説明

有糸分裂の阻害剤の同定

NIMA様キナーゼを使用して、抗有糸分裂化合物を同定し癌を診断するための方法および組成物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国支援の研究に関する記述
本明細書に記載する本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)の助成金番号DK17776によって、全面的または部分的に支援されたものである。米国政府は、本発明においてある程度の権利を有するものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、抗癌および抗菌化合物の同定の分野の範疇にある。より詳細には、本発明は、真核細胞の有糸分裂と関係がある1つまたは複数のNIMAファミリーのキナーゼの活性を阻害することによって、細胞の有糸分裂および増殖を阻害する化合物の能力に基づいて、癌を治療するために使用することができる、化合物をスクリーニングし同定する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
細胞周期の期を経た真核細胞の増殖の進行は、有糸分裂が適時に起こるのを保証する調節タンパク質のアレイによって制御される。真核細胞の周期には増殖期と生殖期が含まれ;後者は染色体周期と中心体周期から構成され、これらは有糸分裂機構の確立と共通する部分がある。単細胞が忠実に2つの姉妹細胞に分裂する、という有糸分裂のプロセスは、通常は厳密に調節されて、脊椎動物の胎児の発育、急成長、および傷の修復などの、迅速な分裂期中でさえも、制御が保たれて、未分化細胞または特定の細胞および組織型の個々の系統の抑制されない増殖を防ぐように、すなわち癌の発症を予防するように、制御が維持されている。
【0004】
このように、細胞分裂は通常、タイミングを合わせ、制御されている。このような制御は、ある程度は、互いにアンタゴニストであるキナーゼとホスファターゼの特定の組の相互作用によって行われ、その最も知られているのはサイクリン依存性キナーゼ(CDK)である。プロテインキナーゼは、セリン/スレオニンまたはチロシン残基の、アミノ酸配列の類似性または特異性に基づいて、2つの主な群に分けることができる。大部分のキナーゼファミリーのプロテインキナーゼではまた、それらの特定の細胞的役割を反映する、キナーゼドメイン以外の構成的特徴が共通している。近年の研究によって、プロテインキナーゼの幾つかの他のファミリーも、1つの細胞から2つの細胞を作製する複雑なプロセスの様々な段階で重要な役割を果たすことが示される(Nigg他、Nature Reviews、2:21〜32(2001))。たとえば、ポロ様キナーゼ(Glover他、Genes Dev.、12:3777〜37887(1998)、オーロラキナーゼ、およびNIWA様キナーゼ(Neks、Fry他、Methods Enzymol.、283:270〜282(1997);Kandli他、Genomics、68:187〜196(2000))は、有糸分裂前期の中心体分離および染色体凝縮、有糸分裂前中期の核エンベロープの破壊および紡錘体の集合、並びに有糸分裂および細胞質分裂からの移行などのステップに関与している。
【0005】
用語「NIMA」は、nimA遺伝子によってコードされている、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)プロテインキナーゼに由来するものである。アスペルギルスからの初期のデータから、有糸分裂の開始中に、NIMAがp34Cdc2/サイクリンBと協同作用することが示唆された。さらに近年の証拠から、NIMAはp34Cdc2/サイクリンBの核への移行に必要であることが示されている(Wu他、J.Cell Biol.、141:1575〜1587(1998))。さらに、Cdc2およびNIMAの双方は、有糸分裂を終了するためには、不活性化されなければならない。NIMA遺伝子の温度感受性突然変異(Osmani他、Cell、67:283〜291(1991))、またはNIMAキナーゼの非触媒ドメインの発現(Lu他、EMBOJ.、13:2103〜2113(1994))によって、p34Cdc2の活性化を害することなく、アスペルギルス細胞をG2細胞周期中に休止させることができる(したがって、「決して有糸分裂期にないこと」(略して「NIMA」)を観察して、このようなキナーゼを分類する)。逆に、NIMAの過剰発現によって、p34Cdc2を活性化させずに、クロマチン凝縮および異常な紡錘体形成が引き起こされる(O'Connell他、EMBOJ.、13:4926〜4937(1994);Osmani他、Cell、52:241〜251(1988))。NIMA突然変異体のG2休止は、異なる有糸分裂後期促進複合体(APC)サブユニットの突然変異によって回避することができる。二重NIMAおよびAPC温度感受性突然変異体は、制限温度に移行すると有糸分裂に入ることができるが、有糸分裂細胞は、異常な核エンベロープおよび紡錘体編成を示し、細胞周期のG2/M移行の制御以外の、有糸分裂プロセスにおけるNIMAプロテインキナーゼの関与が示される(Osamani他、Cell、52:241〜251(1988);Osamani他、EMBOJ.、10:2669〜2679(1991);Lies他、J.Cell Sci.、111:1453〜1465(1998))。
【0006】
NIMA関連(またはNIMA様)キナーゼは、「Nek」とも呼ばれる。本来のNIMAと同様に、Nekはセリン/スレオニン(「ser/thr」)キナーゼであり、これらは他のプロテインキナーゼとは生化学的に異なり、ser/thrリン酸化によって調節される、ホスホトランスフェラーゼ活性を有している。NIMAまたはNIMA様キナーゼ介在の有糸分裂経路は、アスペルギルスなどの真菌(NIMAキナーゼの最初に報告された供給源)から、脊椎動物細胞(LuおよびHunter、Cell、81:413、1995a)の範囲まで、大部分の真核細胞に存在するようである。アフリカツメガエルの卵母細胞では、NIMAは、Mos、Cdc2またはMAPキナーゼを活性化させずに、胚胞の破壊を誘導する。HeLa細胞では、NIMAは、Cdc2を活性化させずに有糸分裂事象を誘導するが、一方、ドミナントネガティブNIMA突然変異体は、G2細胞周期において特異的な休止を引き起こす。さらに、O'Connell他(EMBOJ.、13:4926〜4937(1994))は、NIMAは分裂酵母菌およびHeLa細胞において、時期尚早なクロマチン凝縮を誘導することを実証している。明らかに、NIMAキナーゼおよびNIMA様キナーゼは、真核細胞の有糸分裂の整然とした調節において、重要な役割を果たしている。
【0007】
NIMAタンパク質レベルは、細胞周期中に大幅に変化し、有糸分裂中に最大になり、NIMAプロテインキナーゼ活性は、NIMAタンパク質含量に対応すると思われる。NIMAは有糸分裂中にin vivoで過リン酸化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化することができる(Ye他、EMBOJ.、14:986〜994(1995))。このようなin vitroでのリン酸化は、NIMAプロテインキナーゼ活性を適度に変化させる。しかしながら、有糸分裂において一度リン酸化されると、NIMAは迅速に分解され、この分解は有糸分裂を終わらせるために必要である(例えば、O'Connell他、EMBOJ.、11:2139〜2149(1992);Pe他、EMBOJ.、14:995〜1003(1995)を参照のこと)。
【0008】
組換えNIMAが、分裂酵母菌(O'Connell他、EMBOJ.、13:4926〜4937(1994))、および脊椎動物細胞(後期に核膜の破壊を伴う;例えば、O'Connell他、EMBOJ.、13:4926〜4937(1994);Lu他、Cell、81:413〜424(1995)を参照のこと)において、アスペルギルス中で起こるのと同様に、クロマチン凝縮を誘導できることから、類似の特異性を有するNIMAキナーゼまたはNIMA様プロテインキナーゼは、すべての後生動物の細胞周期の制御と関係があるという、一般的見解が支持される。NIMAと構造的に関係があるプロテインキナーゼは、少なくとも7種の哺乳動物の「Nek」を含めて、幾つかの門から単離されてきている(例えば、Nigg、Nature Reviews、2:21〜32(2001)を参照のこと)。しかしながら、これらのNekの中で、NIMAの真の機能的相同体として、すなわち有糸分裂の進行に必要なものとして現れたものはなく、あるいは過剰発現された場合にクロマチン凝縮を誘導することができるものは存在しない。Nekは、それらの触媒ドメインの配列がNIMAと最も密接に関連があるが、それらの非触媒カルボキシ末端尾部はNIMAとは実質的に異なる。このことは、NIMAの突然変異を補う能力を有する、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)のNIMA関連キナーゼにも当てはまる(Pu他、J.Biol.Chem.、270:18110〜18116(1995))。NIMAと全体的なアミノ酸配列が大部分類似している、哺乳動物の相同体であるNek2は、中心体の構造および機能の調節に関与するが(Mayor他、FEBS Lett.、452:92〜95(1999))、有糸分裂の他の態様には関与しないと思われる。他のNekの機能は大部分が知られていないが、Nek6、および密接に関連があるNek7、このファミリーへ最近加わった哺乳動物性のもの(Kandli他、Genomics、68:187〜196(2000))は、疎水性モチーフ内のThr412上の、プロテインキナーゼであるp70S6キナーゼをリン酸化することが示されており、このリン酸化は、活性化ループ中のThr252のPDK1触媒のリン酸化と共に、p70S6キナーゼの活性化を介在する(Belham他、Curr.Biol., 11:1155〜1167(2001))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の考察から、NIMAキナーゼまたはNIMA様キナーゼは、有糸分裂に進行しそれを終える際に、重要な役割を果たすことができることが明らかに示される。したがって、このようなキナーゼは、抑制されない、あるいは異常な有糸分裂プロセスを特徴とする、癌、微生物感染、および他の症状を治療するための抗増殖剤を開発するための、魅力的な分子標的となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、真核細胞の有糸分裂の進行を調節するキナーゼのカスケードに関与する、1つまたは複数のNIMA様キナーゼ、特にNercc1キナーゼ、Nek6キナーゼ、およびNek7キナーゼ(Nek6の相同体)の活性を特異的に阻害する能力に基づいて、有糸分裂を阻害または妨害する能力に関して化合物をスクリーニングする方法を提供する。Nercc1キナーゼは、NIMA様プロテインキナーゼ(本明細書では、「Nerccキナーゼ」、「Nercc1」、「Nercc」、「Nek9」とも呼ぶ)であり、Nercc1キナーゼは、細胞が有糸分裂に入りそれを維持するのに重要なステップにおいて、タンパク質上の1つまたは複数の特異的リン酸化部位で、Nek6および/またはNek7をリン酸化することによって、Nek6および/またはその相同体であるNek7を活性化する。Nercc1キナーゼは、自己リン酸化によって自己活性化することもできる。活性化(すなわちリン酸化)型のNek6およびNek7は、次に、真核細胞の有糸分裂の進行をシグナリングするカスケードにおいて、他の標的をリン酸化する。したがって、Nercc1、Nek6、またはNek7活性を阻害する化合物は、有糸分裂を調節および維持する際の重要なステップを阻害することとなる。このような化合物は、癌および/または真核微生物感染(例えば、真菌、寄生原生動物、寄生ぜん虫による)などの、制御不能な有糸分裂の進行の症状の治療において使用するための候補である。
【0011】
本発明は、細胞の有糸分裂進行への移行および維持において重要な役割を担うNercc1キナーゼ、Nek6、またはNek7を阻害する能力に基づいて、試験化合物が有糸分裂の阻害剤(すなわち抗有糸分裂化合物)であるか否かを判定するために使用することができる、組成物および方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、有糸分裂の阻害剤である化合物を同定する方法であって、
(a)プリンヌクレオシド三リン酸、Nercc1キナーゼタンパク質、およびキナーゼ基質を含むキナーゼ反応混合物を提供すること、
(b)前記キナーゼ反応混合物を試験化合物の存在下および不在下で、Nercc1キナーゼタンパク質が前記キナーゼ基質をリン酸化するのに十分な時間インキュベートすること、および
(c)前記試験化合物の存在下および不在下で、生成したリン酸化キナーゼ基質のレベルを検出することを含み、
前記試験化合物の不在下で生じたレベルと比較して、前記試験化合物の存在下で生じたリン酸化キナーゼ基質のレベルが低いことにより、前記試験化合物が有糸分裂の阻害剤であることが示される方法を提供する。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、有糸分裂の阻害剤である試験化合物を同定する方法であって、
(a)活性化Nek6またはNek7キナーゼタンパク質、キナーゼ基質、およびプリンヌクレオシド三リン酸を含む、キナーゼ反応混合物を提供すること、
(b)前記反応混合物を試験化合物の存在下および不在下で、活性化Nek6またはNek7キナーゼタンパク質が前記キナーゼ基質をリン酸化するのに十分な時間インキュベートすること、および
(c)前記試験化合物の存在下および不在下で、リン酸化キナーゼ基質のレベルを検出することを含み、
前記試験化合物の不在下で生じたレベルと比較して、前記試験化合物の存在下で生じたリン酸化キナーゼ基質のレベルが低いことにより、前記試験化合物が有糸分裂の阻害剤であることが示される方法を提供する。
【0014】
さまざまなNercc1キナーゼ、Nek6、およびNek7キナーゼタンパク質を、本発明で使用することができる。このようなキナーゼタンパク質は、生物学的供給源から単離することができるか、組換え法によって作製することができるか、あるいは組換え法と合成法の組み合わせによって作製することができる。本発明で有用なキナーゼタンパク質は、恒久的に活性化された野生型キナーゼの突然変異体も含む。例えば、Nercc(Δ347-732)キナーゼタンパク質などの、本発明で有用な特に好ましいNercc1キナーゼの突然変異体は、Nerccの全部のRCC1自己阻害ドメインを欠いている。このようなRCC1欠失Nercc変異体タンパク質は、恒久的に(構成的に)活性であり、したがって、野生型Nercc1キナーゼと同様に、活性化のためのリン酸化を経ることを必要とせずに、完全に機能的なNercc1キナーゼ活性を付与する。本発明で有用なプロテインキナーゼのタンパク質は、Nercc1、Nek6および/またはNek7タンパク質の全体または一部分を含む、さまざまな融合タンパク質も含む。特に好ましいのは、Nercc1、Nek6、またはNek7キナーゼポリペプチド、およびFLAG、HA(ヘマグルチニンタグ)、myc(c-mycタグ)、およびこれらの組み合わせだけには限られないが、これらを含めた任意のさまざまなエピトープペプチド(エピトープタグ)を含む融合タンパク質であり、これらは、標準的な方法および組成物によって、例えば容易に入手可能なタグ特異的抗体または親和性樹脂を使用することによって、容易に検出または標識されるアミノ酸配列(タグ)を融合タンパク質に付与する。本発明で有用な特に好ましい自己活性化融合タンパク質は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)と融合した、Nercc1またはその触媒活性部分を含む。GST融合タンパク質は、グルタチオン付加樹脂を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより、混合物から好都合に単離される。
【0015】
本発明の組成物および方法で有用な、Nercc1、Nek6、またはNek7キナーゼ介在のリン酸化用のキナーゼ基質は、使用する特定のキナーゼタンパク質によってリン酸化を受けやすいドメインを含む、任意のポリペプチドであってよい。Nercc1キナーゼは自己リン酸化することができるので、本発明の方法で使用するNercc1キナーゼタンパク質は、本明細書に記載する方法では、活性化(リン酸化)または非活性化(非リン酸化)として最初に提供することができる。自己リン酸化および自己活性化する能力によって、本発明の方法でNercc1キナーゼタンパク質とキナーゼ基質の両方として使用する、非活性化のNercc1キナーゼタンパク質の使用も可能になる。本発明で有用な好ましいキナーゼ基質には、非制限的に、非活性化のNercc1キナーゼタンパク質、非活性化のNek6、非活性化のNek7、ヒストン(例えばヒストンH3、ヒストンH4)、カゼイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、Cdc16、または任意のこれらのタンパク質を含む融合タンパク質がある。Cdc16が、Nek6およびNek7のキナーゼ基質として特に好ましい。本発明の方法でキナーゼ基質として有用な融合タンパク質は、リン酸化型で容易に単離、標識、および/または検出されることが好ましい。例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、およびNek6(GSTNek6)またはNek7(GSTNek7)を含む、組換え融合タンパク質は、Nercc1キナーゼ介在のリン酸化用の好ましい基質である。
【0016】
本発明は、本明細書に記載するNIMA様プロテインキナーゼのキナーゼ活性を阻害する化合物の能力に基づいて、有糸分裂を阻害する能力に関して化合物を試験するために使用することができる、反応混合物も提供する。本発明の好ましい反応混合物は、プリンヌクレオシド三リン酸、本明細書に記載するNIMA様プロテインキナーゼ、およびキナーゼ基質を含む。本発明の反応混合物において有用な、NIMA様プロテインキナーゼは活性化されるか、あるいはこれを活性化させて、キナーゼ基質をリン酸化するキナーゼ活性を付与することができる。本発明の反応混合物において有用な、NIMA様プロテインキナーゼには、Nercc1キナーゼ;Nek6キナーゼ;Nek7キナーゼ;Nercc1、Nek6、またはNek7を含む融合タンパク質;Nercc1、Nek6、またはNek7を含む突然変異体;およびこれらの組み合わせだけには限られないが、これらが含まれる。ただし、このようなNIMA様プロテインキナーゼは活性化されるか、あるいはこれを活性化させて、反応混合物のキナーゼ基質をリン酸化するキナーゼ活性を付与することができるものとする。本発明の反応混合物において有用な、好ましいキナーゼ基質は、非リン酸化(非活性化の)NIMA様プロテインキナーゼ(例えば、非活性化のNercc1、Nek6、またはNek7タンパク質)、ヒストン(例えばヒストンH3、ヒストンH4)、カゼイン、ミエリン結合タンパク質(MBP)、およびこれらの組み合わせである。野生型Nercc1は自己リン酸化によって自己活性化することができるので、非活性化のNercc1を、本発明の反応混合物において、NIMA様プロテインキナーゼとキナーゼ基質の両方として使用することができる。
【0017】
本発明の組成物および方法において有用な、プリンヌクレオシド三リン酸は、アデノシン三リン酸(ATP)またはグアノシン三リン酸(GTP)であることが好ましい。GTPを使用することによって、追加的な特異性がNercc1キナーゼ反応に与えられる。なぜなら、さまざまな生物学的サンプルを害する可能性がある、大部分の他のキナーゼは、GTPを利用してタンパク質基質をリン酸化することができないからである。二価マグネシウムカチオンまたは二価マンガンカチオンなどの、金属カチオン(対イオン)は、本発明のすべてのin vitroでのリン酸化反応に必要とされる。二価マグネシウムカチオンは、本明細書に記載する方法および組成物の特に好ましい金属対イオンである。
【0018】
Nercc1またはNek6/7キナーゼ活性のリン酸化キナーゼ基質(すなわち、リン酸化キナーゼ反応産物)は、リン酸化タンパク質を検出するために利用可能なさまざまな手段のいずれかを使用して検出することができる。Nercc、Nek6、またはNek7をキナーゼ基質として使用する場合、これらのタンパク質のリン酸化形態を、標準的な酵素反応における高いキナーゼ活性によって決定することができる。好ましい検出手段は、リン酸化型の特定のキナーゼ基質と特異的に結合する抗体、例えばキナーゼ活性化と関係がある特定のリン酸化部位、例えばNek6タンパク質の活性化ループ中のセリン206(Ser206)、またはNek7タンパク質の活性化ループ中のSer195においてリン酸化された、Nek6またはその一部分に特異的な抗体などを使用することである。リン酸化キナーゼ基質と特異的に結合する抗体によって、当技術分野で利用可能な任意のさまざまな免疫検出システムの使用が可能になる。あるいは、リン酸化キナーゼ基質は、放射標識リン酸同位体(32P)などの検出可能な標識、またはリン酸化産物の検出システムの要素、あるいはリン酸化中にキナーゼ基質に移される非放射活性の、検出可能な基でリン酸基を標識した、プリンヌクレオシド三リン酸を使用することによって直接検出することができる。
【0019】
本発明の反応混合物中の、NIMA様プロテインキナーゼの活性の阻害に基づいて有糸分裂の阻害剤(すなわち「抗有糸分裂化合物」)として同定された化合物は、細胞の有糸分裂を停止させる能力に関して、有糸分裂を経る培養物の細胞中と同様にin vitroで、あるいは腫瘍および他の癌の動物モデルなどの動物モデルにおいて、in vivoでさらに試験することができる。特に好ましいのは、分裂(有糸分裂)細胞を化合物と接触させ、細胞DNAおよび/または微小管に対する幾つかの影響に関してアッセイする他のステップである。例えば、このような他の試験としては、所望の化合物が紡錘体(有糸分裂微小管)の破壊、標準的な染色法によって明らかな染色体の配置の乱れ、またはアポトーシスの促進を引き起こすか否かを判定することを挙げることができる。
【0020】
本発明の方法の1つまたは複数のステップは、個別の試験管、マイクロタイタープレートのウエル、およびバイオチップ上を含めた、キナーゼ反応をアッセイするために使用する任意のさまざまな形式で行うことができ、これによって、数百または数千の化合物さえも、同時にNerccおよび/またはNek6/7キナーゼ反応を阻害する能力に関して、試験することが可能である。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、細胞中の癌状態または癌の可能性がある状態を診断する方法であって、Nercc1キナーゼ、Nek6、および/またはNek7タンパク質発現のレベル、または対応するキナーゼ活性のレベルの、異常な上昇を検出することに基づく方法を提供する。このような分析用の細胞は、組織生検、血液、塗抹標本、組織スワブ、および他の体液サンプルだけには限られないが、これらを含めた任意のさまざまな供給源から得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、真核細胞の有糸分裂の調節と関係があるキナーゼタンパク質の、特異的カスケードを見出したことに基づく。特に、NIMA様キナーゼNercc1キナーゼ、Nek6、およびその相同体であるNek7キナーゼは、真核細胞が有糸分裂に入りかつ/または維持されるシグナリングするキナーゼのカスケードにおいて重要な役割を果たす。本発明によれば、Nercc1キナーゼ(本明細書では、「Nercc1」、「Nerccキナーゼ」、「Nercc」、Nek9とも呼ぶ)は、Nek6およびNek7タンパク質を、特定のプロリンリッチな(proline-rich)、セリン/スレオニンリン酸化部位(「S/TP部位」)において、これらのタンパク質をリン酸化することによって活性化する。次に、活性化Nek6またはNek7タンパク質は、カスケードの次のメンバーをリン酸化して、真核細胞の有糸分裂進行への移行または維持を指令する。Nek6およびNek7と同様に、Nercc1キナーゼも、1つまたは複数の特異的S/TP部位でリン酸化されて活性なキナーゼにならなければならないが、しかしながらこれらとは異なり、Nercc1は自己リン酸化を行って、自己活性化することもできる。本明細書に記載するのは、真核細胞の有糸分裂の進行に重要な、1つまたは複数のこれらのNIMA様キナーゼを特異的に阻害することによって、有糸分裂を阻害する化合物用の組成物および方法である。
【0023】
真核細胞による望ましくない有糸分裂進行への移行および/または維持は、大部分の癌、特に攻撃的な悪性および/または転移性腫瘍に特徴的である。したがって、特定のキナーゼなどの特定の分子標的に作用することによって、有糸分裂を阻害または中断する新しい有糸分裂の阻害剤(すなわち「抗有糸分裂化合物」)を同定する能力は、望ましくない有糸分裂進行によって特徴付けられる癌および他の状態を治療するための、新しい物質として非常に望ましい。したがって、抗有糸分裂化合物を使用して、さまざまな微生物感染を治療することもできる。例えば、真菌感染などの真核微生物感染を、予防的あるいは療法的に治療するために、新しい抗有糸分裂化合物が非常に求められており、これらの感染は、わずかではあるが持続的な表面(例えば爪、皮膚)感染から、HIV感染患者および化学療法を受ける患者などの免疫無防備状態の個体の場合と同様に、生命を脅かす疾患(例えば、肺、心臓、内皮組織の感染)の範囲にまで及ぶ可能性がある。
【0024】
本発明をより十分に理解できるようにするために、以下の用語を定義する。
【0025】
本明細書で使用し理解されるように、「抗体」または「抗体分子」は、自然に、合成的に、あるいは半合成的に作製されたものであれ、タンパク質分子またはその一部分、あるいは任意の他の分子である特異的な結合メンバーを指し、免疫グロブリン可変軽鎖領域またはドメイン(VL)、またはその一部分、および/または免疫グロブリン可変重鎖領域またはドメイン(VH)、またはその一部分によって形成された、抗原結合ドメインを有する。用語「抗体」は、免疫グロブリンの抗原結合ドメインと同一、あるいは相同である、抗原結合ドメインを有する、任意のポリペプチドまたはタンパク質分子も含む。抗体は、「ポリクローナル」、すなわち抗原上の異なる部位と結合する抗原結合分子の集団、または「モノクローナル」、すなわち抗原上のただ一つの部位と結合する抗原結合分子の集団であってよい。抗体分子の例には、本明細書で使用し理解されるように、任意のよく知られているクラスの免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)およびそれらのアイソタイプ; 抗原結合ドメインを含む免疫グロブリンのフラグメント、FabまたはF(ab')2分子など;一本鎖抗体(scFv)分子;二本鎖scFv分子;1ドメイン抗体(dAb)分子;Fd分子;および二重特異性抗体(diabody)分子がある。二重特異性抗体は、2つの二重特異性抗体モノマーの会合によって形成され、これが二量体を形成し、この二量体は、それぞれの結合ドメイン自体が、それぞれの2つのモノマーの領域の分子間会合によって形成される、2つの完全な抗原結合ドメインを含む(例えば、Holliger他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993)を参照のこと)。リン酸化型のポリペプチドまたはタンパク質と特異的に結合する抗体(すなわち「リン酸特異的抗体」)は、標準的な方法により、例えばキーホールリンペットヘモシアニンなどの担体タンパク質と結合した合成ホスホペプチドでウサギを免疫処置することによって、容易に生成することができる(例えば、Weng他、J.Biol.Chem.、273:16621〜16629(1998)を参照のこと)。抗体は、当技術分野でよく知られており、かつ/あるいは市販のさまざまな方法および形式で使用することができる。このような方法および形式には、本明細書に記載したものが含まれ、免疫ブロッティング(例えばウエスタンブロッティング)、免疫沈降、蛍光抗体細胞選別(FACS)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、抗体の細胞へのマイクロインジェクション、アフィニティークロマトグラフィー、および抗体細胞表面標識法が挙げられるが、これらだけには限られない。このような方法および形式は、手動式に、半自動式に、あるいはほぼ自動式に(ロボットによって)行うことができる。したがって、1個、数個、または多数個(例えば、数十個、数百個、あるいはさらに数千個)のサンプルを、このような抗体系の方法および形式によって、効率よく処理することができる。
【0026】
本明細書で使用する「有糸分裂」とは、当技術分野で一般的に知られているように、染色体を娘細胞に均等に分配する、細胞の複雑なプロセスである。一般的に認められている有糸分裂の期は、前期、中期、後期および終期であり、別々の娘細胞への分離(細胞質分裂)を含む。細胞の制御不能な有糸分裂の進行は、癌に特徴的であり、「良性」および「悪性」として古典的に分類されている腫瘍を含めた、あらゆる腫瘍の形成に基づくものである。
【0027】
用語「リン酸化」とは、当技術分野で知られている意味を有するものであり、すなわち、この用語は、ドナー分子からのリン酸基がアクセプター分子に転移する、リン酸の転移を指す。本発明で有用な好ましいリン酸ドナー分子としては、アデノシン三リン酸(ATP)およびグアノシン三リン酸(GTP)が含まれる。アクセプター分子のリン酸化を介在する酵素は、キナーゼと呼ばれる。Nercc1キナーゼは、特定のポリペプチド基質のリン酸化を介在することができるキナーゼである。1つのキナーゼのタンパク質基質自体がキナーゼであってよく、これはリン酸化によって活性化になる。例えば、不活性な型のNek6およびNek7キナーゼは、Nercc1キナーゼによりタンパク質中の特定のセリンまたはスレオニンリン酸化部位(「S/TP部位」)において、リン酸化によって「活性化」される。Nercc1キナーゼも、1つまたは複数の特異的S/TP部位でリン酸化されて活性にならなければならないが、しかしながらNercc1キナーゼは、タンパク質中のこのような重要な部位で、「自己リン酸化」を行って、活性になることができる(すなわち自己活性化)。本明細書に記載するように、このようなNercc1キナーゼの自己リン酸化は、非活性化の(非リン酸化)Nercc1キナーゼ、およびプリンヌクレオシド三リン酸、例えばATPまたはGTPを含む反応混合物中において、in vitroで容易に起こる。
【0028】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、ペプチド結合によって連結した、2つ以上のアミノ酸残基の直鎖ポリマーを含む。用語「ペプチド」を本明細書で使用して、比較的短いポリペプチド、特に20以下のアミノ酸を有するポリペプチドを指す。「タンパク質」とは、1つの「ポリペプチド」または「ペプチド」と同義であってよく、あるいは二量体または他の多量体タンパク質と同様に、2つ以上の「ポリペプチド」または「ペプチド」を含むことができる。例えば、活性なNercc1キナーゼタンパク質は、典型的には二量体タンパク質である。ポリペプチドのアミノ酸およびアミノ酸配列は、標準的な一文字または三文字の略語を使用して表すことができる。
【0029】
「組換え」とは、核酸または他の生物学的分子が、in vitroでの少なくとも1つのステップにおいて、酵素によって、化学的に、あるいは生物学的に切断、合成、組み合わせ、あるいは操作されて、細胞内または他の生物学的系内で所望の産物を生成する方法、試薬、および実験操作の結果を指す。例えば、特定のポリヌクレオチドを、プラスミドベクターなどの適切なベクター中に挿入することができ、得られた「組換え」プラスミドを使用して適切な宿主細胞を形質転換して、組換えプラスミドベクター中の特定のポリヌクレオチドによってコードされた「組換え」タンパク質を生成させる。形質転換宿主細胞(「組換え細胞」)は、細菌、酵母菌、昆虫、および哺乳動物細胞だけには限られないが、これらを含めた原核細胞または真核細胞とすることができる。したがって、「組換えDNA」は、このような技法によって生成されるDNA分子を指し、「組換え宿主細胞」は、組換え核酸分子、典型的には組換えプラスミドまたは他の発現ベクターを含む細胞を指す。組換え宿主細胞は、組換え細胞中に存在する組換え核酸分子上にコードされた、1つまたは複数の遺伝子産物を発現することができる。「組換え」タンパク質は、そのタンパク質をコードする組換え核酸から発現されるタンパク質である。
【0030】
「天然に存在する」とは、ヒトの介入なしで自然に存在する、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、またはタンパク質などの任意の物質を指す。天然に存在する物質がヒトの介入によって生成される場合、その生成する物質は、「合成」または「組換え」と呼ばれる。
【0031】
配列アラインメントのデータベースを参照して、本明細書で使用する「同一性」は、2つのポリマー分子、例えば2つのペプチドまたは2つの核酸分子間の、サブユニット配列の類似性を指す。2つの分子の両方のサブユニット位置が、同じモノマーサブユニットによって占められているとき、例えば2つのペプチドそれぞれの位置が、同じアミノ酸によって占められている場合、それらは、その位置で同一である。2つの配列間の同一性は、整合性があるかまたは同一な位置の数の直接的な関数である。例えば、2つのペプチドまたは化合物の配列中の対応する位置の半分が同一である場合は、その2つの配列は50%同一であり;位置の90%、例えば10個の中の9個が整合する場合、その2つの配列は、90%の配列同一性を共有する。
【0032】
さまざまなコンピュータプログラムおよびデータベースが、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を比較および分析するために、当技術分野で現在利用可能である。
【0033】
同一性パーセントは、ヌクレオチドまたはアミノ酸の任意の配列に関して、例えば、Devereux他(Nucl.Acids Res.、12:387(1984))によって記載され、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能であるGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を使用して配列情報を比較することによって、決定することができる。GAPプログラムは、SmithおよびWaterman(Adv.Appl.Math.、2:482(1981))によって改訂された、NeedlemanおよびWunschのアラインメント法(J.Mol.Biol.、48:443(1970))を使用する。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメータは、(1)ヌクレオチドに関する比較マトリクス(同一性について1、および非同一性について0という値を含む)、ならびにSchwartzおよびDayhoff(Atlas of Protein Sequence and Structure、Schwartz and Dayhoff、eds.、National Biomedical Research Foundation、pp.353〜358(1979)中)によって記載された、GribskovおよびBurgess(Nucl.Acids Res.、14:6745(1986))の重み付けした比較マトリクス;(2)それぞれのギャップに関する3.0というペナルティー、およびそれぞれのギャップにおけるそれぞれのシンボルの、追加の0.10ペナルティーおよび;(3)エンドギャップについてはペナルティーなし、を含むことができる。
【0034】
2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムを使用して、例えばBlossom62マトリクスまたはPAM250マトリクス、および16、14、12、10、8、6、または4というギャップの重み付け、および1、2、3、4、5、または6という長さの重み付けを使用して、決定することができる。さらに他の例では、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリクス、および40、50、60、70、または80というギャップの重み付け、1、2、3、4、5、または6という長さの重み付けを使用して決定することができる。
【0035】
他の例では、本発明の核酸およびタンパク質配列を、「クエリー配列」としてさらに使用して、公のデータベースに対する検索を行い、例えば他のファミリーのメンバーまたは関連配列を同定することができる。このような検索は、Altschul他(J.Mol.Biol.、215:403〜410(1990))の、NBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長(wordlength)=12を用いて行い、本発明の特定の核酸分子と相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、例えばXBLASTプログラム、スコア=50、語長=3を用いて行い、本発明の特定のタンパク質分子と相同的な、アミノ酸配列を得ることができる。比較目的のギャップアラインメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul他、Nucleic Acids Res.、25(17):3389〜3402(1997)中に記載されたのと同様に使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用するとき、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えばXBLASTおよびNBLAST)を、使用することができる(www.ncbi.nlm.nih.govで与えられるのと同様)。
【0036】
本明細書で使用する用語「相同性」とは、タンパク質および/または核酸配列間の比較を指し、当技術分野で知られている任意のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムを使用して評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムには、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、およびCLUSTAL Wが挙げられるが、決してこれらに限られるわけではない(例えば、PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85(8):2444〜2448(1988);Altschul他、J.Mol.Biol.、215(3):403〜410(1990);Thompson他、Nucleic Acids Res.、22(2):4673〜4680(1994);Higgins他、Methods Enzymol.、266:383〜402(1996);Altschul他、J.Mol.Biol.、215(3):403〜410(1990);Altschul他、Nature Genetics、3:266〜272(1993)を参照のこと)。
【0037】
本発明の範囲内にあるタンパク質、ポリペプチド、およびペプチド相同体は、本明細書で開示するNercc1と、約70%、好ましくは約80%、およびより好ましくは約90%以上(約95%、約97%、またはさらに約99%以上を含む)相同的であろう。本発明の範囲内にあるポリヌクレオチド相同体は、本明細書で開示するNercc1キナーゼをコードする本明細書に記載したヌクレオチド配列と、約60%、好ましくは約70%、より好ましくは約80%、およびさらにより好ましくは約90%以上(約95%、約97%、またはさらに約99%以上を含む)相同的であろう。
【0038】
他の用語の意味は、それらを本文中で使用するので明らかであろう。
【0039】
Nercc1、Nek6、およびNek7キナーゼ
本発明で有用なNercc1キナーゼは、本明細書に記載または例示した、野生型Nercc1キナーゼタンパク質(例えば、アミノ酸配列を有するもの)、酵素活性があるNercc1キナーゼの突然変異体、およびNercc1キナーゼの全体または一部分を含む、酵素活性がある融合タンパク質だけには限られないが、これらを含めた、機能的Nercc1キナーゼ活性を付与する任意の分子である。
【0040】
野生型Nercc1キナーゼは、キナーゼを活性化して最終的に細胞を有糸分裂に移行させるようにシグナリングするリン酸化ステップの段階的カスケードにおいて、Nek6およびNek7を特異的にリン酸化する、NIMA様キナーゼ(Nek9とも呼ばれる)である。Nercc1は、ATPまたはGTPなどのヌクレオシド三リン酸の存在下でのインキュベーションによって、標準的なキナーゼ反応条件下、例えばマグネシウムまたはマンガンカチオンの存在下、pH7.0の緩衝液、25〜28℃で自己活性化(自己リン酸化)することもできる。
【0041】
野生型Nercc1キナーゼタンパク質をコードするヒトcDNA配列は、配列番号1のヌクレオチド配列、および対応する推定の配列番号2の979アミノ酸配列を有する(Nercc1の配列データは、Genbankアクセッション番号AY080896でも入手可能である)。そのヌクレオチド配列は、14q24.3にマッピングする領域中のヒト染色体14上で、約45キロ塩基対(kbp)の領域で広がる23のエクソンを含む。
【0042】
本明細書に記載した組成物および方法で有用なヒトNek6タンパク質は、配列番号3のヌクレオチド配列によってコードされており、配列番号4のアミノ酸配列を有する。本明細書に記載した組成物および方法で有用なヒトNek7タンパク質は、配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされており、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0043】
野生型Nercc1、Nek6およびNek7タンパク質以外にも、これらの野生型キナーゼタンパク質のさまざまな融合タンパク質および突然変異体が本発明の組成物および方法で有用であり、利用可能なヌクレオチドコーディング、および対応するアミノ酸配列、および当技術分野で知られている標準的な方法(例えば組換えまたは合成法)を使用して、容易に調製することができる。したがって、本発明の核酸分子は、Nercc1、Nek6、またはNek7コード配列(それぞれ配列番号1、3、5)、および1つまたは複数の他のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の全体または一部分を含むこともできる。
【0044】
本明細書に記載した核酸分子は、合成DNAおよびcDNA、またはリボ核酸(RNA)を含めた、デオキシリボ核酸(DNA)の形であってよい。DNA分子は、二本鎖または一本鎖であってよく、一本鎖である場合、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であってよい。Nercc1、Nek6、またはNek7ポリペプチドのコード配列を知られている方法で操作するかあるいは改変させて、遺伝コードの冗長または縮重の結果として同じポリペプチドをコードする、他のコード配列を生成することができる。Nercc1、Nek6、およびNek7タンパク質のヌクレオチドコード配列を含むDNA分子を、標準的な方法によって1つまたは複数のヌクレオチドで改変して、本明細書に記載する突然変異体の形態および融合タンパク質を生成することもできる。したがって、本明細書または他の箇所に記載する、Nercc1、Nek6、およびNek7タンパク質のヌクレオチドコード配列は、本発明の方法および組成物において有用である、野生型の形態のこれらのタンパク質、またはその突然変異体を容易に生成するための手段を与え、これは例えば、当技術分野で利用可能な組換えDNA技法、部位特異的突然変異誘発、および/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用することによる。さらに、このような方法は、当技術分野で知られている任意のさまざまな核酸ベクター分子を使用して、本明細書に記載する組換えタンパク質を発現させることができる。本発明の方法において有用な核酸ベクター分子には、プラスミド、バクテリオファージベクター、哺乳動物ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、小染色体、トランスジェニックベクター、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらだけには限られない。
【0045】
クローン化cDNAによってコードされている、完全長Nercc1プロテインキナーゼは、979アミノ酸長であり(配列番号2を参照)、図1に図式的に示され以下に列挙する幾つかの非常に明確なドメインを含む:
配列番号2のアミノ酸52〜309(図1中の「プロテインキナーゼ」)における、Nercc1キナーゼ触媒ドメイン、これは基質のNercc介在のリン酸化に必要とされる;
2つの古典的な局在モチーフ:配列番号2のアミノ酸306〜313におけるアミノ酸配列PLLRKRRR、および配列番号2のアミノ酸325〜330におけるアミノ酸配列PTKRPRを含む、核局在化シグナル(図1中の「NLS」);
配列番号2のアミノ酸347〜726における、RCC1自己阻害ドメイン(図1中の「RCC1」);
配列番号2のアミノ酸752〜760における、グリシンリッチ領域(図1中の「Gly」);
配列番号2のアミノ酸823〜830および配列番号2の881〜888に、プロリンリッチドメイン(「PXXP」領域)を含む、推定SH3ドメイン結合モチーフ(図1中の「PXXP」領域を参照);および
配列番号2のアミノ酸891〜940における「コイルドコイル」ドメイン(図1中の「コイルドコイル(ホモ二量体化)」を参照)、これはホモ二量体、おそらくさらに大きいオリゴマーの形態のNercc1キナーゼの形成に使用される。
【0046】
RCC1ドメインは、Nercc1キナーゼの自己阻害ドメインとして機能する。ATPなどのヌクレオシド三リン酸、およびマグネシウムまたはマンガンカチオンなどの二価金属カチオンの存在下において、Nercc1キナーゼの分子は、自己リン酸化によって自己活性化することができる。任意の特定の理論または機構に制約を受けるものではないが、Nerccモノマータンパク質分子は、モノマーの「コイルドコイル」ドメイン間の非共有結合によって、二量体またはさらに大きい多量体として会合し、したがって、ヌクレオシド三リン酸、および標準的なキナーゼ反応条件の存在下において、多量体の1つのモノマーは、多量体中の他の会合したモノマーをリン酸化することができると思われる。RCC1自己阻害ドメインを欠いた、野生型Nerccの突然変異体を本明細書に記載する。このようなRCC1欠失変異体は、恒久的に(構成的に)活性化され、完全に機能的なNerccキナーゼである。
【0047】
コイルドコイル領域は、Nerccを活性させるのに必要である。したがって、Nerccは、少なくとも機能的キナーゼ活性用のホモ二量体の形態でなければならないと思われる。
【0048】
Nercc1キナーゼ、Nek6、および/またはNek7タンパク質を含む、本発明の組成物および方法は、精製した野生型、または組換えによって発現した形態のこのようなタンパク質を使用することに限られない。本発明において用途を見出すことができる、さまざまなNercc1キナーゼ、Nek6、およびNek7タンパク質を本明細書に記載する。例えば、上記のように、特に有用な野生型Nercc1キナーゼの突然変異体は、RCC1自己阻害ドメインを欠く欠失突然変異体タンパク質、例えば突然変異体「Nercc(Δ347-308)」キナーゼタンパク質である。このようなRCC1欠失突然変異体は恒久的に活性化され、他の場合は完全に機能的なNercc1キナーゼ活性を付与する。したがって、野生型Nercc1のRCC1欠失変異体は、Nercc1キナーゼ活性の活性化のために、ヌクレオシド三リン酸とのプレインキュベーションを必要としない。検出アッセイにおいてNercc融合タンパク質を単離または検出するための好都合な手段を与える、他のタンパク質またはペプチドと連結した機能的Nercc1キナーゼを含む、融合タンパク質も本発明において有用である。このようなNercc融合タンパク質の例には、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合体、およびエピトープタグ融合タンパク質があるが、これらだけには限られない。本発明の融合タンパク質を作製するための、特に好ましいエピトープタグには、非制限的に、FLAG、HA(ヘマグルチニン)、myc、およびこれらの組み合わせなどの、このようなよく知られているタグが挙げられる。Nercc、Nek6、およびNek7のヌクレオチドコード配列を含むDNA分子の利用可能性によって、GSTタンパク質またはエピトープタグペプチドと連結した、Nercc1、Nek6、および/またはNek7キナーゼタンパク質または突然変異体を含む融合タンパク質が、当技術分野で知られている標準的な組換え法によって容易に調製され、あるいは市販のキットを使用して調製される。
【0049】
NIMA様キナーゼ活性に影響を与える有糸分裂の阻害剤を同定する方法
本発明は、有糸分裂と関係がある本明細書に記載する1つまたは複数のNIMA様キナーゼ(すなわちNercc1キナーゼ、Nek6、およびNek7)の活性を阻害する能力に基づいて有糸分裂を阻害する試験化合物(すなわち抗有糸分裂化合物)を同定するために使用することができる、組成物および方法を提供する。これらのキナーゼは、正常な真核細胞の有糸分裂への移行およびその維持に重要なので、これらのキナーゼの1つの活性を阻害する化合物は、真核細胞、例えばさまざまな癌細胞および/または真核微生物病原体による調節不能、または他の場合は望ましくない有糸分裂進行を阻害すると予想される。
【0050】
本発明によれば、有糸分裂の阻害剤である化合物を同定する方法の一例は、
(a)プリンヌクレオシド三リン酸、Nercc1キナーゼタンパク質、およびキナーゼ基質を含む、キナーゼ反応混合物を提供するステップ、
(b)前記キナーゼ反応混合物を試験化合物の存在下および不在下で、Nercc1キナーゼタンパク質がキナーゼ基質をリン酸化するのに十分な時間インキュベートするステップ、および
(c)試験化合物の存在下および不在下で生成した、リン酸化キナーゼ基質のレベルを検出するステップを含むことができ、
試験化合物の不在下で生じたレベルと比較して、試験化合物の存在下で生じたリン酸化キナーゼ基質のレベルが低いことにより、試験化合物が有糸分裂の阻害剤であることが示される。
【0051】
有糸分裂の阻害剤を同定するための本発明の方法の他の例は:
(a)活性化Nek6またはNek7キナーゼタンパク質、キナーゼ基質、およびプリンヌクレオシド三リン酸を含む、キナーゼ反応混合物を提供すること、
(b)前記反応混合物を試験化合物の存在下および不在下で、活性化Nek6またはNek7キナーゼタンパク質が前記キナーゼ基質をリン酸化するのに十分な時間インキュベートすること、および
(c)前記試験化合物の存在下および不在下で、リン酸化キナーゼ基質のレベルを検出することを含むことができ、
試験化合物の不在下で生じたレベルと比較して、試験化合物の存在下で生じたリン酸化キナーゼ基質のレベルが低いことにより、試験化合物が有糸分裂の阻害剤であることが示される。
【0052】
本明細書に記載する、任意のさまざまなNercc1キナーゼタンパク質(すなわち、完全長Nerccまたはその突然変異誘導体)を、本発明の方法で使用することができる。本発明の方法において有用な、すべてのNercc1キナーゼタンパク質は、活性化されるか、または例えば自己リン酸化によって活性化にならなければならず、あるいは例えば、NerccRCC1自己阻害ドメインが欠失した、上記の突然変異体Nercc(Δ347-732)タンパク質と同様に、恒久的に活性化されなければならない。
【0053】
Nek6およびNek7は、Nercc1キナーゼのin vivo基質である(例えば以下の実施例12を参照のこと)。しかしながら、活性化Nercc1キナーゼ、Nek6、およびNek7タンパク質はリン酸基を、in vitroのキナーゼ反応条件下においてドナー分子(例えばヌクレオシド三リン酸)から、任意のさまざまなアクセプター分子に転移させるだろう。幾つかのこのようなin vitroキナーゼ基質が当技術分野で知られており、ヒストンタンパク質(例えばヒストンH3、ヒストンH4)、カゼイン、Cdc16、p70S6K、およびミエリン塩基性タンパク質(MBP)が挙げられるが、これらだけには限られない。Cdc16が、Nek6およびNek7の基質キナーゼとして特に好ましい。本発明において有用なキナーゼ基質は、標準的なタンパク質精製スキームおよび/または組換えDNA技術を含めた、標準的な方法によって容易に調製することができ、あるいは本発明のin vitroスクリーニング法を通常かつスケールアップ式で実施することができる、純度および量で工業的に得ることができる。
【0054】
非活性化の(非リン酸化)Nercc1キナーゼは、プリンヌクレオシド三リン酸を含む標準的なin vitroのキナーゼ反応混合物において容易に観察されるように、自己リン酸化によって自己活性化することができる。したがって、本発明の幾つかの実施形態では、非活性化のNercc1キナーゼタンパク質は、キナーゼ活性を付与する自己活性化NIMA様キナーゼとして使用することができるだけでなく、キナーゼ基質として働くこともできる。このような実施形態では、自己リン酸化Nercc1キナーゼタンパク質のレベルは、特定の試験化合物の存在下および不在下で測定することができる。あるいは、Nercc1キナーゼタンパク質の自己活性化のレベルは、標準的なキナーゼアッセイにおいて酵素活性として、検出または定量化することができる。
【0055】
本発明の方法および組成物は、キナーゼ反応において転移するリン酸基の供給源として、ATPまたはGTPを使用することが好ましい。当技術分野で知られている大部分のキナーゼは、ATPにのみ活性があるので、本発明の方法においてGTPを使用することによって、有糸分裂を特異的に阻害する化合物を同定する方法に、追加的な特異性の程度がもたらされる。他のキナーゼ反応と同様に、最適な活性は、二価マグネシウムまたはマンガンカチオンなどの金属カチオンをヌクレオシド三リン酸に対する対イオンとして使用して得られる。マグネシウム二価カチオンは、本発明の方法および組成物に使用するのに特に好ましい。
【0056】
標準的なキナーゼ反応(リン酸化)において使用される緩衝液であればいずれも、本発明のスクリーニング法のキナーゼ反応において使用することができる。緩衝液のpHは、pH7.0と7.5の間であることが好ましい。特に好ましい緩衝液は、50mMのMOPS(3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸)、pH7.4;1mMのジチオスレイトール(DTT);1mMのEGTA(カルシウムキレート剤);5mMのMgCl2;10mMのβ-グリセロホスフェート;および25nMのカリキュリンを含む、リン酸緩衝液である(実施例の項を参照のこと)。
【0057】
本発明によれば、有糸分裂の阻害のレベルは、リン酸化基質(キナーゼ反応産物)の量によって測定されるNIMA様キナーゼ活性の阻害のレベルと相関関係がある。NIMA様キナーゼ反応からのリン酸化キナーゼ基質は、リン酸化タンパク質を検出および測定するための、当技術分野で知られているさまざまな方法のいずれかを使用して検出および測定することができる。例えば、NIMA様キナーゼ反応によって、検出可能に標識したリン酸基を、ドナー分子からキナーゼ基質に転移させることができる。このような検出可能な標識には、γ-32P標識ヌクレオシド三リン酸から転移した32Pなどの放射活性同位体が含まれる。放射活性のある標識されたリン酸化基質の産物は、例えばオートラジオグラフィー、シンチレーションカウンター、チェレンコフ計数、および放射標識分子を検出する他の方法によって容易に検出および測定される。転移リン酸基用の非放射活性標識は、アビジンまたはストレプトアビジン分子と複合体を形成することができるビオチンを含むことができる。ビオチン化産物、およびアビジンまたはストレプトアビジン結合検出タンパク質または酵素に基づくさまざまな検出システムが、当技術分野では市販されている。
【0058】
あるいは、転移したリン酸基を検出するために、リン酸化基質に特異的な抗体を使用して、キナーゼ活性を測定することができる。このようなリン酸特異的抗体の例を、本明細書に記載し(下記の実施例項を参照のこと)、本明細書中では、リン酸化型のキナーゼ基質と特異的に結合する、抗体を使用する。例えば、Nek6またはNek7キナーゼタンパク質は、これらのNekキナーゼタンパク質の活性化に重要な、特定のリン酸化部位(P部位)において、Nercc1キナーゼによってリン酸化することができる(例えば、以下の実施例1および12を参照のこと)。Nek6の活性化に重要な、このようなP部位はNek6アミノ酸配列(配列番号4)中の、セリン206、それより低い程度でスレオニン202である。Nek7では、活性化の重要なリン酸化部位は、Nek7アミノ酸配列(配列番号6)中の、セリン195(Nek6中のセリン206に対応する)である。このようなリン酸特異的抗体の利用可能性によって、有糸分裂を阻害する試験化合物をスクリーニングするための、当技術分野で利用可能であるかあるいは本明細書に記載する、さまざまな免疫検出法および形式のいずれもが有利に使用することができる。
【0059】
上記に記載した方法によって有糸分裂の阻害剤(すなわち抗有糸分裂化合物)として最初に同定された化合物は、in vitroまたはin vivoで増殖中の(活発に分裂している)細胞の有糸分裂を阻害または停止させる能力に関してさらに特徴付けすることができる。このさらなる特徴付けのステップで使用する細胞は、非癌細胞、癌細胞、または目的の真核病原体の細胞だけには限られないが、これらを含めたさまざまな増殖細胞のいずれかであってよい。増殖細胞は、癌細胞、または目的の真核病原体の細胞であることが好ましい。これらの細胞は、in vitro、例えば細胞培養物中で、あるいはin vivo、例えば目的の癌または感染病に関する動物モデルなどの動物モデル中で増殖することができる。有糸分裂の阻害剤の、このさらなる特徴付けのための好ましい方法は、培養中の活発に分裂している細胞を予め同定した抗有糸分裂化合物と接触させ、次いで微小管(有糸分裂紡錘体)の破壊、染色体の配置異常、増殖の阻害、細胞の溶解、またはアポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)に関してアッセイすることである。化合物が有糸分裂紡錘体の破壊および/または染色体の配置異常を引き起こすか否かを判定することが特に好ましい。例えば、有糸分裂の細胞プロセスにおけるこのような破壊は、Nercc1キナーゼ活性を特異的に阻害し(例えば、図6Aおよび6Bを参照のこと)、したがって、本明細書に記載する有糸分裂を介在する際の、Nercc1およびNek6/7タンパク質を含むカスケードの関与の実証された影響である。したがって、本発明の方法のこのようなさらなる特徴付けのステップによって、特定の抗有糸分裂化合物によって破壊される、有糸分裂の特定の段階を示すことができる。有糸分裂が進行している細胞における、有糸分裂紡錘体(有糸分裂微小管)の破壊、および/または染色体の配置の破壊は、微小管(例えば、紡錘体と結合する抗チューブリン抗体、およびローダミンなどの色素と結合した二次抗体を使用する)、および細胞中のDNA用の標準的な染色法(例えば、4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(「DAPI」、Sigma、St.Louis、Missouri);HOECHST33342(ヘキスト)などの、DNA視覚化用の任意のよく知られている色素を使用する)によって、容易に解明される。このような方法は、マイクロタイター培養プレートのウエルなどの小さな培養物中で、好都合に使用し分析することができる。
【0060】
本発明は、個体由来の細胞または組織中の生成されたNercc1、Nek6、および/またはNek7キナーゼタンパク質の量、あるいは1つまたは複数の対応するキナーゼ活性のレベルの、顕著または異常な上昇の検出に基づいて、個体の細胞または組織中の、癌状態または癌の可能性がある状態(前癌状態を含めて)を診断する方法も提供する。キナーゼタンパク質またはキナーゼ活性のレベルの変化は、個体由来の細胞の個々のサンプル中の、キナーゼタンパク質またはキナーゼ活性のレベルを、正常または健康な細胞または組織において見られるかあるいは予想されるレベル(すなわち標準として)と比較することによって、検出することができる。あるいは、個体由来の細胞の多数のサンプル中のキナーゼタンパク質またはキナーゼ活性のレベルを時間をかけて比較することによって、変化を検出することができる。細胞のサンプル中の、キナーゼタンパク質発現またはキナーゼ活性のレベルは、キナーゼ介在のリン酸転移反応(例えば反応容器中、あるいはゲル内アッセイで行う);Nercc1、Nek6、またはNek7の免疫検出アッセイ(例えば、抗体を使用して、Nercc1、Nek6、Nek7、またはこれらのリン酸化型を検出する);およびNercc1、Nek6、またはNek7をコードするmRNA転写産物のレベルの測定(例えば、ノーザン分析、定量PCR)だけには限られないが、これらを含めた、さまざまなアッセイのいずれかを使用して、測定することができる。本明細書に記載する、このような診断分析用の個体の細胞は、組織生検、血液、細胞塗抹標本、組織スワブ、体液、糞便、および癌のスクリーニング用に通常得られる他のサンプルだけには限られないが、これらを含めた、さまざまな供給源のいずれからも得ることができる。
【0061】
当業者であれば、今や、本発明の範囲から逸脱せずに本明細書に記載する本発明の他の変更形態および実施形態は、明らかであろう。
【実施例】
【0062】
実施例1.タンパク質配列決定、cDNAクローニング、操作、アッセイ、およびNercc1、Nek6、およびNek7キナーゼタンパク質の誘導体に関する命名
Nercc1キナーゼ(p120タンパク質)のトリプシン消化物の配列分析を、Harvard University、Cambridge、MAのHarvard Microchemistry Facilityにおいて、ミクロ細管逆相HPLCナノエレクトロスプレータンデム質量分析(μLC/MS/MS)によって、Finnigan LCQ四重極イオントラップ型質量分析計で行った。オンラインのデータ依存性のスキャンによって、電荷状態および正確な質量を測定することができ、その後タンデム質量スペクトルを得た。NCBIデータベース中の知られているペプチド配列に対応するスペクトルの同定は、アルゴリズムSequest、およびそれに続く手作業による確認によって可能であった。
【0063】
Nerccポリペプチド断片(配列番号2のアミノ酸1〜308、およびアミノ酸1〜391)をコードするcDNAを、鋳型としてEST AI961740およびそれぞれBg1II部位を含む、以下の配列を有するプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得た。
【0064】
配列番号2のアミノ酸1〜308からなる、Nercc断片をコードする配列に関しては:
センス-5'GAAGATCTACGCCGCCATGTCGGTGCTGGG3'(配列番号7)、
アンチセンス-5'GAAGATCTCTAGAGAAGAGGGCGATCTAGAAG3'(配列番号8);
配列番号2のアミノ酸1〜391からなる、Nercc断片をコードする配列に関しては:
センス-5'GAAGATCTACGCCGCCATGTCGGTGCTGGG3'(配列番号9)、
アンチセンス-5'GTACAGTTCCTTCTCCACTG3'(配列番号10)。
【0065】
配列番号2のアミノ酸1〜391からなる、Nercc断片をコードするcDNAを、T-ベクター(PCR2.1.、Invitrogen)に挿入し、Bg1IIおよびHindIIIを用いて切除して、T-ベクター由来の停止コドンを含ませた。完全長NerccのcDNAを、鋳型として「Nercc(1-391)」コードcDNA(上記)および以下の配列を有するプライマーを用いて、ヒト骨格筋のライブラリー(Clontech)から増幅させたPCR断片を使用して、PCRによって得た:
センス-5'CAGTGGAGAAGGAACTGTAC3'(配列番号11)、
アンチセンス-5'CTGTGTCTCCTCTTCAAAGG3'(配列番号12)。
【0066】
配列番号2のアミノ酸338〜739またはアミノ酸338〜979をコードする、Nercc断片をコードするcDNAを、XbaI部位を含み以下の配列を有する以下のプライマーを使用して増幅させた:
配列番号2のアミノ酸338〜739からなる、Nercc断片をコードするcDNA配列に関しては:
センス-5'CGGCTCTAGACATTGCTGTAGTAACATCACG3'(配列番号13)、
アンチセンス-5'CGGCTCTAGACTTAGCCACTGCTATTGGAACGGATGG3'(配列番号14)。
【0067】
配列番号2のアミノ酸338〜979からなる、Nercc断片をコードするcDNA配列に関しては:
センス-5'CGGCTCTAGACATTGCTGTAGTAACATCACG3'(配列番号15)、
アンチセンス-5'CGGCTCTAGAGGGGCTCTATAGGCTCAGG3'(配列番号16)。
【0068】
上記に記載したすべてのNerccコードcDNA分子は、pCMV5FLAGベクター(Andersson他、J.Biol.Chem.、264:8222〜8229(1989))に挿入し、DNA配列の決定によって確認した。
【0069】
配列番号2のアミノ酸732〜979からなる、Nercc断片をコードするcDNAは、NotIおよびSpeI部位をそれぞれ含み、以下の配列を有するプライマーを使用して、ヒト骨格筋のcDNAライブラリーから増幅させた:
センス-5'AAATATGCGGCCGCAACCATCCGTTCCAATAGCAGTGG3'(配列番号17)、
アンチセンス-5'CCTGATCAGGGCTCTATAGGCTCAGGAG3'(配列番号18)。
【0070】
Not1/Spe1を用いた消化の後、このcDNAを、GST融合体としての発現用にベクターpEBGに挿入した。
【0071】
すべての他のNerccコード変異体は、標準的なPCR突然変異技法、またはQuikChange Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene、La Jolla、California)を使用して構築した。
【0072】
突然変異体および融合タンパク質に関する命名
さまざまなタンパク質を、本明細書に記載する試験で使用するために、配列番号1のヌクレオチド1〜2937によってコードされた配列番号2のアミノ酸配列を有する完全長Nercc、配列番号3のヌクレオチド配列によってコードされた配列番号4の完全長Nek6アミノ酸配列、または配列番号5のヌクレオチドによってコードされた配列番号6の完全長Nek7アミノ酸配列から構築した。標準的な命名を使用して、本明細書に記載する試験で使用する、さまざまなタンパク質を示した。
【0073】
突然変異体の形態のNercc1、Nek6、およびNek7の場合、完全長キナーゼのアミノ酸配列のアミノ酸は、用語「Nercc」、「Nek6」、および「Nek7」の後ろに示す。例えば、用語「Nercc(1-391)」、あるいは単に「Nercc1-391」は、完全長Nerccタンパク質の配列番号2のアミノ酸1〜391からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を示す。アミノ酸残基の変化があるNerccタンパク質の突然変異体の形態の場合、用語「Nercc」は、突然変異によって変化したアミノ酸残基を示す略語が続く。例えば「Nercc(K81M)」または「NerccK81M」は、野生型Nerccアミノ酸配列(配列番号2)中のアミノ酸位置81のリシン残基(K)が、突然変異によってメチオニン残基(M)に置換されたことを示す。表示「Nercc(1-391、K81M)」は、配列番号2の野生型Nerccのアミノ酸位置81のリシン残基が、突然変異によってメチオニン残基に置換された、アミノ末端391アミノ酸、すなわち、完全長の野生型Nerccアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸1〜391からなる、欠失突然変異体(末端切断)の形態のNerccを示す。「Nercc(Δ763-889)」は、配列番号2のアミノ酸763〜889が、配列番号2の完全長の、野生型Nercc979アミノ酸配列から欠失した、Nercc突然変異体タンパク質を示す。
【0074】
他の非Nercc/Nekキナーゼと融合した、キナーゼまたはその一部分を含む融合タンパク質は、非キナーゼタンパク質の略語を用い、その後ろに特定のキナーゼタンパク質の命名を付けて示す。例えば、「GSTNercc」は、完全長Nerccタンパク質とインフレームで連結した、グルタチオンS-トランスフェラーゼタンパク質(GST)を含む融合タンパク質を指す。GSTは、配列番号19のヌクレオチド配列によってコードされており、配列番号20のアミノ酸配列を有する。
【0075】
幾つかの融合タンパク質は、キナーゼタンパク質またはその一部分と融合した、1つまたは複数のエピトープタグポリペプチドの添付名で示す。
【0076】
FLAGエピトープタグポリペプチドは、配列番号21のヌクレオチド配列によってコードされており、配列番号22のアミノ酸配列を有する。
【0077】
HA(ヘマグルチニン)エピトープタグポリペプチドは、配列番号23のヌクレオチド配列によってコードされており、配列番号24のアミノ酸配列を有する。
【0078】
mycエピトープタグポリペプチドは、配列番号25のヌクレオチド配列によってコードされており、配列番号26のアミノ酸配列を有する。
【0079】
上記の命名を、以下の例で示す:
「Nercc(K81M)」または「NerccK81M」、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、ただし、位置81のリシンが、配列番号1の241〜243におけるリシンコドンヌクレオチドAAGのATGへの突然変異によって、メチオニンに置換されている。
【0080】
「Nercc(1-308)」または「Nercc1-308」、Nercc触媒ドメインを含み、配列番号2のアミノ酸1〜308の配列(配列番号1のヌクレオチド1〜924の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0081】
Nercc(1-391)、配列番号2のアミノ酸1〜391の配列(配列番号1のヌクレオチド1〜1173の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0082】
Nercc(1-391、K81M)、配列番号2のアミノ酸1〜391のアミノ酸配列を有するポリペプチド、ただし、位置81のリシンが、配列番号1の241〜243におけるリシンコドンヌクレオチドAAGのATGへの突然変異によって、メチオニンに置換されている。
【0083】
Nercc(1-739)、配列番号2のアミノ酸1〜739の配列(配列番号1のヌクレオチド1〜2217の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0084】
Nercc(1-891)、配列番号2のアミノ酸1〜891の配列(配列番号1のヌクレオチド1〜2673の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0085】
Nercc(Δ347-732)、配列番号2のアミノ酸1〜346および733〜979のアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1のヌクレオチド1〜1038および2197〜2937の配列によってコードされている)を有し、リン酸化なしで恒久的に活性化キナーゼ活性を有するポリペプチド。
【0086】
Nercc(Δ763-889)、配列番号2のアミノ酸1〜762および890〜979のアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1のヌクレオチド1〜2286および2668〜2937の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0087】
Nercc(338-739)、NerccRCC1ドメインを含み、かつ配列番号2のアミノ酸338〜739のアミノ酸配列(配列番号1のヌクレオチド1012〜2217の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0088】
Nercc(338-979)、配列番号2のアミノ酸338〜979のアミノ酸配列(配列番号1のヌクレオチド1012〜2937の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0089】
Nercc(732-979)、配列番号2のアミノ酸732〜979のアミノ酸配列(配列番号1のヌクレオチド2194〜2937の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0090】
Nercc(891-940)、配列番号2のアミノ酸891〜940(配列番号1のヌクレオチド2671〜2820の配列によってコードされている)を有するポリペプチド。
【0091】
FLAGNerccは、配列番号2のアミノ末端を有するNercc1とインフレームで連結した配列番号22のアミノ酸配列を有するFLAGエピトープタグポリペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0092】
FLAGNercc(1-891)は、配列番号2のアミノ酸1〜891のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端とインフレームで連結したFLAGポリペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0093】
FLAGNercc(Δ347-732)は、配列番号2のアミノ酸1〜346および733〜979のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端と、インフレームで連結したFLAGポリペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0094】
FLAGNercc(Δ347-732)(K81M)は、配列番号2のアミノ酸1〜346および733〜979のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端と、インフレームで連結したFLAGポリペプチド(配列番号22)を含む、融合タンパク質である。ただし、配列番号2の位置81のリシンが、配列番号1のヌクレオチド241〜243におけるリシンコドンAAGのATGへの突然変異によってメチオニンに置換されている。
【0095】
FLAGNercc(338-979)は、配列番号2のアミノ酸338〜979のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端とインフレームで連結したFLAGポリペプチド(配列番号22)を含む、融合タンパク質である。
【0096】
HANercc(1-391)は、配列番号2のアミノ酸1〜391のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端とインフレームで連結したHAのアミノ酸配列(配列番号24)を有するHAエピトープタグポリペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0097】
GSTNercc(891-940)は、配列番号2のアミノ酸891〜940のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端とインフレームで連結したGSTのアミノ酸配列(配列番号20)を有するGSTタンパク質を含む、融合タンパク質である。
【0098】
GSTNercc(732-979)は、配列番号2のアミノ酸732〜979のアミノ酸配列を有するNerccポリペプチドのアミノ末端とインフレームで連結したGSTのアミノ酸配列(配列番号20)を有するGSTタンパク質を含む、融合タンパク質である。
【0099】
FLAGNek6は、配列番号4のアミノ酸配列を有するNek6のアミノ末端とインフレームで連結した配列番号22のアミノ酸配列を有するFLAGポリペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0100】
mycNek6は、Nek6のアミノ末端(配列番号4)とインフレームで連結したmycのアミノ酸配(配列番号26)を有するmycエピトープタグポリペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0101】
Nek6S37Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置37のセリンが、配列番号3のヌクレオチド109〜111におけるセリンコドンTCTのGCTへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0102】
Nek6S131Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置131のセリンが、配列番号3のヌクレオチド391〜393におけるセリンコドンヌクレオチドTCGのGCGへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0103】
Nek6S206Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置206のセリンが、配列番号3のヌクレオチド616〜618におけるセリンコドンTCCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0104】
Nek6S206Dは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置206のセリンが、配列番号3のヌクレオチド616〜618におけるセリンコドンTCCのGATへの突然変異によって、アスパラギン酸に置換されている。
【0105】
Nek6S37Dは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置37のセリンが、配列番号3のヌクレオチド109〜111におけるセリンコドンTCTのGATへの突然変異によって、アスパラギン酸に置換されている。
【0106】
Nek6T202Eは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGAAへの突然変異によって、グルタミン酸に置換されている。
【0107】
Nek6T202Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0108】
Nek6T202Cは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのTGCへの突然変異によって、システインに置換されている。
【0109】
Nek6S198A/S199Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置198のセリンが、配列番号3のヌクレオチド592〜594におけるセリンコドンAGCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されており、かつ、配列番号4の位置199のセリンが、配列番号3のヌクレオチド595〜597におけるセリンコドンTCTのGCTへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0110】
Nek6T201A/T202Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置201のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド601〜603におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されており、かつ、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0111】
Nek6T201A/T202A/S206Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置201のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド601〜603におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されており、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されており、かつ、配列番号4の位置206のセリンが、配列番号3のヌクレオチド616〜618におけるセリンコドンTCCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0112】
Nek6T201A/T202A/S206Dは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置201のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド601〜603におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されており、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されており、かつ、位置206のセリンが、配列番号3のヌクレオチド616〜618におけるセリンコドンTCCのGACへの突然変異によって、アスパラギン酸に置換されている。
【0113】
Nek6T202E/S206Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGAAへの突然変異によって、グルタミン酸に置換されており、かつ、配列番号4の位置206のセリンが、配列番号3のヌクレオチド616〜618におけるセリンコドンTCCのGCCへの突然変異によって、アラニンに置換されている。
【0114】
Nek6T202E/S206Dは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置202のスレオニンが、配列番号3のヌクレオチド604〜606におけるスレオニンコドンACCのGAAへの突然変異によって、グルタミン酸に置換されており、かつ、配列番号4の位置206のセリンが、配列番号3のヌクレオチド616〜618におけるセリンコドンTCCのGACへの突然変異によって、アスパラギン酸に置換されている。
【0115】
Nek6K74M/K75Mは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ただし、配列番号4の位置74のリシンが、配列番号3のヌクレオチド220〜222におけるリシンコドンAAGのATGへの突然変異によって、メチオニンに置換されており、かつ、Nek6の位置75のリシンが、配列番号3のヌクレオチド223〜225におけるリシンコドンAAGのATGへの突然変異によって、メチオニンに置換されている。
【0116】
本明細書に記載する他のタンパク質に関する表示は、上記の命名システムによる類似性によって明らかであろう。
【0117】
プラスミドpCMV5FLAG-Nek6およびpEBG-Nek6の構築は、他の箇所に記載されてきている(Belham他、Curr.Biol.、11:1155〜1167(2001))。GFP-Nercc融合タンパク質は、Nercc野生型、Nercc(K81M)、およびNercc(1-391)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸の、pEGFP-C2ベクター(Clontech)へのサブクローニングによって生成させた。
【0118】
原核生物の発現用に、cDNAをpGEXベクター(Pharmacia Biotech)に挿入し、GST融合タンパク質として発現させ、GSH-アガロース上で精製した。
【0119】
ノーザン分析
Poly-AのmRNAをマウス組織から精製し;電気泳動およびブロット転写の後、そのブロットを、Nerccの32P標識EcoRI制限断片、次にβアクチンcDNAと、標準的な条件を使用して、順次にハイブリダイズさせた。
【0120】
細胞培養およびトランスフェクション
HEK293細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、GIBCO brand、Invitrogen、Carlsbad、California)中で維持し、一方CF-PAC-1細胞は、2mMのL-グルタミンおよび100U/mlのペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO brand、Invitrogen、Carlsbad、California)の双方、ならびに10%ウシ胎児血清(FCS、Sigma、St.Louis、Missouri)を補った、Iscoveの改変DME中で維持した。製造元の説明書に従い、LIPOFECTAMINE(登録商標)(GIBCO brand、Invitrogen、Carlsbad、California)トランスフェクション試薬を用いて、細胞をトランスフェクトした。
【0121】
HeLa、CHOおよびBHK-21細胞は、2mMのL-グルタミンおよび100U/mlのペニシリン-ストレプトマイシンを補充した、10%FCSを含むDMEM中で維持した。NIH3T3およびSwiss3T3細胞を増殖させるために、10%ウシ血清を使用した。PtK2細胞は、2mMのL-グルタミンおよびアールの塩(Earle's salts)を含み、非必須アミノ酸(Sigma、St.Louis、Missouri)および10%ウシ胎児血清を補充した、最小必須培地(MEM、GIBCO brand、Invitrogen、Carlsbad、California)中で増殖させた。
【0122】
細胞溶解、免疫沈降、in vitro結合および免疫ブロッティング
細胞をPBSですすぎ、液体窒素中で急速凍結させ、-70℃で保存した。細胞溶解は、50mMのTris pH7.1、100mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのEDTA、1mMのEGTA、10mMのβ-グリセロホスフェート、2mMのNa3VO4、25nMのカリキュリンA、1%のTX100、およびプロテアーゼ阻害剤(EDTAを含まない錠剤、Roche)を含む、緩衝液を使用した。タンパク質濃度は、ブラッドフォードの試薬法(BioRad、Hercules、California)によって測定した。免疫沈降は、プロテインA/G-アガロース(Santa Cruz)と予め結合させ、0.5MのLiClを含む溶解緩衝液中で洗浄した、指示の抗体を用いて行った。
【0123】
免疫ブロッティングは、SDS-PAGEによるタンパク質分離およびPVDF膜への転写の後に行い、ブロットは、指示の抗体を用いてプローブ処理し、結合した抗体は、ECL化学発光物質(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、New Jersey)によって検出した。
【0124】
ゲル濾過
293細胞を、1%のTX100溶解用緩衝液中に溶解し、100,000xgで40分間超遠心分離にかけ、予め目盛りをつけたHiPrep16/60Sephacryl S-300 High Resolutionカラム(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、New Jersey)に充填した。ゲル濾過を、50mMのTris pH7.5、150mMのNaCl、1mMのDTT緩衝液中において、0.5ml/分で行った。
【0125】
プロテインキナーゼアッセイ
プロテインキナーゼアッセイを、免疫沈降の後に行った;組換えNerccを、プロテインA/G-アガロースビーズと予め結合させた、抗FLAG抗体を使用して単離した。内因性Nerccを、プロテインA/G-アガロースビーズと予め結合させた、N1抗体を使用して免疫精製した。複合体は、溶解用緩衝液、およびリン酸化緩衝液(50mMのMOPS、pH7.4、1mMのDTT、1mMのEGTA、5mMのMgCl2、10mMのβ-グリセロホスフェート、25nMのカリキュリンA)で、順次に洗浄した。Nerccの自己活性化は、固定したNerccを100μMのATPを含むリン酸化緩衝液中で、25℃で指定時間インキュベーションすることによって行った。活性化は、リン酸化緩衝液中で固定したNerccを洗浄することによって終了させ、得られたタンパク質活性は、10μMまたは100μMの[γ-32P]ATP、外因性基質、通常は示すようにヒストンH3を補ったリン酸化緩衝液中での、30℃におけるインキュベーションによってアッセイした。アッセイは電気泳動のサンプル緩衝液を加えることによって停止し、煮沸させ、タンパク質はSDS-PAGEによって解析した。32Pの取り込みは、示したように、PhosphorImager画像システムを用いて、あるいは液体シンチレーション計数によって測定した。
【0126】
ホスホアミノ酸分析
32P標識ヒストンH3またはNerccポリペプチドをゲルから切除し、110℃で1時間6NのHClに施し、乾燥状態にした。アリコートをpH3.5の緩衝液(5%の酢酸、0.5%のピリジン)に溶かし、ホスホアミノ酸標準と混合させ、薄層電気泳動によってpH3.5で分離させた。
【0127】
抗リン酸化Nek7抗体
標準的な方法によって、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合したペプチドを注射することによって、ポリクローナル抗体をウサギ中で産生させた。KLHと結合したペプチドは、以下のアミノ酸配列を有していた:
CAAHS*LVGTPYYM(配列番号27)、前式でS*はホスホセリンを示す(マウスNek7のSer195に対応する)。
【0128】
親和性リガンドとして免疫ペプチドを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体を精製した。生成した抗体は、リン酸化Nek7とは結合したが、非リン酸化Nek7とは結合しなかった。
【0129】
免疫細胞化学
カバーガラス上で増殖させた細胞をPBSですすぎ、-20℃で15分間メタノールに固定し、PBSで2回すすぎ、PBSに一次抗体を溶かした適切な希釈物と共に、室温で30分間インキュベートした。内因性Nerccを可視化するために、アフィニティー精製した抗Nerccペプチド抗体(N1およびC1)を、10μg/mlで使用した。微小管を、α/β-チューブリン特異的抗体を用いて、可視化した。カバーガラスをPBSで洗浄し、対応する種からの標識した二次抗体と共に、適切な組合せ-フルオレセインまたはローダミンX-結合ロバ抗ウサギ、Cy2またはローダミンX-結合ロバ抗マウス(それぞれ1:450)でインキュベートした。インキュベーションはPBS中ですすぐことによって停止させ、カバーガラスを顕微鏡スライドに装着させた。免疫検出ブロッキング用に、Nercc1C1-またはN1-抗体を、15倍モル過剰の免疫ペプチドと共に、37℃で30分間インキュベートした。12,000xgで10分間の遠心分離の後、この混合物は、示したように、免疫ブロッティングまたは免疫細胞化学用に使用した。Nercc局在化に対するレプトマイシンB処理の影響を調べるために、HeLaまたはBHK21細胞を、10%ウシ胎児血清およびペニシリン-ストレプトマイシンを補ったDMEM中の、25mmの丸型ガラス製のカバーガラス上で、半集合状態に(subconfluency)増殖させた。BHK21細胞を、野生型FLAG Nerccを用いてトランスフェクトし(Fugene、Roche Molecular Biochemicals);培地を18時間(h)後に交換した。その6時間後、レプトマイシンB(2、20、または200nM)を加え;冷(-20℃)メタノール中での固定を、30分、60分、120分、180分、240分、および24時間後に行った。非トランスフェクト細胞を、アフィニティー精製した抗Nercc IgG、次にローダミン標識ロバ抗ウサギ抗体を使用して、内因性Nercc用に染色した。トランスフェクト細胞は、モノクローナル抗FLAG抗体、次にローダミン標識ロバ抗マウス抗体で染色した。
【0130】
マイクロインジェクションおよび継時露出撮影による記録
組換えNercc発現、野生型および変異体の影響をリアルタイムで観察するために、一細胞周期中の細胞の形態および挙動に関して、25mmのガラス製のカバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を、pEGFP-C2ベクター、またはNercc野生型、Nercc(K81M)、Nercc(1-391)を含むGFP融合体をコードするこのベクターを用いて、Fugeneトランスフェクション試薬(Roche Molecular Biochemicals、Roche Diagnostics、Indianapolis、Indiana)を使用し、トランスフェクトした。Fugene含有培地を12時間後に除去し、10%ウシ血清およびペニシリン-ストレプトマイシンを補ったDMEMを、すすぎの後に加えた。24時間以内に分裂を経た、トランスフェクト細胞の割合をモニタリングした。このトランスフェクション手順を使用して、空pEGFP-C2を用いてトランスフェクトした細胞は、非トランスフェクト細胞と同様の頻度で分裂を経た。(Sykes-Mooreチャンバー中の)カバーガラスを、37℃に予め暖めた顕微鏡ステージに装着し;最高密度のトランスフェクト細胞(GFP陽性)を含む領域を観察用に選択し、25時間で10分毎に40x1.0NA対物レンズを使用して、位相画像を得た。画像を得る最中は光は最小限に保ち、画像を得る間は遮断した。
【0131】
抗Nercc抗体の有糸分裂に対する影響を観察するために、35mmの細胞培養皿中に置いた、25mmの丸型ガラス製のカバーガラス上で、PtK2細胞を半集合状態まで増殖させた。有糸分裂前期の細胞は、位相光学装置を使用して見つけ、核分解と核エンベロープの破壊の間の期に、対照実験用に2.5または10μg/μlの正常なウサギIgG(Jackson Immunoresearch)を用いて、あるいは2.5mg/mlのウサギ抗NerccC-またはN-末端、またはキナーゼドメイン抗体を、0.5μg/μlのローダミン標識デキストラン3000(Molecular Probes、Eugene、OR)とともに用いて、マイクロインジェクションした。典型的には、マイクロインジェクションした物質の体積は、細胞体積の約10%を構成していた。マイクロインジェクションの直後に、マイクロインジェクションした細胞を含むカバーガラスを、10%ウシ胎児血清を補った重炭酸塩を含まないDMEMを充填したSykes-Mooreチャンバー(Bellco Glass、Vineland、NJ)中に置いた。このチャンバーを、Air-Therm加熱制御装置(World Precision Instruments、Sarasota、FL)、およびカスタムメイドの顕微鏡用インキュベータによって37℃に保った、Zeiss Axiovert100M顕微鏡のステージ上に移した。マイクロインジェクションした細胞は、最大可能密度中密度フィルタ(典型的には、ND1.0、Chroma Technology、Brattleboro、Vermont)を使用して、ローダミン蛍光によって見つけた。Metamorph4.0(Universal Imaging Corporation、Downingtown、PA)によって動くHamamatsu Orca-100CCDカメラを用いて、20または30秒毎に位相画像を得た;100x1.4NA対物レンズを使用し、画像を得る最中は光は最小限に保ち、画像を得る間は遮断した。
【0132】
実施例2.Nercc1キナーゼをコードするクローニングcDNAの分析
HEK293細胞中で過剰発現したFLAGNek6ポリペプチドの、免疫親和性による精製によって、関連する120キロダルトン(kDa)のポリペプチド(p120)の回収がもたらされる。FLAGNek6の免疫沈降物を、Mg2+および[γ-32P]ATPと共にインキュベーションすることによって、Nek6とp120の両方への同程度の32Pの取り込みがもたらされ、p120がNek6の基質、プロテインキナーゼそのもの、あるいはその両方であることが示唆される。120kDaのバンドを切除し、in situでのトリプシンによる消化、ミクロ細管逆相HPLC、およびエレクトロスプレーイオン化質量分析によるペプチド配列分析を施した。多数のペプチド配列に対応するスペクトルを、GENESCAN(Burge他、J.Mol.Biol.、268:78〜94(1997))によって予想したそれぞれの三連続のオープンリーディングフレーム(ORF)、ヒトBACクローン201F1(AC007055)で同定した。予想したORFは、質量が120kDaに近いポリペプチドをコードしていないが、これらの分子質量の合計はこの値に近く、エクソン-イントロン境界は、GENESCANによって正確に決定されなかったことが示唆される。GENEMARK(Borodovsky他、ComputersおよびChem.、17:123〜133(1993))またはGENESCANを使用して、3つすべてのORFを含む配列、およびこれらの周りのゲノム配列をさらに分析することによって、約100kDa(それぞれ107kDaおよび91kDa)のポリペプチド中に、3つすべての元のORF(AAD31938、AAD31939およびAAD31940)が含まれるという予想がもたらされた。
【0133】
BLASTプログラムを使用して、ゲノム配列に対応する、多数の重複するヒトの発現配列タグ(EST)を同定し、連続的なcDNA配列(NCBI GenBankデータベースに送られたもの;アクセッション番号AY080896)を組み立てることができた。このmRNAに対応する遺伝子は、14q24.3にマッピングする領域中、ヒト染色体14上の約45kbpの領域に及ぶ23のエクソンによってコードされている。予想した配列を、EST塩基配列決定(NCBI GenBankアクセッション番号A1961740、A1799812、AA836348、およびAA568111)によって、および幾つかのヒトcDNAライブラリーからPCRにより増幅させた一連の重複断片から得たDNA配列によって確認した。この分析の行程で、エクソン2を欠き、幾つかの組織で完全長mRNAと共に低レベルで発現される(PCRにより判断)、選択的スプライシング変異体を同定した。このPCRの結果とは無関係に、エクソン2欠失変異体の存在は、ESTsAW028814、AA836348およびBE301302によって確認される。
【0134】
完全な120kDaのタンパク質コード領域を含む完全長cDNAを、それぞれエクソン1.1〜2.1および2.1〜3.4(配列番号1中のNerccヌクレオチドコード配列を参照のこと)を含む、2つの重複PCR断片を使用してアセンブリした。このcDNAは、979のアミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(配列番号2)を規定する配列番号1のヌクレオチド1〜3に、ATGコドンを有するNerccコード配列を含んでいた。cDNAを分析することによって、Nercc翻訳開始コドンATGが、わずかな翻訳開始コンセンサス(Kozak)配列、すなわちCCGCCATGT(配列番号28)に囲まれていることが示された。Nerccコード領域の後ろに、ポリアデニル化シグナル、すなわちポリ(A)尾部近くの下流に続くAATAAA(配列番号29)を有する、3'非翻訳領域(cDNA DKFZp434D0935によって規定される、アクセッションコードAL117502)が続く。
【0135】
cDNAによってコードされるNercc1キナーゼの構造分析
予想されるタンパク質産物は、107,034Daの計算上の分子質量、5.50の理論上のpIを有し、120kDaのタンパク質バンドの質量分光分析で検出した、全29のペプチドを含む。このポリペプチドは、機能的セリン/スレオニンプロテインキナーゼのすべての特徴を示す、N末端(配列番号2のアミノ酸残基52〜308)の近くに位置する、典型的な真核生物のプロテインキナーゼドメインを有する。活性化ループは、D194YGおよびS219PEモチーフ(それぞれ、配列番号2のアミノ酸194〜196および219〜221)の側面に位置し、幾つかのリン酸化の可能性がある残基を含む。この触媒ドメインは、NIMA関連ファミリーのプロテインキナーゼと最も類似している(脊椎動物のNeksとは39〜44%の同一性および56〜66%の類似性、NIMAとは33%の同一性および49%の類似性)。図1に図式的に示すように、触媒ドメイン(プロテインキナーゼ)の直後には、2つの古典的な核局在化モチーフ(配列番号2のアミノ酸306PLLRKRRR313および325PTKRPR330)から構成される、核局在化シグナル(NLS)が存在する。その後には、7つの連続したRCC1(染色体凝縮の調節物質)反復配列(配列番号2のアミノ酸残基347〜726)、次に、PEST領域(配列番号2のアミノ酸734〜779)中に含まれる、9つの連続したグリシン残基(配列番号2のアミノ酸752〜760のポリグリシン領域)を含む断片を含むドメインが存在し、ポリグリシン断片は、柔軟性のあるヒンジとして作用する可能性がある。配列番号2のアミノ酸761〜890の、酸性のセリン/スレオニン/プロリンリッチ断片が次に続き、SH3ドメイン結合「PXXP」モチーフ(すなわち、それぞれ、配列番号2のアミノ酸823〜830および881〜888)、および7つのセリン/プロリン(S/P)およびスレオニン/プロリン(T/P)部位(4つは、後者2つの「PXXP」モチーフと重複する)と適合する、2つのモチーフを含む。この領域の直後に続くのは、予想したコイルドコイルドメイン(配列番号2のアミノ酸891〜940)、次にタンパク質カルボキシ末端である。このポリペプチドは、キナーゼドメインとNIMA/Nekキナーゼとの類似性、およびRCC1様ドメインの存在に基づいてNercc1キナ
ーゼと称する。
【0136】
高等真核生物においてこれまでに特徴付けした、Nercc1キナーゼ、NIMA、およびNekの間の顕著な違いは、RCC1タンパク質と相同的なドメインのNercc1キナーゼにおける存在である。RCC1は、小さなG-タンパク質Ranのグアニン-ヌクレオチド-交換因子であり、7枚のブレードのプロペラに似た構造中に折りたたまれている、51〜68残基の7つの反復配列で構成される(Renault他、Nature、392:97〜101(1998))。NerccRCC1ドメインは、RCC1と27%の同一性および43%の類似性を有し、RCC1と同様に、7つのタンデム反復配列を含む。興味深いことに、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のゲノム中の推定プロテインキナーゼ(アクセッションコードAAF56344)は、Nerccキナーゼ、すなわち一連のRCC1ドメイン反復配列によって続く、N末端NIMA関連プロテインキナーゼドメインと相同的な構造を示す。
【0137】
NIMAおよびNercc1キナーゼのカルボキシ末端非触媒断片の主要配列の有意な同一性は存在しないが、この2つの断片は、幾つかの関連する特徴、すなわち触媒ドメイン直後の核局在化シグナル(NLS)、多数のSPおよびTP部位(そのうちの幾つかは、NIMAの場合、おそらく有糸分裂中にリン酸化され、調節に重要であるようであり、OsamaniおよびYe、Biochem.J.、317:633〜641(1996);FryおよびNigg、Curr.Biol.、5:1122〜1125(1995)を参照のこと)を含むプロリンリッチ断片、およびコイルドコイルドメインを共有している(図1参照)。さらに、(タンパク質の安定性の制御と関係がある)幾つかのPEST領域は、両方のプロテインキナーゼにおいて見られる。
【0138】
実施例3.NerccmRNAおよびポリペプチドの発現
NerccのcDNAの3'非翻訳断片に対応する150を超えるヒトEST、および5'非翻訳およびコード領域に対応する約100のESTが、NCBIデータベース中に存在する。これらのESTが由来するさまざまな組織によって、Nerccが広く発現されていることが示される。実際、NerccのDNA断片は、ヒトの心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓から調製した第一鎖cDNAのPCRによって増幅させた。さまざまな組織から単離した全マウスのRNAを、Nerccプローブとハイブリダイズさせ、調べた全ての組織で、1種または2種のNerccのmRNA種(5.3および8.1kb)の発現を実証した。
【0139】
配列番号2のNerccアミノ酸3〜18(NI抗体)および配列番号2の843〜858(C1抗体)に対応する合成ペプチドに対して産生した、ポリクローナル抗ペプチド抗体を使用して、組換えおよび内因性Nerccキナーゼポリペプチドの発現を検出した。空FLAGベクター、またはFLAGNercc1キナーゼ融合タンパク質(「FLAGNercc」)をコードするベクターを用いてトランスフェクトしたHEK293細胞から調製した抽出物を、抗NerccN1およびC1抗体でプローブ処理した。組換えFLAGNerccを、N1およびC1抗体の双方により免疫ブロットにおいて、容易に可視化した。さらに、120kDaにおける内因性の免疫反応性バンドを、抗体を用いて可視化した。抗NerccC1抗体を用いた、他のヒト(HeLa)、マウス(NIH3T3)、ハムスター(BHK)、および有袋類(PtK2-カンガルーラット)細胞系の免疫ブロットによって、それぞれの場合で120kDaにおける免疫反応性バンドが明らかになった。C1抗体でプローブ処理した多数のマウス組織から調製したウエスタンブロットは、120kDaのポリペプチド、および約140kDaの免疫反応性バンドのさまざまな存在を示したが、後者のバンドの正体は知られていなかった。
【0140】
実施例4.NerccキナーゼはNek6と相互作用する
p120Nerccキナーゼは、プロテインキナーゼNek6を用いて同時精製された、タンパク質として同定されたので、293細胞中でのGSTNek6融合タンパク質とFLAGNercc融合タンパク質の同時発現による、この関係を確認することは、興味深いことであった。完全長および末端切断型Nercc1およびNek6の幾つかの融合タンパク質を調製して、FLAGおよびGSTに対する抗体を使用して、NerccとNek6の間の相互作用を試験した。組換えGSTNek6融合タンパク質を、グルタチオン(GSH)-アガロース上でアフィニティー精製し、溶出物を抗FLAG抗体でプローブ処理した。
【0141】
完全長FLAGNercc融合タンパク質は、GSTNek6融合タンパク質と特異的に結合することが分かったが、一方カルボキシ末端が末端切断されたFLAGNercc(アミノ酸1〜739)融合タンパク質(匹敵する発現にもかかわらず)は、GSTNek6融合タンパク質と結合することはできなかった。相互的に、Nerccキナーゼカルボキシ末端断片(配列番号2のNerccアミノ酸732〜979)とGSTとの融合は、FLAGNek6の特異的結合を可能にするのに十分であった。さらなる分析(以下参照)によって、Nek6/Nercc相互作用の部位は、Nerccアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸732と891の間に存在することが示された。
【0142】
実施例5.Nek6結合部位と異なるコイルドコイルドメインを介して、Nerccはホモ二量体化する
Nercc1キナーゼは、そのカルボキシ末端(配列番号2のアミノ酸残基891〜940)の近くに、Coils2.1.ソフトウェアによって決定した、オリゴマー化ドメインの可能性がある候補である予想されるコイルドコイルモチーフを含む(図2A)。Nerccがホモオリゴマーを形成する能力は、FLAGNercc融合体とHANercc融合体の同時沈降によって示した(図2B)。Nercc1キナーゼ断片(すなわち、Nercc(891-940)、配列番号2のアミノ酸891〜940からなる、Nercc1キナーゼの一部分を指す)をGSTと融合させ、完全長FLAGNercc、またはNercc部分が、そのC末端の89の残基を欠いていた(すなわち、配列番号2のアミノ酸1〜891のNercc断片を与えるために)、FLAGNercc(1-891)と同時発現させた。図2Cは、完全長(FL)Nerccは、GSTNercc(891-940)融合体と特異的に会合したが、Nerccのカルボキシ末端の89の残基の欠失によって、この会合がなくなったことを示す(左パネル)。さらにNercc(1-891)は、完全長Nerccとオリゴマー化することができない(右パネル)。したがってNerccは、そのC末端コイルドコイルドメインを介して、オリゴマー化する。他の文献によって、このオリゴマー化が、Nercc1キナーゼ活性を調節するために重要であることが示されている。
【0143】
293細胞中の組換えおよび内因性Nerccタンパク質の、ゲル濾過分析によって、このプロテインキナーゼは、約600kDaの高分子量複合体で存在することが示された。予想したより大きなサイズによって、NerccとNek6などの他のタンパク質の会合、およびおそらくは高次のホモオリゴマーおよび/または非対称形の複合体が表される可能性がある。配列番号2のNerccアミノ酸配列のアミノ酸891〜940の欠失が、いずれも同様の親和性でNek6と相互作用する、Nercc;完全長NerccおよびNercc(1-891)との、Nek6の相互作用に影響を与えることはなかった。さらにGSTNercc(891-940)は、Nek6と結合しなかった(データは示さず)。したがってNek6は、配列番号2のアミノ酸732〜891の間、すなわちNercc RCC1自己阻害ドメインの末端と、コイルドコイルドメインの開始部分の間の領域で、Nerccと結合する。
【0144】
実施例6.Nerccのプロテインキナーゼ活性の分析
Nerccの触媒性を、HEK293細胞中で一過的に発現されたNerccポリペプチドの、FLAGタグ付き型の免疫沈降物を使用して試験した。Nerccポリペプチドの、測定したプロテインキナーゼ活性の特異性は、NerccのATP結合部位突然変異体(K81M)が、それ自体あるいは外因性基質への有意な32Pの転移を触媒できないことによって確認した(図3B、レーン3、4を参照)。したがって、以下に記載するキナーゼ活性はNerccによるものであり、プロテインキナーゼ(例えばNek6)が混入したことによるものではなかった。
【0145】
Nerccは、異なるヒストンおよびMBPを含めた、知られているin vitroのキナーゼ基質を、自己リン酸化およびリン酸化することができ;基質β-カゼインは、それほど迅速にはリン酸化されなかった(示さず)。ヒストンH3を、モデル基質として選択した。ヒストンH3のNercc自己リン酸化およびリン酸化の、ホスホアミノ酸分析によって、NerccがSer/Thrキナーゼであることが示された。32P-Nerccまたは32P-ヒストンH3の一部の酸加水分解物の薄層電気泳動によって、あるいは抗ホスホチロシンの免疫ブロットによって、ホスホチロシンは検出されなかった。
【0146】
組換え野生型Nercc1キナーゼは、指数関数的に増殖する細胞から抽出したとき、低い基底活性を有していたが、しかしながら、Mg2+およびATP(100μM)とのプレインキュベーションによって、Nercc自己リン酸化(電気泳動移動度の遅れを伴う)、および活性化(この活性化は、ホスファターゼ処理によって逆になる可能性がある、以下参照)が誘導された。in vitroでの活性化の速度は、リン酸化反応においてMn2+がMg2+に置換された場合、大幅に増大した(示さず)。自己リン酸化/自己活性化は、時間およびATP濃度依存性であり;重要なことに、10μMのATPによって、25℃で90分のインキュベーション時間の後でさえ、有意なNercc活性化が可能になることはなかったが、一方100μMのATPによって、60分までに最大活性(10〜20倍)が与えられ、半分の最大活性が20分で与えられた(図3A)。
【0147】
ひとたび活性化が終了した後、Nerccは、5〜10μMのATPで、ヒストンH3の確固たるリン酸化を触媒した。活性化後のATPに関する親和性の、この明らかな増大によって、得られた活性化の程度を表す、Nerccキナーゼアッセイの設計が可能であった。顕著なことに、特異的な抗体によって、指数関数的に増殖する細胞から免疫沈降させた内因性Nerccは、同様のパターンのin vitroでのMg2+ATP依存性の自己活性化を示した。
【0148】
Nerccはリン酸ドナーとしてGTPを使用することができた;GTPは、自己活性化を支持し、in vitroでの自己活性化が最大になった後、ATPで観察した速度の約30%で、ヒストンH3をリン酸化することができた。
【0149】
組換えNercc1キナーゼがin vitroで自己活性化する能力の、構造-機能分析も行った。HEK293細胞中で一過的に発現された一連のNercc変異体を、Mg2+単独あるいはMg2+および100μMのATP、後者は野生型Nerccのほぼ最大の自己活性化を可能にするのに十分な条件で、25℃における30分間のプレインキュベーションの後に、ヒストンH3キナーゼ活性に関してアッセイした(図3A)。非放射活性ATPを洗浄除去した後、ヒストンH3キナーゼのアッセイを、野生型Nerccキナーゼの自己活性化を支持することができる濃度未満の、γ-32P-ATPの濃度(5〜10μM)を使用して開始した(図3B、レーン1および2)。NerccのATP結合ループ突然変異体(K81M)は、Mg2+ATPとのプレインキュベーションとは無関係に、有意な自己リン酸化/キナーゼ活性を示さなかった(図3B、レーン3および4)。これは、Nercc1キナーゼドメインを完全に欠いた、Nercc(338-979)にも当てはまった(示さず)。RCC1ドメインおよびC末端尾部を欠いた、末端切断型Nercc(1-391)は、低い基底プロテインキナーゼ活性を示したが、Mg2+および100μMのATPとのプレインキュベーションによって、適度に活性化できた(図3B、レーン5および6)。しかしながら、Nercc(1-391、K81M)は完全に活性がなく(図3B、レーン7および8)、これは正規のキナーゼドメインの末端近くで終結した、Nercc(1-308)と同様であった。Nercc(1-739)は、プロテインキナーゼドメインとRCC1ドメインの両方を保持していたが、それにもかかわらず不活性であり、自己活性化することができなかった(図3B、レーン9および10)。Nercc(1-889)中と同様の、コイルドコイルドメインの欠失によって、自己活性化の速度が大幅に低下したが(図3B、レーン11および12)、一方、コイルドコイルを保持しながらの、プロリンリッチカルボキシ末端断片の欠失(NerccΔ763-889)によって、実質的な自己活性化が可能であった(図3B、レーン13および14)。RCC1ドメインの選択的欠失、すなわちNercc(Δ347-732)により、Mg2+および100μMのATPとのin vitroでのプレインキュベーションによってさらには増大しなかった野生型Nerccと比較して、非常に高い基底H3キナーゼ活性がもたらされた(図4b、レーン15および16;図3C)。ATP(100μM)による活性化の時間行程のより詳細な調査によって、Nercc(1-391)およびNercc(1-889)の双方は、自己活性化することができたが、野生型と比較して、その速度は大幅に低下したことが実証された。したがって、RCC1ドメインの欠失により、自己活性化によって達成可能な最大の活性と同様の、基底活性を有する突然変異体が生成したが(ただし、Nercc(Δ347-732)ポリペプチドは、25℃では安定性が低い)、しかしながら、カルボキシ末端の二量化ドメインも欠失した場合(Nercc(1-391)中と同様に)、基底活性は低レベルに戻り、自己活性化は著しく遅れた。
【0150】
これらの結果によって、RCC1自己阻害ドメインが分子内の自己リン酸化を無効にする能力によって、Nerccホモ二量体が阻害された状態で保たれる、(少なくともin vitroでの)Nercc1キナーゼの調節に関する機構が示される。ひとたび活性化が起こった後に、確かなリン酸の転移を可能にするATP濃度で自己活性化が起こらないことは、RCC1ドメインの阻害作用は、少なくとも部分的には、ATP結合部位の阻害によって働くという見解と一致する。このモデルの一つの予想は、RCC1自己阻害ドメインとNerccのキナーゼドメインは、相互作用する可能性があるということである。このような相互作用の存在は、図3Dに示した;HEK293細胞中で発現したFLAGNercc(338-778)融合タンパク質は、同時発現したHANercc(1-391)融合体と直接会合し、RCC1自己阻害ドメインは、直接的な相互作用によってキナーゼドメインを阻害することができる、という見解が支持された。Nerccの自己リン酸化は、ホモ二量体内ではin transで起こる可能性がある。なぜなら、RCC1ドメインの欠失は、カルボキシ末端尾部、すなわちホモ二量体化する能力が完全に保たれている場合のみ、in vivoにおいて自発的な活性化をもたらすからである。
【0151】
実施例7.リン酸化Nek7と特異的に結合する、リン酸特異的抗体の生成
プロテインキナーゼNek7は、異なる複数の部位、その中のセリン195において、活性なNerccによってリン酸化され;このリン酸化によってNek7が活性化される。ポリクローナル抗体を、ペプチドCAAHS*LVGTPYYM(S*はホスホセリンを示す;配列番号27)に対して産生し、これはマウスNek7中のセリン195の周りの配列に対応し;これらの抗体は、非リン酸化Nek7を認識せず、セリン195においてリン酸化されたNek7を認識するために設計した。図4は、Mg2+/[γ-32P]ATPおよび活性なNercc(100μMのATP中でのインキュベーションによって予備活性化させたもの)と共にインキュベートすると、細菌の組換えGSTNek7が、32Pを取り込んだことを示す(中央パネル、レーン2)。GSTNek7をMg2+/[γ-32P]ATP単独でインキュベートすると、この取り込みは観察されなかった(中央パネル、レーン3)。抗(Serl95)Nek7抗体を使用して、リン酸化GSTNek7を容易に検出したが(下側パネル、レーン2)、非リン酸化GSTNek7との交差反応は観察されなかった(下側パネル、レーン3)。これらの結果によって、抗ホスホ(Serl95)Nek7抗体などの抗体をこのように使用して、細菌のNek7を基質として使用することによって、Nercc1キナーゼ活性を測定することができることが示される。
【0152】
実施例8.Nercc1キナーゼはRanと結合する
Nercc中のRCC1と相同的なドメイン、RanGTPaseのヌクレオチド交換因子タンパク質の存在によって、NerccがRanと結合するか、そうであるならば、機能的な影響は何か、という問題が生じる。Nercc1キナーゼドメイン(GSTNercc(1-391))、RCC1ドメイン(GSTNercc(338-739))およびC末端尾部(GSTNercc(732-979))を有する、原核生物の組換えGSTとGSTの融合体を、GSH-アガロースビーズに固定し、GTPβSまたはGTPγSを予め充填した原核生物の組換えRanと共にインキュベートした。GSTまたはGSTNercc(732-979)もRanとは結合しなかったが、GSTNerccキナーゼドメインおよびRCC1様ドメイン融合タンパク質は、非常に高い効率でRanと結合することができた。両方のNerccドメインが、Ran-GTPより幾分高い程度でRan-GDPと結合した。
【0153】
in vivoでのRanとNerccの間の相互作用を調べるための試みでは、HA野生型Ran(野生型)を、異なるFLAGNercc突然変異体と同時発現させ、FLAG免疫沈降物を、HA野生型Ranの存在に関してプローブ処理した。細胞溶解およびその後の洗浄は、過剰なMg2+の存在下で行って、Ranをそのヌクレオチド結合型で保存した。野生型Ranは、完全長Nercc、および単離Nercc触媒ドメイン断片、Nercc(1-308)およびNerce(1-391)と会合した。突然変異体Nercc(Δ347-732)中と同様のRCC1ドメインの欠失、あるいは変異体Nercc(1-739)中と同様のC末端尾部の欠失によって、HARanの結合が検出可能に害されることはなく、in vitroの結果とは対照的に、単離NerccRCC1様ドメイン(Nercc(338-739))は、Ranとの会合をほとんど示さなかった。
【0154】
in vivoでのNerccとRanの間の相互作用を評価する際の、1つの可能性のある交絡要素は、野生型および突然変異体ポリペプチドの亜細胞局在化であった。間期の細胞では、RanGDPは細胞質中に排他的に位置するが、一方RanGTPは核に限られ、RanGEF、RCC1の核位置、およびRanGAPの細胞質ゾル局在化によって保たれている状況である。核に排他的に存在したNerce(1-391)は、排他的に細胞質ゾルに存在するNercc野生型およびNercc(Δ338-732)の双方と同様に、HA野生型Ranと明らかに会合した。さらに、NLSペプチドをNerccのN末端に付加することによって作製した核型の完全長Nercc(NLSNerccFL)は、同様のレベルで発現したNercc野生型ほどRanと結合しなかった。これらの結果によって、Nercc触媒ドメインが、その亜細胞局在化とは無関係に、in vitroおよびin vivoでRanと結合することが示された。RanとNercc触媒ドメインの間の相互作用の特異性は、Nercc触媒ドメインNercc(1-308)またはNek6、NIMAサブファミリーの他のプロテインキナーゼと結合する、Ranの相対能力を調べることによって評価した;HARanとNek6の結合は検出されなかったが、一方、Nercc触媒ドメインとRCC1の両方(RanGEF、陽性対照)は、Ranと強く結合した。
【0155】
要約すると、NerccはRanと特異的に結合し;結合はNercc1キナーゼ触媒ドメインによって、およびRCC1ドメインによっても、確かに介在されている。この触媒ドメインは、Ran-GTPに優先してRan-GDPと結合し、これは少なくともin vitroでは、RCC1ドメインに当てはまる可能性がある。
【0156】
Ran-GTPと比較した、NerccのRan-GDPへのin vivoでの相対的結合をより直接的に示すため、細胞質の野生型Nerccおよび核型の完全長Nercc(NLSNercc)を、野生型Ran、あるいはGDP(T24N)またはGTP(G19V)と排他的に結合するRan突然変異体と、それぞれ同時発現させ;RanまたはNerccを免疫沈降させ、他のポリペプチドとの会合用にプローブ処理した。完全長の野生型Nerccは、RanGl9Vよりも高い程度で、同時発現させた野生型RanおよびRanT24Nと結合した。これによってRan-GDPに関する優先性が示唆されるが、RanT24NおよびNerccは両方ともに細胞質性であるが、RanG19Vは核に排他的に局在化することを記さなければならない。しかしながら、核に排他的に存在するNLS-Nerccは、それにもかかわらずGTP固定(GTP-locked)突然変異体RanGl9Vとも結合せず、完全長Nerccは実際、Ran-GTPよりもRan-GDPに関して高い親和性を有するという結論が強く支持された。一過性の発現中に細胞質ゾルおよび核の双方に分布する、Nercc触媒ドメイン(配列番号2のアミノ酸1〜308)も、Ran(G19V)との結合をほとんど、あるいは全く示さなかった。NerccRCC1ドメイン(Nercc338-739)に関しては、野生型Ran、RanT24N、またはRanG19Vとの同時発現によって、Ranポリペプチドの回収がもたらされることはなく;Nercc(338-739)が細胞質性であろうが、それをNerccNLSと融合させることによって核に向けようが、この結果に影響を与えることはなかった。
【0157】
NerccRCC1ドメインが、in vivoでRanと結合できないことは、今だに説明されていない。Nercc(338-739)は細胞質に排他的に存在し、十分に発現しており;in vivoでのNerccRCC1様ドメインとRan-GDPの結合性が低いことは、したがって異常局在化(mislocalization)に原因があるわけではない。RCC1様ドメインは、触媒ドメインよりも低い親和性で、Ranと単に結合することができ;逆に、in vivoでのRanの単離NerccRCC1様ドメインへのアクセスは、害される可能性がある。
【0158】
in vitroでのNercc活性化に対するRanの影響を、NerccをMg2+およびGSTまたはGST-Ran、GST-Ran(GDPβs)またはGSTRan(GMPPNP)と共にプレインキュベーションし、次に非放射活性ATP(100μM)を加えることによって調べた。その後断続的に、アリコートを取り出し、[γ32P]ATPおよびヒストンH3と混合させ、H3への32Pの取り込みを、さらに5分のインキュベーション中に測定した。このようにしてRanは、Nerccキナーゼ活性化の速度の適度な増大を引き起こすことを観察した。この影響は、Ranヌクレオチドの電荷とは無関係であり、Nerccを加える前にEDTAで処理し、したがっておそらくはヌクレオチドを含まないRanに関しても観察した。
【0159】
実施例9.Nerccは有糸分裂中にリン酸化および活性化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化され得る
NerccとNIMAプロテインキナーゼの間の構成的類似性を鑑みると、Nercc1のレベルまたは活性が、細胞周期の進行中に変わったかどうかを測定することは興味深かった。細胞周期の異なる期(Gl/S、G2、M、Gl)で回収した、HeLa細胞から調製した抽出物は、Nerccポリペプチド用に免疫ブロットを施し、Nerccキナーゼ活性を免疫沈降後にアッセイした。Nercc1レベルは、調べた細胞周期の異なる期の間は一定のままだった。しかしながら、Nerccポリペプチドは、有糸分裂中に電気泳動移動度の顕著な遅れを示し(図5A)、プロテインホスファターゼ阻害剤カリキュリンを用いたin vivoでの処理によって、これを模倣することは可能であった(示さず)。Nerccの同様の電気泳動の遅れは、有糸分裂が停止したCHO-Kl、COS7、U20SまたはHEK293細胞中で起こった(示さず)。
【0160】
Nerccの改変が正常な有糸分裂の進行中に起こり、あるいは化合物ノコダゾールによる有糸分裂の停止チェックポイントの活性化から生じるかどうかを判定するために、有糸分裂細胞を、チミジン阻害によってG1/Sを偽同調化させ、次いで細胞周期に放した培養物から、振とう除去(shake-off)によって回収し;採取時に、これらの細胞は有糸分裂を介して正常に進行し、これらの有糸分裂細胞中のNerccと、有糸分裂および非有糸分裂の双方のノコダゾール処理細胞中のNerccとの比較が可能であった(図5B)。Nerccの電気泳動移動度は、正常に細胞周期が進行しようとノコダゾールで停止させようと、有糸分裂細胞では誤らずにアップシフトし、Nerccの改変は、紡錘体チェックポイントの活性化の結果ではなく、有糸分裂を介して正常に進行する細胞に特徴的であることが確定した。
【0161】
さらなる実験では、有糸分裂ノコダゾール停止細胞を、正常な有糸分裂細胞のモデルとして使用した。内因性Nerccキナーゼ活性を、HeLa細胞から調製した免疫沈降物においてアッセイし、指数関数的に増殖する細胞とノコダゾールで処理した細胞を比較し;後者は、有糸分裂振とう除去後に脱着した細胞(有糸分裂細胞)と、接着した状態の細胞(非有糸分裂細胞)に分けた。有糸分裂細胞中のNerccキナーゼ活性は、匹敵するポリペプチドレベルにもかかわらず、指数関数的に増殖する細胞より4〜5倍高く;ノコダゾール停止した非有糸分裂細胞は、おそらくは有糸分裂細胞の汚染のために、Nerccキナーゼ活性のわずかな増大を示した(図5C)。同様の結果を、U20S細胞に関しても得た(示さず)。したがって、これらのデータは、Nerccが有糸分裂中に活性化されることを示す。
【0162】
観察した有糸分裂によるNerccの活性化、および電気泳動移動度の変化が、リン酸化によるものであったかどうかを判定するために、有糸分裂細胞から免疫精製させたNerccを、ホスファターゼと共にインキュベートした。対照として、100μMのATPとのインキュベーションによって予備活性化させた、組換えFLAGNercc融合タンパク質も、ホスファターゼで処理した(図5d)。ホスファターゼ処理によって、FLAGNerccの電気泳動移動度が増大し、外因性基質に対するNercc1キナーゼ活性が同時に低下し、Nercc活性はリン酸化に依存することが実証された。内因性有糸分裂Nerccをホスファターゼと共にインキュベートすると、プロテインキナーゼ活性の同様の低下を観察した。これらの結果は、有糸分裂中のin vitroおよびin vivoにおけるNerccの活性化は、リン酸化によるものであることを示す。
【0163】
一過的に発現された触媒不活性型の組換えNercc変異体(NerccK81MまたはNercc338〜979)は、ノコダゾールに野生型Nerccと非常に同程度で応答して、SDS-PAGE上で電気泳動移動度のシフトアップを示した(示さず)。このような不活性Nercc突然変異体は自己リン酸化することができず、Nerccの有糸分裂による改変は、少なくとも部分的には他のプロテインキナーゼによるものであったことが示される。これらのデータを鑑みると、主な候補はp34Cdc2であった。
【0164】
FLAGペプチドとの競合によって抗FLAGアガロースビーズから溶出させた、組換え完全長FLAGNercc突然変異体(K81M)を、精製したアフリカツメガエルの活性p34Cdc2/サイクリンB(MPF)によって、in vitroでリン酸化させた(図5E)。MPF触媒のNerccリン酸化によって、有糸分裂細胞においてin vivoで観察されたものと同様の、Nerccの電気泳動移動度のシフトアップが誘導された。さらに、Nercc(K81M)への全体的な32Pの取り込みは、タンパク質1モル当たり1モルのPO4に急速に近づいた(図5E)。ノコダゾールで停止させた有糸分裂HeLa細胞由来のサイクリンBの免疫沈降物についても同様の結果を得たが、一方、非有糸分裂細胞由来のサイクリンBの免疫沈降物がNerccリン酸化を触媒することはなかった(示さず)。CDK阻害剤ロスコビチンによる、有糸分裂細胞由来のサイクリンBの免疫沈降物のNerccリン酸化活性の阻害によって、Cdc2と同様のキナーゼ活性の同一性を確認した。
【0165】
これらのデータから、Nerccはp34Cdc2のin vitro基質であり、このリン酸化によって、有糸分裂細胞において観察されたものと同様の、Nerccの電気泳動移動度の変化が生じることが示され、p34Cdc2が有糸分裂中のNerccリン酸化に貢献することが示される。in vitroでのCdc2/MPFによるNerccのリン酸化が、ヒストンH3に対する最大Nerccキナーゼ活性を有意に変えることはないことを指摘することは重要である。同様に、カリキュリンで細胞を処理することによって生じるNerccの電気泳動移動度のシフトアップが、Nerccキナーゼ活性の増大を伴うことはない(データは示さず)。したがって、in vitroでのNerccの自己リン酸化/自己活性化は、電気泳動移動度の遅れも伴うが、シフトアップの発生がNercc活性化と同義であると考えるべきではない。有糸分裂中のNerccのCdc2触媒のリン酸化の、機能的結果の詳細は、さらなる試験を必要とする。
【0166】
実施例10.間期および有糸分裂進行中の、Nerccの細胞局在化
N1またはC1抗Nerccペプチド抗体(上記を参照)を使用する、免疫蛍光試験によって、免疫ブロットしたすべての細胞系(Nerccの免疫反応性が分析用には低すぎる、BHK細胞以外)、およびCHO-IR細胞において、Nerccが微細な粒状の細胞質中の蛍光物質を有することが示された。Nerccは、オルガネラ、原形質膜、または細胞骨格要素とは会合せずに、細胞質中に広く分布しているようである。このことを確認するために、HEK293細胞の非平衡スクロース密度勾配分画を行った。Nercc沈殿は、他の細胞質タンパク質(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ)の沈殿に対応しており、さまざまな膜マーカー、例えばβCOP、TGNマーカーとは異なっていた。Nerccが富化した分画によりわずかなスクロースを載せ、次に平衡状態まで遠心分離することによって、膜結合タンパク質で起こるような、低密度分画へのNerccの移動をもたらすことはなかった。したがってNerccは細胞質に局在化し、細胞膜とは結合しない。
【0167】
特に、Nerccの免疫反応性は核には存在しない。核Nerccの欠如は、組換えFLAGNerccの過剰発現においても明らかであった。これは驚くべきことであった。なぜならNerccは、Nerccアミノ末端または他のポリペプチドに付加すると完全に機能的である、古典的な核局在化シグナル(NLS)を含むからである。核中にNerccが不在であることは、細胞周期依存性の核インポート(import)、外部刺激に依存する核インポート、またはNerccの強力な核エクスポート(export)によるものである可能性がある。しかしながら、さまざまな処理を施した細胞の、免疫蛍光試料を注意深く調べることによって、核中の内因性Nerccの例を明らかにすることはできなかった。例えば、HeLa細胞をプロテインキナーゼ阻害剤に、あるいはCHO-IR細胞を血清飢餓状態、または100nMのインシュリンによる処理に曝すことによって、観察可能な核のNerccが生じることは決してなかった。Nerccの細胞質局在化が、CRM1により介在される強力な核エクスポートに依存したかどうかを試験するために、BHK細胞をトランスフェクトして、野生型Nerccを発現させ、30分〜24時間の範囲の時間、レプトマイシンB(2、20および200nM)に曝した。Nerccは細胞質に存在したままであったが、一方核中の内因性RanBP1の蛍光は、20nMのレプトマイシンBとのインキュベーションの30分後に劇的に増大した。レプトマイシンBに対する同様の応答の欠如は、HeLa細胞中の内因性Nerccに関しても観察された。したがってNerccは、構成的には間期細胞の細胞質のものであり、NerccNLSは、間期中は細胞環境に曝されないことが示される。
【0168】
有糸分裂中のNerccの局在化も調べた。HeLa細胞はノコダゾールを用いて有糸分裂中に阻害し、あるいは二重チミジン阻害、次に放出および有糸分裂振とう除去によって、有糸分裂細胞において富化させた。いずれの場合も、有糸分裂細胞中のNerccの免疫蛍光は、細胞中に広く分布しており、染色体には明らかに存在しなかった。
【0169】
Nerccが有糸分裂紡錘体と会合するかどうかを試験するために、有糸分裂HeLa細胞を、非イオン性界面活性剤サポニンを用いた1分間の処理後に固定した。Eg5、微小管結合モーターは、このわずかなサポニン処理の後に特異的抗Eg5抗体を使用し、紡錘体微小管において容易に可視化されるが、一方、内因性Nerccの免疫蛍光は、これらの条件下で細胞から完全に除去される。したがってNerccは、紡錘体微小管と強くは会合せず、有糸分裂中は細胞中に広く分布している。
【0170】
一連のFLAGNercc突然変異体も、HeLa細胞における一過的な発現中の、それらの細胞分布に関して調べた。4つの型:細胞質、核細胞質、主要には核、および排他的には核の亜細胞分布を観察した。過剰発現した野生型Nerccは、内因性Nerccと同様に細胞質中に分布していた。しかしながら、約5%の細胞は、わずかな核の免疫蛍光を示した。不活性NerccATP部位突然変異体(K81M)は実質的な核構成要素を示し、核局在化部位(NLS)は、自己リン酸化によって不活性化される可能性があることが示唆された。Nercc(1-391)は、活性化される可能性はあるが、それにもかかわらず核に排他的に存在し;これによって、その内因性NLSのコピーがそのアミノ末端において融合した、野生型Nerccの排他的な核局在化と同様に、NerccNLSの機能が確定した。
【0171】
核局在化を達成する形態にNerccを転換することによって、小核、多核、および丸く突出した核形態の頻繁な出現がもたらされる。このような表現型は、有糸分裂後期に染色体の遅行および染色体の非分離を伴う他の状況と関連してきている(Cimini他、J.Cell Biol.、153:517〜527(2001))。これらの形態の頻度は、Nercc突然変異体(アミノ酸1〜391)、すなわち核局在化がある活性キナーゼドメインを発現する細胞において最高であった。しかしながら、細胞質キナーゼ不活性変異体Nercc(1-739)、ならびに核/細胞質変異体Nercc(K81M)およびNercc(1-308)の発現は、同様ではあるが、あまり顕著ではない影響がある。
【0172】
実施例11.Nercc1キナーゼは有糸分裂の進行を調節する
NerccとNIMAとの構造的類似性、有糸分裂中のNerccの活性化、Nerccがin vitroおよびin vivoでRanと結合する能力、核を標的とすると異常な核形態を誘導する能力によって、Nerccが有糸分裂の調節物質である可能性が示された。eGFPNercc(K81M)融合タンパク質をコードするプラスミドのトランスフェクションによって、細胞分裂が阻止された可能性があるという知見によって、予備的徴候が与えられた。したがって、トランスフェクトHeLa細胞の継時露出撮影による記録から、eGFPのみをコードするプラスミドでトランスフェクトしたすべての(n=70)細胞の78%は、後の36時間以内に分裂を受け、一方、eGFP-Nercc(K81M)でトランスフェクトしたすべての(n=52)HeLa細胞のわずか4%は分裂を受け、eGFPトランスフェクト細胞の18%と比較して85%が細胞死へと進んだことが示された。興味深いことに、野生型Nerccさえもわずかに毒性があり:eGFP-Nerccプラスミドでトランスフェクトしたすべての(n=31)HeLa細胞のわずか29%が、有糸分裂に進んだ。核局在化突然変異体Nercc(1-391)の影響は、より一層顕著であり;eGFP-Nercc(1〜391)でトランスフェクトしたすべての(n=45)HeLa細胞のわずか1%が分裂を受け、これらの細胞の72%が36時間後に死滅した。
【0173】
Nerccが有糸分裂進行の制御と関係があるかどうかを直接試験するために、リアルタイムでの観察を、アフィニティー精製した抗Nercc(ペプチド)抗体または精製した免疫前IgGをマイクロインジェクションした後に、PtK2細胞に行った。Ptk2細胞に間期中にNercc抗体を注射すると、有糸分裂はその後観察されることはなかった。したがって、前期の細胞の抗体によるマイクロインジェクションを行い、この場合、前期の細胞は、染色体凝縮および核分裂の存在によって識別した。正常なウサギIgG(2.5mg/mlで5個、10mg/mlで15個)をマイクロインジェクションした、すべてのこのような細胞は正常に有糸分裂を終了し、娘細胞を生成し、ラギング(lagging)染色体を有していた1つを救済し;この出現は、PtK細胞に関して以前に報告された(Izzo他、Mutagenesis、13:445〜451(1998))、ラギング染色体の頻度と一致していた。これに対して、アフィニティー精製した抗Nercc(C1抗体)IgG(2.5mg/ml)をマイクロインジェクションした、30個の細胞のうち14個の細胞(すなわち、約45%)が、2つの基本的な型の有糸分裂の異常を示した。第1の型の有糸分裂の異常は、異常な紡錘体の動態と関係がある、染色体分離の異常に関するものであった(図6A、パネルAおよびB)。したがって、4個の細胞は有糸分裂後期B(すなわち、反対方向に結合した染色体を有する極が動く)に決して入らず、紡錘体は見かけ上は正常であったが;それにもかかわらず、細胞質分裂は進行した。2つの実験において、このことが、細胞質分裂の溝における1つまたは複数の染色体の後の捕獲、娘細胞の核間のDNA架橋の作製をもたらした。2つの他の場合は、対極への染色体の分離は時期尚早に止まり、染色体の脱凝縮が観察され、紡錘体の片側に形成された細胞質分裂の溝によって、4NのDNAを有する1つの娘細胞、およびDNAを含まない1つの娘細胞の形成がもたらされた。観察された第2の型の有糸分裂の異常は、有糸分裂紡錘体の形成に影響を与えた(図6A、パネルC)。8個の細胞では、紡錘体は、全体の記録期間中、位相差画像上では目に見える状態ではなく、核エンベロープの破壊後約40分で、染色体が、染色体アームを細胞周辺に広く広げながら、円形PtK2細胞の中心に濃縮された。記録の直後に固定すると、これらの細胞は非常に破壊された紡錘体を示した。2つの分離した中心体が目に見えたが、これらの細胞は間期の微小管の並びを示した(図6B、抗Nercc)。
【0174】
2つの抗NerccC1-マイクロインジェクション細胞は、二極性の有糸分裂紡錘体を形成したが、後期は時期尚早に、詳細には最後の一方向染色体が二方向になった後わずか8分で始まった。これは、PtK細胞に関して記録した最短時間よりも1分間短かった(Rieder他、J.Cell Biol.、127:1301〜1310(1994))。したがって、これらの細胞では、染色体が中期板に集合せずに後期が始まったが、細胞分裂はその後正常に進行した。
【0175】
有糸分裂後期Bへの移行の失敗を含めた同様の種類の有糸分裂の異常を、Nercc触媒ドメイン(E2抗体、配列番号2のNerccアミノ酸80〜94)由来のペプチド配列に対して産生した、抗NerccIgGをマイクロインジェクションした、8個の細胞中4個の細胞で観察した。アフィニティー精製した抗NerccN1(配列番号2のNerccアミノ酸3〜18)IgGで、10個のPtk2細胞をマイクロインジェクションすることによって、有糸分裂の正常な進行が変わることはなかった。
【0176】
他の試験では、NerccのC末端抗体も、前期のCF-PAC1細胞にマイクロインジェクションした。CF-PAC1細胞は、HeLaおよびHEK293細胞に匹敵するレベルのNerccを含み、紡錘体動態のマイクロインジェクション試験用に以前に使用された、ヒト細胞系である(Mountain他、J.Cell Biol.、147:351〜365(1999))。マイクロインジェクションした5個の細胞中3個の細胞が、前中期において3〜10時間停止し、幾つかの一方向染色体は紡錘体極に近づいた。対照的に、正常なウサギIgGをマイクロインジェクションした、すべての5個の対照細胞は、正常な有糸分裂を示した。抗Nercc抗体を前中期の初期にマイクロインジェクションした、5個のCF-PAC1細胞中の1個のみが、同様の有糸分裂の欠陥を示し、他の4個は正常に有糸分裂が進行した。
【0177】
異なるNerccペプチドに対して産生した2つの別個に調製した抗Nercc抗体をマイクロインジェクションした、Ptk2細胞における同様の有糸分裂の異常の出現、およびCF-PAC1細胞における同様の異常の出現とともに非免疫IgGに応答するこれらの表現型の不在によって、Nerccの阻害はこれらの表現型の根拠であることが強く示される。つまり、抗Nercc(C末端ペプチド)C1IgGおよび抗Nercc(触媒ドメインペプチド)E2IgGのマイクロインジェクションによって、異常な紡錘体動態、および異常な染色体分離の頻繁な発生がもたらされ、このことによりNerccは通常、これらのプロセスの調節と関係があることが示される。
【0178】
実施例12.有糸分裂におけるNek6およびNek7タンパク質の関与の試験
Nek6/Nek7調節および機能の見通しを得るために、幾つかの試験を行って、Nek6およびNek7キナーゼの活性化の根底にある機構を解明し、内因性酵素の調節を定義した。以下に記載する試験によって、Nek6と結合することが既に示された(上記の実施例2および4を参照のこと)、Nercc1キナーゼは、Nek6およびNek7の活性化ループ上の重要な部位を直接リン酸化し、in vitroおよびin vivoでこれらのキナーゼを活性化することが示される。さらに、Nercc1キナーゼと同様に、内因性Nek6は有糸分裂において活性化される。Nercc1キナーゼがNek6を直接活性化できることによって、NIMA関連有糸分裂プロテインキナーゼのカスケードの働きが示される。
【0179】
Nek6(およびそれに近い相同体、Nek7とともに)を、既に記載された(Belham他、Curr.Biol.、11:1155〜1167(2001))のと同様にin vitroで、p70S6キナーゼ(p70S6K)の疎水性調節部位(Thr412)をin vitroでリン酸化することができる主要キナーゼとして、ラット肝臓から精製する。組換えNek6ポリペプチドは、HEK293細胞中での一過的な発現の後に活性プロテインキナーゼとして回収し、PDK1と相乗的に、in vivo(in vitroでも直接的に)で同時発現したp70S6キナーゼを活性化させる。それにもかかわらず近年の知見によって、Nek6(およびさらにはNek7)は、p70S6キナーゼの生理的活性物質ではないことが示され(Lizcano他,J.Biol.Chem.、277:27839〜27849(2002))、したがって細胞調節におけるその役割は、依然として未知であった。
【0180】
材料および方法
Expand HiFidelity DNAポリメラーゼ、塩基配列決定等級のトリプシン、およびCOMPLETE(商標)プロテアーゼ阻害剤混合錠剤をRocheから購入した。プロテインAおよびG-Sepharose、ならびにGSH-Sepharoseは、Amersham(Piscataway、New Jersey)からのものであった。インシュリン、ラパマイシン、ウォルトマンニン(wortmannin)、ノコダゾール、およびFLAGM2抗体は、Sigma(St.Louis、Missouri)から入手した。抗myc(9E10)モノクローナル抗体、抗サイクリンB1、およびウサギ抗p70ポリクローナル抗体(C-18)は、Santa Cruz(Santa Cruz、California)から購入した。抗βチューブリンは、Zymed(South San Francisco、California)から得た。LIPOFECTAMINE(登録商標)トランスフェクション試薬、pcDNA3.1-myc/6His哺乳動物発現ベクター、およびすべての細胞培養培地は、GIBCOブランド(Invitrogen、Carlsbad、California)であったが、ただしリン酸非含有DMEMはICN(Irvine、California)から得た。セルロース薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートは、E.M.Sciences(Gibbstown、New Jersey)から購入した。KLH結合ペプチドに対して産生した、ウサギポリクローナル血清は、Cocalico Biologicals(Reamstown、Pennsylvania)で作製された。32P標識オルトホスフェートは、NENブランド(PerkinElmer Life Sciences、Boston、Massachusetts)であり、[γ-32P]ATPはICN(Irvine、California)から得た。MBPはUBIから購入した。HEK293、H4-II-E-C3、HeLaおよびU20S細胞は、American Type Culture Collection(ATCC;American Type Culture Collection、Manassas、Virginia)から得た。
【0181】
発現プラスミドおよび組換え融合タンパク質の構築
Nercc1に関する試験と同様に(上記実施例1を参照)、Nercc1、Nek6、およびNek7キナーゼタンパク質の、幾つかの誘導体タンパク質(融合タンパク質、突然変異体)を作製し、これらを使用してここに記載する試験を行った。野生型および「キナーゼ死(kinase dead)」(K74/75M)Nek6をコードする哺乳動物の発現ベクターPEBG2TおよびpCMV5FLAG、異なる型のNercc1キナーゼをコードするpCMV5FLAGプラスミド、およびGSTNercc1(732-979)を発現する細菌の発現ベクターpGEXKGは、以前に記載されている(上記の実施例1;Roig他、Genes Dev.、16 1640〜1658(2002);Belham他、Curr.Biol.、11:1155〜1167(2001);KameshitaおよびFujisawa、Anal.Biochem.、183:139〜143(1989)を参照)。pcDNA3.1 6His/mycNek6を構築するために、停止コドンを欠き開始メチオニンにおいて最適Kozakモチーフによって囲まれるヒトNek6の、オープンリーディングフレームをコードする鋳型として、pCMV5FLAGNek6を使用して、PCR断片を作製した。この断片をpcDNA3.1myc/6Hisにサブクローニングし、カルボキシ末端に6Hisおよびmycエピトープを有する融合タンパク質として、哺乳動物細胞中でのNek6の発現を可能にした。
【0182】
pcDNA3.1myc/6Hisにおける、すべての部位特異的突然変異Nek6変異体は、PCR介在の重複伸長突然変異誘発によって構築し、その後pCDNA3.1myc/6Hisにサブクローニングした。すべてのクローンを、塩基配列決定によって確認した。
【0183】
ウサギ抗Nek6抗血清の作製
システイン残基を介して担体タンパク質キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合した、マウスNek6のアミノ末端配列(AGQPSHMPHGGSPN(配列番号30))に対応する合成ポリペプチドを使用して、ウサギを免疫処置して、抗全Nek6抗体を生成した。リン酸特異的抗体(「抗P」抗体)を、配列番号4のNek6アミノ酸194〜205および203〜214を含む以下の2つの合成ホスホペプチド、および標準的なプロトコル(Weng他、J.Biol.Chem.、273:16621〜16629(1998)を参照のこと)を使用して生成した。
【0184】
CGRFFSSETT*AAH(配列番号31)、アミノ末端システイン(C)および配列番号4のNek6アミノ酸194〜205を含み、カルボキシ近位スレオニン(T*)残基(配列番号4のT202に対応)においてリン酸化されており、抗PT202Nek6抗体を生成する。
【0185】
CAAHS*LVGTPYYM(配列番号27)、アミノ末端システイン(C)および配列番号4のNek6アミノ酸残基203〜214を含み、セリン(S*)残基(配列番号4のS206に対応)においてリン酸化されており、抗PS206Nek6抗体を生成する。
【0186】
細胞培養、組換えおよび内因性タンパク質の発現および精製
HEK293細胞およびH4-II-E-C3細胞の維持は、以前に記載されている(Belham他、Curr.Biol、11:1155〜1167(2001)を参照のこと)。HeLa細胞は、10%血清を含む DMEM培地中に保った。HEK293細胞は、製造元のプロトコルに従いLIPOFECTAMINE(登録商標)トランスフェクション試薬を使用して、一過的にトランスフェクトした。カリキュリンA(50nM)およびCOMPLETE(商標)プロテアーゼ阻害剤混合物(1錠剤/50ml)を補充した溶解緩衝液または緩衝液A(20mMのTris pH7.6、2mMのEGTA、1mMのEDTA、5mMのMgCl2、20mMのβ-グリセロホスフェート、0.5%のTritonX-100、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMのDTT)中で細胞を溶解させた。4℃において30分間13,000xgで溶解物を遠心分離にかけた。
【0187】
組換えタンパク質を免疫沈降させるために、プロテインA/G Sepharoseと予め結合させた対応する抗体を、4℃において溶解物と共にインキュベートした。免疫沈降物(IP)を洗浄し、その後は指示のように使用した。
【0188】
pGEXKG発現ベクターを用いて形質転換した大腸菌株BL21DE3pLys(Novagen、Madison、Wisconsin)における、GSTNercc(732-979)およびNek6の発現を、25℃において16時間の300μMのIPTGとのインキュベーションによって誘導した。このポリペプチド、およびトランスフェクトした哺乳動物細胞由来の、他の組換えGST融合ポリペプチドの精製は、標準的なプロトコルを使用して、GSHビーズを使用して行った。
【0189】
「ゲル内」キナーゼアッセイ
Nek6活性のゲル内キナーゼアッセイを、KameshitaおよびFujisawa(Anal.Biochem.、183:139〜143(1989))に従って行った。示されると、0.2mg/mlのMBPが、基質としてゲル中に含まれていた。
【0190】
リン酸化部位(「P」部位)のMS決定
ゲルバンドをトリプシンによる消化のように切除し、生成したペプチドはゲルから抽出した。ペプチドのアリコートを、取っ手付きエミッターチップを備えた融解石英(360μmOD、50μmID;PolyMicro)細管C-18(ODS)カラム(Martin他、Anal.Chem.、72:4266〜4274(2001))に載せた。ペプチドは、HPLC(0〜100%B、A=0.1%TFA、かつB=70%CH3CNおよび0.1%TFA)から勾配-溶出させ、LCQ DECA XPイオントラップ型質量分析計(ThermoFinnigan、San Jose、CA)によって分析した。質量分析計はデータ依存式に設定して、それぞれのMSスキャンにおける、上位5つの最も多量のm/zピークのMS/MSスペクトルを取った。MS/MSスペクトルは、配列を推定するためのタンパク質を含むデータベースに対して検索した(Sequest;ThermoFinnigan、San Jose、CA)。考えられる翻訳後修飾も検索した[STY=80(リン酸化)]。
【0191】
それぞれのサンプルの他のアリコートに、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を施して、サンプルのリン酸化ペプチドを富化させた。それぞれの実験は、既に記載されるように行った(Ficarro他、Nature Biotech.、20:301〜305(2002))。簡潔に述べると、ペプチドを細管IMACカラム上に載せた。カラムを洗浄して非特異的結合を除去し、次いでペプチドを、細管C-18予備カラム上に溶出させる。この予備カラムをHPLC緩衝液で洗浄し、次いで上記に記載した分析用カラムと連結させた。ペプチドを溶出させ、上記に記載したように分析した。Sequestペプチド配列を手作業で確かめて、正しい配列の同定を確実にした。
【0192】
Nek6キナーゼアッセイ
組換えNek6の免疫沈降物(IP)(抗FLAGまたは抗myc抗体を使用する)または内因性Nek6を、0.5MのLiClを含む抽出緩衝液中で3回、キナーゼ緩衝液(50mMのMOPS pH7.4、10mMのMgCl2、2mMのEGTA、20mMのβ-グリセロホスフェート)中で2回洗浄した。キナーゼアッセイは、1.5μgのGST-p70S6KΔCT104(Thr252A1a)またはMBP(0.2mg/ml)を含む30μlのキナーゼ緩衝液中で行い、[γ-32P]ATP(4000cpm/pmolで5μMの最終濃度)を加えることによって開始した。反応は30℃で10分間のインキュベーションであり、4X SDSサンプル緩衝液を加えることによって停止させた。キナーゼ混合物はSDS-PAGEによって解析し、PVDF膜に移し、Nek6ホスホトランスフェラーゼ活性は、基質に対応するクーマシー染色したバンドを切除し、チェレンコフのシンチレーション計数によって、放射活性含量を測定することによって決定した。
【0193】
二次元(2D)トリプシンホスホペプチドマッピング
さまざまなNek6-His6/myc構築体を発現するHEK293細胞を、採取前に4時間、32Pを含むリン酸非含有DMEMでインキュベートした。mycの免疫沈降物(IP)をSDS-PAGEに施し、固定し、染色した。32P-Nek6を含むゲル切片を、50mMの重炭酸アンモニウム緩衝液(pH8.5)中で平衡状態にし、均質化し、少なくとも75%の最初の32P-Nek6が上清中に抽出されるまで、数ラウンドのトリプシン消化を施した。乾燥させた、塩を含まない消化物を、以前に記載されたように(Boyle他、Methods Enzymol.、201:110〜149(1991))、pH1.9での薄層電気泳動(TLE)、次にTLCによって分離した。プレートは、PhosphorImager画像システムを使用して露光させた。
【0194】
定量PCR
全RNAを、TRIzol(Invitrogen、Carlsbad、California)を使用して抽出し、説明書のマニュアルに従ってQiagen(Valencia、California)RNEASY(登録商標)全RNA単離キットを使用してさらに精製し、Ribogreen(Molecular Probes、Eugene、Oregon)を使用して定量化した。DNase1処理の後、SYBRGreenI(1:30,000、Sigma、St.Louis、Missouri)、正方向および逆方向プライマー(それぞれ25nM)、およびサンプルRNA(1μg)を含むBrilliant One-Step QRT-PCRキット(Stratagene、La Jolla、California)を使用して、QRT-PCRを二重で行った。使用したプライマーのヌクレオチド配列は以下のものであった:
Nek6-Fプライマー(CGAAAAGAAGATAGGCCGAGG)(配列番号32)および
Nek6-Rプライマー(5'-TGCACCTTCTTCAGAGCCACT-3')(配列番号33)、89bpのNek6特異的産物サイズ;および
「TATAボックス」結合タンパク質(TBP)-Fプライマー(TGATGCCCTTCTGTAAGTGCC)(配列番号34)および
TBP-Rプライマー(GCACGGTATGAGCAACTCACA)(配列番号35)、101塩基対(bp)のTBP特異的産物サイズ。
【0195】
熱サイクル条件は、48℃30分の最初のRT反応ステップ、および95℃で30秒間、65℃で1分間の40サイクルを含んでいた。PCR産物の蓄積を、適切な対照を用いてリアルタイムでモニタリングした(Mx4000、Stratagene、La Jolla、California)。標準曲線をそれぞれの標的について作成し、全RNAに対するそれぞれのmRNAの量をCt法を使用して測定し;Nek6のRNAの量をTBPのRNAの量で割った。
【0196】
結果
Nek6の活性化には、活性化ループ中のSer206のリン酸化が必要である
過剰発現した野生型FLAGNek6(これらの試験および対応する図中では、単に「Nek6」と呼ぶ)は、SDS-PAGE上で二重線として移動し(図7A)、一方、キナーゼ不活性突然変異体、FLAGNek6(K74M/K75M)は、より速く移動する野生型Nek6のバンドに移動度が対応する一重バンドとして移動する(Belham他、Curr.Biol.、11:1155〜1167(2001))。ゆっくり移動したNek6のバンドのみが、洗浄した免疫沈降物において自己リン酸化を示し、この上側バンドのみが、「ゲル内」キナーゼアッセイにおける復元の後にMBPリン酸化を触媒する(図7B)。哺乳動物の組換えNek6を、in vitroにおいてプロテインホスファターゼ2Aで処理することによって、Nek6キナーゼ活性が無効になり、SDS-PAGE上でゆっくり移動するNek6ポリペプチドのバンドが除去される(Belham他、2001)。これらの特徴から、組換えNek6の活性はNek6ポリペプチドのリン酸化に依存し、他のプロテインキナーゼによっておそらく触媒されることが示される。
【0197】
HEK293細胞中での一過的な発現後に免疫精製させた、野生型FLAGタグ付きNek6をSDS-PAGEに施し、密接に配置したFLAGNek6二重線(図7A)の、それぞれのクーマシーブルー染色バンドを切除し、トリプシンで消化し、消化物をLC-MS-MSによって分析して、リン酸化の部位を同定した。不活性の、より速く移動するバンド(「バンドb」)によって、活性化ループにおいて、アミノ酸配列FFSSETTAAHS206LVGTPYYMSPER(配列番号4のアミノ酸196〜218)を有するSer206の周囲に1つのホスホペプチドが生じ、一方、よりゆっくり移動する、活性Nek6のバンド(「バンドa」)に由来するペプチドによって、Ser206およびThr202においてリン酸化を示す、FFSSETT202AAHS206LVGTPYYMSPER(配列番号4のアミノ酸196〜218)というアミノ酸配列を有する1つのペプチド、および、Ser37においてリン酸化を示す、HPNTLS37FR(配列番号2のアミノ酸32〜39)というアミノ酸配列を有する他のペプチドが生じ、Thr202/Ser206を含むペプチド断片によって、Ser206が排他的にリン酸化されたペプチドと、Ser206とThr202の両方がリン酸化されたペプチドがほぼ等量生じた。Thr202が排他的にリン酸化されたペプチドが観察されなかった。したがって、上記に記載したようなSer206またはThr202がリン酸化されたNek6に特異的であった、ポリクローナル抗ホスホペプチド抗体を作製した。一過的に発現されたFLAGNek6の免疫ブロット(IB)によって、いずれかの抗体との検出可能な免疫反応性は、上側のよりゆっくり移動するNek6ポリペプチドのバンドのみで明らかであったことが示される(図7C)。MS-MSによる底部のより速く移動するNek6バンド中のSer206-P部位の検出によって、上側バンドによるわずかな汚染が示されることが考えられ、この見解は、Ser206からAsp(S206D)への突然変異によって、SDS-PAGE上でのNek6ポリペプチドの遅れがもたらされるという知見によって支持される(図8A)。一過的に発現された突然変異体、不活性Nek6(K74M/K75M)によって、トリプシン消化物のMS-MS分析において、ホスホペプチドが生じることはなく;Ser206/Thr202を含むトリプシンペプチドは、その非リン酸化状態のみで同定された。
【0198】
さまざまなNek6部位特異的突然変異の活性を特徴付けした(図8A)。Ser206をAla(S206A)に転換することによって、Nek6活性が98%低下し、Ser206Asp(S206D)突然変異体は、SDS-PAGE上で移動度がアップシフトしたが、野生型活性のわずか約5〜10%を示した。Thr202からAla(T202A)またはCys(T202C)への転換、あるいは201および202における隣接するThr残基のAla(T201A/T202A)への転換によって、Nek6活性が75〜80%低下したが、一方、198および199における近辺のSer残基対のAla(S198A/S199A)への転換によって、Nek6活性に対する影響はなかった。Thr202からGluへの(T202E)突然変異を野生型Nek6に導入することによって、外見上の特異的活性は約20%増大するが、しかしながら、Thr202からGluへの(T202E)をSer206からAspへの(S206D)バックグラウンドに導入することによって、この突然変異体の低い活性は約3倍増大し、したがって二重突然変異体(T202E、S206D)によって、野生型活性の約20%が示される。これらの結果によって、Nek6の活性化はSer206のリン酸化に完全に依存することが示され、Thr202におけるリン酸化は、必要不可欠ではなく非常に重要でもないが、Nek6活性をさらに高める可能性が支持される。
【0199】
Nek6Ser206リン酸化の主な役割は、一過的に発現された野生型および突然変異体Nek6ポリペプチドの、二次元32P標識トリプシンペプチド地図における知見によってさらに支持され(図8B)、これによってSer206のリン酸化は、他のNek6部位のリン酸化に必要であることが実証される。in vivoでのNek6(S206A)への32Pの取り込みは、野生型Nek6と比較すると80%を超えて低下する(図8B-1)。
【0200】
さらに、32P-Nek6の二次元32Pトリプシンペプチド地図は1つの主要な32Pペプチド、2つの少量の32Pペプチド、および幾つかの微量の32Pペプチドを示すが、32PNek6(S206A)のペプチド地図は、すべての3つの特徴的な32Pペプチドを欠いており、多数の微量の、おそらく非特異的な32Pペプチドの非常にわずかなバックグランドを示す(図8B-2を参照)。Nek6(T201A/T202A)突然変異体への全体的な32Pの取り込みも、野生型より実質的に低下するが(図8B-1)、しかしながら、この変異体の32Pトリプシンペプチド地図は、野生型Nek6中で見られるのと同様の割合で、野生型Nek6の消化物中に見られる3つの主要な32Pペプチドのそれぞれを含む(図8B-1)。このパターンによって、Thr202の突然変異は、第一にSer206のリン酸化の程度を低下させることによって、第二にそれ自身のリン酸化を失わせることによってNek6活性に影響を与えることが示される。3つの主要な32Pペプチドが、Nek6T201A/T202A突然変異体中に絶えず存在することによって、この突然変異体中の同じトリプシンペプチド上に位置する他の部位(例えばThrl98またはThr199)でのリン酸化の発生が示唆される。
【0201】
つまり、上記の試験からのデータによって、Nek6活性には、Nek6タンパク質の活性化ループ上のSer206(Nek7中のSer195に対応する)のリン酸化が必要であることが示される。Ser206のリン酸化はThr202のリン酸化も助長すると思われ、このことが触媒活性を幾分かさらに増大する可能性がある。これらのリン酸化がin vivoで行われる機構に関しては、拘束されるものではないが、Nek6ATP部位突然変異体(K74M/K75M)に検出可能なリン酸化が無いことによって、Ser206のリン酸化が分子内の自己リン酸化によって触媒されるか;あるいは代替的に、Nek6(K74M/K75M)が上流のキナーゼとわずかに相互作用することが示唆される。次に論じる試験からの証拠によって、少なくとも哺乳動物細胞では、後者の説明が強く支持される。
【0202】
Nercc1はNek6およびNek7と結合し、これらをリン酸化し、さらに活性化する
内因性Nercc1と会合した、HEK293細胞中で発現した組換え野生型FLAGNek6を回収する(上記の実施例2および4;Roig他、Genes Dev.、16 1640〜1658(2002)を参照)。HEK293細胞から調製したFLAGNek6の免疫沈降物(IP)によって、RIPA緩衝液中でのNek6の免疫沈降物の十分な洗浄にもかかわらず保たれる、内因性Nercc1の存在が必ず明らかになる(例えば図7Bを参照)。組換えNek6と内因性Nercc1の間の確固たる会合によって、おそらくは機能的な関係が示される。したがって、Nek6とNercc1の物理的および機能的相互作用をさらに調べた。GSTNek6の一過的な発現によって、GSH-アガロース親和性プルダウン(pull down)で、同時発現した野生型FLAGNercc1ポリペプチドの実質的な回収がもたらされる(図9A)。野生型GSTNek6も、触媒不活性Nercc1(K81M)、および構成的に活性なNercc1の突然変異体、Nercc(Δ347-732)と強く結合する。これらの結果は、Nek6結合部位は、配列番号2のNercc1アミノ酸732と891との間にマッピングするという、以前の実証(上記の実施例4;Roig他、Genes Dev.、16 1640〜1658(2002)を参照)と一致する。触媒不活性Nek6(K74M/K75M)は、野生型Nek6と比較してはるかに少量で発現される。それにもかかわらず、その発現レベルが野生型Nek6のレベルと匹敵する場合、Nek6(K74M/K75M)は、Nercc1と結合するその能力が非常に害されることは明らかである(図9A)。
【0203】
野生型Nek6、および構成的に活性化なNercc1の突然変異体、Nercc1(Δ347-732)の過剰発現によって、Nek6の電気泳動移動度の観察可能なシフトアップ(図9Bおよび図9A、左からレーン3)、および同時発現したNek6の特異的活性の2倍の増大がもたらされる(図9B)。したがって、活性Nercc1は、in vivoでのNek6のリン酸化および活性化を誘導することができ;Nercc1(Δ347-732)によるNek6活性の適度な刺激は、組換え過剰発現Nek6の既に高い基底活性をおそらく表す。Nercc1(Δ347-732)は、同時発現した不活性Nek6突然変異体、Nek6(K74M/K75M)の電気泳動移動度も遅らせる(図9C)。Nercc1(Δ347-732)と同時発現させた、Nek6(K74M/K75M)のトリプシン消化物は、Ser206においてLC/MS/MSで相当なリン酸化、およびSer206およびThr202でリン酸化された少量のペプチドを示した。これらの知見は、抗ホスホペプチド免疫ブロットにおいてその後確認された(図9C)。同時発現したNercc1(Δ347-732)が、Nek6(K74M/K75M)のこれらのリン酸化を助長する能力は、活性Nercc1触媒ドメインを必要とする。したがって、Nek6を活性Nercc1と同時発現させることによって、Ser206におけるリン酸化、および同時発現した組換えNek6の既に実質的な活性の適度な増大がもたらされる。
【0204】
次に、Nercc1がNek6を直接リン酸化することができたかどうかを調べた。自己リン酸化によってin vitroで活性化された免疫精製組換え野生型Nercc1は、Ser206での哺乳動物の組換えNek6(K74M/K75M)基質のリン酸化を触媒した(図10A)。しかしながら、この改変は比較的低い効率で起こり、Nek6(K74M/K75M)とNercc1の非常にわずかな結合と一致した。特に、Nercc1と同時沈降させたすべてのSer206リン酸化Nek6(K74M/K75M)ポリペプチド(図10B)は、Nek6とNercc1の安定した結合がNercc1触媒のNek6リン酸化にとって重要であるという見解と一致する。
【0205】
上記の知見に照らして、野生型Nek6を、Nercc1リン酸化の基質として使用した。この試験のために、哺乳動物細胞中で過剰発現されるNek6によって、高レベルのSer206リン酸化およびキナーゼ活性が示されるので、組換え融合タンパク質GSTNek6およびGSTNek7を使用した。驚くことに、細菌中ではあまり発現されず、主に不溶性であるGSTNek6は、バッチごとにさまざまな程度のSer206リン酸化および自発的なキナーゼ活性を示した(データは示さず)。これに対して、細菌の組換えGSTNek7は、細菌から精製すると、活性化ループ(Ser195)のリン酸化または有意なキナーゼ活性は決して示さなかった。細菌の組換えGSTNek6およびGSTNek7の「不活性」調製物を、Nercc1によってリン酸化および活性化されるそれらの能力について調べた(図10C)。Nek6リン酸化の特異性に関する推定モチーフを使用するコンピュータによる検索(Lizcano他、J.Biol.Chem.、277:27839〜27849(2002))によって、幾つかの候補Nek6基質を同定し;幾つかの推定Nek6リン酸化部位を含むCdc16の最もカルボキシ末端のGST融合体は、Nek6およびNek7によって容易にリン酸化されたが、活性Nercc1キナーゼによって有意にリン酸化されることはなかった。GSTNek6およびGSTNek7は、活性Nercc1キナーゼの存在下または不在下で、Mg2+ATPと共にインキュベートし;30分後、GST-Cdc16-Ctおよびトレーサー[γ-32P]ATPをさらに30分間加えた。図10Cに示すように、Nercc1は、Nek6(Ser206)およびNek7(Ser195)上の同等部位のリン酸化を触媒し、Nek6/7キナーゼ活性の20〜25倍の活性化がもたらされた。これに対して、Ser195における基本的リン酸化がないNek7は、このin vitroでのインキュベーション中に、Ser195における自己リン酸化を触媒する能力は示さなかった。Nek6はSer206における低レベルの基本的リン酸化を示し、これがMg2+ATPとのインキュベーション中に変わることはなかった。活性Nercc1およびGSTNek7を使用する同様の実験は、基質としてMBPを用いる「ゲル内」キナーゼアッセイを使用して分析を行い(図10D);Nek7移動度のシフトアップは、Nercc1触媒のNek7リン酸化後に明らかであり、「活性化した」MBPキナーゼ活性は、Nek7のアップシフトしたバンドと全く同時に移動する。
【0206】
Nek6とNercc1の結合は、in vitroでのNek6のNercc1触媒のリン酸化に重要であると思われるので(図10B参照)、Nercc1の非触媒尾部を過剰発現させることの、同時発現したNek6の活性に対する影響を調べた。配列番号2のNercc1アミノ酸347〜979からなる、FLAGタグ付きポリペプチドは、同時発現したGSTNek6の活性を強く阻害し(図11A)、Ser206およびThr202における低下したNek6のリン酸化(図11B)、すなわち低下したNek6活性化と一致した。興味深いことに、Nercc1の非触媒尾部(配列番号2のアミノ酸732〜979)も、in vitroで予め活性化させた野生型Nek6の酵素活性を直接阻害することができた(図11C参照)。Nek6は組換えGSTNercc1(732-979)ポリペプチドをリン酸化したが、しかしながら、Nek6基質(すなわち、この実験ではp70S6KΔCT104)のリン酸化の実質的な阻害が、p70S6KΔCT104ポリペプチドの濃度よりもはるかに低い、GSTNercc1(Δ732-979)濃度において明らかであり、GSTNercc1(732-979)ポリペプチドのNek6触媒のリン酸化は、GSTNercc1(732-979)ポリペプチドの濃度が増大すると、実際には低下した。これらのデータは、GSTNercc1(732-979)ポリペプチドによる、非競合式のNek6触媒活性の阻害の存在を示す。したがって、Nek6とNercc1非触媒尾部の結合は、活性Nercc1によるNek6の活性化を助長するためだけではなく、おそらくNercc1による活性化によるNek6の触媒活性を制限するために、おそらくそれを特定の標的に向けるために働く。
【0207】
Nek6はNercc1と同様に有糸分裂において活性化される
in vivoにおける内因性Nek6活性の調節を調べた。上記に記載したようにシステイン残基を介してKLHと結合したマウスのアミノ末端Nek6ペプチドAGQPSHMPHGGSPN(配列番号30)を含むポリペプチドに対して産生した、アフィニティー精製抗Nek6ペプチド抗体によって、高度に特異的な免疫ブロットが得られ、内因性Nek6ポリペプチドの適度な免疫沈降が可能であったが、非常に低い効率であった。これまでのところ、内因性Nek7と反応性がある有用な抗体は得られていない。Nek6の免疫反応性が、COS7細胞を含めた、幾つかの一般的に使用される哺乳動物細胞系において明らかであった(図12A)。ラット肝臓癌系H4IIECにおけるNek6の調節を調べた。なぜなら、Nek6mRNAが肝臓中で最高量を示すからである(Belham他、2001)。さらに、Nek6は候補p70S6キナーゼ-Thr412キナーゼとして単離されており、内因性p70S6キナーゼ(p70S6Kとも呼ばれる)のインシュリン調節が、この細胞系において以前に特徴付けされている(Price他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:7944〜7948(1990)を参照)。インシュリンによって、血清枯渇H4細胞において、迅速な、内因性p70S6キナーゼの15倍の活性化が生じたが;これらの条件下では、しかしながら、免疫沈降させた内因性NeK6の基底活性の変化は生じなかった(図12B)。インシュリン刺激したH4細胞中におけるp70S6Kの活性は、ウォルトマンニン(約30nMのIC50、図12C)、またはラパマイシン(約2nMのIC50、図12D)の濃度を増大させることによって次第に阻害され;それぞれPI-3キナーゼおよびmTORのこれらの阻害剤が、Nek6の活性を著しく変えることはなかった。一緒に考えると、これらの結果は、Nek6活性は、インシュリン受容体の下流のシグナル伝達経路によって、迅速に調節されるわけではなく、したがって、受容体チロシンキナーゼの活性化に応答して、活性化p70S6KキナーゼとしてNek6が働くとは考えられないことを示す。H4細胞中におけるNek6の特異的活性は、しかしながら、血清の除去に敏感であり、48時間で80%まで次第に低下する(図12E)。Nek6活性のこの低下は、しかしながら、p70S6Kで観察した低下より、はるかに遅く激しくない。
【0208】
H4細胞が血清の除去により静止期に入るときのNek6活性の低下、およびNercc1活性が有糸分裂時に増大する(上記の実施例11;Roig他、Genes Dev.、16:1640〜1658(2002)を参照)という以前の観察から、非有糸分裂細胞と比較した、ノコダゾールにより有糸分裂を停止させた細胞におけるNek6の量および活性を調べた。Nek6の相対量は、非有糸分裂細胞中の量と比較して、有糸分裂中に停止させたH4細胞では3〜4倍増大し;さらに、SDS-PAGE上でのNek6の移動が有糸分裂細胞では遅れ、Nek6キナーゼ活性は、その量と平行して増大したことは明らかである(図13A)。これらの知見から、内因性Nek6はNercc1と同様に、有糸分裂において活性化されることが示される。有糸分裂HeLa細胞は、Nek6ポリペプチドの量の増大、およびSer206およびThr202におけるNek6リン酸化の顕著な増大も示したが(図13B);しかしながら、この細胞系のNek6活性の、直接的なアッセイは除外した。なぜなら、内因性HeLaNek6を免疫沈降させることは不可能であったからである。RTPCRによって、(TATAボックス結合タンパク質のmRNAの量に対する)Nek6のmRNAの量が、指数関数的に増殖するHeLa細胞よりも、有糸分裂では約3倍高いことが示され(図13C)、有糸分裂細胞中のNek6タンパク質含量の増大に関する、少なくとも1つの機構が示された。U20S細胞中でのNek6の挙動は、H4およびHela細胞で観察したものと同様であった(データは示さず)。したがって、内因性Nek6はNercc1と同様に、有糸分裂において量が増大し活性化される。
【0209】
実施例13.Nek6レベルおよびリン酸化状態は、細胞周期中に変化する
時間行程の実験を行って、有糸分裂中のNek6およびNercc1の合成および活性化を試験した。Nek6の量および電気泳動移動度を、Nercc1のそれと並行して、特異的抗体を使用するウエスタンブロットによって、細胞周期の異なる期のヒトU20S細胞において測定した。サイクリンB1はウエスタンブロットによって、有糸分裂マーカーとして測定し、一方チューブリンは充填対照として使用した。これらの結果を図14に示す。図14の左側パネルは、指数関数的に増殖する細胞がG1/S停止(t=0でのG1/S)後に有糸分裂に入ったときの、Nek6およびNercc1のレベルおよび電気泳動移動度を示す。6〜24時間の2μg/mlのアフィジコリンによって、G1/Sで細胞を停止させ、その後細胞を、アフィジコリンブロックから500ng/mlのノコダゾールを含む培地に移した。図14の右側パネルは、ノコダゾールによる停止後30分、60分、および4時間で、細胞が有糸分裂から出たときの、Nek6およびNercc1の蓄積および活性化を示す。これらの結果によって、Nek6タンパク質の量は細胞周期と共に変わり、有糸分裂中に最大であり、有糸分裂から出る最中に急激に減少することが示され;観察されたNek6の蓄積はプロテインキナーゼのシフトアップを伴い、Nercc1活性化に平行する。
【0210】
上記の本文中で引用した全ての特許、特許出願、および刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれるものとする。
【0211】
当業者であれば、ここに、本発明の範囲または以下の特許請求の範囲の精神から逸脱することなく本明細書に記載した本発明の他の変更形態および実施形態は、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】図1は、完全長(979のアミノ酸)Nercc1キナーゼタンパク質中の、さまざまなドメインの図である。略語:「プロテインキナーゼ」、Nercc1キナーゼ触媒ドメイン;「NLS」、核局在化シグナル;RCC1、RCC1相同および自己阻害ドメイン;「Gly」、ポリグリシンドメイン;「PXXP」、プロリンリッチドメイン;*S/T Pは、セリン/スレオニンリン酸化(P)部位を示す;「Nek6結合」、Nek6結合ドメイン;「コイルドコイル」、ホモオリゴマー化ドメイン。詳細に関しては本文を参照のこと。
【図2A】図2Aは、NerccがそのC末端コイルドコイルドメインを介してオリゴマー化することを実証する、結果を示す。図2Aは、Coils2.1.ソフトウェア(ウインドウ28)を用いて行った、Nerccコイルドコイルの予想を示す。配列が0〜1のスケールでコイルドコイルを形成する性質を、アミノ酸の直線配列に対してプロットする。予想されるNerccコイルドコイルの配列(配列番号2のアミノ酸891〜940)を示す;ロイシン残基(L)は太字で示す。
【図2B】図2Bは、NerccがそのC末端コイルドコイルドメインを介してオリゴマー化することを実証する、結果を示す。図2Bは、HEK293細胞をHANerccおよびFLAGNerccでトランスフェクトした試験からの、結果を示す。抗HA免疫沈降物を抗FLAG抗体と共にブロッティングした(上側パネル);構築体の発現は下側パネルに示す。詳細に関しては本文を参照のこと。IP、示した抗体を使用して免疫沈降したもの。IB、示した抗体を使用して免疫ブロットしたもの。
【図2C】図2Cは、NerccがそのC末端コイルドコイルドメインを介してオリゴマー化することを実証する、結果を示す。図2C。左側パネル、HEK293細胞を、FLAGNercc完全長(FL)またはFLAGNercc(1-891)、およびGSTまたはNerccコイルドコイルGSTNercc(891-940)とのGST融合体でトランスフェクトした。GST-アガロース単離体をFLAG(上側パネル)またはGST(中央パネル)にブロットした;細胞溶解物中のFLAGNerccの発現は、下側パネルに示す。右側パネル、FLAGNercc(FL)またはFLAGNercc(1-891)を、HANerccFLとともに同時トランスフェクトした。HA免疫沈降物をFLAG(上側パネル)またはHA(中央パネル)でブロットし、細胞溶解物中のFLAGNerccの発現は下側パネルに示す。IP、示した抗体を使用して免疫沈降したもの。IB、示した抗体を使用して免疫ブロットしたもの。
【図3A】図3Aは、in vitroでのNerccの自己活性化を実証する、結果を示す。図3Aは、FLAGNerccをHEK293細胞から免疫沈降させ、洗浄し、25℃でリン酸化緩衝液中において示した時間、10μMまたは100μMのATPと共にインキュベートした試験からの、結果を示す。洗浄によりインキュベーションを終了し、次に10μMの[32P]ATPおよびヒストンH3(1μg/50μl)を添加した。10分後30℃において、32Pの取り込みを、SDSサンプル緩衝液を加えることによって停止させ、次にSDS-PAGEおよびブロットの転写を行った。抗FLAG免疫ブロット(上側パネル)、32Pオートラジオグラフィー(中央パネル)、およびヒストンH3に取り込まれた32Pの相対量を示す(底部パネル)。
【図3B】図3Bは、in vitroでのNerccの自己活性化を実証する、結果を示す。図3Bは、HEK293細胞中での一過的な発現の後に単離した、固定化FLAGタグ付きNercc変異体を洗浄し、30分間25℃でリン酸化緩衝液中において、Mg2+と共に、100μMのATP有りまたは無しでインキュベートした試験からの、結果を示す。さらに洗浄した後、サンプルを30℃で、Mg2+および10μMの[32P]ATPおよびヒストンH3(1μg/50μl)と共にインキュベートした。10分後、SDSサンプル緩衝液を加えることで反応を停止させ、次にSDS-PAGEおよびブロットの転写を行った。32Pオートラジオグラム(上側パネル)、および抗FLAG免疫ブロット(中央パネル)を示す。
【図3C】図3Cは、in vitroでのNerccの自己活性化を実証する、結果を示す。図3Cは、野生型および突然変異体Nerccの、H3キナーゼ活性の活性化の時間行程からの結果を示す。FLAGNercc(野生型、四角形、■)、FLAGNercc(Δ346-732、丸形、●)、FLAGNercc(1-391、菱形、◆)、およびFLAGNercc(1-891、黒三角形)をHEK293細胞中で発現させ、抗FLAGアガロースに固定化し、洗浄し、25℃においてMg2+および100μMのATPと共にインキュベートした。示した時間で、サンプルを洗浄し、Mg2+および10μMの[32P]ATPおよびヒストンH3(1μg/50μl)を加えた。10分後30℃で、SDSサンプル緩衝液を加え、H3への32Pの取り込みを、SDS-PAGEおよびブロットの転写の後に、測定した(PhosphorImager画像システムを使用)。32Pの取り込みは、t=0、すなわち100μMのATPを用いたプレインキュベーションを行わない場合の、Nercc野生型の値の割合として表す。
【図3D】図3Dは、in vitroでのNerccの自己活性化を実証する、結果を示す。図3Dは、NerccプロテインキナーゼドメインとRCC1ドメインがin vivoで相互作用することを示す、結果を示す。HEK293細胞を、HANerccプロテインキナーゼドメイン(HANercc1-391)、およびFLAGNerccRCC1ドメイン(FLAGNercc338-778)、または空プラスミドでトランスフェクトした。抗FLAG免疫沈降物を、抗HA(上側パネル)または抗FLAG(中央パネル)と共に免疫ブロットした。HANercc1-391の発現を下側パネルに示す。さまざまなNercc構築体の図を下側パネルの下に示した。詳細に関しては本文を参照のこと。
【図4】図4は、リン酸特異的抗体を使用する、NerccによるNek7リン酸化の検出を示す。細菌の精製したGSTNek7を、Mg2+/[γ-32P]ATPと共に、活性FLAGNercc(HEK293細胞から免疫沈降させ、100μMのATP中でのインキュベーションによって予備活性化させた)有りまたは無しでインキュベートした。レーン1、Nercc単独;レーン2、GSTNek7およびNercc;レーン3、GSTNek7単独。電気泳動ゲルのクーマシー染色(上側パネル)、32Pオートラジオグラフィー(中央パネル)、および抗リン酸Serl95Nek7を使用する免疫ブロット(下側パネル)を示す。
【図5A】図5Aは、Nerccキナーゼが有糸分裂中に活性化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化され得ることを示す。図5Aは、HeLa細胞を細胞周期の異なる期で単離した試験において、Nerccが有糸分裂中に電気泳動移動度の顕著な遅れ(星印によって示す)を示すことを示す結果を示す。G1/S、細胞をアフィジコリンで停止させた(2μg/mlで一晩);G2、細胞をアフィジコリンで停止させ、6時間開放した;M、培養物から振とう除去によって単離した有糸分裂細胞を、ノコダゾールで処理した(500ng/mlで一晩)。上記のように単離したG1有糸分裂細胞を繰り返し洗浄し、再度平板培養し、その6時間後に採取した。Exp、指数関数的に増殖する細胞。それぞれの細胞周期段階の明示は、FACSによって確認した。異なる細胞周期段階の、内因性Nercc(C1抗体)の免疫ブロットを示す。詳細に関しては本文を参照のこと。
【図5B】図5Bは、Nerccキナーゼが有糸分裂中に活性化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化され得ることを示す。図5Bは、SDS-PAGE上でのNerccの電気泳動移動度の遅れが、有糸分裂中の正常な進行中に起こることを示す。HeLa細胞は、チミジン(2mMのチミジンで一晩、および開放)を使用して、部分的に同調化させた。その結果生じた有糸分裂細胞を、9時間後に振とう除去によって回収し、指数関数的に増殖する細胞(Exp.)、有糸分裂の振とう除去後に脱着した有糸分裂ノコダゾール停止細胞(Noc.M)、および振とう除去後接着した状態であるノコダゾール処理細胞(非有糸分裂細胞、Noc.Non-M);M、ノコダゾールで処理した培養物からの振とう除去によって単離した有糸分裂細胞と比較した。それぞれの細胞型の抽出物を抗NerccC1抗体を使用する免疫ブロットに供した。詳細に関しては本文を参照のこと。
【図5C】図5Cは、Nerccキナーゼが有糸分裂中に活性化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化され得ることを示す。図5Cは、Nerccキナーゼが有糸分裂中に活性化されることを示す。免疫沈降は、振とう除去後接着した状態であるノコダゾール処理細胞(非有糸分裂細胞、Noc.Non-M)、指数関数的に増殖する細胞(Exp.)、または有糸分裂ノコダゾール停止細胞(Noc.M)からの抽出物を、免疫前ウサギIgG(NIgG)およびアフィニティー精製抗Nercc抗体(N1)の双方と共に使用して行った。有糸分裂細胞(M)は、ノコダゾールで停止しなかったが、G1/Sでの前の停止から開放した後で得られた細胞であった。免疫沈降物は、溶解緩衝液およびリン酸化緩衝液で連続的に洗浄し、Mg2+および[γ-32P]ATP(10μM)およびヒストンH3(2μg/50μl)と共に、10分間30℃でインキュベートした。SDSサンプル緩衝液を加えることによって、反応を停止させた。免疫沈降物の抗Nercc(N1)免疫ブロットを上側パネルに示し、Nercc(中央パネル)およびヒストンH3(下側パネル)への32Pの取り込みを示す。NIgG免疫沈降物中の32Pの取り込み(バックグラウンド)を、PhosphorImager画像システムによって定量化し、抗Nercc免疫沈降物中のH332Pの取り込みから差し引いた。結果として生じたNercc活性は、指数関数的に増殖する細胞中の活性の割合として表した。星印は、より遅い電気泳動移動度を示す。
【図5D】図5Dは、Nerccキナーゼが有糸分裂中に活性化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化され得ることを示す。図5Dは、有糸分裂中のNerccの活性化は、リン酸化によるものであることを示す。100μMのATP(黒いバー)とのインキュベーションによって予備活性化させたFLAGNercc、およびノコダゾールによって有糸分裂において停止させた細胞から免疫沈降させた内因性Nercc(白いバー)を、ウシ小腸アルカリホスファターゼを加えていない(「-」、バー1および2)、あるいは40Uのウシ小腸アルカリホスファターゼを加えた(「+」)(「AP」、バー3〜6)、4mMのEGTAを加えていない(「-」、バー3、4)あるいは加えた(「+」、バー5、6)、アルカリホスファターゼ緩衝液中でインキュベートした。洗浄後、Nercc活性をアッセイし、非ホスファターゼ処理酵素(バー1および2)の割合として表した。
【図5E】図5Eは、Nerccキナーゼが有糸分裂中に活性化され、p34Cdc2によってin vitroでリン酸化され得ることを示す。図5Eは、Nerccがin vitroではp34Cdc2の基質であることを示す。FLAGNercc(K81M)をHEK293細胞において産生させ、抗FLAG抗体を用いて免疫精製し、FLAGペプチドを含む免疫沈降物から溶出させた。可溶性K81Mを30℃で示した時間、アフリカツメガエル由来の精製した活性p34Cdc2/サイクリンB(成熟促進因子、MPF)有りまたは無しの、100μMの[γ-32P]ATPを含むリン酸化緩衝液中でインキュベートした。NerccK81Mのクーマシー染色、および32Pオートラジオグラフィーを示す。NerccK81Mに取り込まれた32Pの定量化は、PhosphorImager画像システムによって行った。星印は、より遅い電気泳動移動度を示す。
【図6A】図6Aは、抗NerccIgGのPtK2細胞中への、マイクロインジェクションの影響を示す。図6Aは、PtK2細胞を有糸分裂前期に、アフィニティー精製抗Nercc(C1)IgG(2.5mg/ml;典型的には、マイクロインジェクション物質の体積は、細胞体積の約10%を構成していた)を用いてマイクロインジェクションした試験の、継時露出撮影による記録の結果を示す。継時露出撮影による記録からの、代表的な位相差画像を示す。記録した細胞は、示した順序の最後の画像後3分間固定し、ヘキスト33342DNA染色液で染色した(それぞれのパネルの最下部の画像)。画像の右隅に分単位の時間を示し、時間「0」(A)および(B)時に機能する、有糸分裂後期の開始前の最終的な骨格を得る。パネル(C)の最初の画像は、核エンベロープの破壊後2分で得た。バー、10μm。パネル(A):有糸分裂後期Aが始まり正常に進行するが、極は分離しない。染色体は細胞質分裂の溝に捉えられたままであり、DNAの「架橋」は娘細胞間に存在するままである。パネル(B):有糸分裂後期Bの表現型が不在である極端な場合の一例。有糸分裂後期Aにおいて染色体が別々に移動した後、有糸分裂後期Bに典型的な、実質的なさらなる分離は起こらず、細胞質分裂の溝は娘細胞を、すべての染色体および細胞質を含む1細胞に分離する。ヘキスト染色によって、右側細胞中のDNAの不在を確認する。パネル(C):核エンベロープの破壊後、細胞は有糸分裂紡錘体を形成することができず、あるいは形成後すぐに紡錘体が壊れる。有糸分裂の進行は、有糸分裂前中期で止まる。図6Bを参照のこと。
【図6B】図6Bは、抗NerccIgGのPtK2細胞中への、マイクロインジェクションの影響を示す。図6Bは、Ptk2細胞を有糸分裂前期に、正常なIgG(対照)または抗Nercc(C1)IgG(抗Nercc)を用いてマイクロインジェクションした比較を示す。細胞を固定し、ヘキスト33342DNAで染色し、および抗チューブリン抗体で染色した(対照細胞は有糸分裂中期に固定し;抗Nercc注入細胞は、正常な有糸分裂中期に入ることができず、マイクロインジェクション後t=120分で固定した)。詳細に関しては本文を参照のこと。
【図7A】図7Aは、無傷の細胞中ではアミノ酸残基Ser37、Thr202、およびSer206において、活性Nek6がリン酸化されることを示す。図7Aは、FLAGNek6免疫沈降物のゲル内キナーゼアッセイの結果を示す。FLAGNek6はHEK293細胞から免疫沈降させ、溶解緩衝液で洗浄し、SDSサンプル緩衝液中で10分間煮沸させた。サンプルを2つに分け、それぞれのアリコートは、MBP無し(上側パネル)または有り(下側パネル)で重合させた、10%アクリルアミドSDS-PAGEゲル中で電気泳動を施した。このゲル内キナーゼアッセイは、実施例12に記載したのと同様に行った。ゲルを固定し、クーマシーで染色し、オートラジオグラフィーを施した。タンパク質染色(左側)、および32Pオートラジオグラフィー(右側)を示す。
【図7B】図7Bは、無傷の細胞中ではアミノ酸残基Ser37、Thr202、およびSer206において、活性Nek6がリン酸化されることを示す。図7Bは、組換えFLAGNek6が二重線として発現され、内因性Nercc1と結合することを示す。HEK293細胞中で一過的に発現された、FLAGNek6ポリペプチドを、抗FLAGを用いて免疫沈降させ、洗浄し、SDS-PAGEに供した;クーマシーブルーで染色したゲルを示す。それぞれFLAGNek6に対応する、バンドaおよびbを切除し、トリプシンを用いてin situで消化し、LC/MS/MSによって分析した。
【図7C】図7Cは、無傷の細胞中ではアミノ酸残基Ser37、Thr202、およびSer206において、活性Nek6がリン酸化されることを示す。図7Cは、リン酸特異的抗体を用いる、リン酸化Nek6の検出を示す。左側パネル:Nek6P-Thr202またはNek6P-Ser206を含むホスホペプチド(P)に対して産生した抗体の特異性を、mycNek6野生型、Nek6(S206A)またはNek6(S202A)の免疫ブロットによって試験し、HEK293細胞中での一過的な発現後に免疫沈降させた。右側パネル:FLAGNek6野生型(wt)を発現するベクターでトランスフェクトしたHEK293由来の細胞抽出物の、異なるリン酸特異的抗体を使用する免疫ブロット。
【図8A】図8Aは、野生型Nek6タンパク質と比較した、突然変異体Nek6タンパク質の特性および性質を示す。図8Aは、部位特異的突然変異の、Nek6の活性に対する影響を示す。それぞれカルボキシ(C)末端myc/6Hisエピトープを含む、Nek6、およびさまざまなNek6部位特異的突然変異体の活性を、HEK293細胞での一過的な発現および抗myc免疫沈降後に調べた。キナーゼアッセイは、Nek6介在のリン酸化の基質として、Mg2+32-P]ATPおよび精製した組換えGSTp70S6KΔCT104(T252A)ポリペプチドを使用して、実施例12に記載したのと同様に行った。反応混合物をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写し、GSTp70S6KΔCT104Thr252Alaに対応するクーマシー染色したバンドを切除し、それらの32P含量を測定した。突然変異体Nek6ポリペプチドのキナーゼ活性は、それぞれのNek6変異体に関する3〜5の観察から平行してアッセイした野生型酵素の活性の、平均±S.E.Mパーセントとしてヒストグラムによって示す。それぞれの実験に含まれていた、野生型Nek6の発現に正規化した、複合抗myc免疫ブロットを示す。
【図8B】図8Bは、野生型Nek6タンパク質と比較した、突然変異体Nek6タンパク質の特性および性質を示す。図8Bは、二次元の、トリプシンによって生じたNek6のホスホペプチドマッピングを示す。図8B-1:mycエピトープタグ付きNek6野生型、Nek6(S37A)、Nek6(T201A/T202A)、またはNek6(S206A)を一過的に発現するHEK293細胞を、32Pオルトホスフェートを含むリン酸非含有DMEMと共に、4時間インキュベートした。32P標識した組換えNek6変異体を免疫沈降させ、SDS-PAGEによって解析した。ゲルはクーマシーブルーで染色し(パネルaの上側部分参照)、チェレンコフ計数およびトリプシンによるin situでの消化用に、ゲルから染色したポリペプチドバンドを切除する前に、オートラジオグラフィーに曝した(パネルaの下側部分参照)。図8B-2:等量の32P-cpmを含む消化物のアリコートを、薄層電気泳動(TLE)、次に薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した(詳細に関しては本文を参照のこと)。プレートはPhosphoImager中において感光させた。Nek6野生型(パネルbの上部左)、およびNek6(T201A/T202A)(パネルbの上部右)、Nek6(S37A)(パネルbの中央左)、およびNek6(S206A)(パネルbの中央右)突然変異体の地図を示す。等量のcpmの野生型およびNek6(T201A/T202A)消化物を含む混合物も、TLE/TLCに供した(パネルBの底部左)。下側右パネルは、主な放射活性スポット(1〜3で標識)を識別する、Nek6野生型の二次元地図の図を示す。サンプルを施した起点は、十字架+で表す。
【図9A】図9Aは、Nercc1がin vivoにおいてNek6と結合し、それを活性化させることを示す。図9Aは、Nek6とNercc1の結合を示す。野生型(「wt」)またはキナーゼ不活性GSTNek6(K74M/K75M)(「KM」)をコードするベクターを、HEK293細胞中において野生型(「wt」)または突然変異体(「K81M」、「Δ347-732」)型のFLAGNercc1を用いて、同時トランスフェクトした。抽出物はGSH-アガロースと共にインキュベートした;細胞抽出物および十分に洗浄したビーズ由来のSDS溶出物のアリコートを、SDS-PAGEおよび示した抗体を使用する免疫ブロットに供した。
【図9B】図9Bは、Nercc1がin vivoにおいてNek6と結合し、それを活性化させることを示す。図9Bは、構成的に活性なNercc1を用いた同時トランスフェクションによって、同時発現したNek6活性の活性が増大することを示す。HEK293細胞は、myc6HisNek6単独、あるいは増大する量のFLAGNercc1(Δ347-732)と組み合わせたmyc6HisNek6を用いてトランスフェクトし、採取の24時間前に血清を除去した。細胞溶解物から免疫沈降させた組換えNek6のキナーゼ活性を、基質としてGSTp70S6KΔCT104(T252A)を使用して測定した;後者はNercc1の基質ではない。
【図9C】図9Cは、Nercc1がin vivoにおいてNek6と結合し、それを活性化させることを示す。図9Cは、構成的に活性なNercc1の突然変異体が、in vivoでNek6(K74M/K75M)活性化ループのリン酸化を引き起こすことを示す。HEK293細胞は、GSTNek6(K74M/K75M)単独で、あるいはこれをFLAGNercc1(Δ347-732)またはFLAGNercc1(Δ347-732)(K81M)と共に用いてトランスフェクトした。GSTNek6(K74M/K75M)は、GSH-アガロースへの吸着によって単離した。洗浄したビーズからのそれぞれの溶出物(GSHタンパク質プルダウン)を、3つのサンプルに分け、全Nek6ポリペプチドに特異的な抗体(上部パネル)、または抗Nek6リン酸特異的抗体:抗ホスホ(P)Thr202Nek6(上部から二番目)、および抗PSer206Nek6(上部から三番目)を使用する、免疫ブロットに供した。抗FLAG抗体を使用する細胞抽出物の免疫ブロットを最下部パネルに示し、FLAGNerccタンパク質の存在が示される。
【図10A】図10Aは、Nercc1がin vitroにおいてNek6/7をリン酸化させ、それを活性化させることを示す。図10Aは、GSTNek6(K74M/K75M)(すなわち「GSTNek6KM」)を、GSH-アガロース上のトランスフェクトHEK293細胞から単離し、洗浄し、グルタチオンを用いて溶出し、TBSおよびプロテアーゼ阻害剤で一晩透析したときの、結果を示す。0.5μg(+)または1μg(++)の単離GSTNek6タンパク質を、予備活性化させた(100μMのATP+Mg2+と共に20分間のインキュベーション、次に洗浄によって)FLAGNercc1の存在下または不在下で、[γ-32P]ATPと共に30分間インキュベートし、プロテインAアガロースビーズに固定化した。反応混合物をSDS-PAGEによって分離し、抗全Nek6(上側パネル)、抗ホスホ(P)Ser206Nek6(中央パネル)を用いる免疫ブロット、およびオートラジオグラフィー(下側パネル)に供した。
【図10B】図10Bは、Nercc1がin vitroにおいてNek6/7をリン酸化させ、それを活性化させることを示す。図10Bは、Nercc1と結合したGSTNek6(K74M/K75M)(すなわち「GSTNek6KM」)のみが、Ser206のリン酸化を示したことを示す。図10A中と同様に、非放射活性ATPを使用したことを除いて、プロテインA-FLAGNercc1を含むビーズを沈殿させ、SDSへの溶出前に洗浄した。Nercc1ビーズ(ビーズ)、および反応上清(上清)を、SDS-PAGEおよび抗Nek6ポリペプチド(上部パネル)、または抗ホスホ(P)Ser206Nek6(中央パネル)抗体を用いる免疫ブロットに供した。
【図10C】図10Cは、Nercc1がin vitroにおいてNek6/7をリン酸化させ、それを活性化させることを示す。図10Cは、GSTNek6およびGSTNek7を細菌中で発現させ、GSH-アガロース上で精製したことを示す。グルタチオンを用いた溶出の後、Nek6およびNek7を、予備活性化させ、プロテインAアガロースビーズに固定化した(100μMのATPと共に20分間のインキュベーションによって)FLAGNercc1および非放射活性ATPと共に、あるいはこれ無しでインキュベートした。30分後、[γ-32P]ATPをGSTCdc16Ct、Nek6/7の基質と共に加えた。SDSを加えることによってさらに30分後に、反応を停止させた。SDS-PAGEの後、GSTCdc16Ct基質中に取り込まれた32Pを、PhosphorImager画像システムを使用して定量化し(上部から二番目のパネル)、上部パネルにヒストグラムとして示す。Nek6PSer206/Nek7PSerl95、GSTNek6/7およびFLAGNercc1の免疫ブロットは、下部に示す。
【図10D】図10Dは、Nercc1がin vitroにおいてNek6/7をリン酸化させ、それを活性化させることを示す。図10Dは、GSTNek7を上記に記載したのと同様に予備活性化させたFLAGNercc1と共にインキュベートしたとき、ただしGSTCdc16Ctおよび[γ-32P]ATPは削除したときの、結果を示す。反応混合物は、本文中に記載したのと同様に、「ゲル内」キナーゼアッセイによって、基質としてMBPを使用して分析した。ゲルの32Pオートラジオグラフィー(上部)、およびクーマシー染色(下部)も示す。
【図11A】図11Aは、Nercc1の非触媒ドメインが、Nek6のin vivoでの活性化およびin vitroでの活性を阻害することを示す。図11Aは、Nek6のキナーゼ活性が、in vivoでのN末端キナーゼドメインを欠いたNercc1変異体の過剰発現によって、阻害されることを示す。GSTNek6が、増大する量のFLAGNercc1(347-979)と共に同時発現された。GSTNek6のキナーゼ活性は、基質としてMBPを使用して測定した。
【図11B】図11Bは、Nercc1の非触媒ドメインが、Nek6のin vivoでの活性化およびin vitroでの活性を阻害することを示す。図11Bは、Nercc1(347-979)が、in vivoでのNek6活性化ループのリン酸化を抑制することを示す。GSTNek6を増大する量のFLAGNercc1(347-979)を用いて、HEK293細胞中で同時トランスフェクトし、抽出物の免疫ブロットを、指示する抗体を使用して行った。
【図11C】図11Cは、Nercc1の非触媒ドメインが、Nek6のin vivoでの活性化およびin vitroでの活性を阻害することを示す。図11Cは、Nercc1(347-979)が、in vitroでのNek6活性を阻害することを示す。一過的に発現されたFLAGNek6を単独、あるいは増大する量の精製した原核生物の組換えGST(レーン6〜8)、または原核生物の組換えGSTNercc1(732-979)(レーン2〜5)と共に、1時間4℃でインキュベートした。Nek6活性は、p70S6KΔCT104を基質として使用してアッセイした。上側パネル:対照Nek6活性の平均±S.E.M.パーセント。下側パネル: GSTNercc1(732-979)またはGSTタンパク質の、32Pオートラジオグラフィー、クーマシー染色、およびFLAGNek6野生型のウエスタンブロット。
【図12A】図12Aは、内因性Nek6活性の調節を実証する。図12Aは、全タンパク質用に正規化した、PTK、HEK293、COS7、H4-II-E-C3、CHO-IRおよびNIH3T3細胞の細胞抽出物の、抗Nek6免疫ブロットを示す。
【図12B】図12Bは、内因性Nek6活性の調節を実証する。図12Bは、H4-II-E-C3肝細胞に対する内因性Nek6活性は、p70S6キナーゼ活性を変える物質によって変わらないことを示す。内因性Nek6ポリペプチドを、100nMのインシュリンを用いた、さまざまな時間(分)の事前処理の後に、ラットH4-II-E-C3肝臓癌細胞の溶解物から30分間免疫沈降させた。Nek6キナーゼ活性は、GSTp70S6KΔCT104(Thr252A1a)を基質として使用して測定した(詳細に関しては本文を参照のこと)。同じ溶解物から免疫沈降させた内因性p70S6KαI/IIの活性は、合成ペプチド基質を使用して測定した。キナーゼ活性は、基底活性の増加倍数(白丸はNek6活性を示し;黒い四角はp70S6K活性を示す)としてとして表す。
【図12C】図12Cは、内因性Nek6活性の調節を実証する。図12Cは、H4-II-E-C3肝細胞に対する内因性Nek6活性は、p70S6キナーゼ活性を変える物質によって変わらないことを示す。内因性Nek6ポリペプチドを、インシュリンおよび増大する濃度のウォルトマンニンを用いた、さまざまな時間(分)の事前処理の後に、ラットH4-II-E-C3肝臓癌細胞の溶解物から30分間免疫沈降させた。Nek6キナーゼ活性は、GSTp70S6KΔCT104(Thr252A1a)を基質として使用して測定した(詳細に関しては本文を参照のこと)。同じ溶解物から免疫沈降させた内因性p70S6KαI/IIの活性は、合成ペプチド基質を使用して測定した。キナーゼ活性は、Nek6(黒いバー)またはp70S6K(白いバー)の残存活性のパーセントを示すヒストグラムとして表す。
【図12D】図12Dは、内因性Nek6活性の調節を実証する。図12Dは、H4-II-E-C3肝細胞に対する内因性Nek6活性は、p70S6キナーゼ活性を変える物質によって変わらないことを示す。内因性Nek6ポリペプチドを、インシュリンおよび増大する濃度のラパマイシンを用いた、さまざまな時間(分)の事前処理の後に、ラットH4-II-E-C3肝臓癌細胞の溶解物から30分間免疫沈降させた。Nek6キナーゼ活性は、GSTp70S6KΔCT104(Thr252A1a)を基質として使用して測定した(詳細に関しては本文を参照のこと)。同じ溶解物から免疫沈降させた内因性p70S6KαI/IIの活性は、合成ペプチド基質を使用して測定した。キナーゼ活性は、Nek6(黒いバー)またはp70S6K(白いバー)の残存活性のパーセントを示すヒストグラムとして表す。
【図12E】図12Eは、内因性Nek6活性の調節を実証する。図12Eは、内因性Nek6活性は、血清(FCS)の除去によって低下することを示す。指数関数的に増殖するH4-II-E-C3細胞を維持する完全培地を、血清有り(+)または無し(-)の新鮮な培地と、0時間のときに交換した。細胞はその後、24時間と48時間で採取した。免疫沈降させた内因性Nek6およびp70S6KαI/IIの活性を、上記のように測定した。
【図13A】図13Aは、有糸分裂中のNek6の合成および活性化を示す。図13Aは、有糸分裂中のNek6の量および活性の増大を示す。指数関数的に増殖するH4-II-E-C3細胞を、500ng/mlのノコダゾールで16時間処理した。その後、培養プレートを軽く振とうさせて、緩く接着した(非接着)有糸分裂細胞を遊離し、細胞培養物の上清を遠心分離することによって、これらを採取した。細胞溶解物を、有糸分裂(非接着)と非有糸分裂中間期(接着)細胞が富化した両方のプールから調製し、相対量(免疫ブロットによって)、および内因性Nek6の活性(免疫沈降後)を測定した。
【図13B】図13Bは、有糸分裂中のNek6の合成および活性化を示す。図13Bは、有糸分裂HeLa細胞において、Nek6タンパク質レベルが増大し、Nek6Thr202およびSer206がリン酸化されることを示す。指数関数的に増殖する(Exp.)、あるいは500ng/mlのノコダゾールによって有糸分裂において停止し、有糸分裂の振とう除去によって単離した(M)、HeLa細胞から調製した抽出物を、SDS-PAGEおよび示した抗体を使用する免疫ブロットに供した。
【図13C】図13Cは、有糸分裂中のNek6の合成および活性化を示す。図13Cは、有糸分裂HeLa細胞において、Nek6のmRNA発現が増大することを示す。指数関数的に増殖するHeLa細胞および有糸分裂HeLa細胞(上記のように、有糸分裂においてノコダゾールによって停止させ、単離したもの)からの、Nek6のmRNAレベルのRT-PCR定量化を、材料および方法中に記載したのと同様に行った。TBPのRNA量と比べた、Nek6のRNA量を示す。3つの異なる実験の平均±S.E.M.を示す。
【図14】図14は、有糸分裂中のNercc1およびNek6の合成および活性化に関する、時間行程の実験からの結果を示す。Nek6の量および電気泳動移動度を、Nercc1のそれと平行して、特異的抗体を使用するウエスタンブロットによって、細胞周期の異なる期のヒトU20S細胞において測定した。サイクリンB1はウエスタンブロットによって、有糸分裂マーカーとして測定し、チューブリンは充填対照として使用した。左側パネル:G1/S停止後の有糸分裂(M)への移行(矢印)。Exp.、指数関数的に増殖する細胞;G1/S(t=0)、6〜24時間の2μg/mlのアフィジコリンによってG1/Sで停止した細胞、その後細胞を、アフィジコリンブロックから500ng/mlのノコダゾールを含む培地に移した。右側パネル:ノコダゾールによる停止後の有糸分裂(M)からの移行(矢印)。Exp.、指数関数的に増殖する細胞;M(t=0)、500ng/mlのノコダゾールを用いて停止させた有糸分裂細胞;30分、60分、4時間、ノコダゾールブロックから開放した細胞。星印(*)は、リン酸化(すなわち活性化)型のNek6またはNercc1の電気泳動移動度を示す。
【配列表】



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
有糸分裂の阻害剤である化合物を同定する方法であって、
(a)プリンヌクレオシド三リン酸、Nercc1キナーゼタンパク質、およびキナーゼ基質を含むキナーゼ反応混合物を提供するステップ、
(b)前記キナーゼ反応混合物を試験化合物の存在下および不在下で、Nercc1キナーゼタンパク質がキナーゼ基質をリン酸化するのに十分な時間インキュベートするステップ、および
(c)前記試験化合物の存在下および不在下で、リン酸化キナーゼ基質のレベルを測定するステップを含み、
前記試験化合物の不在下で生じたレベルと比較して、前記試験化合物の存在下で生じたリン酸化キナーゼ基質のレベルが低いことにより、前記試験化合物が有糸分裂の阻害剤であることが示される、前記方法。
【請求項2】
Nercc1キナーゼタンパク質が最初は、自己リン酸化によって自己活性化することができる非活性化Nercc1キナーゼタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Nercc1キナーゼタンパク質およびキナーゼ基質が、最初は非活性化Nercc1キナーゼタンパク質またはその融合タンパク質であり、かつ前記最初は非活性化Nercc1キナーゼタンパク質またはその融合タンパク質が、自己リン酸化によって自己活性化することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記方法のNercc1キナーゼタンパク質が活性化Nercc1キナーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
活性化Nercc1キナーゼが、リン酸化Nercc1キナーゼ;組換えによって作製された、活性化Nercc1キナーゼ;構成的に活性なNercc1の突然変異体;およびこれらの融合タンパク質からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記活性化Nercc1キナーゼが、構成的に活性なNercc1の突然変異体またはその融合タンパク質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記構成的に活性なNercc1の突然変異体またはその融合タンパク質が、RCC1自己阻害ドメインの全体または一部分が存在しないために構成的に活性である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
キナーゼ基質が、非活性化Nercc1キナーゼタンパク質、非活性化Nek6タンパク質、非活性化Nek7タンパク質、ヒストン、カゼイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、およびこれらの融合タンパク質からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
キナーゼ基質がヒストン、またはヒストンを含む融合タンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記ヒストンがヒストンH3またはヒストンH4である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記プリンヌクレオシド三リン酸が、アデノシン三リン酸またはグアノシン三リン酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
上記プリンヌクレオシド三リン酸を32Pで放射標識する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
リン酸化キナーゼ基質のレベルを測定するための上記方法のステップ(c)を、リン酸化型のキナーゼ基質と特異的に結合する抗体を使用して行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
上記抗体が、リン酸化Nercc1キナーゼタンパク質、リン酸化Nek6タンパク質、リン酸化Nek7タンパク質、リン酸化ヒストン、リン酸化カゼイン、リン酸化MBP、およびこれらの融合タンパク質からなる群から選択される、リン酸化キナーゼ基質と特異的に結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記方法の少なくとも1つのステップを、試験管、マイクロタイタープレート、バイオチップ、カバーガラス、およびこれらの組み合わせを含む容器中で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのステップを自動式または半自動式で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
(d)ステップ(c)の上記試験化合物が、分裂細胞の有糸分裂を阻害するか否かを判定する、
という追加のステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
上記ステップ(d)が、培養物中の分裂細胞を上記試験化合物と接触させること、および細胞の溶解、アポトーシス、有糸分裂紡錘体の破壊、染色体の配置異常、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される応答性に関して細胞をアッセイすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記分裂細胞が癌細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記ステップ(d)を、試験管、マイクロタイタープレート、バイオチップ、カバーガラス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される容器中で行う、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
上記ステップ(d)を自動式または半自動式で行う、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
有糸分裂の阻害剤を同定する方法であって、
(a)活性化Nek6またはNek7キナーゼタンパク質、キナーゼ基質、およびプリンヌクレオシド三リン酸を含むキナーゼ反応混合物を提供すること、
(b)前記反応混合物を試験化合物の存在下および不在下で、活性化Nek6またはNek7キナーゼタンパク質が前記キナーゼ基質をリン酸化するのに十分な時間インキュベートすること、および
(c)前記試験化合物の存在下および不在下で、リン酸化キナーゼ基質のレベルを検出することを含み、
前記試験化合物の不在下で生じたレベルと比較して、前記試験化合物の存在下で生じたリン酸化キナーゼ基質のレベルが低いことにより、前記試験化合物が有糸分裂の阻害剤であることが示される、前記方法。
【請求項23】
上記キナーゼ基質がCdc16、MBP、またはこれらの融合タンパク質である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記プリンヌクレオシド三リン酸が、アデノシン三リン酸またはグアノシン三リン酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
上記プリンヌクレオシド三リン酸を32Pで放射標識する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
上記方法のステップ(c)のリン酸化基質キナーゼのレベルを測定するステップを、リン酸化基質キナーゼと特異的に結合する抗体を使用して行う、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
上記抗体が、リン酸化Cdc16、リン酸化MBP、およびこれらの融合タンパク質からなる群から選択されるリン酸化基質キナーゼと特異的に結合する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのステップを、試験管、マイクロタイタープレート、バイオチップ、カバーガラス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される容器中で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つのステップを自動式または半自動式で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
(d)上記試験化合物が、分裂細胞の有糸分裂を阻害するか否かを判定する、
という追加のステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(d)が、培養物中の分裂細胞を上記試験化合物と接触させること、および細胞の溶解、アポトーシス、有糸分裂紡錘体の破壊、染色体の配置異常、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される応答性に関して細胞をアッセイすることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記分裂細胞が癌細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(d)を、試験管、マイクロタイタープレート、バイオチップ、カバーガラス、およびこれらの組み合わせを含む容器中で行う、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(d)を自動式または半自動式で行う、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
個体における癌状態または癌の可能性がある状態を診断する方法であって、
(a)Nercc1、Nek6、またはNek7キナーゼタンパク質、あるいは対応するキナーゼ活性のレベルに関して、前記個体由来の細胞をアッセイすること、
(b)ステップ(a)からの細胞で測定したNercc1、Nek6、またはNek7タンパク質、または対応するキナーゼ活性のレベルを、正常な非癌細胞で測定したレベル、または前記個体由来の細胞の事前のサンプルで測定したレベルと比較することを含み、
正常な非癌細胞で測定したレベルに対して、あるいは前記個体由来の細胞の事前のサンプル中で測定したレベルに対して、ステップ(a)からの細胞中で測定したNercc1、Nek6、またはNek7タンパク質、または対応するキナーゼ活性のレベルの増大が、癌状態または癌の可能性がある状態であると診断される、前記方法。
【請求項36】
ステップ(a)のNercc1、Nek6、またはNek7のレベルを、キナーゼリン酸転移反応、免疫検出アッセイ、およびNercc1、Nek6、またはNek7をコードするmRNAに関する転写アッセイからなる群から選択される方法によって検出する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(a)の個体の細胞を、組織生検、血液、細胞塗抹標本、組織スワブ、体液、および糞便からなる群から選択される供給源から得る、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
構成的に活性な突然変異体Nercc1キナーゼタンパク質またはその融合タンパク質であって、前記突然変異体Nercc1キナーゼタンパク質、またはその融合タンパク質が、前記突然変異体Nercc1キナーゼタンパク質、またはその融合タンパク質中の活性化部位におけるリン酸化の不在において活性がある、前記突然変異体Nercc1キナーゼタンパク質またはその融合タンパク質。
【請求項39】
上記突然変異体Nercc1キナーゼタンパク質またはその融合タンパク質が、RCC1自己阻害ドメインの全体または一部分を欠いている、請求項38に記載の突然変異体Nercc1キナーゼタンパク質またはその融合タンパク質。
【請求項40】
突然変異体Nercc1タンパク質であって、RCC1自己阻害ドメインの全部または十分な部分を欠いており、その結果前記突然変異体Nercc1タンパク質が恒久的に活性化されて、リン酸化を経ることを必要とせずに機能的Nercc1キナーゼ活性を付与する、前記突然変異体Nercc1タンパク質。
【請求項41】
上記突然変異体Nercc1タンパク質がNercc1(Δ347-732)である、請求項41に記載の突然変異体Nercc1タンパク質。
【請求項42】
Nercc1(Δ347-732)、Nercc(Δ763-889)、Nercc1(347-732)、Nercc(338-739)、およびこれらの融合タンパク質からなる群から選択されるNercc1の突然変異体。
【請求項43】
Nercc1(Δ347-732)、Nercc(Δ763-889)、Nercc1(347-732)、およびNercc(338-739)からなる群から選択されるNercc1の突然変異体とインフレームで連結した非Nerccポリペプチドを含む、融合タンパク質。
【請求項44】
上記融合タンパク質が、グルタチオニンS-トランスフェラーゼ(GST)、エピトープタグポリペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非Nerccポリペプチドを含む、請求項38、39、42、および43のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
上記エピトープタグポリペプチドが、FLAG、HA、myc、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項44に記載の融合タンパク質。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−512048(P2006−512048A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−511538(P2004−511538)
【出願日】平成15年6月11日(2003.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/019743
【国際公開番号】WO2003/104479
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】