説明

木屑成形品及びその製造方法

【課題】 木屑成形品において、加熱加圧して木屑自身の成分で木屑同士を強固に接着させて比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にでき、種々の用途に応用が可能で廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えないこと。
【解決手段】 木屑成形品1は、表面に鯛の形状を表したものであり、本物の鯛と同じように目玉2は飛び出し、背びれ3は細かく筋が入っており、鱗4の形状も細かく再現され、尾びれ5も太い筋から細い筋に至るまで金型の形状が忠実に転写され、比重は約1.27と大きく、三点曲げ強度も14.8MPaと高強度であり、各断面はほぼ同じ厚さ(約10mm)に成形されており、これによって木屑成形品1の全体に均等に圧力が掛かり、表面の各部が表面側の金型に密着して細かい模様まで忠実に転写されるとともに、内部が均等に圧縮されて緻密な組織となり、上述したような大きい比重と高い曲げ強度が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂等のバインダーを極めて少量混合するだけで、流動性に乏しい材料である木粉(もくふん)・大鋸屑(おがくず)・鉋屑(かんなくず)・木片チョップ等の木屑を成形材料として用いて、高強度で、表面の細かい凹凸まで転写することができ、しかも環境に優しい木屑成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の大鋸屑・鉋屑等の木屑を原料として成形されたボードは、バインダーとして石油化学製品を使用しているため、発がん性があるとされるホルムアルデヒド臭を発生したり、アトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性が高く、また生分解性を失っているために廃棄処分する際には焼却処理をする必要があるが、バインダーとして混在している石油化学製品がダイオキシン類を始めとする有害ガスを発生するという問題がある。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、バインダーに天然物を用いた木屑成形品及びその製造方法が開発されている。かかる木屑成形品及びその製造方法の例としては、特許文献1に記載の「木くず成形品及びその製造方法」の発明等がある。この特許文献1に記載の発明においては、木くず(カンナくず)100重量部に対して、バインダーとして天然物であるコンニャク芋を原材料とするグルコマンナン粉6.0重量部と、水40重量部を加えて十分に練り合わせ、蒸気抜き孔付の鉄板の蓋を有する金型に流し込んで、ホットプレス機を用いて100℃で1時間かけて加圧成形し、取出された木くず半加工品を室内で乾燥・固化して木くずボードを完成させており、これによって製造・使用・廃棄の各過程において、環境汚染することが殆どないとしている。
【特許文献1】特開2002−154105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術においては、木くず(カンナくず)100重量部に対してバインダーとしてグルコマンナン粉を6.0重量部用いているため、製造コストが高価になってしまい、また水40重量部を加えて流動性を付与していることから、水分を蒸発させるために加圧成形に時間が掛かるとともに得られる木くずボードの含水量が多くなり、比重が0.26〜0.32と小さく、曲げ強度も3点曲げ強度試験で0.55MPa〜1.41MPaと小さいという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、添加バインダーは補助的にしか用いず、加熱加圧して木屑自身の有する成分によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、ホルムアルデヒド臭を発生したりアトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性もなく、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない木屑成形品及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にかかる木屑成形品は、木粉・大鋸屑・鉋屑・木片チョップ等の木屑を金型中で加熱加圧して成形された木屑成形品であって、前記木屑100重量部に対してホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練し、混練した木屑成形材料を前記金型中に充填して加熱加圧することによって前記木屑中のリグニンをバインダーとして機能させて成形してなるものである。
【0007】
請求項2の発明にかかる木屑成形品の製造方法は、木粉・大鋸屑・鉋屑・木片チョップ等の木屑を金型中で加熱加圧することによって成形される木屑成形品の製造方法であって、前記木屑100重量部に対してホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練する工程と、混練した木屑成形材料を前記金型中に充填する工程と、前記金型を加熱加圧することによって前記木屑中のリグニンをバインダーとして機能させて成形する工程とを具備するものである。
【0008】
請求項3の発明にかかる木屑成形品または木屑成形品の製造方法は、請求項1または請求項2の構成において、前記加熱加圧時の加熱温度は130℃〜200℃の範囲内であるものである。
【0009】
請求項4の発明にかかる木屑成形品または木屑成形品の製造方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記加熱加圧時の加圧力は20kgf/cm2 〜70kgf/cm2の範囲内であるものである。
【0010】
請求項5の発明にかかる木屑成形品または木屑成形品の製造方法は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記ホルムアルデヒドを発生しない水系バインダーはイソシアネート系バインダーであるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明にかかる木屑成形品は、木屑100重量部に対してホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練し、混練した木屑成形材料を金型中に充填して加熱加圧することによって木屑中のリグニンをバインダーとして機能させて成形してなる。
【0012】
ここで、リグニンとは、セルロース、ヘミセルロースとともに木材の主成分で、高分子のヒドロキシフェニルプロパンを基本単位とする重合化合物であり、木材中にセルロース約35重量%〜約40重量%に対してリグニン約25重量%〜約30重量%の割合で存在し、セルロースで構成される細胞膜と細胞膜の間の中間層を構成し細胞膜同士を接着する役割を果たしている。
【0013】
また、木粉(もくふん)とは木材が細かく粉砕された粉、大鋸屑(おがくず)は鋸で木材を切る際に出る切り屑、鉋屑(かんなくず)は木材に鉋をかける際に生ずる削り屑、木片チョップとは木片を薄くスライスしてできる薄片である。
【0014】
これらの木粉・大鋸屑・鉋屑・木片チョップ等の木屑は非常に比重が小さいため嵩高く、木屑100重量部に対して水系バインダー10重量部〜20重量部を添加しただけでは、表面を湿らせる程度に留まり、到底水系バインダーのみで木屑を成形することはできない。さらに、これを混練した後においても、木屑成形材料はバサバサした状態であり、手で握っても固まることなく崩れてしまう。
【0015】
かかる木屑成形材料を金型に充填して所定温度範囲・所定圧力範囲で加熱加圧することによって、木屑中に約25重量%〜約30重量%の割合で存在するリグニンが浸み出して木屑同士を強固に接着する。即ち、加熱加圧することによって、木屑中のリグニンがバインダーとして機能して、木屑を成形することができる。
【0016】
こうして成形された木屑成形品は、木材以外にはホルムアルデヒドを発生しない水系バインダーのみを含有するものであるため、成形過程においても、また木屑成形品の使用段階においても、発がん性があるとされるホルムアルデヒドを発生することがなく、アトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させる危険性もなく、その他の揮発性有機化合物(VOC)を発生することもない。さらに、廃棄する場合にも、ほぼ100%木材成分のみで構成されているので生分解性を有し、適切な自然環境に放置しておくだけで腐敗して土に帰るため、産業廃棄物の問題も起こすことなく、地球に優しい木屑成形品となる。
【0017】
このようにして、加熱加圧して木屑自身の有する成分(リグニン)によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、ホルムアルデヒド臭を発生したりアトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性もなく、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない木屑成形品となる。
【0018】
請求項2の発明にかかる木屑成形品の製造方法は、木屑100重量部に対してホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練する工程と、混練した木屑成形材料を金型内に充填する工程と、金型を加熱加圧することによって木屑中のリグニンをバインダーとして機能させて成形する工程とを具備する。
【0019】
木粉・大鋸屑・鉋屑・木片チョップ等の木屑は非常に比重が小さいため嵩高く、木屑100重量部に対して水系バインダー10重量部〜20重量部を添加しただけでは、表面を湿らせる程度に留まり、到底水系バインダーのみで木屑を成形することはできず、混練する工程の後においても木屑成形材料はバサバサした状態であり、手で握っても固まることなく崩れてしまう。したがって、水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練する工程は、続く金型内に充填する工程において充填を容易にするための補助的な工程である。
【0020】
かかる木屑成形材料を金型に充填する工程と、金型を所定温度範囲・所定圧力範囲で加熱加圧する工程とを経ることによって、木屑中に約25重量%〜約30重量%の割合で存在するリグニンが浸み出して木屑同士を強固に接着する。即ち、加熱加圧することによって、木屑中のリグニンがバインダーとして機能して、木屑を成形することができる。
【0021】
かかる工程を経て成形された木屑成形品は、木材以外にはホルムアルデヒドを発生しない水系バインダーのみを含有するものであるため、製造工程においても、また木屑成形品の使用段階においても、発がん性があるとされるホルムアルデヒドを発生することがなく、アトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させる危険性もなく、その他の揮発性有機化合物(VOC)を発生することもない。さらに、廃棄する場合にも、ほぼ100%木材成分のみで構成されているので生分解性を有し、適切な自然環境に放置しておくだけで腐敗して土に帰るため、産業廃棄物の問題も起こすことなく、地球に優しい木屑成形品となる。
【0022】
このようにして、加熱加圧して木屑自身の有する成分(リグニン)によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、ホルムアルデヒド臭を発生したりアトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性もなく、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない木屑成形品の製造方法となる。
【0023】
請求項3の発明にかかる木屑成形品または木屑成形品の製造方法は、加熱加圧時の加熱温度が130℃〜200℃の範囲内、さらに好ましくは150℃〜180℃の範囲内である。本発明者が鋭意実験研究を積み重ねた結果、加熱加圧時の加熱温度が130℃〜200℃の範囲内、さらに好ましくは150℃〜180℃の範囲内である場合に、最も木屑成形品の密度(比重)が大きくなり、最も木屑成形品の曲げ強度が高くなることを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。
【0024】
このようにして、加熱加圧して木屑自身の有する成分によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、ホルムアルデヒド臭を発生したりアトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性もなく、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない木屑成形品または木屑成形品の製造方法となる。
【0025】
請求項4の発明にかかる木屑成形品または木屑成形品の製造方法は、加熱加圧時の加圧力が20kgf/cm2 〜70kgf/cm2の範囲内、さらに好ましくは30kgf/cm2 〜50kgf/cm2の範囲内である。本発明者が鋭意実験研究を積み重ねた結果、加熱加圧時の加圧力が20kgf/cm2 〜70kgf/cm2の範囲内、さらに好ましくは30kgf/cm2 〜50kgf/cm2の範囲内である場合に、最も木屑成形品の密度(比重)が大きくなり、最も木屑成形品の曲げ強度が高くなることを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。
【0026】
このようにして、加熱加圧して木屑自身の有する成分によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、ホルムアルデヒド臭を発生したりアトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性もなく、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない木屑成形品または木屑成形品の製造方法となる。
【0027】
請求項5の発明にかかる木屑成形品または木屑成形品の製造方法は、ホルムアルデヒドを発生しない水系バインダーがイソシアネート系バインダーである。近年、シックハウス症候群を始めとする家屋の材料による環境汚染が問題となっている中で、室内等に用いられる木材の接着剤として、従来の有機系接着剤に代わってホルムアルデヒドを発生しない接着剤としてイソシアネート系接着剤が盛んに用いられるようになってきた。
【0028】
これによって、イソシアネート系バインダーが低価格で入手できるようになり、本発明におけるホルムアルデヒドを発生しない補助的なバインダーとして適切なものである。
【0029】
このようにして、加熱加圧して木屑自身の有する成分によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、ホルムアルデヒド臭を発生したりアトピー性皮膚炎を引き起こす物質を発散させたりする危険性もなく、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない木屑成形品または木屑成形品の製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる木屑成形品及びその製造方法について、図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態1にかかる木屑成形品の製造方法を示すフローチャートである。図2(a)は本発明の実施の形態1にかかる木屑成形品を表面から見たところを示す平面図、(b)は裏返して見たところを示す底面図、(c)は(b)のA−A断面を示す縦断面図である。
【0032】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかる木屑成形品は、木屑として木粉(もくふん)を用いて製造されるものである。ここで、本実施の形態1にかかる木屑成形品に用いられる木粉は、木材を加工する際に出る細かい木の屑を粉砕機に掛けてさらに細かくして、100メッシュより細かい粉粒に分級したものを用いている。
【0033】
まず、ステップS10において、木粉100重量部にイソシアネート系の水系バインダー15重量部を霧吹きでスプレー塗付する。次に、これをニーダー(混練機)に投入して混練し(ステップS12)、混練された木屑成形材料を金型に充填して(ステップS14)、ホットプレスで金型を加熱加圧する(ステップS16)。加熱温度は150℃、加圧力は50kg/cm2 で、30分間加熱加圧を行う。その後、加熱加圧を停止して、金型を開いて10分間放冷・乾燥(ステップS18)した後、木屑成形品を取出して(ステップS20)、製造工程が完了する。
【0034】
このように、本実施の形態1にかかる木屑成形品の製造方法においては、木屑成形材料の水分が少ないため加熱加圧工程(ステップS16)及び乾燥工程(ステップS18)が短くて済み、製造工程を短縮することができて木屑成形品の低コスト化につながる。
【0035】
次に、本実施の形態1にかかる具体的な木屑成形品について、図2を参照して説明する。図2(a)に示されるように、本実施の形態1にかかる木屑成形品1は、表面に鯛の形状を表したものであり、本物の鯛と同じように目玉2は飛び出し、背びれ3は細かく筋が入っており、鱗4の形状も細かく再現され、尾びれ5も太い筋から細い筋に至るまで、金型キャビティ表面(金型の内面)の形状が忠実に転写されている。
【0036】
そして、比重は約1.27(密度約1.27g/cm3 )と大きく(即ち、水に沈むことになる。木材の比重の例としては、エゾマツが0.4、ヒノキが0.44、シナカットベニヤが0.4〜0.6、ラワンカットベニヤが0.6であり、これらと比較しても非常に大きい。)、三点曲げ強度も厚さ4mm、幅10mm、長さ100mmの試験体を用いて、支点間距離64mm、曲げ試験速度2mm/minにおいて、1回目13.6MPa,2回目16.0MPa、平均値14.8MPaと高強度であった。
【0037】
また、図2(b)に示されるように、本実施の形態1にかかる木屑成形品1の裏面は、表面に飛び出した目玉2の裏側に相当する部分2aが大きく凹んでおり、背びれ3の裏側3aは平坦で鱗部分4の裏側4aは鱗部分4が盛り上がっている分だけ凹んでおり、尾びれ5の裏側5aも尾びれ5が盛り上がっている分だけ凹んでいる。
【0038】
さらに、図2(b)のA−A断面を表した図2(c)に示されるように、各断面はほぼ同じ厚さ(約10mm)に成形されており、これによって木屑成形品1の全体に均等に圧力が掛かり、表面の各部が表面側の金型に密着して細かい模様まで忠実に転写されるとともに、内部が均等に圧縮されて緻密な組織となり、上述したような大きい比重と高い曲げ強度を得ることができる。
【0039】
本実施の形態1にかかる木屑成形品はこのように高強度を有するため、例えばFRP(Fiber Reinforced Plastics 繊維強化プラスチック)からなる洗面台等の補強材料として、またその他の建材等として、木材よりも安価に用いることができる。また、本実施の形態1にかかる木屑成形品1は、図1に示されるように、金型の表面の細かい凹凸まで転写することができるため、置物・装飾品としても大量生産でき、安価な製品となる。
【0040】
このようにして、本実施の形態1にかかる木屑成形品及びその製造方法においては、添加バインダーは補助的にしか用いず、加熱加圧して木屑自身の有する成分によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない。
【0041】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる木屑成形品及びその製造方法について、図1及び図3を参照して説明する。図3(a)は本発明の実施の形態2にかかる木屑成形品を表面から見たところを示す平面図、(b)は裏返して見たところを示す底面図である。
【0042】
図3に示されるように、本実施の形態2にかかる木屑成形品11は、金型として実施の形態1にかかる木屑成形品1と同じくキャビティ表面(内面)に鯛の形状を表した金型を用いており、異なるのは成形材料の木屑として、実施の形態1の木屑成形品1における木粉の代わりにヒノキの木片チョップ10を用いている点のみである。
【0043】
したがって、本実施の形態2にかかる木屑成形品の製造方法は、図1のステップS10において、「木粉に水系バインダーをスプレー」とあるのを「木片チョップに水系バインダーをスプレー」と読み替えるだけで良く、以下のステップS12,S14,S16,S18,S20については、上記実施の形態1にかかる木屑成形品の製造方法と全く同様である。
【0044】
即ち、まず、ステップS10において、ヒノキの木片チョップ100重量部にイソシアネート系の水系バインダー15重量部を霧吹きでスプレー塗付する。次に、これをニーダー(混練機)に投入して混練し(ステップS12)、混練された木屑成形材料を金型に充填して(ステップS14)、ホットプレスで金型を加熱加圧する(ステップS16)。加熱温度は150℃、加圧力は50kg/cm2 で、30分間加熱加圧を行う。その後、加熱加圧を停止して、金型を開いて10分間放冷・乾燥(ステップS18)した後、木屑成形品を取出して(ステップS20)、製造工程が完了する。
【0045】
このように、本実施の形態2にかかる木屑成形品の製造方法においては、木屑成形材料の水分が少ないため加熱加圧工程(ステップS16)及び乾燥工程(ステップS18)が短くて済み、製造工程を短縮することができて木屑成形品の低コスト化につながる。
【0046】
図3(a)に示されるように、こうして製造された本実施の形態2にかかる木屑成形品11は、表面に鯛の形状を表したものであり、本物の鯛と同じように目玉12は飛び出し、背びれ13は細かく筋が入っており、鱗部分14の形状も細かく再現され、尾びれ15も太い筋から細い筋に至るまで、金型の形状が忠実に転写されている点は、実施の形態1にかかる木屑成形品1と同様である。
【0047】
但し、微粒子の木粉で成形された木屑成形品1と異なり、本実施の形態2にかかる木屑成形品11は成形材料である木片チョップ10が大きいため、表面に金型の模様と重なって木片チョップ10の模様が表れ、独特の質感を醸し出している。かかる木屑の質感が顕著に表面に表れた量産可能な高強度の木屑成形品11は、これまで成形が困難であったものであり、本実施の形態2にかかる木屑成形品の製造方法によって、初めて量産が可能になったものである。
【0048】
また、図3(b)に示されるように、本実施の形態2にかかる木屑成形品11の裏面も、表面に飛び出した目玉12の裏側に相当する部分12aが大きく凹んでおり、背びれ13の裏側13aは平坦で鱗部分14の裏側14aは鱗部分14が盛り上がっている分だけ凹んでおり、尾びれ15の裏側15aも尾びれ15が盛り上がっている分だけ凹んでいる点は、実施の形態1にかかる木屑成形品1と同様である。
【0049】
但し、微粒子の木粉で成形された木屑成形品1と異なり、本実施の形態2にかかる木屑成形品11は成形材料である木片チョップ10が大きいため、裏面にも金型の凹部と重なって木片チョップ10の模様が表れ、独特の質感を醸し出している。かかる木屑の質感が顕著に表面に表れた量産可能な高強度の木屑成形品11は、これまで成形が困難であったものであり、本実施の形態2にかかる木屑成形品の製造方法によって、初めて量産が可能になったものである。
【0050】
そして、比重は成形材料である木片チョップ10が大きいため、実施の形態1の木屑成形品1ほどには緻密にならないが、それでも比重約0.9(密度約0.9g/cm3 )と大きく(上述の如く、木材の比重の例としては、エゾマツが0.4、ヒノキが0.44、シナカットベニヤが0.4〜0.6、ラワンカットベニヤが0.6であり、これらと比較しても非常に大きい。)、三点曲げ強度も厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの試験体を用いて、支点間長さ64mm、曲げ試験速度2mm/minにおいて、1回目7.18MPa,2回目5.75MPa、平均値6.47MPaと高強度であった。
【0051】
したがって、本実施の形態2にかかる木屑成形品は、従来の木材に代わる高強度かつ低コストの補強材、建材等として用いることができるのみならず、図3に示されるように木片チョップ10の模様が表れた独特の質感を有する丈夫な置物、装飾品等としても応用が可能である。
【0052】
このようにして、本実施の形態2にかかる木屑成形品及びその製造方法においては、添加バインダーは補助的にしか用いず、加熱加圧して木屑自身の有する成分によって木屑同士を強固に接着させることによって比重も曲げ強度も大きく、製造コストも安価にすることができ、種々の用途に応用が可能であり、廃棄する際にも生分解性を有するため環境に悪影響を与えることがない。また、これまで困難であった、木屑の質感が顕著に表面に表れた高強度の木屑成形品の量産を初めて可能にした。
【0053】
上記各実施の形態においては、木屑成形品として魚の鯛の形状を表面に表した成形品の例について説明したが、これ以外にも複雑な形状・凹凸模様を有する成形品を精度良く、かつ高強度に成形することができる。
【0054】
また、上記各実施の形態においては、補助的に用いる添加バインダー(ホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー)としてイソシアネート系バインダーを用いた場合について説明したが、イソシアネート系バインダーに限られるものではなく、ホルムアルデヒドを発生しない水系バインダーであれば、種々のバインダーを用いることができる。
【0055】
さらに、上記各実施の形態においては、ホットプレスで金型を加熱加圧する際に、加熱温度150℃、加圧力50kg/cm2 で、30分間加熱加圧を行った場合について説明したが、加熱温度が130℃〜200℃の範囲内、さらに好ましくは150℃〜180℃の範囲内であり、加圧力が20kgf/cm2 〜70kgf/cm2の範囲内、さらに好ましくは30kgf/cm2 〜50kgf/cm2の範囲内であれば、同等な品質の木屑成形品を成形することができる。
【0056】
本発明を実施するに際しては、木屑成形品のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、木屑成形品の製造方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる木屑成形品の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態1にかかる木屑成形品を表面から見たところを示す平面図、(b)は裏返して見たところを示す底面図、(c)は(b)のA−A断面を示す縦断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態2にかかる木屑成形品を表面から見たところを示す平面図、(b)は裏返して見たところを示す底面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,11 木屑成形品
10 木片チョップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木粉・大鋸屑・鉋屑・木片チョップ等の木屑を金型中で加熱及び加圧して成形された木屑成形品であって、
前記木屑100重量部に対してホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練し、混練した木屑成形材料を前記金型中に充填して加熱加圧することによって前記木屑中のリグニンをバインダーとして機能させて成形してなることを特徴とする木屑成形品。
【請求項2】
木粉・大鋸屑・鉋屑・木片チョップ等の木屑を金型中で加熱加圧することによって成形される木屑成形品の製造方法であって、
前記木屑100重量部に対してホルムアルデヒドを発生しない水系バインダー10重量部〜20重量部を添加して混練する工程と、
混練した木屑成形材料を前記金型中に充填する工程と、
前記金型を加熱加圧することによって前記木屑中のリグニンをバインダーとして機能させて成形する工程と
を具備することを特徴とする木屑成形品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱加圧時の加熱温度は130℃〜200℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の木屑成形品または請求項2に記載の木屑成形品の製造方法。
【請求項4】
前記加熱加圧時の加圧力は20kgf/cm2 〜70kgf/cm2の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の木屑成形品または木屑成形品の製造方法。
【請求項5】
前記ホルムアルデヒドを発生しない水系バインダーはイソシアネート系バインダーであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の木屑成形品または木屑成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−44966(P2007−44966A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230963(P2005−230963)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(398012801)株式会社ネイブ (26)
【Fターム(参考)】