説明

有色レンズケア溶液の時間的光漂白及びその使用

本発明は、コンタクトレンズの消毒及び洗浄用レンズケアキットを提供する。本発明のレンズケアキットは、顧客が、彼らのレンズが消毒され、清潔で、装着準備が完了した時期を、視覚によって確認するのを可能にする。本発明は、有色レンズケア溶液の時間的光漂白のために、コンタクトレンズの消毒及び洗浄の用意ができていることを示す、色の変化に依拠する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広義には、コンタクトレンズの洗浄及び消毒に有効な方法及びキットに関する。特に、本発明は、コンタクトレンズの消毒及び洗浄のカラーコード化の方法、並びに発明の方法を実施するためのコンタクトレンズの消毒及び洗浄用のキットを提供する。
【0002】
背景技術
色分けのシステム(すなわち、カラーコード)が、情報の表示に極めて有効であることは周知である。カラーコードの例として、建設分野で、掘削の間、公共施設を損傷から保護する目的で、現存する地下公共施設を識別するのに用いるユーティリティカラーコード;電気配線用25対のカラーコード;電子部品の定数又は定格を示す電子カラーコード;などが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、人々が色を情報と対応付けるのは容易である。しかし、コンタクトレンズケアの分野において、コンタクトレンズの消毒及び洗浄をコード化するための、色はほとんど用いられていない。
【0003】
コンタクトレンズは、広い範囲の消費者に視力矯正の手段を提供する。コンタクトレンズ装着の利点は多数ある。眼鏡に比べて改良された利便性及び改良された外観が、ほとんどの消費者にとって、おそらく最も重要な二つの利点である。しかし、コンタクトレンズは、快適さを確保し、眼の感染を避けるために、厳格なケア管理体制を必要とする。コンタクトレンズの適切なケアは、典型的には、コンタクトレンズ装着に伴うおそれのある感染又は眼の健康への他の有害な作用を防止するために、消費者が、定期的にレンズを洗浄及び消毒することを要求する。
【0004】
近年、レンズケアシステムの新たな種類として、コンタクトレンズを、全くレンズを機械でこすらずに、洗浄し、消毒し、すすぐ、多目的溶液が開発された。この新規なシステムが、レンズケア市場の大部分を支配し始めている。このような人気は、おそらく、この新規なシステムが消費者に与える容易さ及び利便性に由来する。十分な消毒の結果を達成するために、コンタクトレンズは十分な期間、MPS溶液の中になければならない。しかし、消費者は、彼らのレンズがレンズを消毒するのに十分な時間レンズケア溶液中にあったかどうかを確認する直接の方法を持たない。
【0005】
したがって、顧客が、彼らのレンズが清潔で装着準備が完了した時期を視覚によって確認できるようにするために、色が経時的に変化する色指標を提供することが望まれている。このようなわけで、コンタクトレンズの消毒に必要な期間にわたって、退色又は変色することができるレンズケアキットが必要とされている。
【0006】
発明の概要
本発明は、広義には、コンタクトレンズの洗浄及び消毒用レンズケアキットであって、水溶性着色剤を含む有色レンズケア溶液;及び有色レンズケア溶液を照射するための光線源を有するレンズケースを含み、特定の期間にわたって、徐々に着色剤を分解し、有色レンズケア溶液を無色にし、これにより有色レンズケア溶液による消毒及び洗浄の下にあるレンズが使える状態にあることを示す、コンタクトレンズの洗浄及び消毒用レンズケアキットを提供する。本発明のレンズケアキットは、顧客が、彼らのレンズが消毒され、清潔で、装着準備が完了した時期を、色、好ましくは青の消失を観察することにより、視覚によって確認するのを可能にする。
【0007】
本発明は、上述の及び他の特徴を提供し、本発明の利点は、本明細書で述べる実施態様例の以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。詳細な説明は、単に本発明の具体例であり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の請求項及びその均等物により定義される。
【0008】
発明を実施するための形態
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術・科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で用いる命名法は周知であり、当技術分野において一般に使用されている。当技術分野及び種々の一般的な文献において提供されるような従来の方法が、記載した手順を実施するために用いられる。本発明は、本明細書で記載及び/又は示した特定の装置、方法、条件若しくはパラメータに限定されず、本明細書で用いる専門用語は、特定の実施態様を例としてだけ説明することを目的として、請求された発明を限定することを意図しないことは理解されよう。さらに、文脈が明らかに他を指図しない限り、添付の請求項を含む本明細書で用いる、単数形の言及は複数形を含み、そして特定の数値の言及は少なくともその特定の値を含む。本明細書では、範囲は、ある特定の「約」又は「およその」数値から及び/又は別の特定の「約」又は「およその」数値までとして表すことができる。このような範囲が表されるとき、別の実施態様は、ある特定の数値から及び/又は他の特定の数値までを含む。同様に、先行する「約」を用いることによって値が概値で表される場合、その特定の数値が別の実施態様を形成することが理解されるであろう。
【0009】
本発明は、一つの態様では、コンタクトレンズの洗浄及び消毒用レンズケアキットであって、水溶性着色剤を含む有色レンズケア溶液;及び有色レンズケア溶液を照射するための光線源を有するレンズケースを含み、特定の期間にわたって、徐々に着色剤を分解し、有色レンズケア溶液を無色にし、これにより有色レンズケア溶液による消毒及び洗浄の下にあるレンズが使える状態にあることを示す、コンタクトレンズの洗浄及び消毒用レンズケアキットを提供する。
【0010】
本発明のレンズケアキットを用いて、ハード(PMMA)コンタクトレンズ、ソフト(親水性)コンタクトレンズ、及びハードガス透過性(RGP)コンタクトレンズを含むコンタクトレンズを消毒及び洗浄することができる。ソフトコンタクトレンズは、ヒドロゲルコンタクトレンズ又はシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。
【0011】
「ヒドロゲル」とは、完全に水和した場合、少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマー材料を指す。一般に、ヒドロゲル材料は、少なくとも1種の親水性モノマーを、さらなるモノマー及び/又はマクロマーの存在下あるいは非存在下で、重合又は共重合することによって得られる。
【0012】
「シリコーンヒドロゲル」とは、少なくとも1種のシリコーン含有ビニルモノマー又は少なくとも1種のシリコーン含有マクロマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるヒドロゲルを指す。
【0013】
本明細書で用いる「親水性」は、脂質とよりも水と容易に会合する材料又はその部分を表す。
【0014】
本発明のレンズケアキットは、顧客が、彼らのレンズが消毒され、清潔で、装着準備が完了した時期を視覚によって確認するのを可能にする。本発明は、コンタクトレンズの消毒及び洗浄の用意ができていることを示す色漂白剤の光漂白に依拠する。好ましくは、初めの色は青又は緑又は紫である。任意の他の色を用い得ることが理解される。本発明によれば、レンズケア溶液は、制御された期間にわたって徐々に漂白された色を有する。好ましくは、制御された期間の終わりには、レンズケア溶液の色が、実質的に見えなくなり、そして実質的に透き通ってくる(透明以外は実質的に無色)。制御された期間は、コンタクトレンズの消毒に十分な長さであり、好ましくは少なくとも約2時間、より好ましくは約4時間、さらに好ましくは約6時間である。
【0015】
本発明の有色レンズケア溶液は、水溶性着色剤を含む。本発明によれば、着色剤は、無毒の染料であるべきであり、コンタクトレンズ及びレンズケースを汚染又は着色しない。
【0016】
好適な実施態様では、UV又は可視光線により、制御された特定の期間内に分解(漂白)されることができる任意の染料を、本発明に使用できる。このような染料の例は、ビニルスルホン、反応性アゾ染料、クマリンベース系染料を含むが、これらに限定されない。この好ましい実施態様で用いる好ましい着色剤は、チオニン染料;藻抽出物、例えば、リナブルーAE、リナブルーHGE、リナブルーA、リナブルーHK、リナブルーHG(全て、大日本インキ化学工業(株)により販売されている);精製したアロフィコシアニン及びフィコシアニン(Sigma製)である。チオニン染料は、染料が寸法のみに基づいてレンズ材料により吸収されることを防ぎ、かつその毒性を低下させるために、ポリエチレングリコールポリマーの末端をそれに結合することにより変性することができる。当業者は、ポリマーを染料に共有結合する方法を知っている。
【0017】
別の好ましい実施態様では、着色剤を含有する有色レンズケア溶液は、一重項酸素発生剤と結び付けて用いる。
【0018】
この好ましい実施態様で使用できる染料の例として、クマシーブルー、EvoBlue30、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、レマゾールブリリアントブルー、アシッドブルー62、サノリングリーン(sanoline green)、リナブルーAE、ルミナール、lumigen、ブロムフェノールブルー、メチレンブルー、ブロムクレゾールブルー、チモールブルー、メチルクリスタルパープル、テトラフェノールポルフィリン、トリフェニルアミン染料−ブリリアントグリーン、トリフェニルアミン染料−クリスタルバイオレット、ベンゾイルアントラキノン、ジベンザントロン染料(セラドンジェイドグリーン)、インダントレンブルー、ブリリアントクレシルブルー、2,6ジクロロフェノールインドフェノールNa塩、N,Nジメチル−1,4−フェニレンジアンモニウムジクロリド、ジフェニルアミン、トルイジンブルー、ジフェニルベンジジン、サフラニン、チオニン、バリアミンブルー塩B、アリザリン、イサチン、ケルメス酸、FD&Cブルー#1、FD&Cブルー#2、FD&Cグリーン#3、D&Cブルー#4、D&Cグリーン#5、ExD&Cバイオレッド#2、D&Cグリーン#8、D&Cバイオレッド#2、サンドランブルーE HRC、ハンドラン・ミリングブルーNVC、ジマリン・ブルーK35L、ジマリン・ブリリアントブルーK−BL、カータソル・ブルーGDF、カータソル・ブリリアントバイオレッドSBF、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン、及びスピリウム・ブルーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい染料は、FD&CブルーNo1、サノリンブルー、及びレマゾールブルーである。最も好ましい染料は、FD&CブルーNo1である。
【0019】
本発明によれば、有色レンズケア溶液中に1種以上の着色剤を一緒に用いて、望ましい色を作ることができる。当業者は、望ましい色を実現するための、着色剤の種類及びその量を選択する方法をよく知っているであろう。
【0020】
一重項酸素は、染料分子内の二重結合と反応することができる高反応性の種である。
【0021】
本発明によれば、一重項酸素発生剤とは、UV/可視光線照射の下で一重項酸素を発生することができる化合物を表すことを意図する。好ましい一重項酸素発生化合物の例として、ローズベンガル、メチレンブルー、アズールA、種々の亜鉛ポルフィリン(例えば、亜鉛テトラヒドロフェニル−ポルフィリン、亜鉛テトラカルボキシフェニルポルフィリン、亜鉛ウロポルフィリン、亜鉛プロトポルフィリンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。ローズベンガル、メチレンブルー、及びアズールAが、これらは一重項酸素に対して不活性なので、最も好ましい一重項酸素発生化合物である。
【0022】
本発明によれば、一重項酸素発生剤は、コンタクトレンズを処理するためのレンズケースの溶液に接触する表面に、あるいは固体支持材、例えばガラス、樹脂、又は布織物の表面に共有結合される。一重項酸素発生剤の層を、場合により、最初に固体支持材又はレンズケースの表面を官能化して(表面上に官能基が無い場合)官能基を得て、次に一重項酸素発生剤の層を共有結合させることにより、固体支持材又はレンズケース上に共有結合することができる。固体支持材の表面変性(又は官能化)は、当業者に周知である。任意の適切な公知方法を用いることができる。
【0023】
一重項酸素剤は、固体支持材の官能化された表面に、又は固体支持材表面上の官能基に直接、又はレンズケースの表面に直接、共有結合することができる。これは、直接の反応、又は好ましくは、カップリング剤を用いる反応のいずれでもよい。例えば、1種以上のアミン基を、イソチオシアネート、アシルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサールエポキシド、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、又は無水物基と直接に反応させることができる。
【0024】
あるいはまた、カップリング剤を用いることができる。一重項酸素発生剤の固体支持材表面へのカップリングに有効なカップリング剤として、N,N’−カルボニルジイミダゾール、カルボジイミド、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カルボジイミドは、N−ヒドロキシスクシンイミド又はN−ヒドロキシスルホスクシンイミドと共に用いて、アミンと反応してアミドを形成しうるエステルを形成することもできる。
【0025】
アミノ基も、シッフ塩基の形成によって固体支持材表面にカップリングすることができ、シッフ塩基は、水素化シアノホウ素ナトリウムなどの薬剤で還元されて、加水分解に安定なアミン結合を形成することができる。この目的に有用なカップリング剤として、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えばジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ジスクシンイミジルスベラート、ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート、ジスクシンイミジルタルタレートなど、イミドエステル(ジメチルアジピメートを含むが、これに限定されない)、ジフルオロベンゼン誘導体(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンを含むが、これに限定されない)、臭素官能化アルデヒド(グルタルアルデヒドを含むが、これに限定されない)、及びビスエポキシド(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを含むが、これに限定されない)を含むが、これらに限定されない。当業者は、固体支持材の表面上に存在する官能基に応じて、任意の数の他のカップリング剤を用い得ることが分かるであろう。
【0026】
レンズケースは、典型的には、それぞれが1枚のコンタクトレンズ及び一定量のレンズケア溶液を受けるのに合わせた、1対の分離しかつ個別のウエル(キャビティ又はリザーバ)を有する本体部分を含む。各ウエルは、開口を画定する実質的に円形、長円形又は雨滴形状の外面を持った開放端を有する。レンズケースは、さらに、ウエルにその開放端で取り付けるように合わせられた、実質的に液体不透過性のシールを与える、1個又は2個のキャップを含む。各キャップは、さらに、ウエル周りの外周とかみ合うように適合されたシーリングリム又は表面を含む。レンズケースは、堅牢でレンズ溶液中に含有される化学物質を通さない材料で作製することができる。例えば、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、又はポリプロピレンを選択される構成材料とすることができるが、他のものも用いることができる。
【0027】
好ましくは、固体支持材に結合された一重項酸素発生剤を、コンタクトレンズ及び所定量のレンズケア溶液を収容するためのレンズケースのウエルと流体連通にあるレンズケースの区画に入れることができる。
【0028】
さらに好ましくは、固体支持材は、"Lenz Care Methods and Kits"と題された同時係属中の特許出願(参照により全て本明細書に組み入れられる)に開示されているような、レンズケースの範囲内にピンホイール構造を有する。このピンホイール構造は、ピンホイールの少しの部分だけがレンズケア溶液及び光照射にさらされるのを可能にする蓋で覆われる。数回の使用(すなわち、コンタクトレンズの消毒)後、ピンホイールの蓋が回転して、新しい分量の一重項酸素発生剤が、レンズケア溶液及び光照射にさらされ、そうすると、光照射の下での新しい一重項酸素発生剤により一重項酸素を発生することにより、着色剤を分解することができる。
【0029】
別の好ましい実施態様では、着色剤を含有する有色レンズケア溶液は、半導体ベースの光触媒と結び付けて用いる。
【0030】
半導体ベースの光触媒は、溶液中で有機材料を光分解することができることが実証されている。半導体ベースの光触媒の例として、TiO2、SnO、CdSが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましい光触媒は、その安定性、光触媒効率、環境適合性、入手のしやすさ、及び低コストのために、TiO2である。半導体ベースの光触媒、例えば、TiO2を用いる分解機構は、一般的である。
【0031】
光触媒二酸化チタン(TiO2)が、直射日光又は照らされた光源(蛍光ランプ)から紫外(UV)線(波長λ<388nm)を吸収すると、電子がTiO2の価電子帯から伝導帯に励起し、正電荷(正孔、h+)及び負電荷(電子、e-)を生成する。この段階を、半導体の光励起状態と呼ぶ。価電子帯と伝導帯の間のエネルギー差は、バンドギャップとして公知である。所定の半導体に対する光励起に必要な光の波長は、そのバンドギャップに依存する。二酸化チタンの正孔は電子供与体を酸化し(例えば、水分子を分解して水素ガス及びヒドロキシルラジカルを形成する)、二酸化チタンの電子は電子受容体を還元する(例えば、酸素分子と反応してスーパーオキシドアニオンを形成する)。光が得られるなら、このサイクルは続く。ヒドロキシルラジカル及びスーパーオキシドアニオンは、着色剤とさらに反応して、それを分解することができ、これにより有色レンズケア溶液を漂白(退色)する。
【0032】
二酸化チタンを、レンズケースの溶液に接触する表面上、又は固体支持材の表面上に直接に適用して、それらの上にコーティングを形成することができる。上述した種々の実施態様の固体支持材を、この実施態様で使用できる。
【0033】
本発明で、一重項酸素発生剤又は半導体ベースの光触媒を用いる一つの利点は、光照射の下で発生する殺菌剤、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル及びスーパーオキシドアニオンが、溶液中に含まれる装着したレンズに由来する細菌を殺すことができることである。
【0034】
本発明によれば、光源が、有色レンズケア溶液中の着色剤を光漂白することができるか、一重項酸素発生剤を励起して一重項酸素を発生することができるか、又は半導体ベースの光触媒をその光励起状態(正孔と電子の対)に励起できる光を発することができる限り、光線源は、当業者に公知の任意の光源でよい。好ましい光源は、発光素子(LED)である。レンズケース用のレンズケースキャップを密閉した状態で所定の位置に置いた後、レンズケースの内側でLEDをつける。当業者は、所定の着色剤、一重項酸素発生剤、又は半導体ベースの光触媒に対するLEDを選択する方法をよく知っている。
【0035】
好ましい実施態様では、光誘起反応のオンセット後、反応が起こるのが早すぎる場合は、LEDを設定時間の後で初めてつけるのを可能にする、時間遅延スイッチをLEDに加えることができる。
【0036】
本発明によれば、有色レンズケア溶液は、眼に安全である。レンズケア溶液に関して、用語「眼に安全である」とは、その溶液で処理されたコンタクトレンズを、すすがないで直接眼に装着することに対して安全であることを意味し、すなわち、その溶液が、コンタクトレンズを介する眼との毎日の接触に対して安全かつ十分に快適であることである。眼に安全な溶液は、眼と適合性である張度及びpHを有し、国際ISO規格及び米国FDA規制にしたがって、細胞に有毒でない材料及びその量からなる。
【0037】
用語「眼と適合性である」とは、眼に有意な損傷を与えることなく、かつ使用者の有意な不快を伴わずに、長期間、眼と密接に接触することができる溶液を意味する。
【0038】
有色レンズケア溶液は、市販されているレンズケア溶液を含む任意のレンズケア溶液から、1種以上の着色剤をその中に添加することにより製造することができる。レンズケア溶液は、多目的溶液(過酸化水素を含まない)又は過酸化水素を含有する溶液とすることができる。
【0039】
レンズケア溶液が過酸化水素を含有する溶液であるならば、有色レンズケア溶液は、レンズを消毒する直前に、レンズケース中で、二つの溶液:一方が着色剤を含まず過酸化水素を含有する溶液、もう一方が過酸化水素を含まず着色剤を含有する溶液を混合することにより製造するのが好ましい。このような混合は、二つの分かれた区画(一方が過酸化水素を含有する溶液用で、もう一方が過酸化水素を含まず着色剤を含有する溶液用)を有するコンテナを用いて行うことができる。コンテナはさらに、コンテナから二つの溶液を注ぎ込む際に二つの溶液を混合するために、当業者に公知の混合装置を含むことができる。過酸化水素を含有する溶液及び着色剤を含有する溶液を別個に保管し、要求に応じてそれらを混合して有色レンズケア(消毒)溶液を形成することにより、着色剤が過酸化水素によってゆっくり酸化される可能性を最小限にするか又は除去することができ、そしてこれにより溶液の保存寿命が大きく延びる。
【0040】
本発明によれば、過酸化水素を含有する溶液は、さらに、当業者に公知の他の成分、例えば、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、キシリトール、デクスペンタノール、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコール、及びこれらの混合物)、コンディショニング/湿潤剤(ポリビニルアルコール、ポリオキサマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物)、緩衝剤、界面活性剤などを含むことができる。
【0041】
レンズケア溶液が、例えば、多目的溶液のような、過酸化水素を含まない消毒溶液であるならば、過酸化水素が無いので、着色剤をそれに直接に添加して、本発明の有色レンズケア溶液を製造することができる。
【0042】
好ましい実施態様では、本発明のレンズケア溶液は、コンタクトレンズを消毒、洗浄、そしてすすぐことができる多目的溶液である。
【0043】
用語「消毒溶液」は、コンタクトレンズ上に存在する数多くの微生物の存在を低減するか又は実質的に除去するのに有効である殺菌性化合物を1種以上含有する溶液を意味し、溶液、又はその溶液に浸漬した後のコンタクトレンズを、このような微生物の特定の植え付け材料で誘発試験することによって試験することができる。
【0044】
物品、例えばコンタクトレンズの洗浄、化学的消毒、保管、及びすすぎに有効な溶液を、本明細書では「多目的溶液」という。このような溶液は、「多目的溶液システム」又は「多目的溶液パッケージ」の一部であってよい。多目的溶液、システム又はパッケージを用いる方法は、「多機能消毒方式」と呼ばれる。多目的溶液は、一部の装着者、例えば、化学消毒薬又は他の化学薬剤に特に敏感な装着者が、レンズの挿入に先立って、コンタクトレンズを別の溶液、例えば、滅菌した生理食塩水溶液ですすぐか又は湿潤させることを好むであろうという可能性を排除するものではない。用語「多目的溶液」は、毎日ベースで用いられない定期的クリーナー、又は典型的には週ベースで用いられる、タンパク質を除去する補足クリーナー、例えば酵素クリーナーの可能性も排除しない。
【0045】
本発明の過酸化水素を含まない有色消毒溶液を用いて、コンタクトレンズを、フザリウム・ソラニ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、セラチア・マルセッセンス、及びカンジダ・アルビカンスが挙げられるが、これらに限定されない広い範囲の微生物に対して消毒することができる。本発明の目的のために、用語「消毒」とは、増殖状態にある実質的に全ての病原性微生物(グラム陰性及びグラム陽性菌、並びに菌類を含む)を、非生存にすることを意味する。このような病原性微生物を不活性にする化合物及び組成物は、殺菌剤として公知である。
【0046】
本発明の有色消毒溶液又はMPS溶液は、コンタクトレンズの望ましい消毒を行うのに十分な濃度で殺菌剤を含有しなければならない。本発明で有用な殺菌剤に必要な具体的な濃度は、各殺菌剤に対して実験により決定しなければならない。有効濃度に影響する要因のいくつかは、特定の病原体に対する殺菌剤の比活性、殺菌剤の分子量、及び殺菌剤の溶解性である。選択した殺菌剤を生理学的に許容される濃度で使用することも重要である。本発明で使用できる殺菌剤のリストには、ビグアニド、ビグアニドポリマー、その塩、N−アルキル−2−ピロリドン、ポリクオタニウム−1、ブロノポール、ベンザルコニウムクロリド、及び過酸化水素が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で有用な抗菌性ビグアニドには、ビグアニド、ビグアニドポリマー、その塩、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ビグアニドは、アレキシジン遊離塩基、アレキシジンの塩、クロロヘキシジン遊離塩基、クロロヘキシジンの塩、ヘキセチジン、ヘキサメチレンビグアニド、及びそれらのポリマー、並びにその塩から選択される。最も好ましくは、ビグアニドは、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)とも呼ばれる、ヘキサメチレンビグアニドポリマー(PHMB)である。
【0047】
本発明の典型的な溶液は、殺菌剤PHMBを約0.01〜約10ppm、好ましくは約0.05〜約5ppm、より好ましくは約0.1〜約2ppm、さらに好ましくは約0.2〜約1.5ppmの量で含有する。
【0048】
PHMBは細菌に対して広い範囲の活性及び非特定の作用方式を有するが、PHMBはあるレベルの角膜ステインを起こすおそれがある(Lyndon Jones, et. al. “Asymptomatic corneal staining associated with the use of balafilcon silicon-hydrogel contact lenses disinfected with a polyaminopropyl biguanide - preserved care regimen", Optometry and Vision Science 79: 753-61 (2002))。したがって、レンズケア溶液の抗菌効率を維持しながら、レンズケア溶液中のPHMBの量を低くすることが望まれている。
【0049】
本発明の溶液は、好ましくは、有効量のキレート化成分を含む。任意の適切な、好ましくは眼に許容しうる、キレート化成分を本発明の組成物に含むことができるが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、その塩及びその混合物が特に有効である。EDTAは、低レベル非刺激キレート化剤であり、PHMBと相乗作用して抗菌効率を高めることができる。EDTAの典型的な量は、コンタクトレンズケア組成物の合計量に基づいて、約0.001〜約1重量%、好ましくは約0.002〜約0.5重量%、より好ましくは約0.004〜約0.1重量%、さらに好ましくは約0.005〜約0.05重量%である。
【0050】
本発明の溶液は、緩衝剤を含有するのが好ましい。緩衝剤は、pHを好ましくは所望の範囲、例えば、約6.0〜約8.0の生理学的に許容される範囲に維持する。任意の公知の、生理学的に適合性の緩衝剤を用いることができる。本発明によるコンタクトレンズケア組成物の成分として適切な緩衝剤は、当業者に公知である。例は、ホウ酸、ホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、例えばクエン酸カリウム、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、トリス(トロメタモール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ビス−アミノポリオール、リン酸緩衝液、例えばNa2HPO4、NaH2PO4、及びKH2PO4又はこれらの混合物である。各緩衝剤の量は、組成物のpH約6.5〜約7.5を達成するのに効果的な必要量である。典型的には、それは0.001〜2%、好ましくは0.01〜1%、最も好ましくは約0.05〜約0.30重量%の量で含まれる。
【0051】
好ましい緩衝剤は、式(I):
【0052】
【化1】

【0053】
(式中、a、b、c、d、e、f、g、及びhは、独立して、1〜6の整数であり;R及びR’は、独立して、−H、−CH3、−(CH22-6−H、及び−(CH21-6−OHよりなる群から選択される)のビス−アミノポリオールである。本発明では、式(I)で示される緩衝剤は、種々の水溶性の塩の形態で与えることもできる。最も好ましいビス−アミノポリオールは、1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]メチルアミノ)プロパン(ビス−トリス−プロパン)である。
【0054】
ビス−トリス−プロパンは、特定の殺菌剤(例えば、PHMB)及び殺カビ剤と相乗作用を示すことができ、他の緩衝剤と組み合わせて用いたこれらの同じ活性成分の活性よりも著しく高い殺菌活性をもたらすことが見出された。ビス−トリスプロパンは、Biochemicals and Reagents, Sigma-Aldrich Co., 2000-2001 editionに、生理的緩衝剤として記載されている。ビス−トリス−プロパンの具体的な構造を式IIに示す。
【0055】
【化2】

【0056】
この二塩基化合物の解離定数は、pKa1=6.8及びpKa2=9.5であり、これがこの化合物の水溶液を約6.3〜9.3の広いpH範囲で緩衝剤として有用なものにしている。本発明で用いる濃度でビス−トリス−プロパンは、眼及び公知のコンタクトレンズ材料に害がなく、したがって、眼に適合性である。
【0057】
本発明の有色レンズケア溶液は、潤滑剤を含むのが好ましい。本明細書で用いる「潤滑剤」とは、コンタクトレンズ及び/若しくは眼の表面湿潤性を高めるか、又はコンタクトレンズ表面の摩擦特性を低減することのできる任意の化合物又は材料を指す。潤滑剤の例として、ムチン様材料及び親水性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ムチン様材料の例には、ポリグリコール酸、ポリラクチド、コラーゲン、及びゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。ムチン様材料は、ドライアイ症候群を緩和するために用いることができる。ムチン様材料は、有効量で含まれるのが好ましい。
【0059】
親水性ポリマーの例には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、親水性ビニルコモノマー1種以上が含まれるか含まれないビニルラクタム少なくとも1種のコポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドと親水性ビニルモノマー1種以上とのコポリマー、これらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
溶液は、粘度上昇剤1種以上を含有してもよい。適切な粘度上昇成分として、ポリビニルピロリドン、水溶性天然ゴム、セルロース系ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。有用な天然ゴムとして、グアーゴム、トラガカントゴムなどが挙げられる。粘度上昇剤として有用なセルロース系ポリマーの例として、セルロースエーテルが挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
好ましいセルロースエーテルの例は、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はこれらの混合物である。より好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びこれらの混合物である。セルロースエーテルは、組成物中に、コンタクトレンズケア組成物の合計量に基づいて、約0.01〜約5重量%、好ましくは約0.05〜約3重量%、さらに好ましくは約0.1〜約1重量%の量で含まれる。レンズケア組成物中で、セルロースエーテルは、レンズケアの粘度を上げるために用いることができ、そして潤滑剤として働くことができると考えられる。
【0062】
極めて有用な粘度上昇成分は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。本発明の組成物中に用いるポリビニルピロリドン(PVP)は、1−ビニル−2−ピロリドンモノマーから誘導される繰り返し単位を少なくとも90%含む、直鎖状ホモポリマー又は本質的に直鎖状ホモポリマーであり、このポリマーは、より好ましくは、少なくとも約95%又は本質的に全てがその繰り返し単位を含み、残部は重合適合性のモノマー、好ましくは中性モノマー、例えばアルケン又はアクリレートから選択される。PVPに対する他の同義語として、ポビドン、ポリビドン、1−ビニル−2−ピロリジノン、及び1−エテニル−2−ピロリオノン(CAS登録番号9003−39−8)が挙げられる。本発明で適切に用いられるPVPの重量平均分子量は、約10,000〜250,000、好ましくは30,000〜100,000である。このような材料は、種々の会社により販売されており、ISP Technologies,Inc.の登録商標PLASDONE(商標)K−29/32、BASFの登録商標KOLLIDON(商標)、USPグレードのPVPとして、例えばKOLLIDON(商標)K−30又はK−90を含む。本発明は、いかなる特定のPVPにも限定されないが、K−90 PVPが好ましく、より好ましくは医薬グレードである。
【0063】
本発明による有色レンズケア溶液は、好ましくは、それらが涙液と等張であるように配合される。涙液と等張である溶液は、一般に、その濃度が0.9%の塩化ナトリウム溶液(308mOsm/kg)の濃度に相当する溶液であると理解される。処理するコンタクトレンズが損傷を受けない限り、この濃度からの逸脱は全体にわたって可能である。
【0064】
涙液との等張性、又はさらに別の望ましい張度は、張度に影響を及ぼす有機又は無機物質を添加することにより調節することができる。眼に許容できる適切な張度調節剤として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、デクスパンテノール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、溶液の張度の大部分は、ハロゲン化物を含有しない電解質(例えば、重炭酸ナトリウム)、及び非電解質化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物によりもたらされる。溶液の張度は、典型的には、約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜350mOsmの範囲であるように調節する。
【0065】
本発明によれば、有色レンズケア溶液は、さらに、コンタクトレンズ洗浄用の界面活性剤を含むことができる。任意の適切な公知の界面活性剤を本発明に使用できる。適切な界面活性剤の例として、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのブロックコポリマーからなるノニオン界面活性剤であるポロキサマー、商品名PluronicでBASF Corp.製(Pluronic(商標)及びPluronic-R(商標));エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをエチレンジアミンと組み合わせたブロックコポリマー誘導体であるポロキサミン;ホルムアルデヒド及びオキシランとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマーであるチロキサポール;エトキシル化アルキルフェノール類、例えば商品名TRITON(Union Carbide, Tarrytown, N.Y., USA)及びIGEPAL(Rhone-Poulenc, Cranbury, N.J., USA)で市販されている種々の界面活性剤;ポリソルベート、例えば、商品名TWEEN(ICI Americas, Inc., Wilmington,Del., USA)で市販されているポリソルベート界面活性剤を含むポリソルベート20;アルキルグルコシド及びポリグルコシド、例えば、商品名PLANTAREN(Henkel Corp., Hoboken, NJ., USA)で市販されている製品;及びBASFから登録商標CREMAPHORで市販されているポリエトキシル化ヒマシ油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
好ましい界面活性剤として、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドのホモポリマー、並びに特定のポロキサマー、例えばBASFから、商品名PLURONIC(登録商標)17R4、PLURONIC(登録商標)F-68NF、PLURONIC(登録商標)F68LF、及びPLURONIC(登録商標)F127で市販されている材料が挙げられ、PLURONIC(登録商標)F-68NF(National Formulary grade)が最も好ましい。より好ましくは、PLURONIC(登録商標)17R4及びPLURONIC(登録商標)F127の組み合わせを用いる。含まれる場合、ポロキサマーを約0.001〜約5重量%、好ましくは約0.005〜約1重量%、より好ましくは約0.05〜約0.6重量%で使用できる。
【0067】
本発明による有色レンズケア溶液は、公知の方法で、特に従来の、成分と水とを混合するか又は成分を水へ溶解することによって製造する。
【0068】
本キットは、場合により、コンタクトレンズを眼の中で直接に洗浄及び潤滑するためのレンズケア溶液の使用方法の使用説明書を含んでもよい。
【0069】
コンタクトレンズを、レンズケース中の本発明の有色レンズケア溶液にレンズを浸漬することにより、溶液と接触させることができる。必須ではないが、コンタクトレンズを含有する溶液を、例えば、溶液及びコンタクトレンズを含有するレンズケースを振盪することにより、攪拌して、レンズから付着物の除去を少なくとも促進することができる。
【0070】
別の態様では、本発明は、コンタクトレンズを洗浄及び/又は消毒する方法を提供する。本方法は、コンタクトレンズ1個以上を、レンズケース中の着色剤を含む有色レンズケア溶液と接触させ、有色レンズケア溶液を照射するための光線源;有色レンズケア溶液を指定の期間照射し;次いで有色レンズケア溶液の色における変化を観察する工程を含み、有色レンズケア溶液の実質的な退色が、有色レンズケア溶液による消毒及び洗浄の下にあるレンズが使える状態にあることを示す。
【0071】
上で述べた種々の実施態様を、本発明のこの態様に使用できる。
【0072】
本発明の溶液及び方法は、本発明の溶液が酵素、例えばUNIZYME(登録商標)のタンパク質分解活性に負の効果を与えないので、コンタクトレンズからごみ又は付着物を除去するために、酵素と組み合わせて用いることができる。このような接触工程の後、コンタクトレンズは、場合により、生理食塩水を用いて手でこするか、又はこすらずにすすぐだけでも、付着物をレンズからさらに除去することができる。本洗浄方法は、レンズを装着者の眼に戻す前に、実質的に液体水性媒体を含まないレンズをすすぐことも含むことができる。
【0073】
前述の開示は、当業者が本発明を実施できるようにする。読者が具体的な実施態様及びその利点をよりよく理解することができるように、以下の実施例を参照することを提案する。
【0074】
実施例1
チオニン染料の変性及び脱色:PEG(ポリエチレングリコール)ポリマーの末端をチオニンに結合させた。この変性チオニンが、種々のコンタクトレンズ(Focus(登録商標)Night and Day(商標)(FND)、Focus(登録商標)Monthly、Focus(登録商標)Dailies(登録商標)、及びCibasoft(登録商標)レンズ(全てCIBA Vision製)を着色するおそれがあるかどうかを試験するために実験を行った。24時間後、検討したレンズのいずれにも明らかな取り込みはなかった。しかし、チオニン溶液の色はは失われた。このPEG−チオニンを修正USP溶出試験を用いて、細胞毒性試験もテストした。細胞毒性のないことが分かった。
【0075】
光漂白:赤色LEDを約6時間照射した後、PEG−チオニンは、ほぼ完全に分解(退色)した。
【0076】
適切な吸光度範囲、600nmで0.1〜015を得るように、PEG−チオニンを含有する有色レンズケア溶液を調製し希釈した。サンプル6mlを、光度2000mcd及び視角30°のUV LEDに、それぞれ0、2、4及び6時間当てた。4及び6時間後、溶液の色が著しく薄くなることが分かった(すなわち、視覚によって対照と区別できる)。このことは、吸光度値が約39.5%〜51.5%低下する、吸光度値の変化によっても支持される。
【0077】
実施例2
リナブルーAEの脱色:
シアノバクテリアからの天然産物タンパク質であるリナブルーAEが光に敏感なことは、文献で周知である。
【0078】
リナブルーAEを添加することにより、Aquify(登録商標)MPS(CIBA Vision)から有色レンズケア溶液を調製した。有色溶液を、UV電球、及びレンズを洗浄するための小さなソニケーターを含有するPurilens洗浄システムに、3サイクル付した。15分刻みでシステム内のUVランプをつけた。リナブルーAE Aquify MPS溶液の完全な脱色は、3サイクルで行うことができた。しかし、リナブルーAEを脱色するために、UV、白色、及び赤色LEDを光源として用いた場合、これらのLEDはどれも、溶液中のリナブルーAEを完全に脱色するのに成功しなかった。LED照射は、6時間内にリナブルーAEを脱色するのに十分でないと考えている。レンズケース中のLEDの数を増やしかつ/又はレンズケース中のLEDを特別に配置することによりにより、この問題を解決できる。あるいはまた、一重項酸素又は光触媒に依拠して有色レンズケア溶液中の着色剤を分解することができる。
【0079】
リナブルー配合物の脱色:リナブルーAEを含有するSolocare Aqua溶液を、Purilensシステムを用いて、15分サイクル2回より多く、UV光に当てた。3サイクル後、溶液は脱色されたことが観察された。
【0080】
リナブルー配合物のUV分解:リナブルーAEを着色剤として含有する2種の有色レンズケア溶液を調製した。紫外線照射前及び後の両方の配合物サンプルを、ESP溶出試験、ニュートラルレッド取り込み/放出及びAB試験を用いる細胞毒性試験に付した。この試験の結果から細胞毒性はないことが分かった。
【0081】
特定の用語、装置、及び方法を用いて本発明の種々の実施態様を説明したが、このような記載は例示のためだけにすぎない。用いた用語は、限定の用語ではなく説明の用語である。請求項に記載する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、当業者によって変更及び改変がなされうることは理解されよう。さらに、種々の実施態様の態様は、全体又は部分的に、交換可能であることが理解されるべきである。さらに、表題、見出しなどは、この文書の読者の理解を高めるために設けられたものであり、本発明の範囲を限定するものとして読むべきではない。したがって、添付請求項の趣旨及び範囲は、本明細書に含まれる好ましいバージョンの記載に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズの洗浄及び消毒用レンズケアキットであって:
水溶性着色剤を含む有色レンズケア溶液;及び
有色レンズケア溶液を照射するための光線源を有するレンズケース
を含み、
光線源は、特定の期間にわたって、着色剤を徐々に分解し、有色レンズケア溶液を無色にすることができ、これにより有色レンズケア溶液による消毒及び洗浄の下にあるレンズが使える状態にあることを示す、コンタクトレンズの洗浄及び消毒用レンズケアキット。
【請求項2】
着色剤が、光線源により、特定の期間内に分解(漂白)されることができる染料である、請求項1記載のレンズケアキット。
【請求項3】
染料が、チオニン又はポリエチレングリコールポリマーの末端をそれに結合させることにより変性したチオニンである、請求項2記載のレンズケアキット。
【請求項4】
レンズケースが、一重項酸素発生剤を含む、請求項1記載のレンズケアキット。
【請求項5】
一重項酸素発生剤が、レンズケースの溶液に接触する表面に共有結合された、請求項4記載のレンズケアキット。
【請求項6】
一重項酸素発生剤が、レンズケース内に有色レンズケア溶液と接触して置くことができる固体支持材の表面に共有結合された、請求項4記載のレンズケアキット。
【請求項7】
固体支持材が、ガラス、樹脂、又は布織物である、請求項6記載のレンズケアキット。
【請求項8】
固体支持材が、レンズケースの範囲内にピンホイール構造を有し、該ピンホイール構造は、ピンホイールの少しの部分だけがレンズケア溶液及び光照射にさらされるのを可能にする蓋で覆われ、数回の使用後、ピンホイールの蓋は回転して、新しい分量の一重項酸素発生剤が、レンズケア溶液及び光照射にさらされることを可能にする、請求項6記載のレンズケアキット。
【請求項9】
レンズケースが半導体ベースの光触媒を含む、請求項1記載のレンズケアキット。
【請求項10】
光触媒がTiO2である、請求項9記載のレンズケアキット。
【請求項11】
TiO2を、レンズケースの溶液に接触する表面に、直接に適用する、請求項9記載のレンズケアキット。
【請求項12】
TiO2を、レンズケース内に有色レンズケア溶液と接触して置くことができる固体支持材の表面に適用する、請求項9記載のレンズケアキット。
【請求項13】
固体支持材が、ガラス、樹脂、又は布織物である、請求項12記載のレンズケアキット。
【請求項14】
有色レンズケア溶液が過酸化水素を含まない多目的溶液である、請求項1記載のレンズケアキット。
【請求項15】
殺菌剤が、着色剤の分子量よりも少なくとも5倍大きい分子量のヘキサメチレンビグアニドポリマー(PHMB)である、請求項14記載のレンズケアキット。
【請求項16】
ヘキサメチレンビグアニドポリマー(PHMB)の分子量が、着色剤の分子量よりも少なくとも5倍大きい、請求項15記載のレンズケアキット。
【請求項17】
PHMBが約0.01〜約10ppmの量で含まれる、請求項16記載のレンズケアキット。
【請求項18】
有色レンズケア溶液が、最初は青又は緑又は紫の色を有し、特定の期間の終わりに、有色レンズケア溶液の色が、実質的に見えなくなり、実質的に透明になる、請求項1記載のレンズケアキット。
【請求項19】
制御された期間が少なくとも約2時間である、請求項12記載のレンズケアキット。
【請求項20】
レンズを処理する直前に、レンズケース中で、一方の着色剤を含まず過酸化水素を含有する溶液と、もう一方の過酸化水素を含まず着色剤を含有する溶液の、二つの溶液を混合することにより有色レンズケア溶液を得る、請求項1記載のレンズケアキット。

【公表番号】特表2010−500154(P2010−500154A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524661(P2009−524661)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/017963
【国際公開番号】WO2008/021349
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】