説明

有機EL表示装置

【課題】 減光率の調整範囲を大きくすることが可能な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】 ドットマトリクス型の有機ELパネルは、複数の走査ライン及び複数のドライブラインを備え、マトリクス状に設けられた画素を有する。走査スイッチ手段は、走査ラインを第一電位または第二電位に接続自在とする。ドライブスイッチ手段は、ドライブラインを駆動電流源またはオフ電位に接続自在とする。制御手段は、走査スイッチ手段によって走査ラインを第一電位に接続させ走査ラインを順次選択し、ドライブスイッチ手段の接続状態を制御すると共に、画素の減光率を調整する。制御手段は、減光率が所定値以下のとき、画素を発光させる点灯フレームf1,f5,f9,f13と、画素を発光させない間引きフレームf2,f3,f4,f6,f7,f8,f10,f11,f12,f14,f15,f16とを設け、画素の発光を間歇的に間引くものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の陽極ライン及び複数の陰極ラインを有するドットマトリクス型の有機ELパネルを有する有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドットマトリクス型の有機ELパネルが種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。斯かる有機ELパネルは、透光性基板上にITO等の導電性透明膜からなる複数の陽極ライン(以下、ドライブラインと記す)をストライプ状に形成し、このドライブラインの背面に有機層を形成し、この有機層の背面にアルミニウム等の金属蒸着膜からなる複数の陰極ライン(以下、走査ラインと記す)をドライブラインに直交するように形成し、これらドライブラインと走査ラインとで前記有機層を挟持するものであり、液晶ディスプレイに代わる低消費電力,高表示品質及び薄型化が可能なディスプレイとして注目されている。
【特許文献1】特許第3314046号公報
【0003】
有機EL表示装置は、有機ELパネル1と、陰極駆動回路2と、陽極駆動回路3と、制御部4と、リセット回路5とを有している(図7参照)。有機ELパネル1は、画素E11〜Emnがマトリクス状に配設されてなるものである。画素E11〜Emnは、縦方向に複数設けられた走査ラインS1〜Smと、走査ラインS1〜Smと直交するように横方向に複数設けられたドライブラインD1〜Dnとの交差箇所に設けられている。画素E11〜Emnは、並列配置されたダイオード及びコンデンサからなる等価回路で表される(図8参照)。ただし、図面が煩雑になることを防ぐため、図7においては画素E11〜Emnをダイオードのみで図示している。
【0004】
陰極駆動回路2は、各走査ラインS1〜Smに対応する複数の走査スイッチ21〜2mを備えている。走査スイッチ21〜2mは、制御部4の制御信号に基づいて、各走査ラインS1〜Smを選択的に非選択電位Vbまたはアース電位(0V)に接続するものである。各走査ラインS1〜Smが順次1回ずつ選択される周期は「フレーム周期」、フレーム周期の逆数は「フレーム周波数」と称される。
【0005】
陽極駆動回路3は、各ドライブラインD1〜Dnに対応して個々に駆動電流を供給する定電流源30と、この定電流源30からの駆動電流を各ドライブラインD1〜Dnに接続可能とするドライブスイッチ31〜3nとから構成される。各ドライブスイッチ31〜3nの切換えは、制御部4からの制御信号に基づいて決定される。
【0006】
制御部4は、陰極駆動回路2及び陽極駆動回路3に制御信号を夫々出力し、画素E11〜Emnを発光させるために必要な走査ラインS1〜Sm及びドライブラインD1〜Dnに対応した走査スイッチ21〜2m及びドライブスイッチ31〜3nを選択的にオン/オフさせる。
【0007】
リセット回路5は、各ドライブラインD1〜Dnに夫々接続された複数のリセットスイッチ50からなるものである。リセットスイッチ50は、走査スイッチ21〜2mによって任意の走査ラインS1〜Smが選択されてから次の走査ラインS1〜Smが選択される間に、ドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続することにより、画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させるものである。リセット回路5によって画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させる期間は、「リセット期間」と称される。リセット期間では、ドライブラインD1〜Dnだけでなく、走査ラインS1〜Smもアース電位に接続される。
【0008】
制御回路4は、走査スイッチ21〜2mを順次オンさせて、走査ラインS1〜Smを順次選択すると共に、各ドライブスイッチ31〜3nをオン/オフさせることによって、有機ELパネル1に文字,図形等を表示させる。上述のような有機ELパネル1の駆動方式は、「単純マトリクス方式」或いは「パッシブマトリクス方式」と称されている。
【0009】
有機ELパネル1の減光率を調整する方法としては、PWM(Pulse Width
Modulation)が知られている。PWMは、駆動波形のパルス幅W1,W2、即ち、駆動波形のデューティー比によって減光率を調整するものであり、例えば、駆動波形のパルス幅W2を、パルス幅W1の20%にすれば、減光率は20%になる(図9参照)。PWMによれば、有機ELパネル1の減光率を100%〜約1%の範囲で変えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、減光率の調整範囲が更に大きい有機EL表示装置が望まれており、例えば、車両に搭載される有機EL表示装置においては、夜間での使用における微弱発光を考慮して、減光率の調整範囲が100%〜約0.3%であることが望まれている。本発明は、減光率の調整範囲を大きくすることが可能な有機EL表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、請求項1に記載したように、複数の走査ライン及び複数のドライブラインを備え、マトリクス状に設けられた画素を有するドットマトリクス型の有機ELパネルと、前記走査ラインを第一電位または第二電位に接続自在とする走査スイッチ手段と、前記ドライブラインを駆動電流源またはオフ電位に接続自在とするドライブスイッチ手段と、前記走査スイッチ手段によって前記走査ラインを前記第一電位に接続させ前記走査ラインを順次選択し、前記ドライブスイッチ手段の接続状態を制御すると共に、前記画素の減光率を調整する制御手段と、を有する有機EL表示装置であって、前記制御手段は、前記減光率が所定値以下のとき、前記画素を発光させる点灯フレーム及び前記画素を発光させない間引きフレームを設け、前記画素の発光を間歇的に間引くものである。
【0012】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記制御手段は、前記画素の発光を間歇的に間引くと共に、前記減光率をデューティー比によって調整するものである。
【0013】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記制御手段は、前記画素の発光を間歇的に間引くと共に、前記減光率を波高値によって調整するものである。
【0014】
また、本発明は、請求項4に記載したように、フレーム周波数が150Hz以上であるものである。
【0015】
また、本発明は、請求項5に記載したように、前記制御手段は、前記点灯フレームと前記間引きフレームを不規則な順序で設けるものである。
【発明の効果】
【0016】
減光率が所定値以下のとき、画素を発光させない間引きフレームを設け、画素の発光を間歇的に間引くことにより、減光率の調整範囲を大きくすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態について説明する。図1乃至図4は第一実施形態を示すものである。有機EL表示装置は、有機ELパネル1と、陰極駆動回路2と、陽極駆動回路7と、制御部8(制御手段)と、リセット回路5とから構成されている。
【0018】
有機ELパネル1は、画素E11〜Emnがマトリクス状に配設されてなるものである。画素E11〜Emnは、縦方向に複数設けられた走査ラインS1〜Smと、走査ラインS1〜Smと直交するように横方向に複数設けられたドライブラインD1〜Dnとの交差箇所に設けられている。
【0019】
陰極駆動回路2は、各走査ラインS1〜Smに対応する複数の走査スイッチ21〜2m(走査スイッチ手段)を備えている。各走査スイッチ21〜2mは、走査ラインS1〜Smをアース電位(第一電位)に接続する第一のトランジスタTr1と、走査ラインS1〜Smを非選択電位Vb(第二電位)に接続させる第二のトランジスタTr2と、からなるものである(図2参照)。第一のトランジスタTr1はNチャンネル型トランジスタであり、第二のトランジスタTr2はPチャンネル型トランジスタである。なお、図1においては、図面が煩雑になることを防ぐため、各走査スイッチ21〜2mについては、第一のトランジスタTr1及び第二のトランジスタTr2の一方を図示している。
【0020】
第一のトランジスタTr1及び第二のトランジスタTr2は、夫々、ゲートGa,Gbと、ソースSa,Sbと、ドレインSa,Sbと、を有している。第一のトランジスタTr1のソースSaはアース電位に接続され、ドレインDaは走査ラインS1〜Smに接続されている。第一のトランジスタTr1は、ゲートGaから入力される駆動信号に基づいて、選択する走査ラインS1〜Smをアース電位に接続する。第二のトランジスタTr2のソースDbは非選択電位Vbに接続され、ドレインDbは走査ラインS1〜Smに接続されている。第二のトランジスタTr2は、ゲートGbから入力される駆動信号に基づいて、選択されない走査ラインS1〜Smを非選択電位Vbに接続する。走査ラインS1〜Smは、走査スイッチ21〜2mによって順次選択状態にされる。本実施形態において、フレーム周波数は150Hzである。
【0021】
リセット回路5は、各ドライブラインD1〜Dnに夫々接続された複数のリセットスイッチ50からなるものである。リセットスイッチ50は、走査スイッチ21〜2mによって任意の走査ラインS1〜Smが選択されてから次の走査ラインS1〜Smが選択される間に、ドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続することにより、画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させるものである。
【0022】
陽極駆動回路7は、各ドライブラインD1〜Dnに対応して個々に駆動電流を供給する定電流源70(駆動電流源)と、制御部8からの制御信号に基づいて各ドライブラインD1〜Dnを選択的に定電流源70またはアース電位(オフ電位)に接続可能なドライブスイッチ71〜7nを有している。
【0023】
制御部8は、表示コントローラからなるものであり、例えば車両の走行情報を各種センサにより入力すると、所定の演算処理を行い車速やエンジン回転数、残燃料等の各種情報を有機ELパネル1で表示させるべく、陰極駆動回路2と陽極駆動回路7とに制御信号を夫々出力し、画素E11〜Emnを発光させるために必要な走査ラインS1〜Sm及びドライブラインD1〜Dnに対応した走査スイッチ21〜2m及びドライブスイッチ71〜7nを選択的にオン/オフさせることで有機ELパネル1に所定の情報を表示させるものである。制御部8はPWM回路8aを有しており、このPWM回路によって駆動信号のデューティー比を調整する。
【0024】
次に、本発明の特徴であるフレーム間引きによる減光について説明する。制御部8は、減光率が25%以下のとき、画素E11〜Emnの発光を間歇的に間引いて、4フレームに1回だけ画素E11〜Emnを発光させる。
例えば減光率25%で画素E21を発光させる場合、第1フレームf1〜第4フレームf4では、第1フレームf1だけ画素E21を点灯させ、第5フレームf5〜第8フレームf8では、第5フレームf5だけ画素E21を点灯させ、第9フレームf9〜第12フレームf12では、第9フレームf9だけ画素E21を点灯させ、第13フレームf13〜第16フレームf16では、第13フレームf13だけ画素E21を点灯させる(図3参照)。つまり、制御部8は、画素E21を発光させる点灯フレームf1,f5,f9,f13と、画素21を発光させない間引きフレームf2,f3,f4,f6,f7,f8,f10,f11,f12,f14,f15,f16を設けている。なお、他の画素E11,E31〜Emnはオフされている。第17フレーム以降は、第1フレームf1〜第16フレームf16を繰り返す。
【0025】
制御部は、減光率が25%よりも大きいときは、PWM回路8aによって駆動信号のデューティー比を変えるだけで減光率を調整する。減光率が25%よりも小さいときは、フレーム間引きと共に、デューティー比を変えることによって、減光率を調整する。例えば、画素E11〜Emnの発光を4フレームに1回だけに間引くと共に、デューティー比を1%にすることにより、減光率を0.25%にすることができる(図4(b)参照)。即ち、減光率の調整範囲は、100%〜0.25%となる。
【0026】
図5は第二実施形態を示すものである。第二実施形態では、第一実施形態と同様に、減光率が25%以下のとき、画素E11〜Emnの発光を間歇的に間引いて、4フレームに1回だけ画素E11〜Emnを発光させるが、点灯フレームと間引きフレームが不規則な順序で設けられている。
例えば減光率25%で画素E21を発光させる場合、第1フレームf1〜第4フレームf4では、第1フレームf1だけ画素E21を点灯させ、第5フレームf5〜第8フレームf8では、第6フレームf6だけ画素E21を点灯させ、第9フレームf9〜第12フレームf12では、第11フレームf11だけ画素E21を点灯させ、第13フレームf13〜第16フレームf16では、第16フレームf16だけ画素E21を点灯させる。つまり、制御部8は、画素E21を発光させる点灯フレームf1,f6,f11,f16と、画素21を発光させない間引きフレームf2,f3,f4,f5,f7,f8,f9,f10,f12,f13,f14,f15を設けている。
【0027】
図6は第三実施形態を示すものである。第三実施形態では、フレーム間引きと共に、駆動信号の波高値H1,H2及びデューティー比を変えることによって、減光率を調整する。例えば、画素E11〜Emnの発光を4フレームに1回だけに間引くと共に、駆動信号の波高値H2を波高値H1の80%にすることにより、減光率を20%にすることができる(図6(b)参照)。更に、駆動信号のデューティー比を1%にすることにより、減光率を0.2%にすることができる(図6(c)参照)。即ち、減光率の調整範囲は、100%〜0.2%となる。
【0028】
各実施形態によれば、減光率が所定値(例えば25%)以下のときに、フレーム間引きと共に、デューティー比を変えることによって、減光率の調整範囲を大きくすることができる。なお、前記所定値は25%でなくても良く、例えば、減光率が20%以下のとき、5フレームに1回だけ画素E11〜Emnを発光させても良い。また、各実施形態は、各点灯フレームで画素を同一輝度で発光させるものであるが、各点灯フレームで異なる輝度で画素を発光させても良い。
【0029】
また、フレーム周波数は150Hz以上であることが望ましく、表示チラツキを防止することができる。また、フレーム間引きのパターンは、点灯フレームと間引きフレームとを不規則な順序で設けられていることが望ましく、表示チラツキを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態を示す有機EL表示装置の構成図。
【図2】同上実施形態を示す走査スイッチの回路図。
【図3】同上実施形態を示すフレーム間引きの説明図。
【図4】同上実施形態を示す駆動波形図。
【図5】本発明の第二実施形態を示すフレーム間引きの説明図。
【図6】本発明の第三実施形態を示す駆動波形図。
【図7】従来例を示す有機EL表示装置の構成図。
【図8】同上従来例を示す画素の等価回路の説明図。
【図9】同上従来例を示す駆動波形図。
【符号の説明】
【0031】
1 有機ELパネル
S1〜Sm 走査ライン
D1〜Dn ドライブライン
21〜2m 走査スイッチ(走査スイッチ手段)
71〜7n ドライブスイッチ(ドライブスイッチ手段)
8 制御部(制御手段)
8a PWM回路
70 駆動電流源(定電流源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査ライン及び複数のドライブラインを備え、マトリクス状に設けられた画素を有するドットマトリクス型の有機ELパネルと、
前記走査ラインを第一電位または第二電位に接続自在とする走査スイッチ手段と、
前記ドライブラインを駆動電流源またはオフ電位に接続自在とするドライブスイッチ手段と、
前記走査スイッチ手段によって前記走査ラインを前記第一電位に接続させ前記走査ラインを順次選択し、前記ドライブスイッチ手段の接続状態を制御すると共に、前記画素の減光率を調整する制御手段と、
を有する有機EL表示装置であって、
前記制御手段は、前記減光率が所定値以下のとき、前記画素を発光させる点灯フレーム及び前記画素を発光させない間引きフレームを設け、前記画素の発光を間歇的に間引くことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画素の発光を間歇的に間引くと共に、前記減光率をデューティー比によって調整することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記画素の発光を間歇的に間引くと共に、前記減光率を波高値によって調整することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
フレーム周波数が150Hz以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記点灯フレームと前記間引きフレームを不規則な順序で設けることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−64980(P2006−64980A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247045(P2004−247045)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】