説明

有機EL表示装置及びその製造方法

【課題】発光材料を画素電極に滴下した場合に画素電極の角部まで均一に広がるようにした有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】アレイ基板10上に平面形状矩形の画素電極26がマトリックス状に配置された有機EL表示装置において、画素電極20の4つの角部に液溜まり部38をそれぞれ形成し、画素電極26から液溜まり部38へ連通し、かつ、液溜まり部38より小さく形成された液入口40を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己発光型表示装置である有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置の各画素は、アレイ基板側に配置される画素電極(陽極)と、画素電極上に配置される活性層と、活性層上に配置される対向電極(陰極)とによって構成される。
【0003】
このような有機EL表示装置において、小型かつ高精細な表示装置を実現するためには、画素サイズ及び画素ピッチをできるだけ小さくする必要がある。そのため、画素の平面形状を矩形にした有機EL表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−59660公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような平面形状矩形の画素を有する有機EL表示装置において、活性層はインクジェット方式によって形成されることが多く、液体状の発光材料をインクジェットヘッドのノズルから吐出させて画素電極上に滴下し、活性層を形成している。
【0005】
このような液体状の発光材料を滴下した場合に、画素電極の平面形状が矩形であるため、液体状の発光材料が画素電極の角部まで広がらずに、中央部のみ液体状の発光材料が集まり、発光が不均一になるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、発光材料を画素電極に滴下した場合に発光材料が均等に広がるようにした有機EL表示装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上にマトリクス状に配置された島状の画素電極と、前記画素電極を囲む隔壁と、前記画素電極の各角部に形成された液溜まり部と、前記画素電極から前記液溜まり部へ連通し、かつ、前記液溜まり部より小さく形成されたの液入口と、前記画素電極上に配置される活性層と、前記活性層を挟んで前記画素電極に対向配置される対向電極を備えることを特徴とする有機EL表示装置である。
【0008】
また本発明は、基板上にマトリクス状に配置された島状の画素電極と、前記画素電極を囲む隔壁とを備える有機EL表示装置の製造方法において、前記画素電極の下層に位置するように絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜の上面に画素電極を形成する工程と、前記画素電極の周囲から立ち上がると共に、前記画素の各角部に相当する位置に液溜まり部が形成されるように前記隔壁を形成し、かつ、前記画素電極から前記液溜まり部への液入口を前記液溜まり部より小さく形成する工程と、前記隔壁に囲まれた前記下部電極の上層に選択塗布法によって液体状の発光材料を滴下して活性層を形成する工程と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機EL表示装置であると、矩形の画素電極の角部に液溜まり部がそれぞれ形成されているため、インクジェット方式などの選択塗布法によって発光材料が滴下された場合に、この液溜まり部によって液状の発光材料が吸い込まれるようにして広がり画素電極の角部まで均一に広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のフルカラー有機EL表示装置について図1と図2に基づいて説明する。
【0011】
図1は、有機EL表示装置の一部構造を概略的に示す縦断面図であり、ここでは特に一画素分で、かつ、発光層を形成する前のアレイ基板10の縦断面図を示している。
【0012】
アレイ基板10上には、走査線と、この走査線に直交するように配置された信号線と、信号線と走査線との交点付近に配置されたスイッチング素子である画素TFTと、画素TFTを介して信号線に接続された駆動トランジスタ14と、駆動トランジスタ14より供給される駆動信号に応じて表示動作をする画素20をマトリクス状に有している。
【0013】
図1に示すように、例えばガラス基板でなる支持基板12上には画素TFT(薄膜トランジスタ)、駆動トランジスタ14等が形成されている。これら画素TFT、駆動トランジスタ14は、支持基板12上に形成されたポリシリコン半導体層Pと、このポリシリコン半導体層Pと第1絶縁膜16を介して配置されたゲート電極Gと、第1絶縁膜16と第2絶縁膜18を介してポリシリコン半導体層Pのソース領域にコンタクトしたソース電極Sと、第1絶縁膜16及び第2絶縁膜18を介してポリシリコン半導体層Pのドレイン領域にコンタクトしたドレイン電極Dを備えている。画素TFTのソース電極には信号線が接続され、ゲート電極には走査線が接続されている。また、駆動トランジスタ14のゲート電極Gには画素TFTのドレイン電極が接続され、ソース電極Sには高電位端子、ドレイン電極Dには画素20を介して低電位端子が接続される。
【0014】
画素20は、第2絶縁膜18の上に配置された第3絶縁膜22の上に配置されている。
【0015】
各画素20は、下部電極(画素電極ともいう)26と、下部電極26上に配置され少なくとも発光層を含む活性層と、活性層を挟んで画素電極と対向配置される対向電極とから構成される。
【0016】
詳しくは、画素20の下部電極(ここでは陽極)26が第3絶縁膜22の上層にマトリクス状に形成され、第3絶縁膜22に設けられているコンタクトホール28によって駆動トランジスタ14のドレイン電極Dと接続されている。下部電極26は、光透過性導電材料であるITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。
【0017】
この下部電極26の上層にはアクリル樹脂よりなる隔壁24が形成されている。隔壁24,24は横方向と縦方向に隣接する画素20,20を区画するものであり、図2に示すように、全体としては、マトリックス状に画素20を区画する。このアクリル樹脂で形成された隔壁24を形成するには、UV光でマスク露光する。この画素20の縦方向の寸法はX(数値を入れてください)ミクロンであり、横方向の寸法はY(数値を入れてください)ミクロンである。また、隔壁24の高さはZ(数値を入れてください)ミクロンである。なお、この矩形状の画素20の4つの角部には、液溜まり部38がそれぞれ形成されている。この液溜まり部38については、後から詳しく説明する。
【0018】
図1に示すように、画素20の凹部の下面に位置する下部電極26の上には、発光層30が積層されている。この発光層30は、下部電極26に対向配置された陰極の上部電極(不図示)との間に挟持されるものである。この発光層30は、RGB各色共通に形成されるホール輸送層、エレクトロン輸送層、及び各色毎に形成される有機発光層の三層構造で構成されるか、または、機能的に複合されたホール輸送層と有機発光層の二層で構成されている。本実施形態では、二層構造で説明する。
【0019】
ホール輸送層は、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体より形成され、有機発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)に発光する有機化合物によって形成されている。この有機発光層は、例えば高分子系材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニデンビニデン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などを積層して構成されている。
【0020】
このホール輸送層と有機発光層を形成には、まず、インクジェット方式によりホール輸送層を形成する発光材料32を滴下する。次に、その上に有機発光層を形成する発光材料を滴下する。すなわち、図1に示すように発光材料32をインクジェットヘッドのノズル36から滴下する
この滴下した液体の発光材料32が図2に示す平面形状矩形の画素20の角部まで均等に広がるようにするための画素20の構造について図2に基づいて説明する。
【0021】
画素20の4つの角部には、それぞれ平面形状矩形の液溜まり部38が設けられている。この液溜まり部38は、画素20の角部と連続して設けられ、液溜まり部38の液入口40は、液溜まり部38よりも小さく形成され、例えばその寸法は、2〜10μmである。また、この液溜まり部38の底面は下部電極26によって形成され、その下部電極26の一部から一つ下の層にある第3絶縁膜22が露出している。このように第3絶縁膜22を露出させるために、下部電極26を形成するときに、液溜まり部38よりもやや小さい形状で下部電極26を形成し、さらに、隔壁24を形成するときに、液溜まり部38及び液入口40が形成されるようにマスク露光をして形成する。
【0022】
4つの液溜まり部38を有する画素20の下部電極26の上に、図2の中央部に示すようにインクジェット方式により発光材料30を滴下する。液状の発光材料30は、図2の右側に示すように、画素20の角部近傍まで流れ、液入口40が小さくなっていることにより毛細管現象が働き液溜まり部38に発光材料30が流れ込む。そのため、画素20の角部まで結果的に発光材料が流れ込むこととなり、均等に発光材料30が広がることとなる。特に、第3絶縁膜SiNxは、親水性を有しているため、この液溜まり部38に流れ込んだ液状の発光材料30が弾かれさらに広がりを促進させる。
【0023】
なお、本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0024】
例えば、平面形状矩形の液溜まり部38に限らず、円形でもよい。
【0025】
また、液溜まり部38に第3絶縁層22を露出させていなくても、液状の発光材料30は、画素20の角部近傍まで流れ、液入口40が小さくなっていることにより毛細管現象が働き液溜まり部38まで発光材料30が流れ込む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態のアレイ基板の縦断面図である。
【図2】同じく画素部分の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 アレイ基板
20 画素
22 第3絶縁膜
24 隔壁
26 下部電極
28 コンタクトホール
30 発光層
36 ノズル
38 液溜まり部
40 液入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマトリクス状に配置された島状の画素電極と、
前記画素電極を囲む隔壁と、
前記画素電極の各角部に形成された液溜まり部と、
前記画素電極から前記液溜まり部へ連通し、かつ、前記液溜まり部より小さく形成されたの液入口と、
前記画素電極上に配置される活性層と、
前記活性層を挟んで前記画素電極に対向配置される対向電極を備える
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記液溜まり部の一部に親水層が露出している
ことを特徴とする請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記親水層がSiNxである
ことを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
基板上にマトリクス状に配置された島状の画素電極と、前記画素電極を囲む隔壁とを備える有機EL表示装置の製造方法において、
前記画素電極の下層に位置するように絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の上面に画素電極を形成する工程と、
前記画素電極の周囲から立ち上がると共に、前記画素の各角部に相当する位置に液溜まり部が形成されるように前記隔壁を形成し、かつ、前記画素電極から前記液溜まり部への液入口を前記液溜まり部より小さく形成する工程と、
前記隔壁に囲まれた前記下部電極の上層に選択塗布法によって液体状の発光材料を滴下して活性層を形成する工程と、
を備える
ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記液溜まり部の一部に親水性のある前記絶縁層が露出するように前記画素電極を形成する
ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−128690(P2007−128690A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318780(P2005−318780)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】