説明

有機EL装置の製造方法、及び電子機器

【課題】 封止性を損なうことなく、しかも生産効率の低下を招くことのない有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の素子領域1を有した複数個取りの大型素子基板10に接着剤9を用いて大型封止基板11を貼着した後に、素子領域1毎に個片化する有機EL装置Sの製造方法において、大型封止基板11の内面に、素子領域1の外周に設けられる無効領域3に対応する凹部5を形成すると共に、大型封止基板11の外面に、凹部5の側面に沿ってスクライブライン7aを形成する工程と、大型素子基板10及び/又は大型封止基板11の所定位置に接着剤9を配置する工程と、大型素子基板10と大型封止基板11とを接着剤9を介して貼着する工程と、大型封止基板11をスクライブライン7aに沿ってスクライブする工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の基板をスクライブすることで個片化する工程を含む有機EL装置の製造方法と、これを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型の表示装置(フラットパネルディスプレイ)として、陽極と陰極との間に有機発光材料からなる発光層を形成した、有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置が知られている。このような有機EL装置については、近年、その開発が強く進められ、これらを多数備えたカラー表示装置としての有機EL装置も、一部に提供されている。また、このような有機EL装置は、平面型の表示装置としてだけでなく、各種の表示体や照明としても、その利用が期待されている。
【0003】
このような有機EL装置(有機EL素子)にあっては、特に生産性の効率化による低コスト化や、高品質化が、実用化のための大きな課題となっている。このような背景から、従来、有機EL装置の製造方法として、大型の基板をスクライブすることで個片化し、有機EL装置を得るといった手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
大型の基板をスクライブすることで個片化する方法として、具体的には、まず、図7(a)に示すように、大型素子基板301と大型封止基板302とを用意する。なお、大型素子基板301には平面視矩形状、すなわち大型素子基板301の表面をなす平面に対して垂直な方向から見た場合に矩形状である素子領域303が、多数形成されており、大型封止基板302の内面には、素子領域303に対応する位置に凹部304が形成されているものとする。
大型封止基板302における凹部304間には、図7(a)中二点鎖線で示すように、スクライブを行うための分割予定線305が設計上設けられている(想定されている)。この例においては、大型封止基板302側では分割予定線305が2本となっている。
一方、大型素子基板301には、1本の分割予定線306が設計上設けられている(想定されている)
【0005】
次に、図7(b)に示すように、大型素子基板301の分割予定線306の側部、すなわち分割予定線306に対して素子領域303側の側部に、分割予定線306に沿って接着剤307を配する。なお、この例では、大型素子基板301には分割予定線306が1本しか設けられていないが、接着剤307を配する位置としては、大型封止基板302側に設けられる分割予定線305に対応して、これらの側部に配するようにする。
【0006】
次いで、図7(c)に示すように接着剤307を介して大型素子基板301と大型封止基板302とを接合し、さらに接着剤307を硬化させることで大型素子基板301と大型封止基板302とを貼着する。
その後、分割予定線305,306に沿ってスクライブを行い、素子領域303毎に個片化して有機EL装置を得る。
【特許文献1】特開2001−145175号公報
【特許文献2】特開2003−181825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した有機EL装置の製造方法においては以下に述べる解決すべき課題がある。
図7(c)に示したように、接着剤307を介して大型素子基板301と大型封止基板302とを接合すると、その際、接着剤307が広がりすぎてしまい、図7(c)中Aに示すように、分割予定線305,306を挟んで隣り合っていた2条の接着剤307が分割予定線305,306上で繋がってしまう。
その結果、接着剤307を硬化させた後、スクライブを行って個片化しようとしても、接着剤307が繋がってしまった箇所ではスクライブによる個片化を良好に行うことができなくなってしまう。
そして、個片化すべく接着剤307が繋がってしまった箇所を無理に引きはがそうとすると、この接着剤307に応力がかかってしまい、接着剤307と大型素子基板301との間で層間剥離が生じてしまい、接着剤307による封止性が著しく損なわれてしまうことがある。
【0008】
このような問題をなくすため、素子領域303同士の間の無効領域308を広げ、接着剤307が分割予定線305,306上で繋がってしまうのを防止することも考えられる。しかし、その場合には、無効領域308が広くなり過ぎてしまうことから、大型基板に対する取り個数が少なくなって製品に対する材料コストが高くなり、結果的に生産効率が低下してしまうといった新たな問題を生じてしまう。
また、接着剤307を減らしてしまうと、大型素子基板301と大型封止基板302とを接合が不十分となってしまうという問題が生じてしまう。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、封止性を損なうことなく、しかも生産効率の低下を招くことのない有機EL装置の製造方法、及びこの有機EL装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機EL装置の製造方法、及び電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、複数の素子領域を有した複数個取りの大型素子基板に接着剤を用いて大型封止基板を貼着した後に、前記素子領域毎に個片化する有機EL装置の製造方法において、前記大型封止基板の内面に、前記素子領域の外周に設けられる無効領域に対応する凹部を形成する工程と、前記大型素子基板及び/又は前記大型封止基板の所定位置に接着剤を配置する工程と、前記大型素子基板と前記大型封止基板とを前記接着剤を介して貼着する工程と、前記大型封止基板の外面に、前記凹部の側面に沿ってスクライブラインを形成する工程と、前記大型封止基板を前記スクライブラインに沿ってスクライブする工程と、
を有するようにした。
この発明によれば、大型封止基板の内面において、スクライブラインを起点とする分割予定線の位置には、凹部が形成されているので、接着剤が分割予定線上まで広がって硬化することで、スクライブを十分に行うことができなくなるといった不都合が回避される。
【0011】
また、複数の素子領域を有した複数個取りの大型素子基板に接着剤を用いて大型封止基板を貼着した後に、前記素子領域毎に個片化する有機EL装置の製造方法において、前記大型封止基板の内面に、前記素子領域の外周に設けられる無効領域に対応する凹部を形成すると共に、前記大型封止基板の外面に、前記凹部の側面に沿ってスクライブラインを形成する工程と、前記大型素子基板及び/又は前記大型封止基板の所定位置に接着剤を配置する工程と、前記大型素子基板と前記大型封止基板とを前記接着剤を介して貼着する工程と、前記大型封止基板を前記スクライブラインに沿ってスクライブする工程と、
を有するようにした。
この発明によっても、大型封止基板の分割予定線の位置には凹部が形成されているので、接着剤が分割予定線上まで広がって硬化することで、スクライブを十分に行うことができなくなるといった不都合が回避される。
【0012】
また、前記スクライブラインが、前記凹部の側面よりも前記素子領域側に偏った位置に形成されるものでは、分割予定線がスクライブラインから凹部の側面に繋がるので、有機EL装置の封止基板が個片化された際に、その外周縁部が面取りされた状態となる。したがって、封止基板の外周縁部に欠けやバリが発生することが防止され、不良発生防止と作業効率化が図られる。
前記スクライブラインは、前記凹部の側面から前記素子領域側に約2mm以内の領域に形成する。
【0013】
また、前記大型封止基板は、前記内面における前記素子領域の対向領域が、接着剤を配置する等により、前記接着剤の配置領域と同一平面を構成するものでは、いわゆるベタ封止構造の有機EL装置を得ることができる。
また、前記大型封止基板は、前記内面における前記素子領域の対向する領域に第2凹部が形成されるものでは、素子領域に接着剤を配置しないことにより、いわゆる缶封止構造の有機EL装置を得ることができる。
【0014】
また、前記大型封止基板をスクライブすると略同時に、前記大型素子基板を前記無効領域の略中央に沿ってスクライブする工程を有するものでは、有機EL装置を良好かつ効率的に個片化することができる。
【0015】
第2の発明は、電子機器が、第1の発明の製造方法によって得られる有機EL装置を備えるようにした。この発明によれば、高品質な電子機器を効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置の実施形態について図を参照して説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、有機EL装置の製造方法の第1実施形態を説明するための工程図である。
まず、図1(a)に示すように、大型素子基板10と大型封止基板11とを用意する。
大型素子基板10には、後述するスクライブによって個片化されることにより、最終的に素子基板10aとなるもので、平面視矩形状の素子領域1(有機EL装置S)が縦横に配列した状態で多数形成されている。
大型素子基板10は、図2に示すように、各素子領域の他、各素子領域1を取り囲む封止領域2及び無効領域3が形成されている。
【0017】
この有機EL装置Sは、例えば図3に示すように、無アルカリガラス等からなる素子基板20上に構成されたものである。
なお、本実施形態の有機EL装置Sは、発光層60で発光した光を陽極(画素電極)23側から出射する、いわゆるボトムエミッション型のものとする。ただし、光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型のものにも、本発明を適用できるのはもちろんである。
【0018】
素子基板20上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123などを含む回路部21が形成されており、その上に有機EL素子22が設けられている。有機EL素子22は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。このような構成のもとに有機EL素子22は、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0019】
陽極として機能する画素電極23は、特にボトムエミッション型である場合、透明導電材料によって形成されており、具体的にはITOが好適に用いられている。
正孔輸送層70の形成材料としては、例えば3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられている。
【0020】
発光層60を形成するための材料としては、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられている。また、これら材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることもできる。
【0021】
陰極50は、発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
なお、この陰極50上には封止層51が形成されており、さらにこの封止層51上には、接着剤(接着層)を介して大型封止基板11からなる封止基板が貼着されるようになっている。
【0022】
また、このような有機EL素子22の下方には、前述したように回路部21が設けられている。この回路部21は素子基板20上に形成されたものである。すなわち、素子基板20の表面にはSiO2を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0023】
また、シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0024】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0025】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、平坦化膜284が形成されている。この平坦化膜284は、例えばアクリル系やポリイミド系等の耐熱性絶縁性樹脂によって形成されたもので、駆動用TFT123やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0026】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化膜284の表面上に形成されるとともに、該平坦化膜284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0027】
画素電極23が形成された平坦化膜284の表面には、画素電極23と、前述した無機隔壁25とが形成されており、さらに無機隔壁25上には、有機隔壁221が形成されている。そして、画素電極23上には、無機隔壁25に形成された開口25aと、有機隔壁221に形成された開口221aとの内部、すなわち画素領域に、正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層され、さらに発光層60を覆って陰極50が設けられていることにより、前述したように有機EL素子22が形成されている。
【0028】
図1(a)に戻り、大型封止基板11は、後述するスクライブによって個片化されることにより、最終的に封止層51上に貼着される封止基板11aとなるもので、その内面には、素子領域1に対応する位置に凹部4が形成されている。
更に、この大型封止基板11における凹部4,4間には、凹部5が形成されている。つまり、無効領域3に対応する位置に凹部5が形成されている。なお、大型封止基板11における凹部4,5以外の突出した部分、すなわち封止領域2に対応する領域を凸部6と呼ぶ。
このような構成のもとにこの大型封止基板11は、個片化された封止基板11aが缶封止構造をとるようになっている。なお、凹部4内には、大型封止基板11を大型素子基板10に貼着するに先立ち、必要に応じて予め乾燥剤を配しておく。
【0029】
また、この大型封止基板11における外面であって、凹部5の両側面に略対向する位置には、この大型封止基板11を図1(a)中二点鎖線に沿って分割するために、スクライブライン7aがそれぞれ形成されている。つまり、大型封止基板11の凹部4,4間には、2本の分割予定線7が設計上設けられている(想定されている)。
一方、大型素子基板10においては、大型封止基板11の凹部5の略中央部分に対向する位置に1本の分割予定線8が設計上設けられている(想定されている)。なお、大型封止基板11と同様に、スクライブラインを予め形成しておいてもよい。
【0030】
なお、図1(a)等に示すように、大型封止基板11が分割される分割予定線7は、大型封止基板11の外面に対して直交するものではなく、スクライブライン7aから凹部4の側面に繋がる傾斜したものである。このように分割予定線7を傾斜させるために、スクライブライン7aは、凹部5の両側面に対向する位置よりも、隣接する凹部4側に若干近づいた位置に形成されている。
【0031】
このような大型封止基板11を形成するには、その内面側に、エッチング法(ケミカル法)やサンドブラスト法、さらにはこれらを組み合わせる方法等により、凹部4及び凹部5を同時に形成する。凹部4及び凹部5の深さについては、大型封止基板11を個片化した後に得られる缶封止構造において、通常は前述したようにこの凹部4内に乾燥剤等を設けるため、例えば0.3mm程度とする。なお、サンドブラスト法を採用した場合、加工により基板に歪等が残り易くなるので、大型封止基板11が特に大型である場合には、加工法としてエッチング法を用いるのが好ましい。
また、外面に設けられるスクライブライン7aも、凹部4及び凹部5の形成と同一の方法により形成する。具体的には、スクライブライン7aは、凹部5の両側から隣接する凹部4側(素子領域3側)に約2mm以内の領域に形成されている。
【0032】
このようにして大型封止基板11に凹部4及び凹部5を形成したら、図1(b)に示すように、素子領域1,1間、すなわち封止領域2に接着剤9を配する。
ここで、接着剤9は、これが押し広げられて形成される接着層の厚さが、通常は数μm〜20μm程度となるようにその量が設定され、適宜な塗布幅で配される。また、この接着剤9については、熱硬化型のものや紫外線硬化型のものを用いることができ、具体的にはエポキシ系やアクリレート系の接着剤等を用いることができる。
【0033】
次に、図1(c)に示すように、接着剤9を介して大型素子基板10と大型封止基板11とを接合する。すると、接着剤9は、大型封止基板11の凸部6の全面に広がって、その一部が凸部6から凹部5に漏出する。しかし、凸部6から漏出した接着剤9は、凹部5の側面に回り込んでその場に留まる。つまり、隣接する凸部6に配置した接着剤9同士は、凹部5に遮られるので、繋がることなく確実に分離された状態に保持される。
【0034】
次いで、接着剤9を硬化させることによって大型素子基板10と大型封止基板11とを貼着する。接着剤9は、凹部5に遮られ、凸部6から広がるのが防止されている。
よって、設計的に設けられた(想定された)分割予定線7,8上には接着剤9が移行せず、したがって分割予定線7,8上にて接着剤9が硬化してしまうことが防止されている。
【0035】
その後、図1(d)に示すように、スクライブライン7a及び分割予定線8に沿ってスクライバーを押し当てて、スクライブを行うことで、素子領域1毎に個片化して有機EL装置Sを得る。
【0036】
このように、分割予定線7,8の位置には凹部5が存在するので、接着剤9が分割予定線7,8上まで広がって硬化することで、スクライブを十分に行うことができなくなるといった不都合が回避される。
更に、スクライブライン7aは、凹部5の両側面に対向する位置よりも隣接する凹部4側に形成されているので、分割予定線7がスクライブライン7aから凹部4の側面に繋がる傾斜したものとなっている。これにより、個片化された有機EL装置Sの封止基板11aの外周縁部が面取り(縁落し)された状態となる。
したがって、封止基板11aの外周縁部に欠けやバリが発生することが防止される。そして、外周縁部の欠けによる不良発生が回避でき、また、バリ取り作業の効率化が図られる。
【0037】
上述したように、第一実施形態の有機EL装置Sの製造方法によれば、スクライブによる個片化を良好に行うことができなくなった場合に、無理に引きはがそうとして封止性を損ねてしまうといった不都合を確実に防止し、高品質化による信頼性の向上を図ることができる。
【0038】
更に、第一実施形態では、凹部4,4間に1つの凹部5を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、図4に示すように、凹部4,4間に複数の凹部5を設けてもよい。接着剤9が凹部5の存在により、凸部6から広がらないようになればよい。
【0039】
〔第二実施形態〕
図5は、有機EL装置の製造方法の第2実施形態を説明するための図である。なお、第1実施形態と同一の構成部材等については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態が第一実施形態と異なるところは、図5(a)に示すように、大型封止基板11には凹部5のみが形成されており、大型素子基板10の素子領域1に対向する領域は、平面になっている点にある。
なお、第二実施形態においても、凹部4,4間に複数の凹部5を設けてもよい(図4参照)。
【0040】
図5(b)に示すように、接着剤9を介して大型素子基板10と大型封止基板11とを接合する。すると、接着剤9は大型封止基板11の内面によって押し広げられ、その一部が凹部5に漏出する。
しかしながら、接着剤9は、凹部5が存在するため、分割予定線7,8まで広がることがない。したがって、隣接する素子領域1に配置された接着剤9同士は、繋がることなく確実に分離された状態に保持される。
【0041】
次いで、接着剤9を硬化させることによって大型素子基板10と大型封止基板11とを接着する。
その後、図5(c)に示すように、スクライブライン7a及び分割予定線8に沿ってスクライバーを押し当てて、スクライブを行うことで、素子領域1毎に個片化して有機EL装置Sを得る。
【0042】
このように、分割予定線7,8の位置には凹部5が存在するので、接着剤9が分割予定線7,8上まで広がって硬化することで、スクライブを十分に行うことができなくなるといった不都合が回避される。
更に、スクライブライン7aは、凹部5の両側面に対向する位置よりも素子領域3側に形成されているので、分割予定線7が凹部5の両側面に連続する傾斜したものとなる。つまり、個片化された有機EL装置Sの封止基板11aの外周縁部が面取り(縁落し)された状態となる。このため、封止基板11aの外周縁部に欠けやバリが発生することが防止される。したがって、外周縁部の欠けによる不良発生が回避でき、また、バリ取り作業の効率化が図られる。
また、接着剤9の配置時に前記大型素子基板11の素子領域に、接着剤9を配置する様にすれば、缶封止構造に代えていわゆるベタ封止(面接着封止)構造とすることができる。
【0043】
上述したように、第二実施形態の有機EL装置Sの製造方法によれば、スクライブによる個片化を良好に行うことができなくなった場合に、無理に引きはがそうとして封止性を損ねてしまうといった不都合を確実に防止し、高品質化による信頼性の向上を図ることができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。
例えば、接着剤9については、これにビーズ等からなるスペーサーを混在させておき、これによって大型素子基板10と大型封止基板11との間の接着剤9の厚みによって決まる間隔を、正確に制御するようにしてもよい。
【0045】
なお、第一実施形態では、大型封止基板11の外面に設けられるスクライブライン7aを、凹部4及び凹部5の形成と略同時に形成する場合について説明したが、これに限らない。例えば、大型素子基板10と大型封止基板11とを接着剤9により接合した後に、形成してもよい。
【0046】
また、素子領域1の側方に多数の外部接続端子を有している場合には、この外部接続端子を凹部5で囲まれた領域、すなわち無効領域3に露出させることで、外部接続端子を露出させた有機EL装置Sを容易に得るようにしてもよい。
【0047】
〔電子機器〕
次に、上述した有機EL装置Sを表示部として有する電子機器について、図6を参照して説明する。
図6(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図6(a)において、携帯電話1000は、上述した有機EL装置Sを用いた表示部1001を備える。
図6(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図6(b)において、時計1100は、上述した有機EL装置Sを用いた表示部1101を備える。
図6(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図6(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、情報処理装置本体(筐体)1204、上述した有機EL装置Sを用いた表示部1206を備える。
図6(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図6(d)において、薄型大画面テレビ1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上記有機EL装置Sからなる表示部1306を備える。
【0048】
このように、図6に示す電子機器1000,1100,1200,1300は、上記有機EL装置Sを備えているので、表示部1001,1101,1206,1306の高品質化が図られたものとなる。
【0049】
また、有機EL装置Sを表示部として備える場合に限らず、発光部として備える電子機器であってもよい。例えば、有機EL装置Sを露光ヘッド(ラインヘッド)として備えるページプリンタ(画像形成装置)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態の有機EL装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】大型素子基板の要部平面図である。
【図3】素子領域の概略構成を説明するための要部側断面図である。
【図4】第1実施形態の変形例を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の有機EL装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図6】本実施形態に係る電子機器を示す図である。
【図7】従来の有機EL装置の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【符号の説明】
【0051】
S…有機EL装置、 1…素子領域、 3…無効領域、 4,5…凹部、 7a…スクライブライン、 7,8…分割予定線、 9…接着剤、 10…大型素子基板、 11…大型封止基板、 1000,1100,1200,1300…電子機器、 1001,1101,1202,1306…表示部(有機EL装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子領域を有した複数個取りの大型素子基板に接着剤を用いて大型封止基板を貼着した後に、前記素子領域毎に個片化する有機EL装置の製造方法において、
前記大型封止基板の内面に、前記素子領域の外周に設けられる無効領域に対応する凹部を形成する工程と、
前記大型素子基板及び/又は前記大型封止基板の所定位置に接着剤を配置する工程と、
前記大型素子基板と前記大型封止基板とを前記接着剤を介して貼着する工程と、
前記大型封止基板の外面に、前記凹部の側面に沿ってスクライブラインを形成する工程と、
前記大型封止基板を前記スクライブラインに沿ってスクライブする工程と、
を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
複数の素子領域を有した複数個取りの大型素子基板に接着剤を用いて大型封止基板を貼着した後に、前記素子領域毎に個片化する有機EL装置の製造方法において、
前記大型封止基板の内面に、前記素子領域の外周に設けられる無効領域に対応する凹部を形成すると共に、前記大型封止基板の外面に、前記凹部の側面に沿ってスクライブラインを形成する工程と、
前記大型素子基板及び/又は前記大型封止基板の所定位置に接着剤を配置する工程と、
前記大型素子基板と前記大型封止基板とを前記接着剤を介して貼着する工程と、
前記大型封止基板を前記スクライブラインに沿ってスクライブする工程と、
を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記スクライブラインは、前記凹部の側面よりも前記素子領域側に偏った位置に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
前記スクライブラインは、前記凹部の側面から前記素子領域側に約2mm以内の領域に形成されることを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記大型封止基板は、前記内面における前記素子領域の対向領域が、前記接着剤の配置領域と同一平面を構成することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記大型封止基板は、前記内面における前記素子領域の対向する領域に第2凹部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
前記大型封止基板をスクライブすると略同時に、
前記大型素子基板を前記無効領域の略中央に沿ってスクライブする工程を有することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の製造方法によって得られた有機EL装置を備えることを特徴とする電子機器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−73285(P2007−73285A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257553(P2005−257553)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】