説明

木材を利用した着香茶の製造方法及びそれによって製造された着香茶

本発明は、木材を利用して着香茶を製造する方法、及びそれによって製造された着香茶に関し、より詳細には、適切な着香時間及び温度に設定された着香方法を通じて、天然木材を利用した嗜好性と香味に優れた着香茶を製造することができる方法、及びそれによって製造された着香茶に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を利用して着香茶を製造する方法、及びそれによって製造された着香茶に関し、より詳細には、適切な着香時間及び温度に設定された着香方法を通じて天然木材を利用した嗜好性と香味に優れた着香茶の製造方法、及びそれによって製造された着香茶に関する。
【背景技術】
【0002】
昔から世界各地では、発酵及び熟成食品の嗜好性を増進させ、固有の香味を付与するための多い努力が進行されて来た。そのうち代表的なものがヨーロッパ等地の葡萄酒の醸造過程で多く使用されるカシワ(Quercus)を活用した発酵及び熟成過程である。これは、カシワ自体とカシワを直化加熱するトースティング(toasting)工程で発生する固有な香味で葡萄酒の風味を増す過程である。しかし、上記のように、木材を活用した天然着香及び熟成技術をお茶に適用した事例はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これより、本発明者らは、嗜好度に優れた木材を活用して嗜好性と香味に優れた着香茶を製造する技術を開発するために努力したところ、適切な着香時間及び温度に設定された着香方法を通じて嗜好性と香味に優れた着香茶を製造することができることを知見し、本発明を完成した。
【0004】
したがって、本発明の目的は、嗜好性と香味に優れた着香茶の製造方法、及びそれによって製造された着香茶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、密閉された空間内を天然木材の香りで飽和させる段階と;上記空間にお茶を位置させ、当該お茶に上記天然木材の香を着香させる段階と;を含む着香茶の製造方法、及びそれによって製造された着香茶を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、木材を利用した適切な着香及び熟成を通じて嗜好性と香味に優れた着香茶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヒノキ(韓国産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図2】レバノンスギ(中国産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図3】イブキ(中国産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図4】イブキ(米国産)9種類の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図5】スギ(中国産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図6】スギ(韓国済州産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図7】キリ(中国産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図8】カシワA(フランス産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図9】カシワB(フランス産)の木材容器が有する木固有の香りを5種類の項目で評価した結果を示すグラフである。
【図10】9種類の木材容器の香味嗜好度を調査した結果を示すグラフである。
【図11】着香温度による香味強度を示すグラフである。
【図12】着香時間による香味強度の変化を示すグラフである。
【図13】時間による香味嗜好度の変化を示すグラフである。
【図14】原料のお茶及び木材容器による嗜好度に対する調査結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施例による着香茶の製造方法は、密閉された空間内を天然木材の香で飽和させる段階と、上記空間にお茶を位置させて、当該お茶に上記天然木材の香を着香させる段階とを含む。上記飽和段階と着香段階は、同時に進行されることもでき、または順次に進行されることもできる。
【0009】
密閉された空間は、例えば、ステンレススチール容器によって形成されることもでき、天然木材よりなる容器(木材ケース)によって形成されることもできる。
【0010】
ステンレススチール容器の場合、天然木材よりなる断片をその内部に位置させて、容器内部を天然木材の香りで飽和させることができる。
【0011】
また、天然木材よりなる容器の場合、その容器自体で容器内部の空間を天然木材の香りで飽和させることもでき、或いは、容器内部にお茶と一緒に天然木材よりなる断片を位置させて、容器内部を天然木材の香りで飽和させることもできる。
【0012】
この際、ステンレススチール容器または天然木材容器は、容器内に飽和される天然木材の香りが外部に漏れることを防止するために、容器自体が密閉容器であるか、またはパラフィルムなどの密封材を利用して密封可能な容器とすることができる。
【0013】
また、木材容器または木材断片を構成する天然木材として、お茶の風味を高めることができる香りを有する木材ならどんな種類の木材でも使用することができ、例えば、ヒノキ、レバノンスギ、イブキ、スギ、キリ及びカシワよりなる群から選択された1種以上のものであることができる。
【0014】
ヒノキ(ヒノキ科、Chamaecyparis obtuse)は、高さ40m、直径2mに達し、枝は、水平に広がって円錐型の樹冠をなしている。樹皮は、さび色であり、繊維性であり、縦に薄く剥げる。葉は、対生であり、厚く、長さが1〜1.5mmで、鱗のように小さく、後面の気孔條線(葉が呼吸する部分で、通常、葉の後面に白い線で現われる)は、Y字形である。また、葉の表面に1個の腺があり、後面に白い点がある。実は、毬果で、丸く、直径10〜12mmで、紅茶色で、8個内外の実片で構成される。各実片に種子が2個ずつ入っている。種子は、長さ3mm程度で、2個の脂嚢があり、狭い羽がある。日本国特産種であり、材質が良いので、韓国では、南部地方の造林樹種として栽培する。
【0015】
レバノンスギ(マツ科、Cedrus libani Barrel)は、聖書に言及されているマツ科の植物であり、舊約聖書にレバノンスギに対する内容が多く示されている。レバノンの山々は、レバノンスギの主要山地であることが記録されている。レバノンスギは、たびたび力と光栄及び豪華を象徴する。
【0016】
イブキ(イブキ科、Juniperus chinensis)は、木の高さが約20mまで成長し、新たに芽生える枝は、緑色であり、3年生枝は、黒い茶色であり、7〜8年生から鱗のような柔らかい葉が出るが、若芽(萌芽)では、葉に鋭い針がついている。葉は、対生または互生であり、枝が見えない程度に密生する。木材を香として使用して来たので、香木(イブキ)と言う。深山地域、特に韓国鬱陵島で多く成長したが、大部分消え、観賞用によく植える。木材は、鉛筆を作るのに多く使用され、その他、彫刻材、家具材、装飾材などに使用する。韓国、日本国、中国及びモンゴルに分布する。
【0017】
スギ(スギ科、Cryptomeria japonica)は、年平均気温が12〜14℃、降雨量が3,000mm以上の谷でよく成長する。日本国特産種である。高さ40m、直径1〜2mに達する。樹皮は、赤みを帯びた茶色であり、縦に割れ、枝と葉が密生し、円錐形状の樹形になる。葉は、曲がった針形状であり、螺旋形状に配列され、枯れても落ちない。スギは、樹皮の色と割れる状態、樹形、枝の角度、葉の色及び形態と長さ、曲がる程度、生育地などによって様々な変異がある。園芸品種と造林用品種があり、樹齢が長いため、各種伝説が伝える種類も多い。用材樹で、老巨樹が多い。
【0018】
キリ(キリ科、Paulownia coreana)は、高さが15mに達し、葉は、対生であり、たまご形状の円形であるが、五角形に近く、葉先が鋭い。花は、5〜6月に咲いて、実は、殻果で、たまご形状であり、葉先が鋭く、毛がなく、長さ3cmで、10月に熟する。木材は、たんす、箱、楽器などを作り、韓国特産種で、平安南道・京畿道以南に分布する。
【0019】
カシワ(カシワ科、Quercus Sessilis Pedunculat)は、葉または常緑喬木であり、時には、潅木もある。カシワは、1つの属に属する植物の総称として使用されるが、時には、くぬぎを意味したりする。実であるどんぐりから澱粉を採取し、トットリムックを作って食べ、特にいのししのような獣の良い飼料になって来た。樹皮にタンニン含量が多いので、海辺では、魚網を染色するのに使用する。材木は、非常に堅くて、使用される所が多く、特に酒だるを作る材料として有名である。俗名のクエルクスとは、ケルト語の‘良い木材’という意味であり、韓国語のカシワもやはり本当の木という意味である。カシワの葉は、大きく、厚く、香りがあり、農村では、餠を蒸すときに使用されて来たが、日本国では、餠を包むのに使用している。あべまきからコルクを採取し、暖帯地域では、地中海産コルクカシワ(Q.suber)をコルクの経済的な生産資源で栽培する。
【0020】
本発明の実施例において使用されることができる天然木材としては、上述した例に限定されるものではなく、市販される天然木材を容易に選択して使用することができ、また、当業界においてよく知られた通常的な方法で直接獲得して使用することもできる。
【0021】
上述したような密閉された空間内には、着香のためのお茶が位置するようになる。お茶は、木材香の飽和段階から密閉された空間内に位置することもでき、飽和段階後に密閉された空間内に位置することもできる。
【0022】
本発明の一実施例において使用されることができるお茶の種類としては、市販されるどんなものでも使用されることができ、例えば、緑茶、ソンヒャン(Seonhyang)、ウーヒャン(Woonhyang)、鉄観音(テッカンノン)茶または武夷岩茶(ぶいがんちゃ)などの前発酵茶、アッサム(Assam)またはダージリン(Darjeeling)などの紅茶、及びタムヒャン(Damhyang)またはプーアル茶などの後発酵茶などであることができる。
【0023】
天然木材の香りを密閉された空間内で飽和されるようにする段階またはその香りをお茶に着香する段階は、お茶が優れた風味を有するように十分な香りを密閉された空間内に飽和させ、着香効率を高めるのに適した温度と時間で進行されることができ、例えば、約4〜50℃の温度で約7〜180日間進行されることができ、好ましくは、例えば、約15〜40℃の温度で約30〜180日間進行されることができる。
【0024】
着香後、香りを固定させ、調和な香味を得るために、追加の加熱処理を行うことができる。加熱処理は、例えば、容器で着香されたお茶を分離し、お茶専用ロースターに入れ、約30〜80℃で約5〜120分間進行することができる。
【0025】
以下、本発明の内容を実施例及び試験例によりさらに具体的に説明する。これらの実施例は、本発明の内容を理解するために提示されるものに過ぎず、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されるものではなく、当業界において通常的に周知された変形、置換及び挿入などを行うことができ、これに関するものも本発明の範囲に含まれる。
【0026】
<天然木材の準備>
ヒノキ、レバノンスギ、イブキ(中国産、米国産)、スギ(中国産、韓国済州産)、キリ、及びカシワA及びB(フランス産)で構成された9種類の木材は、市中の木材問屋、地域特産木材は、地域の木材加工所で特別注文し、内部表面積が2400、5400、9600及び15000cm2の正方形の木材ケースを製作して使用した。また、木材断片は、上述した木材ケースを製作する時に付随的に発生したものを使った。
【0027】
<原料お茶の準備>
本発明では、市中で販売される様々な種類のお茶を使用した。緑茶として、アモーレパシフィックで販売する雪緑茗茶セジャク(Sejak)製品を使用し、前発酵茶として、アモーレパシフィックで販売する雪緑茗茶Seonhyang、Woonhyang製品と、中国から輸入した鉄観音(テッカンノン)茶または武夷岩茶(ぶいがんちゃ)を使用し、紅茶として、インドで生産されたアッサム(Assam)またはダージリン(Darjeeling)紅茶を使用した。また、後発酵茶として、アモーレパシフィックで販売する雪緑茗茶Damhyangと中国普市で販売されるプーアル茶を使用した。
【0028】
このように用意したお茶は、50〜120℃で5〜60分間加熱処理し、異臭を除去した後、着香のための原料お茶として使用した。
【0029】
[実施例1]木材容器を利用した着香茶製造
内部表面積がそれぞれ2400、5400、9600及び15000cm2である正方形の木材容器に上述した各種原料お茶を入れた後、容器を密閉し、4〜50℃で7〜180日間放置し、熟成及び着香させた。天然木材による着香が終わった後、30〜80℃で5〜120分間加熱処理し、香りを固定させて、着香茶を製造した。
【0030】
[実施例2]木材の断片を利用した着香茶製造
内部表面積がそれぞれ2400、5400、9600及び15000cm2である正方形のステンレススチール容器に上述した各種原料お茶と木材断片とを入れた後、容器を密閉し、4〜50℃で7〜180日間放置し、熟成及び着香させた。天然木材による着香が終わった後、30〜80℃で5〜120分間加熱処理し、香りを固定させて、着香茶を製造した。
【0031】
[実施例3]木材容器と木材断片を利用した着香茶製造
内部表面積がそれぞれ2400、5400、9600及び15000cm2である正方形の木材容器に上述した各種原料お茶と木材断片を入れた後、容器を密閉し、4〜50℃で7〜180日間放置し、熟成及び着香させた。天然木材による着香が終わった後、30〜80℃で5〜120分間加熱処理し、香りを固定させて、着香茶を製造した。
【0032】
[試験例1]天然着香条件の設定
上記実施例1で製造した着香茶の製造工程において天然木材による天然着香条件を設定するために、10名の専門評価者で構成されたパネルを対象にして温度と時間条件別、及び原料お茶の種類別に天然着香茶の香味と嗜好度に対するパネル実験(Panel test)を行った。検査方法は、各パネルが天然着香茶別に与えられた項目に対して9点尺度で回答する方法を利用し、その結果は、次の通りである。評価点数が高いほど嗜好性と香味に対する満足度が大きいものである。
【0033】
<天然木材選定のための木材の香味嗜好度の調査>
天然着香に使用するための木材ケース9種類(ヒノキ、レバノンスギ、イブキ(中国産、米国産)、スギ(中国産、韓国済州産)、キリ及びカシワA及びB)に対して、木に対する香りを評価する代表的な5種類の項目、すなわち薫製の香り(Smoky)、アロマの香り(Aromatic)、木を削ったときの香り(Woody)、辛い香り(Spicy)及び金属の香り(Metalic)に対して9点尺度で評価し、その結果を図1〜図9に示した。
【0034】
図1〜図9の結果において、アロマの香りが高い実験群は、ヒノキ、レバノンスギ及び済州産スギであることが分かり、薫製の香りが高く評価された実験群は、オーク桶であることが分かった。
【0035】
また、上記9種類の木材ケースに対して総合的な嗜好度も一緒に評価し、その結果を図10に示した。図10の結果において、ヒノキ(韓国産)、レバノンスギ(中国産)、スギ(中国産)、スギ(韓国済州産)、カシワA(フランス産)及びカシワB(フランス産)が総合記号度7点以上であって、一般消費者に高い嗜好性の香りを有することが分かった。
【0036】
<温度別にみた木材容器香味の嗜好度パターンの調査>
各木材は、温度によって揮発される物質の比率が異なり、これにより、温度別に揮発される香味のパターンが異なるため、上記実験で消費者嗜好度が最も高いスギ(韓国済州産)ケースを利用してどんな温度で最も嗜好性の高い香りが揮発されるかを調査し、その結果を図11に示した。
【0037】
図11の結果から、スギ香りの強度は、温度が上がるほど持続的に増加してから、30℃を基点にしてさらに減少する傾向にあることが分かった。香りの嗜好度は、15〜40℃で最も高いことが分かった。一般的に嗜好度9点尺度において7点以上は、嗜好性を有するものと判断するので、約45℃までは、官能評価上、嗜好度に大きい影響を与えないものと判断される。
【0038】
<お茶原料/木材容器表面積の比率及び着香時間との相関関係>
上記の実験結果から、お茶原料/木材容器[スギ(韓国済州産)]の表面積の比率と着香時間を決定する実験は、25℃で進行した。木材の香り成分が揮発されて飛ばないように製作された密閉容器内に各種原料お茶をいっぱい入れ、原料お茶と木材容器の内部表面積の比率を異なるようにした。
【0039】
まず、原料お茶と木材容器の内部表面積の比率によって着香茶で感じられる香味の強度を調査し、その結果を表1及び図12に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
表1及び図12の結果において、原料お茶当たり接触した木材の表面積が広い実験群では、香味が早く着香され、約60日以後に飽和状態に到逹することが分かった。しかし、原料お茶当たり木材の表面積が狭い実験群では、持続的に香味の強度が強くなり、飽和されたときの強度は、原料お茶当たり木材容器の表面積が広いほど強い香りを有することが分かった。
【0042】
[試験例2]嗜好度の調査
上記試験例1の結果に基づいて消費者の嗜好度を9点尺度で評価して調査し、その結果を下記表2及び図13に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
表2及び図13の結果において、香味の強度とは別に独立したパターンの嗜好度変化が存在することが分かり、緑茶/木材容器の表面積の比率が1.17g/cm2である実験群は、7〜135日天然着香及び熟成したとき、消費者嗜好度7点以上を得ることができた。また、緑茶/木材容器の表面積の比率が1.75g/cm2である実験群の場合は、30〜180日、2.33g/cm2である実験群の場合は、50日以上、2.92g/cm2である実験群の場合は、90日以上の天然着香及び熟成の時間が必要であることが分かった。
【0045】
このような最適化方法を通じて様々な各々異なる香味特性を有するお茶原料を活用してスギ(韓国済州産)よりなる木材容器で天然着香させた天然着香茶の嗜好度を調査した結果、全体的に味と香が既存原料お茶と差別化され、嗜好度が上昇した天然着香茶を得ることができた。
【0046】
[試験例3]
スギ(韓国済州産)以外の他の木材についても、上記試験例2と同一の方法で最適化実験を行い、各種お茶原料別に製造した着香茶の嗜好度を分析した結果を下記表3及び図14に示した。
【0047】
【表3】

【0048】
表3及び図14の結果において、緑茶の代表的な実験群であるSejak緑茶は、天然着香によって嗜好度が有意的に上昇し、前発酵茶であるSeonhyangとWoonhyang、鉄観音(テッカンノン)茶または武夷岩茶(ぶいがんちゃ)は、ヒノキ及びスギによって嗜好度が大きく上昇することが分かった。また、完全発酵茶である紅茶は、ヒノキ、スギ及びカシワA、Bのすべてで嗜好度が大きく増加することが分かり、後発酵茶であるDamhyang及びプーアル茶は、すべての木材において嗜好度が上昇し、特にヒノキとスギにおいて嗜好度が最も大幅に上昇することが分かった。
【0049】
[試験例4]木材断片を使用した天然着香条件の設定
<木材断片の表面積の比率及び着香時間との相関関係>
上記試験例1の結果によってそれぞれ異なるサイズを有するステンレススチール容器に対して、お茶原料/木材断片[スギ(韓国済州産)]の表面積の比率と着香時間を決定する実験は、25℃で進行した。密閉された容器中で、各種原料お茶と木材断片をいっぱい入れ、原料投入したお茶の重さと、木材断片の表面積の比率を異なるようにした。
【0050】
まず、原料お茶と木材断片の表面積の比率によって着香茶で感じられる香味の強度を調査し、その結果を表4に示した。
【0051】
【表4】

【0052】
表4の結果において、原料お茶当たり接触した木材の表面積が広い実験群では、香味が早く着香され、約60日以後飽和状態に到逹することが分かった。しかし、原料お茶当たり木材の表面積が狭い実験群では、持続的に香味の強度が強くなり、飽和されたときの強度は、原料お茶当たり木材容器の表面積が広いほど強い香を有することが分かった。これは、木材容器を使用した着香と、木材断片を使用した着香法が非常に類似する結果であった。
【0053】
[試験例5]
<木材容器と木材断片の表面積の比率及び着香時間との相関関係>
上記試験例4の結果に基づいて消費者の嗜好度を9点尺度で評価して調査し、その結果を下記表5に示した。
【0054】
【表5】

【0055】
表5の結果において、原料お茶当たり接触した木材の表面積が広い実験群では、香味が早く着香され、約60日以後飽和状態に到逹することが分かった。しかし、原料お茶当たり木材の表面積が狭い実験群では、持続的に香味の強度が強くなり、飽和されたときの強度は、原料お茶当たり木材容器表面積が広いほど強い香りを有することが分かった。これは、試験例2と非常に類似する結果であった。
【0056】
[試験例6]
木材間の混合着香による嗜好度の上昇関係を調べるために、木材容器と混合した木材断片の材質を互いに異ならしめて、試験例2と同一の方法で最適化実験を行い、各種お茶原料別に製造した着香茶の嗜好度を分析した結果を下記表6に示した。
【0057】
【表6】

【0058】
表6の結果において、木材質を容器にするものと、断片にして投入するものは、有意的な差異を示さず、2つの木材質の混合着香で嗜好度を増加させることができることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された空間内を天然木材の香りで飽和させる段階と;上記空間にお茶を位置させて、当該お茶に上記天然木材の香りを着香させる段階と;を含む着香茶の製造方法。
【請求項2】
上記密閉された空間は、天然木材よりなる容器内に形成される、請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項3】
上記密閉された空間は、天然木材の断片をさらに含む、請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項4】
上記着香段階後に、加熱処理する段階をさらに含む、請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項5】
上記加熱処理段階は、30〜80℃の温度範囲で5〜120分間進行される、請求項4に記載の着香茶の製造方法。
【請求項6】
上記天然木材は、ヒノキ、レバノンスギ、イブキ、スギ、キリ及びカシワよりなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項7】
上記お茶は、緑茶、前発酵茶、紅茶及び後発酵茶よりなる群から選択された1種以上である、 請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項8】
上記飽和段階と上記着香段階は、同時にまたは順次に行う、請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項9】
上記飽和段階または着香段階は、4〜50℃の温度範囲で7〜180日間進行される、 請求項1に記載の着香茶の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法で製造された着香茶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

image rotate


【公表番号】特表2013−509873(P2013−509873A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537827(P2012−537827)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007879
【国際公開番号】WO2011/056049
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,Hangang−ro 2ga,Yongsan−gu,Seoul 140−777,Republic of Korea
【Fターム(参考)】