説明

服薬遵守モニタリングシステム

本発明は呼出呼気におけるマーカーの検出に関する。呼出呼気におけるマーカーの有無を様々な臨床データを評価するために使用する。たとえば、服薬遵守に関する患者の遵守や薬剤代謝に関する患者の酵素(代謝)能である。本発明の一実施形態はマーカーで標識された親治療薬を備え、その治療薬の(たとえば酵素の作用を介する)代謝に基づき、当該マーカーが揮発性又は半揮発性となって、呼気中に現れる。ある関連実施形態において、マーカーは重水素ラベルを含み、これもまた治療薬の代謝に基づいて呼気中に現れる。本発明の他の実施形態において、治療薬は(重水素で標識されていてもされていなくてもよい)タガントに関係しており、そしてこれが容易に測定可能なマーカーを呼気中に生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気又はその他同種の形態をした服薬遵守をモニタリングするためのマーカーの検出に係り、特に、マーカーが薬剤と結合されている場合において、薬剤が患者により服用された後に呼出された呼気中のマーカーを検出するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼気はユニークな身体に関する流体である。血液、尿、糞便、唾液、汗及びその他の身体に関する流体と異なり、それは呼吸毎に、したがって連続的な方法で得ることができる。それは、非侵襲的にサンプリングするために容易に得ることができる。肺は、心臓の右側からの血流のほぼ100%を受け取り、また、ガスの効果的な拡散(たとえば、酸素と二酸化炭素を輸送する)のための膨大な表面積を含んでいる解剖学的構造(たとえば、厚さわずか200‐1000nmで、血液と肺の中のガスとを分ける肺胞毛細血管膜)を有するので、呼気中の被検体/化合物の濃度は、それらの血中濃度と相関するだけでなく、血中における被検体/化合物の濃度の突然の変化に対して急速に変化するであろうことが示唆されている。他の身体に関する流体でなく呼気をサンプリングすることの他の積極的な側面は、呼気が重大な感染の伝達に関連し難いことと、生体サンプルの収集(たとえば、薬物検査のための採尿)を必要とする被験者に対してより非侵襲的であることと、そして、ヘルスケア評価及び/又は薬物検査のために被験者から生体試料を集める者たち(たとえば、血液を採取したり、尿、唾液及び他の非呼気の生体媒質を集めたりする医療従事者)によってより好まれることである。さらに、呼気サンプルの収集は、かなり簡単で痛みがない。
【0003】
呼気は2つのコンポーネントで構成される。すなわち、1)気相と2)液相である。呼気の液相は、気相からの噴霧状小滴と縮合水により形成される。呼出された呼気は、37℃(体温)でほぼ100%の湿度を有する。呼出された呼吸中の噴霧状小滴は、気道ライニング流体(ALF:airway lining fluid)上のエアーの総体流から恐らくは形成される。これは、肺の中の気道流路のかなりの部分にライニングする薄い液体層である。ALFは血液の限外濾過液と考えることができ、肺胞毛細血管膜の一方の側から反対の側までの分子の輸送を、1)膜貫通による通過(たとえば、極度に荷電しておらず、脂肪親和性の強い分子体・分子要素molecular entities)により、及び/又は細胞膜を直接通して輸送することを必要としない細胞間の分離細胞空間を通じた輸送(たとえば、極度に荷電され及び/又は高度に水溶性の分子体・分子要素molecular entities)により、可能にする。したがって、驚くことではないが、血液に存する異なる特性(たとえば、揮発性、半揮発性、不揮発性、疎水性、親水性、荷電性、非荷電性、小型、大型)を有する種々様々の分析物/化合物は、素早く肺胞毛細血管を横断して呼気に現われることができる。集められたサンプルの温度が37℃以上に維持されると、揮発性又は半揮発性の分析物、特に水になかなか溶けずに、容易に水から拡散するものは、優先的に呼気のガス状態に留まり、化合物にとってのガスとして扱うことができる。この場合、ガス状の媒体で作動するように設計されたセンサーが望ましいであろう。高度に水溶性で溶媒に残り易い化合物については、呼出された呼気サンプルは、冷却して凝縮液として集めることができる。その後、この液体は、液体ベースの分析のために設計されたセンサーで分析することができる。気相において典型的に検出できるであろう化合物は静脈麻酔薬、プロポフォールのような脂肪親和性(疎水性)で半揮発性又は揮発性の分子である(37℃で蒸気圧〜0.2mmHg)。他方、液相で検出されるであろう化合物は親水性、不揮発性で及び/又は生理的なpH(標準pH=7.4)でかなり荷電されている。たとえば、グルコース、乳酸、ほとんどの治療薬及び電解物(たとえば、CL、Na、K、Ca2+、Mg+2)などである。このように、呼出された呼気サンプルは、一定の化合物及びセンサーのためのガス状のマトリックス、及び他のもののための液状マトリックスを生成するために扱うことができる。2つ以上の化合物を検出することが望ましい場合には(たとえば、呼気中の親水性分子及び疎水性分子の検出)、サンプルを分離して、ある部分はガスとして維持し、ある部分は液体として凝縮することができる。
【0004】
薬剤ノンコンプライアンス(又は非服用)は薬を時間どおりに処方量だけ服用しないことであり、それは患者を薬剤不十分又は薬剤過剰の状態にさせてしまう。服薬遵守の欠落は、多くの病気と同じくらいに危険で高価である。どの医師もどの介護人も理解するように、薬は指示されたところに従って服用された場合にのみ有効である。
【0005】
ノンコンプライアンスは、すべてのカテゴリーの患者及び病気に対して影響する。乳癌、臓器移植、及び高血圧症の人々、そしてまた抗生物質を短い期間服用すべき人々もすべて、彼らの薬剤を服用することを忘れる場合がある。研究者たちにより、患者が従順となるかによって影響する200を超える可変体が識別された。また、コンプライアンスの割合は、特に無症候性の疾病の患者について、経時的に低下しがちである。
【0006】
患者が医師により処方された薬のレジメンに従わないこと(ノンコンプライアンス)により、喪失仕事日で見積もって1年当たり約1000億ドルもの過度のヘルスケアコスト、より高いメディカルケアコスト、より高い合併症割合、また薬の消耗がもたらされている。研究によると、ノンコンプライアンスにより米国だけで125,000の死が毎年もたらされているとされている[Smith,D.,“Compliance Packaging:A Patient Education Tool,”American Pharmacy,NS29(2)(1989)]。さらに、薬剤の非服用により病院やナーシングホームへの入院の10〜25パーセントがもたらされており、国際的な流行になっている[Standberg,L.R.,“Drugs as a Reason for Nursing Home Admissions,”American Healthcare Association Journal,10(20)(1984);Schering Report IX,The Forgetful Patient:The High Cost of Improper Patient Compliance;Oregon Department of Human Resources,A study of Long‐Term Care in Oregon with Emphasis on the Elderly,(March 1981)]。
【0007】
毎年調合される20億の処方薬の約50%は正確に服用されていない[National Council for Patient Information and Education]。患者のうちの1/3人は彼らの薬をすべて服用し、患者のうちの1/3人は処方された薬をある程度服用し、患者のうちの1/3人は全く服用しない[Hayes,R.B.,NCPIE Prescription Month,(October 1989)]。様々な研究により報告されたコンプライアンスのそのような最適とはいえない割合は、米国の民衆が年を取って老年期に伴う病気と戦うために薬にもっと依存するようになるにつれてさらに非常に重要になる。2025年迄には、米国人口の17%以上は65歳以上になり[Bell JA,May FE,Stewart RB:Clinical research in the elderly:Ethical and methodological considerations.Drug Intelligence and Clinical Pharmacy,21:1002‐1007,1987]、そして高齢者は65未満の市民と比較して平均で3倍もの薬を服用する[Cosgrove R:Understanding drug abuse in the elderly.Midwife,Health Visitor&Community Nursing 24(6):222‐223,1988]。老年期に時折伴う健忘症は、大規模にコンプライアンスをモニターする費用対効果の大きい方法を考案することを、さらに急がせる。
【0008】
さらに、伝染病の患者のノンコンプライアンスは、公衆衛生機関に毎年数百万ドルを要させ、流行病に帰着する薬剤耐性の病原体の広範囲の普及の可能性とともに薬物耐性の可能性を増加させる。たとえば、ノンコンプライアンスの最も重大な結果のうちの1つには、HIV及び結核(TB:tuberculosis)の新規な薬剤耐性菌株の発生がある。これは、絡み合っている薬剤レジメンに適切に従わない患者に大きな理由があるとされた。さらに、抗生物質の長期的な誤用により、以前は治療可能であった疾病が最先端の薬剤が効かないという事態が生じている。
【0009】
健康問題のための服薬遵守を改善する現在の方法は、殆どが複雑で、労働集約的で、予想されるようには有効でない[McDonald,HP et al.,“Interventions to enhance patient adherence to medication prescriptions:scientific review,”JAMA,289(4):3242(2003)]。アメリカの民衆に対するこの重大な脅威と格闘するために、コスト効率は良いけれども、しかし行うことが困難な、あるプログラムが国内の7つの場所で開発されている。それは、訓練された専門家によるすべての薬物送達の直接観察を含むが(直接観察治療(directly observed therapy):DOT)、大規模で実施するには実際的でない。また、多くの技術は、たとえば血液サンプリングのように、侵襲的である。
【0010】
本願発明者らにより開示された以前の服薬遵守モニタリングシステムは、被験者が処方された薬剤を服用したのか否か、且つ/又はいつ服用したのかを検出するための手段として、呼出された呼気を使用することに関係する(たとえば、次を参照:米国特許出願番号10/722,620(2003年11月26日出願)及び11/097,647(2005年4月1日出願))。これらの出願に記載されているモニタリングシステムは、呼出された呼気において、薬剤、薬剤の代謝産物、又は(薬剤に結合された)検出可能なマーカー若しくはその代謝産物の何れかを検出するものである。それらの出願において使用のために熟慮されたマーカーの多くは、大部分は、FDAによりGRAS(「一般に安全と認められている(Generally Recognized As Safe)」)化合物として分類されているものである。不運にも、現在利用可能な検出器(センサー)は、呼出された呼気におけるこれらの化合物を、多くの服薬遵守測定用の実践的な装置において使用できる程には確実に検出しない(たとえば、潜在的な干渉ガスからの感度あるいは識別力による問題)。
【0011】
したがって、非侵襲性で、直観的で、しかも衛生的な薬剤服の簡単なモニタリングを提供する、服薬遵守を改善するシステム及び方法に対する要求が当該技術分野に存する。特に、服用モニタリングのための薬剤と結合可能であり、また、呼出された呼気の気相で現在の検出技術を使用して非常に低濃度の場合であっても検出されるべく十分に揮発性がある、ユニークな一群のマーカーに対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願番号10/722,620(参考)
【特許文献2】米国特許出願番号11/097,647(参考)
【特許文献3】米国特許番号5962335
【発明の概要】
【0013】
本発明は、患者の身体における薬剤の吸収、分配、代謝、及び/又は排泄の生成物である呼出された呼気におけるマーカーを検出することで、服薬遵守を非侵襲的にモニタリングするシステム及び方法を提供することにより、当該技術分野に存するこれらの要求を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明についての、及びその利点についてのより完全な理解のために、添付の図面とともに以下の記載がこれから言及される。
【0015】
図1‐図59は、患者の服薬遵守のモニタリングのための検出可能なマーカーとして、同位体トレーサの使用に関する本発明の種々の側面を図示する。
【図1】図1は、エステラーゼ型(カルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC3.1.1))の加水分解反応を示す。
【図2】図2は、選択アルコールとそれらの生理化学的特性の説明例を示す。
【図3】図3は、カルボン酸とそれらの物理化学的特性の説明例を示す。
【図4】図4は、CYP450による脱アルキル化反応を示す(実施例:脱メチル化)。
【図5】図5は、選択したアルデヒドの物理科学的及び毒物学的な特性を示す。
【図6A】図6Aは、選択された通常の同位体で標識されたアルコール、アルデヒド及びカルボン酸の代謝経路を示す。
【図6B】図6Bは、非通常の同位体で標識されたアルコール、アルデヒド及びカルボン酸を示す。
【図7A】図7Aは、脱メチル化を経て、ホルムアルデヒドを生成する治療薬の具体例を示す。
【図7B】図7Bは、脱メチル化を経て、ホルムアルデヒドを生成する治療薬の具体例を示す。
【図8】図8は、脱エチル化を経て、アセトアルデヒドを生成する治療薬の具体例を示す。
【図9】図9は、脱プロピル化を経て、プロピオンアルデヒドを生成する治療薬の具体例を示す。
【図10A】図10Aは、脱ブチル化を経て、ブチルアルデヒドを生成する治療薬の具体例を示し、ブチルアルデヒドのイラストを含む。
【図10B】図10Bは、脱ブチル化を経て、ブチルアルデヒドを生成する治療薬の具体例を示し、ブチルアルデヒドのイラストを含む。
【図11】図11は、ヒトの呼気の気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図12】図12は、窒素ガスにおけるエタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図13】図13は、窒素ガスにおけるd5エタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図14】図14は、窒素ガスにおけるd2エタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図15】図15は、窒素ガスにおけるエタノール、d5エタノール及びd2エタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図16】図16は、窒素ガスにおけるメタノール、エタノール、d3メタノール及びd5エタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図17】図17は、ヒトの呼気におけるd2エタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図18】図18は、バックグラウンド呼気吸収を除去した、ヒトの呼気におけるd2エタノールの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図19】図19は、窒素ガスにおけるアセトアルデヒド及びd4アセトアルデヒドの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図20】図20は、窒素ガスにおけるd5エタノール及びd4アセトアルデヒドの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図21】図21は、人間の呼気におけるd5エタノール及びd4アセトアルデヒドの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図22】図22は、窒素ガスにおけるベンゼン(C)、13C標識されたベンゼン(13)及び重水素化ベンゼン(C)の気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図23】図23は、窒素ガスにおけるアセトアルデヒド及び13C標識されたアセトアルデヒド(13CH13CHO)の気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図24】図24は、窒素ガスにおけるホルムアルデヒド及びd2ホルムアルデヒドの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図25】図25は、窒素ガスにおけるアセトアルデヒド及びd4アセトアルデヒドの気相FTIRベース吸収スペクトルを示す。
【図26】図26は、窒素ガスにおいて重水素化エタノール、重水素化アセトアルデヒド及び重水素化ベンゼンを識別するために、提案されたFTIR重水素標識されたスペクトル・モニタリング・バンドを示す。
【図27】図27は、窒素ガスにおいてd3メタノール、d5エタノール、d4アセトアルデヒド、d6ベンゼン及びd8スチレンを識別するために、提案されたFTIR重水素標識されたスペクトル・モニタリング・バンドを示す。
【図28】図28は、食物に現われるアミンの例を示す。
【図29】図29は、食品添加物としてリストされたGRAS作用薬(第1クラス薬)のエステル例―アスパルテーム―を示す。これは、人間の腸エステラーゼ及び腸ペプチダーゼにより代謝されるエステル食品添加物。
【図30】図30は、FDAの承認薬(第2クラス薬)のエステラーゼ例―アスピリン(アセチルサリチル酸)―を示す。これは、ヒトのアスピリンエステラーゼにより代謝されるエステル薬である。
【図31】図31は、食品添加物としてリストされたGRAS作用薬(第1クラス薬)のエステル例―メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベン―を示す。これは、ヒトのカルボキシルエステラーゼ及び組織エステラーゼにより代謝されるエステル食品添加剤である。
【図32】図32は、FDAの承認薬(第2クラス薬)のエステラーゼ例―クロフィブレート―を示す。これは、ヒトのエステラーゼにより代謝されるエステル薬である。
【図33】図33は、FDAの承認薬(第2クラス薬)のエステラーゼ例―エスモロール―を示す。これは、ヒトの赤血球のサイトゾル内にあるアリルエステラーゼにより代謝される薬物である。
【図34】図34は、FDAの承認薬(第2クラス薬)のエステル例―プロカイン―を示す。ヒトの血液内にある偽コリンエステラーゼ(ブチリルコリンエステラーゼ)により代謝されるエステル薬物である。
【図35】図35は、新規化学物質(NCE:new chemical entity)(第3クラス薬)―3つのエステル基の環状構造―に係るエステラーゼ生成の例を示す。
【図36】図36は、新規化学物質(NCE)(第3クラス薬)―3つのエステル基を含む直線構造―に係るエステラーゼ生成の例を示す。
【図37】図37は、新規化学物質(NCE)(第3クラス薬)―4つのエステル基を含む直線構造―に係るエステラーゼ生成の例を示す。
【図38】図38は、CYP450実施例1―CYP‐3A4媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるベラパミル―L型カルシウムチャネル遮断薬―を示す。
【図39】図39は、CYP450実施例2―CYP‐3A4媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるエリスロマイシン―抗生剤―を示す。
【図40】図40は、CYP450実施例3―CYP‐3A4媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるアミオダロン―抗不整脈薬―を示す。
【図41】図41は、CYP450実施例4―CYP‐3A4媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるプロパフェノン―抗不整脈薬―を示す。
【図42】図42は、CYP450実施例5―CYP‐3A4媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるジルチアゼム―抗不整脈薬―を示す。
【図43】図43は、CYP450実施例6―CYP‐2D6媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるフレカイニド―抗不整脈薬―を示す。
【図44】図44は、CYP450実施例7―CYP‐2D6媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるコデイン―無痛覚用プロドラッグ麻薬―を示す。
【図45】図45は、CYP450実施例8―CYP‐1A2媒介代謝 FDA承認薬(第2クラス薬)であるオランザピン―抗精神病薬―を示す。
【図46】図46は、CYP450実施例9―CYP‐1A2媒介代謝 第1クラス薬であるカフェイン―食品添加物―を示す。
【図47】図47は、CYP450実施例10―CYP‐2C媒介脱アミノ化 FDA承認薬(第2クラス薬)であるアンフェタミン―中枢興奮薬―を示す。
【図48】図48は、脱アミノ化の実施例1―アデノシンデアミナーゼ(EC 3.5.4.4)媒介脱アミノ化 FDA承認薬(第2クラス薬)であるアデノシン―抗不整脈薬―を示す。
【図49A】図49AはMAMSを示す:説明例―単純アプローチ。
【図49B】図49BはMAMSを示す:説明例―単純アプローチ。
【図49C】図49CはMAMSを示す:説明例―単純アプローチ。
【図50A】図50AはMAMSを示す:説明例―中複雑的アプローチ。
【図50B】図50BはMAMSを示す:説明例―中複雑的アプローチ。
【図51A】図51AはMAMSを示す:説明例―中複雑的アプローチ。
【図51B】図51BはMAMSを示す:説明例―中複雑的アプローチ。
【図52】図52はMAMSを示す:説明例―複雑アプローチ。
【図53】図53はMAMSを示す:説明例―複雑アプローチ。
【図54】図54はMAMSを示す:説明例―複雑アプローチ。
【図55】図55はMAMSを示す:説明例―複雑アプローチ。
【図56A】図56Aは仮説例を示す―MAMS‐11がどのように機能するかの具体例。
【図56B】図56Bは仮説例を示す―MAMS‐11がどのように機能するかの具体例。
【図56C】図56Cは仮説例を示す―MAMS‐11がどのように機能するかの具体例。
【図56D】図56Dは仮説例を示す―MAMS‐11がどのように機能するかの具体例。
【図57A】図57AはMAMSを示す:説明例―多くのドースを備える1つの薬物、タイプ1。
【図57B】図57BはMAMSを示す:説明例―多くのドースを備える1つの薬物、タイプ1。
【図57C】図57CはMAMSを示す:説明例―多くのドースを備える1つの薬物、タイプ1。
【図58A】図58AはMAMSを示す:説明例―1つの薬―多くのドース、タイプ2。
【図58B】図58BはMAMSを示す:説明例―1つの薬―多くのドース、タイプ2。
【図58C】図58CはMAMSを示す:説明例―1つの薬―多くのドース、タイプ2。
【図59A】図59AはMAMSを示す:説明例―1つの薬―多くのドース、タイプ3。
【図59B】図59BはMAMSを示す:説明例―1つの薬―多くのドース、タイプ3。
【図59C】図59CはMAMSを示す:説明例―1つの薬―多くのドース、タイプ3。
【0016】
(付録の簡単な説明)
また、添付され、本願の一部を構成するものとして付録Aがあり、これは発明の種々の側面の詳細なリストを備えた表1‐表23を提供する。これらの付録は、参照により、あたかも完全にここで述べられた場合と同程度に本願に全体として取り入れられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
主題発明による服薬遵守モニタリングを実施する手段は、次のように分類されるマーカーの開発及び使用に基づく:
クラス1:一般に安全であると認められた(GRAS:generally recognized as safe)化合物。FDAの不活性成分データベース上でリストされた工業先進国における食品添加物/成分と作用薬を含むが、これらに限定されない。
クラス2:治療薬として政府の規制機関(たとえばFDA)により既に承認された薬。
クラス3:新規化学物質(NCEs:New chemical entities)。クラス2作用薬を僅かに修飾した誘導体からのもの(たとえば化学的に修飾されたベラパミル又はデキストロメトルファン)、あるいは完全に新規な化学的土台に由来するもの(たとえばフルオロエステル)が含まれる。
【0018】
被験者等が彼らの医療従事者により処方された彼/彼女の薬剤を服用したかどうか評価するために、クラス1、2及び3のマーカー化合物を使用するための様々な方途がある。これらのアプローチのすべての中心となるのは、身体流体に、好ましくは呼気に現われる揮発性の(半揮発性又は揮発性に乏しいものを含む。)化学的なマーカーの生成である。これは、以下、呼出薬物服用マーカー(EDIM:exhaled drug ingestion marker)という。EDIMは、次のものを含む多くのソース又はソースの組合せから生起する:
【0019】
EDIMソース1:活性治療薬物マトリックスの任意の成分。この活性治療薬物マトリックスは、3つの異なる成分を含んでいる:1)活性薬それ自体(ソース1)、2)該活性薬にリンクされた任意の関連する塩類(たとえば、メシレート、酢酸塩、酒石酸塩、琥珀酸塩など)(ソース1)、及び3)添加物(ソース1)。
【0020】
EDIMソース2:該活性薬、塩、及び/又は添加物を含む該活性治療薬物マトリックスの代謝産物(それぞれ、ソース2、ソース2、ソース2)。
【0021】
EDIMソース3:該活性治療薬物マトリックスに関係しているが、それ自身の一体部分でない化合物。以下、これを指してタガントという(つまり、タガントは、物理的に隣接して位置するが、該活性治療薬物マトリックスへ物理的に統合されていない)。
【0022】
EDIMソース4:タガントの代謝産物。
【0023】
このように、本願によれば、(ピルのような)ある治療システム内に、8つもの一般的なソースからEDIMを放つことができる。しかしながら、所与の治療システムでのEDIMソースの正確な数字は、他の要因に依存するであろう。たとえば、該活性治療薬物マトリックスの2以上の添加物がEDIMソースとして使用されるかや(通常は2以上の添加物が最終調合物に加えられる。)、2以上のタガントが、それら自身からであれそれらの代謝産物からであれ、EDIMソースとしてピルシステムに加えられるか、という要因が含まれる。同様に、多くの治療ピルは、抗コレステロール作用薬であるヴァイトリン(エゼチミブとシンバスタチン)のような2以上の活性治療薬を含んでいるので(併用療法)、追加的なEDIMソースがそれらから又はそれらの代謝産物から生成しうる。
【0024】
たとえば、EDIMが代謝産物である場合、それは最も恐らくは酵素の分解により生成されるが、特定の酵素活性と無関係の人体における化合物の自発的な分解によっても生じうる。クラス1〜3作用薬の揮発性の(半揮発性又は弱揮発性のものを含む。)EDIMへの多数の酵素代謝は有名であり、予測可能であり、又は様々なin vitro若しくはin vivoのシステムで容易にテストされる。ヒトは、潜在的なEDIMを生成することができる種々様々の酵素を持っている(表1)。実施例は、エステラーゼを媒介とした複数のエステルのこれらに対応するアルコール及びカルボン酸への分解(たとえばフルオロエステル→フルオロアルコール+カルボン酸)、アルコール脱水素酵素を媒介とした1°及び2°のアルコールのそれぞれのアルデヒド及びケトンへの分解;又は、揮発性の(半揮発性又は弱揮発性を含む。)代謝産物を生成するための還元、酸化及び/又は加水分解を経るCYP媒介された反応(たとえば、CYPを媒介とした脱アルキル反応によるアルデヒド)、を含む。これらは、図示した具体的な実施例によって、より詳細に以下で議論する。上述したように、化合物の異なる組合せは(薬物クラス1、2及び/又は3)、これらは種々様々の酵素(たとえば、エステラーゼ、脱水素酵素、CYP‐450画分、デアミナーゼ)により酵素的に分解されるものであるが、8つの異なる一般的なEDIMソース(1、1、1、2、2、2、3及び4)を潜在的に生成するピルシステムに組み入れることができる。ピルシステムに係るこのアーキテクチャにより、非常に融通性があり、適応可能な服薬遵守モニタリングシステム(MAMS)構成をいくつかのタイプ構築することが可能となる。
【0025】
EDIMは、身体に生来見られる(内因性である)がそれをMAMS適用のために自然なバックグラウンド呼気レベルから容易に識別する濃度で検出可能であるか、又は、ユニークであって(人体に内因的でない)従って人間の呼気において非常に容易に識別可能である分子体である。後者に関し、EDIM又はEDIMを生成する化合物(クラス1、2及び/又は3の作用薬)の中へ同位体を、特にMAMS化学に対する特定の原子に対して安定していて(非放射性で)かつ通常でない(つまり、自然界において見出される原子の最も豊富な形式でない)もの(たとえば、水素原子での重水素)を取込むことには、多くの非常に重要な利点がある。これらは、良好な化学柔軟性(様々な分子上の多数の同位体標識ターゲット)、顕著な信号対雑音比(ラベルが付けられたEDIMは、重水素のような非通常の同位体で標識されない内因性化合物に対して容易に識別されるだろう。それは、恐らくベースライン呼気サンプリングの必要を取り除く。)、人間における良好な安全性(選択的な同位体標識は、分子の生理化学的特性/分子特性を有意には変更しない)、及び活性薬の薬物動態学(吸収、分布、代謝、排泄[ADME:bsorption,istribution,etabolism,limination]/薬物動態学[PK:pharmacokinetics])又は薬力学(PD:pharmacodynamics)に対して影響が全く無いか非常に小さいこと、を含む。同位体ベースのMAMSのこれらの特性は、それが、それほど複雑でなく、それほど高価でもなく、しかしその使用においてより信頼性高く調節性の「水」(経路)を非常に簡単にナビゲートすることができるであろうことを示し、そしてまた市場への投入時間が短い。
【0026】
同位体で標識されたEDIMに関して、ベースライン・サンプルの必要は、自然界における非通常の同位体の発生率に基づく(表2)。自然界においてH同位体における重水素(H)及びO同位体における17Oの発生率は非常に低いので(それぞれ0.015%、0.037%)、C同位体中に13Cのそれ(1.11%)と比較すると、ここのベースライン・サンプリング要求は最小であろう。言いかえれば、同位体の背景ノイズ(自然界及び身体に通常現われる非通常同位体)が同位体の標識されたEDIM測定に干渉する機会は、重水素ベース又は17OベースのEDIMラベルよりも13Cベースのラベルの方が74倍(=1.11%/0.015%)又は30倍(=1.11%/0.037%)である。これらの理由により、本発明のための好適な同位体ラベルは重水素である。生物学的用途に適しているEDIMベースの同位体の(非通常の同位体)ラベルには表2に示されるものが含まれるが、これらに制限されるものでない。非同位体の(あるいは通常の同位体として知られている)ラベルが付けられたEDIMの場合と同様に、同位体の標識されたEDIMは、酵素の作用を必要とする場合もあれば必要としない場合もある(表1)。以下、本明細書においてラベルが付けられた(たとえば、ラベルが付けられた化合物[標識化合物]又はラベルが付けられたEDIM)又は同位体という用語は、原子の「非通常の」同位体の使用を表す。
【0027】
臨床医学における同位体を適応させる現在の方法(非放射性・放射性の両方)は、本発明に適用することができる。たとえば、酵素機能を評価するために13C、14Cを使用する呼吸テスト、生化学的トレーサ研究のクオリティを改善するために15Nを使用する呼吸テスト、又は撮像のクオリティを改善するために17O(MRIスキャン用)若しくは18O(PETスキャン用)を使用する呼吸テストは、本発明に適用することができる。
【0028】
たとえば、13Cで標識されたカフェインの経口若しくは静脈内投与(Park−GJH et al,Hepatology 38:1227‐1236,2003)又は14Cで標識されたエリスロマイシンの静脈内投与(米国特許5,100,779)を必要とする呼気テストは、生成された呼気に含まれる炭素同位体で標識された二酸化炭素の量を、本発明のラベルが付けられた薬物/治療の実施後に、様々な時間であるいはある特定の時間で測定することにより、服薬遵守を評価するために使用することができる。表2は、MAMSに役立つことができる様々な生物学上適切な同位体を表す。EDIM(EIDMソース1[1、1、1]、2[2、2、2]、3、及び4)に、様々な同位体ラベルを、好ましくは重水素(H)を含む安定している(非放射性)ものを、どのように組み入れることができるかを例証することにより、また、そして新規の実施形態を追加することにより、本願は服薬遵守モニタリングシステム(MAMS)に同位体標識を適用する原理をさらに教示して詳述するであろう。
【0029】
同位体を使用するMAMSの概観
本願によれば、同位体ベースのMAMSは好ましくは3つの要素を含んでいる:
【0030】
要素1‐医化学:理想的にはEDIMソース1(1、1、1)、2(2、2、2)、3及び/又は4からEDIM(s)を提供するクラス1、2及び/又は3化合物に係る表1に示された非放射性の同位体で(最も好ましくは重水素で)、ターゲットとされ、安定した同位体標識。他の実施形態において、MAMSで識別可能な異なる活性な治療薬物の数を最大限にするために、同位体(たとえば、重水素)で標識されたEDIMの組合せは、様々な方法で非同位体の(たとえば、通常の水素)EDIMと結合することができる。同位体の化学がMAMSのためにどのように使用されるかについてのより詳細な事項については、要素2に関する下記の議論を参照されたい。
要素2‐センサー:呼吸中のEDIMを測定する様々なセンサーの形態については、イントロダクション(セクションA)にリストされた従来の特許出願において以前に議論された。本発明によれば、好ましいセンサーの実施形態には、赤外線ベースの検出器又はガスクロマトグラフ質量分光センサーに連結されたガスクロマトグラフィ検出器のような、同位体ベースのEDIMを測定する能力を有するものが含まれる。より好ましくは、センサーの実施形態には、赤外線(IR、弱揮発性の同位体で標識されたEDIMの検出のための液体ベース及び/又は揮発性若しくは半揮発性のEDIMの検出のためのガスベース)検出能に結び付けられた、修正され最適化された商用オフザシェルフ(COTS:commercial off‐the shelf)のミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC:miniature gas chromatography)検出器を備えることができる。このセンサーは、内因性の分析物と同位体の(好ましくは重水素を含んだ)分析物とを区別するために強力な赤外線(IR)分光(異なる振幅様式を有する同位体を含んでいる分子間の質量における差)分析能を同時に利用しつつ、様々なEDIMのクロマトグラフ分離を可能にするであろう。また、ポータブルGC−MSも適切であろう。携帯型GC−MSは様々な同位体ラベルを識別可能であるので(同位体は異なる質量を有するので)、タガントの数を大幅に増加させるかもしれない。
【0031】
対照的に、IRは、単独では、脂肪族アルコール(たとえば、メタノール対エタノール)あるいはアルデヒド(たとえば、ホルムアルデヒド対アセトアルデヒド)のような、特定の化学的クラスの重水素を含んだ化合物を区別することができないであろう。アルコールに関する研究は、エステル、炭酸塩エステル、アセタール又はケタールなど(これらに限定されない。)を含む多くの化学的クラスが、MAMS適用のための理想的な特性(たとえば、化学的柔軟性、安全性など)を備えたEDIMを生成するための最適なソースとなるかもしれないので、重要である。図1に示されるように、エステルは、対応するアルコール及びカルボン酸に加水分解される。また、酵素によりあるいは自発的にアルコールを作成することができる他の化学的なクラスには、炭酸塩エステル、アセタール及びケタールが含まれ。エステル、炭酸塩エステル、アセタール及びケタールは、クラス1、2又は3に属することができる(分類についてはセクションAを参照されたい。)。
【0032】
図1に図示された実施形態において、エステル次第で、EDIMは、1)同位体で標識されたエステル、2)同位体で標識されたエステルに由来する同位体で標識されたアルコール、3)同位体で標識されたエステルに由来する同位体で標識された酸、及び4)同位体で標識された1°又は2°のアルコールに由来する同位体で標識されたアルデヒド又はケトン、の場合がある。これは、1°又は2°のアルコールベースのエステルからそれぞれ生成されても良いし、生成されなくても良い。さらに、呼吸におけるユニークなEDIMシグネチャを提供するために、同位体で標識されたエステル及びそれらの関連する標識された酸、標識されたアルコール及び/又は標識されたアルデヒド/ケトンの様々な組合せを使用できるかもしれない。エステルにおけるR2グループのタイプは、エステルの加水分解への感受性を立体的に/電子的に変更すべく変化することができ、したがってエステル由来の標識されたEDIMの出現の割合に重要な役割を果たすであろう。エステルの生理化学的性質(たとえば、物理状態、揮発性)は、R1とR2の両方に相関するであろう。表2にリストされた様々な同位体標識を(好適な実施形態は重水素である。)、適切な場合は、エステルの様々な原子のサイトへ組み込むことにより、有効なMAMSの必要条件を満たす1又は2以上の同位体標識を含んでいる(エステル、酸、アルコール及び/又はアルデヒド/ケトンから発生する)様々なEDIMを生成することができるであろう。
【0033】
表2に示されているように、多くの同位体は、識別力のある同位体のタグを含んでいるエステル加水分解を介して生成物(アルコール及び/又は酸)を遊離するエステル分子の鍵となる部分に配置することができる。MAMSのための同位体で標識されたEDIMとして役立ちうる関連するアルコール及び酸の構造及び重要な物理科学的特性は、図2及び図3の中の表においてそれぞれ示されている。図2は、選択されたアルコール及びそれらの物理化学的特性の例を図示する。図3は、GRASタイプ香味添加物及び/又はFDA承認薬の酵素の分解によって一般に生成される、異なるカルボン酸を示す(たとえば、エステルのそれらの対応する酸及びアルコールへのエステラーゼ媒介分解)。更に、前に述べられたように、1°と2°のアルコールは、続いてアルコール脱水素酵素によりさらに代謝されてアルデヒドとケトンをそれぞれ産出する。エステルのために上に記載された方法と同一の方法で、炭酸塩エステル、アセタール及びケタールを含む(これらに限定されない。)同様の化合物を標識することができ、アルコール(及びその後のアルデヒド/ケトン)及び/又はカルボン酸が生成される。
【0034】
アルデヒドに関する研究は重要である。なぜなら、CYP450酵素系は、これは還元、酸化及び加水分解のプロセスによってヒトの中の薬物を優勢に分解するための断然重要な酵素系であるが、頻繁に様々なタイプの脱アルキル化反応によって異なるアルデヒドを生成するからである。異なるタイプの脱アルキル化反応において(図4)、ホルムアルデヒドを生成する脱メチル反応(O‐、N‐及びS‐脱メチル化反応による脱メチル代謝産物)が、最も顕著である。しかしながら、ヒトの薬物代謝における他の重要な脱アルキル化反応には、脱エチル化反応(脱エチル代謝産物)、脱プロピル化反応(脱プロピル代謝産物)及び脱ブチル化反応(脱ブチル代謝産物)が含まれる。これらは、それぞれ、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びブチルアルデヒドを生成する。CYP450基質は、クラス1、2又は3に属することができる(分類についてはセクションAを参照)。
【0035】
MAMSのための同位体標識されたEDIMとして役立ちうるいくつかの関連するアルデヒドの構造及び鍵となる物理化学的特性を図5に示す。さらに、上で議論した第一次アルコール、酸、及びアルデヒドの代謝はトリカルボン酸(TCA:tricarboxylic acid)サイクルによってなされ、それは最終的には図6の反応スキームで図示されるように二酸化炭素と水を生成する。他方、より短い枝分れ鎖脂肪族アルコール、アルデヒド及び酸は、ベータ酸化劈開を経てアミノ酸及び/又は脂肪酸代謝経路の中間物を産出する。これは、トリカルボン酸サイクルを介してCOと水への後続する完全な代謝を経る。鎖長と置換が増加するにつれて、アルコールとアルデヒドは、オメガ‐、オメガ‐1及びベータ‐酸化、並びに選択的な脱水素反応及び水和反応の組合せを経て、イオン化した酸性の代謝産物を産出する。クラス1、2及び/又は3のエージェントに係る種々の具体的な実例となる実施例が、それらは異なる酵素系により分解されるものであるが、どのように同位体標識されたEDIM自体として使用することができるか、あるいはどのように同位体標識されたEDIMを効果的なMAMSのために遊離すべく使用することができるかは、セクションCで示される。CYP450を媒介とした脱メチル化、脱エチル化、脱プロピル化及び脱ブチル化によってホルムアルデヒド(図7)、アセトアルデヒド(図8)、プロピオンアルデヒド(図9)及びブチルアルデヒド(図10)を生成する、FDAに認可された薬物の例がそれぞれ、図示されている。
【0036】
同位体標識されたEDIMそれ自体として役立つ分子体の同位体標識、あるいは酵素の分解によって同位体標識されたEDIMを遊離する基質は、最適なMAMSの設計及び開発に向けた非常に重要な方略である。ヒトの呼吸及び窒素環境を使用する気相フーリエ変換赤外分光(FTIR:Fourier Transform Infrared)装置(Nicolet6700FT‐IR、5リットルの呼吸サンプル、22メーターの路程)を使用する一連の実験において(図11‐図27)、上にリストされた利点の基礎となる重要な科学的な仮定をMAMSにおける同位体標識に関してテストした。特に精査したのは、室温での通常の同位体を含んでいるものに比べた、FTIRスペクトル上でのキーとなるアルコール及びアルデヒドのFTIRスペクトルに対する非通常同位体(たとえば、重水素や13C;表2を参照)標識の効果である。重要な発見には次のものが含まれる:1)FTIRは、同様の構造の重水素化アルコールと通常のアルコールとをあまり区別しない;すなわち、通常のメタノール及びエタノールについての、また、重水素化メタノール及びエタノールについてのFTIR吸収スペクトルは、非常に類似している。2)所与のアルコール(通常のもの対重水素化されたもの)についてのFTIRスペクトルは高度に識別力があり、それら(つまり、CD‐OH対CH‐OH又はCD‐OH対CHCH‐OH)を区別するために使用することができる。対照的に、GC‐MSは、容易にこれらのすべての種を識別することができる。ミニチュアのガスクロマトグラフ(mGC:miniature gas chromatograph)を含むガスクロマトグラフは、特定のアルコールを容易に識別することができるが、特定のタイプの重水素化アルコールと非重水素化アルコールとを識別することはできない。3)FTIRは、同様の構造の重水素化アルデヒドと通常のアルデヒドとをはっきりと識別しない;通常のホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドについての、また、重水素化されたホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドについてのFTIR吸収スペクトルは、類似している。4)特定(通常のもの対重水素化されたもの)のアルデヒドについてのFTIRスペクトルは高度に識別力があり、それら(たとえば、CDCDO対CHCHOあるいはCDO対CHO)を区別するために使用することができる。総合すると、同位体標識が、MAMSのためのヒトの呼吸におけるEDIMの、具体的で、選択的で、感度のよい検出において素晴らしい見込みを提示することが結果として示された。図11‐図27で議論された同一の分析物の多くの液体に基づいたIR測定は、これらの及びその他の分析物(たとえば、クラス1、2及び/又は3の薬物のより大きな同位体標識された代謝性のフラグメント)の測定値を示し、気相において測定されたそれと同様のパターンのIRスペクトル・シフトを表示した。それは、揮発性でないかもしれず、呼出された呼吸凝縮液(EBC)を使用して液体ベースのIR測定で実現可能かもしれない。なお、さらに、我々は、最近ケトン、アセトンを使用して、同一のFTIRを実行した。我々は、重水素化アセトンについて、通常のアセトンに対して非常に識別力のあるスペクトルを与えることを知った(データは不図示)。これは、2°アルコール及び/又は2°アルコールベースのエステル(たとえば、イソプロピル‐ベースの、2‐ブチル‐ベースの、2‐ペンチル‐ベースのエステル)からケトンを生成する方略がEDIMとしての素晴らしい見込みを示すことを示す。特に、ヒトにおいては、それらは、アルデヒドに比べてより長い期間にわたって血液及び呼吸に存在し続ける傾向があるからである(議論に関しては下記を参照)。
【0037】
上記の気相FTIR実験(図11‐図27)を要約すると、およそ2150±10%の範囲(波数範囲:好ましくは2000〜2300cm‐1)の中心波数を備えた(C‐D振動伸張を測定するための)調整可能な中IRレーザーを設計することにより、少なくとも3つの基本的に異なる重水素化されたEDIMを識別することが可能であるように思われる。これらのEDIMには次のもが含まれる:1)カルボニル(たとえば、メチル基上で重水素化されたアセトン)−波数は好ましくは2040cm‐1;2)脂肪族(たとえば、非アルファ炭素上で重水素化された2‐ブタノン−波数は好ましくは2240cm‐1)、及び3)芳香族(たとえば、環上で重水素化したベンズアルデヒド、−波数は好ましくは2290cm‐1)。分子をカルボニル、脂肪族及び/又は芳香族の特性を含む分子特質と組み合わせることにより、調整可能な又は調整不可能な中IRアプローチを使用して、少なくとも6つの異なるタイプの分子を容易に検出しうる:1)カルボニルのみ、2)脂肪族のみ、3)芳香族のみ、4)カルボニル+脂肪族、5)カルボニル+芳香族;6)脂肪族+芳香族、及び7)カルボニル+脂肪族+芳香族。量子カスケード・レーザー、鉛塩レーザー、周波数コムベースのシステム、キャビティー強化光周波数コム分光法、モードロック・フェムト秒ファイバ・レーザー、及びヴァーチャリー・イメージド・フェーズ・アレイ(VIPA)検出器を含め(これらに限られない。)、他のタイプの光学的探知システムの使用により、非常に多くの分析物を、特に呼気において、潜在的に検出することが可能である。
要素3‐通信リンクと記憶装置:HIPAAに従った情報は、服薬遵守及びログ・データを確認するため、センサーからモニタリング物質まで流れる。この要素は、イントロダクション(セクションA)でリストされた従来の特許出願で以前に議論された。
【0038】
同位体ベースのMAMSの特性
同位体ベースのMAMSの好ましい実施形態は、以下の制約の下で機能するように設計される:1)すべての経口服用スケジュールで作用すること、2)すべての経口で投与された薬物と機能すること、3)呼気サンプルにおいて標識されたEDIMを検出し測定する能力を有しているセンサーを使用すること;好ましくは、センサーは、IR能を備えたGC又はmGC、IRだけ、又はGC‐MSのような修正されて最適化された装置であること、そして、4)高い信頼度が求められる場合は、潜在的に既存の生命テクノロジー(指紋、顔の形状、網膜スキャン、顔の血流、又はテレビ電話を含む。これらに限定されない。)と結合されていること。好ましい実施形態において、MAMSは口頭で摂取された医薬品のために開発されるが、他の薬物送達の形態(たとえば、静脈、経眼)に容易に適用することができる。また、一定の好ましい実施形態において、センサーは携帯型で、標識された(好ましくは同位体は重水素)EDIM(s)呼気濃度の高速高感度かつ詳細な測定値を提供する。
【0039】
同位体ベースのMAMSの化学
人間の呼気を使用する完全な同位体ベースのMAMSは、肺から発生する呼気が揮発性(半揮発性又は弱揮発性を含む)のマーカー、すなわち治療薬の経口摂取に続いて異なるタイプの酵素(表1)を介して生成され、服用合いを確認する同位体で(表2)標識されたEDIMを測定するセンサーと対面することを必要とする。同位体で標識されたEDIMは、クラス1、2若しくは3タイプの薬物(セクションA)又はそれらの任意の組合せのいずれかの同位体標識から発生しうる。同位体で標識されたEDIMを生成するためには、以下の方法によってクラス1、2又は3の薬物に同位体を配置しうる:1) 分子内の単一の官能基上の単一の同位体ラベル(たとえば、メチル基における1つの通常のH原子を交換するための単一の重水素化が含まれるが、これに限定されるものでない。)、2)分子内の単一の官能基上の多数の同位体ラベル(たとえば、メチル基における全ての通常のH原子を交換するための多数の重水素化)、及び/又は3)分子内の2以上の官能基に対する1と2の組合せ。
【0040】
メチル基は、官能基として同位体標識に使用しうる;官能基として、クラス1、2及び/又は3の分子上のエチル、プロピル及び/又はブチル基を含む(これらに限定されない。)いかなる化学基も、同位体標識に使用可能ではあるが。好ましい実施形態のうちの1つは同位体標識されたクラス1(GRASタイプ)化合物であり、米国で食品添加物として承認されたもの(表3)、添加物リスト(表4)、及び/又は添加剤(表5)が含まれる。特に、工業先進国における使用され食品添加物は、エステル(表6)、脂肪族高級アルコール類(表7)、芳香族アルコール(表8)、チオアルコール(表9)、チオール類(表9)、脂肪酸(表10)、脂肪族高級アルデヒド類(表11)、芳香族アルデヒド(表12)、エーテル(表13)、チオエテール(表14)、フェノール・エーテル(表15)、ケトン(表16)、フェノール(表17)、ラクトン(表18)、テルペン(表19)、脂肪族高級炭化水素類(表20)、フルフラール(表21)、インドール(表21)、及びイソチオシアン酸塩(表21)、についての以下の表にリストされた化合物を含む(これらに限定されない。)。さらに、他の適切な化合物は、炭酸塩エステル、アセタール及びケタールを含め多く存在する。工業先進国における食品成分であるこれらの化学的なクラスの例は、Leffingwell&Associates(カントン、ジョージア州)の「Flavor−Base 2007」においてリストされている。
【0041】
図28は、食物に見られる化学物質として、FDAによりリストされる12のアミンをリストする。多くの薬物が、抗ヒスタミン薬(たとえば、クロルフェニラミン)、抗精神病薬(たとえば、クロルプロマジン)、うっ血除去薬(たとえば、エフェドリンとフェニレフリン)及び中枢神経興奮薬(たとえば、アンフェタミン、メタンフェタミン、及びメトカチノン)を含め、アミンである。同様に、多くのFDA承認薬剤に含まれる活性治療薬物は(表22)、それら自身がMAMSのための適切なEDIMを遊離しようとするポテンシャルを有している。同位体標識されたクラス2とクラス3の分子がEDIMとしてどのように役立つことができるかという具体例は、セクションCにおいて以下で詳述に述べる。最後に、多くの保存剤(表23)は、食物品質を維持するために、及び/又は薬物寿命を長くするために添加剤として、食物材料に加えられる。食物において見られる上記の化合物のためのソースには、米国、欧州連合及び日本のような工業先進国における規制機関の公文書が含まれる。
【0042】
表におけるリストされたすべての化合物がMAMS適用に使用されるべく提案されるとは限らない。それらの使用は、MAMS機能に関して、政府規制、毒物学上の情報及びパフォーマンス特性により厳密に統制されるであろう。実際、多くの化合物は、食品加工において具体的な役割を提供し、及び/又は食糧を作成する製造工程において副生成物として存在するので、味または風味と無関係に食物に現われる。食品添加物の主だった機能には、以下のものが含まれる:酸性度レギュレータ、固化防止剤、消泡剤、酸化防止剤、充填剤、炭酸化剤、清澄剤、コロイド状剤、色、保色性剤、濃縮物、乳化剤、固定化剤、調味料、小麦粉トリートメント剤、起泡剤、冷固剤、ゲル化剤、つや出し剤、湿潤剤、液体冷固剤、パッキングガス、防腐剤、推進薬、起毛助剤、スタビライザ、甘味料、及びシックナー。
【0043】
MAMSのための同位体標識されたEDIMの開発
上で記載したところを要約すれば、同位体標識されたEDIMは、8つの異なるソースにより生成することができる:活性治療薬A、これは主要代謝産物A1と他の無関係の代謝産物とに代謝される;塩S、これは主要代謝産物S1と他の無関係の代謝産物とに潜在的に代謝される;及び薬物添加物E、これは主要代謝産物E1と他の無関係の代謝産物とに潜在的に代謝される;及び、Tと呼ばれる薬理活性のないタガント、これは活性治療薬のマトリックスの外部に位置し(したがって、FDAにより承認された活性治療薬の調合を変更しない。)、主要代謝産物T1と他の無関係の代謝産物とに代謝される。これらの反応は下のように要約される:
活性治療薬物マトリックス: 活性薬: A→A1+その他
薬物塩: S→S1+その他
薬物添加物: E→E1+その他
タガント・コンパートメント: タガント: T→T1+その他
【0044】
オプション1:EDIMソース1Aの検出:MAMSは、単一の調合薬Aを検出するように設計されるであろう。特に、EDIMとしてAで標識されたものを使用する同位体ベースのMAMSが使用されるであろう。ある場合においては、特にQD(1日当たり1回経口投与)又はBID(1日当たり2回経口投与)薬物が鋭意開発されている場合には、Aは吸着目的のために非常に長く(数時間から数日にかけて)呼気中に存在する場合がある。したがって、(投薬による血漿濃度における長い代謝性の長い半分の及び最小の増加により)個々のドースがいつ服用されたかを識別しない。これは、今日使用されているほとんどの薬物が、毎日1、2度与えられているので、ありうることである。
【0045】
オプション2:EDIMソース2A1の検出:オプション2(Aの主要代謝産物としての同位体標識されたEDIMの検出)は、多数の利点を有する。第1に、もしA1が呼気中で速やかに検出され、特定の酵素(たとえば、肝臓にある酵素)の作用により生成されるのであれば、それは薬物服用を保証するであろう。なぜなら、Aが血液へ吸収されて、肝臓に対して代謝のために送出されたであろうからである。対照的に、もし被験者がその人の口にあるタブレットを単に「噛み」、システムをだまそうとしたならば、EDIMは現われないであろう。酵素が唾液内にないからである。第2に、この種の同位体標識されたEDIMは、呼気センサーによって正確に計量された場合、服薬遵守を示すだけでなく、潜在的にそれ自身の代謝を報告することができる「スマートsmart」な(自己モニタリングし且つ治療報告する:elf onitoring nd eporting herapeutic)薬物を生成することができ、したがって、患者において、副作用(ADR)、付随薬物・薬物相互作用(DDI)、遺伝的異常(多形現象)及び/又は病態生理障害の影響を最小限にする。呼気における同位体標識されたEDIM濃度を著しく増加させ又は減少させる生理的な要因は、特にEDIM呼気濃度が変化前に長期間安定していた場合、活性治療薬(A)の代謝が著しく変更されており、速やかに調査されるべきであることを示すであろう。
【0046】
一実施形態において、Aのin vivo代謝をフォローするために、濃縮されたソース2EDIMを単独で使用することができる。他の実施形態において、ソース2EDIM呼気濃度における変化を生じさせ、また、活性治療薬(A)が適切に代謝されていない偽警報を生じさせる、胃内容排出(たとえば、脂肪の多い食事、圧力など)における変化及び/又は可変吸収といった要因を取り除き又は最小限にするために、ピルマトリクスにコンパレータ化合物を含めることができる。これは、異なる酵素(場所、キャパシティ、及び/又は機能)により代謝され、また、活性治療薬物からのものとは独立して別のEDIMを生成するであろう。たとえば、同位体標識されたAは薬物代謝のために最も重要なCYP450酵素(より低いキャパシティ)であるCYP‐3A4により同位体標識されたA1(ソース2EDIM)に代謝され、他方コンパレータは高容量酵素ブチリルコリンエステラーゼにより別のEDIMへ代謝されると仮定しよう。活性治療薬物からEDIMへの最大濃度の比がコンパレータのそれに対して一定である場合、活性薬は適切に代謝されているであろう。言いかえれば、呼気の同位体標識されたA1 EDIM濃度が低減されたが、コンパレータのEDIMが平行して減少する場合、それは、薬物代謝とは確実に無関係である遅れた胃内容排出のような生理学的変化を示すであろう。対照的に、比が著しく変われば、それは潜在的な問題を示すであろう。すなわち、比(A1/コンパレータ)の増加はAの代謝の上昇を、これに対して、比(A1/コンパレータ)の減少はAの代謝の低減を、それぞれ示すであろう。さらに、オプション1における場合のように、活性調合薬の代謝産物A1は、上で概説されるのと同一の不利な点を有するであろう。
【0047】
別の実施形態において、上で言及されたものに加えて異なるEDIMあるいはEDIMの組合せを加えることにより、我々は、服用だけでなく、継続的方方式でドース及びその代謝をも報告する「天才」レベルの新規でインテリジェントな化学物質(NICE:ew ntelligent hemical ntity)分子を考えることができる。FDAは、薬物安全性の改善に高度に支援的である。たとえば、最近の発表において、Center for Drug Evaluation and Research(CDER)は、重要である問題は、ゲノム創薬によりガイドされた薬物法規が制定されるか(Lesko‐LJ and Woodcock‐J,Pharmacogenomic‐guided drug development:regulatory perspective,The Pharmacogenomics Journal(2002)2,20‐24)でなく、いつ、どこでなのかであると述べた。NICEタイプの薬物で薬物服用及びモニタリング代謝を保証することにより、本発明で概説されたMAMS技術は、薬物安全性を別のレベルに持っていくであろう。
【0048】
さらに、この種の「スマート」な薬剤は、ゲノム創薬ベースのアプローチに対して、その代謝の報告において及び/又はある特定の酵素により代謝される能力を解明する酵素メタプローブ(たとえば、表現型の、呼気ベースのテスト:CYP‐3A4のための14Cエリスロマイシン、あるいはCYP‐1A2のための13Cカフェイン)の使用において、当然に最もインテリジェントなものとなるであろう。なぜこれが生じるのか。第1に、酵素機能(たとえば、遺伝的多形を有する2D6、2C19のような特定のCYP機能)における遺伝ベースの欠陥を検査する血液検査は、単にCYPアイソフォームのサブセットにおける問題を生じさせるだけであり、最も重要なCYP酵素であるCYP3A4を含んでいない。第2に、遺伝ベースのテストは、ADRのより重要な原因―薬物・薬物相互作用(DDI)―を無視する。特定の酵素に対して標準のゲノム(たとえば、薬物治療を個別的に取り扱うために提案されている標準的なAmpliChip結果)を有する患者を、たとえその人の酵素活性が実際にDDIにより標準の活性の5%未満かもしれないとしても、この同一の酵素により代謝される治療薬上に据えられるかもしれない!その結果、彼/彼女は、DDIにより薬物関連死を被る場合がある。遺伝子検査用に提案されている方法で、被験者はNICEタイプ治療薬から生成されたEDIMを使用して、以下の代謝性カテゴリーへ階層化することができる:1)不全代謝者、2)中位代謝者、3)高度代謝者、及び4)超高速代謝者。第3に、多くの薬物は、多数のCYP分画あるいはCYP及び非CYP酵素のコンビネーションを含む多数の酵素の経路により分解される。多くの場合において、たった1つの酵素の活動に注目することは過度に単純化している。したがって、特定の酵素の機能を検討する遺伝子検査及び呼気テストは、様々な分解経路の、従ってその結果として薬の薬物動態学及びレベルの正味効果(あるいは統合作用)の正確なアセスメントを提供しない場合がある。多くの薬物は2以上の代謝ルートがあるので、本発明で言及されたスマート薬物のEDIMは、必ずしも任意の1つの特定の生理的なプロセスの代謝速度を測定しないであろうが、ある薬物が進行中の連続的な方法で適切に代謝されているかを識別する方法で、関連する代謝経路をすべて識別して統合する。
【0049】
もしCYP450酵素系を調べる場合、図7‐図10にリストされたFDAに認可された薬物はすべて「スマートな」自己報告する(NICEタイプ)治療分子に変換される可能性がある。しかしながら、EDIMソース2は、特定の活性薬の服用の検出にシステムをなおも制限する(つまり、1つのEDIMアプローチがすべてのMAMSニーズを満たすとは限らない)。同様に、共通の代謝産物、特に脱メチル化反応(図7)によるホルムアルデヒドを生成する非常に多くの薬物をFDAが承認したので、EDIMは類似し、図7に示される異なる治療薬中に識別することができないかもしれない。更に、オプション1における場合のように、活性調合薬の代謝産物であるA1は、上に概説されるのと同一の不利な点を有するであろう。
【0050】
好ましい実施形態において、服用だけでなく、継続的方式でドース及びその代謝をも報告する「天才」レベルのNICE分子が提供される。注記:本願において、EDIMを生成する安定した同位体標識(たとえば、重水素)の使用は、化学的生産管理(CMC)あるいは活性医薬品原薬(API)に対して最小又はゼロの影響に止めるべきで、したがって最小の規制検査に頼るべきである。
【0051】
別の実施形態において、本願において記載された技術は、既存の技術(たとえば、直接撮影装置で胃を走査するシンチグラム造影テスト、あるいは、高価な分析装置で呼出された13COを測定する呼気ベースの13Cオクタノエート検査)とは別個に、通常・非通常の同位体標識されたEDIM及びこれを測定するセンサーを使用して、胃内容排出を非侵襲的に測定する新規で斬新な方法を提供するために使用することができる。そのテストは単に、ピルを摂取する直前及び直後に、断続的な間隔で短い時間センサーへ呼気を呼出することを被験者に要求するだけである。たとえば、3つの重要な化学的な設計要素を含み、呼気におけるEDIMの濃度を測定するためにセンサーと対面するであろうピルシステムを考えよう。すなわち、1)口へのピルシステムのエントリーを「刻時time stamp」する「マウス」ケミカル、2)胃へのピルシステムの成分のエントリーを「刻時」する「胃」ケミカル、そして3)小腸へのピルシステムの成分のエントリーを「刻時」する「小腸」ケミカルの3つである。
【0052】
マウスケミカル:ピル上で表面コートされ(好適な一実施形態)又はピル内に配置された(たとえば、ゼラチンカプセルを含むがこれに限定されない。)マウスケミカルは、口に投与されるとマウスケミカル(好ましい実施形態)、マウスケミカルの代謝産物、又は両方の何れかから直接に誘導されたマウスから誘導されたEDIMを直ちに生成するだろう。したがって、また、ピルがマウスに入れられた時を「タイムスタンプ(刻時)」するであろう。
【0053】
胃ケミカル:ピル上で表面コートされ(好適な一実施形態)又はピル内に配置された(たとえば、ゼラチンカプセルを含むがこれに限定されない。)胃ケミカルは、カプセル(好ましい実施形態)から直ちに解放され、胃壁を通過する輸送によって血液へ著しく吸収され(たとえば、エタノールを含むがこれに限定されない。)、胃ケミカル自身、酵素活性(好適な酵素は血液内に存在し、胃EDIMを素早く生成するために高容量である。)による胃ケミカルの代謝産物、あるいは両方の組合せの何れかを測定することにより、1つの胃EDIM及び/又は2以上の胃EDIMとして直ちに検出されるであろう。したがって、胃ケミカル由来のEDIMの出現は、胃へのピルシステムのエントリーを「刻時」するであろう。
【0054】
小腸ケミカル:ピル上で表面コートされ(好適な実施形態)又はピル内に配置された(たとえば、ゼラチンカプセルを含むがこれに限定されない。)小腸ケミカルは、1つのケミカル又は2以上のケミカルであり(以下「小腸」ケミカルという。)、小腸の壁(胃壁でなく好ましくは十二指腸)を通過する輸送によって血液へ吸収される;小腸に入り、血液循環に入るや否や、小腸ケミカルは、小腸ケミカルそれら自身、酵素活性(好適な酵素は血液内に存在し、小腸EDIMを素早く生成するために高容量である。)による小腸ケミカルの代謝産物、あるいは両方の組合せの何れかを測定することにより、1つの小腸EDIM及び/又は複数の小腸EDIMとして直ちに検出されるであろう。したがって、小腸ケミカル由来のEDIMの出現は、小腸へのピルシステムのエントリーを「刻時」するであろう。上に記載したマウス、胃、及び小腸「タイムスタンプ(刻時)」の使用は、胃内容排出を測定するために使用される現行システムと異なり、胃内容排出時間を非侵襲的に測定されるようにするだけでなく、また、食道の通過時間及び後続する胃内容排出時間の補正(食道の通過時間から引き算をして)の同時アセスメントを可能にする。多くの病状及び/又は薬物は、食道の通過及び胃内容排出に互いと無関係に影響する場合がある。さらに、記載されたシステムは、ユニークな結腸EDIMを放つためにバクテリアを使用することができる結腸のような胃腸管の他の要素で空になる時間を評価するためにさらに拡張しうる。これらの適用のすべてにおいて、ピルシステムは、絶食、標準流動食及び/又は標準的な脂肪質食事を含む様々な条件の下で与えることができる。
【0055】
オプション3:EDIMソース1Sの検出:オプション3の重要な限界は、MAMSが単一の塩Sを、化学的に活性治療薬Aの一部であるEDIMとして検出するように設計されるであろうということである。このアプローチは、MAMSに適当であるかもしれないし、そうでないかもしれない。別の不利な点は、塩の物理化学的特性、薬物動態学又は効果的な治療の濃度が、呼気における検出に適していないかもしれないということである。オプション3にとっての実例となる1つの実施例は、同位体(たとえば、13C、17O、18O及び/又は重水素)で標識された酢酸塩(酢酸)であろう。これは、製剤用の塩として頻繁に使用されており、また、かなり揮発性でソース1EDIMとして役立ちうる。
【0056】
オプション4:EDIMソース2S1の検出:オプション4(Sの主要代謝産物であるS1を呼気から経口摂取後に検出)も、いくつかの実施形態において実現可能かもしれない。たとえば、酢酸塩(酢酸)は、オプション3において言及された。同位体(たとえば、表2からの13C、17O、18O及び/又は重水素)で標識された酢酸(図6)は、トリカルボン酸(TCA)サイクルによってCOとHOに変換される。同位体標識を含んでいる代謝産物は、ソース2EDIMとして役立ちうる。
【0057】
図7に示されるように、多くの治療薬が脱メチル化反応によってホルムアルデヒドを直接生成する。CYP活性のような代謝機能を評価する点において、COでなくホルムアルデヒドの生産は、代謝機能のより正確な手段である。呼気マーカーとして酵素反応能を評価するためにCOを使用することにより、2つの追加的な酵素系(図6)が図に加えられる(つまり、アルコール脱水素酵素、ホルムアルデヒド[アルデヒド]脱水素酵素)。何れか一方の酵素系に欠陥が存在した場合、CYP機能が、ホルムアルデヒドから遠位にある酵素システムの欠陥に対して、異常だったと偽って結論を下すことが可能である。この問題の確認として、エリスロマイシンのような多くのCYP基質の酸化からの二酸化炭素の生産がフォラシンに依存するので(図6)、実際には、代謝性異常がCYP‐3A4機能で見つからなかった場合に、葉酸依存介在ステップにおける還元がエリスロマイシン呼気テストで異常なテストをもたらした。本願で概説された技術は、特にNICEコンセプトに関して、直接CYP活性を測定し、したがって、この潜在的な落とし穴を回避して、代謝を自己報告する薬物のための方法を提供するために、同位体標識されたホルムアルデヒド(あるいは他のアルデヒドなど)の利用を活用しうる。
【0058】
オプション5:EDIMソース1Eの検出:治療薬の調合を最適化するために使用される多くの添加剤が存在する(表5)。これらのエージェントのうちのいくつかは、MAMSのための同位体標識ソース1EDIMを提供するのに適切かもしれない。
【0059】
オプション6:EDIMソース2E1の検出:添加剤から発生する同位体標識されたEDIMも、MAMSのために使用されてもよい。たとえば、アスパルテームまたはネオテームは、加水分解されると、L‐フェニルアラニン、アスパラギン酸及びメタノールを遊離するエステルベースの人工甘味料である。
【0060】
オプション7:EDIMソース3−Tの検出:他のソースによりEDIMを生成することができる場合、Tの存在は必要ではないかもしれない。オプション7(Aを含んでいるカプセルと共に摂取されるTの検出)の非常に重要な利点は、それが理想的なEDIMの特質を有する化学的なタガントの選択を可能にさせるだけでなく(詳細に関してはセクションB.4を参照)、任意の活性調合薬の経口摂取を確認するために利用することができるということである。しかしながら、Tの代謝産物であるT1(オプション8)でなく、Tを利用することにより、我々は、タブレットが摂取されたことを保証することができない。この欠点は、ピル設計要素により、著しく緩和し又はしっかりと除去することができる。
【0061】
オプション8:EDIMソース4−T1の検出:同位体ベースのMAMSのためのこのアプローチ(EDIMとして同位体標識されたT1の検出)において、AとTは同一のピル/カプセルに共存する。しかし、好ましい実施形態において、Tの存在は、医薬品原薬のCMC/APIを変更しない。それは3つの非常に重要な利点を有する:1)理想的なEDIMの属性を有する化学的なタガントの選択を可能にする(詳細はセクションB.4を参照)、2)任意の活性調合薬の経口摂取を確認するために利用することができる、また、3)活性調合薬が摂取され、血液に入り、その生物学的な標的部位に移動し、効能の元となっているそのメカニズムによって治療上の作用を及ぼしたことを保証することができる。たとえば、肝臓に位置する酵素がTをT1に変化させる場合、呼気におけるT1の検出は、彼らの口に実際にタブレットを入れた人において、活性薬のピル/カプセルの服用を確定的に確認する。
【0062】
MAMSのための好適な同位体標識されたEDIM
EDIMのソース(上記のEDIMの4つの一般的なソースを参照)とは無関係に、効果的なMAMSのための理想的なEDIMを生成するためにシステムを設計する場合、少なくとも以下の12の要因が考慮されるべきである。
【0063】
1.すべての経口投与レジメンに適用可能である。経口経路は好ましい実施形態であるが、他の投与ルートは静脈内、経皮的、直腸、鼻、脳脊髄液、皮下、筋肉内等(これらに制限されない。)の非経口経路を含んでいてもよい。
【0064】
2.ピルの摂取・吸収後に、呼気中に、EDIMが再生産可能で高速に出現すること。
【0065】
3.QDあるいはBID投薬のための呼気におけるEDIM出現の再生産可能な持続:持続は5時間以上あるいは15分未満でないこと。
【0066】
4.EDIMは、呼気においてユニークで(たとえば、多くの食糧に見つからず、内因性代謝中では通常は見つからず、また疾病中は高濃度で生成されない)、検出器に対して良好な信号対雑音比を提供すること。
【0067】
5.重大でないがTがEDIMを生成するために使用される場合の代謝のタイプは、潜在的な薬物・薬物相互作用(DDI)を回避するために非CYP(たとえば、エステラーゼ)が好適である;「スマート」な薬物には服薬遵守を確認するためにEDIMを生成するだけでなく、代謝を自己報告する可能性がある。
【0068】
6.EDIMはかなり揮発性で容易に呼気に現われるが、血液においては非常に即時消退性ではない;つまり、不揮発性の代謝産物への非常に速い後続する代謝を経験しない。理想的には、EDIMは、生理的なpH(pH=7.4)で大部分の分子を充電状態にするpKa値を有するべきでない。これは、呼気に不十分に現われるかもしれない。
【0069】
7.検出にとって必要な濃度において、他の化合物の代謝に対して、内因性の毒性、薬理活性又は妨害作用を有していないこと。たとえば、アルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害しアセトアルデヒドを蓄積させるジスルフィラム(ヒトにおける「インフルエンザ様の症状」の発現はアルコールを消費しようとするネガティブな誘因である。)はアルコール中毒を治療するために使用されるが、これを服用している被験者は、期待されるよりも高い水準のアルデヒドによりアルデヒドベースのEDIMを生じさせて副作用を生じさせるかもしれない。このシナリオには、MAMSにおけるEDIMを生成するために使用される少ドースのタガント、及びMAMS適用のために形成されたEDIMの濃度は、非常に与えられそうにない。
【0070】
8.EDIMは、セクションAに記載された3つの薬物クラスのいずれか又は組合せであってもよい。
【0071】
9.理想的なEDIMは身体において安定すべきであり、呼息により排他的に除去されるべきであり、そして付加的な代謝を経験すべきでない。この基準は、GRASタイプのタガントによっては殆ど満たされないであろう。
【0072】
10.タガントがEDIMを生成するために使用される場合、それは治療薬のPK/PDを変更するべきでない(たとえば、APIが生物学的同等性を有すること;APIが身体に対して同一の生物相互作用及びADMEを有すること。)。
【0073】
11.EDIMの化学的なソースは、高価でなく、容易に入手でき、合成が容易であるべきである。
【0074】
12.EDIMの形成は、他のケミカル(たとえば、EDIMを遊離する酵素を阻害する治療薬又は非治療ケミカル)や、ヒトにおいてしばしば示される病態生理学的条件によって容易に妨げられるべきでない。
【0075】
MAMSにおけるタガントにとっての追加的な選択基準には、これはEDIMを生成するために使用しうるものであるが、次のものが含まれる:1)物質の状態:固体対液体;2)味:無し又は有り(美味い対不味い);3)物理化学的性質:沸点、融点、ヘンリーの法則定数(K);4)PK特性:代謝のレート及びルート(副作用[ADR]を回避する非CYP450)を含むADME;5)広範囲な安全性データ:ヒトにおける一日辺り曝露許容量(PDE:permissible daily exposure)や様々な種におけるLD50値(典型的には経口投与のためのgms/kg範囲内)のような安定性や毒物学上のデータ;6)規制的観点からの影響が最小ないし全く無し(API[治験薬又はFDA認可薬物]のCMC又はAPIのPK/PDへの影響無し);並びに、7)タガントの代謝は適当な検出技術(たとえば、IR)により容易に検出されるEDIMを生成する(たとえば、EDIMはセンサーにより検出され、重要な内因性の化学薬品でもなく異なる食糧の摂取によって広く生成されるものでものない。)。
【0076】
酵素化学、EDIM及びMAMS
MAMSに適している触媒作用を介して同位体標識されたEDIMを生成するために、いくつかのタイプの酵素により作用することができるクラス1、2及び/又は3つの薬物(上に記載)が非常に多様に存在する。カルボン酸エステルは、エステラーゼにより作用された場合、酸とアルコールを遊離する(図1)。多くのGRASエステル・タガントの場合には、代謝産物、すなわち、アルコール(図2)及びカルボン酸(図3)をEDIMとして選択することができる。一方又は両方が揮発性(又は半揮発性)となり、したがって、EDIMとして役立ちうるからである。さらに、炭酸塩エステル、アセタール及びケタールも、容易にEDIMとしての種々様々の対応するアルコール及びカルボン酸を生成するために使用することができる。これらの化合物から生成された1°と2°のアルコールは、続いて、アルデヒドとケトンをそれぞれ生成する。アルデヒドも、また特にケトンも、適切なEDIMであろう。カルボン酸と比較すると、アルコールは、様々な理由でより適切なEDIMである(たとえば、カルボン酸は貧弱な[高い]K値を(=CL/CG、液体対気相濃縮比。これは、それらを好ましくは血液対呼気において分ける。)を有している。)。酪酸エチルのような1°アルコールに基づいた脂肪族のエステル(1°エステル)の場合には、エステラーゼが素早く1°アルコール(つまり、エタノール)を生成する。2‐ペンチル・ブチレートのような2°アルコールに基づいた脂肪族のエステル(2°エステル)については、それらは、エステラーゼにより、特にカルボキシルエステラーゼ(たとえば、β‐エステラーゼ)により、対応する2°アルコール(つまり、2‐ペンタノール)に素早く加水分解される。第1級(1°)、第2級(2°)、第3級(3°)アルコールのヒドロキシル(‐OH)基を有する炭素は、第1級、第2級及び第3級のアルキル基にそれぞれ結合される。1°と2°のアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH)によって、先ずはそれらの対応するアルデヒド及びケトンにそれぞれ変換される(酸化される)。1°と2°のアルコールとは対照的に、3°アルコールは、ADHとの立体障害により、ヒトにおける代謝に対して非常に耐性があるのでMAMSにとって理想的でない。但し、3°アルコールに基づいたエステルが3°アルコールを遊離した場合(これはEDIMとして使用されたものである。)は別である(たとえば、tert‐ブチル・ブチレートがtert‐ブタノールへ)。アルデヒドは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)によりさらに代謝される。これは、アルデヒドを対応するカルボン酸に酸化させる(脱水素化させる)。対照的に、メチル・ケトンはα−ヒドロキシル化(たとえば、2‐ブタノン[メチルエチルケトン、MEK]のCYP‐2E1及びCYP‐2Bを介する3‐ヒドロキシ‐2‐ブタノン[アセトイン]への転換、あるいは、2‐ペンタノン[メチルプロピルケトン、MPK]の3‐ヒドロキシ‐2‐ペンタノンへの転換)を経て、続いて末端のメチル基の酸化を経て、最終的には対応するケトカルボン酸を産出する。アルデヒドと異なり、ジスルフィラム(ALDHの抑制剤)は、ケトンの代謝を阻害するべきでない。ケト酸は中間代謝産物(たとえば、α‐ケト酸)であり、酸化的脱炭酸反応を経てCO及び単純な脂肪族カルボン酸を産出する。酸は、脂肪酸経路及びクエン酸サイクルで完全に代謝されてもよい。
【0077】
2°アルコール(2°アルコールを生成する2°エステルであってもよい。)は明確な服用モニタリングのための良好なタガントであると考えられ、この点で単純な1°アルコールより優れているように思われる。呼出された呼気においてそれらの対応するケトン(EDIM)の存在(及び存続)は、タガントとして2°アルコール(あるいは2°アルコールに基づいたエステル、炭酸塩エステル、ケタールなど)を含んでいる薬剤の服用の決定的な証拠を表わす。一般に立体障害が多いので、2°アルコールは1°アルコールに対してADHのための良い基質でない。同様に、アルコールから誘導されたケトンを分解する酵素の経路は、アルコールから誘導されたアルデヒドについてのものより非効率的であるように思われる。1)胃壁には高濃度のADHがありアルコール(たとえば、エタノール)が著しく胃によって吸収されることは公知であり、また、2)アルコールはGI路からの吸収の後に肝臓におけるADHによって大規模な初回通過代謝を経る、という事実を考慮すると、2‐ブタノンのレベルが呼気に非常に素早く現われ、そしてその濃度が著しく2‐ブタノールのものを超過するということは驚くべきことでない(ケトン:アルコール比:2‐ブタノン/2‐ブタノール>>1)。
【0078】
さらに、他の2°アルコールは、明確な服用モニタリングに利用可能なタガントの数を増加させるであろう。(1°アルコールに相対して)2°アルコールが、身体にあり続け、肺によって著しく排泄されるケトンを生成するであろうという我々の仮説と一致して、糖尿病患者は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の病態生理学的条件にある際に容易にケトンを排泄する。したがって、他のソース(たとえば口頭で摂取された2°アルコール)から生成されたケトンが肺からも排泄されるであろうということは驚くべきことでない。mGC‐MOSの使用により、我々は既にこれらの内因性のDKA関連のケトンが、2‐ブタノン及び2‐ペンタノン(データは不図示)を含む、2°エステルあるいはアルコールから生成されるケトンから容易に識別されることを示した。
【0079】
下記は、明確なMAMSのためにエステル、1°アルコール及び2°アルコールを使用することのいくつかの主要な利点及び不利な点の要約である:
【0080】
A.エステル
有利な点
・GRAS食品添加物非常に豊富
・エステラーゼは、ヒトの中に広くあり容易に飽和可能でない酵素系によって、対応するアルコール及びカルボン酸を生成
・多くが液体と固体の形で存在
・アルコールに比して固体を選択するための選択肢が多い
・好ましい味が非常に豊富
・2‐ペンチル・ブチレートのような2°アルコールに基づいたエステルは、1次的にはカルボキシルエステラーゼにより2‐ペンタノールと酪酸に分解される
【0081】
不利な点
・一定の質量のEDIM(たとえば、2‐ブタノン)を生成するためにAPIにインターフェースされるために必要とされるタガントの質量が大
・安定性の見地からいくつかのエステルは最適でない
・GRAS化合物としての1°アルコールに基づいたエステルは、食物データベースにおいて2°アルコールに基づいたエステルよりはるかに一般的である;これらのアルコールは2°アルコールに由来するケトンに比べて理想的なEDIMではないアルデヒドを生成する
【0082】
B.1°アルコール
有利な点
・2°アルコールに比してGRAS食物1°アルコールの種類が豊富
・ADHを介する大きな1°アルコールは、アルデヒドを、特に枝分かれしたものを生成する。これは、単純な1°アルコールよりも優れたEDIMであるが(たとえば、低K値;内因性の化合物とは異なる。)、蒸気圧が低い
【0083】
不利な点
・ADHは1°アルコールから一般にケトンほど良いEDIMでないアルデヒドを、特により単純な1°アルコールと共に形成
・多くが古典的なアルコールの味がする;避けるにはCMCアーキテクチャ・アプローチあるいは「仮装」の味の追加が必要かもしれない
・ジスルフィラム(アルデヒドデヒドロゲナーゼの作用を阻むアルコール中毒を治療するために使用される薬物)は、対応するアルデヒドの分解に干渉し、副作用を生じさせるかもしれない;この効果は、明確なMAMSに求められるアルコール(あるいはその対応するエステル)の量は少ないので、臨床的に無関係であると予想される
・(ADHとの相互作用を介する)エタノール消費は、1°アルコール・タガントのこれに対応するアルデヒドへの転換を理論上低減することができる;これは多くの非エタノール・アルコール(メタノールを除く)にとって臨床的に重要な意義を有すると証明されていない
【0084】
注記:さらに、1°アルコールのうち、薬学的エージェントのための多くの非常に重要なCYP−450代謝反応は、脱アルキル反応によって様々なアルデヒドを生成する。たとえば、脱メチル反応を介するホルムアルデヒド、脱エチル反応を介するアセトアルデヒド、脱プロピル反応を介するプロピオンアルデヒド、及び脱ブチル反応を介するブチルアルデヒドが含まれる。
【0085】
C.2°アルコール
有利な点
・ADHはケトンを生成する。これは、一般にEDIMとしてアルデヒドのものよりも好ましい物理化学的特性及び代謝特性を有する
・ジスルフィラム(アルデヒドデヒドロゲナーゼの抑制剤)は、2°アルコールから形成されたケトンの分解に干渉しない(たとえば、2‐ブタノールに由来するメチルエチルケトンは、CYP‐2E1及び2Bによって3‐ヒドロキシ‐2‐ブタノンに変換される)
【0086】
不利な点
・多くが古典的なアルコール(エタノール)の味がする;避けるにはCMCアーキテクチャ・アプローチあるいは「仮装」の味の追加が必要かもしれない
・GRAS食物データベースにリストされる2°アルコールは1°アルコールに比して殆ど無し
・GRAS食物データベースにリストされる2°アルコールベースのエステルは殆ど無し(たとえば、これらは、2°アルコールを、その後ケトンを生成する。)
【0087】
(CYP450システムと異なり)エステラーゼは高容量酵素系であるので、MAMSのためにそれらを利用するのは望ましい。エステル・タガントが使用され必要な場合、その存在が、治療薬と共に投与されたときに、薬物・薬物相互作用(DDI)を生じさせないであろうし、MAMSにおけるその機能にDDIによる逆影響を与えなさそうだからである。
【0088】
薬剤の大部分は、CYP450により(図4はいくつかの重要なP450反応をリストする。)、特にCYP‐3A4及びCYP‐2D6により代謝される。同様に、ヒトにおける様々なエステラーゼ機能の余剰は(薬物は異なるエステラーゼにより代謝することができる)、CYPベースのタガント基質を使用して、不利にMAMSシステムに影響を与えることができる酵素機能における遺伝的改変(たとえば、CYP‐2D6、CYP‐2C9及び/又はCYP‐2C19による遺伝的多形)の影響を回避するのに望ましい。他方では、CYP450系により代謝されるNICEタイプの薬物の場合には、活性治療薬がその服用だけでなくその代謝も「自己報告」するとき、その薬物が「スマート」であるためには、EDIMがCYP450酵素系に由来すべきであることは、当該状況において、もちろん望ましいことであり、必要なことである。
【0089】
同位体標識されたEDIMの呼気動態(存在、出現速度、濃度、存在時間等)は、次の要因に相関する:1)EDIMとして使用されるか又はEDIMを(酵素の作用を介して)生成するクラス1、2あるいは3の薬物のドース、2)血液の中への酵素活性を介してのEDIMの放出の割合、3)非呼気性で内因性の代謝ルート経由のEDIMの除去の割合(たとえば、エステラーゼやCYP450のような酵素により生成されたアルコール、アルデヒド及びカルボン酸のTCA回路によるCOとHOへの変換;図2を参照)、及び4)内因性のEDIM特性(たとえば、蒸気圧のような物理化学的性質及び代謝の半減期、クリアランス、分布容積、pKaのような薬物動態学の特徴)。
【0090】
EDIMの多くは、それらはMAMSにとって適切な生理化学的性質(たとえば、揮発性、呼気中出現持続時間等)を有するものであるが、内因性代謝及び/又は治療食の一部としてヒトの血液及び呼気の中に既に存在している。これは、アルコール、脂肪酸、アルデヒド、ケトンを含め(これらに限定されない。)、様々な化学的に多様な物質に当てはまる。たとえば、ヒトにおいて、エタノール、メタノール及びホルムアルデヒドの内因性の血液及び呼気の濃度は、次のように示される:
【0091】
エタノール−血漿:4000‐33000nM(Jones‐AW,J Anal Toxicol,9:246,1985)対呼気:2.2〜6.5nM(Phillips‐M and Greenberg‐J,Anal Biochem,163:165‐169,1987)。
【0092】
メタノール−:血漿:12500‐25000nM(Jones‐AW et al,Pharmacol Tox 66:62−65,1990)対呼気:4.6‐9.2nM(Jones‐AW et al,Pharmacol Tox 66:62−65,1990)
【0093】
ホルムアルデヒド−血漿:13000‐20000nM(Szarvas‐T,J Radioanalytical and Nuclear Chem,106:357‐367,1986)対呼気:12−24nM(Ebeler‐SE,J Chromatogr B Biomed Sci Appl,702:211‐215,1997)
【0094】
メタノールは、胃腸管のミクロフローラから、また、食事摂取から形成されると考えられている。メタノールは、メタノールの酸化を完全に又はほぼ完全に阻止するエタノールの効果により、MAMSに適していないかもしれない。エタノールはアルコール脱水素酵素の好ましい基質であり、エタノール吸収後の血液におけるその存在は身体におけるメタノールの半減期を著しく長くするだろう。たとえば、メタノールは、アルコールが無い状態では血液中での半減期は1.8−3.0時間であるが、対し、アルコールがある状態では8‐24時間以上であり(Haffner et al,Int J Legal Med,105:111‐114,1992)、それをEDIMとすることを潜在的に不適当にしている。EDIMの半減期はその存在が後の投薬に干渉しないように十分に短くなければならず、これは1日当たり2度以上与えられる薬物に関して明らかに重大な問題となる。内因性代謝に起因する多くの他の揮発物も、人間の呼気で見つけることができる。たとえば、ある研究(Diskin‐AM et al,Physiol Meas 24:107‐119,2003)において、リストされた化合物についての平均の濃度は、10億分率(ppb)で次のとおりだった:アンモニア、422‐2389;アセトン、293‐870;イソプレン、55‐121;エタノール、27‐153;アセトアルデヒド、2‐5。上記の分子が通常の同位体だけを含んでいてEDIMとして提案された場合、それらとバックグラウンドレベル(貧弱なSN比)を区別することは多くの場合において困難であろうから、それらはMAMS適用にとって理想的ではないであろう。対照的に、我々が非通常の同位体標識されたEDIMを使用したならば、これらの物質は、赤外分光法(図11−図27を参照)や質量分光法を含む(これらに限定されない。)様々な技術に基づいて内因性の化合物から容易に識別することができる。
【0095】
適当な赤外分光計の例には、米国特許第5,063,275号公報に開示されたものが含まれ(これに限定されない。)、参照によりここに組み込まれる。たとえば、このコンセプトを説明するに、重水素化された(あるいは炭素標識された)ホルムアルデヒドが内因性の(バックグラウンドの)ホルムアルデヒドから容易に識別することができ、また、十分に標識されたホルムアルデヒドが、親化合物のCYP介在による酸化によって遊離されて、細胞の代謝機構(ホルムアルデヒドのギ酸及びCO2への変換(図6))を回避することができ、血液に流れ込むことができる場合、これは、全てではないにしても、図7にリストされたFDAにより認可された薬物の多くの服薬遵守及び代謝までもをモニタリングすることを可能にするであろう。他方、これが真実でないと判明し、CYP系が容易に飽和可能で、DDIと遺伝的異常によりADR(また病的状態及び死)を頻繁に生じさせるという事実が与えられた場合には、本発明は、生成されたEDIMへの、非CYP450(好ましい実施形態)経路により分解される新規化学成分の他、CYP450経路により分解される新規化学物質を生成するべき誘因を製薬会社に提供するであろう。これは、分子が「スマート」であることを可能にする(つまり、それは、服用及び代謝を自己報告するであろう。)。
【0096】
Katzmanの技術(米国特許5962335)は、ある薬物が被験者により適切に代謝されるかを、その特定の薬物(提案された個別療法)を摂取する前に同位体呼気テストを用いて予測する方法を教示するが、ここに記載される本発明は多くの重要な点において相違する。第1に、Katzmanは、薬物投薬の回数及び薬剤の投薬量を含め、服薬遵守を評価するために同位体標識を使用する方法を教示しない。第2に、我々は、「スマート薬物」と名付けられた新規のクラスの治療薬又はNICEタイプ・エージェントを発明することを提案する。これは、服薬遵守を連続的にモニタリングするだけでなく、連続的な方法でそれら自身を代謝する能力もモニターする。したがって、好ましい実施形態において、我々は、Katzmanにより採用されたアプローチである薬剤摂取前の代謝能力の単なる事前評価でなく、連続監視を提案するものである。DDIや生理的異常のようなほとんどのADRは、特に患者の一生に及んで服用される薬物については、薬物治療中に生じるであろう。第3に、代謝性反応能を評価するために使用されている活性治療薬の実際の物理的材料は、患者の医学的病気を治療するために実際に使用されている。言いかえれば、我々の発明は、活性治療薬が疾病を治療するために実際に使用されている場合、それ自身の代謝を同時にモニタリングするためにそれ自体を好ましくは使用するであろう。これは、代謝性能力を評価するために外生的に与えられた試験薬物プローブ(ここでの薬物は医学的病気を治療するためには使用されていない。)を使用するKatzmanアプローチと対照的である。親であるFDA承認薬物のフラグメントであるNICEタイプ・エージェントの本体の服薬遵守及び代謝を評価するために使用することができ、他方でそれが疾病を同時に治療するということは、完全に新規である。第4に、Katzmanは、標識されたCOやNHのような最も遠位の代謝産物を使用することを提案するが、本発明の好ましい実施形態であるアルコール、酸、アルデヒド及び/又はケトンを含む(これらに限定されない。)より近位のものの使用について明示的に言及しない。第5に、Katzmanは、重水素の使用に明示的に言及しない。それはEDIMのための同位体標識として好ましい実施形態である。要約すると、本発明と異なり、選択的な同位体(好ましくは非放射性、表2)の標識化に基づいて、活性薬のPK/ADMEあるいは薬効を変更しない新規のクラスの「スマート」な治療薬エージェントを作ることはKatzmanの意図でなかった。これは、疾病を治療するために慢性的に(あるいは急性的に)与えられ、他方で同時に連続的に服用と代謝をモニターする。
【0097】
クラス1、2及び3薬物から同位体標識されたEDIMをどのように酵素を介して生成することができるかの説明例
上に概説されるように、多くの方略を様々な融通性のある服薬遵守システム(MAMS)を創造するために使用することができる。それらのうちのいくらかは、疾病を治療しつつ同時に服用と代謝をモニターするので、治療上の分子が「スマート」であることを可能にする化学的性質を含むことができる。このセクションにおいて、同位体標識されたEDIMを生成することができる3つの酵素系、すなわちエステラーゼ、CYP450、及びデアミナーゼを記載する。各酵素は、MAMSにクラス1、2、3薬物をどのように使用することができるかに係る選択された説明例により、以下のとおりである。注記:ほとんどの場合、親分子はEDIMのための好ましい実施形態であるより小さなより揮発性あるフラグメントに分割されるが、EDIMとしてより大きな代謝性フラグメントを使用することを排除しない。
【0098】
エステラーゼ
エステル(EC3.1.1)は、分子状酸素を必要とせずにエステラーゼによりカルボン酸とアルコールに加水分解される(図1)。エステル結合を分割するヒドロラーゼであるエステラーゼは、ヒトの薬物として使用される多くの化合物を加水分解する。含まれる酵素は、大別すると、コリンエステラーゼ(アセチルコリンエステラーゼを含む。)、カルボキシルエステラーゼ及びアリルエステラーゼと分類される。しかし、アセチルコリンエステラーゼは格別、それらの生体機能は知られていない。神経伝達に含まれる神経終末の中にあるアセチルコリンエステラーゼは、抗コリンエステラーゼ薬(たとえば、ネオスチグミン)、及び有機燐の化合物(主として殺虫剤及び化学兵器)により阻害される。コリンエステラーゼは主として血漿における薬物の加水分解に関係し、アリルエステラーゼは血漿と赤血球におけるもの、また、カルボキシルエステラーゼは肝臓、腸及び他の組織におけるものに関係する。表2にリストされた様々な同位体標識を(好適な実施形態は重水素である。)、適切な場合には、エステルの様々な原子のサイトへ組み込むことにより、効果的なMAMSの必要条件を満たす、1又は2以上の同位体標識を含む(エステル、酸及び/又はアルコール、並びにそれらの対応するケトン/アルデヒドから発生する)様々なEDIMを生成することができる。
【0099】
下記は、MAMSのために、異なるクラス1、2、3の分子をどのように同位体標識することができるかに係る9つの実施例である(図29‐図37)。
【0100】
エステル実施例1:アスパルテーム−図29。アスパルテームはFDAによりGRASとされている食品添加物、すなわち人工甘味料である。それは、人間において砂糖に似た味を呈する。それは、ヒトの腸エステラーゼ及び腸ペプチダーゼによりヒトにおいて素早く代謝される。その代謝産物は、L‐アスパラギン酸+L‐フェニルアラニン+メタノールから成る。主題発明、NICE実施形態−親分子構造上の同位体ラベルの化学基サイト、によれば:好ましいサイトは、アスパルテーム上の(円で示されている)メチル基であるが、親分子上の他の位置を含んでいてもよい。本発明の他の実施形態において、NICE実施形態−好ましいサイト上の同位体標識のタイプ:好ましいサイト上の同位体ラベルの挿入には、次のものが含まれるがこれらに限定されない。a)好適なサイト上の特定の同位体タイプの単一のラベル(たとえば、1つの重水素ラベル=CDH2)、b)好適なサイト上の特定の同位体の多重標識(たとえば、2以上の重水素=CD2HあるいはCD3)、又はc)好適なサイトの1又は2以上の位置上の異なるタイプ及び異なる数の同位体の組合せ(たとえば、重水素、炭素、及び/又は酸素=13CDH2、13CHD2又は13CD3)。本発明のさらに別の実施形態において、NICE実施形態−検出のために好適な標識された物質:呼気における同位体(たとえば、重水素)標識されたメタノール;より好適でない実施形態はメタノールの標識された代謝産物であろう(ホルムアルデヒド、ギ酸及び/又はCO2−メタノールの代謝の詳細については図6を参照)。親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。
【0101】
エステル実施例2:アセチルサリチル酸−図30。アセチルサリチル酸は、処方箋不要薬である(OTC薬:over the counter薬)。それは非ステロイド性の抗炎症性の薬物(NSAID:nonsteroidal anti inflammatory drug)であり、シクロオキシゲナーゼ(COX:cyclooxygenase)の活性部位でセリン残基のアセチル化によって不可逆的にCOXを阻害し、これはプロスタグランジンとトロンボキサンの生産を抑える。それは、ヒトの中のアセチルサリチル酸(ASA)エステラーゼにより代謝される。その代謝産物は2つの酸(サリチル酸と酢酸)から成る。一実施形態において、NICE実施形態−親分子構造上の同位体ラベルの化学基サイト:好適なサイトはASA上のメチル基であるが(赤い円により示されている)、親分子上の他の位置を含んでいてもよい。別の実施形態において、NICE実施形態−好適なサイト上の同位体標識のタイプ:NICE実施形態−好適なサイト上の同位体標識のタイプ:好適なサイト上の同位体ラベルの挿入には次のものが含まれるが、これらに限定されない。a)好適なサイト上の特定の同位体タイプの単一のラベル(たとえば、1つの重水素ラベル=CDH2)、b)好適なサイト上の所与の同位体の多重標識(たとえば、2以上の重水素=CD2HあるいはCD3)、又はc)好適なサイトの1又は2以上の位置上の異なるタイプ及び異なる数の同位体の組合せ(たとえば、重水素、炭素、及び/又は酸素=13CDH2、13CHD2又は13CD3)。本発明のさらに別の実施形態において、NICE実施形態−検出のために好適な標識された物質:呼気における同位体(たとえば、重水素)標識された酢酸;より好適でない実施形態は酢酸の標識された代謝産物であるCO2であろう(酢酸の代謝の詳細については図6を参照)。親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。
【0102】
エステル実施例3:パラベン−図31。パラベンはp‐ヒドロキシ安息香酸の略語である。パラベンは、ベンゼン環のパラ位で相違する、p‐ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルのファミリーである。4つの広く販売されているp−ヒドロキシ安息香酸酸(POHBA:para‐hydroxybenzoic acid)エステルがある:メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンである。食品添加物/保存剤として使用される;FDAによりGRASとされている;欧州は、メチルパラベン及びエチルパラベンについて、ADI(acceptable daily intake、一日許容摂取量)として1日当たり10mg/kgまで、を使用する。それは細菌増殖を阻害する;食品添加物。それは、ヒトにおいて、カルボキシルエステラーゼ及び組織エステラーゼにより素早く代謝される。その代謝産物は、p‐ヒドロキシ安息香酸(POHBA:para−hydroxybenzoic acid)+対応アルコールから成る(詳細に関しては以下を参照)。一実施形態において、NICE実施形態 − 親分子構造上の同位体ラベルの化学基サイト:好適なサイトはアスパルテーム上のメチル基であるが(赤い円により示されたている)、親分子上の他の位置を含んでいてもよい。別の実施形態において、NICE実施形態−好適なサイト上の同位体標識のタイプ:好適なサイト上の同位体ラベルの挿入には次のものが含まれるが、これらに限定されない。a) 好適なサイト上の所与の同位体タイプの単一のラベル(たとえば、1つの重水素ラベル=CDH2)、b)好適なサイト上の特定の同位体の多重標識(たとえば、2以上の重水素=CD2HあるいはCD3)、又はc)好適なサイトの1又は2以上の位置上の異なるタイプ及び異なる数の同位体の組合せ(たとえば、重水素、炭素、及び/又は酸素=13CDH2、13CHD2又は13CD3)さらに別の実施形態において、NICE実施形態−検出用に好適な標識が付された物質:呼気において同位体(たとえば、重水素)標識されたアルコール;それほど望ましくない実施形態は、異なるパラベンから生成されたアルコールと酸の遠位の代謝産物が標識されている(詳細に関しては図6を参照)。親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。
【0103】
エステル実施例4:クロフィブレート−図32。クロフィブレートは処方箋薬剤である。それはペルオキシソーム増殖を引き起こすと知られている脂質低下薬である;ペルオキシソーム増殖因子として知られている大規模なクラスの多様な外生及び内因性の化学物質のメンバー;ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプタ(PPAR(peroxisome proliferator activated receptor)−α)の活性化の有効性の重要な側面。それはヒトのエステラーゼにより代謝される。その代謝産物は、クロフィブレートのカルボン酸誘導体+エタノールから成る。一実施形態において、NICE実施形態−親分子構造上の同位体ラベルの化学基サイト:好適なサイトは、クロフィブレート上のエチル基、特にメチル基上であるが(赤い円により示されている)、親分子上の他の位置を含んでいてもよい。別の実施形態において、NICE実施形態−好適なサイト上の同位体標識のタイプ:好適なサイト上の同位体ラベルの挿入には次のものが含まれるが、これらに限定されない。a)好適なサイト上の特定の同位体タイプの単一のラベル(たとえば、1つの重水素ラベル=CH2CH2D)、b)好適なサイト上の特定の同位体の多重標識(たとえば、2以上の重水素=CH2CHD2、CH2D3、CHDCD3、CD2CD3)、又はc)好適なサイトの1又は2以上の位置上の異なるタイプ及び異なる数の同位体の組合せ(たとえば、重水素、炭素、及び/又は酸素。さらに別の実施形態において、NICE実施形態−検出用の好適な標識された物質:呼気において同位体(たとえば、重水素ベースの)標識されたエタノール;より好適でない実施形態はエタノールの標識された代謝産物であろう。(アセトアルデヒド、酢酸及び/又はCO2‐エタノールの代謝の詳細については図6を参照)。親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。
【0104】
エステル実施例5:エスモロール−図33。エスモロールは、規制された/処方箋薬である。それは、ベータ1レセプタ選択的な、エステルベースの超短時間作用型のベータ遮断薬である。殆どのエステル含有薬物とは対照的に、エスモロールの加水分解は、アリルエステラーゼと呼ばれる赤血球(RBC:red blood cells)のサイトゾルにおけるエステラーゼにより媒介される。その代謝産物は、エスモロールのカルボン酸誘導体+メタノールから成る。1つの実施形態において、NICE実施形態−親分子構造上の同位体ラベルの化学基サイト:好ましいサイトはエスモロールの上のメチル基であるが(赤い円により示されている)、親分子上の他の位置を含んでいてもよい。別の実施形態において、NICE実施形態−好適なサイト上の同位体標識のタイプ:NICE実施形態−好適なサイト上の同位体標識のタイプ:好適なサイト上の同位体ラベルの挿入には次のものが含まれるが、これらに限定されない。a)好適なサイト上の所与の同位体タイプの単一のラベル(たとえば、1つの重水素ラベル=CDH2)、b)好適なサイト上の所与の同位体の多重標識(たとえば、2以上の重水素=CD2H又はCD3)、又はc)好適なサイトの1又は2以上の位置上の異なるタイプ及び異なる数の同位体の組合せ(たとえば、重水素、炭素、及び/又は酸素=13CDH2、13CHD2、又は13CD3)。さらに別の実施形態において、NICE実施形態−検出用の好適な標識された物質:呼気において同位体(たとえば、重水素ベースの)標識されたメタノール;より好適でない実施形態はメタノールの標識された代謝産物であろう(ホルムアルデヒド、ギ酸及び/又はCO2‐メタノールの代謝の詳細については図6を参照されたい。)。親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。
【0105】
エステル実施例6:プロカイン−図34。プロカインは処方箋薬である。それは神経伝導遮断用の局所麻酔薬である;すなわち、ナトリウム(Na+)チャネルを遮断する。それはヒト偽コリンエステラーゼ(ブチリルコリンエステラーゼ)によりヒトにおいて代謝される。その代謝産物は、プロカイン(パラアミノ安息香酸)のカルボン酸誘導体+2‐(ジエチルアミノ)‐エタノールから成る。一実施形態において、NICE実施形態−親分子構造上の同位体ラベルの化学基サイト:好適なサイトは、プロカイン上の一方の又は双方のエチル基であり、メチルに優先的に位置するが(赤い円により示されたエチル基)、親分子上の他の位置を含んでいるかもしれない。別の実施形態において、NICE実施形態−好ましいサイト上の同位体標識のタイプ:好適なサイト上の同位体ラベルの挿入には次のものが含まれるが、これらに限定されない。a)好適なサイト上の特定の同位体タイプの単一のラベル(たとえば、1つの重水素ラベル=CH2CH2D)、b)好適なサイトとしての1又は2以上のエチル基上の所与の同位体の多重標識(たとえば、2以上の重水素=CH2CHD2、CH2D3、CHDCD3、CD2CD3)、又はc)好適なサイトの1又は2以上の位置上の異なるタイプ及び異なる数の同位体の組合せ(たとえば、重水素、炭素、窒素及び/又は酸素。さらに別の実施形態において、NICE実施形態−検出用の好適な標識された物質:呼気において同位体(たとえば、重水素ベースの)標識された2‐(ジエチルアミノ)‐エタノール。親に由来するより大きな代謝性フラグメント(たとえば、PABA)の同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。
【0106】
エステル実施例7:新規化学物質−3つのエステル結合を包含する環状分子−図35。図35は、EDIMとして、3つの異なるアルコール(エタノール、n‐プロパノール及びターシャリ・ブタノール)を生成することができるエステルベースの環式のNCEを図示する。NCEの上の3つのエステル結合の各々は加水分解され、カルボン酸及び3つの異なるアルコールを放出するであろう。これらのタイプのNCEの生成することには少なくとも3つの主たる利点がMAMS適用に関して存在する:1)それは、良好な識別を提供することができる酵素(単一のタイプあるいは2以上のタイプのいずれか)によってカスタム・デザインのパターンのEDIMがリリースされることを可能にする(たとえば、呼気におけるEDIMの組合せは高度に識別力があり、MAMS機能上で食事あるいは疾病の効果を除去するために使用することができる)、2)これらのタイプの分子の異なる組合せ上の置換(たとえば、1又は2以上のエステル基を含む単一のNCE対各々が1又は2以上の識別力あるエステル基を含む異なるNCEの組合せ)は、特定の薬物(たとえば、ワルファリン)及び/又は多数のタイプの異なる薬剤の異なる剤形を同位体で及び/又は非同位体でラベルするために使用することができ、そして3)NCEへ識別力のあるEDIMを組み合わせることにより、これらのパターンのEDIMをリリースするのに求められる薬物の質量(好適な実施形態は固体形態である。)を最小限にすることができる。MAMSのためのピル・マトリックスにおける質量限界が存在するであろうから、後者は重要である。たとえば、上に示されたNCE(MW=336.4)について、その質量のおよそ54%は、3つの異なるアルコールの質量を放つであろう。これを、エステラーゼ、エチルパラベンによりエタノールを生成する別の作用薬と対比すると(その質量のたった28%だけが1つのアルコール、エタノールの質量を放つ);それは、EDIMを生成するための質量効率がはるかに低い。さらに、より大きなサイズのこれらのより質量効率的な分子は、MAMSピルシステムへの組込みを簡潔にする固体の物理状態を恐らくは有するであろう。もちろん、呼気における最大EDIM濃度は、NCEの質量、酵素によるEDIMの生成の固有のレート、及び身体におけるEDIMの生理化学的な特性に主として依存するであろう。表2に示された同位体ラベル、限定するものでないが好ましくは重水素は、NCEの様々な原子をラベルするために使用することができる。今度はこれが、この実施例におけるEDIMとして役立つ、広範囲の同位体で(アプローチは図29‐図34に記載)及び/又は非同位体でラベルされたアルコールを生成するであろう。親に由来するより大きな代謝性フラグメント(たとえば、この実施形態におけるカルボン酸)の同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。注記:環構造とカルボニル結合の間の炭素結合の数は、分子の分子特性を最適化するために変えることができる。
【0107】
エステル実施例8:新規化学物質−3つのエステル結合を包含する非環状分子−図36。図36は、EDIMとして、3つの異なるアルコール(エタノール、n‐プロパノール及びターシャリ・ブタノール)を生成することができる、エステルベースの非環状NCEを図示する。NCE上の3つのエステル結合の各々は加水分解され、カルボン酸及び3つの異なるアルコールをリリースするであろう。これらのタイプのNCEを生成することには、少なくとも3つの主たる利点がMAMS適用にとって存在する:1)それは、良好な識別を提供することができる酵素(単一のタイプあるいは2以上のタイプのいずれか)によってカスタム・デザインのパターンのEDIMがリリースされることを可能にする(たとえば、呼気におけるEDIMの組合せは高度に識別力があり、MAMS機能上で食事あるいは疾病の効果を除去するために使用することができる)、2)これらのタイプの分子の異なる組み合わせ置換(たとえば、1又は2以上のエステル基を含む単一のNCE対各々が1又は2以上の識別力あるエステル基を含む異なるNCEの組合せ)は、所与の薬物(たとえば、ワルファリン)及び/又は多数のタイプの異なる薬剤の異なる剤形を同位体で及び/又は非同位体でラベルするために使用することができ、そして3)NCEへ識別力のあるEDIMを組み合わせることにより、これらのパターンのEDIMをリリースするのに求められる薬物の質量(好適な実施形態は固体形態である。)を最小限にすることができる。MAMSのためのピル・マトリックスにおける質量限界が存在するであろうから、後者は重要である。たとえば、上に示されたNCE(MW=344.4)について、その質量のおよそ52%は、3つの異なるアルコールの質量を放つであろう。これを、エステラーゼ、エチルパラベンによりエタノールを生成する別の作用薬と対比すると(その質量のたった28%だけが1つのアルコール、エタノールの質量を放つ);それは、EDIMを生成するための質量効率がはるかに低い。さらに、より大きなサイズのこれらのより質量効率的な分子は、MAMSピルシステムへの組込みを簡潔にする固体の物理状態を恐らくは有するであろう。もちろん、呼気における最大EDIM濃度は、NCEの質量、酵素によるEDIMの生成の固有のレート、及び身体におけるEDIMの生理化学的な特性に主として依存するであろう。表2に示された同位体ラベル、限定するものでないが好ましくは重水素を、NCEの様々な原子をラベルするために使用することができる。今度はこれが、この実施例におけるEDIMとして役立つ、広範囲の同位体で(アプローチは図29‐図34に記載)及び/又は非同位体でラベルされたアルコールを生成するであろう。親に由来するより大きな代謝性フラグメント(たとえば、この実施形態におけるカルボン酸)の同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。注記:(星印により示された)中央の炭素とカルボニル結合の間の炭素結合の数は、分子の分子特性を最適化するために変えることができる。
【0108】
エステル実施例9:新規化学物質−4つのエステル結合を含む非環状分子−図37。図37は、EDIMとして、4つの異なるアルコール(エタノール、n‐プロパノール、ターシャリ・ブタノール、n‐ペンタノール)を生成することができる、エステルベースの非循環NCEを図示する。NCE上の4つのエステル結合の各々は加水分解され、カルボン酸及び4つの異なるアルコールをリリースするだろう。これらのタイプのNCEの作成については、少なくとも3つの主だった利点がMAMS適用にとって存在する:1)それは、良好な識別を提供することができる酵素(単一のタイプあるいは2以上のタイプのいずれか)によってカスタム・デザインのパターンのEDIMがリリースされることを可能にする(たとえば、呼気におけるEDIMの組合せは高度に識別力があり、MAMS機能上で食事あるいは疾病の効果を除去するために使用することができる)、2)これらのタイプの分子の異なる組み合わせ置換(たとえば、1又は2以上のエステル基を含む単一のNCE対各々が1又は2以上の識別力あるエステル基を含む異なるNCEの組合せ)は、所与の薬物(たとえば、ワルファリン)及び/又は多数のタイプの異なる薬剤の異なる剤形を同位体で及び/又は非同位体でラベルするために使用することができ、そして3)NCEへ識別力のあるEDIMを組み合わせることにより、これらのパターンのEDIMをリリースするのに求められる薬物の質量(好適な実施形態は固体形態である。)を最小限にすることができる。MAMSのためのピル・マトリックスにおける質量限界が存在するであろうから、後者は重要である。たとえば、上に示されたNCE(MW=500.67)について、その質量のおよそ52%は4つの異なるアルコールの質量を放つであろう。これを、エステラーゼ、エチルパラベンによりエタノールを生成する別の作用薬と対比すると(その質量のたった28%だけが1つのアルコール、エタノールの質量を放つ);それは、EDIMを生成するための質量効率がはるかに低い。さらに、より大きなサイズのこれらのより質量効率的な分子は、MAMSピルシステムへの組込みを簡潔にする固体の物理状態を恐らくは有するであろう。もちろん、呼気における最大EDIM濃度は、NCEの質量、酵素によるEDIMの生成の固有のレート、及び身体におけるEDIMの生理化学的な特性に主として依存するであろう。表2に示された同位体ラベル、限定するものでないが好ましくは重水素を、NCEの様々な原子をラベルするために使用することができる。今度はこれが、この実施例におけるEDIMとして役立つ、広範囲の同位体で(アプローチは図29‐図34に記載)及び/又は非同位体でラベルされたアルコールを生成するであろう。親に由来するより大きな代謝性フラグメント(たとえば、この実施形態におけるカルボン酸)の同位体標識は、それは半揮発性又は不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合に、これもまたEDIMとして役立つかもしれない。注記:(星印により示された)中央の炭素とカルボニル結合の間の炭素結合の数は、分子の分子特性を最適化するために変えることができる。
【0109】
CYP450酵素
多くの酵素系はヒトにおいて薬物を生体内変化させるが、最も重要で最も関与範囲が広いものはシトクロムP450混合機能酸化酵素(MFO:mixed function oxidase)系、特に脂肪親和性の薬物動態についてである。それは、その起源を35億年以上前に有する驚くべき系である。CYP系はヘムを含有し、分子状酸素を必要とし、160超のメンバーを有する膜結合系である。還元された共因子であるNADPH及び補酵素であるシトクロムP450 NADPHオキシドリダクターゼはP450活性にとって非常に重要である一方で、膜結合ヘム蛋白質であるシトクロムb5はP450触媒作用を、特に3Aファミリーについて非常に顕著に、さらに刺激することができる。NADPHオキシドリダクターゼは、NADPHからP450の様々なアイソフォームに電子を伝達する。これらの要因のレベルは、著しくCYP成分の活性に影響する場合がある。P450は主として肝臓において合成されそこに存在するが、他の生成・存在サイト(たとえば、小腸、腎臓)があることが知られている。肝臓のP450は小胞体とミトコンドリアに位置する。それは、プロスタグランジン、ステロイド、胆汁酸のような種々の生理的な基質の他、多くの臨床的に重要な薬物の代謝において主たる役割を演ずる。CYP系は、脂肪親和性の薬物の還元、酸化及び加水分解を行う。2つの主たるCYP酵素、CYP3A4及びCYP2D6は、脱アルキル化、ヒドロキシル化、脱ハロゲン化、脱水及び窒素還元化の各反応を触媒する。表2にリストされた様々な同位体標識(好適な実施形態は重水素である。)をCYP450基質の様々な原子サイトに組み込むことにより(たとえば、適切な場合には、通常の水素にとっての重水素、通常の酸素にとっての17O及び/又は18O、又は通常の炭素にとっての13Cを含むが、これらに限定されるものでない。)、効果的なMAMSの必要条件を満たす1又は2以上の同位体標識を含んでいる(CYP基質、アルデヒド、酸及びCOに由来する)様々なEDIMを生成しうる。下に示すのは、CYP450基質の10の実施例である(図38‐図47)。これらは、効果的なMAMSのために同位体標識可能な、FDA承認の又はGRASタイプの薬物である。場合によっては「スマート」な治療薬を生成するためのものである。
【0110】
CYP基質実施例1‐酵素:CYP‐3A4−基質:ベラパミル−図38。ベラパミル(2,8‐ビス‐(3,4‐ジメトキシフェニル)‐6‐メチル‐2‐イソプロピル‐6‐アザオクタニトリルは、CYP‐3A4により酸化的脱アルキル化(N‐脱メチル化)に基づいてホルムアルデヒドを遊離するL型カルシウムチャネル遮断薬である。経口で投与されたベラパミルは、肝臓における広汎な代謝を受ける。1つの主だった代謝経路は、CYP‐3A4による、ノルベラパミル(ベラパミルのN‐メチル化された代謝産物)及びホルムアルデヒドの形成である。他の代謝経路の数によるが、具体的な代謝産物の生成速度(つまり、CYP‐3A4による、ベラパミル→ノルベラパミルとホルムアルデヒド)は、一般にin vivoの機能的な酵素反応能を予測するものと思われる。実際、ベラパミルは、O‐脱メチル化(25%)及びN‐脱アルキル化(40%)により代謝される。CYP‐3A4は、薬を代謝するために、ヒトにおいて最も重要な酵素である。P450システムのCYP‐3A4アイソフォームは、すべての製薬エージェントの55‐60%を代謝すると推測されている。CYP3A4は、パクリタキセル、ドセタセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、イリノテカン、トポテカン、イホスファミド、シクロホスファミド及びタモキシフェンのようないくつかの細胞毒製剤を含む多くの薬物を代謝する際に重要な役割を果たす。このように、CYP‐3A4機能の変質は、しばしば病的状態と死の薬剤性の増加に結びつく。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、ベラパミルの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたホルムアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメント(たとえば、ノルベラパミルなど)の同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0111】
CYP基質実施例2‐酵素:CYP‐3A4−基質:エリスロマイシン−図39。エリスロマイシンはマクロライド系抗生物質であり、バクテリアにおけるタンパク質合成を防ぐので、様々な伝染病を治療するために、特にペニシリンに対してアレルギーの患者において使用される。エリスロマイシンはまた有力なモチリンのアゴニストであるので、それは著しく胃内容排出を増強する。この消化管運動促進作用は、タキフィラキシー/除感作の開発により短期間に減少すると知られている。エリスロマイシン呼気テスト(EBT:erythromycin breath test)はCYP‐3A4機能を評価するために使用される。エリスロマイシンはCYP‐3A4によりN‐脱メチル化され、また、開裂されたメチル基は、ホルムアルデヒドとして、そして最終的にはギ酸、その後CO2としてリリースされる。そのテストは、極微量の14C標識されたエリスロマイシンを静脈内に投与し、そして、呼出された14CO2の量を測定することにより行なわれる。呼出された呼気における14CO2のリリースのレートは、肝臓のCYP3A4活性を反映すると考えられる。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、エリスロマイシンの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたホルムアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0112】
CYP基質実施例3‐酵素:CYP‐3A4−基質:アミオダロン−図40。アミオダロンは、臨床医学で最も効果的な抗不整脈薬のうちの1つである。それは、心房細動を治療するのに、特にその再発を防ぐのにとても効果的である。この薬物の作用機序に係る特徴は複雑であるが(ナトリウムチャネル、ベータレセプタ、カルシウムチャネル及びカリウムチャネルを遮断する。)、その主たる電気生理学的作用はカリウムチャネルを顕著に妨げることによって心臓の組織における再分極を延長することである。したがって、それは、Vaughn‐William分類によってクラスIII抗不整脈薬薬物として分類される。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、アミオダロンの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたアセトアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0113】
CYP基質実施例4‐酵素:CYP‐3A4−基質:プロパフェノン−図41。プロパフェノンは、主としてナトリウムチャネルを遮断することにより作用する抗不整脈薬であり、Vaughn‐William分類によってクラスIC抗不整脈薬と分類される。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、プロパフェノンの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたプロピオンアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0114】
CYP基質実施例5‐酵素:CYP‐3A4+CYP‐2D6+エステラーゼ−基質:ジルチアゼム−図42。ジルチアゼムはL型カルシウムチャネル遮断薬であり、それは、脱アセチル化、N‐脱メチル化及びO‐脱メチル化を含む複雑な生体内変化を受ける。これらの経路のうち、ジルチアゼムの代謝においてCYP‐3A4はCYP2D6より恐らく顕著な役割を果たす。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、ジルチアゼムの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたホルムアルデヒド及び/又は酢酸を生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0115】
CYP基質実施例6‐酵素:CYP‐2D6−基質:フレカイニド−図43。フレカイニドは、主としてナトリウムチャネルを遮断することにより作用する抗不整脈薬であり、Vaughn‐William分類によってクラスIC抗不整脈薬と分類される。フレカイニドは、フッ素含有量が高いので、ユニークな薬物であるといわれている。CYP‐2D6は、トリフルオロアルデヒドと呼ばれる、非常に識別力があり、揮発性のフッ素添加されたアルデヒド代謝産物を遊離する。表2に示される同位体ラベル(好ましくは非通常の炭素)は、適当な場合には、フレカイニドの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたトリフルオロアルデヒドを生成するであろう。注記:フッ素添加されたアルデヒドのユニークな性質は、恐らく、フレカイニドの場合、同位体標識を必要とすることなくMAMSを構築することを可能にするだろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0116】
CYP基質実施例7‐酵素:CYP‐2Dd6−基質:コデイン−図44。示されているのは、CYP基質がP450系(CYP2D6)により活性薬(モルヒネ)に変換されるプロドラッグ(コデイン)である場合の実施例である。モルヒネは、コデインよりもμオピオイド受容体に対して著しく高い親和性を有しており、したがってコデインの鎮痛性の特性に影響を与えると考えられている。コデインのわずか約10%だけが、in vivoでモルヒネに変換される。この実施形態において、NICEシステムは、コデインが効果的であることを確実にするためだけでなく(つまり、モルヒネへの変換を十分なものとする。)、被験者がよく機能するCYP‐2D6を有する場合に過度の量のコデインがモルヒネに変換されないことを確実にするために使用しうる。後者のシナリオは、過度の量のモルヒネが身体内に存在することとなるであろうから、薬物有害反応(ADR:adverse drug reaction)をもたらすであろう。同様に、前者のシナリオにおいて、NICEシステムはこの薬物から十分な鎮痛を得ない被験者を識別するだろう。十分なモルヒネがコデインから生成されないからである。CYP2D6の機能は、遺伝学または薬物・薬物相互作用を含め(これらに限定されない。)、多くの要因によって変更される。たとえば、白人の6‐10%はあまり機能的でないCYP2D6を有するので、彼らはコデインから十分な鎮痛を得ない。更に、多くの薬剤は強力なCYP2D6抑制剤で、コデインの有効性を削減し又は完全に除去する。これらの中で最も悪名高いものは、フルオキセチン(プロザック)及びシタロプラム(セレキサ)を含むSSRIである。コデインのPOドースの最高は、典型的には24時間につき240mgである。小さな矢は、ホルムアルデヒドを遊離するCYP酵素による触媒作用のサイトを示す。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、コデインの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたホルムアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0117】
CYP基質実施例8−酵素:CYP‐1A2−基質:オランザピン−図45。オランザピンは世界で最も広く使用される抗精神病薬のうちの1つである。それは統合失調症を治療するために使用される。オランザピン用の主たる代謝経路はCYP‐1A2により媒介される。その代謝は、代謝オランザピンへのCYP450系の能力を検討するために、プローブとしてカフェイン呼気テストを使用することにより、首尾よく予測される。小さな矢は、ホルムアルデヒドを遊離するCYP酵素による触媒作用のサイトを示す。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、オランザピンの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたホルムアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0118】
CYP基質実施例9−酵素:CYP‐1A2−基質:カフェイン−図46。カフェインは、飲料を含む多くの食糧で広く見られる、キサンチン型の薬物である。カフェインは中枢神経興奮薬である。それは、CYP1A2活性のための特定のin vivoのプローブとして一般に認められている。ヒトに経口で与えられたカフェインのおよそ80%は、テオフィリンに変換される。カフェインはCYP1A2活性を測定するための、特にオランザピンがin vivoで代謝される能力を予測する場合のための、正確な表現型のプローブを提供することが示された。小さな矢は、ホルムアルデヒドを遊離するCYP酵素による触媒作用のサイトを示す。表2に示される同位体ラベル(好ましくは重水素)は、適当な場合には、カフェインの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたホルムアルデヒドを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0119】
CYP基質実施例10−酵素:CYP‐2C−基質:アンフェタミン−図47。アンフェタミン(アルファ‐メチル‐フェネチルアミン)は、主として注意欠陥多動性障害(ADHD:attention‐deficit hyperactivity disorder)及び睡眠発作を治療するために使用される中枢神経系(CNS:central nervous system)刺激薬である。不幸にも、この薬物は、クラブ薬物及びパフォーマンス向上薬物として広く気晴らし・快楽のために使用されており、また、人はこの薬物に高度に中毒となりうる。小さな矢は、脱アミノ反応によってアンモニアを遊離するCYP酵素(CYP‐2C)による触媒作用のサイトを示す。表2に示される同位体ラベル(好ましくは、弱い程度の重水素に対する非通常の窒素)は、適当な場合には、アンフェタミンの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたアンモニアを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメントの同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0120】
ADRを防いで酵素能力をモニタリングする観点から、活用することができるCYP酵素系について1つの側面がある。ほとんどの薬物は、酸化的N‐脱アルキル化により代謝される。N‐脱アルキル化中のアミンから(及びO‐脱アルキル化中のエーテルから)失われたアルキル基が、カルビノールアミン中間物の解離から発生するアルデヒド又はケトンとして現われることが一般に観察されている。アルデヒドとケトンは揮発性である。したがって、アルデヒドかケトンを形成する分子の部分での薬剤の重水素化(あるいは他の形式の同位体標識)は、揮発性で、呼気に現われる「リポーター」となるであろう。
【0121】
脱アミノ酵素−アデノシンデアミナーゼ
アデノシンデアミナーゼ(ADAとしても知られている。)は、プリン代謝に伴われる酵素(EC 3.5.4.4)である。それは、食物から摂取され及び/又は組織内の核酸の代謝回転から生産されたヌクレオシド・アデノシンを非常に素早く代謝する。アデノシンはAV結節を含む上室性の不整頻拍の治療(結節点の伝導を低下させるAレセプタの活性化を介して)における静脈内使用のための、そしてまた、心臓の血流スキャンのクオリティを改善する(冠血管のAのレセプタを媒介とした拡張を介して)ためのFDA承認薬物である。アミン基を取り除くことにより、アデノシンデアミナーゼは、不可逆的に関連するヌクレオシド、イノシンにアデノシンを脱アミノ化する。イノシンは、次に、プリン・ヌクレオシド・ホスホリラーゼ(PNP)と呼ばれ、それをヒポキサンチンに変換する別の酵素により脱リボース化することができる(リボースから取り除かれる)。
【0122】
図48は上記を説明するものである。アデノシンはヌクレオシドであり、それは身体内に生まれつき存在し、回帰性回路の一部としてAV結節を含む回帰性上室性不整頻拍の治療で静脈内に投与された場合にそれは高度に効果的である。Aレセプタを活性化しIKADOコンダクタンスを増加させることにより、アデノシンは、AV結節点の伝導を充分に低下させることでこれらのリズム障害を有効に終結させる。アデノシンデアミナーゼによる急速分解により、これは身体に遍在するものであるが、MAMSのために使用された経口投与されたアデノシンは、血液における血漿アデノシン・レベルの著しい増加を引き起こすことなく有効にアンモニアを遊離するに違いない。小さな矢は、アンモニアを遊離するCYP酵素による触媒作用のサイトを示す。表2に示される同位体ラベル(好ましくは、非通常の窒素あるいは重水素)は、適当な場合には、アデノシンの様々な原子(赤い円)をラベルするために使用することができ、今度はそれが、この実施例におけるEDIMの好適な実施形態として役立つ、同位体標識されたアンモニアを生成するであろう。また、親に由来するより大きな代謝性フラグメント(たとえば、イノシン)の同位体標識は、半揮発性あるいは不揮発性かもしれないが、特に呼気の液相が分析される場合にはこれまたEDIMとして役立ちうる。
【0123】
同位体標識された治療物質を使用する薬剤開発における含意:「NICE」(新規のインテリジェントな化学物質)のコンセプトの要約
この特許出願において、ドラッグデザイン研究開発において新規の領域を潜在的に創出する技術―「スマート」ないし「インテリジェント」な治療薬の到来―が記載される。「スマート」な薬物の定義は何か。ヒトが様々な医学の病気を治療するために治療薬を使用する場合、2つの主たる限界がこれらの物質に最適でない有効性及び安全性を持たせる:1)非服用(患者は服用量及び/又は回数の点で医療従事者により指示されたところに従って薬物を服用しない)、及び/又は2)薬物・薬物相互作用(DDI)あるいは遺伝的欠陥から(これらに制限されない。)生じる副作用(ADR)(たとえば、2D6、2C9、2C19を含む(これらに限定されない。)CYP酵素における遺伝的多形;ワーファリン療法に関係するビタミンKエポキシド還元酵素[VKORC1]の遺伝的多形)。本発明の「スマート」な治療薬は、薬剤システムに3つのタイプの機能を組み入れることにより、長期療法中にその安全性及び有効性に係る重要な要素を確実かつ正確に「自己報告」するように設計されている:
【0124】
1:特定の治療薬が正しい時間間隔(回数)で投与(好ましい実施形態は経口ルート経由によるピルの摂取である。)されたことの継続的記録、以下FFreqという
2:特定治療薬に係る具体的ドースが適当な量(ドース)だけ投与されたことの継続的記録、以下FDoseという
3:特定の治療薬が適切に代謝されていることの継続的記録、以下FMetabという
【0125】
これらの機能的属性を治療薬へ具体的に巧みに盛り込むことにより、それは薬学療法をより安全でより効果的にするだけでなく、新たな規制上の問題が全く無くあるいは最小限で既存薬物(ジェネリックのもの及び/又は特許されているもの)の何れかから新規の薬剤を生成し、又は分子の初めからこれらの有益な機能的属性を系に組み入れる新規化合物を設計し合成するために簡便な経路を生成する。これらのタイプの治療薬は、以下NICE(新規で「インテリジェント」な化学物質:New “Intelligent” Chemical Entity)型分子ということにするが、薬の発見と開発において新しいパラダイムを呈するであろう。不幸にも、現在市場で消費者に対して販売されている何千もの薬は、ジェネリックであれ特許品であれ、インテリジェントでなく、実のところ「閉口」している。すなわち、それらは有効性と安全性に関して患者及び/又は医療従事者に継続的なフィードバックをまったく提供しないが、これは様々な疾病を治療するために薬剤が一定の期間にわたって投与される場合に特に重要である。本発明により、既に市場に出ているジェネリックの又は特許された「閉口」の薬物は、新たな規制上の障害という負担を生じさせることなく教育されてインテリジェントになることができ、あるいはまた、別の疾病のために開発されている新規化合物は、スタート直後からインテリジェントとなるように設計することができる。理想的なNICEタイプ治療薬は本来3機能性となろう(FFreqDoseMetab)。実際、3つの属性をすべて有していることは、それらを「天才」な分子にするであろう。しかしながら、NICEシステムには、3つの個々の機能(FFreq、FDose、及び/又はFMetab)の多くの異なる組合せを組み入れることが可能である;したがって、NICEシステムの実施形態は、当然2機能性となりえて、あるいは単機能性という場合でさえありうる。図49〜図59は詳細を提供し、これらの異なるタイプの「スマート」な薬剤システムを構築する方法を教示する。これらは、最も単純なNICEタイプ薬剤(図49)から最も複雑なもの(図55)まで広がりがある。別の実施形態において、薬剤システムへ、治療薬物モニタリング(TDM:therapeutic drug monitoring)機能と呼ばれ、FTDMと表記される第4の要素を統合することができる。たとえば、一実施形態において、4機能性の「スマート」なピルシステム(FFreqDoseMetabTDM)を生成するために、FFreq、FDose及びFMetabへFTDMを統合することができる。FTDMは、血液における活性治療薬物(A)の濃度を測定するスマートなピル系の能力を示す。呼気におけるAのサロゲート濃度を使用することにより、好ましくは呼気の液相を使用して行われる。この実施形態において、Aは同位体で標識されてもよいし、標識されなくてもよい(好ましくは重水素で、追加オプションに関しては表2を参照)。
【0126】
図49Aにおいて、単一のタガント(Tcircles)が活性治療薬A(これは標識されていない)を含んでいるピル表面上に存する。EDIMはTcirclesである(つまり、Tの代謝産物T1circlesでない)。口に置かれると、ピル表面の誘導されたEDIM(Tcircles)は直ちに遊離され、呼出された呼気サンプルが提供されると(Tcirclesの検出を示す)センサーを起動する。このセンサーは、好適には、携帯可能で手に収まるものである。この実施形態により、ピル服用の即時報知及びシステムの単純性が提供される。
【0127】
図49Bにおいて、2つのタガント(TgrayとTblack)が活性治療薬Aを含んでいるピル表面上に存する。EDIMは、Tgray及びTblackである(つまり、Tgrayの代謝産物T1grayでない;Tblackの代謝産物T1blackでない)。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TgrayとTblack)は直ちに遊離され、呼出されたときに(Tgray及び/又はTblackの検出を示す)センサーを起動する。この実施形態により、ピル服用の即時報知及びシステムの単純性が提供される。さらに、TgrayとTblackが呼気に同時に検出される場合、様々な要因(たとえば、食事、代謝、疾病)によるEDIM検出の干渉の可能性は非常に低い。注記:この図において、所与の薬物か異なる薬物の異なるドースをラベルするために表面のタガントの異なる組合せ(たとえば、異なるペア、異なる三つ組)を使用することができる。
【0128】
図49Cにおいて、3つのタガント(Tdarkgray、Tlightgray、Tblack)が活性治療薬Aを含んでいるピル表面上に存する。EDIMは、Tdarkgray、Tlightgray、Tblackである(つまり、Tdarkgrayの代謝産物T1darkgrayでない;Tlightgrayの代謝産物T1lightgrayでない;Tblackの代謝産物T1blackでない)。口に置かれると、3つのピル表面の誘導されたEDIM(Tdarkgray、Tblack、Tlightgray)が直ちに遊離され、呼出されたときに(Tdarkgray、Tblack及び/又はTlightgrayの検出を示す)センサーを起動する。この実施形態により、ピル服用の即時報知及びシステムの単純性が提供される。さらに、Tdarkgray、Tlightgray及びTblackが呼気に同時に検出される場合、様々な要因(たとえば食事、代謝、疾病)による呼気におけるEDIM検出の干渉の可能性は事実上不可能である。
【0129】
図50Aにおいて、2つのタガント(TgrayとTblack)が活性治療薬Aを含んでいるピル表面上に存する。EDIMはTgray、Tblack及びTgrayの代謝産物T1grayである。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TgrayとTblack)が直ちに遊離され、ピルを摂取した直後に呼出されるとセンサー(TgrayとTblackの検出)を起動する;その後、Tgrayが胃腸管(GIT:gastrointestinal tract)に入って血液へ吸収されると、それはT1grayに代謝され、呼出されたときに呼気に現われてセンサーを起動(T1grayの検出)する。この実施形態において、口へのピルの投入の即時報知、及び血液へ流れたA(GITに入って吸収されたピル)の確認が提供される。1つのタガント(Tgray)が、この実施形態における2つの機能性を提供する:1)口にピルを投入したことの即時確認と2)実際に血液に入った治療薬物の確認。初期の呼気(TgrayとTblack)、後期の呼気(T1gray)、又は両方の何れかを使用することにより、服薬遵守を確認する柔軟性が付与される。Aの服用を文字通り保証する。様々な要因(たとえば、食事、代謝、疾病)によるEDIM検出の干渉の可能性が非常に低い。
【0130】
図50Bにおいて、3つのタガント(Tdarkgray、Tlightgray、Tblack)が活性治療薬Aを含んでいるピル表面上に存する。EDIMはTdarkgray、Tlightgray、Tblack及びTblackの代謝産物T1blackである。また、この実施形態において、TblackがEDIMであることは重要でない。TdarkgrayとTlightgrayの組合せがなおも呼気干渉からの良好な識別を提供するからである。口に置かれると、3つのピル表面の誘導されたEDIM(Tdarkgray、Tlightgray、Tblack)が直ちに遊離され、ピルを摂取した後に呼出されたときにセンサーを起動する(Tdarkgray、Tlightgray、Tblackの検出);その後、TblackがGITに入って血液へ吸収されると、それはT1blackに代謝され、呼出されたときに呼気に現われてセンサーを起動(T1blackの検出)する。この実施形態において、3番目のタガント(Tblack)の追加は、ピルが口に入れられたという更なるEDIM識別を提供する。Tdarkgray、Tlightgray及びTblackが呼気に同時に検出される場合、様々な要因(たとえば、食事、代謝、疾病)によるEDIM測定の干渉は事実上不可能である。注記:この図において、所与の薬物か異なる薬物の異なるドースをラベルするために表面のタガントの異なる組合せ(たとえば、異なるペア、異なる三つ組)を使用することができる。
【0131】
図51Aにおいて、2つのタガント(TdarkgrayとTblack)が表面に配置され、また、1つのタガント(Tlightgray)がピルの内部に活性治療薬Aとは物理的に区別されるような方法で配置される。EDIMはTdarkgray、Tblack及びTlightgrayの代謝産物T1lightgrayである。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TdarkgrayとTblack)が直ちに遊離され、ピルを摂取した後に呼出されたときにセンサーを起動する(TdarkgrayとTblackの検出);その後、TlightgrayがGITに入って血液へ吸収されると、それはT1lightgrayに代謝され、呼出されたときに呼気に現われてセンサーを起動(T1lightgrayの検出)する。この実施形態は図50Bのそれに似ており、そこではこの実施形態は、口にピルを投入したことの即時確認と血液に入ったA(GITに入って吸収されているピル)の確認を提供する。1つのタガント(Tlightgray)は、ピル内容物が血液に入ったことを単に示す役目をする。(図50Bで図示するように、表面に設けるのと異なり)ピル内部へのその配置は、TlightgrayをT1lightgrayのより効率的なソースにする(もっと確実なGITへの送達及び血液エントリー)。したがって、MAMSのクオリティが改善される。注記:この図において、所与の薬物か異なる薬物の異なるドースをラベルするために表面のタガントの異なる組合せ(たとえば、TdarkgrayとTblackと相似性の異なるペア異なるペア)を使用することができる。
【0132】
図51Bにおいて、2つのタガント(TdarkgrayとTblack)がピル表面上にあり、また、2つのタガント(Tlightgray1、Tlightgray2)が活性治療薬Aを含んでいるピルの内側にある。EDIMは、Tdarkgray、Tblack、Tlightgray1の代謝産物T1lightgray1及びTlightgray2の代謝産物T1lightgray2である。この実施形態は図51Aのそれとほとんど同一であり、相違するのは、ピル内容物がGITそして血液に入ったことを確認するT1lightgray1に加えて、第2の代謝産物に基づいたEDIM(T1lightgray2)を生成する1つの追加的タガント(Tlightgray2)が加えられたという点である。したがって、この実施形態において、MAMSシステムは、口の中へピルが投入されたことを確認する2つのタガントと、被験者が実際にピルを服用したことを確認する2つのタガントとを有する。各機能につき2つのタガントを加えることにより、各々につき1つを使用する場合よりもシステムの信頼度は遥かに大きくなるだろう。さらに、ピルの内部にTlightgray1とTlightgray2を配置することにより、それぞれの代謝産物の生成をより確実かつより効率的にする点で、システムの信頼度を増加させるだろう。
【0133】
図52において、2つのタガント(TgrayとTblack)の両方ともが同位体標識された治療薬*Aの表面に配置される。注記:先の実施形態(図49‐図51)において、Aは非通常の同位体で標識されていなかった。EDIMは、Tgray、Tblack及び*Aの代謝産物*A1である。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TgrayとTblack)が直ちに遊離され、まもなく呼出されてセンサーを起動する(TgrayとTblackの検出)だろう。その後、ピルを摂取した後、*AはGITに入り、血液に吸収され、そして*A1に代謝され、これが呼気に現われて呼気センサーを起動する(*A1の検出)。*Aの異なるドースをラベルするために、異なる表面タガントを使用することができる。この実施形態は、ピル服用の即時報知及びピル服用の確認を提供する。ピルが口に配置されたことを記録するためのEDIM検出の、様々な要因(たとえば、食事、代謝、疾病)による干渉の可能性は、TgrayとTblackが呼気に同時に検出される場合非常に低い。*Aはピルが実際に摂取されたという確証を提供する。さらに、ある薬剤が代謝の点から「自己報告」するものとなることができれば、それは著しく薬物安全性を改善するであろう。
【0134】
図53において、2つのタガント(TgrayとTblack)の両方とも、同位体標識された治療薬*Aの表面に配置される。注記;先の実施形態(図49−図51)において、Aは非通常の同位体で標識されていなかった。EDIMはTgray、Tblack及び*Aの代謝産物*A1である。この実施形態と図52のそれとの間のただ一つの相違点は、ピル内の同位体標識された活性治療薬物の質量である。示された実施例において、カプセル内にある活性治療薬物の質量の0.1%だけが、非通常同位体を含んでいる。(*Aに由来する)同位体標識されたEDIMが提供するSN比が与えられれば、Aの大部分の質量を標識する理由はない。ピルにおける*Aの好適な量は、十分な*AベースのEDIM信号、これによる効果的なMAMSをなおも提供する*Aの最小量である。
【0135】
図54において、2つのタガント(TdarkgrayとTblack)が表面に配置され、また、1つのタガント(Tlightgray)が同位体標識された活性治療薬*Aとは物理的に区別されるような方法でピル内部に配置されている。EDIMは、Tdarkgray、Tblack、並びにTlightgrayの代謝産物T1lightgray及び*Aの代謝産物*A1である。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TdarkgrayとTblack)が直ちに遊離され、ピルを摂取した直後に呼出されてセンサーを活性化(TdarkgrayとTblackの検出)する;その後、TlightgrayがGITに入って血液へ吸収されると、それはT1lightgrayに代謝され、呼出されたときに呼気に現われてセンサーを起動する(T1lightgrayの検出)。この実施形態と図52のそれとの間のただ1つの相違点は、ピル内部におけるタガント(Tlightgray)の追加である。同様に、Tlightgrayをピル表面に、好ましくはTdarkgrayとTblackよりもっと防御された方法で配置することができる。*A1だけの使用は薬物服用(図52を参照)の評価にとって問題であるので、Tlightgrayがこの問題に取り組むであろう。実際、この実施形態において、Tlightgrayはピル内容物が血液に入ったこと(明確な服用)を示す役目をするだけでなく、*Aの*A1への代謝を適切に評価するのに求められる重要なコンパレータをも提供する。後者は、胃内容排出及び/又は薬物吸収における変化のために修正することに関係がある。それを(表面でなく)ピル内部に配置することは、TlightgrayをT1lightgrayのより効率的なソースにし(GIT及び血液エントリーへのより確実な送達)、これによってMAMSのクオリティが改善される。活性治療薬物は*A1 EDIM呼気濃度を介してその代謝を「自己報告」し、調整はTlightgrayを使用して行われるだろう。
【0136】
図55において、2つのタガント(Tdarkgray、Tblack)が活性治療薬Aを含んでいるピル表面上にあり、また、2つのタガント(Tlightgray1、Tlightgray)がそのピル内にある。この実施形態において、Aは非通常の同位体を含んでいない。EDIMは、Tdarkgray、Tblack、Tlightgray1の代謝産物T1lightgray1及びTlightgray2の代謝産物T1lightgray2である。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TdarkgrayとTblack)が直ちに遊離され、ピルを摂取した直後に呼出されてセンサーを活性化(TdarkgrayとTblackの検出)する;その後、Tlightgray1とTlightgray2がGITに入って血液へ吸収されると、それはT1lightgray1及びT1lightgray2に代謝され、呼出されたときに呼気に現われてセンサーを起動する(T1lightgray1とT1lightgray2の検出)。この実施形態と図54のそれとの間のただ1つの相違点は、ピル内部に、Tlightgray1の側に、タガント(Tlightgray2)を追加したことである。この実施形態において、図54のそれのように、TlightgrayはAのための酵素とは異なる酵素により、好ましくは高容量で迅速に作動する血液ベースの酵素(たとえばブチリルコリンエステラーゼ)により代謝される。対照的に、Tlightgray2は、Aについてのものと同一のメジャーな酵素Eにより代謝される。言いかえれば、AのA1への代謝を継続的に評価するために、(EによるT1lightgray2への変換を介して)Tlightgray2がプローブとして使用される。いくつかの場合において、鍵となる治療薬の代謝を予測することができる良好なプローブが存在する。このアプローチは多くの長所を有する:1)Aを同位体でラベルする必要がない。2)Aの代謝を評価するために呼気A1を検出する点でAの質量あるいは半減期により制限されていなかった。3)重要な薬物の代謝を正確に予測するプローブが存在する。このコンセプトを図示すると、ホルムアルデヒドを遊離するCYP‐1A2による精神病治療用のオランザピン(図45)の脱メチル化は、酵素プローブとして使用された場合、カフェインによって上手い具合に予測される(図46)。オランザピンは強力である(通常用量=10mg PO QD)。長い半減期及び低ドースのため、オランザピンは高い呼気A1濃度を生成しないであろう。対照的に、GRAS食品添加物であるカフェインは、はるかに多い質量(通常用量は経口的に1日当たり数何mgである)を安全にヒトに与えることができる。そのため、著しくSN比(たとえば、重水素化された呼気ホルムアルデヒドのレベル)を増加させ、オランザピンの代謝を正確に予測するだろう。TGreenはTGrayとは別個に機能し、ピルが実際に摂取されたことを保証し(考察については図52を参照)、かつGIT要因に十分な補正を提供するためになおも必要とされる。図56は、このシステムが、どのように作動するか示す。
【0137】
図56A‐Cは、(MAMS‐11のアーキテクチャを有する)ピルを1日1回呑み込んだ後の被験者における、3週間にわたる毎週のEDIM濃度‐時間の関係を示す。パネルA、B及びCは、活性治療薬Aでの療法の、7日目、14日目及び21日目での、EDIMの濃度‐時間関係をそれぞれ図示する。EDIM濃度を測定するために、終末呼気(肺胞の値)は、特に揮発性の高いEDIMについては、好適な呼気相である。7日目、14日目及び21日目では、被験者は、規則的かつ確実に彼らの口にピルを投入した(すなわち、TdarkgrayのCMax及びTblackのCMaxは3週間不変であった)。同様に、T1lightgray1のCMaxが各週間で変化しなかったので、この被験者のピルの胃内容排出/吸収は最小変異であるように思われる。治療時の最初の2週間、Tlightgray2(AをA1へ代謝するのと同じ酵素により代謝されるタガント基質)の代謝は安定している。しかしながら、21日目では、T1lightgray2:T1lightgray1のCMax比は(0.96から0.19へ)5倍急降下し、Tlightgray2の代謝が激しく低減され易いであろうことを示した。この比はTlightgray1を考慮に入れるので、Tlightgray2におけるこの低減は、GIT機能(胃内容排出、吸収)の変化に帰することができない。DDIを生じさせた5つ目の薬剤投与に被験者が置かれたことがその後分かった(Tlightgray2とAの両方を代謝したCYP450酵素を阻害した)。注記:分析における使用することができる他のパラメーターには、濃度時間曲線下の領域(AUC:area under the concentration‐time curve)、EDIM濃度の上昇率及び/又は減少率、及び最大濃度到達時間(TMax)が含まれるが、これらに限定するものでない。FMetabが評価されるこの実施形態のような実施形態において、薬物代謝を評価するために用いられるEDIMの好適な測定法は定量的であるが;ピルを口に配置したことを示す表面のEDIMマーカーの評価は半定量的あるいは定性的であってもよい。
【0138】
図56Dにおいて、2つのタガント(Tdarkgray、Tblack)が活性治療薬Aを含んでいるピル表面上にあり、また、2つのタガント(Tlightgray1、Tlightgray2)がそのピル内にある。この実施形態において、Aは非通常の同位体を含んでいない。EDIMは、Tdarkgray、Tblack、Tlightgray1の代謝産物T1lightgray1及びTlightgray2の代謝産物T1lightgray2である。口に置かれると、2つのピル表面の誘導されたEDIM(TdarkgrayとTblack)が直ちに遊離され、ピルを摂取した直後に呼出されてセンサーを活性化(TdarkgrayとTblackの検出)する;その後、Tlightgray1とTlightgray2がGITに入って血液へ吸収されると、それは1lightgray1及びT1lightgray2に代謝され、呼出されたときに呼気に現われてセンサーを起動する(T1lightgray1とT1lightgray2の検出)。T1lightgray1とT1lightgray2の機能の説明については、図55を参照されたい。
【0139】
図57A‐Cにおいて、活性治療薬Aを含んでいるピル表面に配置された3セットの2重タガントが、Aの3つの異なるドースをラベルするために使用される。3セットの表面タガントには、a)Tdarkgray‐Tblack(低ドースA)、b)Tlightgray‐Tdarkgray2(中ドースA)、及びc)Tlightgray2‐Tdarkgray3(高ドースA)が含まれる。表面のタガントは固形物ベースのもの及び/又はAの表面に付着した生分解性のカプセル剤に含まれた液体物のものとすることができる。EDIMは、Tdarkgray−Tblack(低ドースA);Tlightgray‐Tdarkgray2(中ドースA);Tlightgray2‐Tdarkgray3(高ドースA)である。口に置かれると、各剤形についての2つのピル表面の誘導されたEDIMが直ちに遊離され、ピルを摂取した直後に呼出されてセンサーを活性化(各ドースについて2つのタガントの検出を示す)する。この実施形態において、ピル服用の即時報知及びシステムの単純性が提供される。さらに、2重システムの表面タガントの使用により、特にそれらが呼気に同時に検出される場合、様々な要因(たとえば、食事、代謝、疾病)によるEDIM検出の干渉の可能性は非常に低い。
【0140】
図58A‐Cにおいて、所与の活性治療薬Aの3つの異なる剤形が異なるマーカーの使用により表面標識されており、活性治療薬Aを含んでいるピル表面上の合計7つのタガント(Twhite、Tdarkgray、Tblack、Tlightgray、Tdarkgray2、Tlightgray2、Tdarkgray2)から成る(これらに限定されない。)。この実施形態において、1つのタガント(Twhite)は活性治療薬をラベルするために使用され、これは複数の剤形を有する。他の6つのタガントは、一服をラベルするために使用される;この実施形態において、2つのユニークな表面タガントが剤形をラベルするために使用される:1)低ドース:TdarkgrayとTblack;2)中ドース:TlightgrayとTdarkgray2;及び3)高ドース:Tlightgray2とTdarkgray3。表面のタガントは固形物ベースのもの及び/又はAの表面に付着した生分解性のカプセル剤に含まれた液体物のものとすることができる。EDIMは、1)低ドース:Twhite、Tdarkgray及びTblack;2)中ドース:Twhite、Tlightgray及びTdarkgray2;並びに3)高ドース:Twhite、Tlightgray2及びTdarkgray3である。所与のドースの活性治療薬Aが口に投入されると、3つのピル表面の誘導されたEDIMが直ちに遊離され、呼出されてセンサーを活性化し、口の中への薬物Aの投入及び薬物Aの具体的なドースを示す。この実施形態において、ピル服用の即時報知及びシステムの単純性が提供される。さらに、複式の表面タガントシステムにより、特にそれらが呼気に同時に検出される場合、様々な要因(たとえば、食事、代謝、疾病)による呼気におけるEDIM検出の干渉の可能性は非常に低い。
【0141】
図59A‐Cにおいて、所与の活性治療薬Aの3つの異なる剤形が異なるマーカーの使用により表面標識されており、活性治療薬Aを含んでいるピル表面に「緩く」取り付けられた7つのタガント(Twhite、Tdarkgray、Tblack、Tlightgray、Tdarkgray2、Tlightgray2、Tdarkgray2)と、固く貼り付けられた1つのタガント(Tdarkoutline)とから成る。1つのタガント(Twhite)はその活性治療薬をラベルするために使用され、これは複数の剤形を有する。酵素(好ましくは血液ベースの酵素)を介し代謝産物T1darkoutlineを生成する別のタガント(Tdarkoutline)が、ピル内容物がGIT吸収に続いて被験者の血液に入ったことを保証するために使用される。6つの残りのタガントは、該ドースをラベルするために使用される。この実施形態において、2つのユニークな表面タガントが剤形をラベルするために使用される:1)低ドース:TdarkgrayとTblack;2)中ドース:TlightgrayとTdarkgray2;及びまた3)高ドース:Tlightgray2とTdarkgray3。この実施形態において、7つの表面タガント(Twhite、Tdarkgray、Tblack、Tlightgray、Tdarkgray2、Tlightgray2、Tdarkgray3)は口で容易にリリースされるように設計されているが、1つの表面に強固に付着しているタガント(Tdarkoutline)は胃あるいはより遠位のGIT部位(たとえば、十二指腸)において優先的にリリースされるように設計されている。これらのタガントは固形物ベースのもの及び/又はAの表面に、緩く及び/又は強固に、付着した生分解性のカプセル剤に含まれた液体物のものとすることができる。EDIMは、T1darkoutlineに加えて、1)低ドース:Twhite、Tdarkgray及びTblack;2)中ドース:Twhite、Tlightgray及びTdarkgray2;並びに3)高ドース:Twhite、Tlightgray2及びTdarkgray3である。所与のドースの活性治療薬Aが口に投入されると、3つのピル表面の誘導されたEDIMが直ちに遊離され、呼出されてセンサーを活性化し、口の中への薬物Aの投入及び薬物Aの具体的なドースを示す。この実施形態は、ピル内容物が血液に入り、ピルが実際に摂取されたことを確認する、T1darkoutlineを生成するタガントTdarkoutlineが加えられたことを除き、図58のものと同じである。好適な実施形態において、Tdarkoutlineは、活性治療薬の表面へ固く付けられているか(すなわち、移動しないか口でリリースされない)、あるいはハード・ゲル・カプセルのゲルマトリックスへ統合されており、したがって、Aのマトリックスを変更することがなく、また、ピル内に(Aのマトリックスとは別にTdarkoutlineを静止させる)別個のコンパートメントを必要とすることもない。
【0142】
下記は、様々なNICEシステムの構成要素及び特徴、並びにそれらの背景にある原理の簡潔な説明である。
【0143】
センサー:NICEタイプ治療薬を生成するために、活性薬及び/又は関連するタガント自身から、あるいはそれらの代謝産物からの様々な物質の測定は、センサー技術を、好適には携帯型の現場で使える装置(これに限るものでない。)を使用して測定される。センサーのタイプは以前に上記特許において開示されているが(セクションA)、様々なタイプの、GC又はmGCを備え又は備えない(ガスまたは液体ベースの)赤外分光センサー、質量分光センサー(SIFT、GC、液体)、赤外線センサー、ラマンセンサー、GC‐MSセンサー、及び中性子回折センサーが含まれる(これらに限られない。)。これらのセンサーは、呼気、血液、尿などを含む様々な生体媒質を使用するであろう。好適な実施形態において、センサーは2つのタイプのセンサー技術(たとえば、IRとmGC‐CMOS)を使用することができ、これは、安定同位体ラベリングがたとえばアルコールの識別と一体化された場合には、分子物質間(薬物とタガント)で遥かに高いレベルの識別を提供するであろう。
【0144】
NICEの鍵となる特性:異なるタイプの設計要素からなる異なる組合せをシステム(図49‐図59)の中で組み立てることにより、多数のタイプのNICEタイプ治療薬が作成される。これらの要素は化学的なフレームワークを提供し、これによってシステムは、FFreq、FDose及び/又はFMetabを最適に(確実に、反復可能に、かつ正確に)評価することができ、NICEシステムの解釈及び機能を混乱させる要因について補正するすことができる。これらの要因は、次のものを含む:1)濃度時間曲線下領域(AUC)、最高濃度到達時間(Tmax)及び最高濃度(Cmax)のような、可変胃内容排出(たとえば、トレス、脂肪質の食事の消費、あるいは薬物による胃の動性の後退)及び/又は経口薬物の薬物動態学を変更可能な吸収についての補正、2)薬物服用の統制(偽陰性)をそれが実際に吸収された場合に覆い隠すことがある害された酵素機能(たとえば、遺伝的多形、薬物・薬物相互作用(DDI)、病態生理学的障害に併発的)についての、呼出された薬物服用マーカー(EDIM)が特にその酵素によって生成される場合における、検出及び補正、3)呼気における揮発性の(あるいは半揮発性、さらには不揮発性)マーカーの、類似又は同一の物質の内因性の生産又は食糧/飲料内の物質の摂取に係るバックグラウンドに対する検出に係る高度の識別力の提供、及び4)NICEシステムに適している(たとえば、持続時間が短すぎず長すぎず;確実に呼気に現われる)、呼気における呼出薬物服用マーカー(EDIM)と名付けられたマーカーの生成。確かに、セクションB3のオプション2に記載されているコンパレータは、活性治療薬物Aの代謝が通常どおり代謝されていることを保証するだけでなく、様々な臨床設定における胃内容排出のインデックスとして使用することもできる。
【0145】
これらのNICE要素の特徴には、下記のものが含まれる(これらに限定されない):
・ 当該活性治療薬物は、ジェネリック医薬品、特許薬物、あるいはその他のタイプの調合薬であってよい。
・ ・タガントは表面被覆によりAに関連させても、カプセル/ピルの異なるコンパートメントに物理的に配置しても、あるいはピルやカプセルの不活性マトリックスにタガントを統合させてもよい。好適な実施形態は、FDAが承認したピル・マトリックスを変更しない方法によってタガントを配置することである。(たとえば、内部にAPIを含んでいるハード・ゲル・カプセルのマトリックスへのタガントの統合)。
・ タガントは、胃食道の排出、吸収、特定の酵素の代謝性機能不全における変化について修正するために添加されるべきである。
・ ある活性薬物のドースは、以下の方法で、NICEシステムを使用して、異なるドースの活性治療薬を関連させることにより、測定することができる:a)NICEシステムにおいて、該活性治療薬の及び/又はタガントの分子構造の様々な部分上に、好ましくは酵素分解に基づいて揮発性(あるいは半揮発性)の代謝性フラグメントを遊離するものの上に、異なる同位体を組み入れる;これは、親化合物のより大きく不揮発性のフラグメントの非通常同位体標識を除外するものでない;b)NICEシステムにおいて、該活性治療薬及び/又はタガント上に、ある所与の同位体ラベル(たとえば重水素)の様々な量を組み入れる、c)NICEシステムに、aとbの組合せを組み入れる、及び/又はd)同位体標識場所とともに、あるいは当該場所とともにでなく、ある所与のタガントの異なるドースを組み入れる。
・ タガントは、新規化学物質又はGRAS型化合物を含め(これらに限られない。)、任意のクラス1、2及び/又は3の薬物とすることができる(セクションAを参照)。これは、非通常同位体で標識されてもよいし、されなくてもよい(表2を参照)。
・ 同位体標識は、活性薬又はタガントの1又は2以上の部位に配置可能である。該活性治療薬及び関連するタガント、また、それらの代謝産物は、NICEシステムでの同位体ラベルを利用してもよいし、利用しなくてもよい。
・ ある分子は、すなわち活性治療薬(A)及び/又はタガント(T)の何れかは、単一の又は異なるタイプの安定した同位体ラベルを含むことができる(表2を参照)。
・ 様々なEDIMを生成する化合物を分解するために使用される酵素は、該活性治療薬Aを分解するために使用されたプライマリ酵素と同じかもしれないし、同じでないかもしれない。NICEシステムに含まれる酵素は、以下のものを含むことができるが、これらに限定するものでない:a)CYP450を伴う酸化的代謝。CYP‐3A4、CYP‐2D6、あるいは遺伝的多形(CYP‐2D6、2C19、2C9)により影響を与えられたアイソフォームのような薬物代謝用の重要なアイソフォームを含むが、これらに限定されない。b)ワーファリン療法のセッティングにおけるVKORC1、c)偽コリンエステラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、PON1及びアセチルコリンエステラーゼを含む(これらに限定されない。)エステラーゼ、d)脱水素酵素(アルコールとアルデヒド)、及びe)上にリストされないが、特許(表1)にリストされた酵素。
・ NICEシステムにおいて使用される酵素基質は、これは活性治療薬、薬物塩(S)、添加剤(E)及び/又はタガント(存在すれば)を伴うものであるが、CYP450、エステラーゼ及び/又は他の酵素により作用された場合、EDIMと呼ばれる、呼気に現われる揮発性(あるいは不揮発性又は半揮発性)のマーカーを生成するであろう。これらの呼気マーカーは、それら自身はクラス1、2及び/又は3の薬物、あるいはクラス1、2及び/又は3の薬物の代謝により得られるものであるが、アルコール、アルデヒド、ケトン及び酸を含む(これらに限定されない。)。セクションB.2は、関連する化学物質をすべてリストする。また、本発明のいくつかの実施形態において、該活性治療薬及び/又は該タガントは、それ自体が呼気において検出されてもよい。
・ NICEシステムの酵素基質(活性治療薬及び/又はタガント)は、固形、液体あるいはガスの物理状態を採りうる。より低揮発性の固形物または液体は、活性治療薬物及びタガントにとってのNICEシステムにおいて好適な実施形態である。
・ 被験者は、直ちにFFreqDoseMetabをチェックするために、装置へ息を吹き入れてもよいし(所定のセッションにおいて優先的には1度、しかし2度以上でもよい)、あるいは、完全な呼気濃度時間関係を得て完全に代謝能力を評価するために、それほど頻繁でない方法(たとえば、週または月に一度)で、より長い時間(たとえば、1‐3時間)に亘って所定のインターバルで装置に息を繰り返し吹き込んでもよい。
・ NICEシステムのセンサーは、何らかの生体認証(たとえば、指紋、網膜のスキャン)にリンクされてもよいし、リンクされなくてもよい。
【0146】
上記の適用のための薬物を生成する別の手段は、これは経済的に実現可能でかつ検出の点で簡単なものとなるであろうが、重水素(重水、または重水素)を含む(これらに限定されない。)安定同位体(生物学における使用例につき表1を参照)で既知の化合物(クラスIないしIIIタイプの作用薬、上記参照)を修飾すること(ラベル化)を含む。好適な実施形態において、同位体ラベルは安定し(非放射性)、重水素であろう。重水素は、天然に見つかる、水素の安定非放射性同位体であり、1つの陽子と1つの中性子電子を含んでいる。中性子と陽子の数の合計は、質量数と呼ばれる。同位体とは、同数の電子と陽子を備えるが、異なる数の中性子を備えた原子である。言いかえれば、同じ原子番号であるが異なる原子量の原子が、同位体と呼ばれる。特定のタイプの同位体は同一数の電子があるので、それらは同一の要素に属し、化学反応においてほとんど同じように振る舞う。したがって、薬品において重水素のような同位体は、それが化学的に水素に非常に類似して振る舞い、本質的に無毒で、赤外線(IR)あるいは質量分析を使用して水素から容易に識別することができるので、非放射性の同位体トレーサとして代謝性研究における生物学上重要な分子をラベルするために使用されてきた。これらの技術において、炭素(たとえば、13C)のような他の非放射性の安定同位体(表1を参照)を使用することもできるが、重水素の方が強く好まれる。なぜなら、それは、IRのような安価で、携帯用で、現場治療かつ現場使用型のセンサー技術を使用して、より簡単に検出可能で、通常の水素を含んでいる内因性分子からより簡単に識別することができるからである。重水素ラベルを含んでいる重水素化された親分子及び/又は重水素を含んでいる親分子(酵素代謝によって生成された)の主要な揮発性(あるいは半揮発性)の代謝産物のいずれかは、呼気に検出されるであろう。
【0147】
重水素は、それらが配置される分子のクラス、分子上の重水素化の数、及び分子上の様々な結合タイプ(たとえば、アミン、メルカプト基、芳香薬など)へのそれらの近接性次第で、呼気、血液、尿、汗又は唾液を含む(これらに限定されない。)様々な生体媒質における独特な分析に資する「シグネチャ」を備えた様々なタイプの分子の物質を提供することができる。IRまたは質量分光法のような様々な分析技術は、重水素化された親化合物とそれらの重水素化された代謝産物とを(ガス状及び/又は液状の両方において)区別するために使用することができるだけでなく、重水素化された分子と通常の水素を含んでいる同一の天然化合物とを容易に識別することができる(たとえば、エタノール対重水素化されたアルコール;アルデヒド対重水素化されたアルデヒド;メタノール対重水素化されたメタノール)。重水素の使用は、上にリストされた発明のすべてに適用することができる。その使用は、ベースライン呼気サンプルを得る必要を低減し、あるいはそのステップの除去さえするであろう。また、新医薬品にとってのFDAの規制プロセスを著しく簡潔化し(あるいは除去さえもし)、低コストで確実な技術により、市場取引に至るまでの時間の削減を可能にする。
【0148】
重水素化された化合物は、無毒であり、それらの親化合物と同一の(あるいは非常に類似した)薬力学的特性(PD)及び薬物動態学的特性(PK;ADME)を有していると一般に考えられている。さらに、重水素化は、いくつかの新規の関連発明に適用することができる(また、それらは、医学診断用のために開示されたより従来のクラス1ないし3の作用薬とともに実施することができる)。それらは次のとおりである:
【0149】
・ 服薬遵守モニタリングのための「新規のインテリジェントな化学物質」(NICE)型の治療薬。本願の服薬遵守のために、3つの異なるタイプのNICE型作用薬が存在する:)医学的疾患を治療するために使用されている親治療薬が、重水素でラベルされており、(たとえば、酵素の作用を介して)代謝により、重水素ラベルを含んでいる揮発性(あるいは半揮発性)のマーカーを呼気中に生成する、)治療薬それ自身は重水素でラベルされていないが、(たとえば酵素の作用を介して)代謝により、呼気中で検出可能な揮発性又は半揮発性の(重水素化されていない)マーカーを生成する、及び)治療薬は重水素でラベルされてもおらず、呼気中に測定可能な揮発性(あるいは半揮発性)のマーカーを生成することもないが、タガント(重水素でラベルされていても、されていなくてもよい)にむしろ関係しており、これが容易に測定可能なマーカーを呼気中に生成する。タガントは、治療薬物の不活性なマトリックス/塩の一部とすることができ、治療薬物の表面上にコートすることができ、また、治療薬物と物理的に分離されていてもよい。好適なタガントの実施形態は、活性治療薬物の不活性なマトリックスがタガントの存在により変更されない後者の場合である。
・ 酵素能力を評価するNICEタイプ薬物。3つの異なるタイプのNICE化合物が、本願における酵素能力の評価のために存在する:)親治療薬は重水素化されたラベルを含み、薬剤を服用する個人がそれ自身を代謝するのに必要な酵素に対する能力があるかを、呼気中における親薬物の重水素化された代謝産物を測定することによりそれ自体が「報告」する、)親治療薬は重水素化されたラベルを含まないが、薬剤を服用する個人がそれ自身を代謝するのに必要な酵素に対する能力があるかを、呼気中における親薬物の代謝産物(重水素化されていない)を測定することによりそれ自体が「報告」する、そして)非通常の同位体でラベルされ又はラベルされておらず、活性治療薬Aに関連したタガントが、薬物を服用する個人がAを代謝するのに必要な酵素に対する能力があるかを「報告」する。酵素能力に使用されたNICE型作用薬は、上で言及されたものの他に、追加された別のタガントを有することができ、それは多くの重要な役割に役立つだろう:a)治療薬を分解するものと同一又は異なる酵素にとっての基質であることによる酵素キャリブレータ、b)酵素能力結果に対する変化した胃のクリアランスの効果のために修正するべき胃内容排出のインデックス。
・ タガントあるいは修飾された薬剤を合成する手段は、従来の特許出願に詳細に開示されており、これは、服用、酵素能力及び薬物転換をモニターするために使用することができるGRAS及び他の化合物のリストである。以前に開示されたように、ほとんどの薬剤は、P450酵素系により、薬物代謝の約83%を占めるCYP2D6とCYP3A4のアイソフォームと共に(3A4‐50%、2D6‐33%)、代謝される。限られた数の酵素により非常に多くの薬物が代謝されるので、代謝についての競合が多く生じる。また、遺伝学は、多くのこれらのCYP酵素(たとえば、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19)の機能を変更することができる。また、ある薬物は、P450酵素を誘導し、他の薬物の血中濃度を実際に低減することができる。4つ以上の薬剤を服用する65歳超の平均的人物について、頻繁な副作用(ADR)があるのは驚くべきことではない。700,000超の重大な反応及び死が、DDIに起因すると推測される。
・ これらの薬物は、潜在的には様々なルート(経口、静脈内、舌下、直腸、筋肉内、吸入、皮下、滑液内、心臓内、鞘内、気管内、バッカル、目、鼻、耳、直腸、膣、尿道、経皮/局所)経由で投与することができるが、好適な投与経路は経口及び舌下である。
・ 服用モニタリングと酵素能力報告をNICEタイプ治療薬に組み合わせることは目新しい。特に、それが、継続的な方法で行われ、治療薬の組込み部分である場合にそうである(EDIMは、治療薬あるいは治療薬に物理的に関連したタガントから生成される)。
・ NICE型治療薬の二元機能は、親分子の1つの特定の領域から、あるいは当該分子の2以上の領域から招来される。たとえば、NICEの1つの特定の代謝性フラグメントが服用を示し、そしてNICEの別のフラグメントはそれが適切に又は不適切に代謝されていることを示す。別の実施形態において、NICEの特定のフラグメントは服用と代謝機能の両方を示すであろう。
・ 治療薬が多数の酵素による代謝を経る場合、その代謝をモニターするために多数のタガントを添加することが可能である(安定同位体を用いてラベルするか又は用いないでラベルするかの何れか)。たとえば、Xと名付けられた化学物質がCYP‐3A4とCYP‐2D6を介してP450酸化代謝を経るとしよう。CYP‐3A4及びCYP‐2D6の既知の基質であるT3A4及びT2D6と名付けられた2つのタガントが、同位体(たとえば重水素)でラベルされあるいはラベルされておらず、Xに物理的にそれぞれ関連付けられているとする。Xの異なる経路を介した代謝を定量するために、呼気のような体液に現われる、T3A4とT2D6からの揮発性(又は半揮発性)のフラグメントを使用することが可能である。
・ MAMを記録するために、タガント・アプローチが使用される場合、タガントは治療薬とは異なる酵素系により代謝されてもよい。これは有利かもしれない。なぜなら、活性治療薬Aを分解する酵素の変化は、それが適切に代謝されていない場合、MAMsマーカーとしてそれを使用する能力を低減するかもしれないからである。この限界を回避し、経口ピルの服用による食道/胃運動性における変更を除去するために、対比タガントを添加することができる。これはピルの構成分子が血液と肝臓に送達されていることを記録し、我々は、事態を記録するためにAUC及び/又はCMaxを標準化することができる(図54‐図56)。
・ 2つの方法で活性治療薬に同位体ラベルを組み入れることができる:1)活性治療薬の100%が同位体ラベル含み(図52)、あるいは2)活性治療薬の一部だけが含む(図53)。
【0150】
この特許出願において、ドラッグデザイン及び薬物の研究開発において新規の方途を触媒する技術―「スマート」な(自己モニタリング及び自己報告する治療上の)薬物―が記載されている。ADRの発生率を著しく低減し服薬遵守の保証により、NICE型作用薬は、医療費を削減しつつ、薬物安全性と有効性の両方を著しく改善するであろう。NICE型薬物に関するユニークな特徴は、「リポーター」(EDIM)が安定同位体ラベル物質(たとえば、重水素)であるということであるということと、呼出呼気のための新規な医学的利用の開示である。安定同位体は、以前に開示されたタガント及び検出装置の上に、いくつかの利点を提示する。第1に、重水素のような安定同位体は安全であるとFDAによりみなされるに相違なく、また、PK/PDに殆どあるいは全く影響を与えない。同位体(たとえば、重水素化された)で標識された化学物質は、多くは治療薬物モニタリングに使用される解析機器のキャリブレーション用として容易に利用可能であり、また、重水素化された類似化合物の合成は簡単で低コストである。さらに、親化合物と重水素化された類似体を容易に識別することができるように、化合物の重水素化はIRスペクトル(液体相と気相)を変化させる。
【0151】
本発明で概説された技術は、療法(急性・慢性の)薬物をより安全でより効果的にするために、継続的な進行中の方法上で服薬遵守及び酵素の(代謝の)能力のモニタリングを可能にするだけでなく、薬物偽造、薬物改変、及び治療薬物モニタリング(TDM)を含む全国的及び国際的に重要な他の領域に取り組むために、コスト効率の良い技術を使用して容易に適用することもできる。
【0152】
ここで言及し又は引用したすべての特許、特許出願、及び刊行物は、参照により、この明細書の明示的な教示に反しない限度において、図及び表を含め全体として組み入れられる。
【0153】
ここに記載された実施例及び実施形態は説明の目的だけのためにあり、また、それらに照らして様々な変形ないし変更が当業者に示唆されるところであるが、これらは本願の精神及び範囲内に含まれるべきであると解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、治療薬の分子構造の一部が、該患者による該治療薬の代謝に基づき該治療薬から放出されて呼出された呼気中で検出可能である呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識された治療薬を提供するステップと、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
該治療薬の代謝の際、放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者による該治療薬の代謝に基づき、放出されて呼出呼気中に検出可能である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項1に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項7】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、治療薬の分子構造の一部が呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識された治療薬を提供するステップと、ここで、該治療薬及び該EDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該治療薬の代謝を必要とすることなく、該患者の呼出呼気において検出可能であり、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項8】
放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該治療薬の代謝を必要とすることなく、放出されて該患者の呼出呼気中に検出可能である請求項7に記載の方法。
【請求項11】
該センサーは該呼出呼気サンプル中の該同位体標識されたEDIMの濃度も検出可能であり、呼気中で測定された該同位体標識されたEDIMの濃度は血液における該治療薬の濃度に比例するものであって、
呼気において該同位体標識されたEDIMの濃度に基づいて血液における治療薬の該対応濃度を計算するステップをさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該EDIMの画分は同位体化合物を備え、該センサーは該呼出呼気サンプルにおける同位体標識されたEDIMの該画分の濃度を検出することも可能であり、呼気中で測定された同位体標識されたEDIMの該画分の濃度は血液における該治療薬の濃度に比例するものであって、
呼気において同位体標識されたEDIMの該濃度に基づいて血液における治療薬の該対応濃度を計算するステップをさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項13】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項7に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項15】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、塩の分子構造の一部が呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識された塩を含む治療薬を提供するステップと、ここで、該EDIMは、該患者による該塩の代謝に基づき該塩から放出されて呼出された呼気中で検出可能であり、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項16】
該塩の代謝の際、放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者による該塩の代謝に基づき、放出されて呼出呼気中に検出可能である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項15に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項21】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、塩の分子構造の一部が呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識された塩を含む治療薬を提供するステップと、ここで、該EDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該塩の代謝を必要とすることなく、該患者の呼出呼気において検出可能であり、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項22】
放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該塩の代謝を必要とすることなく、放出されて該患者の呼出呼気中に検出可能である請求項21に記載の方法。
【請求項25】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項21に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項27】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、添加物の分子構造の一部が、該患者による該添加物の代謝に基づき該添加物から放出されて呼出された呼気中で検出可能である呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識された添加物塩を含む治療薬を提供するステップと、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項28】
該治療薬の代謝の際、放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者が該治療薬を服用した後に該患者による該添加物の代謝に基づき、放出されて呼出呼気中に検出可能である請求項27に記載の方法。
【請求項31】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項32に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項33】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、添加物の分子構造の一部が呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識された添加物を含む治療薬を提供するステップと、ここで、該EDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該添加物の代謝を必要とすることなく、該患者の呼出呼気において検出可能であり、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項34】
放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該治療薬の代謝を必要とすることなく、放出されて該患者の呼出呼気中に検出可能である請求項33に記載の方法。
【請求項37】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項33に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項39】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、治療薬とタガントを備える薬剤を提供するステップと、ここで、該タガントは該患者による該タガントの代謝に基づいて呼出呼気中に検出可能な呼出薬物摂取マーカー(EDIM)を生成するものであり、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項40】
該治療薬の代謝の際、放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者による該タガントの代謝に基づき、放出されて呼出呼気中に検出可能である請求項39に記載の方法。
【請求項43】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項39に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。
【請求項45】
服薬遵守をモニタリングする方法であって、
(a)患者に対して、タガントの分子構造の一部が呼出薬物摂取マーカー(EDIM)で標識されたタガントを含む治療薬を提供するステップと、ここで、該EDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該タガントの代謝を必要とすることなく、該患者の呼出呼気において検出可能であり、
(b)該患者の呼出呼気サンプルをステップ(a)に続いて取得するステップと、
(c)該呼出呼気サンプルに対して、該サンプル内の該EDIMの存在を検出可能なセンサーを適用するステップと、
(d)該センサーが該サンプル内に該EDIMの存在を検出することができたか否かに基づいて、該治療薬の服用に関する該患者の遵守を判定するステップと、
を備える方法。
【請求項46】
放出されて呼出呼気において検出可能な該EDIMは、揮発性、半揮発性、又は不揮発性の化合物である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
該EDIMは一般に安全とされている(GRAS)化合物である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
該EDIMは同位体化合物を備え、該同位体標識されたEDIMは、該患者が該治療薬を服用した後、該タガントの代謝を必要とすることなく、放出されて該患者の呼出呼気中に検出可能である請求項45に記載の方法。
【請求項49】
該同位体化合物は重水素化合物である請求項48に記載の方法。
【請求項50】
該センサーは次のものから成る群から選択される請求項45に記載の方法:赤外線検出のみ、赤外線検出能に結合されたミニチュア・ガスクロマトグラフィー(mGC)検出器、又はGC‐MS。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49A】
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【図49B】
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【図49C】
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【図50A】
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【図50B】
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【図51A】
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【図51B】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56A】
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【図56B】
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【図56C】
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【図56D】
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【図57A】
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【図57B】
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【図57C】
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【図58A】
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【図58B】
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【図58C】
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【図59A】
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【図59B】
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【図59C】
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【公表番号】特表2010−519553(P2010−519553A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551035(P2009−551035)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054755
【国際公開番号】WO2008/103924
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506224470)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチファウンデーション インコーポレイティッド (11)
【Fターム(参考)】