説明

有機EL表示装置

【課題】 輝度ムラが少ない有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】 制御手段8は、走査スイッチ手段21〜2mによって任意の走査ラインS1〜Smが選択されてから次の走査ラインS1〜Smが選択される間に画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させるリセット時間t2を設けると共に、走査スイッチ手段21〜2m及びドライブスイッチ手段71〜7nの接続状態を制御して画素E11〜Emnをオン/オフさせる。ドライブスイッチ手段71〜7nは、第一のインピーダンスを有しドライブラインD1〜Dnをオフ電位に接続可能な第一の回路素子Tr1と、第一のインピーダンスよりも大きい第二のインピーダンスを有しドライブラインD1〜Dnをオフ電位に接続可能な第二の回路素子Tr2と、ドライブラインD1〜Dnを駆動電流源Aに接続可能な第三の回路素子Tr3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の陽極ライン及び複数の陰極ラインを有するドットマトリクス型の有機ELパネルを有する有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドットマトリクス型の有機ELパネル及びその駆動方法が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。斯かる有機ELパネルは、透光性基板上にITO等の導電性透明膜からなる複数の陽極ライン(以下、ドライブラインと記す)をストライプ状に形成し、このドライブラインの背面に有機層を形成し、この有機層の背面にアルミニウム等の金属蒸着膜からなる複数の陰極ライン(以下、走査ラインと記す)をドライブラインに直交するように形成し、これらドライブラインと走査ラインとで前記有機層を挟持するものである。
【特許文献1】特許第3314046号公報
【0003】
有機EL表示装置は、有機ELパネル1と、陰極駆動回路2と、陽極駆動回路3と、制御部4と、リセット回路5とを有している(図4参照)。
有機ELパネル1は、画素E11〜Emnがマトリクス状に配設されてなるものである。画素E11〜Emnは、横方向に複数設けられた走査ラインS1〜Smと、走査ラインS1〜Smと直交するように複数設けられたドライブラインD1〜Dnとの交差箇所に設けられている。画素E11〜Emnは、並列配置されたダイオード及びコンデンサからなる等価回路で表される(図5参照)。ただし、図面が煩雑になることを防ぐため、図4においては画素E11〜Emnをダイオードのみで図示している。
【0004】
陰極駆動回路2は、各走査ラインS1〜Smに対応する複数の走査スイッチ21〜2mを備えている。走査スイッチ21〜2mは、制御部4からの制御信号に基づいて、各走査ラインS1〜Smを選択的に逆バイアス電位Vbまたはアース電位(0V)に接続するものである。つまり、選択される走査ラインS1〜Smはアース電位になると共に、選択されない走査ラインS1〜Smにある画素E11〜Emnには、負の電圧−Vbが印加される。なお、負の電圧とは、ドライブラインD1〜Dnの電位が、走査ラインS1〜Smの電位よりも低い状態を示している。
【0005】
陽極駆動回路3は、各ドライブラインD1〜Dnに対応して個々に駆動電流を供給する定電流源Aと、この定電流源Aからの駆動電流を各ドライブラインD1〜Dnに接続可能とするドライブスイッチ31〜3nとから構成される。各ドライブスイッチ31〜3nの切換えは、制御部4からの制御信号に基づいて決定される。
【0006】
制御部4は、走査スイッチ21〜2mを順次オンさせて、走査ラインS1〜Smを順次選択すると共に、各ドライブスイッチ31〜3nをオン/オフさせることによって、有機ELパネル1に文字,図形等を表示させる。上述のような有機ELパネル1の駆動方式は、「単純マトリクス方式」或いは「パッシブマトリクス方式」と称されている。
【0007】
リセット回路5は、各ドライブラインD1〜Dnに夫々接続された複数のリセットスイッチ51〜5nからなるものである。リセットスイッチ51〜5nは、走査スイッチ21〜2mによって任意の走査ラインS1〜Smが選択されてから次の走査ラインS1〜Smが選択される間に、全てのドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続することにより、画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させるものである。リセット回路5によって画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させる時間は、「リセット時間」と称される。リセット時間においては、ドライブラインD1〜Dnだけでなく、全ての走査ラインS1〜Smもアース電位に接続される。
【0008】
なお、ドライブスイッチ31〜3nがオフされたときも、ドライブラインD1〜Dnは、リセットスイッチ51〜5nによってアース電位に接続される。例えば、画素E11だけを発光させるとき、制御部4は、走査スイッチ21によって走査ラインS1を選択し、ドライブスイッチ31をオンさせると共に、ドライブスイッチ32〜3nをオフし、リセットスイッチ52〜5nによってドライブラインD2〜Dnをアース電位に接続される。
斯かる有機EL表示装置は、液晶ディスプレイに代わる低消費電力,高表示品質及び薄型化が可能なディスプレイとして注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、任意の1個の走査ラインS1〜Sm上でオンされる画素E11〜Emnの数によって発光輝度が異なる虞があった。例えば、走査ラインS2上の画素E21〜E2nを全てオンさせた場合に比して、走査ラインS1において画素E11だけをオンさせた場合は、画素E11の発光輝度は、画素E21〜E2nの発光輝度よりも低いため、輝度ムラが生じるという問題を有していた。
【0010】
このような輝度ムラは、リセット時間後に、選択状態となる走査ラインS1〜Smを除いた非選択状態の走査ラインS1〜Smを介して逆バイアス電位Vbから流れ込んだ電流が、オンされるドライブスイッチ31の数が少ない程、オンされる画素E11〜Emnの発光に寄与できずに、リセットスイッチ51〜5nを介してアース電位に逃げ易いためである。例えば、画素E11だけをオンさせるとき、非選択状態の走査ラインS2〜Smを介して逆バイアス電位Vbから流れ込んだ電流は、ドライブラインD2〜Dnを介してリセットスイッチ52〜5nからアース電位に逃げ易く、オンされる画素E11の発光に寄与できない。
本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、輝度ムラが少ない有機EL表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するため、請求項1に記載したように、複数の走査ラインS1〜Sm及び複数のドライブラインD1〜Dnを有し、マトリクス状に画素E11〜Emnが配設された有機ELパネル1と、前記走査ラインS1〜Smを第一電位または第二電位Vbに接続自在とする走査スイッチ手段21〜2mと、前記ドライブラインD1〜Dnを駆動電流源Aまたはオフ電位に接続自在とするドライブスイッチ手段71〜7nと、前記走査スイッチ手段21〜2mによって任意の前記走査ラインS1〜Smが選択されてから次の前記走査ラインS1〜Smが選択される間に前記画素E11〜Emnに充電された電荷を放電させるリセット時間t2を設けると共に、前記走査スイッチ手段21〜2m及び前記ドライブスイッチ手段71〜7nの接続状態を制御して前記画素E11〜Emnをオン/オフさせる制御手段8と、を有する有機EL表示装置であって、前記ドライブスイッチ手段71〜7nは、第一のインピーダンスを有し前記ドライブラインD1〜Dnを前記オフ電位に接続可能な第一の回路素子Tr1と、前記第一のインピーダンスよりも大きい第二のインピーダンスを有し前記ドライブラインD1〜Dnを前記オフ電位に接続可能な第二の回路素子Tr2と、前記ドライブラインD1〜Dnを前記駆動電流源Aに接続可能な第三の回路素子Tr3と、を有するものである。
【0012】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記制御手段8は、オンさせる前記画素E11〜Emnに対応する前記ドライブラインD1〜Dnを前記ドライブスイッチ手段71〜7nの前記第三の回路素子Tr3によって前記駆動電流源Aに接続させると共に、オフさせる前記画素E11〜Emnに対応する前記ドライブラインD1〜Dnを前記ドライブスイッチ手段71〜7nの前記第二の回路素子Tr2によって前記オフ電位に接続させ、前記リセット時間t2においては、全ての前記ドライブラインD1〜Dnを前記ドライブスイッチ手段71〜7nの前記第一の回路素子Tr1を介して前記オフ電位に接続させるものである。
【発明の効果】
【0013】
インピーダンスが比較的高い第二の回路素子を介して、オフさせる画素に対応するドライブラインをオフ電位に接続させることによって、非選択状態の走査ラインを介して第二電位から流れ込み、ドライブラインを介してドライブスイッチ手段からアース電位に逃げる電流が少なくなるため、有機ELパネルの輝度ムラが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態について説明する。有機EL表示装置は、有機ELパネル1と、陰極駆動回路2と、陽極駆動回路7と、制御部8(制御手段)とから構成されている。
【0015】
有機ELパネル1は、画素E11〜Emnがマトリクス状に配設されてなるものである。画素E11〜Emnは、横方向に伸長した複数の走査ラインS1〜Smと、走査ラインS1〜Smと直交するように縦方向に伸長した複数のドライブラインD1〜Dnとの交差箇所に設けられている。
【0016】
陰極駆動回路2は、各走査ラインS1〜Smに対応する複数の走査スイッチ21〜2m(走査スイッチ手段)を備えている。走査スイッチ21〜2mは、制御部8からの制御信号に基づいて、各走査ラインS1〜Smを選択的に逆バイアス電位Vb(第二電位)またはアース電位(第一電位)に接続するものである。走査ラインS1〜Smは、走査スイッチ21〜2mによってアース電位に順次接続され選択状態にされる。
【0017】
陽極駆動回路7は、各ドライブラインD1〜Dnに対応して個々に駆動電流を供給する定電流源A(駆動電流源)と、制御部8からの制御信号に基づいて各ドライブラインD1〜Dnを選択的に定電流源Aまたはアース電位(オフ電位)に接続可能なドライブスイッチ71〜7n(ドライブスイッチ手段)とを有している。
【0018】
制御部8(制御手段)は、表示コントローラからなるものであり、例えば車両の走行情報を各種センサにより入力すると、所定の演算処理を行い車速やエンジン回転数、残燃料等の各種情報を有機ELパネル1で表示させるべく、陰極駆動回路2と陽極駆動回路7とに制御信号を夫々出力し、画素E11〜Emnを発光させるために必要な走査ラインS1〜Sm及びドライブラインD1〜Dnに対応した走査スイッチ21〜2m及びドライブスイッチ71〜7nを選択的にオン/オフさせることで有機ELパネル1に所定の情報を表示させるものである。
【0019】
図2は、画素E11,E21,E31をオンさせ、画素E12,E22,E32をオフさせるためにドライブラインD1,D2に供給される駆動電流と、走査ラインS1,S2,S3のオン/オフタイミング(つまり、走査スイッチ21,22,23のオン/オフタイミング)と、オン画素E11,E21,E31及びオフ画素E12,E22,E32に印加される電圧とを示す図である。
走査スイッチ21,22,23によって走査ラインS1,S2,S3が順次、選択時間t1ずつ選択され、ドライブスイッチ31によってドライブラインD1を定電流源70に間歇的に接続することによって、駆動電流が供給される。走査スイッチ21〜2mによって任意の走査ラインS1〜Smが選択されてから次の走査ラインS1〜Smが選択される間に、リセット時間t2が設けられ、全てのドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続することにより、画素E11〜Emnに充電された電荷が放電される。
【0020】
次に、図3に基づいて、ドライブスイッチ71〜7nについて詳述する。ドライブスイッチ71〜7nは、トランジスタTr1(第一の回路素子)と、トランジスタTr2(第二の回路素子)と、トランジスタTr3(第三の回路素子)とからなるものである。
【0021】
トランジスタTr1とトランジスタTr2は、並列配置されており、夫々、ゲートGa,Gbと、ソースSa,Sbと、ドレインDa,Dbと、を有している。トランジスタTr1,Tr2のソースSa,SbはドライブラインD1〜Dnに接続され、ドレインDa,Dbはアース電位に接続されている。トランジスタTr1,Tr2は、ゲートGa,Gbから入力される制御部8からの制御信号に基づいて、ドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続する。トランジスタTr1のインピーダンスは100Ω、トランジスタTr2のインピーダンスは10kΩになっている。
【0022】
トランジスタTr1は、リセット時間t2において、ドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続するものであり、トランジスタTr2は、選択時間t1において、オフさせる画素E11〜Emnに対応するドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続するものである。
【0023】
トランジスタTr3は、ゲートGcと、ソースScと、ドレインDcとを有している。トランジスタTr3のソースScは定電流源Aに接続され、ドレインDcはドライブラインD1〜Dnに接続されている。トランジスタTr3は、ゲートGcから入力される制御部8からの制御信号に基づいて、ドライブラインD1〜Dnを定電流源Aに接続する。
【0024】
制御部8は、選択時間t1においては、トランジスタTr3を介して、オンさせる画素E11〜Emnに対応するドライブラインD1〜Dnを定電流源Aに接続させると共に、トランジスタTr2を介して、オフさせる画素E11〜Emnに対応するドライブラインD1〜Dnをアース電位に接続させる。例えば、画素E11だけをオンさせるとき、制御部8は、選択時間t1において、ドライブスイッチ71のトランジスタTr3を介して、ドライブラインD1を定電流源Aに接続させると共に、ドライブスイッチ72〜7nのトランジスタTr2を介して、ドライブラインD2〜Dnをアース電位に接続させる。
【0025】
本実施形態によれば、リセット時間t2においては、インピーダンスが比較的小さいトランジスタTr1を介して、ドライブラインD1〜Dnをオフ電位に接続させることによって、画素E11〜Emnに充電された電荷を速やかに放電させることができ、且つ、インピーダンスが比較的高いトランジスタTr2を介して、オフさせる画素E11〜Emnに対応するドライブラインD1〜Dnをオフ電位に接続させることによって、非選択状態の走査ラインS1〜Smを介してバイアス電位Vbから流れ込み、ドライブラインD1〜Dnを介してドライブスイッチ71〜7nからアース電位に逃げる電流が少なくなるため、有機ELパネル1の輝度ムラが少なくなる。
【0026】
なお、トランジスタTr1のインピーダンス及びトランジスタTr2のインピーダンスについては、本実施形態に限定されるものではないが、トランジスタTr1のインピーダンスは、画素E11〜Emnに蓄積された電荷を短時間で放電させるため、概ね、100Ω〜5kΩであることが望ましく、トランジスタTr2のインピーダンスは、定電流源A及びトランジスタTr3のインピーダンスと同程度であり、概ね、8kΩ〜50kΩであることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す有機EL表示装置の構成図。
【図2】同上実施形態を示すタイミング図。
【図3】同上実施形態を示すドライブスイッチの説明図。
【図4】従来例を示す有機EL表示装置の構成図。
【図5】同上従来例を示す画素の等価回路の説明図。
【符号の説明】
【0028】
1 有機ELパネル
E11〜Emn 画素
S1〜Sm 走査ライン
D1〜Dn ドライブライン
21〜2m 走査スイッチ(走査スイッチ手段)
71〜7n ドライブスイッチ(ドライブスイッチ手段)
8 制御部(制御手段)
A 駆動電流源(定電流源)
Tr1 トランジスタ(第一の回路素子)
Tr2 トランジスタ(第二の回路素子)
Tr3 トランジスタ(第三の回路素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査ライン及び複数のドライブラインを有し、マトリクス状に画素が配設された有機ELパネルと、
前記走査ラインを第一電位または第二電位に接続自在とする走査スイッチ手段と、
前記ドライブラインを駆動電流源またはオフ電位に接続自在とするドライブスイッチ手段と、
前記走査スイッチ手段によって任意の前記走査ラインが選択されてから次の前記走査ラインが選択される間に前記画素に充電された電荷を放電させるリセット時間を設けると共に、前記走査スイッチ手段及び前記ドライブスイッチ手段の接続状態を制御して前記画素をオン/オフさせる制御手段と、を有する有機EL表示装置であって、
前記ドライブスイッチ手段は、第一のインピーダンスを有し前記ドライブラインを前記オフ電位に接続可能な第一の回路素子と、前記第一のインピーダンスよりも大きい第二のインピーダンスを有し前記ドライブラインを前記オフ電位に接続可能な第二の回路素子と、前記ドライブラインを前記駆動電流源に接続可能な第三の回路素子と、を有することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、オンさせる前記画素に対応する前記ドライブラインを前記ドライブスイッチ手段の前記第三の回路素子によって前記駆動電流源に接続させると共に、オフさせる前記画素に対応する前記ドライブラインを前記ドライブスイッチ手段の前記第二の回路素子によって前記オフ電位に接続させ、
前記リセット時間においては、全ての前記ドライブラインを前記ドライブスイッチ手段の前記第一の回路素子を介して前記オフ電位に接続させることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−57856(P2007−57856A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243530(P2005−243530)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】