説明

有機EL表示装置及び電子機器

【課題】動きボケを防止すると共に、消費電力の増大及び短寿命化を最低限に抑える。
【解決手段】本発明の電子機器は、画像データが動画データである場合には第1映像信号と第1制御信号と第1信号とを出力し、画像データが静止画データである場合には第1映像信号と第1制御信号と第2信号とを出力する外部装置EXDと、複数の画素と、第2制御信号によって動作が制御される走査信号線ドライバYDRと、第3制御信号によって動作が制御されると共に第2映像信号から第3映像信号を生成してこれを画素へと出力する映像信号線ドライバXDRと、ドライバXDR及びYDRに接続され、第1映像信号と第1制御信号と識別信号とを処理して第2及び第3制御信号と第2映像信号とを出力し、識別信号が第1信号である場合にはドライバXDR及びYDRに画素を黒挿入駆動させ、識別信号が第2信号である場合にはドライバXDR及びYDRに画素を黒挿入なしに駆動させるコントローラCNTとを備えた有機EL表示装置DPLとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス駆動方式を採用した表示装置,例えば、液晶表示装置及び有機EL表示装置,は、ホールド型表示装置と呼ばれている。これらホールド型表示装置は、陰極線管表示装置などのインパルス型表示装置とは異なり、動きボケを生じる可能性がある。そのため、一部のホールド型表示装置は、各フレーム期間の初め又は終わりに黒色画像を表示する黒挿入駆動を採用している。
【0003】
しかしながら、黒挿入駆動を行った場合、黒挿入を行わない場合と比較して、表示すべき画像に割り当てられる時間が減少する。それゆえ、例えば、有機EL表示装置で黒挿入駆動を行う場合、黒挿入駆動を行わない場合と同等の輝度を実現するには、有機EL素子に流す電流値をより大きくしなければならない。
【0004】
有機EL素子に流す電流値を大きくするには、その電極間電圧を大きくする必要がある。この場合、消費電力が増大するのに加え、温度上昇の影響で有機EL素子の寿命が短くなる。
【0005】
動きボケは、動画を表示する場合にのみ生じ、静止画を表示する場合には生じ得ない。したがって、例えば、動画を表示する場合にのみ黒挿入駆動を行えば、動きボケを防止すると共に、消費電力の増大や短寿命化を最低限に抑えることができる。
【0006】
しかしながら、表示装置自体に、映像信号から表示すべき画像が動画であるか静止画であるかを判別する機能を付与した場合、表示装置の消費電力及びコストが著しく上昇する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、動きボケを防止すると共に、消費電力の増大及び短寿命化を最低限に抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によると、外部装置から第1映像信号と第1制御信号と識別信号とが供給される有機EL表示装置であって、複数の画素と、第2制御信号によって動作が制御されると共に前記複数の画素へと走査信号を出力する走査信号線ドライバと、第3制御信号によって動作が制御されると共に第2映像信号から第3映像信号を生成してこれを前記複数の画素へと出力する映像信号線ドライバと、前記走査信号線ドライバと前記映像信号線ドライバとに接続され、前記第1映像信号と前記第1制御信号と前記識別信号とを処理して前記第2及び第3制御信号と前記第2映像信号とを出力し、前記識別信号が第1信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入駆動させ、前記識別信号が第2信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入なしに駆動させるコントローラとを具備したことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第2側面によると、画像データを含んだファイルを処理して、前記画像データが動画データである場合には第1映像信号と第1制御信号と第1信号とを出力し、前記画像データが静止画データである場合には前記第1映像信号と前記第1制御信号と第2信号とを出力する外部装置と、複数の画素と、第2制御信号によって動作が制御されると共に前記複数の画素へと走査信号を出力する走査信号線ドライバと、第3制御信号によって動作が制御されると共に第2映像信号から第3映像信号を生成してこれを前記複数の画素へと出力する映像信号線ドライバと、前記走査信号線ドライバと前記映像信号線ドライバとに接続され、前記第1映像信号と前記第1制御信号と前記識別信号とを処理して前記第2及び第3制御信号と前記第2映像信号とを出力し、前記識別信号が前記第1信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入駆動させ、前記識別信号が前記第2信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入なしに駆動させるコントローラとを備えた有機EL表示装置とを具備したことを特徴とする電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、動きボケを防止すると共に、消費電力の増大及び短寿命化を最低限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一態様に係る電子機器を概略的に示す図である。図2は、図1の電子機器が搭載可能な表示装置の一例を概略的に示す平面図である。図3は、図2の表示装置の一部を示す等価回路図である。なお、図1において、破線AAで囲んだ領域は表示領域であり、領域AAの外側の領域は周辺領域である。表示領域AAには、例えば図2に示す画素PXR、PXG及びPXBがマトリクス状に配置されている。
【0013】
図1の電子機器は、例えば、携帯電話、ノートブックコンピュータ、PDA(personal digital assistant)などの携帯機器、又は、デスクトップコンピュータなどの固定式機器である。この電子機器は、外部装置EXDと表示装置DPLとを含んでいる。
【0014】
外部装置EXDは、中央処理装置と、メモリなどの周辺装置とを含んでいる。外部装置EXDは、画像データを含んだファイル(以下、画像ファイルという)を処理して、表示装置DPLへと第1映像信号と第1制御信号と識別信号とを出力する。
【0015】
画像ファイルは、例えば、MPEG(motion picture expert group)ファイルなどの動画データを含んだファイル、又は、JPEG(joint photographic expert group)ファイルなどの静止画データを含んだファイルである。この画像ファイルは、例えば、外部装置EXDが予め記憶しているものであってもよく、光ディスクやメモリカードなどの着脱式記録媒体から読み出したものであってもよく、デジタルカメラなどの他の電子機器から転送したものであってもよく、ホスト又はサーバコンピュータなどからダウンロードしたものであってもよく、或いは、放送衛星や放送局の送信機などから受信したものであってもよい。
【0016】
第1映像信号は、例えば、外部装置EXDから表示装置DPLへとパラレル伝送される赤、緑、青色の3原色信号である。各原色信号は、典型的には、ディジタル信号として外部装置EXDから表示装置DPLへとシリアル伝送される。第1映像信号は、例えばPC信号であって、そのフォーマットは、表示する画像の解像度などに応じて、例えば、VGA(video graphic array)、SVGA(super video graphic array)、XGA(extended video graphic array)、SXGA(super extended video graphic array)、UXGA(ultra extended video graphic array)などに分類することができる。
【0017】
第1制御信号は、例えば、同期信号及びクロック信号である。同期信号及びクロック信号は、ディジタル信号である。
【0018】
識別信号は、画像ファイルが含んでいる画像データが動画データ及び静止画データの何れであるかを、表示装置DPLが識別できるようにする信号である。外部装置EXDは、例えば、「mpg」及び「jpg」などの画像ファイルのファイル拡張子に基づいて、画像データが動画データであるか又は静止画データであるかを判別する。そして、外部装置EXDは、画像データが動画データである場合には表示装置DPLに第1信号を出力し、画像データが静止画データである場合には表示装置DPLに第2信号を出力する。
【0019】
表示装置DPLは、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRと、コントローラCNTとを含んでいる。
【0020】
表示パネルDPは、例えば、ガラス基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。基板SUB上には、アンダーコート層として、例えば、SiNx層とSiOx層とが順次積層されている。
【0021】
アンダーコート層上には、例えばソース及びドレインが形成されたポリシリコン層である半導体層、例えばTEOS(tetraethyl orthosilicate)などを用いて形成され得るゲート絶縁膜、及び例えばMoWなどからなるゲートが順次積層されており、それらはトップゲート型の薄膜トランジスタを構成している。この例では、これら薄膜トランジスタは、pチャネル薄膜トランジスタであり、図2及び図3に示す駆動制御素子DR及びスイッチSWa乃至SWcとして利用している。
【0022】
ゲート絶縁膜上には、キャパシタCの一方の電極と走査信号線SL1及びSL2とがさらに配置されている。これらは、ゲートと同一の工程で形成可能である。
【0023】
走査信号線SL1及びSL2は、図1に示すように、各々が画素PXR、PXG及びPXBの行方向(X方向)に延びており、画素PXR、PXG及びPXBの列方向(Y方向)に交互に配列している。これら走査信号線SL1及びSL2は、走査信号線ドライバYDRに接続されている。
【0024】
ゲート絶縁膜、ゲート、走査信号線SL1及びSL2、並びにキャパシタCの一方の電極は、層間絶縁膜で被覆されている。層間絶縁膜は、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOxなどからなる。この層間絶縁膜の一部は、キャパシタCの誘電体層として利用する。
【0025】
層間絶縁膜上には、キャパシタCの他方の電極、ソース電極、ドレイン電極、映像信号線DL、及び電源線PSLが配置されている。これらは、同一工程で形成可能であり、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。
【0026】
ソース電極及びドレイン電極は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタのソース及びドレインに電気的に接続されている。
【0027】
映像信号線DLは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。これら映像信号線DLは、映像信号線ドライバXDRに接続されている。
【0028】
電源線PSLは、この例では、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。この例では、電源線PSLは、映像信号線ドライバXDRに接続されている。
【0029】
ソース電極、ドレイン電極、映像信号線DL、電源線PSL、及びキャパシタCの他方の電極は、パッシベーション膜で被覆されている。パッシベーション膜は、例えばSiNxなどからなる。
【0030】
パッシベーション膜上には、前面電極として、光透過性の第1電極が互いから離間して並置されている。各第1電極は、画素電極であり、パッシベーション膜に設けた貫通孔を介して、スイッチSWaのドレイン電極に接続されている。
【0031】
第1電極は、この例では陽極である。第1電極の材料としては、例えば、ITO(indium tin oxide)のような透明導電性酸化物を使用することができる。
【0032】
パッシベーション膜上には、さらに隔壁絶縁層が配置されている。隔壁絶縁層には、第1電極に対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、第1電極が形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層には、第1電極に対応した位置に貫通孔が設けられていることとする。
【0033】
隔壁絶縁層は、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層は、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0034】
第1電極上には、活性層として発光層を含んだ有機物層が配置されている。発光層は、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層は、発光層に加え、正孔注入層、正孔輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0035】
隔壁絶縁層及び有機物層は、第1電極と向き合うように配置された対向電極としての第2電極で被覆されている。第2電極は、画素PXR、PXG及びPXBの全てに共通の共通電極であり、この例では背面電極として設けられた光反射性の陰極である。第2電極は、例えば、パッシベーション膜と隔壁絶縁層とに設けられたコンタクトホールを介して、映像信号線DLと同一の層上に形成された電極配線(図示せず)に電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、第1電極、有機物層及び第2電極で構成されている。
【0036】
絶縁基板SUB上では、画素PXR、PXG及びPXBがマトリクス状に配列している。この例では、3つの画素PXR、PXG及びPXBをX方向に並べてなるトリプレットがX方向とY方向とに配列している。
【0037】
画素PXR、PXG及びPXBの各々は、電源端子ND1及びND2間で直列に接続された駆動回路及び有機EL素子OLEDを含んでいる。この例では、駆動回路は、駆動制御素子DRと、キャパシタCと、出力制御スイッチSWaと、信号供給制御スイッチSWbと、ダイオード接続スイッチSWcとを含んでいる。上記の通り、この例では、駆動制御素子DR及びスイッチSWa乃至SWcは、pチャネル薄膜トランジスタである。また、スイッチSWb及びSWcは、駆動制御素子DRのドレインとゲートと映像信号線DLとの接続を、それらが互いに接続された第1状態と、それらが互いから切断された第2状態との間で切り替えるスイッチ群を構成している。
【0038】
駆動制御素子DRと出力制御スイッチSWaと有機EL素子OLEDとは、第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。この例では、第1電源端子ND1は電源線PSLに接続された高電位電源端子であり、第2電源端子ND2は第1電源端子ND1と比較してより低い電位に設定された低電位電源端子である。
【0039】
出力制御スイッチSWaのゲートは、走査信号線SL1に接続されている。信号供給制御スイッチSWbは映像信号線DLと駆動制御素子DRのドレインとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL2に接続されている。ダイオード接続スイッチSWcは駆動制御素子DRのドレインとゲートとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL2に接続されている。
【0040】
キャパシタCは、定電位端子と駆動制御素子DRのゲートとの間に接続されている。この例では、キャパシタCは第1電源端子ND1と駆動制御素子DRのゲートとの間に接続されている。
【0041】
表示パネルDP上には、映像信号線ドライバXDRが配置されている。映像信号線ドライバXDRは、図3に示すように、映像信号線DL毎に、電流源CSとスイッチSWvsとを含んでいる。さらに、映像信号線ドライバXDRは、マルチプレクサMLTと電圧源VSと基準トランジスタTRrefと抵抗素子Rとを含んでいる。
【0042】
マルチプレクサMLTは、クロック信号CLK、スタート信号START、シリアル信号としての映像信号DATAが入力される入力端子を含んでいる。ここで、クロック信号CLK及びスタート信号STARTは第3制御信号であり、映像信号DATAは第2映像信号である。
【0043】
さらに、マルチプレクサMLTは、電流源CS毎に複数の出力端子を含んでいる。マルチプレクサMLTは、クロック信号CLKとスタート信号STARTとに基づいて、シリアル信号としての映像信号DATAをパラレル信号に変換し、これを各電流源CSへと出力する。この例では、マルチプレクサMLTは、映像信号を6ビットのディジタル信号として、各電流源CSに出力する。なお、パラレル信号へと変換した映像信号は、第3映像信号である。
【0044】
基準トランジスタTRrefは、この例ではpチャネル電界効果トランジスタである。基準トランジスタTRrefのソースは抵抗素子Rを介して定電位端子ND1’に接続されており、そのドレインは接地線に接続されている。この表示装置の駆動時には、基準トランジスタTRrefのソース−ドレイン間に基準電流Irefを流す。
【0045】
電流源CSは、映像信号線ドライバXDRの出力端子,すなわち映像信号線DLに接続された端子,と接地線との間に接続されている。電流源CSは、マルチプレクサMLTがパラレル信号として出力するディジタル信号をアナログ信号へと変換する。この例では、電流源CSは、マルチプレクサMLTが出力する6ビットのディジタル映像信号から、電流信号としてのアナログ映像信号を生成する。
【0046】
電流源CSは、複数の定電流源TRdgtと複数のスイッチSWdgtとを含んでいる。定電流源TRdgtとスイッチSWdgtとは、それぞれ、映像信号線ドライバXDRの出力端子と接地線との間で直列に接続されている。この例では、電流源CSは、6つの定電流源TRdgtと6つのスイッチSWdgtとを含んでいる。また、この例では、定電流源TRdgt及びスイッチSWdgtは、pチャネル電界効果トランジスタである。
【0047】
定電流源TRdgtのゲートは、それぞれ、基準トランジスタTRrefのゲートに接続されている。スイッチSWdgtのゲートは、それぞれ、マルチプレクサMLTの出力端子に接続されている。
【0048】
定電流源TRdgtは、例えば、それらの1つが基準トランジスタTRrefと同一の構造を有しており、残りの5つがチャネル幅が異なること以外は基準トランジスタTRrefと同一の構造を有している。6つの定電流源TRdgtは、それらに接続されているスイッチSWdgtが閉じている間、例えば、基準電流Irefの1倍、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍の大きさの定電流をそれぞれ出力する。
【0049】
スイッチSWvsと定電圧源VSとは、映像信号線DLと接地線との間で、この順に直列に接続されている。
【0050】
定電圧源VSは、定電圧を黒挿入信号Vblkとして出力する。黒挿入信号Vblkは、映像信号が最低階調である場合に書込動作によって設定されるべき映像信号線DLの電圧とほぼ等しいか又はそれよりも高い定電圧である。
【0051】
スイッチSWvsは、この例では、pチャネル電界効果トランジスタである。スイッチSWvsのゲートには、例えば、黒色画像に対応した信号を画素PXR、PXG及びPXBに書き込むときにのみスイッチSWvsを閉じる制御信号BLKが入力される。
【0052】
表示パネルDP上には、走査信号線ドライバYDRがさらに配置されている。上記の通り、走査信号線ドライバYDRには、走査信号線SL1及びSL2が接続されている。走査信号線ドライバYDRの動作は、スタート信号及びクロック信号などの第2制御信号によって制御される。走査信号線ドライバYDRは、第2制御信号に基づいて、走査信号線SL1及びSL2に第1及び第2走査信号をそれぞれ出力する。
【0053】
映像信号線ドライバXDRと走査信号線ドライバYDRとは、コントローラCNTに接続されている。また、コントローラCNTには、外部装置EXDが接続されている。
【0054】
コントローラCNTは、第1映像信号と第1制御信号と識別信号とを処理して、走査信号線ドライバYDRに第2制御信号を出力し、映像信号線ドライバXDRに第3制御信号及び第2映像信号を出力する。具体的には、コントローラCNTは、識別信号が第1信号である場合には走査信号線ドライバYDR及び映像信号線ドライバXDRに画素PXR、PXG及びPXBを黒挿入駆動させ、識別信号が第2信号である場合には走査信号線ドライバYDR及び映像信号線ドライバXDRに画素PXR、PXG及びPXBを黒挿入なしに駆動させる。
【0055】
典型的には、コントローラCNTは、識別信号が第1信号である場合には、識別信号が第2信号である場合と比較して、基準電流Irefをより大きくする。また、典型的には、コントローラCNTは、識別信号が第1信号である場合には、識別信号が第2信号である場合と比較して、電源端子ND1及びND2間の電圧をより大きくする。
【0056】
この表示装置の動作について、さらに詳しく説明する。
図4は、図2の有機EL表示装置で動画を表示する場合の駆動方法の一例を示すタイミングチャートである。図4には、画素PXR、PXG及びPXBがM個の行を形成している場合の駆動方法を描いており、横軸は時間を示し、縦軸は電位を示している。
【0057】
図4において、「XDR出力」のうち、「Isigm」と表記した期間は映像信号線ドライバXDRが映像信号線DLに映像信号Isigmを出力する期間を示し、「Vblk」と表記した期間は映像信号線ドライバXDRが映像信号線DLに黒挿入信号Vblkを出力する期間を示している。また、図4において、「SL1電位」及び「SL2電位」で示す波形は走査信号線SL1及びSL2の電位をそれぞれ示している。
【0058】
この駆動方法では、1フレーム期間を、第1サブフィールド期間と第2サブフィールド期間とに分割している。第1サブフィールド期間では動画に対応した映像信号の書き込みを行い、第2サブフィールド期間では黒色画像に対応した映像信号の書き込みを行う。
【0059】
第1及び第2サブフィールド期間の各々は、有効走査期間と、それに続く垂直ブランキング期間(図4では省略している)とを含んでいる。各有効走査期間においては、画素PXR、PXG及びPXBを行毎に選択する。画素PXR、PXG及びPXBを選択している選択期間では、それら画素PXR、PXG及びPXBに対して書込動作を行う。また、画素PXR、PXG及びPXBを選択していない非選択期間では、それら画素PXR、PXG及びPXBで有効表示動作を行う。
【0060】
第1サブフィールド期間では、画素PXR、PXG及びPXBに対し、第1書込動作を行毎に順次実施する。例えば、m行目の画素PXR、PXG及びPXBを選択している期間(以下、m行目選択期間という)では、まず、m行目の画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWaを開く。次いで、マルチプレクサMLTから電流源CSに6ビットのディジタル映像信号を出力すると共に、m行目の画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWb及びSWcを閉じる。なお、この例では、第1サブフィールド期間において、スイッチSWvsは開いたままにしておく。
【0061】
電流源CSは、ディジタル映像信号をアナログ映像信号としての書込電流Isigmに変換する。この書込電流Isigmは、第1電源端子ND1から電流源CSへと流れる。これにより、m行目の画素PXR、PXG及びPXBの各々において、駆動制御素子DRのゲート電位を、駆動制御素子DRのソース−ドレイン間に書込電流Isigmが流れるときの値に設定する。
【0062】
その後、m行目の画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWb及びSWcを開く。さらに、それら画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWaを閉じることにより、m行目選択期間を終了する。
【0063】
スイッチSWaを閉じると、有機EL素子OLEDには、書込電流Isigmに対応した大きさの駆動電流Idrvmが流れる。非選択期間では、スイッチSWaは閉じたままとする。したがって、先の画素PXR、PXG及びPXBの有機EL素子OLEDは、それらが次に選択されるまで、駆動電流Idrvmの大きさに対応した輝度で発光し続ける。
【0064】
m行目選択期間を終了した後、m+1行目選択期間を開始する。m+1行目選択期間では、m+1行目の画素PXR、PXG及びPXBに対して、第1書込動作を実施する。第1サブフィールド期間では、以上のようにして、1乃至M行目の画素PXR、PXG及びPXBに対して、第1書込動作を行毎に順次実施する。
【0065】
第2サブフィールド期間では、画素PXR、PXG及びPXBに対し、第2書込動作を行毎に順次実施する。例えば、m行目選択期間では、まず、m行目の画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWaを開く。次いで、スイッチSWvsを閉じると共に、m行目の画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWb及びSWcを閉じる。なお、この例では、第2サブフィールド期間において、電流源CSが含む全てのスイッチSWdgtは開いたままにしておく。
【0066】
定電圧源VSの出力電圧Vblkは、例えば、映像信号が最低階調である場合に第1書込動作によって設定されるべき映像信号線DLの電圧と等しいか又はそれよりも高い定電圧である。したがって、m行目の画素PXR、PXG及びPXBの各々において、駆動制御素子DRのゲート−ソース間電圧Vgsは、その閾値電圧Vthよりも高くなる。
【0067】
その後、m行目の画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWb及びSWcを開く。さらに、それら画素PXR、PXG及びPXBのスイッチSWaを閉じることにより、m行目選択期間を終了する。
【0068】
上記の通り、先の画素PXR、PXG及びPXBの各々では、駆動制御素子DRのゲート−ソース間電圧Vgsはその閾値電圧Vthよりも高い値に設定されている。したがって、これら画素PXR、PXG及びPXBの有機EL素子OLEDは、第2書込動作を行った直後の非選択期間において発光しない。
【0069】
m行目選択期間を終了した後、m+1行目選択期間を開始する。m+1行目選択期間では、m+1行目の画素PXR、PXG及びPXBに対して、第2書込動作を実施する。第2サブフィールド期間では、以上のようにして、1乃至M行目の画素PXR、PXG及びPXBに対して、第2書込動作を行毎に順次実施する。
【0070】
このように、図4の駆動方法では、第1サブフィールド期間で第1書込動作を行い、第2サブフィールド期間で第2書込動作を行うことにより、動画を構成する画像と黒色画像とを交互に表示する。すなわち、図4の方法では、黒挿入駆動を行っている。したがって、この駆動方法によると、動きボケを生じるのを防止することができる。
【0071】
しかしながら、上記の通り、黒挿入駆動を行った場合、黒挿入を行わない場合と比較して、表示すべき画像に割り当てられる時間が減少する。そのため、黒挿入駆動を行う場合に、黒挿入駆動を行わない場合と同等の輝度を実現するには、有機EL素子OLEDに流す電流値をより大きくしなければならない。有機EL素子OLEDに流す電流値を大きくすると、消費電力が増大するのに加え、温度上昇の影響で有機EL素子OLEDの寿命が短くなる。
【0072】
そこで、本態様では、静止画を表示する場合には、以下の駆動方法を採用する。
図5は、図2の有機EL表示装置で静止画を表示する場合の駆動方法の一例を示すタイミングチャートである。図5には、画素PXR、PXG及びPXBがM個の行を形成している場合の駆動方法を描いており、横軸は時間を示し、縦軸は電位を示している。
【0073】
図5において、「XDR出力」のうち、「Isigm」と表記した期間は映像信号線ドライバXDRが映像信号線DLに映像信号Isigmを出力する期間を示している。また、図5において、「SL1電位」及び「SL2電位」で示す波形は走査信号線SL1及びSL2の電位をそれぞれ示している。
【0074】
この駆動方法では、図4の駆動方法と同様、1フレーム期間を、第1サブフィールド期間と第2サブフィールド期間とに分割している。第1及び第2サブフィールド期間では、上述した第1書込動作を実施する。そして、第2サブフィールド期間で書き込む映像信号は、その直前の第1サブフィールド期間で書き込んだ映像信号と同一とする。
【0075】
すなわち、図5の方法では、黒挿入駆動は行わない。そのため、各フレーム期間において、静止画の表示に十分な時間を割り当てることができる。したがって、図4の方法と図5の方法とで同じ明るさで画像を表示する場合、図5の方法によると、図4の方法と比較して、駆動電流Idrvmをより小さくすること、及び、電源端子ND1及びND2間の電圧をより小さくすることができる。
【0076】
なお、静止画を表示する場合に、動画を表示する場合と比較して、同一の第1映像信号に対応した駆動電流Idrvmをより小さくするには、例えば、コントローラCNTによる以下の制御を行う。すなわち、外部装置EXDが出力する識別信号が第2信号である場合には、識別信号が第1信号である場合と比較して、基準電流Irefをより小さくする。識別信号が第2信号である場合の基準電流Irefと識別信号が第1信号である場合の基準電流Irefとの比を適宜設定すれば、図4の方法で駆動した場合と図5の方法で駆動した場合とで、第1映像信号の大きさを変更することなく、同じ明るさの画像を表示することができる。
【0077】
このように、本態様では、動画を表示する場合にのみ黒挿入駆動を行い、静止画を表示する場合には黒挿入駆動は行わない。それゆえ、本態様によると、動きボケを防止すると共に、消費電力の増大や短寿命化を最低限に抑えることができる。
【0078】
また、本態様では、表示装置DPL自体には、表示すべき画像が動画であるか静止画であるかを判別する機能は付与せず、この役割は外部装置EXDに担わせている。外部装置EXDは、各種データを処理する中央処理装置を搭載しているので、この中央処理装置に、表示すべき画像が動画であるか静止画であるかを判別させることができる。しかも、表示すべき画像が動画であるか静止画であるかの判別は、簡単なプログラムによって実現可能である。したがって、本態様によると、動きボケを防止可能とすることに伴う表示装置の消費電力及びコストの上昇を防止又は抑制することができ、それゆえ、電子機器のコストの上昇を防止又は抑制することができる。
【0079】
図4及び図5の駆動方法では、1フレーム期間を2つのサブフィールド期間に分割しているが、1フレーム期間を3つ以上のサブフィールド期間に分割してもよい。また、図5の駆動方法では、1フレーム期間を、複数のサブフィールド期間に分割せずに、1つのフィールド期間で構成してもよい。
【0080】
本態様では、画素PXR、PXG及びPXBに図2及び図3の構造を採用したが、これらには他の構造を採用することも可能である。例えば、ダイオード接続スイッチSWcは、駆動制御素子DRのドレインとゲートとの間に接続する代わりに、駆動制御素子DRのゲートと映像信号線DLとの間に接続してもよい。或いは、信号供給制御スイッチSWbは、駆動制御素子DRのドレインと映像信号線DLとの間に接続する代わりに、駆動制御素子DRのゲートと映像信号線DLとの間に接続してもよい。
【0081】
また、本態様では、画素PXR、PXG及びPXBに第3映像信号として電流信号を書き込む構成を採用したが、画素PXR、PXG及びPXBに第3映像信号として電圧信号を書き込む構成を採用することもできる。この場合、第3映像信号の大きさの基準として基準電流Irefを使用する代わりに、基準電圧Vrefを使用する。そして、この基準電圧Vrefは、例えば、識別信号が第1信号である場合には、識別信号が第2信号である場合と比較してより大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一態様に係る電子機器を概略的に示す図。
【図2】図1の電子機器が搭載可能な表示装置の一例を概略的に示す平面図。
【図3】図2の表示装置の一部を示す等価回路図。
【図4】図2の有機EL表示装置で動画を表示する場合の駆動方法の一例を示すタイミングチャート。
【図5】図2の有機EL表示装置で静止画を表示する場合の駆動方法の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0083】
AA…領域、C…キャパシタ、CNT…コントローラ、CS…電流源、DL…映像信号線、DP…表示パネル、DPL…表示装置、DR…駆動制御素子、EXD…外部装置、MLT…マルチプレクサ、ND1…電源端子、ND1’…定電位端子、ND2…電源端子、OLED…有機EL素子、PSL…電源線、PXB…画素、PXG…画素、PXR…画素、R…抵抗素子、SL1…走査信号線、SL2…走査信号線、SUB…絶縁基板、SWa…スイッチ、SWb…スイッチ、SWc…スイッチ、SWdgt…スイッチ、SWvs…スイッチ、TRdgt…定電流源、TRref…基準トランジスタ、VS…定電圧源、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から第1映像信号と第1制御信号と識別信号とが供給される有機EL表示装置であって、
複数の画素と、
第2制御信号によって動作が制御されると共に前記複数の画素へと走査信号を出力する走査信号線ドライバと、
第3制御信号によって動作が制御されると共に第2映像信号から第3映像信号を生成してこれを前記複数の画素へと出力する映像信号線ドライバと、
前記走査信号線ドライバと前記映像信号線ドライバとに接続され、前記第1映像信号と前記第1制御信号と前記識別信号とを処理して前記第2及び第3制御信号と前記第2映像信号とを出力し、前記識別信号が第1信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入駆動させ、前記識別信号が第2信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入なしに駆動させるコントローラとを具備したことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記識別信号が前記第1信号である場合には、1フレームを複数のサブフィールドで構成すると共に、前記複数の画素に、それらサブフィールドの一部で前記第1映像信号に対応した画像を表示させ、残りのサブフィールドで黒色画像を表示させ、
前記識別信号が前記第2信号である場合には、1フレームを1つのフィールド又は複数のサブフィールドで構成すると共に、前記複数の画素に、そのフィールド又はそれらサブフィールドの全てで前記第1映像信号に対応した画像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記識別信号が第1信号である場合には、前記識別信号が第2信号である場合と比較して、前記第3映像信号の大きさの基準として利用する基準電流又は基準電圧をより大きくすることを特徴とする請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記複数の画素の各々は、一対の電源端子間で直列に接続された駆動回路及び有機EL素子を含み、
前記コントローラは、前記識別信号が第1信号である場合には、前記識別信号が第2信号である場合と比較して、前記一対の電源端子間の電圧をより大きくすることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
画像データを含んだファイルを処理して、前記画像データが動画データである場合には第1映像信号と第1制御信号と第1信号とを出力し、前記画像データが静止画データである場合には前記第1映像信号と前記第1制御信号と第2信号とを出力する外部装置と、
複数の画素と、第2制御信号によって動作が制御されると共に前記複数の画素へと走査信号を出力する走査信号線ドライバと、第3制御信号によって動作が制御されると共に第2映像信号から第3映像信号を生成してこれを前記複数の画素へと出力する映像信号線ドライバと、前記走査信号線ドライバと前記映像信号線ドライバとに接続され、前記第1映像信号と前記第1制御信号と前記識別信号とを処理して前記第2及び第3制御信号と前記第2映像信号とを出力し、前記識別信号が前記第1信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入駆動させ、前記識別信号が前記第2信号である場合には前記走査信号線ドライバ及び前記映像信号線ドライバに前記複数の画素を黒挿入なしに駆動させるコントローラとを備えた有機EL表示装置とを具備したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−114286(P2007−114286A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303105(P2005−303105)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】