説明

有機EL装置、及び電子機器

【課題】有機平坦化層から発生するガスによる表示品質の低下の防止、画素欠陥の発生を防止することができる有機EL装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】平坦化層41の上にガスバリア層53が形成され、ガスバリア層53及び無機隔壁43には、無機隔壁43を貫通して平坦化層41に到達する貫通孔46が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に多数の有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を備えた有機EL装置が知られている(特許文献1、2)。上記有機EL素子は、基板上に形成されたTFT(薄膜トランジスター)や配線等を覆う平坦化層と、その平坦化層上に形成された電極(陽極)と、その電極を区画する画素開口部を有する隔壁と、その隔壁の画素開口部内に形成された機能層と、その機能層を覆って形成された電極(陰極)とを備えている。特に、有機発光層などの機能層を液相材料により形成する場合には、隔壁の画素開口部内に機能層の液相材料を配した後、乾燥させて形成する。
【0003】
この様な有機EL素子は、製造工程において、有機材料により形成された平坦化層が、フォトリソグラフィ法に用いられるレジスト剥離液等の処理液にさらされる。また平坦化層は、内部に残留した溶媒等、ガスを発生する不純物を多く含んでいる。そのため、処理液に含まれる物質が平坦化層中の不純物に作用してガスを発生させる。
【0004】
例えば、特許文献3には、このようなガスを、平坦化層を含む内部に蓄積せず外部に放出するために、平坦化層と隔壁の間に貫通孔を形成し、それを通してガス成分を外部に放出して、ダークスポットの発生を抑制し表示品位を確保する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3328297号公報
【特許文献2】特開2003−123988号公報
【特許文献3】特開2009−187898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載の有機EL装置では、平坦化層に含まれるガス成分は、かならずしも全てが上記貫通孔を通して外部に排出されるとは限らず、平坦化層の直上にある画素電極を通して外部に放出された場合には、ガス成分が画素電極表面に付着したり、有機発光層を含む機能層に拡散することにより有機EL素子の発光特性が低下する課題がある。また、ガス成分が画素電極を介して外部に放出されると画素電極の膜が物理的に破壊され、画素欠陥が生じ表示品位が低下する。
【0007】
このような画素欠陥は、有機EL装置の製造後も時間とともに成長し、複数の画素を含む領域が非発光領域になるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置は、基板と、前記基板上に形成された有機平坦化層と、前記有機平坦化層上に形成されたガスバリア層と、前記ガスバリア層上に形成された第1電極と、前記第1電極の上部を露出させる画素開口部が形成された隔壁と、前記画素開口部に設けられた少なくとも有機発光層を含む機能層と、前記機能層を覆って設けられた第2電極と、を有し、前記隔壁は、第1隔壁と前記第1隔壁に積層された第2隔壁とからなり、前記第1隔壁を貫通して前記ガスバリア層に到達する第1隔壁貫通孔と、前記第1隔壁貫通孔に連通すると共に前記ガスバリア層を貫通するガスバリア層貫通孔と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、隔壁の形成時には、有機平坦化層においてガスが発生しても、ガスバリア層貫通孔および隔壁貫通孔を通して有機平坦化層の外部に排出される。また、隔壁を形成した後の製造工程においては、基板が加熱されて、有機平坦化層の温度が上昇することで、ガスバリア層貫通孔および隔壁貫通孔から不純物の排出が促進される。これにより、有機平坦化層中の不純物が減少してガスの発生が防止される。また、有機平坦化層と第1電極との間にガスバリア層を設けることで有機平坦化層から発生したガスが直上の第1電極側に拡散することが抑制される。従って、有機平坦化層からガスが発生することを防止できるだけでなく、発生したガスを外部に排出することができ、ガスの蓄積による有機EL装置の表示品質の低下を防止することができ、信頼性の高い有機EL装置を提供することができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第1隔壁は親液性を有し、前記第2隔壁は撥液性を有し、前記第2隔壁は、前記第1隔壁上に形成され、前記第2隔壁の端部は前記第1隔壁の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記第1隔壁貫通孔側に形成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、隔壁の画素開口部内に液相材料を配し、乾燥させて機能層を形成する際に、有機隔壁により画素開口部外部への液相材料の流出が防止される。また、画素開口部内の第1隔壁と第2隔壁との境界に第1隔壁が段差状に露出されるので、画素開口部の第1隔壁と第2隔壁との境界付近における濡れ性が向上する。そのため、液相材料が乾燥して体積が減少し、液面が第1隔壁と第2隔壁との境界に近づくと、第1隔壁により液相材料の厚さが均一化され、機能層を平坦に形成することができる。従って、有機EL装置の発光が均一になり特性および信頼性が向上する効果を得ることができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第1隔壁は、前記有機平坦化層側に形成された第3隔壁と、前記第2隔壁側に形成された第4隔壁を備え、前記第4隔壁の端部は、前記第3隔壁の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記第1隔壁貫通孔側に形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、画素開口部における第1隔壁の表面積がより拡大し、機能層の液相材料に対する濡れ性がより向上する。従って、機能層をより平坦に形成することができ、発光の均一性および信頼性が大幅に向上する効果を得ることができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第2隔壁には、前記第2隔壁および前記ガスバリア層を貫通して前記第1隔壁貫通孔に連通するか、または前記第1隔壁貫通孔を通って前記有機平坦化層に到達する第2隔壁貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、有機平坦化層中のガスを発生させる不純物を、貫通孔を通して外部へより促進して排出することができる。従って、画素欠陥あるいはダークスポットの発生を抑える事ができ、信頼性が向上する効果を得ることができる。
【0017】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第1隔壁貫通孔の端部は、前記ガスバリア層貫通孔の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記画素開口部側に形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ガスバリア層貫通孔を形成したのち、その上に第1隔壁を形成しフォトリソ工程などにより容易に第1隔壁貫通孔を形成することができ、有機平坦化層からのガス成分を容易に外部に放出する効果を得ることができる。従って画素欠陥あるいはダークスポットの発生を抑える事ができ、信頼性が向上する効果を得ることができる。
【0019】
[適用例6]上記適用例に係る有機EL装置において、前記ガスバリア層貫通孔の端部は、前記第1隔壁貫通孔の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記画素開口部側に形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ガスバリア層貫通孔に対して第一隔壁貫通孔を狭くすることができる。従って、有機平坦化層から発生するガス成分が、画素を形成する第2隔壁の端部に拡散することがなく、より垂直方向に拡散する効果を得ることができる。
【0021】
[適用例7]上記適用例に係る有機EL装置において、前記ガスバリア層は、無機化合物を含むことが好ましい。
【0022】
この構成によれば、無機化合物として、例えばSiO2、SiNあるいはSiOxNyなどのガスバリア性の高い材料を用いることができる。従って、有機平坦化層から発生するガス成分の拡散を抑える効果を得ることができる。
【0023】
[適用例8]上記適用例に係る有機EL装置において、前記ガスバリア層は、有機樹脂を含むことが好ましい。
【0024】
この構成によれば、有機樹脂からなるガスバリア性の高い材料を用いることができる。従って、有機樹脂材料を用いることで、有機平坦化層を成膜するのと同様にスピンコートあるいはスリットコーターなどの印刷プロセスで容易に成膜できる効果を得ることができる。
【0025】
[適用例9]上記適用例に係る有機EL装置において、前記ガスバリア層は、有機樹脂あるいは無機化合物からなることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、無機化合物として、ガスバリア性の高い材料を用いることができる。また、有機平坦化層から発生するガス成分の拡散を抑える効果を得ることができる。また、有機樹脂材料を用いることで、有機平坦化層を成膜するのと同様にスピンコートあるいはスリットコーターなどの印刷プロセスで容易に成膜できる効果を得ることができる。
【0027】
[適用例10]上記適用例に係る有機EL装置において、前記ガスバリア層は、金属を含む層が含まれることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、金属を含む層が含まれるので、ガスバリア性を向上させることができる。
【0029】
[適用例11]上記適用例に係る有機EL装置において、前記ガスバリア層は、反射性を有することが好ましい。
【0030】
この構成によれば、反射性を有するので、反射機能とガスバリア性とを兼ね備えたガスバリア層を構成することができる。例えば、トップエミッション構造に適用することができる。
【0031】
[適用例12]上記適用例に係る有機EL装置において、前記第1隔壁は、前記有機平坦化層と接しないように形成されていることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、第1隔壁とガスバリア層とを同時に貫通させて貫通孔を形成するので、製造工程を簡略化し、生産性を向上させることができる。また、有機平坦化層から発生したガスを外部に逃がすためのガスバリア層貫通孔および隔壁貫通孔の大きさが小さくなることを抑えることが可能となり、外部にガスを排出しやすくすることができる。
【0033】
[適用例13]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の有機EL装置を備えていることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、上記した有機EL装置を備えているので、ガスの蓄積による有機EL装置の表示品質の低下を防止することができ、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図2】有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【図3】無機隔壁における貫通孔の形状と配置の実施例を示す平面図。
【図4】有機EL装置の製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図5】有機EL装置の製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図6】有機EL装置の製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図7】有機EL装置を備えた電子機器の一例としてテレビを示す模式斜視図。
【図8】変形例の有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【図9】変形例の有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0037】
<有機EL装置の構成>
まず、本実施形態に係る有機EL装置の概略構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、図2は有機EL装置の発光画素の構造を示す模式断面図、図3(a)〜(c)は無機隔壁における貫通孔の形状及び配置を示す模式平面図である。
【0038】
図1に示すように、有機EL装置11は、複数の走査線12と、走査線12に対して交差する方向に延びる複数の信号線13と、信号線13に並列に延びる複数の電源線14とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線12及び信号線13の各交点付近に、画素領域15を形成したものである。
【0039】
信号線13には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路16が接続されている。走査線12には、シフトレジスター及びレベルシフターを備える走査側駆動回路17が接続されている。また、画素領域15の各々には、走査線12を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor)18と、このスイッチング用TFT18を介して信号線13から供給される画素信号を保持する保持容量19と、この保持容量19によって保持された画素信号がゲート電極21に供給される駆動用TFT22と、この駆動用TFT22を介して電源線14に電気的に接続したときに、電源線14から駆動電流が流れ込む陽極としての画素電極23と、この画素電極23と陰極としての共通電極24との間に挟み込まれた有機発光層を含む機能層25とが設けられている。画素電極23と共通電極24と機能層25とにより、有機EL素子26が構成されている。
【0040】
このような構成によれば、走査線12が駆動されてスイッチング用TFT18がオンになると、そのときの信号線13の電位が保持容量19に保持され、保持容量19の状態に応じて、駆動用TFT22のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT22のチャネルを介して、電源線14から画素電極23に電流が流れ、さらに機能層25を介して共通電極24に電流が流れる。すると、機能層25はこれを流れる電流量に応じて発光する。
【0041】
図2に示すように、有機EL装置11は、基板31上に形成された多数の有機EL素子26の機能層25から射出された光を、有機EL素子26が形成された基板31と反対側の封止基板51から取り出すトップエミッション方式の有機EL装置である。
【0042】
基板31は、例えば、Si(シリコン)等により形成され、基板31上には、例えば、SiO2(シリコン酸化物)等により絶縁膜32が形成されている。絶縁膜32上には、個々の有機EL素子26に対応して駆動用TFT22が設けられている。駆動用TFT22は、絶縁膜32上に形成された半導体層33と、半導体層33のチャネル領域(図示せず)にゲート絶縁膜34を介して対向配置されたゲート電極21と、を備えている。そして、ゲート絶縁膜34及びゲート電極21を覆って、層間絶縁膜35が形成されている。
【0043】
層間絶縁膜35上にはソース電極36及びドレイン電極37が形成され、それぞれ、コンタクトホール38a,38bを介して半導体層33のソース領域及びドレイン領域に接続されている。ソース電極36は、層間絶縁膜35上に形成された電源線14に接続されている。
【0044】
これら駆動用TFT22及び電源線14を覆って、基板31上を平坦化する平坦化層(有機平坦化層)41が形成されている。平坦化層41は、例えば、アクリル系やポリイミド系等の耐熱性及び絶縁性を有する有機材料により形成されている。平坦化層41上には、ガスバリア層53が形成されている。ガスバリア層53は、例えば、SiNやSiOx等のガスバリア性の高い無機材料により形成されている。
【0045】
ガスバリア層53上には、有機EL素子26の陽極である画素電極(第1電極)23が形成されている。画素電極23は、例えば、Al(アルミニウム)等の反射性を有する導電性材料により形成されている。画素電極23は、平坦化層41を貫通してドレイン電極37に到達するコンタクトホール42を介してドレイン電極37に接続されている。また、駆動用TFT22のゲート電極21は、前述したスイッチング用TFT18(図1参照)に接続されて画素信号を保持する保持容量19と電気的に接続されている。
【0046】
画素電極23上には、無機隔壁(第1隔壁)43と、無機隔壁43上に形成された有機隔壁(第2隔壁)44とからなる隔壁45が形成されている。隔壁45には、画素電極23を有機EL素子26ごとに区画し、かつ画素電極23の上部(基板31と反対側の面)を露出させる開口部45a(画素開口部)が形成されている。また、隔壁45の開口部45aには、開口部45a内に露出された無機隔壁43の一部により、開口部45a内の有機隔壁44と無機隔壁43との境界に階段状の段差が形成されている。
【0047】
無機隔壁43は、例えば、SiO2等の絶縁性の無機材料により形成されている。そして、表面には親液化処理が施され、濡れ性が向上されて親液性を有している。有機隔壁44は、例えば、平坦化層41と同様の有機材料により形成されている。そして、表面には撥液化処理が施されて撥液性を有している。
【0048】
ここで、本実施形態では、無機隔壁43には、無機隔壁43を貫通して平坦化層41に到達する貫通孔(第1隔壁貫通孔)46が形成されている。有機隔壁44は貫通孔46を介して平坦化層41と接している。また、貫通孔46は、図3(a)に示すように、平面視でその開口が開口部45aの周囲に点在しているか、または、図3(b)に示すように、開口部45aの周囲に環状に形成されている。また、図3(c)に示すように、開口部45aの周囲に溝状の貫通孔46を格子状に形成しても良い。なお、図3において、開口部45aは平面視で楕円形となっているが、これに限定されるものではない。例えば、四角形などの多角形や短辺側が円弧となっているトラック状でもよい。
【0049】
開口部45aの内部には、図2に示すように、機能層25が設けられている。機能層25は、画素電極23側に形成された正孔注入・輸送層47と、その上に積層されて形成された発光層48と、を備えている。正孔注入・輸送層47は、例えば、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT−PSS)の分散液、すなわち、ポリスチレンスルフォン酸を分散媒として、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液等の液相材料を乾燥させることにより形成されている。
【0050】
また、発光層48は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料により形成されている。特にフルカラー表示を行う場合には、赤色、緑色、青色の各波長域に対応する光を発光する材料が用いられる。
【0051】
発光層48の形成材料としては、例えば、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。さらに、Ir(ppy)3などの燐光材料を用いることもできる。
【0052】
機能層25上には、機能層25及び隔壁45を覆って、有機EL素子26の陰極である共通電極(第2電極)24が設けられている。共通電極24は、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)等の光透過性を有する導電性材料により形成されている。共通電極24上には、光透過性を有する接着層52を介して、例えば、ガラスや石英等の透明な材料により形成された封止基板51が貼着されている。
【0053】
<有機EL装置の製造方法>
次に、有機EL装置の製造方法について図4〜図6を参照して説明する。図4(a)〜(c)、図5(a)〜(b)、及び図6(a)〜(b)は、有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0054】
図4(a)に示すように、まず、基板31上に絶縁膜32を形成し、絶縁膜32上に駆動用TFT22、スイッチング用TFT112(図1参照)及び上述の配線や回路等を形成する。具体的には、絶縁膜32上に駆動用TFT22の半導体層33と、半導体層33を覆うゲート絶縁膜34を形成し、その上にゲート電極21を形成する。
【0055】
そして、半導体層33に不純物をドープしてソース領域、ドレイン領域、及びチャネル領域を形成する。そして、これらを覆うように層間絶縁膜35を形成し、フォトリソグラフィ法により、層間絶縁膜35を貫通し、半導体層33のソース領域及びドレイン領域に到達するコンタクトホール38a,38bを形成する。
【0056】
次に、図4(b)に示すように、層間絶縁膜35上に電源線14を形成する。次いで、層間絶縁膜35上にソース電極36およびドレイン電極37を形成する。ソース電極36は半導体層33のソース領域と電源線14とに接するように形成される。ドレイン電極37は半導体層33のドレイン領域に接するように形成される。
【0057】
次いで、図4(c)に示すように、これらを覆うように平坦化層41を形成する。次いでフォトリソグラフィ法により、平坦化層41を貫通し、ドレイン電極37に到達するコンタクトホール42を形成する。
【0058】
次に、図5(a)に示すように、平坦化層41上にガスバリア層53を形成する。具体的には、例えば、真空蒸着法やスパッタ法などを用いて、SiNやSiOx等のガスバリア性の高い無機材料を形成する。その後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いてパターニングする。
【0059】
次いで、図5(b)に示すように、ガスバリア層53に平面的に重なる形で画素電極23を形成し、コンタクトホール42を介してドレイン電極37に接続させる。
【0060】
次いで、図6(a)に示すように、画素電極23、ガスバリア層53及び平坦化層41を覆うようにベタ状の無機材料層143を形成する。そして、フォトリソグラフィ法により、無機材料層143に画素電極23を区画するとともに画素電極23の上部を露出させる開口部43aと、無機材料層143及びガスバリア層53を貫通して平坦化層41に到達する貫通孔46を形成して、無機隔壁43を完成させる。
【0061】
このとき、平坦化層41の内部には、例えば、ガスを発生させる不純物が残留した状態となっている。また、平坦化層41は、フォトリソグラフィ法において用いられるレジスト剥離液にさらされる。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、平坦化層41、画素電極23、及び無機隔壁43を覆って有機材料層144を形成し、フォトリソグラフィ法により有機材料層144に開口部44aを形成して有機隔壁44を形成する。このとき、有機隔壁44の開口部44aは、無機隔壁43の開口部43aよりも一回り大きく形成する。これにより、無機隔壁43と有機隔壁44とを備え、無機隔壁43の開口部43aと有機隔壁44の開口部44aからなる開口部45aが形成された隔壁45が形成される。
【0063】
次に、画素電極23の表面を洗浄処理し、続いて、画素電極23と無機隔壁43と有機隔壁44とを形成した側の面に酸素プラズマ処理を行う。これにより、表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。具体的には、基板31を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0064】
次いで、撥液化処理を行うことにより、特に有機隔壁44の上面及び側面の濡れ性を低下させる。具体的には、大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基板31を室温まで冷却することで、有機隔壁44の上面及び側面を撥液化し、その濡れ性を低下させる。
【0065】
なお、このCF4プラズマ処理においては、画素電極23の露出面および無機隔壁43についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび無機隔壁43の構成材料であるSiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、酸素プラズマ処理で濡れ性が向上した面は濡れ性がそのままに保持される。次に、基板31を、例えば、200℃程度の温度に加熱してアニール処理を行う。
【0066】
次いで、図2に示すように、隔壁45に囲まれた開口部45a内に正孔注入・輸送層47を形成する。この正孔注入・輸送層47の形成工程では、スピンコート法や液滴吐出法が採用されるが、本実施形態では、開口部45a内に正孔注入・輸送層47の形成材料を選択的に配する必要上、特に液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。
【0067】
このインクジェット法により、正孔注入・輸送層47の形成材料であるPEDOT−PSSの分散液を画素電極23の露出面上に配し、その後、熱処理(乾燥・焼成処理)を、例えば、200℃で10分間程度行うことにより、厚さ20nm〜100nm程度の正孔注入・輸送層47を形成する。なお、この正孔注入・輸送層47の形成方法については、特に無機隔壁43や有機隔壁44によって画素領域15を区画しない場合、前記したようにスピンコート法を採用することもできる。
【0068】
次いで、この正孔注入・輸送層47上に、発光層48を形成する。この発光層48の形成工程でも、上記の正孔注入・輸送層47の形成と同様に、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層48の形成材料を正孔注入・輸送層47上に吐出し、その後、窒素雰囲気中にて130℃で30分間程度熱処理を行い、隔壁45に形成された開口部45a内、すなわち画素領域15上に厚さ50nm〜200nm程度の発光層48を形成する。
【0069】
なお、発光層48の形成材料中に用いる溶媒としては、正孔注入・輸送層47を再溶解させないもの、例えば、キシレンなどが好適に用いられる。また、この発光層48の形成方法については、特に無機隔壁43や有機隔壁44によって画素領域15を区画しない場合、正孔注入・輸送層47の形成の場合と同様に、スピンコート法を採用することもできる。
【0070】
次いで、発光層48及び有機隔壁44を覆ってITOにより共通電極24を形成する。この共通電極24の形成では、正孔注入・輸送層47や発光層48の形成とは異なり、蒸着法やスパッタ法等で行うことにより、画素領域15にのみ選択的に形成するのでなく、基板31のほぼ全面に共通電極24を形成する。
【0071】
その後、共通電極24上に接着剤を用いて接着層52を形成し、さらにこの接着層52によって封止基板51を接着し、封止を行う。
【0072】
<電子機器の構成>
図7は、上記した有機EL装置を備えた電子機器の一例としてテレビを示す模式斜視図である。以下、有機EL装置を備えたテレビの構成を、図7を参照しながら説明する。
【0073】
図7に示すように、テレビ91は、表示部92と、枠部93と、脚部94と、リモコン95とを有する。表示部92は、内部に組み込まれた有機EL装置11によって、画素欠陥の発生を防止することができる等、高品位な表示を行うことができる。なお、上記した有機EL装置11は、上記テレビの他、ディスプレイ、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器、照明機器、光プリンターの光源などの各種電子機器に用いることができる。

【0074】
以上詳述したように、本実施形態の有機EL装置11及び電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0075】
(1)本実施形態の有機EL装置11によれば、上述のように、無機隔壁43およびガスバリア層53に平坦化層41に到達する貫通孔46が形成されている。そのため、ガスバリア層53あるいは無機隔壁43の形成時に平坦化層41がレジスト剥離液にさらされて、レジスト剥離液に含まれる化学物質が平坦化層41中の不純物に作用してガスが発生したとしても、発生したガスは貫通孔46を通して平坦化層41の外部へと排出される。したがって、平坦化層41の内部や、平坦化層41と画素電極23及び無機隔壁43との間にガスが蓄積されることが防止できる。
【0076】
(2)本実施形態の有機EL装置11によれば、ガスバリア層53は、平坦化層41を覆う形で形成されているため、平坦化層41中の不純物に作用して発生したガスは、開口部45aに出てくることは無く、貫通孔46を通して外部に排出される。その結果、有機EL装置11における画素欠陥を抑えることができ、信頼性も向上する。
【0077】
(3)本実施形態の有機EL装置11によれば、隔壁45の開口部45a内に液相材料を配し、乾燥させて機能層25を形成する際に、隔壁45により開口部45aの外部への液相材料の流出が防止される。また、開口部45a内の有機隔壁44と無機隔壁43との境界に無機隔壁43が段差状に露出されるので、その境界付近における無機隔壁43の表面積が拡大して濡れ性が向上する。そのため、液相材料が乾燥して体積が減少し、液面が有機隔壁44と無機隔壁43との境界に近づくと、液相材料は親液性の無機隔壁43にピニングされ、液相材料の厚さが均一化される。それゆえに、乾燥後に機能層25を平坦に形成することができる。
【0078】
(4)本実施形態の有機EL装置11によれば、貫通孔46を有する無機隔壁43を形成した後に、プラズマ処理やアニール処理等により基板31を加熱することで、平坦化層41の温度が上昇して、貫通孔46からの不純物の排出が促進される。これにより、平坦化層41中の不純物が減少する。したがって、有機EL素子26を封止基板51により封止した後、平坦化層41からのガスの発生が防止され、有機EL装置11の内部にガスが蓄積することが防止される。
【0079】
(5)本実施形態の有機EL装置11によれば、貫通孔46は、その開口が開口部45aの周囲に点在しているか、または、開口部45aの周囲に環状に形成されている。そのため、貫通孔46の開口面積を増加させて、より効果的に平坦化層41の不純物やガスを排出させることができ、機能層25の近傍にガスが蓄積することを確実に防止することができる。
【0080】
(6)本実施形態の有機EL装置11によれば、平坦化層41からガスが発生することを防止できるだけでなく、製造工程において平坦化層41から発生したガスを外部に排出することができ、ガスの蓄積による有機EL装置11の表示品質の低下を防止することができる。さらに、ガスバリア層53の効果により、平坦化層41からのガスがその上の開口部45aに排出されることがさらに抑えられ、高い信頼性を確保できる。
【0081】
(7)本実施形態の電子機器によれば、上記した有機EL装置11を備えているので、ガスの蓄積による有機EL装置11の表示品質の低下を防止することができ、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【0082】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0083】
(変形例1)
上記したように、貫通孔46を形成する方法として、無機材料層143及びガスバリア層53をフォトリソグラフィ法を用いて貫通させて形成することに代えて、例えば、図8に示すように形成してもよい。図8は、変形例の有機EL装置111の構造を示す模式断面図である。図8に示す有機EL装置111は、ガスバリア層53の側面を覆うように無機隔壁43が形成されている。これによれば、ガスバリア層53を形成したのち、その上に無機隔壁43を形成し、フォトリソ工程などにより無機隔壁43に貫通孔46(146)を容易に形成することができ、平坦化層41からのガス成分を容易に外部に放出することができる。
【0084】
(変形例2)
上記したように、有機材料層144から開口部44aを形成することに加えて、更に、図9に示すように形成してもよい。図9は、変形例の有機EL装置211の構造を示す模式断面図である。図9に示す有機EL装置211は、有機材料層144を形成した後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、開口部44aを形成すると共に貫通孔246を形成する。これによれば、平坦化層41に到達する貫通孔246が形成されているので、貫通孔46と共に貫通孔246によって、より発生したガスを外部に排出させることができる。
【0085】
(変形例3)
上記したように、上述の実施形態ではトップエミッション方式の有機EL装置11について説明したが、本発明を上述の実施形態とは反対側から光を取り出すボトムエミッション方式の有機EL装置に適用できることは言うまでもない。また、TFTなどを用いるアクティブマトリクスではなく、単純マトリクス向けの素子基板を用いて本発明を実施し、単純マトリクス駆動しても上記と同じ効果を得ることができる。
【0086】
(変形例4)
上記したように、ガスバリア層53としてSiO2などの無機化合物を用いることに限定されず、例えば、有機樹脂材料を用いるようにしてもよい。有機樹脂材料としては、例えば、平坦化層41と同様に、アクリル系やポリイミド系等の材料が挙げられる。これによれば、ガスバリア性を維持できると共に、有機平坦化層を成膜するのと同様にスピンコートあるいはスリットコーターなどの印刷プロセスで容易に成膜することができる。
【0087】
(変形例5)
上記したように、隔壁45は、無機隔壁43と有機隔壁44とによって構成されていることに限定されず、例えば、無機隔壁43が更に2つに分けられ、2つの無機隔壁(平坦化層41側に形成された第3隔壁、有機隔壁44側に形成された第4隔壁)と有機隔壁44とによって、開口部45aが階段状に形成されていてもよい。これによれば、開口部45aにおける無機隔壁43の表面積がより拡大し、機能層25の液相材料に対する濡れ性がより向上する。従って、機能層25をより平坦に形成することができ、発光の均一性および信頼性を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0088】
11…有機EL装置、12…走査線、13…信号線、14…電源線、15…画素領域、16…データ側駆動回路、17…走査側駆動回路、18…スイッチング用TFT、19…保持容量、21…ゲート電極、22…駆動用TFT、23…第1電極としての画素電極、24…第2電極としての共通電極、25…機能層、26…有機EL素子、31…基板、32…絶縁膜、33…半導体層、34…ゲート絶縁膜、35…層間絶縁膜、36…ソース電極、37…ドレイン電極、38a,38b…コンタクトホール、41…有機平坦化層としての平坦化層、42…コンタクトホール、43…第1隔壁としての無機隔壁、44…第2隔壁としての有機隔壁、45…隔壁、45a…画素開口部としての開口部、46…第1隔壁貫通孔、ガスバリア層貫通孔としての貫通孔、47…正孔注入・輸送層、48…発光層、51…封止基板、52…接着層、53…ガスバリア層、91…テレビ、92…表示部、93…枠部、94…脚部、95…リモコン、143…無機材料層、144…有機材料層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された有機平坦化層と、
前記有機平坦化層上に形成されたガスバリア層と、
前記ガスバリア層上に形成された第1電極と、
前記第1電極の上部を露出させる画素開口部が形成された隔壁と、
前記画素開口部に設けられた少なくとも有機発光層を含む機能層と、
前記機能層を覆って設けられた第2電極と、を有し、
前記隔壁は、第1隔壁と前記第1隔壁に積層された第2隔壁とからなり、
前記第1隔壁を貫通して前記ガスバリア層に到達する第1隔壁貫通孔と、前記第1隔壁貫通孔に連通すると共に前記ガスバリア層を貫通するガスバリア層貫通孔と、を備えたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記第1隔壁は親液性を有し、前記第2隔壁は撥液性を有し、
前記第2隔壁は、前記第1隔壁上に形成され、前記第2隔壁の端部は前記第1隔壁の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記第1隔壁貫通孔側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記第1隔壁は、前記有機平坦化層側に形成された第3隔壁と、前記第2隔壁側に形成された第4隔壁を備え、
前記第4隔壁の端部は、前記第3隔壁の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記第1隔壁貫通孔側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記第2隔壁には、前記第2隔壁および前記ガスバリア層を貫通して前記第1隔壁貫通孔に連通するか、または前記第1隔壁貫通孔を通って前記有機平坦化層に到達する第2隔壁貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記第1隔壁貫通孔の端部は、前記ガスバリア層貫通孔の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記画素開口部側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記ガスバリア層貫通孔の端部は、前記第1隔壁貫通孔の端部よりも前記第1隔壁に形成された前記画素開口部側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記ガスバリア層は、無機化合物を含む事を特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記ガスバリア層は、有機樹脂を含む事を特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記ガスバリア層は、有機樹脂あるいは無機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項10】
前記ガスバリア層は、金属を含む層が含まれることを特長とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項11】
前記ガスバリア層は、反射性を有する事を特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項12】
前記第1隔壁は、前記有機平坦化層と接しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−4188(P2013−4188A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130983(P2011−130983)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】