説明

有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法

【課題】
有機材料の膜厚ムラによる発光ムラが低減された有機EL表示装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる有機EL表示装置は電極間に配置された有機発光層を備える有機EL表示装置であって、基板上に設けられた陽極配線1と、陽極配線1の上に開口部が配置されるよう設けられた絶縁膜22及び隔壁10と、絶縁膜22及び隔壁10の上から湿式塗布されることにより形成された有機膜とを備え、開口部における陽極配線表面の水に対する接触角が10°以下であり、絶縁膜22及び隔壁10の表面の水に対する接触角が15〜60°であるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electro Luminescence)素子を使用した有機EL表示装置の開発が盛んに行われている。有機EL表示装置は、液晶表示装置と比較して視野角が広く、また、応答速度も速く、有機物が有する発光性の多様性から、次世代の表示装置として期待されている。有機EL表示装置に用いられる有機EL素子は、基板上に陽極が形成され、陽極の上に薄膜状の有機化合物が積層され有機薄膜層が形成される。その有機化合物の層の上に、基板上に形成された陽極と対向するように陰極が形成された構造である。有機EL素子は、陽極と陰極との間に配置された有機化合物の層に電流が供給されると自発光する電流駆動型の表示素子である。以下、積層される有機化合物の薄膜を有機薄膜層と記す。陽極、複数の有機薄膜層および陰極を重ねて配置した個所が表示画素となる。
【0003】
基板に設けられた電極上に有機化合物を積層する場合、有機材料を真空蒸着させて有機薄膜層を形成する場合がある。しかし、有機材料を蒸着させる場合、有機薄膜層の下地となる電極の表面に異物の付着や突起、窪みがあると、その影響により、有機薄膜層を所望の状態にできないことがある。
【0004】
この問題を解決する方法として、有機薄膜層となる有機材料を液体中に分散または溶解させ、溶液として塗布することで異物、突起、窪み等を被覆し、所望の有機薄膜層を形成する技術(湿式塗布方法、以下、単に塗布法と記す。)が知られている。例えば、特許文献1には、有機薄膜層のうち少なくとも一層を塗布法により形成することが記載されている。
【0005】
塗布法としては、例えば、オフセット印刷法、凸版印刷法、マスクスプレー法等がある。オフセット印刷法や凸版印刷法では、有機材料を溶媒中に分散または溶解させた溶液(以下、有機材料の溶液、あるいは単に溶液という)の層を所定の領域のみに形成する。また、マスクスプレー法では、所望の領域に合致するような開口部を有するガラス・マスクや金属マスク等を配置し、有機材料を分散または溶解させた溶液を吐出する。この場合、溶液を窒素等の気体媒体中に分散させ、または二流体ノズル等を用いて溶液を霧状にする。
【0006】
また、有機EL表示装置では、有機薄膜層の上に設けられる陰極配線が隔離配置されるように隔離構造体(以下、隔壁と記す。)が設けられる。このような構成は、例えば、特許文献1に記載されている。図9は、特許文献1に記載された隔壁の例を示す断面図である。基板11上には、陽極配線1が設けられ、その後、隔壁10が設けられる。隔壁10は、例えば、基板11から離れるにつれて断面が広がるように形成される。このような隔壁10の構造は、逆テーパ構造あるいはオーバハング構造と称されている。
【0007】
隔壁10を逆テーパ構造とすることで、陰極配線の分離をより確実なものとすることができる。隔壁10が設けられた状態で各有機薄膜層(ホール注入輸送層102、発光層103、電子注入輸送層104)を塗布法等により形成すると、隔壁10により有機薄膜層が分離され、この結果、各隔壁10の間に各有機薄膜層から構成される有機発光層が形成される。その後、陰極配線5が、蒸着法等によって形成される。陰極配線5も隔壁10により分離され、パターニングされた陰極配線5が形成される。
【0008】
また、開口部を有する絶縁膜を陽極配線上に形成し、表示画素となる位置を開口部の位置によって定める場合もある。図10は、特許文献1に記載された構成に、開口部を有する絶縁膜を設けた場合の構成例を示す説明図である。図10(a)は、電極が配置される側から基板を観察した状況を示す模式図であり、図10(b)は、図10(a)のA−A切断線における断面図である。図10(a)では、上層に設けられた陰極配線等によって隠れてしまう構成部も示している。
【0009】
図10に示すように、基板11上には、まず陽極配線1と、陰極配線5に接続される陰極接続配線21とが形成される。続いて、開口部23を有する絶縁膜22が形成される。開口部23は、陽極配線1と陰極配線5とが交差することになる位置に設けられる。そして、陽極配線1と直交するように隔壁10が形成される。続いて、有機材料の溶液が塗布または蒸着され、有機薄膜層40が形成される。
【0010】
なお、有機薄膜層として複数の層が形成されるが、図10(b)では、複数の層をまとめて有機薄膜層40として示している。溶液は、有機薄膜層40を形成すべき領域に一定の厚みで有機薄膜層40を形成できるように、有機材料濃度等を調整する。有機薄膜層40形成後、陰極配線5を有機薄膜層上に蒸着する。隔壁10が有機薄膜層40や陰極配線5を分離することにより、隔壁間に有機薄膜層40を形成できる。また、パターニングされた陰極配線5を形成することができる。
【0011】
陰極配線5を形成した後、有機EL素子を保護するために、ポリマー等で構成される有機薄膜層を陰極配線5上に形成する場合もある。この有機薄膜層(図示せず。)も、塗布法等によって形成される。また、基板11の電極等が配置された面には、もう一枚の基板(図示せず。)が基板11の面に対向するように配置される。この基板において、基板11の有機EL素子に対向する領域の外周にシール材(図示せず。)が塗布される。このシール材によって、基板11ともう一枚の基板とが接着される。有機EL素子は、基板およびシール材によって封止されることで、水分や酸素にさらされないように保持される。
【0012】
しかしながら、隔壁10を形成した後に、有機材料の溶液を塗布すると、塗布した溶液が隔壁10に沿って広がるという問題が生じる。例えば、図10に示す例では、隔壁10の側面と絶縁膜22とが交差する部分に沿って、溶液が広がってしまう。これは、隔壁10の側面と絶縁膜22の表面の交差する部分の近傍空間により毛細管現象と同様の現象が生じているためである。特に、陰極配線5等を確実に分離するために逆テーパ構造を有するように隔壁10を形成すると、隔壁10の側面と絶縁膜22の表面の交差する部分の近傍空間は狭くなる。その結果、溶液がより広がりやすくなる。
【0013】
図11は、隔壁に沿って、有機材料の溶液が広がった状態を示す説明図である。図11では、隔壁10と有機材料の溶液125を示し、他の構成部の図示は省略した。図11において、126は溶液125の塗布領域であり、塗布した溶液125が広がらずに留まっているべき範囲を示している。すなわち、溶液125は、塗布領域126よりも広がらないことが理想的である。しかし、既に説明したように、溶液125は、隔壁10に沿って広がっる。その結果、図11に示すように、溶液は、塗布領域126よりも広がってしまう。このため、溶液125は一定の厚みが得られるように濃度等を調整されるが、隔壁10に沿って広がるために、所望の厚みを実現することが困難になってしまう。
【0014】
このような溶液の拡がりに関しては、隔壁表面の撥水性を向上させることが重要になる。隔壁の撥水性を向上するため、フッ素化処理を行った隔壁を用いるものが開示されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。また、フッ素化合物を含有した隔壁を使用する方法もある。これらの方法により、隔壁表面での撥水性を向上することができるため、溶液の拡がりを防ぐことができる。
【0015】
一方、電極の表面では有機材料を均一に設けるため、溶液が均一になることが好ましい。従って、電極表面では濡れ性が高い、すなわち撥水性が低いことが好ましい。電極表面での撥水性を低下させるため、有機材料の塗布前に、基板表面を洗浄する工程が行われることもある。しかしながら、基板表面を洗浄してしまうと、電極以外の部分の撥水性が低下してしまうおそれがある。従って、洗浄により電極表面の濡れ性を高くしようとすると、隔壁や絶縁膜の撥水性が低下してしまう。よって、従来の有機EL表示装置では、均一に溶液を塗布することができず、有機材料を均一に形成することが困難であった。この結果、膜厚ムラに起因する発光ムラが生じてしまい、表示特性が劣化してしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開2001−351779号公報(段落0012−0017、第1図および第2図)
【特許文献2】特開2002−062422号公報
【特許文献3】特開2002−334782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、従来の有機EL表示装置では、膜厚ムラに起因する発光ムラが生じてしまい、表示品質が劣化してしまうという問題点があった。
【0017】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであって、有機材料を均一に塗布することができ、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減された有機EL表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
即ち、本発明の要旨は、有機EL表示装置の製造過程において、基板表面の洗浄時に、電極と電極以外の部分との間で、洗浄後における撥水性の物性変化の異なる領域を見出し、その特定条件で洗浄を行うことである。また、本発明において、洗浄工程後、撥水性に関する物性変化をもたらす工程をさらに行わない限り、最終的に完成され得る有機EL表示装置においても、その撥水性が保持される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様にかかる有機EL表示装置は、第1の電極と第2の電極との間に有機発光層が備えられた有機EL表示装置であって、基板上に設けられた第1の電極と、前記第1の電極の上に開口部が配置されるよう設けられた構造物と、前記構造物の上から湿式塗布されることにより形成された有機膜とを備え、前記開口部における前記第1の電極表面の水に対する接触角が10°以下であり、かつ前記構造物の表面の水に対する接触角が15〜60°であるものである。これにより、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減することができる。
【0020】
本発明の第2の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、前記構造物が、前記第1の電極の上に開口部が配置されるよう設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜の上に設けられ、前記有機発光層の上から設けられる第2の電極を分離する隔壁とを備えるものである。
【0021】
本発明の第3の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、前記有機膜が設けられている領域全体において、前記構造物の水に対する接触角が15〜60°であるものである。これにより、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減することができる。
【0022】
本発明の第4の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、前記有機発光層の少なくとも一部が前記有機膜から形成されているものである。
【0023】
本発明の第5の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、基板にカラーフィルタが備えられていないものである。
【0024】
本発明の第6の態様にかかる有機EL表示装置の製造方法は、第1の電極と第2の電極との間に有機発光層が備えられた有機EL表示装置の製造方法であって、基板上に第1の電極を形成するステップと、前記第1の電極の上に開口部を有する構造物を形成するステップと、前記絶縁膜の上に構造物を有するステップと、前記構造物が形成された基板を、前記開口部における前記第1の電極表面の水に対する接触角が10°以下となり、かつ前記構造物の表面の水に対する接触角が15〜60°となるよう洗浄するステップと、前記洗浄された基板に溶液を塗布するステップとを有するものである。これにより、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減することができる。
【0025】
本発明の第7の態様にかかる有機EL表示装置の製造方法は、上述の有機EL表示装置において、前記洗浄するステップでは、紫外線を照射することにより、前記基板を洗浄するものである。これにより、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減することができる。
【0026】
本発明の第8の態様にかかる有機EL表示装置の製造方法は、第1の電極と第2の電極との間に有機発光層が備えられた有機EL表示装置の製造方法であって、基板上に第1の電極を形成するステップと、前記第1の電極の上に開口部を有する構造物を形成するステップと、前記構造物が形成された基板に紫外線を700〜1500mJ/cmで照射するステップと、前記紫外線が照射された基板に溶液を塗布するステップとを有するものである。これにより、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減することができる。
【0027】
本発明の第9の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、
前記構造物を形成するステップでは、前記第1の電極の上に開口部を有する絶縁膜を形成するステップと、前記絶縁膜の上に、前記有機発光層の上から設けられる第2の電極を分離する隔壁を形成するステップとを備えるものである。
【0028】
本発明の第10の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、前記構造物にシランカップリング材が含まれているものである。これにより、構造物における水に対する接触角をより高くすることができる。
【0029】
本発明の第11の態様にかかる有機EL表示装置は、上述の有機EL表示装置において、カラーフィルターが形成されていない基板を用いるものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば有機材料を均一に塗布することができ、膜厚ムラに起因する表示品質の劣化が低減された有機EL表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態の説明をする。以下の説明は、本発明の実施形態をについてのものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することができる。
【0032】
本実施形態にかかる有機EL表示装置の有機EL発光素子が形成されている素子基板について図1を参照して説明する。図1は有機EL表示装置の素子基板110の構成を示す平面図である。1は陽極配線、5は陰極配線、10は隔壁、11は基板、21は陰極接続配線、22は絶縁膜、23は開口部、24は破線によって示される表示領域、25はコンタクトホールである。
【0033】
基板11上には、基板11の表面に接するように複数の陽極配線1と、陰極に接続される陰極接続配線21とが形成されている。複数の陽極配線1はそれぞれ平行に形成されている。陰極接続配線21は陰極配線5の本数に対応して形成され、それぞれの陽極配線1と垂直に形成されている。陽極配線1と陰極接続配線21は、例えばITO等などの透明導電膜により形成される。陽極配線1および陰極接続配線21が形成された基板上には、絶縁膜22が形成されている。絶縁膜22の膜厚は、例えば、0.7μmである。絶縁膜22には、陽極配線1と陰極配線5とが交差する位置(すなわち表示画素が形成される位置)に開口部23が設けられている。表示領域24は複数の表示画素から構成されており、各表示画素が駆動回路(不図示)からの駆動信号に従って有機薄膜層の発光量を制御することによって、表示領域24は画像表示を行う。
【0034】
絶縁膜22の上層には、複数の有機薄膜層(有機化合物層)から構成される有機薄膜層と、陰極配線5が順に積層される。従って、有機薄膜層は陰極配線5と陽極配線1に挟まれる構成となる。ただし、図1では有機薄膜層の図示を省略している。また、有機薄膜層を形成する前に、隣接する陰極配線5同士を区分する隔壁10が設けられる。隔壁10は、陰極配線5を蒸着等により形成する前に、所望のパターンに形成される。例えば、図1に示すように、陽極配線1と直交する複数の陰極配線5を形成するため、陽極配線1と直交する複数の隔壁10が陽極配線1の上に形成される。隔壁10は、逆テーパ構造を有していることが好ましい。すなわち、基板11から離れるにつれて断面が広がるように形成されることが好ましい。これにより、隔壁10の側壁及び立ち上がり部分が蒸着の陰となり、陰極配線5を区分することができる。隔壁10は例えば、高さが3.4μmで、幅が10μmで形成することができる。
【0035】
有機薄膜層を形成する有機薄膜層の少なくとも一部は、有機材料の溶液である液状の有機薄膜層材料を塗布して形成される。有機薄膜層の構成については、後に詳述する。
【0036】
そして、有機薄膜材料を濃縮乾燥硬化して有機薄膜層を形成する。これにより、表示領域24において均一な膜厚の有機薄膜層を形成する。なお、有機薄膜層が複層からなる場合、塗布法に加え蒸着法を用いてもよい。すなわち、有機薄膜層が複層からなる場合、1層以上が塗布法により形成されれば、その他の層は蒸着法により形成されてもよい。塗布法により形成した層の後、その上の層を蒸着法で形成する場合、蒸着法で有機薄膜層を形成する前に、濃縮乾燥硬化を行う。また、有機薄膜層は、各隔壁10によって分離される。
【0037】
この有機薄膜層は例えば、図2に示す多層構造により形成される。図2は有機薄膜層40の構成の一例を模式的に示す断面図である。有機薄膜層40は下からポリマーバッファ層41、ホール注入層42、ホール輸送層43、発光層44、電子輸送層45、電子注入層46の順に形成される。すなわち、開口部23において、ポリマーバッファ層41が陽極配線1と接触し、電子注入層46が陰極配線5と接触する。ここではポリマーバッファ層41を塗布法により形成し、ホール注入層42、ホール輸送層43、発光層44、電子輸送層45及び電子注入層46を蒸着法により形成する。このポリマーバッファ層41により、短絡を防止すること及び駆動電圧を低下することができる。この有機薄膜層40を形成する材料については後述する。もちろん有機薄膜層40は上述の構成に限るものではなく、少なくとも一層が塗布法により形成されていればよい。
【0038】
この有機薄膜層40を形成した状態の基板の構成を図3に示す。図3は有機薄膜層40を形成した状態の構成を模式的に示す断面図である。基板1の上には陽極配線1が形成され、その上には開口部23を有する絶縁膜22が設けられている。開口部23では、陽極配線1が電極となる。そして、絶縁膜22の上には陽極配線1と直交する方向に逆テーパ形状の隔壁10が形成されている。そして、開口部23には有機発光膜40が設けられている。
【0039】
隔壁10を形成した後、図1に示すよう有機薄膜層の上から陰極配線5となる金属材料等を蒸着する。逆テーパ構造の隔壁10により、陰極パターンが分離され複数の陰極配線5を形成することができる。隔壁10によって分断された陰極配線5は陽極配線1と垂直に形成される。これにより、陰極配線5と陽極配線1の交差点では陰極配線5と陽極配線1との間に有機薄膜層が配置される。
【0040】
表示領域24の外側には陰極接続配線21と陰極配線5とを接続するため、絶縁膜22にコンタクトホール25が形成されている。このコンタクトホール25は、陰極配線5と陰極接続配線21とが重なる箇所に形成される。これにより、開口部23において陽極配線1と陰極配線5に挟まれる有機薄膜層に電流を流すことができ、有機薄膜層が発光する。
【0041】
さらに、隔壁を形成した後、有機薄膜層を形成する前、紫外線(UV光)を照射して洗浄を行う。例えば、UVランプによって基板に均一なUV光を照射する。このとき、UV光は700〜1500mJ/cmで照射する。具体的には8.5mW/cmで約82〜176.5秒の間、UV光を照射する。これにより、開口部23における陽極配線表面、すなわち電極の表面の濡れ性を向上することができる。このとき、開口部23における陽極配線1の表面の水に対する接触角(以下、αとする)が、10°以下になるよう露光量、照度、時間を調整する。これにより、電極部分における濡れ性が高くなる。このため、塗布した際、溶液が電極全体に溶液が広がっていくので、有機材料を均一に形成することができる。電極と隔壁の撥水性の分離状態を得るために、好ましくは、106秒の照射時間とし、900mJ/cm以上の条件で照射することが好ましい。
【0042】
さらに、上述の照射量でUV光を照射することにより、隔壁10及び絶縁膜22の撥水性の低下を低減することができる。すなわち、隔壁10及び絶縁膜22の撥水性が高い状態となる。隔壁10には例えば、フッ素化処理又はフッ素化合物を含有したノボラック樹脂、アクリル樹脂膜等の感光性樹脂を用いることができる。さらにシランカップリング材を隔壁10に含有させることで、撥水性を向上することができる。また、絶縁膜22は例えば、ポリイミド樹脂を用いることができる。そして、隔壁10の表面の水に対する接触角(以下、βとする)及び絶縁膜22の表面の水に対する接触角(以下、βとする)は、15〜60°になるよう露光量、照度、時間を調整する。これにより、隔壁10及び絶縁膜22の撥水性の低下を低減することができる。従って、絶縁膜上の溶液が隔壁10に沿って流れ出すことを防止できる。
【0043】
このような条件でUV光を照射して洗浄することにより、電極における濡れ性を向上することができるとともに、隔壁10及び絶縁膜22の撥水性の低下を低減することができる。すなわち、α、β及びβが上述の条件(α<10°、15°<β<60°かつ15°<β<60°)を満足するよう洗浄することによって、電極では溶液が均一になり、絶縁膜上の溶液が隔壁10に沿って流れ出すことを防止できる。従って、膜厚ムラによる発光ムラを低減することができ、表示品質の優れた有機EL表示装置を製造することができる。
【0044】
このように、電極の水に対する接触角及び電極周辺の構造物(隔壁10及び絶縁膜22)の水に対する接触角が好適な値となるような洗浄条件で洗浄することによって、膜厚ムラによる発光ムラを低減することができる。ここで、接触角とは水平に載置された基板に水滴を滴下したときの、水滴の作る角度をいう。具体的には、例えば、クルス社製自動接触角計(型式:DSA10)を使用し、マイクロシリンジにて0.05μlの液量を基板上に着滴させ、そのときの接触角の測定を行う。さらに、上記の接触角条件は塗布領域全体において満足することが好ましい。
【0045】
上述の接触角は例えば、露光量を制御することによって、その値を調整することができる。例えば、露光量を変化させると図4に示すよう、接触角が変化していく。図4は露光量と接触角との関係の一例を示す図である。横軸は露光量(mJ/cm)であり、縦軸は接触角(°)である。また、隔壁10にはシランカップリング材を含有していないものを用いた。露光量を増加させていくと、電極、隔壁及び絶縁膜とも徐々に減少していく。しかしながら、露光量が700〜1500mJ/cmとすると、電極では接触角が10°以下になるが、隔壁の接触角の低下が低減されている。このような、露光量でUV光を照射して、洗浄を行うことにより、膜厚ムラを低減することができる。
【0046】
なお、上記の接触角の条件を満足することができるならば、UV光の露光量は上記の範囲に限られるものではない。さらには、上記の接触角の条件を満足することができるならばUV洗浄にかぎらず、プラズマ洗浄あるいは、アルカリ水洗洗浄でもよい。さらに、塗布領域において、絶縁膜22及び隔壁10以外の構造物がある場合はこの構造物についても、水に対する接触角が15〜60°となるよう洗浄する。
【0047】
次に、上述の有機材料を塗布するためのスプレー塗布装置について図5を参照して説明する。図5はスプレー塗布装置の構成を模式的に示す概略図である。50はスプレー塗布装置、51はステージ、53はマスク、54はスプレーノズル、55は塗布溶液、56はフィルタ、57はコントローラである。
【0048】
スプレー塗布装置50は基板11を載置するためのステージ51と塗布溶液55を基板11に塗布するためのスプレーノズル54とスプレーノズル54を制御するためのコントローラ57とを備えている。ここでは基板11に300mm×400mmの矩形状のものを用いている。ステージ51に載置された基板11の上には、マスク53が配置される。マスク53は基板11の上に直接、配置してもよく、隙間を設けて配置してもよい。マスク53は例えば、アルミニウム等の金属板であり、基板11と略同じ大きさである。そして、マスク53には図1の破線によって示される表示領域24に対応した開口部が形成されている。基板11は図1に示した有機EL素子を形成するための基板である。ここでは、1枚の基板11に図1の示す有機EL表示素子を複数形成するため、マスク53に複数の開口部が設けられている。
【0049】
ステージ51の上には水平方向に移動可能なスプレーノズル54が設けられている。スプレーノズル54は、例えば、塗布溶液を分散させた窒素等のガスを供給し、塗布溶液を霧状に吐出する流体ノズルである。従って、スプレーノズル54の先端から下方向に塗布溶液が吐出される。これにより、スプレーノズル54から塗布溶液55がマスク53を介して基板11に塗布される。ここではスプレーノズル54に供給する窒素ガスを5l/min(=10−3/min)とし、塗布溶液の流量(塗布液流量)を0.9ml/min(=10−6/min)とする。このような条件で基板11に有機EL素子を形成するための有機材料を塗布している。
【0050】
コントローラ57は例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であり、スプレーノズル54及びステージ51を制御する。具体的にはスプレーノズル54のスキャンスピード、スキャンピッチ、塗布液流量及びスプレーノズル54と基板11との間の距離等の制御を行う。このコントローラ57からの信号によって、スプレーノズル54が水平方向に移動して、基板11全面に塗布溶液55を塗布する。また、コントローラ57により、スプレーノズル54あるいはステージ51を上下に移動させることにより、基板11とスプレーノズル54との間の距離を調整することができる。ここではスプレーノズル54の先端と基板11の表面との距離を80mmとしている。
【0051】
フィルタ56は例えば、HEPAフィルタなどエアフィルタである。このフィルタ56を介してスプレー塗布装置内にエアを供給することにより、スプレー塗布装置50内の空間を清浄な空間に保つことができる。これにより、塗布中に異物が基板11に付着するのを防ぐことができ、歩留まりを向上することができる。スプレー塗布は通常基板を常温、大気圧下の条件に設定した状態で実施される。
【0052】
次にスプレーノズル54のスキャン工程について図6を用いて説明する。図6はマスク53の上面図であり、スプレーノズル54のスキャン経路を併せて示している。なお、図6ではマスク53に2つの開口部31が設けられている例を示している。図6における矢印はスプレーノズル54の先端の軌跡を示している。
【0053】
ここでは、図6に示すようにスプレーノズル54をラスタスキャンすることにより、基板全面に塗布溶液を塗布している。すなわち、基板11の外側から反対側の外側まで矢印の方向にスプレーノズル54を移動させている。具体的には、マスク53の外側から基板11を横切るよう、Y方向にスプレーノズル54を移動する。そして、マスク53の反対側の端までスプレーノズル54を移動させたら、X方向に所定の間隔(ピッチ)でスプレーノズル54を移動させる。そして、再度、スプレーノズル54をマスク53の端から端までY方向に移動した後、X方向に前回と同じ間隔(ピッチ)で移動させる。この時、Y方向の移動は前回と反対方向となるため、スプレーノズル54はY方向に基板上を往復する。スプレーノズル54がX方向に基板を横切るまで、これを繰り返し、基板全面に塗布溶液を塗布する。
【0054】
このように塗布された塗布溶液はマスク53の開口部31を通過して基板11に付着する。開口部31は図1に示す表示領域24と対応しており、所定の領域のみ塗布溶液が付着する。すなわち、開口部31を設けたマスク53を用いることにより、図1におけるコンタクトホール25や接続端子に塗布溶液が付着されないようにしている。図6においてはマスク53に2つの開口部31が設けられている。開口部31の数は基板11に形成されている有機EL表示素子の数に対応している。すなわち、1枚の基板11には図1に示す有機EL表示素子が2つ形成されている。もちろん、開口部31の数は2つに限るものではない。
【0055】
なお、基板全体に対して均一に塗布するためには、スプレーノズル54を一定の速度及び一定の塗布液流量で移動させることが好ましい。また、基板端と基板中央とで塗布量を略同じにするため、基板11の外側までスプレーノズル54を移動させることが好ましい。すなわち、スプレーノズル54を基板11の外側まではみ出すよう移動させる。これにより、基板11全体に均一に塗布溶液を塗布することができる。
【0056】
このスプレーノズル54のスキャンスピードは例えば、300mm/secである。また、基板表面におけるスプレーノズル54の塗布範囲は直径30mmの円状である。すなわち、スプレーノズル54を固定して塗布した場合、基板表面において直径30mmの円状の領域に塗布溶液55が塗布される。従って、Y方向にスプレーノズル54を移動させると、X方向に30mmの幅で塗布溶液が塗布される。
【0057】
スプレーノズル54のスキャンにおいて、塗布範囲の一部が重なるように塗布することが好ましい。すなわち、X方向に移動させる間隔(ピッチ)を塗布範囲である30mm以下とすることが好ましい。ここではX方向のスプレーノズルの移動ピッチを12mmとしている。
【0058】
基板11のサイズを300mm×400mmとした場合、具体的には、スプレーノズル54が基板11を横切るよう、Y方向に300mm以上移動させる。そしてスプレーノズル54をX方向に12mm移動させた後、再度Y方向に300mm以上移動させる。このとき、Y方向の移動は、前回の移動と向きが反対になる。さらに、スプレーノズル54をX方向に12mm、前回と同じ向きで移動させる。これを繰り返し、スプレーノズルがX方向に400mm以上移動させる。これにより、図6に示すようスプレーノズル54をジグザグにスキャンすることができ、面内に均一に塗布溶液を塗布することができる。
【0059】
なお、上述の説明では塗布法の一例としてマスクスプレー法を用いて説明したが、オフセット印刷法、凸版印刷法を用いてもよい。
【0060】
次に、、本実施形態にかかる有機EL表示装置の製造方法について説明する。図7は、本実施形態にかかる有機EL表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。この図7に示す製造工程により、図1に示す素子基板が形成される。
【0061】
まず、基板11上に陽極配線1および陰極接続配線21を形成する(ステップS101)。基板11として、例えばガラス基板等の透明基板を用いる。陽極配線1および陰極接続配線21は、基板11上にITOを成膜して、そのITO膜にエッチングを施すことによって形成する。ITOはスパッタや蒸着によって、ガラス基板全面に均一性よく成膜することができる。フォトリソグラフィー及びエッチングによりITOパターンを形成する。このITOパターンが陽極となる。レジストとしてはフェノールノボラック樹脂を使用し、露光現像を行う。エッチングはウェットエッチングあるいはドライエッチングのいずれでもよいが、例えば、塩酸及び硝酸の混合水溶液を使用してITOをパターニングすることができる。レジスト剥離材としては例えば、モノエタノールアミンを使用することができる。
【0062】
また、陰極接続配線21にはAlあるいはAl合金などの低抵抗性の金属材料を用いることもできる。例えば、陽極配線1となるITOをパターニングした後に、Al等をスパッタ又は蒸着により成膜する。あるいは陰極接続配線21を形成した後に陽極配線1を形成しても良い。そして、Al膜をフォトリソグラフィー及びエッチングによりパターニングして陰極接続配線21を形成することができる。これにより、陰極接続配線21の配線抵抗を低減することができる。
【0063】
さらには陰極接続配線21の構成をITOと金属材料との多層構成としてもよい。例えば、150nmのITO層の上に400〜500nmのMoやMo合金の金属薄膜を形成してもよい。これにより、配線抵抗及びコンタクト抵抗を低減することができる。
【0064】
次に、陽極配線1及び陰極接続配線21を設けた基板11の面に絶縁膜22を成膜する(ステップS102)。例えば、感光性のポリイミドの溶液をスピンコーティングにより塗布する。この絶縁膜22の膜厚は、例えば、0.7μmになるようにすればよい。絶縁膜22の層をフォトリソグラフィー工程でパターニングした後、キュアし、表示画素となる位置の絶縁膜を除去し、開口部23を設ける。後述するステップS105で形成される陰極配線5と、陽極配線1との交差部分が、表示画素が形成される位置である。同時に陰極配線5と陰極接続配線21とのコンタクトホール25を形成する。例えば、開口部23は300μm×300μm程度で形成することができる
【0065】
続いて、絶縁膜(ポリイミドの層)22の表面において、陰極配線5を分離配置できるように隔壁10を形成する(ステップS103)。隔壁10は、絶縁膜22の上層にノボラック樹脂、アクリル樹脂膜等の感光性樹脂を塗布することにより形成する。例えば、感光性樹脂をスピンコートして、フォトリソグラフィー工程でパターニングした後、光反応させて隔壁10を形成する。隔壁10が逆テーパ構造を有するようネガタイプの感光性樹脂を用いることが望ましい。
【0066】
ネガタイプの感光性樹脂を用いると、上から光を照射した場合、深い場所ほど光反応が不十分となる。その結果、上から見た場合、硬化部分の断面積が上の方より下の方が狭い構造を有する。これが逆テーパ構造を有するという意味である。このような構造にすると、その後、陰極の蒸着時に蒸着源から見て陰になる部分は蒸着が及ばないため、陰極配線5同士を分離することが可能になる。さらに、開口部23のITO層の表面改質を行うために、酸素プラズマ又は紫外線を照射してもよい。例えば、隔壁10の高さは3.4μmに形成することができる。
【0067】
隔壁10にはフッ素化処理又はフッ素化合物を含有したものを用いる。フッ素化処理としては、少なくともフッ素原子を有するガスを導入して、プラズマ照射を行うプラズマ処理が好ましい。少なくともフッ素原子を有するガスとしては、CF、CHF、CF6、SF、C、Cの内のハロゲンガスを一つ以上含むガスを用いることができる。さらに導入ガスとしては、Ar、He、Oなどのガスを上記のハロゲンガスに加えてもよい。さらにはシランカップリング材を含むものを用いることにより、接触角を向上することができる。
【0068】
その後、有機薄膜層を積層する(ステップS104)。上述の有機材料溶液の塗布方法によって、溶液を塗布する。例えば、マスクスプレー法を用いる場合、まず、開口部を有する金属マスクをガラス基板に取り付ける。このとき、マスクの開口部と有機薄膜層を設けるべき表示領域24が重なるように配置する。また、マスクとガラス基板との間に所定距離、例えば60μmの空間が空くように取り付ける。そして、上述の塗布溶液をマスクスプレー法によって塗布する。
【0069】
そして、この有機材料溶液を濃縮乾燥することによって硬化処理し、有機薄膜層であるポリマーバッファ層41を形成する。ポリマーバッファ層41は上記の説明のように形成する。濃縮乾燥工程では、基板温度180℃で5分間仮乾燥を行った後、240℃で10分間本焼成を行う。これにより、溶媒が蒸発し、溶質である有機材料のみが基板に付着した状態となる。
【0070】
そして、ポリマーバッファ層41の上に、正孔注入層42を形成する。続いて、膜厚10nmの正孔輸送層を形成する。さらに、その上層に、膜厚60nmの白発光層を形成する。続いて、発光層の上層に膜厚30nmの電子輸送層を形成する。電子輸送層の上には、膜厚0.5nmの電子注入層を形成する。
【0071】
その後、アルミニウム等の金属材料を蒸着して、例えば膜厚100nmの陰極配線5を形成する(ステップS105)。この結果、隔壁10によってアルミニウム膜は分離され、それぞれの隔壁間に陽極配線1と交差する陰極配線5を形成することができる。
【0072】
有機薄膜層は絶縁膜22の上に形成され、開口部23を介して陽極配線1と接触する。有機薄膜層の上には陰極配線5が配置される。この開口部23を介して陽極配線1と陰極配線5に狭持され、電流が流れることによって発光する。なお、本実施形態では陰極接続配線21はITO層と金属層の2層構成としている。表示領域24外の絶縁膜22に形成されたコンタクトホール25を介して、表示領域24に設けられている陰極配線5と表示領域24外に通じる陰極接続配線21とが電気的に接続される。
【0073】
次に上述の工程により形成された有機EL発光素子を封止するため、封止用の対向基板を製造する工程について説明する。まず。素子基板とは別のガラス基板を用意する。このガラス基板を加工して捕水材を収納するための捕水材収納部を形成する。捕水材収納部はガラス基板にレジストを塗布し、露光、現像により基板の一部を露出させる。この露出部分をエッチングにより薄くすることにより捕水材収納部を形成する。
【0074】
図8に示すよう、この捕水材収納部66に酸化カルシウム等の捕水材62を配置した後、二枚の基板を重ね合わせて接着する(ステップS106)。なお、図8は有機EL表示装置の構成を模式的に示す断面図である。具体的には、対向基板63の捕水材収納部66が設けられた面に、ディスペンサを用いてシール材64を塗布する。シール材64として、例えば、エポキシ系紫外線硬化性樹脂を用いることができる。また、シール材64は、有機EL素子と対向する領域の外周全体に塗布する。二枚の基板を位置合わせして対向させた後、紫外線を照射してシール材を硬化させ、基板同士を接着する。この後、シール材の硬化をより促進させるために、例えば、80℃のクリーンオーブン中で1時間の熱処理を施す。この結果、シール材および一対の基板によって、有機EL素子が存在する基板間と、基板の外部とが隔離される。捕水材62を配置することにより、封止された空間に残留または侵入してくる水分等による有機EL素子の劣化を防止することができる。
【0075】
有機薄膜層40からの発光が矢印の方向に出射される。基板11の有機EL素子が形成された面とは反対側の面すなわち、出射面に光学シート65を貼り付ける。光学シート65は偏光板と1/4波長板を有しており、反射防止膜として機能する。この光学シート65が設けられた面側に有機薄膜層からの光が取り出される。
【0076】
基板の外周付近の不要部分を切断除去し、陽極配線1に信号電極ドライバを接続し、陰極接続配線に走査電極ドライバを接続する。基板端部において各配線に接続される端子部が形成されている。この端子部に異方性導電フィルム(ACF)を貼付け、駆動回路が設けられたTCP(Tape Carrier Package)を接続する。具体的には端子部にACFを仮圧着する。ついで駆動回路が内蔵されたTCPを端子部に本圧着する。これにより駆動回路が実装される。この有機EL表示パネルが筐体に取り付けられ、有機EL表示装置が完成する。上記は、ドットマトリックス表示素子の場合を示したが、キャラクター表示でもよく、又素子仕様によっては上記の構成の限りではない。
【0077】
このような有機EL表示装置の製造方法によれば、有機EL素子となる有機材料の溶液をほぼ一定の膜厚で塗布する。このことにより、有機薄膜層の膜厚のむらが軽減され、有機EL表示装置を駆動したときに各表示画素の発光むらを軽減することができる。また、本発明は、隔壁10を備える有機EL表示装置に限られるものではない。
【0078】
発明者は様々なテストを行い、αが10°以下、かつβ、βが15〜60°となる接触角条件を満足するよう洗浄を行った有機EL表示素子は表示ムラが低減されていることを確認した。以下は、単純マトリックス駆動のモノクロ有機EL表示装置の例である。本発明は、アクティブマトリックス駆動の有機EL表示装置にも適用できる。また、電極と電極以外の部分との撥水性の分離条件を適宜見出すことにより、カラーフィルタを備えた有機EL表示装置にも適用できる。
【0079】
実施例1.
上述の工程により隔壁10を形成した基板に、1200mJ/cmでの露光量でUV洗浄を行った。α=10°、絶縁膜の接触角β=35°、隔壁の接触角β=21°であった。白発光の有機EL表示素子を完成させ、点灯した所、表示ムラは無かった。
【0080】
比較例1.
実施例1と同様の工程により隔壁10を形成した基板に、3000mJ/cmの露光量でUV洗浄を行った。α=10°、絶縁膜の接触角β=34°、隔壁の接触角β=12°であった。白発光の有機EL表示素子を完成させ、点灯した所、全画素の隔壁際で輝度が上昇し、表示ムラとして視認された。
【0081】
比較例2.
実施例1と同様の工程により隔壁10を形成した基板に、33W×60秒で酸素プラズマ洗浄を行った。α=10°、絶縁膜の接触角β=10°、隔壁の接触角β=10°であった。白発光の有機EL表示素子を完成させ、点灯した所、全画素の隔壁際で輝度が上昇し、表示ムラとして視認された。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明にかかる有機EL表示装置の素子基板の概略構造を示す上面図である。
【図2】本発明にかかる有機薄膜層の構成の一例を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる有機EL表示装置の素子基板の有機薄膜層形成後の概略構造を示す上面図である。
【図4】洗浄工程における露光量と接触角の関係を示す図である。
【図5】本発明にかかる有機EL表示装置の製造に用いるスプレー塗布装置の構成を模式的に示す図である。
【図6】図5のスプレー塗布装置におけるスプレーノズルのスキャン経路を併せて示すマスクの上面図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明にかかる有機EL表示素子の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【図9】従来の有機EL表示装置の素子基板の構成を示す断面図である。
【図10】従来の有機EL表示装置の素子基板の構成を示す図である。
【図11】有機材料の溶液が広がった状態を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 陽極配線
5 陰極配線
10 隔壁
11 基板
21 陰極接続配線
22 絶縁膜
23 開口部
24 表示領域
25 コンタクトホール
31 開口部
40 有機薄膜層
41 ポリマーバッファ層
42 ホール注入層
43 ホール輸送層
44 発光層
45 電子輸送層
46 電子注入層
50 スプレー塗布装置
51 ステージ
53 マスク
54 スプレーノズル
55 溶液
56 フィルタ
57 コントローラ
62 捕水材
63 対向基板
64 シール材
65 光学シート
66 捕水材収納部
103 ホール注入輸送層
104 電子注入輸送層
110 表示基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極との間に有機発光層が備えられた有機EL表示装置であって、
基板上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極の上に開口部が配置されるよう設けられた構造物と、
前記構造物の上から湿式塗布されることにより形成された有機膜とを備え、
前記開口部における前記第1の電極表面の水に対する接触角が10°以下であり、かつ前記構造物の表面の水に対する接触角が15〜60°である有機EL表示装置。
【請求項2】
前記構造物が
前記第1の電極の上に開口部が配置されるよう設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に設けられ、前記有機発光層の上から設けられる第2の電極を分離する隔壁とを備える請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記有機膜が設けられている領域全体において、前記構造物の水に対する接触角が15〜60°である請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記有機発光層の少なくとも一部が前記有機膜から形成されている請求項1、2又は3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
基板にカラーフィルタが備えられていない請求項1、2、3または4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
第1の電極と第2の電極との間に有機発光層が備えられた有機EL表示装置の製造方法であって、
基板上に第1の電極を形成するステップと、
前記第1の電極の上に開口部を有する構造物を形成するステップと、
前記構造物が形成された基板を、前記開口部における前記第1の電極表面の水に対する接触角が10°以下となり、かつ前記構造物の表面の水に対する接触角が15〜60°となるよう洗浄するステップと、
前記洗浄された基板に溶液を塗布するステップとを有する有機EL表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄するステップでは、紫外線を照射することにより、前記基板を洗浄する請求項6記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項8】
第1の電極と第2の電極との間に有機発光層が備えられた有機EL表示装置の製造方法であって、
基板上に第1の電極を形成するステップと、
前記第1の電極の上に開口部を有する構造物を形成するステップと、
前記構造物が形成された基板に紫外線を700〜1500mJ/cmで照射するステップと、
前記紫外線が照射された基板に溶液を塗布するステップとを有する有機EL表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記構造物を形成するステップでは、
前記第1の電極の上に開口部を有する絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜の上に、前記有機発光層の上から設けられる第2の電極を分離する隔壁を形成するステップとを備える請求項6、7又は8に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記構造物にシランカップリング材が含まれている請求項6、7、8又は9に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項11】
カラーフィルターが形成されていない基板を用いる請求項6、7、8、9または10に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−73222(P2006−73222A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252028(P2004−252028)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】