説明

木材の燻蒸方法

【課題】ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤により木材を燻蒸する方法であって、より効率的に且つ対象の木材の全数を確実に燻蒸処理できる木材の燻蒸方法を提供する。
【解決手段】木材の燻蒸においては、積み上げられた木材(1)をシート(2)で覆い、シート(2)内側の積み上げられた木材(1)の上部において燻蒸剤を噴霧した後、シート(2)内側へ空気または不活性ガスを送気する。好ましくは、木材(1)の上部に配置した噴霧装置のノズル部材(9)から燻蒸剤を噴霧し、噴霧後にノズル部材(9)から空気または不活性ガスを送気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の燻蒸方法に関するものであり、詳しくは、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤を使用し、これを噴霧することによって木材を燻蒸する木材の燻蒸方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の燻蒸においては、環境への配慮から、臭化メチルに代えてヨウ化メチルの使用が普及しつつあり、ヨウ化メチルも、臭化メチルと遜色のない害虫駆除効果を有することが確認されている。ヨウ化メチルによる燻蒸も、従来法と同様に、いわゆる天幕方式によって行われ、例えば、温湯ジャケットが備えられた蓋付容器にヨウ化メチルを収容し、木材を覆うシート(天幕)の内側で容器を開放することにより、気化したヨウ化メチルをシート内側に拡散させる。
【特許文献1】特開2003−136506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
天幕方式の木材の燻蒸では、通常、シートの内側に多数の木材が積み上げられるが、燻蒸にヨウ化メチルを使用した場合は、ヨウ化メチルの比重が大きいため、気化したヨウ化メチルが容器から直ちに地表面側に流下し、地面近傍で滞留する傾向がある。その結果、積み上げられた位置によってはヨウ化メチルの濃度が低く、燻蒸不十分な木材が発生する虞がある。
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤により木材を燻蒸する方法であって、より効率的に且つ対象の木材の全数を確実に燻蒸処理できる木材の燻蒸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は、積み上げられた木材をシートで覆う天幕方式の燻蒸方法において、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤を使用するに当たり、木材の上部で燻蒸剤を噴霧することにより、ミスト状の燻蒸剤を広範囲に散在させ且つその気化を促進させると共に、更に、噴霧直後に空気などを送気することにより、気化を更に促進させ且つ気化した燻蒸剤をより広範囲に拡散させる様にした。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤により木材を燻蒸する方法であって、積み上げられた木材をシートで覆い、シート内側の積み上げられた木材の上部において燻蒸剤を噴霧した後、シート内側へ空気または不活性ガスを送気することを特徴とする木材の燻蒸方法に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る木材の燻蒸方法によれば、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤を使用するに当たり、積み上げられた木材の上部において燻蒸剤を噴霧するため、ミスト状の燻蒸剤を広範囲に散在させ且つその気化を促進させることが出来、しかも、噴霧後に空気または不活性ガスを送気するため、気化を更に促進させ且つ気化した燻蒸剤をより広範囲に拡散させることが出来る。その結果、シート内側の処理空間における燻蒸剤濃度を高い濃度で均一化でき、効率的に燻蒸処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る木材の燻蒸方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る木材の燻蒸方法の概念を示す縦断面図であり、図2は、本発明に適用される噴霧装置の構成例を示す組立図である。以下、木材の燻蒸方法を「燻蒸方法」と略記する。
【0009】
本発明の燻蒸方法は、積み上げられた木材をシートで覆ういわゆる天幕方式の燻蒸方法であり、斯かる燻蒸方法においては、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤の噴霧により木材を燻蒸する。本発明においては、通常、燻蒸剤としてヨウ化メチルが単独で使用される。ヨウ化メチルは、沸点42.5℃の液体であり、後述する様にミスト状に噴霧することにより、比較的迅速に気化させることが出来る。なお、上記の燻蒸剤においては、許容される範囲内で従来公知の木材用燻蒸剤、例えば、臭化メチル、フッ化スルフリル、メチルイソシアネート、プロピレンオキサイドを併用してもよい。
【0010】
先ず、本発明において使用される燻蒸剤噴霧用の噴霧装置について説明する。斯かる噴霧装置は、図2に符号(4)で示す様に、燻蒸剤が充填され且つ当該燻蒸剤を内部の圧縮気体により押出し可能な燻蒸剤容器(5)と、当該燻蒸剤容器から伸長された配管(81)の先端に設けられ且つ流体をミスト状に噴霧するノズル部材(9)と、空気または不活性ガスが圧縮充填され且つ配管(81)の燻蒸剤容器(5)側の基部に第2の配管(82)を介して接続された気体容器(6)とを備え、かつ、燻蒸剤容器(5)からの燻蒸剤の噴霧と気体容器(6)からの空気または不活性ガスの送気とを切替可能に構成される。
【0011】
燻蒸剤容器(5)は、後述する燻蒸剤(液体)及び押出用の圧縮気体が予め充填された耐圧容器であり、容器底部へ伸長されたサイホン管を通じて燻蒸剤が押し出される様になされている。燻蒸剤の投薬量は、木材が収容された処理空間(図1に示すシート(2)の内側の木材(1)を含む空間)の単位体積当たり、通常10〜100g/m、好ましくは30〜80g/mである。上記の投薬量および1回あたりの木材の処理量を勘案すると、通常、燻蒸剤容器(5)における燻蒸剤の充填量は5〜20kg程度である。押出用の圧縮気体としては空気または不活性ガスを使用できるが、通常は空気が充填される。空気の充填圧力は0.3〜0.8MPaである。
【0012】
図2に示す様に、燻蒸剤容器(5)のネック弁には、継手部(7)を介して可撓性の配管(81)が接続され、配管(81)の先端には、ノズル部材(9)が設けられる。ノズル部材(9)は、積み上げられた木材(1)の上部に載せた状態に配置し得る様に(図1参照)、例えば、先端が封止された直管と、その長手方向に沿って一定ピッチで取り付けられた複数のスプレーノズル(91)とから構成される。
【0013】
スプレーノズル(91)としては、燻蒸剤を噴出させた際、より小さな粒径のミストを形成でき、かつ、より広い角度でミストを噴霧し得る構造のノズルが好ましく、螺旋状の溝を表面に設けて成るブロック状の流路部材やスクリューがノズル先端部に内蔵されたいわゆる広角度噴霧型の各種のスプレーノズルを使用できる。スプレーノズル(91)の数は、特に制限はないが、平面視してより広範囲に且つ均等に燻蒸剤を噴霧するため、通常は2〜5個程度とされる。
【0014】
気体容器(6)は、圧縮空気または圧縮不活性ガスが充填された耐圧容器であり、燻蒸剤容器(5)から燻蒸剤を押し出した後、配管(81)及びノズル部材(9)の内部に残存する燻蒸剤を更に押し出し、かつ、処理空間(シート(2)の内側の空間)において気化した燻蒸剤を拡散させるために備えられている。気体容器(6)としては、通常、空気が充填された充填量9.4〜26.8リットル(標準状態の体積)のものが使用される。上記の気体容器(6)は、そのネック弁にから伸長された可撓性の第2の配管(82)を介して上記の継手部(7)に接続される。
【0015】
燻蒸剤容器(5)のネック弁には、切替機構としての継手部(7)が取り付けられる。継手部(7)は、チーズ継手の直管部の一端および分岐管部にそれぞれ開閉弁(71)及び(72)を取り付けて構成される。従って、燻蒸処理の際、燻蒸剤容器(5)のネック弁と共に開閉弁(71)を開放操作することにより、燻蒸剤容器(5)から燻蒸剤を取り出し、ノズル部材(9)から放出することが出来る。また、上記の分岐管部の開閉弁(72)には、気体容器(6)から伸長された上記の第2の配管(82)が接続される。従って、燻蒸剤を噴霧した後は、気体容器(6)のネック弁と共に開閉弁(72)を開放操作することにより、気体容器(6)から空気を取り出し、ノズル部材(9)から放出することが出来る。
【0016】
次に、上記の噴霧装置(4)を使用した本発明の燻蒸方法について説明する。本発明においては、図1に示す様に、先ず、回分処理の対象となる木材(1)を積み上げる。木材(1)の大きさによっても異なるが、例えば、直径が300mm程度の木材(1)の場合は、100本程度を1回の処理分として積み上げる。換言すれば、全体の見かけ体積が約100mとなる様に木材(1)を積み上げる。次いで、積み上げた木材(1)の上部に噴霧装置(4)のノズル部材(9)を配置する。その場合、ノズル部材(9)のスプレーノズル(91)は、燻蒸剤をより隅々まで噴霧するため、略下方に向けるのが好ましい。
【0017】
ノズル部材(9)を配置した後は、ノズル部材(9)と共に積み上げた木材(1)の全体をシート(2)で覆う。シート(2)としては、例えば厚さ0.2mmのポリエチレン製の燻蒸用シートが使用される。なお、木材(1)を覆ったシート(2)の外周部は、床面または地面との間に隙間が生じない様に、砂袋、水袋などの錘(3)を使用して押さえ付ける。
【0018】
上記の様にシート(2)で木材(1)を覆った後は、シート内側の積み上げられた木材の上部において燻蒸剤を噴霧する。具体的には、シート(2)で覆った後、最初に燻蒸剤容器(5)及び気体容器(6)の各ネック弁を開放しておく。次いで、継手部(7)の開閉弁(71)を開放操作し、燻蒸剤容器(5)の燻蒸剤を放出する。斯かる操作により、ノズル部材(9)の各スプレーノズル(91)から燻蒸剤をミスト状に噴霧することが出来る。通常、燻蒸剤の噴霧時間は5〜10分程度である。
【0019】
燻蒸剤の噴霧が終了したならば、シート(2)内側へ空気または不活性ガスを送気する。すなわち、燻蒸剤の噴霧後にノズル部材(9)のスプレーノズル(91)から空気または不活性ガスを吐出させる。具体的には、燻蒸剤の噴霧が終了した時点で燻蒸剤容器(5)のネック弁および開閉弁(71)を閉じ、直ちに開閉弁(72)を開放操作する。斯かる操作により、気体容器(6)の空気を配管(81)に供給し、ノズル部材(9)からシート(2)の内側へ空気を放出することが出来る。これにより、配管(81)及びノズル部材(9)の内部に残留している燻蒸剤を放出することが出来、更に、送気した空気によりシート(2)内側の処理空間の空気を撹拌することが出来る。通常、空気の送気時間は5〜7分程度である。
【0020】
本発明において、空気または不活性ガスを送気するタイミングは燻蒸剤の噴霧直後が好ましい。噴霧直後とは、燻蒸剤の噴霧を終了した時点から2〜3分以内を言う。燻蒸剤の噴霧直後に空気などを送気する理由は次の通りである。
【0021】
すなわち、燻蒸剤を噴霧した場合、木材(1)の積み上げ状態により、燻蒸剤のミストが多量に付着する木材(1)と殆ど付着しない木材(1)が生じる。一方、木材(1)の表面に付着した燻蒸剤は、ミスト状であるため、比較的短時間のうちに気化するが、その比重の大きさにより、ガスとして下方へ流下し、シート(2)内側の処理空間の下部で滞留する。従って、噴霧した燻蒸剤が完全に気化する前、換言すれば、気化している間に処理空間の空気を撹拌することにより、燻蒸剤の気化を更に促進し、かつ、処理空間全体において燻蒸剤濃度を均一で且つ高い濃度にすることが出来る。そして、上記の様な燻蒸剤の気化促進効果と高濃度均一化効果は、噴霧終了時から3〜15分以内、好ましくは2〜3分以内に処理空間の空気を撹拌することにより得られることが実験から確認された。
【0022】
上記の様な燻蒸処理は、燻蒸剤の噴霧から24時間を経て終了する。そして、処理が終了した時点でシート(2)を剥がし、木材(1)を大気に晒すことにより、シート(2)の内側に残留した燻蒸剤および木材(1)に吸着された燻蒸剤を放出する。
【0023】
本発明の燻蒸方法によれば、上記の様に、積み上げられた木材(1)をシート(2)で覆う天幕方式の燻蒸処理において、ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤を使用するに当たり、積み上げられた木材(1)の上部において燻蒸剤を噴霧するため、ミスト状の燻蒸剤を広範囲に散在させ且つその気化を促進させることが出来、しかも、噴霧後に空気または不活性ガスを送気するため、気化を更に促進させ且つ気化した燻蒸剤をより広範囲に拡散させることが出来る。その結果、シート(2)内側の処理空間における燻蒸剤濃度を高い濃度で均一化でき、処理対象である木材(1)の全てを少ない量の燻蒸剤で効率的に燻蒸処理できる。
【0024】
そして、上記の構造の噴霧装置(4)を使用する本発明の燻蒸方法によれば、燻蒸剤の噴霧後、気体容器(6)から空気または不活性ガスをノズル部材(9)から上記の処理空間に放出するため、配管(81)及びノズル部材(9)に残った燻蒸剤を無駄なく利用することが出来る。なお、本発明においては、燻蒸剤をミスト状に噴霧でき、噴霧後に空気または不活性ガスを送気できる限り、各種の構造の噴霧装置を使用できる。
【実施例】
【0025】
実施例1:
木枠を組んでこれをシート(2)で覆うことにより、高さ0.7m、間口長さ2.7m、奥行き1.6mの処理空間を2つ形成し、これらの処理空間をそれぞれA区、B区とした。そして、直径が約12〜20cm、長さが1mの木材(1)をA区とB区にそれぞれ43本積み上げ、A区において本発明の燻蒸方法を実施し、燻蒸剤の濃度分布を測定した。燻蒸剤の濃度は、ガスクロマトグラフ法により測定した。なお、処理空間の雰囲気温度は20℃であった。
【0026】
燻蒸剤の噴霧には図2に示す噴霧装置(4)を使用した。ノズル部材(9)としては、拡がり角度90度、ノズル径1.8mmのスプレーノズル(91)が1個配置されたものを使用した。燻蒸剤容器(5)は、当初、ヨウ化メチルが120g充填され且つ空気で0.3MPaに加圧されたものを使用した。気体容器(6)は、空気が3.4リットル充填され、0.3MPaに加圧されたものを使用した。
【0027】
A区においては、積み上げた木材(1)の上部中央にノズル部材(9)を配置し、燻蒸剤容器(5)の燻蒸剤を5分間で噴霧し、噴霧終了直後から3分間で気体容器(6)の空気を処理空間へ送気した。投薬量は40g/mであった。そして、処理終了後、1時間、3時間および5時間経過した時点の各部位の燻蒸剤濃度を測定したところ、表1に示す結果が得られた。
【0028】
比較例1:
実施例1で形成した処理空間のB区において従来法を実施し、燻蒸剤の濃度分布を測定した。燻蒸剤の散布においては、120gのヨウ化メチルが充填された缶を使用した。木材の上部中央に受け皿を載せ、ヨウ化メチルの缶を開封して前記の受け皿に載せ、当該受け皿にヨウ化メチルを流して気化させた。投薬量は40g/mであった。そして、処理終了後、1時間、3時間および5時間経過した時点の各部位の燻蒸剤濃度を測定したところ、表1に示す結果が得られた。
【0029】
【表1】

【0030】
B区においては、ヨウ化メチルの缶の開封と同時に液体のヨウ化メチルが受け皿上に流れ出すため、最初の気化量は多い。しかしながら、1時間経過後は、A区の平均濃度が3052ppm、B区の平均濃度が1093ppmであり、1時間以上経過した場合、A区においては、気化および拡散がB区に比べて迅速に進行している。従って、B区に比べ、A区の方が安定した殺虫効果が期待できる。なお、A区の燻蒸剤濃度が1時間後よりも3〜5時間後の方が低くなっているのは、気化した燻蒸剤が木材(1)によって吸着されているためと考えられる。一方、B区の燻蒸剤濃度が1時間後よりも3〜5時間後の方が高くなっているのは、受け皿上にヨウ化メチルが液体で存在し、気化に長時間を要しているためである。
【0031】
実施例2:
木枠を組んでこれをシート(2)で覆うことにより、実施例1と同様の2つの処理空間を形成し、これら処理空間を実施例1と同様にA区、B区とした。そして、実施例1と同様に木材(1)をA区とB区にそれぞれ積み上げ、実施例1と同様の噴霧装置(4)を使用し、A区において実施例1と同様の条件で本発明の燻蒸方法を実施し、燻蒸剤の濃度分布を測定した。そして、処理終了後、1時間、3時間および5時間経過した時点の各部位の燻蒸剤濃度を測定したところ、表2に示す結果が得られた。なお、処理空間の雰囲気温度は20℃であった。
【0032】
比較例2:
実施例2で形成した処理空間のB区において、気体容器(6)から空気を送気しなかった点を除き、実施例1と同様の条件で燻蒸剤のみを噴霧した。そして、処理終了後、1時間、3時間および5時間経過した時点の各部位の燻蒸剤濃度を測定したところ、表2に示す結果が得られた。
【0033】
【表2】

【0034】
A区の測定点において、上部、下部とも濃度差がなかったのは、ヨウ化メチル投薬後直ちに気体容器(6)から空気を供給し、配管(81)内のヨウ化メチルを押し出すと共に、処理空間内のヨウ化メチルを速やかに気化させ且つ撹拌したことによる。一方、B区においては、処理終了から1時間後、上部の濃度が下部よりも低くなっており、これは、気化したヨウ化メチルのガス比重が4.9と大きく、上部への拡散が遅いためである。
【0035】
実施例3:
直径が約12〜20cm、長さが1mの木材(1)を43本積み上げた。その際、上段の1本および下段の左右各1本、合計3本を被害木(マツノマダラカミキリの幼虫が中にいる木材)とした。そして、積み上げた木材(1)の上部中央に噴霧装置(4)のノズル部材(9)を配置し、ノズル部材(9)と共に木材(1)全体をシート(2)で覆った。次いで、実施例1と同様の条件で燻蒸剤としてヨウ化メチルを噴霧し、実施例1と同様の条件で空気を送気した。そして、24時間を経過する間、積み上げた木材(1)の中央上部の燻蒸剤濃度を測定した。その結果、表3に示す様な濃度変化が見られた。また、24時間経過後に各被害木を取り出し、室温が26℃に維持された飼育室に被害木を移し、10日後にこれを取り出して幼虫の生死を確認したところ、表4に示す結果が得られた。なお、燻蒸処理しなかった被害木の幼虫の生死も表4に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
燻蒸剤の噴霧および空気の供給により、燻蒸剤が迅速に気化していることが確認できた。そして、燻蒸剤の噴霧後、シート(2)の内側へ空気を送気することにより、気化した燻蒸剤が隅々まで拡がり、表4に示す通り、100%の殺虫効果が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る木材の燻蒸方法の概念を示す縦断面図である。
【図2】本発明に適用される噴霧装置の構成例を示す組立図である。
【符号の説明】
【0040】
1 :木材
2 :シート
4 :噴霧装置
5 :燻蒸剤容器
6 :気体容器
7 :継手部
71:開閉弁
72:開閉弁
81:配管
82:第2の配管
9 :ノズル部材
91:スプレーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤により木材を燻蒸する方法であって、積み上げられた木材をシートで覆い、シート内側の積み上げられた木材の上部において燻蒸剤を噴霧した後、シート内側へ空気または不活性ガスを送気することを特徴とする木材の燻蒸方法。
【請求項2】
ヨウ化メチルを有効成分とする燻蒸剤により木材を燻蒸する方法であって、積み上げられた木材の上部に噴霧装置のノズル部材を配置し且つ当該ノズル部材と共に木材をシートで覆い、前記ノズル部材から燻蒸剤を噴霧した後、前記ノズル部材から空気または不活性ガスを送気することを特徴とする木材の燻蒸方法。
【請求項3】
噴霧装置として、燻蒸剤が充填され且つ当該燻蒸剤を内部の圧縮気体により押出し可能な燻蒸剤容器と、当該燻蒸剤容器から伸長された配管の先端に設けられ且つ流体をミスト状に噴霧するノズル部材と、空気または不活性ガスが充填され且つ前記配管の燻蒸剤容器側の基部に第2の配管を介して接続された気体容器とを備え、かつ、燻蒸剤の噴霧と空気または不活性ガスの送気とを切替可能に構成された噴霧装置を使用する請求項2に記載の木材の燻蒸方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−245391(P2007−245391A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68931(P2006−68931)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(390036881)三光化学工業株式会社 (7)
【出願人】(501307826)アリスタ ライフサイエンス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】