説明

有線式鉄道車両内磁界測定装置

【課題】 鉄道車両内の磁界測定を精確に行うことができる、有線式鉄道車両内磁界測定装置を提供する。
【解決手段】 有線式鉄道車両内磁界測定装置において、磁気センサ1Aが取り付けられたプローブ1と、このプローブ1が取り付けられたアーム2Aの回転角の角度情報及び位置データを計測する位置検出器2と、前記磁気センサ1Aからの磁界測定データと前記位置検出器2からの角度情報及び位置データとをインターフェース装置3を介して取り込むパーソナルコンピュータ(PC)4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有線式鉄道車両内磁界測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両内の磁界測定は、予め位置(空間座標)がわかるような目標物(水糸や定規)を非磁性体で組み、その場所で1点ずつ磁界を測定する方式を用いていた。
また、磁気浮上式鉄道車両においては、超電導コイルによる磁場の遮蔽(シールド)が重要な問題となっている(下記非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】笹川 卓 他 3名,「フラックスの流れに注目した磁気シールド試験結果」,財団法人鉄道総合技術研究所,リニアドライブ研究会,LD−94−042,(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでの鉄道車両内の磁界測定方法では、空間座標データと磁界測定データを同時に取得することができず、測定後に空間座標データと磁界測定データを照らし合わせる作業が必要である。また、空間座標データの信頼性も低い。さらに、詳細にデータを取得したい場所と大雑把でよい場所とを考慮した不等間隔でデータを取る場合に、それに合わせて目標物を予め設置する必要があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、鉄道車両内の磁界測定を精確に行うことができる、有線式鉄道車両内磁界測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕有線式鉄道車両内磁界測定装置において、磁気センサが取り付けられたプローブと、このプローブが取り付けられたアームの回転角の角度情報及び位置データを計測する位置検出器と、前記磁気センサからの磁界測定データと前記位置検出器からの角度情報及び位置データとをインターフェース装置を介して取り込むパーソナルコンピュータ(PC)とを具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記磁気センサがホール素子であることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記位置検出器がポテンショメータやロータリーエンコーダであることを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記位置検出器から一定の距離にある測定面の空間座標は、前記位置検出器からの角度情報に基づいて補正することにより得られることを特徴とする。
【0008】
〔5〕上記〔1〕記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、測定者が前記プローブと前記位置検出器と前記インターフェース装置と前記パーソナルコンピュータ(PC)から構成される磁界測定装置を携帯し、鉄道車両内の所望の空間位置での磁界の測定を行うことを特徴とする。
〔6〕上記〔5〕記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記磁界測定装置を前記測定者が装着具により携帯して磁界を測定し、前記パーソナルコンピュータ(PC)の表示画面に空間座標と磁束密度の測定値を表示し、可視化された画像を確認しながら測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)鉄道車両内の所望の位置の磁界測定を精確に行うことができる。
(2)空間座標データと磁束密度データを同時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示す有線式鉄道車両内磁界測定装置の概要を示す図面代用写真である。
【図2】本発明の実施例を示すセットされた測定装置の全体図である。
【図3】座標データの補正例を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す有線式鉄道車両内磁界測定装置を用いた測定例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の有線式鉄道車両内磁界測定装置は、磁気センサが取り付けられたプローブと、このプローブが取り付けられたアームの回転角の角度情報及び位置データを計測する位置検出器と、前記磁気センサからの磁界測定データと前記位置検出器からの角度情報及び位置データとをインターフェース装置を介して取り込むパーソナルコンピュータ(PC)とを具備する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す有線式鉄道車両内磁界測定装置の概要を示す図面代用写真、図2は本発明の実施例を示すセットされた有線式鉄道車両内磁界測定装置の全体図であり、図2(a)はその磁界測定装置のx−y面を示す図、図2(b)はその磁界測定装置のz面を示す図、図3は座標データの補正例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、有線式鉄道車両内磁界測定装置は、プローブ1、位置検出器2、インターフェース装置3、パーソナルコンピュータ(PC)4より構成される。プローブ1には、例えばホール素子のような磁気センサ1Aを取り付け、磁束密度を測定する。位置検出器2は、プローブ1が取り付けられたアーム2Aの回転角を計測できるように、ポテンショメータやロータリーエンコーダ2Bにより構成され、空間座標を測定する。また、位置検出器2はアーム2Aの二方向の回転角を同時に測定できるように構成される。得られたデータは、インターフェース装置3によりPC4に取り込まれて記録され、可視化処理が行われてPC4の表示画面上に画像として表示される。ここで、4AはPC4の表示画面での可視化処理状態、4BはPC4の表示画面でのデータ蓄積処理状態を示している。なお、5は方眼が描かれたベース、6は固定ブロック、7は垂直支持部材、8は水平支持部材である。
【0014】
また、位置検出器2から一定の距離にある測定面(図1の方眼が描かれたベース5の部分)の空間座標(mm)は、図3に示すように、位置検出器2の角度情報(ポテンショメータ2Bからの出力)に基づいて補正することにより精度よく得ることができる。
このように、有線式鉄道車両内磁界測定装置は鉄道車両内の所望位置に配置して空間座標と磁束密度を同時に測定することができ、PC4に取り込まれたデータは、空間座標と磁束密度が同時に測定されているため、PC4で可視化処理などを容易に行うことができる。
【0015】
さらに、アーム2Aの長さを検出する装置を付加することにより、平面の磁束密度分布だけではなく、下記の補正式を用いて三次元分布も測定することができる。
位置検出器2の座標を (0,0,0) とし、アーム2Aのy軸回転角をθy、アーム2Aのz軸回転角をθz、アーム2Aの長さをLとすると、座標 (x,y,z) は下記の式で与えられる。
【0016】
x=√〔L2 /(1+tan2 θz+tan2 θy)〕
y=x・tanθy
z=x・tanθz
図4はこの有線式鉄道車両内磁界測定装置を用いた測定例を示す模式図である。
この図に示すように、鉄道車両に添乗する測定者11はプローブ、位置検出器、インターフェース装置及びPC16から構成される有線式鉄道車両内磁界測定装置12を肩から吊るしたバンド14や胴回りのバンド15などの装着具13で携帯することにより、鉄道車両内の所望の空間位置での磁界の測定を行うことができる。この時、PC16の表示画面17には空間座標と磁束密度の測定値が表示されるので、その可視化された画像を確認しながら測定することができる。
【0017】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の有線式鉄道車両内磁界測定装置は、鉄道車両内の磁界測定を精確に行うことができる、有線式鉄道車両内磁界測定装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 プローブ
1A 磁気センサ
2 位置検出器
2A アーム
2B ポテンショメータやロータリーエンコーダ
3 インターフェース装置
4,16 パーソナルコンピュータ(PC)
4A PCの表示画面での可視化処理状態
4B PCの表示画面でのデータ蓄積処理状態
5 方眼が描かれたベース
6 固定ブロック
7 垂直支持部材
8 水平支持部材
11 測定者
12 有線式鉄道車両内磁界測定装置
13 装着具
14 肩から吊るしたバンド
15 胴回りのバンド
17 PCの表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)磁気センサが取り付けられたプローブと、
(b)該プローブが取り付けられたアームの回転角の角度情報及び位置データを計測する位置検出器と、
(c)前記磁気センサからの磁界測定データと前記位置検出器からの角度情報及び位置データとをインターフェース装置を介して取り込むパーソナルコンピュータ(PC)とを具備することを特徴とする有線式鉄道車両内磁界測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記磁気センサがホール素子であることを特徴とする有線式鉄道車両内磁界測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記位置検出器がポテンショメータやロータリーエンコーダであることを特徴とする有線式鉄道車両内磁界測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記位置検出器から一定の距離にある測定面の空間座標は、前記位置検出器からの角度情報に基づいて補正することにより得られることを特徴とする有線式鉄道車両内磁界測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、測定者が前記プローブと前記位置検出器と前記インターフェース装置と前記パーソナルコンピュータ(PC)から構成される磁界測定装置を携帯し、鉄道車両内の所望の空間位置での磁界の測定を行うことを特徴とする有線式鉄道車両内磁界測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の有線式鉄道車両内磁界測定装置において、前記磁界測定装置を前記測定者が装着具により携帯して磁界を測定し、前記パーソナルコンピュータ(PC)の表示画面に空間座標と磁束密度の測定値を表示し、可視化された画像を確認しながら測定することを特徴とする有線式鉄道車両内磁界測定装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−225884(P2012−225884A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96324(P2011−96324)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】