説明

木材を使用した防火サッシ

【課題】サッシは防火サッシの条件を満たすためにガラスには網入りガラスを使用し、枠体には溶融温度の高い鉄などの金属の枠のを使用するのが一般であり、商品設計上に大きな制約があった。透明のガラスを使用した大きなサイズのサッシを、さまざまな色やデザインが可能な木材の枠を使用して実現する。
【解決手段】木材のサッシ枠体と窓框体に、2枚のフロートガラス(31,32,41)の間に無機質系フィルム(33)を挟んで接着した合わせガラスの外側ガラスと、厚ガラスの内側ガラスとを一定の間隔をあけて組み合わせた二重ガラスを装着し、外側ガラスと、内側ガラスの2枚のガラスとの隙間にアルゴンガスを充填することにより、木材を使用した防火サッシを実現してさまざまな色やデザインを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の窓枠と窓框体を使用した防火サッシに関するものである。
本発明の木材を使用した防火サッシは、室外側をアルミ材にて覆った木枠と窓框体に、アルゴンガスを充填した二重合わせガラスを装着して防火構造を実現するとともに、耐久性とデザイン性の向上を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の窓開口部に設けられるサッシにおいては、アルミなどの金属の枠体のものや金属の框体の室内側露出部分を木材や樹脂部材により覆った複合サッシが広く用いられている。
このようなサッシを防火構造にする場合には、通常のサッシに広く使用されているアルミや木材の枠は、所定の時間高温に耐えられないため使用することが出来ず、鉄やステンレス等の高温に耐えられる金属の枠しか使用できなかった。
鉄やステンレス等は、金属の冷たい印象をあたえるため、金属の枠体の室内側露出部分を木材や樹脂部材により覆って室内側からサッシを見る際に受ける金属の冷たい印象をなくすようにして高級感を与えるようにしたものもあるが、さまざまな色やデザインのものを用いることができず、サッシとその周りとの意匠の統一を図ることが困難で、意匠性を向上させることが出来なかった。
又、従来の防火構造のサッシに使用される窓ガラスも、高温に所定の時間耐えられるために、一定のサイズを超えるガラスには網線入りのガラスを使用する必要があり、開放感のあるサッシを実現することが困難であった。
木材はさまざまな色やデザインのものを用いることができるので、サッシとその周りとの意匠の統一を図ることができ、意匠性を向上させることができるが、木枠を使用したサッシは耐久性や防火の問題があるため広く普及する状態にはない。
【0003】
【特許文献1】特開平10−292530号公報
【特許文献2】特開2004−169453号公報,
【特許文献3】特開2004−169454号公報,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサッシを防火サッシにしようとすると建築基準法及びJISの規格に規定されている乙種防火防火サッシの認定基準の、「屋内外両側に対してそれぞれ片側から750℃以上で加熱し、反対側で20分間発火しないこと」の条件をクリアすることが必要である。
このため、通常のアルミサッシではガラスが割れたり、アルミの枠体が溶解し、又、木枠のサッシではガラスが割れたり、枠体が燃えるために十分な防火特性を得ることが出なかった。
従来のサッシではこの防火サッシの条件を満たすためにガラスには網入りガラスを使用し、枠体には溶融温度の高い鉄やステンレスなどの金属の枠のを使用するのが一般であり、アルミクラッドの窓サッシでは0.8mまでの小型のものしかしか認定はされおらず、商品設計上に大きな制約があった。
このため透明のガラスを使用した大きなサイズのサッシを、金属の冷たい印象を排し、さまざまな色やデザインが可能な木材の枠を使用した防火サッシの実現が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、サッシ枠体と窓框体とに木材を使用し、木材のサッシ枠体と窓框体の室外側にアルミ材の防水カバーを設け、窓サッシのガラスに、2枚のフロートガラスの間に無機質系フィルムを挟んで接着した合わせガラスの外側ガラスと、厚ガラスの内側ガラスとを一定の間隔をあけて組み合わせた二重ガラスを装着し、外側ガラスと、内側ガラスの2枚のガラスとの隙間にアルゴンガスを充填した木材を使用した防火サッシを実現することにより、透明のガラスを使用した大きなサイズで、金属の冷たい印象を排し、さまざまな色やデザインを可能にたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の木材を使用した防火サッシは、従来のサッシのように防火サッシの条件を満すために網入りガラスを使用する必要が無いので、透明のガラスを使用した開放感のある大きな防火サッシを製作することが可能である。又、サッシ枠体と窓框体に木材を使用することが出来るので、金属の冷たい印象を排し、さまざまな色やデザインのものを用いることができるので、サッシとその周りとの意匠の統一を図ることができ、防火サッシの意匠性を向上させることができる。
本発明の木材を使用した防火サッシは、一般木造住宅や共同住宅、ビル等の用途に幅広く使うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の木材の枠を使用した乙種防火サッシについて図面を使用して詳細に説明する。
図1は本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシの屋外側の概観図、図2は本発明の木材の枠を使用した片引き窓サッシの屋内側の概観図を示した図である。
図1及び図2において、10は建物開口部に装着されるサッシの窓枠体である。窓枠体10は、上枠11、下枠12、及び縦枠13、14と、中央に設けたその方縦枠15からなり、枠体10内の縦枠13と方縦枠15の間に固定の窓ガラス30を装着されている。枠体10内の縦枠12と13の間には、上框21、下框22、及び縦框23、24を枠組みして窓ガラス40を装着した窓框体20が走行自在に組み付けられて片引き戸を構成している。図2の25は窓框体20の固定金具である。
【0008】
本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシは、窓を閉めた状態においては、窓框体20の窓ガラス40が、枠体10の固定の窓ガラス30と同一面上になるように、窓框体20が枠体10の縦枠12と13の間に嵌まり込んだ状態で固定されている。窓を開ける時には、固定金具25を引いて窓框体20を室内側にずらせて引き戸レールに乗せて固定の窓ガラス30の方向に引くことにより窓が開かれるように動作する。
図3は、図1及び図2のA−A面の縦断面図である。図4は、図1及び図2のB−B面の縦断面図である。図5は、図1及び図2のC−C面の横断面図である。
図3乃至図5において、図1及び図2と同一の部分には、同一の符号をつけてその説明を省略する。
図3乃至し図5において、枠体10を構成する各枠材は、木材の枠材であり、木材の枠体と框の室外側露出部分を覆う防水カバーとから構成されている。
木材の枠体10は、木材の上枠11、木材の下枠12、及び木材の縦枠13、14と、中央に設けたその方縦枠15が方形に配置されている。
【0009】
上枠防水カバー51は木材の上枠11に、下枠防水カバー52は木材の下枠12
に、縦枠防水カバー53,54は木材の縦枠13、14に、方縦枠防水カバー55は方縦枠15にそれぞれ取付けられている。木材の上枠11と木材の下枠12と木材の縦枠13、14及び方縦枠15には、それぞれ係止片が設けられ、上枠防水カバー51と下枠防水カバー52と縦枠防水カバー53、54及び方縦枠防水カバー55はそれらに係合された上で、ネジによって固定されている。
枠体10内の縦枠13と方縦枠15の間に固定の窓ガラス30が装着されている。
窓ガラス30は、耐火性を有する気密シール材とガラス固定スペーサ及び押縁を介して各枠体11,12,13,15に保持されている。押縁は、各枠体に固定されて窓ガラス30保持して、窓ガラス30の落下を防止する。
図3及び図4に示すように、枠体10の上枠11と下枠12の室内側には引き戸レール71,72が取りつけられ、窓框体20に設けられた戸車がその上に載置されて、窓框体20は横方向に走行自在とされることで、片引き戸を構成している。
窓框体20は、上框21、下框22、及び縦框23、24の框材を方形状に枠組みされている。
【0010】
各框21,22,23,24は、上記枠体10と同様に、木材の框体21,22,23,24の室外側露出部分を覆うように取付けられた框体防水カバー61,62,63,64とから構成されている。すなわち、上框防水カバー61は木材の上框21に、下框防水カバー62は木材の下框22に、縦框防水カバー63、64は木材の縦框23、24に、それぞれ取り付けられている。
上框21、下框22、及び縦框23、24には、それぞれ係止片が設けられ、上框防水カバー61、下框防水カバー62及び縦框防水カバー63、64はそれらに係合された上で、それらに係合された上で、ネジによって固定されている。
窓框体20には窓ガラス40が装着されている。
窓ガラス40は耐火性を有す気密シール材とガラス固定スペーサ及び押縁を介して各框体21,22,23,24に保持されている。押縁は、各框体に固定されて窓ガラス40保持して、窓ガラス40の落下を防止する。
【0011】
図6は、本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシの窓ガラス30,40の構造について説明するためのガラスの断面図を示したものである。
図6において、31,32,41は、それぞれフロート板ガラスである。板ガラス41は板ガラス31,32よりも厚い厚板ガラスが使用される。33は板ガラス31,32の間に挟まれ、板ガラス31,32に接着されている透明の無機質系複合材である。板ガラス31,32と無機質系複合材33とにより合わせガラスを構成している。
42,43は、板ガラス31,32と無機質系複合材33の合わせガラスと厚板ガラス41との間に一定の間隔を設けるための耐火性を有するスペーサである。
本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシの窓ガラス30,40は、板ガラス31,32と無機質系複合材33の合わせガラスと厚板ガラス41の間に一定の間隔を設けるためのスペーサ42,43を介在させ、この合わせガラスと厚板ガラス41との間の空間にアルゴンガスを封入して防火機能を持った複層ガラスを構成したものである。
【0012】
本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシは、750℃以上の高温で一定の時間高温にさらされた場合には、アルミの防水カバーは溶け、木材の枠と框の外部表面は一旦は燃えて表面が炭化するが、20分の間には木材の枠と框の内部まで燃えること無く、窓ガラス30,40を確実に保持し続けることが実験により確認されている。
又、図6に示すような構成の複層ガラスは、その合わせガラスの側(窓の外側)に火災が発生し、合わせガラスの面が750℃の高温で一定の時間高温にさらされた場合には、板ガラス31,32はこの高温によりひび割れが発生するが、板ガラス31,32に接着されている透明の無機質系複合材33は高温によって軟化し溶解して白色に変色するが、少なくとも20分の間は板ガラス31,32の接着を確実に保持する能力を持っている。このため、合わせガラスの面が750℃の高温に20分間さらされた場合にも、ひび割れが発生した板ガラス31,32は20分間は脱落することがない。
【0013】
合わせガラスと厚板ガラス41との間の空間に封入されているアルゴンガスの断熱効果により、厚板ガラス41には合わせガラスの面の高温は遮断されるため、20分の間は厚板ガラス41にはひび割れも発生せず厚板ガラス41の側で20分間発火しないことが実験により確認されている。
又、厚板ガラス41の側(室内)に火災が発生し、厚板ガラス41の面が750℃以上の高温で一定の時間高温にさらされた場合には、厚板ガラス41はこの高温によりひび割れが発生し一定脱落時間後には脱落する。
厚板ガラス41が脱落するまでの間は合わせガラスと厚板ガラス41との間の空間に封入されているアルゴンガスの断熱効果により、合わせガラスには厚板ガラス41の面の高温は遮断されているが、厚板ガラス41が脱落すると、合わせガラスの面が750℃以上の高温にさらされ、板ガラス31,32はこの高温によりひび割れが発生し、板ガラス31,32に接着されている透明の無機質系複合材は高温によって軟化し溶解して白色に変色するが、少なくとも20分の間は板ガラス31,32の接着を確実に保持する能力を持っている。このため、厚板ガラス41の面が750℃以上の高温に20分間さらされた場合にも、合わせガラスの側で20分間発火しないことが実験により確認されている。
これまで、本発明の木材の枠を使用した防火サッシの実施形態について説明したが、本発明の適用はこの実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に適用することが可能である。
【0014】
本発明の木材を使用した防火サッシを、木材を唐松集成材で製作し、木材の枠と框の室外側にアルミ材の防水カバー取り付け、内側は木製そのままで、外側ガラスは厚さ3mmのフロートガラスを2枚合わせにし、その間に1mmの無機質系フィルムを挟み、これと内側の5mm厚ガラスと組み合わせ、2枚のガラスとの隙間12mmにアルゴンガスを充填した、幅1800mm,高さ2100mmの大きさの片引き窓防火サッシが、国土交通省より、平成16年8月30日付けで、国住指第1093号として、建築基準法第68条の26第1項の規定に基づき、同法第64条及び同法施行令第136条の2の3(20分間の準遮炎性能を有する防火設備)の規定に適合するものであることが認められ、認定番号 EC-0017として認定された。
本発明の木材を使用した防火サッシは、従来のサッシのように防火サッシの条件を満すために網入りガラスを使用する必要が無いので、透明のガラスを使用した開放感のある大きな防火サッシを製作することが可能である。又、サッシ枠体と窓框体に木材を使用することが出来るので、金属の冷たい印象を排し、さまざまな色やデザインのものを用いることができるので、サッシとその周りとの意匠の統一を図ることができ、防火サッシの意匠性を向上させることができる。
本発明の木材を使用した防火サッシは、一般木造住宅や共同住宅、ビル等の用途に幅広く使うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は建築産業やサッシの製造産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシの屋外側の概観図である。
【図2】本発明の木材の枠を使用した片引き窓サッシの屋内側の概観図を示した図である。
【図3】図1及び図2のA−A面の縦断面図である。
【図4】図1及び図2のB−B面の縦断面図である。
【図5】図1及び図2のC−C面の横断面図である。
【図6】本発明の木材の枠を使用した片引き窓防火サッシの窓ガラスの構造について説明するためのガラスの断面図を示したものである。
【符号の説明】
【0017】
10・・・建物開口部に装着されるサッシの窓枠体
11・・・上枠
12・・・下枠
13,14・・・縦枠
15・・・中央に設けたその方縦枠
21・・・上框
22・・・下框
23,24・・・縦框
25・・・窓框体20の固定金具
30・・・固定の窓ガラス
31,32,41・・・フロート板ガラス
33・・・板ガラス31,32に接着されている透明の無機質系複合材
40・・・窓ガラス
42,43・・・ガラスの間に一定の間隔を設けるための耐火性を有するスペーサ
51・・・上枠防水カバー
52・・・下枠防水カバー
53,54・・・縦枠防水カバー
55・・・方縦枠防水カバー
61,62,63,64・・・框体防水カバー
71,72・・・片引き戸レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ枠体と窓框体とに木材を使用し、
木材のサッシ枠体と窓框体の室外側にアルミ材の防水カバーを設け、
窓サッシのガラスに、2枚のフロートガラスの間に無機質系フィルムを挟んで接着した合わせガラスの外側ガラスと、厚ガラスの内側ガラスとを一定の間隔をあけて組み合わせた二重ガラスを装着し、
外側ガラスと、内側ガラスの2枚のガラスとの隙間にアルゴンガスを充填したことを特徴とする木材を使用した防火サッシ。
【請求項2】
窓を閉めた状態においては、窓框体の窓ガラスが、サッシ枠体に固定された窓ガラスと同一面上になるように、窓框体がサッシ枠体の縦枠の間に嵌まり込んだ状態で固定される片引き窓サッシにおいて、
木材のサッシ枠体と窓框体の室外側にアルミ材の防水カバーを設け、
窓サッシのガラスに、2枚のフロートガラスの間に無機質系フィルムを挟んで接着した合わせガラスの外側ガラスと、厚ガラスの内側ガラスとを一定の間隔をあけて組み合わせた二重ガラスを装着し、
外側ガラスと、内側ガラスの2枚のガラスとの隙間にアルゴンガスを充填したことを特徴とする木材の枠を使用した乙種防火防火サッシ。
【請求項3】
請求項1乃至2において、2枚のフロートガラスの厚さが少なくとも各3mm、
無機質系フィルムの厚さが少なくとも1mm、
内側ガラスの厚さが少なくとも5mm
外側ガラスと内側ガラスの間隙が少なくとも12mm
であることを特徴とする防火サッシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−169818(P2006−169818A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363694(P2004−363694)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(504461460)セイヤス ジャパン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】