly fluorene (PF))およびその誘導体などを選択して用いることができる。
【0045】
尚、陽極6と有機発光層9との間には、正孔注入層および/または中間層が配置されていてもよい。陽極6と有機発光層9との間に、正孔注入層および中間層が配置される場合、陽極上に正孔注入層が配置され、正孔注入層上に中間層が配置され、そして中間層上に有機発光層9が配置される。また、陽極から有機発光層へ効率的に正孔を輸送できる限り、正孔注入層および中間層は省略されてもよい。
【0046】
本実施形態の有機EL表示素子1は、有機発光層9上に陰極10を有する。陰極10は、導電性部材からなる。陰極10の材料は、有機EL表示素子1がボトムエミッション型か、トップエミッション型かによって異なる。トップエミッション型の場合には、陰極は、透明な電極を構成するITO電極やIZO電極などであることが好ましい。一方、有機EL表示素子1がボトムエミッション型の場合には陰極10が透明である必要はない。その場合、陰極10の構成材料は、導電性であれば特に限定されず、例えば、バリウム(Ba)や酸化バリウム(BaO)、アルミニウム(Al)などを選択することも可能である。
尚、陰極10と有機発光層9との間には、例えば、バリウム(Ba)、フッ化リチウム(LiF)などからなる電子注入層が配置されていてもよい。
【0047】
陰極10の上には、パッシベーション膜11を設け、その上から封止基板12により有機EL表示素子1を封止することが可能である。パッシベーション膜11の作用により、有機EL表示素子1内への水分や酸素の浸入を抑制することができる。
【0048】
<平坦化膜>
本実施の形態の有機EL表示素子の主要構成部材である平坦化膜について説明する。
【0049】
図1に示すように、本実施の形態の有機EL表示素子1では、基板2上のTFT3の上方を被覆するよう平坦化膜4が配設されている。この平坦化膜4は、基板2上に形成されたTFT3による凹凸を平坦化する機能を備える。そして、有機EL表示素子1においては、平坦化膜4の上部表面のTFT3上方に対応する部分に、凹部13が形成されている。
この凹部13の上方には、有機発光層9の周囲を取り囲んで障壁となるバンク8が形成され、バンク8は隣接する各画素を区画している。
【0050】
バンク8については、上述のように、フォトリソグラフィー法を利用した塗膜のパターニングにより形成することが可能であるが、加熱硬化工程において、周囲に向かって拡がって形成されてしまうことがある。また、インクジェット法を利用して、陽極6上、バンクを形成しようとする場合、インク状のバンク材料組成物の塗膜を、陽極6上で、均一な形状に制御することが難しい。その結果、バンク8の線幅が均一とならず、バンク8のエッジ部分に凹凸が発生する場合があった。そうした場合、バンク8は、有機発光層9の有効な面積を十分に確保し、かつ、有機発光層9の形状を各画素間で均一となるよう、有機発光層9の形成領域を規定することができなくなることがある。
【0051】
そこで、本実施の形態の有機EL表示素子1では、バンク8の下層の平坦化膜4の上面に平坦化膜4を貫通することが無いように形成された凹部13を設けている。平坦化膜4上には陽極6が配置されるが、陽極6の配置後もこの凹部13の凹構造は維持される。その結果、凹部13は、陽極6上に塗布された、バンク8を形成する部材のガイドとなる。したがって、フォトリソグラフィー法を利用したバンク8の形成においては、パターニング後の加熱硬化工程中、パターニングされた塗膜が陽極6上で広がってしまうことを抑制する。
【0052】
そして、この平坦化膜4の凹部13は、インクジェット法を利用してバンク8を形成しようとする場合に特に有効なものとなる。すなわち、インク状のバンク形成組成物を凹部13の上に塗布することにより、凹部13がガイドとして機能する。その結果、バンク形成組成物の塗膜の形状は、凹部13によって制御され、所望の細さのものとなる。そして、形成されたバンク8では、エッジ部分の凹凸の発生が抑制される。
【0053】
このとき、バンク8の幅(t1)と平坦化膜4の凹部13の幅(t2)との関係は、0.8×(t2)≦(t1)≦1.2×(t2)であることが好ましい。バンク8の幅が凹部13の幅の0.8倍より小さいと、凹部13の有するガイド機能が十分に発揮されなくなってしまう。そして、バンク8の幅が凹部13の幅の1.2倍より大きいと、バンク8は凹部13上から大きくはみ出て形成されることになり、凹部13のガイドによるバンク形状の制御効果は小さなものとなってしまう。
【0054】
そして、平坦化膜4の凹部13の幅は、有機EL表示素子1の画素の大きさによっても規定されるものであるが、20μm〜100μmが好ましい。また、凹部13の深さは、平坦化膜4を貫通しない深さであって、具体的には、0.1μm〜10μmとすることが好ましい。0.1μmより浅いとバンク8に対するガイド機能は不十分なものとなり、10μmより大きいと深すぎて、所望の十分な高さを備えたバンク8を形成することが難しくなる。
【0055】
本実施の形態の有機EL表示素子1の平坦化膜4は、パターニングにより凹部13を形成することが容易な感放射線性樹脂組成物から形成される有機膜であることが好ましい。そして、この感放射線性樹脂組成物は、パターニング性を有するように、(A)アルカリ可溶性樹脂と、必要な場合に(B)溶剤を含んで構成されることが好ましい。
この(A)アルカリ可溶性樹脂については、パターンニング性が良好となるように、アクリル系ポリマー、ポリシロキサンおよびポリイミドからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を選択することが可能である。
【0056】
有機EL表示素子1の平坦化膜4を形成するための感放射線性樹脂組成物は、放射線が照射されると現像液に対して溶解性が増大し、放射線照射部分が除去されるポジ型および放射線が照射されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に放射線照射部分が残るネガ型の何れの感放射線性樹脂組成物を選択することも可能である。
【0057】
例えば、ポジ型の感放射線性樹脂組成物の場合、陽極6上に感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成し、放射線量を調整し、放射線を照射し、現像し、次いで加熱硬化することにより、平坦化膜4上に平坦化膜4を貫通することが無いように形成された凹部13を設けることができる。その場合、放射線に適当な波長の光を選択し、露光量の調整と凹部のパターニングをグレイトーンマスクやハーフトーンマスクを用いて行うことが好ましい。尚、グレイトーンマスクは、露光機の解像度以下のスリットを作り、そのスリット部が光の一部を遮り、中間露光を実現する。一方、ハーフトーンマスクは半透過の膜を利用し、中間露光を行うことができる。
以下、有機EL表示素子1の平坦化膜4を形成するための感放射線性樹脂組成物の好ましい例とその組成について説明する。
【0058】
[アルカリ可溶性樹脂がアクリル系ポリマーであるポジ型感放射線性樹脂組成物]
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第1の例は、ポジ型感放射線性樹脂組成物であり、アルカリ可溶性樹脂である(A1)アクリル系ポリマーと、(B1)キノンジアジド化合物と、必要な場合(C1)溶剤を含んで調製することができる。
(A1)アクリル系ポリマーは、(a)不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物と(b)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物とを、(c)他のラジカル重合性化合物と共に溶剤中でラジカル共重合することにより得ることができる。
【0059】
不飽和カルボン酸(a)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸を好ましいものとして挙げることができる。さらに、不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等を好ましいものとして挙げることができる。
【0060】
エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(b)としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]アクリルアミド、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニルプロピル]アクリルアミド等を挙げることができる。
【0061】
本実施形態のポジ型感放射線性樹脂組成物に含有されるアクリル系ポリマー(以下「共重合体I」と示す)を得る方法については、上述した不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物とエポキシ基を有するラジカル重合性化合物との2成分系でのラジカル重合では重合反応中にエポキシ基と不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物が反応を起こし、架橋が起こり、重合系がゲル化してしまう。
【0062】
そこで共重合体Iを得るためには、第3成分として他のラジカル重合性化合物を用いて、エポキシ基とカルボン酸または酸無水物との反応を抑制しなければならない。このような他のラジカル重合性化合物(c)としてはモノオレフィン系不飽和化合物が好ましい。
また、モノオレフィン系不飽和化合物を共重合体中に含有させることによって、共重合体の機械的特性を適度にコントロールし、アルカリ水溶液に対する溶解性を調整することができる。
【0063】
このモノオレフィン系不飽和化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;メチルアクリレート、イソプロピルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート等のメタクリル酸環状アルキルエステル;シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等のアクリル酸環状アルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等のジカルボン酸のジエステル;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル等を用いることができる。
【0064】
共重合体Iのエポキシ基を有するラジカル重合性化合物の共重合割合は、好ましくは10重量%〜70重量%、特に好ましくは20重量%〜50重量%である。10重量%未満であると、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸無水物または感放射線性酸生成化合物に放射線を照射することによって生成する酸との反応が十分に進行し難く、組成物から得られるパターンの耐熱性が十分なものとなり難くなる。また、70重量%を超えると、共重合体Iの保存安定性に問題が生じやすくなる。
【0065】
また、共重合体Iの不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物の共重合割合は、好ましくは5重量%〜40重量%、特に好ましくは10重量%〜30重量%である。5重量%未満であると、得られる共重合体がアルカリ水溶液に溶解しにくくなるので現像残りを生じ易く十分なパターンを作り難い。逆に40重量%を超えると、得られる共重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性が大きくなりすぎて放射線照射部の溶解、即ち、膜減り現像を防ぐことが難しくなる。
【0066】
共重合体Iの他のラジカル重合性化合物の共重合割合は、好ましくは10重量%〜70重量%、特に好ましくは30重量%〜50重量%である。10重量%未満であると、重合反応中にゲル化が起こりやすくなる。また、70重量%を超えると、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物や不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物の量が相対的に少なくなることから、アルカリ水溶液に対する樹脂の溶解度が減じたり、組成物から得られるパターンの耐熱性が不十分になることがある。
【0067】
共重合体Iを重合する際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;その他に芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。
【0068】
ラジカル重合における重合触媒としては通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物および過酸化水素等を挙げることができる。過酸化物をラジカル重合開始剤に使用する場合、還元剤を組み合せてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0069】
以上の共重合体Iの分子量およびその分布は、本実施の形態の組成物の溶液を均一に塗布することが可能である限り、特に限定されるものではない。
【0070】
(B1)キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド等を挙げることができる。具体的にはJ.Kosar著“Light−Sensitive
Systems”339〜352(1965)、John Wiley & Sons社(New York)や、W.S.De Forest著“Photoresist”50(1975)、McGraw−Hill、Inc.(New York)に記載されている1,2−キノンジアジド化合物を挙げることができる。
【0071】
これらの中で、放射線を照射した後の400〜800nmの可視光線領域における透明性が良好な化合物、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、3′−メトキシ−2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,5,5′−テトラメチル−2′,4,4′−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′−[1−[4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル]エチリデン]ジフェノールおよび2,4,4−トリメチル−2′,4′,7−トリヒドロキシ−2−フェニルフラバン等の1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、または、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルを好ましいものとして挙げることができる。
【0072】
(B1)キノンジアジド化合物の添加量は、(A1)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部〜100重量部であり、特に好ましくは10重量部〜50重量部である。5重量部未満であると、放射線を吸収して生成する酸の量が少なくなるので、放射線照射前後のアルカリ水溶液に対する溶解度に差をつけることができず、パターニングが困難となり、さらに、共重合体Iのエポキシ基との反応においても、関与する酸の量が少なくなるので、組成物から得られるパターンの耐熱性に不具合が生じる恐れがある。また、100重量部を超えると、短時間の放射線照射では添加したキノンジアジド化合物の大半が未だそのままの形で残存するため、アルカリ水溶液への不溶化効果が高過ぎて現像することが困難となる場合がある。
【0073】
本実施形態のポジ型感放射線性樹脂組成物は、上述した(A1)および(B1)の各成分を均一に混合することによって容易に調製することができる。混合する際、通常適当な(C1)溶剤に溶解させて溶液の形で使用に供される。したがって、本実施形態のポジ型感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有する。
用いる(C1)溶剤としては、(A1)アクリル系ポリマー(共重合体I)および(B1)キノンジアジド化合物を均一に溶解させることができ、各成分と反応しないものが用いられる。
【0074】
そのような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を用いることができる。
【0075】
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
【0076】
これらの溶剤の中では、溶解性、各成分との反応性および塗膜の形成のし易さから、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のジエチレングリコール類が好適である。
【0077】
また、組成物溶液の調製にあたっては、例えば、共重合体Iの溶液、キノンジアジド化合物の溶液およびその他の配合剤の溶液それぞれを別に調製しておき、使用直前にこれら溶液を所定の割合で混合することもできる。以上のようにして調製した組成物溶液は、孔径0.2μmのミリポアフィルター等を用いて瀘過した後、使用に供することもできる。
【0078】
本実施形態のポジ型感放射線性樹脂組成物は、(A1)アクリル系ポリマー、(B1)キノンジアジド化合物、および(C1)溶剤の他、(D1)その他の配合剤を含有することができる。例えば、塗膜の硬度、耐熱性等をさらに向上させたい時には、以下に示すような(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物等を併用することも可能である。アクリル化合物は、最終加熱時に(メタ)アクリル化合物自身が重合することによって形成した塗膜の硬度、耐熱性等をさらに向上させるために用いる。(メタ)アクリル化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
(メタ)アクリル化合物の添加量は共重合体I100重量部に対して、好ましくは5重量部〜100重量部であり、特に好ましくは10〜30重量部である。5重量部未満であると、塗膜の最終加熱処理時に架橋点が充分に増加しないために、耐熱性、硬度等が大きく向上しないことがある。
また、100重量部を超えると、前記(A1)および(B1)の混合物との相溶性が悪くなり、塗膜形成後の塗膜表面に膜荒れを生じることがある。
【0080】
また、エポキシ化合物は、共重合体Iおよび放射線照射によりキノンジアジド化合物から生成する酸との反応点を最終加熱時に調整させるために用いられる。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0081】
上述したエポキシ化合物の中で加熱処理後も着色しにくい点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂およびグリシジルエステル系エポキシ樹脂が好ましい。
【0082】
これらエポキシ化合物の使用量は共重合体I100重量部に対して、好ましくは5重量部〜100重量部、より好ましくは10重量部〜50重量部である。5重量部未満では、共重合体Iおよびキノンジアジド化合物に放射線を照射することにより生成する酸との反応点が充分に増加しないために、耐熱性、硬度等は大きく向上しない。
また、100重量部を超えると前記(A1)および(B1)の混合物との相溶性が悪くなり、塗膜形成後の塗膜表面に膜荒れを生じてしまうことがある。
【0083】
また、本実施形態のポジ型感放射線性樹脂組成物の好ましい第1の例においては、界面活性剤を配合することもできる。
【0084】
[アルカリ可溶性樹脂がアクリル系ポリマーであるネガ型感放射線性樹脂組成物]
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第2の例は、ネガ型感放射線性樹脂組成物であり、アルカリ可溶性樹脂である(A2)アクリル系ポリマーと、(B2)重合性化合物と、(C2)重合開始剤と、必要な場合(D2)溶剤を含んで調製することができる。
【0085】
(A2)アクリル系ポリマーとしては、上述した本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第1の例であるポジ型感放射線性樹脂組成物に含有された(A1)アクリル系ポリマーと同様のものを用いることが可能である。
【0086】
(B2)重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物であれば特に限定されないが、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート等の他、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有しかつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有しかつ3個〜5個の(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0087】
(B2)重合性化合物の市販品としては、例えば、
アロニックス(登録商標)M−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050、アロニックス(登録商標)TO−756、同TO−1450、同TO−1382(以上、東亞合成製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同MAX−3510(以上、日本化薬製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業製)、ウレタンアクリレート系化合物としてニューフロンティア(登録商標)R−1150(第一工業製薬製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、KAYARAD(登録商標)DPHA−40H、UX−5000(日本化薬製)、UN−9000H(根上工業製)、アロニックス(登録商標)M−5300、同M−5600、同M−5700、同M−210、同M−220、同M−240、同M−270、同M−6200、同M−305、同M−309、同M−310、同M−315(以上、東亞合成製)、KAYARAD(登録商標)HDDA、KAYARAD(登録商標)HX−220、同HX−620、同R−526、同R−167、同R−604、同R−684、同R−551、同R−712、UX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、UX−8101、UX−0937、MU−2100、MU−4001(以上、日本化薬製)、アートレジンUN−9000PEP、同UN−9200A、同UN−7600、同UN−333、同UN−1003、同UN−1255、同UN−6060PTM、同UN−6060P、同SH−500B(以上、根上工業製)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業製)等が挙げられる。
【0088】
(B2)重合性化合物は、単独または2種以上を選択して使用することができる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物における(B2)重合性化合物の含有割合としては、(A2)アクリル系ポリマー100質量部に対して10質量部〜300質量部が好ましく、20質量部〜200質量部がより好ましい。(B2)重合性化合物の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物は、高い感度で凹部を有する平坦化膜を形成することが可能となる。
【0089】
本実施形態のネガ型感放射線性樹脂組成物に含有される(C2)重合開始剤としては、感放射線性の重合開始剤を使用することができる。そして、(C2)重合開始剤が光重合開始剤である場合、(C2)重合開始剤は光に感応して(B2)重合性化合物の重合を開始しうる活性種を生じる成分となる。このような(C2)重合開始剤としては、光重合開始剤であるO−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
O−アシルオキシム化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0091】
これらのうち、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)又はエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
【0092】
アセトフェノン化合物としては、例えば、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物が挙げられる。
α−アミノケトン化合物としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
α−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0093】
これらのうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンがより好ましい。
【0094】
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。これらのうち、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール又は2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールがより好ましい。
【0095】
(C2)重合開始剤の含有割合としては、(A2)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜30質量部がより好ましい。(C2)重合開始剤の含有割合を上記特定範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物は、高感度で凹部を有する平坦化膜を形成することが可能となる。
【0096】
本実施形態のネガ型感放射線性樹脂組成物は、上述した(A2)、(B2)および(C2)の各成分を均一に混合することによって容易に調製することができる。混合する際、通常適当な(D2)溶剤に溶解させて溶液の形で使用に供される。したがって、本実施形態のネガ型感放射線性樹脂組成物は、(D2)溶剤を含有することができる。
用いる(D2)溶剤としては、上述した本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第1の例であるポジ型感放射線性樹脂組成物に用いられた(C1)溶剤と同様のものを用いることが可能である。
【0097】
[アルカリ可溶性樹脂がポリシロキサンである感放射線性樹脂組成物]
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第3の例は、アルカリ可溶性樹脂である(A3)ポリシロキサンと、(B3)キノンジアジド化合物と、必要な場合に(C3)溶剤を含んで調製することができる。その場合、本実施形態の感放射線性樹脂組成物はポジ型感放射線性樹脂組成物となる。
【0098】
(A3)ポリシロキサンの好ましい形態としては、下記の一般式(1)で表されるオルガノシランの1種以上を混合、反応させることによって得られるシロキサンポリマー、または、下記の一般式(2)で表される直鎖状ポリシロキサンの1種以上を混合、反応させることによって得られるシロキサンポリマー、あるいは一般式(1)で表されるオルガノシランを1種以上と一般式(2)で表される直鎖状ポリシロキサンの1種以上とを混合、反応させることによって得られるシロキサンポリマーが挙げられる。
【0099】
【化1】

【0100】
は水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。nは0から3の整数を表す。
【0101】
【化2】

【0102】
、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。mは1から1000の範囲を表す。
【0103】
一般式(1)のオルガノシランにおいて、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基が挙げられる。
【0104】
一般式(1)のRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、これらのアルキル基、アシル基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。
【0105】
一般式(1)のnは0から3の整数を表す。n=0の場合は4官能性シラン、n=1の場合は3官能性シラン、n=2の場合は2官能性シラン、n=3の場合は1官能性シランである。
【0106】
一般式(1)で表されるオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0107】
これらのオルガノシランのうち、硬化膜の耐クラック性と硬度の点から3官能性シランが好ましく用いられる。また、これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0108】
一般式(2)の直鎖状ポリシロキサンにおいて、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。
【0109】
一般式(2)のR、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表す。これらのアルキル基、アシル基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。
【0110】
一般式(2)のmは1から1,000の範囲であり、好ましくは2〜100の範囲、さらに好ましくは3〜50の範囲である。mが1,000より大きいと、膜が白濁し、透明性が低下する。
【0111】
直鎖状ポリシロキサンを用いることで、貯蔵安定性、耐クラック性、耐熱性、透明性、低誘電率性、高硬度のすべてにおいて優れた効果を有する。特に、貯蔵安定性について、直鎖状ポリシロキサンは重要な働きをしている。これは、直鎖状ポリシロキサンとオルガノシランとの部分縮合物において、直鎖状ポリシロキサンが橋かけ的に存在するため、貯蔵中の未反応シラノール基の縮合反応が抑制されるためと示唆される。
【0112】
一般式(1)で表されるオルガノシランと、一般式(2)で表される直鎖状ポリシロキサンを混合して用いる場合の混合比率は特に制限は無いが、好ましくはSi原子モル数でオルガノシラン/直鎖状ポリシロキサン=100/0〜50/50である。直鎖状ポリシロキサンが50モル%より多いと、相分離が起こり、塗布膜が白濁して透明性が低下する。ただし、上述の通り、透明性の観点からSi原子に対するフェノール性水酸基の含有率が20モル%以下であることが好ましいので、フェノール性水酸基を有するオルガノシランの添加量はSi原子モル数で20モル%以下であることが好ましい。
【0113】
また、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物に含有される(A3)ポリシロキサンは、上述のオルガノシランと直鎖状ポリシロキサン以外に、シリカ粒子を混合、反応させて合成することが好ましい。シリカ粒子を混合、反応させることで、パターン解像度がさらに向上する。これは、ポリマー中にシリカ粒子が組み込まれることで、膜のガラス転移温度が高くなり熱硬化時のパターンだれが抑えられるためと考えられる。
【0114】
シリカ粒子の数平均粒子径は、好ましくは2nm〜200nmであり、さらに好ましくは5nm〜70nmである。2nmより小さいとパターン解像度の向上が十分ではなく、200nmより大きいと硬化膜が光散乱し透明性が低下する。ここで、シリカ粒子の数平均粒子径は、種々のパーティクルカウンターを用いて測定することができる。
【0115】
シリカ粒子を用いる場合の混合比率は特に制限されないが、Si原子モル数でポリマー全体のSi原子モル数に対して30%以下が好ましい。シリカ粒子が30%より多いと、(A3)ポリシロキサンと(B3)キノンジアジド化合物との相溶性が悪くなり、硬化膜の透明性が低下する。
また、(A3)ポリシロキサン中において、膜の耐クラック性と硬度を両立させる観点から、(A3)ポリシロキサン中にあるフェニル基の含有率はSi原子に対して5モル%〜60モル%が好ましく、さらに好ましくは10モル%〜45モル%である。フェニル基の含有率が60モル%より多いと硬度が低下し、フェニル基含有率が5モル%より少ないと耐クラック性が低下する。
【0116】
また、本実施の形態で用いる(A3)ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくはGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1,000〜100,000、さらに好ましくは2,000〜50,000である。Mwが1,000より小さいと塗膜性が悪くなり、100,000より大きいとパターン形成時の現像液への溶解性が悪くなる。
【0117】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物に含有される(A3)ポリシロキサンは、上述のオルガノシラン、直鎖状ポリシロキサン、シリカ粒子の混合物を加水分解および部分縮合させることにより得られる。加水分解および部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、混合物に溶剤、水、必要に応じて触媒を添加し、50℃〜150℃で0.5時間〜100時間程度加熱攪拌する。なお、攪拌中、必要に応じて蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)や縮合副生物(水)を留去してもよい。
【0118】
上記の反応溶剤としては特に制限は無いが、通常は後述する(C3)溶剤と同様のものが用いられる。溶剤の添加量はオルガノシランと直鎖状ポリシロキサンの混合物100重量部に対して10重量部〜1000重量部が好ましい。また加水分解反応に用いる水の添加量は、加水分解性基1モルに対して0.5モル〜2モルが好ましい。なお、上述のオルガノシラン中にシリカ粒子が含まれる場合においても溶剤の好ましい添加量は同じ範囲である。
【0119】
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒、塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂が挙げられる。触媒の添加量はオルガノシランと直鎖状ポリシロキサンの混合物100重量部に対して0.01重量部〜10重量部が好ましい。
【0120】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、(B3)キノンジアジド化合物を含有する。(B3)キノンジアジド化合物の例としては、上述した好ましい第1の例の、(A1)アクリル系ポリマーを含むポジ型感放射線性樹脂組成物の(B1)キノンジアジド化合物と同様の化合物を用いることができる。
【0121】
(B3)キノンジアジド化合物の添加量について、特に制限は無いが、好ましくは(A3)ポリシロキサンに対して0.1重量%〜10重量%である。より好ましくは0.1重量%〜4重量%である。また好ましくは1重量%〜4重量%である。(B3)キノンジアジド化合物の添加量が0.1重量%より少ない場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、所望する感光性を有さない。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには1重量%以上が好ましい。一方、(B3)キノンジアジド化合物の添加量が4重量%より多い場合、シロキサンポリマーとキノンジアジド化合物との相溶性が悪くなることによる塗布膜の白化が起こるほか、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物の分解による着色が顕著になるために、硬化膜の無色透明性が低下する。キノンジアジド化合物の添加量が10重量%より多い場合、硬化膜の透明性がさらに低下し、十分な透明性を確保できない場合がある。キノンジアジド化合物の添加量が4重量%より多く10重量%以下の場合は、シロキサンポリマー中のフェニル基の含有量や、後述する溶剤中のカルボニル基を有する環状化合物の含有量の調節により、良好な無色透明性を有する硬化膜を得ることができる。
【0122】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の場合、(B3)キノンジアジド化合物に特に制限は無いが、好ましくはフェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物である。
【0123】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第3の例は、(A3)ポリシロキサンおよび(B3)キノンジアジド化合物に加え、(C3)溶剤を含む。(C3)溶剤については、上述した好ましい第1の例の、(A1)アクリル系ポリマーを含むポジ型感放射線性樹脂組成物の(C1)溶剤と同様のものを使用できる。そして、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物および/またはカルボニル基を有する環状化合物が用いられる。これらの溶剤を用いると、(A3)ポリシロキサンと(B3)キノンジアジド化合物とが均一に溶解し、組成物を塗布成膜しても膜は白化することなく、高透明性が達成できる。
【0124】
アルコール性水酸基を有する化合物に特に制限は無いが、好ましくは大気圧下の沸点が110℃〜250℃である化合物である。沸点が250℃より高いと膜中の残存溶剤量が多くなり硬化加熱時の膜収縮が大きくなり、良好な平坦性が得られなくなる。一方、沸点が110℃より低いと、塗膜時の乾燥が速すぎて膜表面が荒れるなど塗膜性が悪くなる。
【0125】
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、さらにカルボニル基を有する化合物が好ましく、特にジアセトンアルコールが好ましく用いられる。これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
カルボニル基を有する環状化合物に特に制限は無いが、好ましくは大気圧下の沸点が150℃〜250℃である化合物である。沸点が250℃より高いと膜中の残存溶剤量が多くなり加熱硬化時の膜収縮が大きくなり、良好な平坦性が得られなくなる。一方、沸点が150℃より低いと、塗膜時の乾燥が速すぎて膜表面が荒れるなど塗膜性が悪くなる。カルボニル基を有する環状化合物の具体例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。これらの中でも、特にγ−ブチロラクトンが好ましく用いられる。これらのカルボニル基を有する環状化合物は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0127】
上述のアルコール性水酸基を有する化合物とカルボニル基を有する環状化合物は、単独でも、あるいは各々混合して用いても良い。混合して用いる場合、その重量比率に特に制限は無いが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物/カルボニル基を有する環状化合物=99/1〜50/50、さらに好ましくは97/3〜60/40である。アルコール性水酸基を有する化合物が99重量%より多い(カルボニル基を有する環状化合物が1重量%より少ない)と、(A3)ポリシロキサンと(B3)キノンジアジド化合物との相溶性が悪く、硬化膜が白化して透明性が低下する。また、アルコール性水酸基を有する化合物が50重量%より少ない(カルボニル基を有する環状化合物が50重量%より多い)と、ポリシロキサン中の未反応シラノール基の縮合反応が起こり易くなり、貯蔵安定性が悪くなる。
【0128】
また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第3の例は、本発明の効果を損なわない限り、その他の溶剤を含有してもよい。さらに、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、増感剤や、熱酸発生剤を含有しても良い。熱酸発生剤を含有することによって、熱硬化時に酸が発生してポリシロキサン中の未反応シラノール基が縮合し、膜の硬度が向上する。
【0129】
[アルカリ可溶性樹脂がポリイミドである感放射線性樹脂組成物]
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第4の例は、アルカリ可溶性樹脂である(A4)ポリイミドと、(B4)キノンジアジド化合物と、必要な場合(C4)溶剤を含んで調製することができる。その場合、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物はポジ型感放射線性樹脂組成物となる。
【0130】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の第4の例は、一般式(3)で表される構造を主成分とするポリマーを含有する。一般式(3)で表される構造を主成分とするポリマーは、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有するポリマーとなり得るものである。好ましくはポリイミド前駆体のポリアミド酸またはポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドである。環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。ここで、主成分とは、一般式(3)で表される構造のうちのn個の構造単位を、ポリマーの全構造単位の50モル%以上有することを意味する。70モル%以上含有することが好ましく、90モル%以上含有することがより好ましい。
【0131】
【化3】

【0132】
上記一般式(3)中、R10は炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示し、酸の構造成分を表している。R10が2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。R10が3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などを挙げることができる。R10が4価となる酸としてはピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸、これらのカルボキシル基2個の水素原子をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物などを挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分を2種以上用いてもかまわないが、テトラカルボン酸の残基を1モル%〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の点から、水酸基を有する酸の残基を50モル%以上含むことが好ましい。
【0133】
10は、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましく、炭素数6〜30の3価または4価の有機基がさらに好ましい。
【0134】
一般式(3)中、R11は炭素数2個以上の2価〜8価の有機基を示し、ジアミンの構造成分を表している。R11は、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましい。ジアミンの具体的な例としては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸、これらの芳香族環の水素をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0135】
一般式(3)のR12およびR13はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。アルカリ現像液に対する溶解性と、得られる感光性樹脂組成物の溶液安定性の点から、R12およびR13のそれぞれ10モル%〜90モル%が水素であることが好ましい。さらに、R12およびR13がそれぞれ炭素数1〜16の1価の炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素原子であることがより好ましい。
【0136】
また、一般式(3)のlおよびmはカルボキシル基またはエステル基の数を示し、0〜2の整数を示す。好ましくは1または2である。一般式(3)のpおよびqは0〜4の整数を示し、p+q>0である。一般式(1)のnはポリマーの構造単位の繰り返し数を示しており、10〜100,000の範囲である。nが10未満であると、ポリマーのアルカリ現像液への溶解性が大きくなり過ぎ、露光部と未露光部のコントラストが得られず所望のパターンが形成できない場合がある。一方、nが100,000より大きいと、ポリマーのアルカリ現像液への溶解性が小さくなり過ぎ、露光部が溶解せず、所望のパターンが形成できない。ポリマーのアルカリ現像液への溶解性の面から、nは1,000以下が好ましく、100以下がより好ましい。また、伸度向上の面から、nは20以上が好ましい。
【0137】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第4の例は、(A4)ポリイミドと、(B4)キノンジアジド化合物と、必要な場合に(C4)溶剤を含む。本実施の形態では、(B4)キノンジアジド化合物として、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが好ましく用いられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、露光部と未露光部のコントラストの観点から、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、放射線として、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いた場合に、好適に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。本実施の形態において、キノンジアジドは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましく、これらを2種以上含有してもよい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
【0138】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第4の例において、(B4)キノンジアジド化合物の分子量は350以上1,200以下が好ましい。
【0139】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、必要な場合に(C4)溶剤を含有することができる。(C4)溶剤としては、上述した本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第1の例において挙げられた(C1)溶剤と同様のものを用いることができる。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。本実施の形態においては、これらの溶剤を2種以上含有してもよい。溶剤の含有量は、(A4)ポリイミド100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、また、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは1500重量部以下である。
【0140】
本実施の形態の感放射線性脂組成物は、(A4)、(B4)および(C4)の他の成分として、(D4)アルコキシメチル基含有化合物を含有することができる。アルコキシメチル基は150℃以上の温度領域で架橋反応を生じるため、現像後の加熱処理により架橋し、耐薬品性に優れた硬化膜を形成することができる。(D4)成分はアルコキシメチル基を4以上有することが好ましく、耐薬品性をより向上させることができる。
【0141】
本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、さらに、シラン化合物を含有してもよい。また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、光酸発生剤を含有してもよい。光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩またはジアゾニウム塩が好ましく、これらを2種以上含有してもよい。光酸発生剤を含有することにより、アルカリ現像液に対する溶解調整剤として作用する。なかでもスルホニウム塩が好ましく、トリアリールスルホニウム塩がより好ましい。また、必要に応じて、感放射線性樹脂組成物の放射線に対する感度を向上させる目的で、フェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。
【0142】
[感放射線性樹脂組成物を用いた平坦化膜の形成]
本実施の形態の平坦化膜の形成について、上述したポジ型感放射線性樹脂組成物を例として用い、その説明をする。上述した本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の好ましい第1の例である、アクリル系ポリマーを含有するポジ型感放射線性樹脂組成物を用いた場合、平坦化膜の形成は以下のようになる。
【0143】
[塗膜の作製方法]:本実施の形態においては、上述した第1の例のポジ型感放射線性樹脂組成物を、所定の基体表面に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって所望の塗膜を形成することができる。基体表面への塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。
【0144】
ポジ型感放射線性樹脂組成物の塗膜の加熱条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常は70℃〜90℃で5分間〜15分間程度である。次に、得られた塗膜に所定のパターンのマスクを介して、例えば、紫外線を照射した後、現像液を用いて現像し、不要な部分を除去するとともに所望形状の凹部を形成し、全体のパターンを形成させる。このとき、マスクにグレイトーンマスクやハーフトーンマスクを利用するなどして、露光量を調整し、平坦化膜が所望の形状にパターニングされ、それとともに所望の位置と形状で平坦化膜中に凹部が形成されるようにすることが望ましい。
【0145】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0146】
現像時間は通常30秒間〜180秒間であり、また現像の手法は液盛り法、ディッピング法等のいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を30秒間〜90秒間行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、不要な部分を除去し、凹部を形成して、パターンを形成させることができる。その後、例えば、紫外線を照射(ブリーチング露光)することによって未露光部分であるパターン中に残存しているキノンジアジド化合物を分解する。さらに、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば、150℃〜250℃で所定の時間、例えば、ホットプレート上なら5分間〜30分間、オーブン中ならば30分間〜90分間、加熱硬化処理をする。以上により、所望形状の凹部を有し、耐熱性、透明性、硬度等に優れた平坦化膜を得ることができる。
尚、キノンジアジド化合物を分解させるブリーチング露光については、加熱硬化工程の後に行うことも可能である。
【0147】
上述した本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の第3の例であるポリシロキサンを含有するポジ型の感放射線性樹脂組成物を用いた場合も、上記と同様にして、本実施の形態の平坦化膜の形成を行うことができる。上述した本実施の形態の感放射線性樹脂組成物の第4の例であるポリイミドを含有するポジ型の感放射線性樹脂組成物を用いた場合も、上記と同様にして、本実施の形態の平坦化膜の形成を行うことができる。
【0148】
<有機EL表示素子の製造>
本実施の形態の有機EL表示素子の製造においては、TFTの形成された基板上に上述した感放射線性樹脂組成物から塗膜を形成し、放射線の照射によるパターニングを行って凹部の形成された平坦化膜をするための工程と、平坦化膜の凹部の上にバンクを形成するための工程と、バンクに規定された領域に有機発光層を形成する工程とが主要な製造工程として含まれる。本実施形態の有機EL表示素子の主要な構成要素である平坦化膜、バンクおよび有機発光層を形成し、有機EL表示素子を製造する方法について説明する。
【0149】
本実施の形態の有機EL表示素子の製造方法は、少なくとも下記の工程[1]〜[5]を以下の順で含む。
[1]平坦化膜を形成するために、感放射線性樹脂組成物を、アクティブ素子の形成された基板上に塗布する工程(以下、[1]工程と称することがある。)
[2」感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、[2]工程と称することがある。)
[3]放射線が照射された塗膜を現像し、平坦化膜上に凹部を形成する工程(以下、[3]工程と称することがある。)
[4]平坦化膜の凹部の上に前記バンクを形成する工程(以下、[4]工程と称することがある。)
[5]バンクに規定された領域に有機発光層の材料を含むインク状の発光材料組成物を塗布して、有機発光層を形成する工程(以下、[5]工程と称することがある。)
【0150】
以上の工程により、本実施の形態の感放射線性樹脂組成物を用いてアクティブ素子であるTFTの形成された基板上に、所望形状の凹部を有する平坦化膜を形成し、平坦化膜の凹部の上にバンクを形成することができる。尚、平坦化膜の凹部は、平坦化膜を貫通することが無いよう形成されている。そして、他の公知の製造方法と組み合わせることにより、本実施の形態の有機EL表示装置を製造することができる。その場合、平坦化膜の凹部の上に形成されるバンクは、凹部にガイドされて形状が制御され、所望の形状となる。すなわち、バンクは、所望の均一な細い線幅を有し、有機発光層の有効な面積を十分に確保するとともに、有機発光層の形状を各画素間で均一にするよう、有機発光層の形成領域を規定できることになる。以下、製造方法における各工程をについて説明する。
【0151】
[[1]工程]〜[[3]工程]
[1]〜[3]の工程では、基板上に、凹部の形成された平坦化膜を形成する。基板は、アクティブ素子であるTFTの形成された基板である。基板の材料は、上述した材料の選択が可能である。TFTは、基板上、公知の方法による半導体膜成膜と、絶縁膜成膜と、フォトリソグラフィー法によるエッチングとを繰り返すことにより形成されたものである。平坦化膜の形成は、例えば、上述した本実施の形態のポジ型感放射線性樹脂組成物を塗布して行うが可能である。その場合の平坦化膜の形成方法の詳細については、上述した塗膜の作製方法に従うことができる。
【0152】
[[4]工程]
本工程では、[3]工程で形成された基板上の平坦化膜の上に陽極を形成する。次いで、平坦化膜を貫通することが無いよう形成された平坦化膜中の凹部の上であって、その凹部上の陽極の上にバンクを形成する。陽極は、上述のように、ITOなどの導電性の材料からなる。その導電性の材料を、スパッタリング法などを利用して平坦化膜上に成膜した後、成膜された膜をエッチングなどによりパターニングすることで形成することができる。また、液状の陽極形成材料を平坦化膜上インクジェット、ディスペンサー、凸版、凹版印刷などで塗布し、塗布された陽極形成材料を乾燥して陽極を形成することも可能である。
【0153】
バンクは樹脂材料を用い、フォトリソグラフィー法や印刷法を用いて形成することができる。フォトリソグラフィー法を利用する場合、基板上にネガ型の感光性樹脂膜を形成する。例えば、ネガ型の感光性樹脂組成物をスピンコートなどの塗布法で基板上に塗布した後、80℃〜120℃で、1分間〜5分間ベークして、樹脂塗膜を成膜する。
【0154】
バンク形成用の感光性樹脂組成物には、バインダー樹脂、モノマー、光重合開始剤などが含まれ、上述した撥液剤などを含んでいてもよい。
バインダー樹脂の例には、フェノール−ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂が含まれる。
【0155】
モノマーの例には、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸、エステル類、(メタ)アクリルアミド類、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、N−ビニル複素環類、アリルエーテル類、アリルエステル類、およびこれらの誘導体が含まれる。
【0156】
光重合開始剤の例には、ベンゾフェノンや4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノンや2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン誘導体;チオキサントンや2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;2−メチルアントラキノンや2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、クロロアントラキノンなどのアントラキノン誘導体;ベンゾインメチルエーテルやベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル誘導体;フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキシドのアシルフォスフィン誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(4’−メチルフェニル)イミダゾリル二量体等のロフィン量体;N−フェニルグリシンなどのN−アリールグリシン類;4,4’−ジアジドカルコンなどの有機アジド類;3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボキシ)ベンゾフェノン;キノンジアジド基含有化合物が含まれる。
【0157】
次いで、感光性樹脂塗膜を露光および現像する。感光性樹脂塗膜を現像することで、樹脂塗膜にバンクのパターンを形成する。すなわち、感光性樹脂塗膜のうち、残したい領域にマスクなどを用いて選択的に光を照射し、光を照射していない領域の感光性樹脂塗膜を、TMAHなどの現像液を用いて除去する。これにより、基板上に平坦化膜の凹部上に配置されたバンクのパターンを形成する。感光性樹脂塗膜の露光量は、感光性樹脂の組成によって適宜選択されるが、例えば、50mJ/cm〜300mJ/cmである。露光光時間も、感光性樹脂の組成によって適宜選択されるが、例えば、露光用ランプの照度が20mW/cmである場合、2.5秒〜15秒である。
【0158】
露光および現像した後の樹脂膜を加熱硬化して、バンクを形成する。加熱硬化温度は、例えば、180℃〜240℃であり、焼成時間は、例えば、50分間〜70分間である。
【0159】
また、バンクは樹脂材料を用い、インクジェット法などの印刷法を用いて形成することができる。インクジェット法を利用する場合、バンクの形成材料である樹脂材料および溶剤を含むインク状のバンク材料組成物を準備する。このバンク材料組成物を用い、画素の有機発光層の形成領域の周囲であって、平坦化膜の凹部の上の陽極上に塗布する。そして、乾燥を行うことによりバンクを形成することが可能である。また、バンク形成組成物を用い、凸版印刷や凹版印刷などの技術を利用して、平坦化膜の凹部の上であって、陽極上にバンクを形成することが可能である。
【0160】
[[5]工程]
本工程では、[4]工程で形成されたバンクによって規定された領域で、陽極上、有機発光層の材料を含むインク状の発光材料組成物を塗布して、有機発光層を形成する。赤、緑および青にそれぞれ発光する有機発光層は、バンクによって規定された領域内に、有機発光材料および溶剤を含む液状の発光材料組成物を塗布し、塗布した組成物を乾燥させることにより形成される。溶剤の例には、アニソールなどの芳香族系の溶剤が含まれる。塗布する手段は特に限定されない。塗布する手段の例には、インクジェット、ディスペンサー、ノズルコート、スピンコート、凹版印刷、凸版印刷などを用いた方法が含まれる。好ましい塗布手段は、インクジェット法である。また、供給される発光材料組成物の量は、1画素(5,000μm〜30,000μm)あたり40pl〜120plであることが好ましい。
【0161】
有機発光材料と溶剤とを含む液状の発光材料組成物を、インクジェット法などの塗布法によって画素領域に塗布することによって、容易かつ他の材料に損傷を与えることなく有機発光層を形成することができる。
以上の[1]工程〜[5]工程により有機発光層を形成した後、蒸着法やスパッタリング法などの公知の方法に従い、有機発光層上に陰極を形成する。必要な場合は、陰極上に公知の方法に従いパッシベーション膜を形成し、その後、封止基板により上方から有機発光層の形成された基板面を封止する。封止は、封止基板封の外周に沿って、例えば、紫外線硬化型のシール材を塗布し、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中において、有機発光層の形成された基板と封止基板とを貼り合わせる。これにより、有機発光層は、不活性ガス雰囲気の密閉空間内に封入される。その後、紫外線を照射して、シール材を硬化させる。以上より、本実施の形態の有機EL表示素子を得ることができる。
【0162】
本実施の形態の有機EL表示素子は、駆動用のTFTの上に形成された平坦化膜の上部表面に、平坦化膜を貫通することが無いよう形成された凹部が設けられる。この凹部は、バンク形成のためのガイドとして機能する。すなわち、バンクは平坦化膜の凹部にガイドされて形状が制御され、所望の形状が実現される。したがって、本実施の形態の有機EL表示素子は、所望の細い線幅を有し、有機発光層の有効な面積を十分に確保するとともに、有機発光層の形状を各画素間で均一にするよう、有機発光層の形成領域を規定できるバンクを備えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の有機EL表示素子は、インクジェット法などを利用して簡便かつ高い精度を持って、有機発光層を区画するためのバンクを形成することができる。したがって、本発明の有機EL表示素子は、優れた表示品位と信頼性が求められる大型平面テレビ用などに好適に使用できる。
【符号の説明】
【0164】
1、100 有機EL表示素子
2、102 基板
3、103 TFT
4、104 平坦化膜
6、106 陽極
7、107 スルーホール
8、108 バンク
9、109 有機発光層
10、110 陰極
11、111 パッシベーション膜
12、112 封止基板
13 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられたアクティブ素子と、前記アクティブ素子を被覆する平坦化膜と、前記平坦化膜上に配設されて前記平坦化膜を貫通するスルーホールを介して前記アクティブ素子と接続する陽極と、前記陽極上に配設された有機発光層と、前記有機発光層の配置領域を規定するバンクと、前記有機発光層の上に配設された陰極とを有する有機EL表示素子であって、
前記平坦化膜は前記有機発光層の配置領域の周囲の少なくとも一部に、前記平坦化膜を貫通することが無いように形成された凹部を有し、前記バンクは少なくとも一部が前記凹部の上に形成されていることを特徴とする有機EL表示素子。
【請求項2】
前記バンクは、インクジェット法を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示素子。
【請求項3】
前記バンクの幅(t1)と前記平坦化膜の前記凹部の幅(t2)との関係は、0.8×(t2)≦(t1)≦1.2×(t2)であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示素子。
【請求項4】
前記平坦化膜は、感放射線性樹脂組成物によって形成される有機膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL表示素子。
【請求項5】
前記感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)溶剤を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示素子。
【請求項6】
前記感放射線性樹脂組成物の含有する(A)アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系ポリマー、ポリシロキサンおよびポリイミドからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示素子。
【請求項7】
基板と、前記基板上に設けられたアクティブ素子と、前記アクティブ素子を被覆する平坦化膜と、前記平坦化膜上に配設されて前記アクティブ素子と接続する陽極と、前記陽極上に配設された有機発光層と、前記有機発光層の配置領域を規定するバンクと、前記有機発光層の上に配設された陰極とを有する有機EL表示素子の製造方法であって、
[1]感放射線性樹脂組成物を前記アクティブ素子の形成された前記基板上に塗布する工程、
[2]前記感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
[3]前記放射線が照射された塗膜を現像し、前記基板上に前記平坦化膜を形成するとともに前記平坦化膜を貫通することが無いよう前記平坦化膜に凹部を形成する工程、
[4]前記平坦化膜の前記凹部の上に前記バンクを形成する工程、並びに
[5]前記バンクに規定された領域に前記有機発光層の材料を含むインク状の発光材料組成物を塗布して、有機発光層を形成する工程
を有することを特徴とする有機EL表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記平坦化膜は、前記感放射線性樹脂組成物によって形成される有機膜であることを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)溶剤を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記感放射線性樹脂組成物の含有する(A)アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系ポリマー、ポリシロキサンおよびポリイミドからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項11】
[4]工程では、インクジェット法を用い、前記平坦化膜の前記凹部の上に前記バンクを形成することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の有機EL表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234748(P2012−234748A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103881(P2011−103881)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】