説明

有機EL表示装置、当該有機EL表示装置に組み込まれるカラーフィルタおよびカラーフィルタの製造方法

【課題】簡易な構造により広い視野角を得ることができる有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置10は、有機EL光源用基板21と、有機EL光源用基板21の観察側の面に設けられた有機EL層22とを有する有機EL光源20と、有機EL光源20の観察側に設けられたカラーフィルタ30と、を備えている。カラーフィルタ30は、カラーフィルタ用基板31と、カラーフィルタ用基板31上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層32と、カラーフィルタ用基板31上のブラックマトリクス層32間に設けられた赤色着色層33R,緑色着色層33Gおよび青色着色層33Bと、を有している。これら各着色層33R,33G,33Bの表面34には、複数の凹部35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置に係り、とりわけ、広い視野角を実現可能な有機EL表示装置に関する。また本発明は、有機EL表示装置に組み込まれて用いられるカラーフィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの1つとして、エレクトロルミネッセンス現象を利用して画像を表示する有機EL表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、有機EL層の有機発光層の発光現象を利用して画像を表示する自発光型のディスプレイであり、このため、消費電力が小さく、かつ軽量である点において優れている。
【0003】
有機EL表示装置に搭載される有機EL層は、主に、2つの電極層の間に有機発光層が設けられた構造からなっている。また、カラーディスプレイの場合、有機発光層は一般に、赤色光を発生させる赤色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、青色光を発生させる青色発光層と、を含んでいる。このような有機EL層の構造に関して、発光性能を向上させることを目的として、様々な形態が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1においては、青色光、緑色光および赤色光の色純度を高めるために、有機発光層から発光した光を、光反射性を有する一方の電極と半透明反射膜からなる他方の電層との間で共振させる形態(いわゆるマイクロキャビティ構造)が提案されている。マイクロキャビティ構造においては、光反射性を有する一方の電極と半透明反射膜からなる他方の電極との間の光学的距離が、有機発光層から発光した光の波長に合致している。このため、有機EL層から取り出される青色光、緑色光または赤色光のそれぞれの発光スペクトルが急峻になる。すなわち、青色光、緑色光および赤色光の色純度が高められている。
【0005】
ところで、マイクロキャビティ構造の有機EL層においては、上述のように、2つの電極の間の光学的距離が、有機発光層から発光した光の波長に合致した場合にのみ、当該光が取り出される。このため、例えば、有機EL層からの出射角が0度の場合にその波長が電極間の光学的距離に合致する光は、出射角が0度以外の方向においてその強度が小さくなる。同様に、有機EL層からの出射角が10度の場合にその波長が電極間の光学的距離に合致する光は、出射角が10度以外の方向においてその強度が小さくなる。すなわちマイクロキャビティ構造の有機EL層においては、出射角によって光の強度が大きく変化し、これによって、視野角が狭くなることが考えられる。
【0006】
またマイクロキャビティ構造の有機EL層においては、上述のように、電極間の光学的距離に合致する光の波長が出射角によって異なっている。このため、有機EL表示装置を観察する角度によって、有機EL表示装置に表示される像の色合いが異なってくることが考えられる。
【0007】
一方、有機EL層から出射された光の進行方向を変えることを目的として、散乱機能を有するカラーフィルタが提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2に記載のカラーフィルタにおいては、赤色着色層、緑色着色層および青色着色層にそれぞれ光散乱作用を有する微粒子が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−177896号公報
【特許文献2】特開2007−33963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
引用文献2に記載のカラーフィルタにおいては、通常のカラーフィルタの製造工程に加えて、各着色層に微粒子を添加する工程が必要となる。また一般に、微粒子による光散乱強度は光の波長に依存すると考えられる。このため、特許文献2に記載のカラーフィルタにおいては、光散乱強度の波長依存性に対処するため、赤色着色層、緑色着色層および青色着色層にそれぞれ含まれる微粒子の含有量が互いに異なっている。すなわち、特許文献2に記載のカラーフィルタにおいては、カラーフィルタの構造および製造工程が、通常のカラーフィルタに比べて複雑になっている。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、簡易な構造により広い視野角を得ることができる有機EL表示装置、および当該有機EL表示装置に組み込まれるカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による有機EL表示装置は、有機EL光源用基板と、当該有機EL光源用基板の観察側の面に設けられた有機EL層とを有する有機EL光源と、前記有機EL光源の観察側に設けられたカラーフィルタと、を備え、前記有機EL光源の有機EL層は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられ、エレクトロルミネッセンスにより光を放出する有機発光層と、を有し、前記カラーフィルタは、カラーフィルタ用基板と、カラーフィルタ用基板上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層と、カラーフィルタ用基板上のブラックマトリクス層間に設けられた着色層と、を有し、前記着色層の表面に凹部が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置である。
【0012】
本発明による有機EL表示装置において、好ましくは、前記着色層の表面に形成されている凹部の深さが0.5〜2.5μmの範囲内となっている。
【0013】
本発明による有機EL表示装置において、好ましくは、前記着色層の表面において、前記凹部により占められる面積の比率が10〜50%の範囲内となっている。
【0014】
本発明による有機EL表示装置において、前記陽極または前記陰極のうち観察側に配置された一方が半透明反射膜からなるとともに、前記陽極と前記陰極との間の光学的距離が、前記有機発光層から発光した光のピーク波長の整数倍または半整数倍となっていてもよい。
【0015】
本発明によるカラーフィルタは、上記記載の有機EL表示装置に組み込まれるカラーフィルタであって、カラーフィルタ用基板と、カラーフィルタ用基板上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層と、カラーフィルタ用基板上のブラックマトリクス層間に設けられた着色層と、を有し、前記着色層の表面に凹部が形成されていることを特徴とするカラーフィルタである。
【0016】
本発明によるカラーフィルタにおいて、好ましくは、前記着色層の表面に形成されている凹部の深さが0.5〜2.5μmの範囲内となっている。
【0017】
本発明によるカラーフィルタにおいて、好ましくは、前記着色層の表面において、前記凹部により占められる面積の比率が10〜50%の範囲内となっている。
【0018】
本発明によるカラーフィルタの製造方法は、カラーフィルタ用基板を準備する工程と、前記カラーフィルタ用基板上に所定パターンでブラックマトリクス層を形成する工程と、前記カラーフィルタ用基板上の前記ブラックマトリクス層間に着色層を形成する工程と、を備え、前記着色層の表面には凹部が形成されており、前記着色層を形成する工程は、前記カラーフィルタ用基板上に着色層用の光硬化性樹脂を塗布する工程と、前記ブラックマトリクス層および前記着色層の凹部に対応する遮光部を有するマスクを用いて前記光硬化性樹脂を露光する工程と、前記光硬化性樹脂を現像する工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有機EL表示装置は、有機EL光源と、有機EL光源の観察側に設けられたカラーフィルタと、を備えている。このうちカラーフィルタは、カラーフィルタ用基板と、カラーフィルタ用基板上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層と、カラーフィルタ用基板上のブラックマトリクス層間に設けられた着色層と、を有している。また、着色層の表面には凹部が形成されている。このため、有機EL光源からカラーフィルタに入射した光が、着色層の表面に形成されている凹部によって散乱される。このことにより、広い視野角を有する有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図、図1(b)は、図1(a)に示す有機EL表示装置のカラーフィルタを有機EL光源側から見た場合を示す平面図、図1(c)は、図1(a)に示す有機EL表示装置の有機EL光源をカラーフィルタ側から見た場合を示す平面図。
【図2】図2は、図1(a)に示す有機EL表示装置を拡大して示す縦断面図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの着色層を示す平面図。
【図4】図4(a)は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの着色層の構造を示す縦断面図、図4(b)は、図4(a)の着色層を拡大して示す図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの製造方法を示す図。
【図6】図6(a)(b)は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの着色層の形成方法を示す図。
【図7】図7は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの着色層により光が散乱される様子を示す図。
【図8】図8は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの着色層の構造の変形例を示す縦断面図。
【図9】図9(a)〜(d)は、本発明の実施の形態において、カラーフィルタの着色層の構造のその他の変形例を示す平面図。
【図10】図10(a)は、実施例におけるカラーフィルタの着色層を示す平面図、図10(b)は、実施例において、カラーフィルタの着色層により光が散乱される様子を示す図、図10(c)は、実施例において、カラーフィルタから出射された光のスペクトルを測定した結果を示す図。
【図11】図11(a)は、比較例におけるカラーフィルタの着色層を示す平面図、図11(b)は、比較例において、カラーフィルタの着色層により光が散乱される様子を示す図、図11(c)は、比較例において、カラーフィルタから出射された光のスペクトルを測定した結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
有機EL表示装置
以下、図1乃至図9を参照して、本発明の実施の形態について説明する。まず図1(a)(b)(c)により、本実施の形態における有機EL表示装置10全体について説明する。
【0022】
図1(a)に示すように、有機EL表示装置10は、有機EL光源用基板21と、有機EL光源用基板21の観察側の面に設けられた有機EL層22とを有する有機EL光源20と、有機EL光源20の観察側に設けられたカラーフィルタ30と、を備えている。なお本実施の形態における有機EL表示装置10はいわゆるトップエミッション型であり、有機EL層22において発生した光が、有機EL光源用基板21とは反対側(図1(a)における上側)から取り出される。従って、図1(a)においては上側が「観察側」となっている。
【0023】
図1(c)に示すように、有機EL光源20の有機EL層22は、各々が有機EL表示装置10の単位画素を構成する赤色発光素子23R,緑色発光素子23Gおよび青色発光素子23Bを含んでいる。また有機EL光源用基板21の周縁領域には、各発光素子23R,23G,23Bに接続された信号線(図示せず)を駆動制御する信号線駆動回路15と、各発光素子23R,23G,23Bに接続された走査線(図示せず)を走査駆動する走査線駆動回路16とが配置されている。
【0024】
また図1(a)(b)に示すように、カラーフィルタ30は、有機EL光源20の有機EL層22の赤色発光素子23R,緑色発光素子23Gおよび青色発光素子23Bに対応するよう設けられた赤色着色層33R,緑色着色層33Gおよび青色着色層33Bを有している。
【0025】
また図1(a)に示すように、有機EL光源20とカラーフィルタ30との間には接着剤11が介在されており、これによって有機EL光源20とカラーフィルタ30とが接着されている。なお図1(a)において、接着剤11が有機EL光源20の周縁部にのみ設けられている例を示したが、これに限られることはなく、接着剤11が有機EL光源20とカラーフィルタ30との間の全域にわたって充填されていてもよい。
【0026】
また図1(a)に示すように、有機EL光源用基板21上の有機EL層22は、必要に応じてオーバーコート層12により覆われている。オーバーコート層12は、有機EL層22を保護するための層であり、例えば透明感光性樹脂、透明熱硬化性樹脂等から形成されている。また図示はしないが、カラーフィルタ30の後述する着色層33R,33G,33Rが同様のオーバーコート層により覆われていてもよい。
【0027】
有機EL光源
次に図2を参照して、有機EL光源20について詳細に説明する。図2に示すように、有機EL光源20の有機EL層22において、赤色発光素子23Rは、陽極24と、陽極24の観察側に位置する陰極26と、陽極24と陰極26の間に設けられ、エレクトロルミネッセンスにより赤色光を放出する赤色有機発光層25Rと、を有している。同様に、緑色発光素子23Gは、陽極24と緑色有機発光層25Gと陰極26とを有しており、また青色発光素子23Bは、陽極24と青色有機発光層25Bと陰極26とを有している。
【0028】
(陽極)
陽極24を構成する材料としては、効率良く正孔を注入できる材料であれば特に限定されることはなく、例えば、アルミニウム、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀または金およびそれらの合金等が使用される。
【0029】
(陰極)
一方、陰極26は、陽極24と陰極26との間でマイクロキャビティ構造(後述)を構成するため、半透明反射膜からなっている。半透明反射膜としては、例えば、TiO膜とSiO膜とを積層して形成された膜が用いられる。
【0030】
(有機発光層)
赤色有機発光層25R,緑色有機発光層25Gおよび青色有機発光層25Bは、所定の電圧を印加することにより所望の色で発光する蛍光性有機物質を含有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、キノリノール錯体、オキサゾール錯体、各種レーザー色素、ポリパラフェニレンビニレン等が用いられる。
【0031】
なお、陽極24から注入された正孔を有機発光層25R,25G,25Bに効率的に輸送するため、陽極24と有機発光層25R,25G,25Bとの間に正孔輸送層(図示せず)が設けられていてもよい。正孔輸送層の構成材料としては、例えばテトラフェニルベンジジンが挙げられる。さらに、陽極24と正孔輸送層との間に、正孔注入層(図示せず)が設けられていてもよく、また、有機発光層25R,25G,25Bと陰極26との間に、電子注入層(図示せず)や電子輸送層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0032】
次に、マイクロキャビティ構造について説明する。赤色発光素子23Rにおいて、陽極24と陰極26との間の距離tは、陽極24と陰極26との間の光学的距離が、赤色有機発光層25Rから発光した光のピーク波長の整数倍または半整数倍となるよう定められている。また上述のように、陽極24が金属から形成され、陰極26が半透明反射膜から形成されている。このため、赤色有機発光層25Rから発光した光は、陽極24と陰極26との間で反射干渉を繰り返す。この結果、赤色発光素子23Rから外部に取り出される赤色光のスペクトルが急峻になり、これによって、赤色光の色純度を高めることができる。
【0033】
発光素子23G,23Bにおいても同様に、陽極24と陰極26との間の距離t,tは、陽極24と陰極26との間の光学的距離が、有機発光層25G,25Bから発光した光のピーク波長の整数倍または半整数倍となるよう定められている。このようにして、赤色発光素子23R,緑色発光素子23Gおよび青色発光素子23Bにおいてそれぞれマイクロキャビティ構造が構成されている。
【0034】
ところで、マイクロキャビティ構造を有する発光素子においては、マイクロキャビティ構造を有さない場合に比べて、上述のように、発光素子から取り出される光の視野角が狭くなっている。このため本実施の形態においては、後述するように、カラーフィルタ30の着色層に光散乱機能が付与されている。以下、カラーフィルタ30について詳細に説明する。
【0035】
カラーフィルタ
図1(a)(b)および図2に示すように、カラーフィルタ30は、カラーフィルタ用基板31と、カラーフィルタ用基板31上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層32と、カラーフィルタ用基板31上のブラックマトリクス層32間に設けられた赤色着色層33R,緑色着色層33Gおよび青色着色層33Bと、を有している。
【0036】
(カラーフィルタ用基板)
カラーフィルタ用基板31は、光透過性を有するとともに、所定の安定性、耐久性等を備える限り特に限定されるものではない。カラーフィルタ用基板31として、例えば、ガラスやポリマー等が使用される。
【0037】
(ブラックマトリックス層)
ブラックマトリックス層32は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等によりクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成される。その他にも、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングしてブラックマトリックス層32を形成してもよく、または、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をパターニングしてブラックマトリックス層32を形成してもよい。
【0038】
(着色層)
赤色着色層33R,緑色着色層33Gおよび青色着色層33Bは、各色の顔料や染料等の着色剤を光硬化型感光性樹脂中に分散または溶解させて形成された層である。
このうち赤色着色層33Rに用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層33Gに用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層33Bに用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
赤色着色層33R,緑色着色層33Gおよび青色着色層33Bの厚さは、通常は1〜5μmの範囲で設定される。
【0039】
(凹部)
次に、赤色着色層33R,緑色着色層33Gおよび青色着色層33Bに光散乱機能を付与するための構造について説明する。図2に示すように、各着色層33R,33G,33Bの表面34には複数の凹部35が形成されている。ここで「着色層の表面」とは、図2に示すように、着色層33R,33G,33Bの両面のうち、カラーフィルタ用基板31に接している面の反対側にある面のことである。
【0040】
なお、後述する図4などに示されているように、着色層33R,33G,33Bのうちブラックマトリクス層32上に位置する領域には、製造方法に起因して隆起部や凹凸部が形成されることがある。しかしながら本実施の形態における「凹部35」は、ブラックマトリクス層32上に形成される隆起部や凹凸部を含まない。本実施の形態における凹部35とは、ブラックマトリクス層32間に位置する着色層33R,33G,33Bの表面34に形成されている凹部のことである。また表面34とは、ブラックマトリクス層32間に位置する着色層33R,33G,33Bの表面のことである。
【0041】
次に、図3および図4(a)(b)を参照して、着色層33R,33G,33Bの表面34に形成されている凹部35について詳細に説明する。
【0042】
図3に示すように、凹部35を上方から見た場合、凹部の形状は円形状となっている。また図4に示すように、凹部35の縦断面の形状は三角形状となっている。すなわち、本実施の形態における凹部35は円錐形状を有している。
【0043】
次に凹部35の配置について説明する。図3に示すように、複数の凹部35は、表面34に不規則なパターンで配置されている。ここで「不規則」とは、最近接する2つの凹部35を結んだ線の長さおよび方向に何ら規則性が無いことを意味している。
【0044】
次に凹部35の深さについて説明する。なお着色層33R,33G,33Bは、透過させる光の波長域が異なるのみであるから、ここでは、各着色層33R,33G,33Bのうち青色着色層33Bにおける凹部35の深さについて説明する。
【0045】
図4(a)は、図3のIV−IV線に沿った青色着色層33Bの縦断面図であり、図4(b)は、図4(a)の凹部35を拡大して示す図である。図4(a)に示すように、凹部35の深さdとは、ブラックマトリクス層32間の青色着色層33Bの表面34に仮想的な接平面VPを描いた場合の、接平面VPから凹部35の最深部35aまでの距離のことである。
【0046】
なお図4(b)に示すように、製造工程におけるばらつきなどに起因して、青色着色層33Bの表面34がある程度粗くなっていることが考えられる。ここで、表面34の最大粗さをRとした場合、凹部35の深さdは、表面の最大粗さRよりも大きくなっている。すなわち、凹部35は、表面34において、製造工程におけるばらつきの程度を超えて意図的に凹まされている部分として定義される。
【0047】
表面34の最大粗さRを算出する方法が特に限られることはなく、例えば、表面34のうち凹部35が明らかに形成されていないと思われる領域において、表面粗さRを測定することにより算出される。表面粗さRの定義としては、例えば、JIS B0601−1994に規定されている最大高さ(Ry)や十点平均粗さ(Rz)などが用いられる。また、JIS B0601−1994に規定されている算術平均粗さ(Ra)に所定の係数(例えば4)を掛けたものを表面粗さRとしてもよい。
【0048】
好ましくは、着色層33R,33G,33Bの表面34に形成されている凹部35の深さdは、0.5〜2.5μmの範囲内となっている。また、好ましくは、着色層33R,33G,33Bの表面34において、凹部35により占められる面積の比率が、10〜50%の範囲内となっている。これによって、有機EL光源20からカラーフィルタ30に入射される光を適度に散乱させることができ、このことにより、有機EL表示装置10の視野角を広くすることができる。
例えば、着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35が形成されていない場合に比べて、カラーフィルタ30によって散乱される光の比率を高くすることができ、同時に、着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35が形成されていない場合に比べてカラーフィルタ30の平行透過率が大きく劣化するのを防ぐことができる。より具体的には、本実施の形態による凹部35が形成されているカラーフィルタ30におけるヘイズ値を50〜90%の範囲内とすることができる。さらに、着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35が形成されていないカラーフィルタにおける平行透過率と比べた場合の、本実施の形態による凹部35が形成されているカラーフィルタ30における平行透過率の劣化の程度を0〜30%の範囲内にとどめることができる。
なおカラーフィルタ30の平行透過率とは、カラーフィルタ30の法線方向に平行にカラーフィルタ30に入射される光のうち、当該法線方向に平行にカラーフィルタ30から出射される透過光の割合のことである。
【0049】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、カラーフィルタ30の製造方法について説明し、次に、カラーフィルタ30により有機EL光源20からの光を散乱させる作用について説明する。
【0050】
カラーフィルタの製造方法
まず図5(a)〜(d)および図6(a)(b)を参照して、カラーフィルタ30の製造方法について説明する。図5(a)〜(d)は、カラーフィルタを製造する工程を示すであり、図6(a)(b)は、カラーフィルタを製造する工程のうち、特に着色層用材料を露光および現像する工程を詳細に示す図である。図5(a)〜(d)および図6(a)(b)においては、右側に、各工程におけるカラーフィルタ用基板31を上方から見た場合の平面図が示されており、左側に、各工程におけるカラーフィルタ用基板31の縦断面図が示されている。
【0051】
はじめに、カラーフィルタ用基板31を準備し、次に、図5(a)に示すように、カラーフィルタ用基板31上に所定パターンでブラックマトリクス層32を形成する。
【0052】
ブラックマトリクス層32を形成する工程においては、まずカラーフィルタ用基板31上に、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成したクロム等の金属薄膜、または、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有した樹脂層等からなる遮光層(図示せず)を形成する。次に、この遮光層上に、公知のポジ型あるいはネガ型の感光性レジストを用いて感光性レジスト層(図示せず)を形成する。次いで、感光性レジスト層を、ブラックマトリックス層32用のフォトマスクを介して露光、現像する。その後、露出した遮光層をエッチングし、次に、残存する感光性レジスト層を除去する。このようにして、ブラックマトリックス層32が形成される。
【0053】
次に、ブラックマトリックス層32間に着色層33R,33G,33Bを形成する。この場合、図4(b)に示すように、まず、着色層33R,33G,33Bのうちの1つ、例えば青色着色層33Bを形成するための青色着色層用材料37Bをカラーフィルタ用基板31上に塗布する。青色着色層用材料37Bをカラーフィルタ用基板31上に塗布する方法が特に限られることはなく、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法などを適宜用いることができる。
【0054】
次に、ブラックマトリックス層32間に青色着色層33Bが形成されるとともに、青色着色層33Bの表面34に複数の凹部35が形成されるよう、青色着色層用材料37Bを所定のマスク(後述するマスク40)を介して露光する。その後、青色着色層用材料37Bに現像処理およびエッチング処理を行うことにより、図5(c)に示すように、複数の凹部35を有する青色着色層33Bが形成される。
【0055】
ここで、図6(a)および図6(b)を参照して、青色着色層用材料37Bを露光および現像する工程についてより詳細に説明する。
【0056】
図6(a)は、青色着色層用材料37Bを露光する工程を示す図である。図6(a)に示すように、青色着色層用材料37Bの露光工程において用いられるマスク40は、ブラックマトリクス層32に対応するBM層用遮光部41aと凹部35に対応する凹部用遮光部41bとからなる遮光部41と、開口部42とを有している。この場合、開口部42に対応する青色着色層用材料37Bが露光により硬化される。すなわち、青色着色層用材料37Bのうち、ブラックマトリクス層32上に塗布されている青色着色層用材料37Bと、凹部35が形成されるべき部分に位置する青色着色層用材料37Bと、を除く青色着色層用材料37Bが露光により硬化される。
【0057】
ところで、露光光には、マスク40の法線方向に平行な方向に進む光だけでなく、マスク40の法線方向から傾斜した方向に進む光もわずかに含まれている。このため、図6(a)に示すように、青色着色層用材料37Bのうち凹部用遮光部41bに対応する領域に位置する部分、すなわち凹部が形成されるべき部分38において、露光光の回り込みが生じている。従って、凹部が形成されるべき部分38において、その表面付近の材料は露光されないが、その表面から離れている材料は露光される。このため、青色着色層用材料37Bに現像およびエッチング処理を施すと、図6(b)に示すように、凹部が形成されるべき部分38のうちその表面付近の材料のみが除去される。このようにして、青色着色層33Bの表面34に複数の凹部35が形成される。
【0058】
青色着色層用材料37Bの場合と同様にして、赤色着色層用材料および緑色着色層用材料に対しても露光、現像およびエッチング処理が施される。これによって、図5(d)に示すように、複数の凹部35を有する赤色着色層33Rおよび緑色着色層33Gがそれぞれ形成される。このようにして、光散乱機能を有するカラーフィルタ30が製造される。
【0059】
次に、カラーフィルタ30と有機EL光源20とを組み合わせる。これによって、光散乱機能を有するカラーフィルタ30を備えた有機EL表示装置10が製造される。
【0060】
次に図7を参照して、カラーフィルタ30により有機EL光源20からの光を散乱させる作用について説明する。
【0061】
はじめに、図7において符号Lで示す光の経路について説明する。この場合、光がカラーフィルタ30の青色着色層33Bの表面34の平坦部分に入射している。この光は、青色着色層33Bおよびカラーフィルタ用基板31を透過して、小さな出射角でカラーフィルタ30から出射される。
【0062】
次に、図7において符号LおよびLで示す光の経路について説明する。この場合、光がカラーフィルタ30の青色着色層33Bの表面34に形成された凹部35に入射している。このため、青色着色層33Bに入射した光は、符号Lで示す光の場合とは異なる角度で屈折する(図7参照)。このことにより、符号Lで示す光の場合よりも大きな出射角で光がカラーフィルタ30から出射される。
【0063】
このように本実施の形態によれば、カラーフィルタ30の着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35が形成されている。このため、有機EL光源20からカラーフィルタ30に入射した光が、着色層33R,33G,33Bの表面34の凹部35によって散乱される。このことにより、着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35が形成されていない場合に比べて、有機EL表示装置10の視野角を広くすることができる。
【0064】
好ましくは、本実施の形態による凹部35が形成されているカラーフィルタ30におけるヘイズ値は50〜90%の範囲内となっている。さらに、着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35が形成されていないカラーフィルタにおける平行透過率と比べた場合の、本実施の形態による凹部35が形成されているカラーフィルタ30における平行透過率の劣化の程度を0〜30%の範囲内にとどめることができる。これによって、有機EL表示装置10の視野角を最適化することができる。カラーフィルタ30においては、上記の全光線透過率およびヘイズ値を実現するため、着色層33R,33G,33Bの表面34に形成されている凹部35の深さd、および、着色層33R,33G,33Bの表面34において凹部35により占められる面積の比率が適宜調整される。なお、凹部35の深さd、および、表面34において凹部35により占められる面積の比率は、各着色層33R,33G,33Bにおいて同一となっていてもよく、異なっていてもよい。
【0065】
また本実施の形態によれば、有機EL光源20の各発光素子23R,23G,23Bにおいてそれぞれマイクロキャビティ構造が構成されている。このため、各発光素子23R,23G,23Bから取り出される光の色純度が高められている。さらに本実施の形態によれば、上述のように、カラーフィルタ30に散乱機能が付与されている。このことにより、出射される光の色純度が高く、かつ視野角の広い有機EL表示装置10を提供することができる。
【0066】
また本実施の形態によれば、各着色層33R,33G,33Bの表面34において、複数の凹部35が不規則なパターンで配置されている。このため、各着色層33R,33G,33Bから出射される光の密度または方向が、特定の場所または方向に偏ることはない。このことにより、カラーフィルタ30に入射した光を、等方的かつ均一に散乱させることができる。
【0067】
さらに本発明によれば、各着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35を形成することにより、カラーフィルタ30に散乱機能が付与されている。カラーフィルタ30の製造工程において、凹部35を形成するための露光処理は、ブラックマトリクス層32上の着色層用材料を除去するための露光処理と同時に実施される。このため、通常のカラーフィルタ30の製造工程に比べて何ら工数を増やすことなく、カラーフィルタ30に散乱機能を付与することができる。このことにより、散乱機能付きのカラーフィルタ30をより安価に製造することができる。
【0068】
なお本実施の形態において、凹部35の縦断面の形状が三角形状となっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図8に示すように、凹部35が台形状の縦断面を有していてもよい。若しくは、半円形状、矩形状、多角形状など、凹部35が様々な縦断面を有していてもよい。
【0069】
また本実施の形態において、凹部35を上方から見た場合の形状が円形状となっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、凹部35を上方から見た場合の形状が、矩形状、楕円形状、多角形状など様々な形状となっていてもよい。
【0070】
また本実施の形態において、複数の凹部35が表面34に不規則なパターンで配置されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図9(a)に示すように、複数の凹部35を規則的なパターンで配置してもよい。または、図9(b)に示すように、格子状のパターンを有する一連の凹部35を形成してもよく、図9(b)に示すように、ジグザグのパターンを有する一連の凹部35を形成してもよい。さらに図9(d)に示すように、複数の凹部35を波状のパターンで配置してもよい。
【0071】
また本実施の形態において、カラーフィルタ30の各着色層33R,33G,33Bが、各色の顔料や染料等の着色剤を光硬化型感光性樹脂中に分散または溶解させた材料から形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、各着色層33R,33G,33Bを、光溶解型感光性樹脂から形成してもよい。この場合、露光工程においては、各着色層33R,33G,33Bの表面34のうち凹部35が形成されるべき部分に露光光が照射される。
また、各着色層33R,33G,33Bの表面34の凹部35が露光および現像処理により形成される例を示したが、これに限られることはない。サンドブラストまたは機械的切削など、様々な方法によって各着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部35を形成することができる。
【0072】
また本実施の形態のトップエミッション型の有機EL表示装置10において、陰極26が、陽極24に対して観察側に位置するよう設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、陽極を、陰極に対して観察側に位置するよう設けてもよい。この場合、陰極を金属から形成し、陽極を半透明反射膜から形成することにより、マイクロキャビティ構造を構成することができる。
【0073】
また本実施の形態において、有機EL表示装置10がトップエミッション型である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、有機EL表示装置がいわゆるボトムエミッション型であってもよい。
【0074】
また本実施の形態において、カラーフィルタ30の各着色層33R,33G,33Bが、カラーフィルタ用基板31に対して観察側と反対側に位置するよう設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、各着色層33R,33G,33Bを、カラーフィルタ用基板31に対して観察側に位置するよう設けてもよい。
【0075】
また本実施の形態において、各着色層33R,33G,33Bの表面34に複数の凹部35が形成され、これによってカラーフィルタ30に光散乱機能が付与されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、各着色層33R,33G,33Bの表面34に凸部(図示せず)を形成し、これによってカラーフィルタ30に光散乱機能を付与してもよい。
【0076】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0077】
(実施例)
図10(a)(b)(c)を参照して、実施例について説明する。図10(a)に示すように、カラーフィルタとして、各着色層33R,33G,33Bの表面34に複数の凹部35が波状のパターンで形成されたカラーフィルタ30を準備した。
【0078】
図10(b)に示すように、有機EL光源20の青色発光素子23Bからの光であって、カラーフィルタ30の青色着色層33Bを通って有機EL表示装置10から出射される光の波長スペクトルを、光検出器Dおよび光検出器Dによって検出した。図10(b)に示すように、光検出器Dは青色着色層33Bの略中央に対応する位置に配置されており、光検出器Dは青色着色層33Bの端部に対応する位置に配置されていた。
【0079】
図10(b)に示す有機EL光源20の青色発光素子23Bは、上述のように、マイクロキャビティ構造を有している。このため、青色発光素子23Bから取り出される青色光のスペクトルは急峻となっていた。ここで、青色光の急峻なスペクトルに含まれる波長のうち、短波長側の波長λを有する光をLとし、長波長側の波長λを有する光をLとする。この場合、陽極24と陰極26との間で光が反射干渉を繰り返す際、光Lの場合の光学的距離は、光Lの場合の光学的距離よりも長くなる。このため、図10(b)に示すように、青色発光素子23Bから出射される際、光Lの場合の出射角は、光Lの場合の出射角よりも大きくなっていた。
【0080】
一方、上述のように、青色着色層33Bの表面34には、複数の凹部35が波状のパターンで形成されている。このため、青色着色層33Bに入射した光Lおよび光Lは、凹部35によって散乱されて様々な方向に進む。このため、図10(b)に示すように、Lおよび光Lが有機EL表示装置10から様々な方向に出射される。この場合の、光検出器Dおよび光検出器Dにおける波長スペクトル検出結果を図10(c)に示す。図10(c)に示すように、光検出器Dにおいて検出された光の波長スペクトルと、光検出器Dにおいて検出された光の波長スペクトルはほぼ同一となっていた。
【0081】
このように実施例においては、青色着色層33Bの表面34に凹部35を形成することにより、マイクロキャビティ構造を有する青色発光素子23Bからの光を様々な方向に散乱させることができた。このことにより、観察側から見た場合の有機EL表示装置10からの光の波長スペクトルを、観察する角度や場所によらずほぼ同一にすることができた。
【0082】
(比較例)
次に図11(a)(b)(c)を参照して、比較例について説明する。はじめに、各着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部が形成されていない点(図11(a)参照)以外は、実施例におけるカラーフィルタ30と略同一であるカラーフィルタ100を準備した。次に、実施例の場合と同様にして、カラーフィルタ110を備えた有機EL表示装置100から出射される光の波長スペクトルを、光検出器Dおよび光検出器Dによって検出した。
【0083】
比較例においては、上述のように、カラーフィルタ110の各着色層33R,33G,33Bの表面34に凹部が形成されていない。このため、カラーフィルタ110に入射した光は、カラーフィルタ110に入射した際の入射角をほぼ維持したまま、カラーフィルタ110から出射される。このため、図11(b)に示すように、カラーフィルタ110から出射される際、光Lの場合の出射角は、光Lの場合の出射角よりも大きくなっていた。
【0084】
この場合の、光検出器Dおよび光検出器Dにおける波長スペクトル検出結果を図11(c)に示す。図11(c)に示すように、光検出器Dにおいて検出された光の波長スペクトルは、光検出器Dにおいて検出された光の波長スペクトルに比べて長波長側にシフトしていた。これは、光検出器Dが青色着色層33Bの端部に対応する位置に配置されており、このため、光検出器Dにおいては出射角の大きな光(すなわち長波長側の光)が主に検出されるためである。このように比較例においては、観察側から見た場合の有機EL表示装置100からの光の波長スペクトルが、観察する角度や場所によって異なっていた。
【符号の説明】
【0085】
10 有機EL表示装置
11 接着剤
12 オーバーコート層
15 信号線駆動回路
16 走査線駆動回路
20 有機EL光源
21 有機EL光源用基板
22 有機EL層
23R 赤色発光素子
23G 緑色発光素子
23B 青色発光素子
24 陽極
25R 赤色有機発光層
25G 緑色有機発光層
25B 青色有機発光層
26 陰極
30 カラーフィルタ
31 カラーフィルタ用基板
32 ブラックマトリクス層
32a 開口部
33R 赤色着色層
33G 緑色着色層
33B 青色着色層
35 凹部
35a 最深部
37B 青色着色層用材料
38 凹部が形成されるべき部分
40 マスク
41 遮光部
41a BM層用遮光部
41b 凹部用遮光部
42 開口部
100 有機EL表示装置
110 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL光源用基板と、当該有機EL光源用基板の観察側の面に設けられた有機EL層とを有する有機EL光源と、
前記有機EL光源の観察側に設けられたカラーフィルタと、を備え、
前記有機EL光源の有機EL層は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられ、エレクトロルミネッセンスにより光を放出する有機発光層と、を有し、
前記カラーフィルタは、カラーフィルタ用基板と、カラーフィルタ用基板上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層と、カラーフィルタ用基板上のブラックマトリクス層間に設けられた着色層と、を有し、
前記着色層の表面に凹部が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記着色層の表面に形成されている凹部の深さが0.5〜2.5μmの範囲内となっていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記着色層の表面において、前記凹部により占められる面積の比率が10〜50%の範囲内となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記有機EL層において、前記陽極または前記陰極のうち観察側に配置された一方が半透明反射膜からなるとともに、前記陽極と前記陰極との間の光学的距離が、前記有機発光層から発光した光のピーク波長の整数倍または半整数倍となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の有機EL表示装置に組み込まれるカラーフィルタにおいて、
カラーフィルタ用基板と、
カラーフィルタ用基板上に所定パターンで設けられたブラックマトリクス層と、
カラーフィルタ用基板上のブラックマトリクス層間に設けられた着色層と、を有し、
前記着色層の表面に凹部が形成されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項6】
前記着色層の表面に形成されている凹部の深さが0.5〜2.5μmの範囲内となっていることを特徴とする請求項5に記載のカラーフィルタ。
【請求項7】
前記着色層の表面において、前記凹部により占められる面積の比率が10〜50%の範囲内となっていることを特徴とする請求項5または6に記載のカラーフィルタ。
【請求項8】
請求項5に記載のカラーフィルタの製造方法において、
カラーフィルタ用基板を準備する工程と、
前記カラーフィルタ用基板上に所定パターンでブラックマトリクス層を形成する工程と、
前記カラーフィルタ用基板上の前記ブラックマトリクス層間に着色層を形成する工程と、を備え、
前記着色層の表面には凹部が形成されており、
前記着色層を形成する工程は、前記カラーフィルタ用基板上に着色層用の光硬化性樹脂を塗布する工程と、前記ブラックマトリクス層および前記着色層の凹部に対応する遮光部を有するマスクを用いて前記光硬化性樹脂を露光する工程と、前記光硬化性樹脂を現像する工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−146517(P2012−146517A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4110(P2011−4110)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】