有機LED表示装置
【課題】 輝度を正確に制御できる有機LED表示装置を提供する。
【解決手段】 有機LED表示装置は、有機LEDと電圧・電流変換回路をマトリックス状に配置して構成される表示手段11と、電圧・電流変換回路の電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段12と、電圧・電流変換特性決定手段12で決定された電圧・電流変換特性に基づいて輝度電圧を補正する輝度電圧補正手段13とを含み、電圧・電流変換特性測定手段12は、電圧・電流変換回路に参照電圧を印加する参照電圧印加手段121と、参照電圧印加手段121から参照電圧が印加されたときに電圧・電流変換回路を介して有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段122と、参照電圧と電流計測手段122で測定された電流とに基づいて電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段123とを含む。
【解決手段】 有機LED表示装置は、有機LEDと電圧・電流変換回路をマトリックス状に配置して構成される表示手段11と、電圧・電流変換回路の電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段12と、電圧・電流変換特性決定手段12で決定された電圧・電流変換特性に基づいて輝度電圧を補正する輝度電圧補正手段13とを含み、電圧・電流変換特性測定手段12は、電圧・電流変換回路に参照電圧を印加する参照電圧印加手段121と、参照電圧印加手段121から参照電圧が印加されたときに電圧・電流変換回路を介して有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段122と、参照電圧と電流計測手段122で測定された電流とに基づいて電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段123とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機LED表示装置に係り、特に、輝度を正確に制御することのできる有機LED表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LEDをマトリックス状に配置した表示装置で高輝度かつ高コントラストな画像を長時間にわたって安定に表示するためには、有機LEDをTFT(Thin Film Transistor)で構成される電圧・電流変換回路で能動駆動することが必要である。
【0003】
有機LEDは有機LEDを流れる電流に応じた輝度で発光する特性を有するため、電界効果型トランジスタで輝度制御電圧を輝度制御電流に変換し、有機LEDに供給するものが一般的である。
【0004】
しかし、電界効果型トランジスタの電圧・電流変換特性は、電界効果型トランジスタの閾値電圧および移動度により影響を受けるが、特に電界効果型トランジスタの閾値電圧の影響が顕著である。
【0005】
このため、有機LEDの発光輝度は、電界効果型トランジスタの閾値電圧に大きく影響されることとなり、有機LED表示装置に含まれる電界効果型トランジスタの特性にバラツキがある場合には、同一の輝度電圧を印加した場合でも輝度が不均一となる課題があった。
【0006】
上記課題を解決するために、既に下記のような電圧・電流変換回路が提案されている。
1.電界効果トランジスタの閾値電圧に対応する補償電圧を蓄積するコンデンサを電圧・電流変換回路中に設置する電圧プログラム回路
2.表示輝度に対応する電流を定電流源から供給し、表示輝度に対応する電流に対応したゲート電圧を蓄積するコンデンサを電圧・電流変換回路中に設置し、輝度のばらつきを抑制する電流プログラム回路
しかし、上記の電圧・電流変換回路にあっては、回路内にコンデンサおよびトランジスタを追設する必要があるため、表示装置における電圧・電流変換回路の占有面積が大きく、表示素子の占有面積が小さくなり、表示画面の分解能が低下するという新たな課題が生じる。
【0007】
そこで、有機LED表示装置の輝度不均一を解決するために、各有機LEDに流れる電流を計測し、この電流計測値に応じて有機LEDへの電流供給時間を制御する有機LED表示装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−254410号公報([0039]〜[0041]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記提案に係る有機LED表示装置はパルス幅により輝度を制御するものであるため、多階調の輝度制御を行う場合には、電圧・電流変換回路の浮遊容量によりパルスが鈍り、所定の輝度で画像を表示できないという課題があった。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、多階調の輝度制御を行う場合にも輝度を正確に制御できる有機LED表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る有機LED表示装置は、有機LEDと前記有機LED発光時の輝度を制御する輝度電圧を前記有機LEDに供給する輝度電流に変換する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示手段と、前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段と、前記電圧・電流変換回路に供給される前記輝度電圧を前記電圧・電流変換特性決定手段で決定された電圧・電流変換特性に基づいて補正する輝度電圧補正手段とを含む構成を有している。
【0011】
この構成により、電圧・電流変換回路の電圧・電流変換特性に基づき輝度電圧を補正し正確に輝度を制御できることとなる。
【0012】
第2の発明に係る有機LED表示装置は、前記電圧・電流変換特性決定手段が、前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、参照電圧を印加する参照電圧印加手段と、前記参照電圧印加手段から参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段と、前記参照電圧印加手段により印加された参照電圧と前記電流測定手段で測定された電流とに基づいて前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段とを含む構成を有している。
【0013】
この構成により、電圧・電流変換回路ごとに電圧・電流変換特性を決定できることとなる。
【0014】
第3の発明に係る有機LED表示装置は、前記参照電圧印加手段が、前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、互いに異なる少なくとも2つの参照電圧を印加するものであり、前記電流計測手段が、前記少なくとも2つの参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる少なくとも2つの電流を計測するものであり、
前記電圧・電流変換特性算出手段が、前記電圧・電流変換特性算出手段が、前記参照電圧印加手段により印加された少なくとも2つの参照電圧と前記電流測定手段で測定された少なくとも2つの電流とに基づいて、前記電圧・電流変換特性を、電圧を独立変数、電流の開平値を従属変数とする1次関数で表したときの比例定数および電圧軸切片である閾値電圧を算出するものである構成を有している。
【0015】
この構成により、互いに異なる少なくとも2つの参照電圧を印加したときに有機LEDに流れる電流を計測することにより、電圧・電流変換特性が、電圧を独立変数、電流を従属変数とする1次関数として決定されることとなる。
【0016】
第4の発明に係る有機LED表示装置は、前記輝度電圧補正手段が、前記輝度電圧を、前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性と基準電圧・電流変換特性とに基づいて補正する構成を有している。
【0017】
この構成により、電圧・電流変換回路ごとに輝度電圧を補正できることとなる。
【0018】
第5の発明に係る有機LED表示装置は、前記基準電圧・電流変換特性が、前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性に基づいて決定される構成を有している。
【0019】
この構成により、電圧・電流変換回路ごとの電圧・電流変換特性から基準電圧・電流変換特性を決定できることとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、電圧・電流変換特性決定手段および輝度電圧補正手段を設けることにより、輝度を正確に制御できるという効果を有する有機LED表示装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る有機LED表示装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の有機LED表示装置のブロック図を図1に示す。
【0022】
即ち、第1の実施形態の有機LED表示装置は、有機LEDと有機LEDを発光させる電流を供給する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示手段11と、電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段12と、電圧・電流変換特性決定手段12で決定された電圧・電流変換特性に基づいて輝度電圧を補正する輝度電圧補正手段13とを含む。
【0023】
電圧・電流変換特性測定手段12は、電圧・電流変換回路のそれぞれに参照電圧を印加する参照電圧印加手段121と、参照電圧印加手段121から参照電圧が印加されたときに電圧・電流変換回路を介して有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段122と、参照電圧印加手段121により印加された参照電圧と電流測定手段122で測定された電流とに基づいて電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段123とを含む。
【0024】
第1の実施形態の有機LED表示装置は、図2のハードウエア構成図に示すように、有機LEDと有機LEDを発光させる電流を供給する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示パネル21と、表示パネル21の特定の列に参照電圧あるいは輝度電圧を供給する列選択部22と、表示パネル21の特定の行をアクティブにする行選択部23と、有機LEDの共通接地線に挿入される電流測定用抵抗素子24と、有機LED表示装置を制御する制御部25とを含む。
【0025】
制御部25は、例えばマイクロプロセッサで構成され、有機LED表示装置制御プログラムを実行するCPU251と、有機LED表示装置制御プログラムを記憶するメモリ252と、外部回路から輝度電圧V(i,j)および電源オンオフ信号を入力する外部インターフェイス(I/F)253と、参照電圧または補正輝度電圧を出力するD/A変換器254と、列選択部22および行選択部23に選択信号を出力する選択信号I/F255と、有機LEDを流れる電流を測定するために電流測定用抵抗素子24の両端に発生する電圧をディジタル値に変換するA/D変換器256と、CPU251、メモリ252、外部I/F253、D/A変換器254、選択信号I/F255およびA/D変換器256を相互に接続するバス257とを含む。
【0026】
図3は、表示パネル21内でマトリックス状に配置される1つの画素回路3の回路図であって、画素回路3は、列選択部22から延伸する1本の列選択線221にソースS1が接続され、行選択部23から延伸する1本の行選択線231にゲートG1が接続される第1のFET31と、正極線26にソースS2が接続され、第1のFET31のドレンD1にゲートG2が接続される第2のFET32と、第2のFET32のソースS2とゲートG2とに接続される保持コンデンサ33とを含む電圧・電流変換回路34と、第2のFET32のドレンD2と負極線27との間に接続される有機LED35とを備える。なお、負極線27は、電流測定用抵抗素子24を介して接地されている。
【0027】
なお、図3に示す電圧・電流変換回路34は一例であって、他の電圧・電流変換回路であっても、本願発明を適用することができる。
【0028】
次に、本発明に係る有機LED表示装置の動作を説明する。
【0029】
図4は、制御部25が実行する有機LED表示装置制御プログラムのフローチャートであって、CPU251は、まず、外部I/F253を介して有機LED表示装置の電源がオンであるか、オフであるかを判断する(ステップS4)。
【0030】
CPU251は、ステップS4で電源がオンからオフに遷移したと判断したときは電圧・電流変換特性決定ルーチンを実行し(ステップS5)、ステップS4で電源がオンであると判断したときは通常表示ルーチンを実行する(ステップS6)。
【0031】
図5は、制御部25が有機LED表示装置制御プログラムのステップS5で実行する電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャートであって、CPU251は、まず、表示パネル21の行を選択する行選択インデックスjを“1”に初期化する(ステップS50)。
【0032】
次に、CPU251は、表示パネル21の列を選択する列選択インデックスiを“1”に初期化する(ステップS51)。
【0033】
そして、CPU251は、電流測定ルーチンを実行し(ステップS52)、さらに、電圧・電流変換特性算出ルーチンを実行する(ステップS53)。
【0034】
次に、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したか否かを判定し(ステップS54)、列選択インデックスiが最大値Iに到達していないと判定したときは、列選択インデックスiをインクリメントして(ステップS55)、ステップS52の処理に戻る。
【0035】
一方、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したと判定したときは、行選択インデックスjが最大値Jに到達したか否かを判定する(ステップS56)。
【0036】
CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達していないと判定したときは、行選択インデックスjをインクリメントして(ステップS57)、ステップS51の処理に戻る。
【0037】
一方、CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達したと判定したときは、このルーチンを終了する。
【0038】
図6は、制御部25が電圧・電流変換特性決定ルーチンのステップS52で実行する電流測定ルーチンのフローチャートであって、CPU251は、まず、電流測定の実行回数を示す回数インデックスmを“1”に初期化する(ステップS520)。
【0039】
次に、CPU251は、列インデックスiを列選択部22に、行インデックスjを行選択部23に、選択信号I/F255を介して出力する(ステップS521)。
【0040】
ついで、CPU251は、D/A変換器254を介して列選択部22の入力端子に第m番目の参照電圧Vr(m)を印加する(ステップS522)。
【0041】
以下に、この状態における画素回路3の動作を、図3を参照しつつ説明する。
【0042】
CPU251が行インデックスjを行選択部23に出力すると、行選択線231がオン状態となって第1のFET31のゲートG1に電圧が印加され、第1のFET31が導通状態となる。
【0043】
CPU251が列インデックスiを列選択部22に出力すると、参照電圧Vr(m)が第1のFET31のソースS1およびドレンD1を経由して第2のFET32のゲートG2に印加される。
【0044】
すると、参照電圧Vr(m)の関数として決定される電流が、正極線26から第2のFET32のソースS2およびドレンD2を経て有機LED35に流入し、有機LEDを発光させた後、負極線27、電流測定用抵抗素子24を経て、接地線に流出する。
【0045】
以下、図6の電流測定ルーチンの説明に戻る。
【0046】
CPU251は、電流測定用抵抗素子24の両端に発生した電圧ViをA/D変換器256を介して読み込み、電圧Vi(i、j、m)として記憶する(ステップS523)。
【0047】
CPU251は、回数インデックスmが最大値Mに到達したか否かを判定し(ステップS524)、回数インデックスmが最大値Mに到達していないと判定したときは回数インデックスmをインクリメントして(ステップS525)、ステップS521の処理に戻る。
【0048】
一方、CPU251は、回数インデックスmが最大値Mに到達したと判定したときは、このルーチンを終了する。
【0049】
図7は、制御部25が電圧・電流変換特性決定ルーチンのステップS53で実行する電圧・電流変換特性算出ルーチンのフローチャートであって、電流測定を2回実施し、電圧・電流変換回路(i、j)の電圧・電流変換特性を、[数1]に示すように電圧を独立変数、電流の開平値を従属変数とする1次関数で近似する場合について説明する。
【0050】
【数1】
【0051】
CPU251は、電流測定用抵抗素子24の両端に発生した電圧Vi(i、j、1)を電流測定用抵抗素子24の抵抗値Rrで除して、参照電圧Vr(1)を印加したときにi列j行に配置された画素回路3に含まれる有機LED35に流れる電流I1を算出する(ステップS530)。
【0052】
次に、CPU251は、電流測定用抵抗素子24の両端に発生した電圧Vi(i、j、2)を電流測定用抵抗素子24の抵抗値Rrで除して、参照電圧Vr(2)を印加したときにi列j行に配置された画素回路3に含まれる有機LED35に流れる電流I2を算出する(ステップS531)。
【0053】
CPU251は、[数2]を用いて、i列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32の電圧・電流変換特性の比例定数K(i、j)を算出する(ステップS532)。
【0054】
【数2】
【0055】
次に、CPU251は、[数3]を用いて、i列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32の電圧・電流変換特性の閾値電圧Vth(i、j)を算出して(ステップS533)、このルーチンを終了する。
【0056】
【数3】
【0057】
以上で電圧・電流変換特性決定ルーチンの説明を終了し、通常表示時の補正方法について説明する。
【0058】
図8は補正方法説明用グラフであって、横軸右方向に電圧・電流変換回路34の第2のFET32のゲートG2に印加される電圧Vを、横軸左方向に第2のFET32のソースS2からドレンD2に向かって流れる電流Iを、縦軸に第2のFET32のソース・ドレン間電圧VSDをとる。
【0059】
また、第1象限はゲート電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性を示し、第2象限は−ソース・ドレン間電圧VSD対ドレン電流I特性を示す。
【0060】
なお、第1象限のゲート電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性のうち、実線は標準FETの特性を、一点鎖線はi列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32の特性を示す。
【0061】
また、第2象限のソース・ドレン間電圧VSD対ドレン電流I特性は、ソース・ドレン間電圧VSDの1/2乗がドレン電流Iとなる曲線であり、第2のFETによるバラツキはないものとする。
【0062】
従って、i列j行に配置された電圧・電流変換回路34の閾値電圧Vth(i、j)および比例定数K(i、j)が定まれば、第2のFET32のゲート電圧V対ドレン電流I特性が[数4]のように定まる。
【0063】
【数4】
【0064】
標準のFETの輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性は、[数5]で表されるものとする。
【0065】
【数5】
【0066】
よって、標準のFETのゲートに電圧V(i,j)を印加したときに標準のFETのソースからドレンに向かって流れる電流Idが、i列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32のゲートに電圧Vcを印加したときに第2のFET32のソースからドレンに向かって流れる電流となるように、電圧Vcを定めればよい。
【0067】
図9は、制御部25が有機LED表示装置制御プログラムのステップS6で実行する通常表示ルーチンのフローチャートであって、CPU251は、まず、表示パネル21の行を選択する行選択インデックスjを“1”に初期化する(ステップS60)。
【0068】
次に、CPU251は、表示パネル21の列を選択する列選択インデックスiを“1”に初期化する(ステップS61)。
【0069】
CPU251は、i列j行の画素の輝度電圧V(i,j)を外部I/F253を介して読み込む(ステップS62)。
【0070】
そして、CPU251は、[数6]に基づいて補正輝度電圧Vcを算出する(ステップS63)。
【0071】
【数6】
【0072】
次に、CPU251は、列インデックスiを列選択部22に、行インデックスjを行選択部23に、選択信号I/F255を介して出力する(ステップS64)。
【0073】
そして、CPU251は、補正輝度電圧Vcを出力する(ステップS65)。
【0074】
次に、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したか否かを判定し(ステップS66)、列選択インデックスiが最大値Iに到達していないと判定したときは、列選択インデックスiをインクリメントして(ステップS67)、ステップS62の処理に戻る。
【0075】
一方、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したと判定したときは、行選択インデックスjが最大値Jに到達したか否かを判定する(ステップS68)。
【0076】
CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達していないと判定したときは、行選択インデックスjをインクリメントして(ステップS69)、ステップS61の処理に戻る。
【0077】
一方、CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達したと判定したときは、このルーチンを終了する。
【0078】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、表示パネルに配置される各画素回路の電圧・電流変換特性を測定し、この電圧・電流変換特性に応じて輝度電圧を補正することにより、電圧・電流変換特性のバラツキに起因する輝度のバラツキを補正することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態にあっては、標準のFETの輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性は予め定められているものとしているが、理論的に決定されたものであるので実際の特性とは一致しない場合もある。
【0079】
第2の実施形態は、この課題を解決するものであって、電流測定結果に基づいて標準のFETの輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性を決定する。
【0080】
図10は、第2の実施形態で使用される第2の電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャートであって、ステップS53とステップS54の間に基準特性決定ルーチン(ステップS7)が挿入される。
【0081】
図11は、基準電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャートであって、表示パネルを構成する複数の画素回路の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性の平均特性を標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性とする場合を示している。
【0082】
まず、CPU251は、[数7]により図7に示す電圧・電流変換特性算出ルーチンのステップS532で算出された比例定数の平均値を標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性の比例定数とする(ステップS70)。
【0083】
【数7】
【0084】
次に、CPU251は、[数8]により図7に示す電圧・電流変換特性算出ルーチンのステップS533で算出された閾値電圧の平均値を標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性の閾値電圧とする(ステップS71)。
【0085】
【数8】
【0086】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、実際の表示パネルに基づいて標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る有機LED表示装置の実施形態のブロック図
【図2】本発明に係る有機LED表示装置のハードウエア構成のブロック図
【図3】本発明に係る有機LED表示装置中の1つの画素回路のハードウエア構成のブロック図
【図4】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される有機LED表示装置制御プログラムのフローチャート
【図5】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャート
【図6】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される電流測定ルーチンのフローチャート
【図7】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される電圧・電流変換特性算出ルーチンのフローチャート
【図8】本発明に係る有機LED表示装置における補正方法を説明するグラフ
【図9】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される通常表示ルーチンのフローチャート
【図10】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される第2の電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャート
【図11】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される基準電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャート
【符号の説明】
【0088】
11 表示手段
12 電圧・電流変換特性決定手段
13 輝度電圧補正手段
121 参照電圧印加手段
122 電流計測手段
123 電圧・電流変換特性算出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機LED表示装置に係り、特に、輝度を正確に制御することのできる有機LED表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LEDをマトリックス状に配置した表示装置で高輝度かつ高コントラストな画像を長時間にわたって安定に表示するためには、有機LEDをTFT(Thin Film Transistor)で構成される電圧・電流変換回路で能動駆動することが必要である。
【0003】
有機LEDは有機LEDを流れる電流に応じた輝度で発光する特性を有するため、電界効果型トランジスタで輝度制御電圧を輝度制御電流に変換し、有機LEDに供給するものが一般的である。
【0004】
しかし、電界効果型トランジスタの電圧・電流変換特性は、電界効果型トランジスタの閾値電圧および移動度により影響を受けるが、特に電界効果型トランジスタの閾値電圧の影響が顕著である。
【0005】
このため、有機LEDの発光輝度は、電界効果型トランジスタの閾値電圧に大きく影響されることとなり、有機LED表示装置に含まれる電界効果型トランジスタの特性にバラツキがある場合には、同一の輝度電圧を印加した場合でも輝度が不均一となる課題があった。
【0006】
上記課題を解決するために、既に下記のような電圧・電流変換回路が提案されている。
1.電界効果トランジスタの閾値電圧に対応する補償電圧を蓄積するコンデンサを電圧・電流変換回路中に設置する電圧プログラム回路
2.表示輝度に対応する電流を定電流源から供給し、表示輝度に対応する電流に対応したゲート電圧を蓄積するコンデンサを電圧・電流変換回路中に設置し、輝度のばらつきを抑制する電流プログラム回路
しかし、上記の電圧・電流変換回路にあっては、回路内にコンデンサおよびトランジスタを追設する必要があるため、表示装置における電圧・電流変換回路の占有面積が大きく、表示素子の占有面積が小さくなり、表示画面の分解能が低下するという新たな課題が生じる。
【0007】
そこで、有機LED表示装置の輝度不均一を解決するために、各有機LEDに流れる電流を計測し、この電流計測値に応じて有機LEDへの電流供給時間を制御する有機LED表示装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−254410号公報([0039]〜[0041]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記提案に係る有機LED表示装置はパルス幅により輝度を制御するものであるため、多階調の輝度制御を行う場合には、電圧・電流変換回路の浮遊容量によりパルスが鈍り、所定の輝度で画像を表示できないという課題があった。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、多階調の輝度制御を行う場合にも輝度を正確に制御できる有機LED表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る有機LED表示装置は、有機LEDと前記有機LED発光時の輝度を制御する輝度電圧を前記有機LEDに供給する輝度電流に変換する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示手段と、前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段と、前記電圧・電流変換回路に供給される前記輝度電圧を前記電圧・電流変換特性決定手段で決定された電圧・電流変換特性に基づいて補正する輝度電圧補正手段とを含む構成を有している。
【0011】
この構成により、電圧・電流変換回路の電圧・電流変換特性に基づき輝度電圧を補正し正確に輝度を制御できることとなる。
【0012】
第2の発明に係る有機LED表示装置は、前記電圧・電流変換特性決定手段が、前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、参照電圧を印加する参照電圧印加手段と、前記参照電圧印加手段から参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段と、前記参照電圧印加手段により印加された参照電圧と前記電流測定手段で測定された電流とに基づいて前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段とを含む構成を有している。
【0013】
この構成により、電圧・電流変換回路ごとに電圧・電流変換特性を決定できることとなる。
【0014】
第3の発明に係る有機LED表示装置は、前記参照電圧印加手段が、前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、互いに異なる少なくとも2つの参照電圧を印加するものであり、前記電流計測手段が、前記少なくとも2つの参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる少なくとも2つの電流を計測するものであり、
前記電圧・電流変換特性算出手段が、前記電圧・電流変換特性算出手段が、前記参照電圧印加手段により印加された少なくとも2つの参照電圧と前記電流測定手段で測定された少なくとも2つの電流とに基づいて、前記電圧・電流変換特性を、電圧を独立変数、電流の開平値を従属変数とする1次関数で表したときの比例定数および電圧軸切片である閾値電圧を算出するものである構成を有している。
【0015】
この構成により、互いに異なる少なくとも2つの参照電圧を印加したときに有機LEDに流れる電流を計測することにより、電圧・電流変換特性が、電圧を独立変数、電流を従属変数とする1次関数として決定されることとなる。
【0016】
第4の発明に係る有機LED表示装置は、前記輝度電圧補正手段が、前記輝度電圧を、前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性と基準電圧・電流変換特性とに基づいて補正する構成を有している。
【0017】
この構成により、電圧・電流変換回路ごとに輝度電圧を補正できることとなる。
【0018】
第5の発明に係る有機LED表示装置は、前記基準電圧・電流変換特性が、前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性に基づいて決定される構成を有している。
【0019】
この構成により、電圧・電流変換回路ごとの電圧・電流変換特性から基準電圧・電流変換特性を決定できることとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、電圧・電流変換特性決定手段および輝度電圧補正手段を設けることにより、輝度を正確に制御できるという効果を有する有機LED表示装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る有機LED表示装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の有機LED表示装置のブロック図を図1に示す。
【0022】
即ち、第1の実施形態の有機LED表示装置は、有機LEDと有機LEDを発光させる電流を供給する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示手段11と、電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段12と、電圧・電流変換特性決定手段12で決定された電圧・電流変換特性に基づいて輝度電圧を補正する輝度電圧補正手段13とを含む。
【0023】
電圧・電流変換特性測定手段12は、電圧・電流変換回路のそれぞれに参照電圧を印加する参照電圧印加手段121と、参照電圧印加手段121から参照電圧が印加されたときに電圧・電流変換回路を介して有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段122と、参照電圧印加手段121により印加された参照電圧と電流測定手段122で測定された電流とに基づいて電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段123とを含む。
【0024】
第1の実施形態の有機LED表示装置は、図2のハードウエア構成図に示すように、有機LEDと有機LEDを発光させる電流を供給する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示パネル21と、表示パネル21の特定の列に参照電圧あるいは輝度電圧を供給する列選択部22と、表示パネル21の特定の行をアクティブにする行選択部23と、有機LEDの共通接地線に挿入される電流測定用抵抗素子24と、有機LED表示装置を制御する制御部25とを含む。
【0025】
制御部25は、例えばマイクロプロセッサで構成され、有機LED表示装置制御プログラムを実行するCPU251と、有機LED表示装置制御プログラムを記憶するメモリ252と、外部回路から輝度電圧V(i,j)および電源オンオフ信号を入力する外部インターフェイス(I/F)253と、参照電圧または補正輝度電圧を出力するD/A変換器254と、列選択部22および行選択部23に選択信号を出力する選択信号I/F255と、有機LEDを流れる電流を測定するために電流測定用抵抗素子24の両端に発生する電圧をディジタル値に変換するA/D変換器256と、CPU251、メモリ252、外部I/F253、D/A変換器254、選択信号I/F255およびA/D変換器256を相互に接続するバス257とを含む。
【0026】
図3は、表示パネル21内でマトリックス状に配置される1つの画素回路3の回路図であって、画素回路3は、列選択部22から延伸する1本の列選択線221にソースS1が接続され、行選択部23から延伸する1本の行選択線231にゲートG1が接続される第1のFET31と、正極線26にソースS2が接続され、第1のFET31のドレンD1にゲートG2が接続される第2のFET32と、第2のFET32のソースS2とゲートG2とに接続される保持コンデンサ33とを含む電圧・電流変換回路34と、第2のFET32のドレンD2と負極線27との間に接続される有機LED35とを備える。なお、負極線27は、電流測定用抵抗素子24を介して接地されている。
【0027】
なお、図3に示す電圧・電流変換回路34は一例であって、他の電圧・電流変換回路であっても、本願発明を適用することができる。
【0028】
次に、本発明に係る有機LED表示装置の動作を説明する。
【0029】
図4は、制御部25が実行する有機LED表示装置制御プログラムのフローチャートであって、CPU251は、まず、外部I/F253を介して有機LED表示装置の電源がオンであるか、オフであるかを判断する(ステップS4)。
【0030】
CPU251は、ステップS4で電源がオンからオフに遷移したと判断したときは電圧・電流変換特性決定ルーチンを実行し(ステップS5)、ステップS4で電源がオンであると判断したときは通常表示ルーチンを実行する(ステップS6)。
【0031】
図5は、制御部25が有機LED表示装置制御プログラムのステップS5で実行する電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャートであって、CPU251は、まず、表示パネル21の行を選択する行選択インデックスjを“1”に初期化する(ステップS50)。
【0032】
次に、CPU251は、表示パネル21の列を選択する列選択インデックスiを“1”に初期化する(ステップS51)。
【0033】
そして、CPU251は、電流測定ルーチンを実行し(ステップS52)、さらに、電圧・電流変換特性算出ルーチンを実行する(ステップS53)。
【0034】
次に、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したか否かを判定し(ステップS54)、列選択インデックスiが最大値Iに到達していないと判定したときは、列選択インデックスiをインクリメントして(ステップS55)、ステップS52の処理に戻る。
【0035】
一方、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したと判定したときは、行選択インデックスjが最大値Jに到達したか否かを判定する(ステップS56)。
【0036】
CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達していないと判定したときは、行選択インデックスjをインクリメントして(ステップS57)、ステップS51の処理に戻る。
【0037】
一方、CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達したと判定したときは、このルーチンを終了する。
【0038】
図6は、制御部25が電圧・電流変換特性決定ルーチンのステップS52で実行する電流測定ルーチンのフローチャートであって、CPU251は、まず、電流測定の実行回数を示す回数インデックスmを“1”に初期化する(ステップS520)。
【0039】
次に、CPU251は、列インデックスiを列選択部22に、行インデックスjを行選択部23に、選択信号I/F255を介して出力する(ステップS521)。
【0040】
ついで、CPU251は、D/A変換器254を介して列選択部22の入力端子に第m番目の参照電圧Vr(m)を印加する(ステップS522)。
【0041】
以下に、この状態における画素回路3の動作を、図3を参照しつつ説明する。
【0042】
CPU251が行インデックスjを行選択部23に出力すると、行選択線231がオン状態となって第1のFET31のゲートG1に電圧が印加され、第1のFET31が導通状態となる。
【0043】
CPU251が列インデックスiを列選択部22に出力すると、参照電圧Vr(m)が第1のFET31のソースS1およびドレンD1を経由して第2のFET32のゲートG2に印加される。
【0044】
すると、参照電圧Vr(m)の関数として決定される電流が、正極線26から第2のFET32のソースS2およびドレンD2を経て有機LED35に流入し、有機LEDを発光させた後、負極線27、電流測定用抵抗素子24を経て、接地線に流出する。
【0045】
以下、図6の電流測定ルーチンの説明に戻る。
【0046】
CPU251は、電流測定用抵抗素子24の両端に発生した電圧ViをA/D変換器256を介して読み込み、電圧Vi(i、j、m)として記憶する(ステップS523)。
【0047】
CPU251は、回数インデックスmが最大値Mに到達したか否かを判定し(ステップS524)、回数インデックスmが最大値Mに到達していないと判定したときは回数インデックスmをインクリメントして(ステップS525)、ステップS521の処理に戻る。
【0048】
一方、CPU251は、回数インデックスmが最大値Mに到達したと判定したときは、このルーチンを終了する。
【0049】
図7は、制御部25が電圧・電流変換特性決定ルーチンのステップS53で実行する電圧・電流変換特性算出ルーチンのフローチャートであって、電流測定を2回実施し、電圧・電流変換回路(i、j)の電圧・電流変換特性を、[数1]に示すように電圧を独立変数、電流の開平値を従属変数とする1次関数で近似する場合について説明する。
【0050】
【数1】
【0051】
CPU251は、電流測定用抵抗素子24の両端に発生した電圧Vi(i、j、1)を電流測定用抵抗素子24の抵抗値Rrで除して、参照電圧Vr(1)を印加したときにi列j行に配置された画素回路3に含まれる有機LED35に流れる電流I1を算出する(ステップS530)。
【0052】
次に、CPU251は、電流測定用抵抗素子24の両端に発生した電圧Vi(i、j、2)を電流測定用抵抗素子24の抵抗値Rrで除して、参照電圧Vr(2)を印加したときにi列j行に配置された画素回路3に含まれる有機LED35に流れる電流I2を算出する(ステップS531)。
【0053】
CPU251は、[数2]を用いて、i列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32の電圧・電流変換特性の比例定数K(i、j)を算出する(ステップS532)。
【0054】
【数2】
【0055】
次に、CPU251は、[数3]を用いて、i列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32の電圧・電流変換特性の閾値電圧Vth(i、j)を算出して(ステップS533)、このルーチンを終了する。
【0056】
【数3】
【0057】
以上で電圧・電流変換特性決定ルーチンの説明を終了し、通常表示時の補正方法について説明する。
【0058】
図8は補正方法説明用グラフであって、横軸右方向に電圧・電流変換回路34の第2のFET32のゲートG2に印加される電圧Vを、横軸左方向に第2のFET32のソースS2からドレンD2に向かって流れる電流Iを、縦軸に第2のFET32のソース・ドレン間電圧VSDをとる。
【0059】
また、第1象限はゲート電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性を示し、第2象限は−ソース・ドレン間電圧VSD対ドレン電流I特性を示す。
【0060】
なお、第1象限のゲート電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性のうち、実線は標準FETの特性を、一点鎖線はi列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32の特性を示す。
【0061】
また、第2象限のソース・ドレン間電圧VSD対ドレン電流I特性は、ソース・ドレン間電圧VSDの1/2乗がドレン電流Iとなる曲線であり、第2のFETによるバラツキはないものとする。
【0062】
従って、i列j行に配置された電圧・電流変換回路34の閾値電圧Vth(i、j)および比例定数K(i、j)が定まれば、第2のFET32のゲート電圧V対ドレン電流I特性が[数4]のように定まる。
【0063】
【数4】
【0064】
標準のFETの輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性は、[数5]で表されるものとする。
【0065】
【数5】
【0066】
よって、標準のFETのゲートに電圧V(i,j)を印加したときに標準のFETのソースからドレンに向かって流れる電流Idが、i列j行に配置された画素回路3に含まれる第2のFET32のゲートに電圧Vcを印加したときに第2のFET32のソースからドレンに向かって流れる電流となるように、電圧Vcを定めればよい。
【0067】
図9は、制御部25が有機LED表示装置制御プログラムのステップS6で実行する通常表示ルーチンのフローチャートであって、CPU251は、まず、表示パネル21の行を選択する行選択インデックスjを“1”に初期化する(ステップS60)。
【0068】
次に、CPU251は、表示パネル21の列を選択する列選択インデックスiを“1”に初期化する(ステップS61)。
【0069】
CPU251は、i列j行の画素の輝度電圧V(i,j)を外部I/F253を介して読み込む(ステップS62)。
【0070】
そして、CPU251は、[数6]に基づいて補正輝度電圧Vcを算出する(ステップS63)。
【0071】
【数6】
【0072】
次に、CPU251は、列インデックスiを列選択部22に、行インデックスjを行選択部23に、選択信号I/F255を介して出力する(ステップS64)。
【0073】
そして、CPU251は、補正輝度電圧Vcを出力する(ステップS65)。
【0074】
次に、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したか否かを判定し(ステップS66)、列選択インデックスiが最大値Iに到達していないと判定したときは、列選択インデックスiをインクリメントして(ステップS67)、ステップS62の処理に戻る。
【0075】
一方、CPU251は、列選択インデックスiが最大値Iに到達したと判定したときは、行選択インデックスjが最大値Jに到達したか否かを判定する(ステップS68)。
【0076】
CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達していないと判定したときは、行選択インデックスjをインクリメントして(ステップS69)、ステップS61の処理に戻る。
【0077】
一方、CPU251は、行選択インデックスjが最大値Jに到達したと判定したときは、このルーチンを終了する。
【0078】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、表示パネルに配置される各画素回路の電圧・電流変換特性を測定し、この電圧・電流変換特性に応じて輝度電圧を補正することにより、電圧・電流変換特性のバラツキに起因する輝度のバラツキを補正することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態にあっては、標準のFETの輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性は予め定められているものとしているが、理論的に決定されたものであるので実際の特性とは一致しない場合もある。
【0079】
第2の実施形態は、この課題を解決するものであって、電流測定結果に基づいて標準のFETの輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性を決定する。
【0080】
図10は、第2の実施形態で使用される第2の電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャートであって、ステップS53とステップS54の間に基準特性決定ルーチン(ステップS7)が挿入される。
【0081】
図11は、基準電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャートであって、表示パネルを構成する複数の画素回路の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性の平均特性を標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性とする場合を示している。
【0082】
まず、CPU251は、[数7]により図7に示す電圧・電流変換特性算出ルーチンのステップS532で算出された比例定数の平均値を標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性の比例定数とする(ステップS70)。
【0083】
【数7】
【0084】
次に、CPU251は、[数8]により図7に示す電圧・電流変換特性算出ルーチンのステップS533で算出された閾値電圧の平均値を標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性の閾値電圧とする(ステップS71)。
【0085】
【数8】
【0086】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、実際の表示パネルに基づいて標準の輝度電圧V対ソース・ドレン間電圧VSD特性を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る有機LED表示装置の実施形態のブロック図
【図2】本発明に係る有機LED表示装置のハードウエア構成のブロック図
【図3】本発明に係る有機LED表示装置中の1つの画素回路のハードウエア構成のブロック図
【図4】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される有機LED表示装置制御プログラムのフローチャート
【図5】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャート
【図6】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される電流測定ルーチンのフローチャート
【図7】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される電圧・電流変換特性算出ルーチンのフローチャート
【図8】本発明に係る有機LED表示装置における補正方法を説明するグラフ
【図9】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される通常表示ルーチンのフローチャート
【図10】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される第2の電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャート
【図11】本発明に係る有機LED表示装置のCPUで実行される基準電圧・電流変換特性決定ルーチンのフローチャート
【符号の説明】
【0088】
11 表示手段
12 電圧・電流変換特性決定手段
13 輝度電圧補正手段
121 参照電圧印加手段
122 電流計測手段
123 電圧・電流変換特性算出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機LEDと前記有機LED発光時の輝度を制御する輝度電圧を前記有機LEDに供給する輝度電流に変換する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示手段と、
前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段と、
前記電圧・電流変換回路に供給される前記輝度電圧を前記電圧・電流変換特性決定手段で決定された電圧・電流変換特性に基づいて補正する輝度電圧補正手段とを含む有機LED表示装置。
【請求項2】
前記電圧・電流変換特性決定手段が、
前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、参照電圧を印加する参照電圧印加手段と、
前記参照電圧印加手段から参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段と、
前記参照電圧印加手段により印加された参照電圧と前記電流測定手段で測定された電流とに基づいて前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段とを含む請求項1に記載の有機LED表示装置。
【請求項3】
前記参照電圧印加手段が、前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、互いに異なる少なくとも2つの参照電圧を印加するものであり、
前記電流計測手段が、前記少なくとも2つの参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる少なくとも2つの電流を計測するものであり、
前記電圧・電流変換特性算出手段が、前記参照電圧印加手段により印加された少なくとも2つの参照電圧と前記電流測定手段で測定された少なくとも2つの電流とに基づいて、前記電圧・電流変換特性を、電圧を独立変数、電流の開平値を従属変数とする1次関数で表したときの比例定数および電圧軸切片である閾値電圧を算出するものである請求項2に記載の有機LED表示装置。
【請求項4】
前記輝度電圧補正手段が、
前記輝度電圧を、前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性と基準電圧・電流変換特性とに基づいて補正するものである請求項3に記載の有機LED表示装置。
【請求項5】
前記基準電圧・電流変換特性が、
前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性に基づいて決定される請求項4に記載の有機LED表示装置。
【請求項1】
有機LEDと前記有機LED発光時の輝度を制御する輝度電圧を前記有機LEDに供給する輝度電流に変換する電圧・電流変換回路とからなる画素回路を複数個マトリックス状に配置して構成される表示手段と、
前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を決定する電圧・電流変換特性決定手段と、
前記電圧・電流変換回路に供給される前記輝度電圧を前記電圧・電流変換特性決定手段で決定された電圧・電流変換特性に基づいて補正する輝度電圧補正手段とを含む有機LED表示装置。
【請求項2】
前記電圧・電流変換特性決定手段が、
前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、参照電圧を印加する参照電圧印加手段と、
前記参照電圧印加手段から参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる電流を計測する電流計測手段と、
前記参照電圧印加手段により印加された参照電圧と前記電流測定手段で測定された電流とに基づいて前記電圧・電流変換回路のそれぞれの電圧・電流変換特性を算出する電圧・電流変換特性算出手段とを含む請求項1に記載の有機LED表示装置。
【請求項3】
前記参照電圧印加手段が、前記電圧・電流変換回路のそれぞれに、互いに異なる少なくとも2つの参照電圧を印加するものであり、
前記電流計測手段が、前記少なくとも2つの参照電圧が印加されたときに、前記電圧・電流変換回路を介して前記有機LEDに流れる少なくとも2つの電流を計測するものであり、
前記電圧・電流変換特性算出手段が、前記参照電圧印加手段により印加された少なくとも2つの参照電圧と前記電流測定手段で測定された少なくとも2つの電流とに基づいて、前記電圧・電流変換特性を、電圧を独立変数、電流の開平値を従属変数とする1次関数で表したときの比例定数および電圧軸切片である閾値電圧を算出するものである請求項2に記載の有機LED表示装置。
【請求項4】
前記輝度電圧補正手段が、
前記輝度電圧を、前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性と基準電圧・電流変換特性とに基づいて補正するものである請求項3に記載の有機LED表示装置。
【請求項5】
前記基準電圧・電流変換特性が、
前記電圧・電流変換特性算出手段で算出された電圧・電流変換特性に基づいて決定される請求項4に記載の有機LED表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−11205(P2007−11205A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194974(P2005−194974)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]