説明

木材乾燥室内の循環送風装置

【課題】 モータのシャフトと送風ファンのシャフトとを結ぶ連結杆の軸受部を、木材乾燥工程で気化除去される樹脂成分から保護することができる木材乾燥室内の循環送風装置を提供する。
【解決手段】 本発明の木材乾燥室内の循環送風装置は、木材乾燥室1内に設けた送風ファン2のシャフト4と木材乾燥室外に設置したモータ3のシャフト5とを結ぶ連結杆6を覆うハウジング7に、給気管8および排気管9をそれぞれ連結させて、ハウジング7内の空気循環を外部からコントロールすることにより、ハウジング7内に入り込んだ強制乾燥による木材から気化して放出された樹脂成分を、系外に排出し、あるいは進入することを阻止できるので、ハウジング7の室内側ベアリング10が損傷することもなくなるため、故障のない、長期にわたって安定した性能を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱、土台、ハリ、ケタ等の建築構造材および内装用の板材、並びに家具材の乾燥に使用される木材乾燥室内の循環送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造材として用いられる木材は、伐採後、十分乾燥したものを用いる必要があるが、乾燥期間を短縮するため、通常、木材乾燥室に木材を搬入し、木材乾燥室内雰囲気の温度・湿度・処理時間等を考慮して強制乾燥させている。
木材は、一般に、図3に示すように、台車30に積載されて木材乾燥室31に搬入後密閉され、おおよそ168〜700時間(7〜30日)の長時間にわたって高温下の雰囲気内で強制乾燥される。
その際、木材乾燥室31内は、台車30上に積み上げられた多数の木材34を、均一に乾燥させるために、木材乾燥室31内の上部に取り付けられた強力な送風ファン32で、木材乾燥室31内の空気を循環させている(特許文献1参照)。
【0003】
上記送風ファン32は、図3に示すような、モータ直結型のものを木材乾燥室内に設置すると、木材乾燥室内が高温多湿となる上に、強制乾燥によって木材34から気化して放出された樹脂成分が、モータ33の軸と軸受との隙間から軸受内部に入り込んで凝結固化しベアリングを傷付け、ひいてはモータ自体を損傷するという問題があった。
【0004】
そこで、図2に示すように、木材乾燥室21の内側に送風ファン22を、木材乾燥室21の外側にモータ23をそれぞれ配置し、モータ23のシャフト25と木材乾燥室21の内側に取付けた送風ファン22のシャフト24とを連結杆26で連結するとともに、連結杆26への樹脂成分の付着等を防ぐため、連結杆26を、木材乾燥室内に配置したハウジング27内に収容した構造に改良された。
【特許文献1】特公平4−68550号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造としたことによって、モータ23自体を損傷させることはなくなったものの、ハウジング27の送風ファン22側の軸受部に、前記樹脂成分が入り込んで凝結固化し室内側ベアリング20を損傷させるという問題が生じた。
【0006】
そこで、本発明の課題は、モータのシャフトと送風ファンのシャフトとを結ぶ連結杆の軸受部を、木材乾燥工程で気化除去される樹脂成分から保護することができる木材乾燥室内の循環送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の木材乾燥室内の循環送風装置は、木材乾燥室内の空気循環を図るための循環送風装置であって、木材乾燥室内に設けた送風ファンのシャフトと、木材乾燥室外に設置したモータのシャフトとを結ぶ連結杆を覆うハウジングに、給気管および排気管をそれぞれ連結させて、前記ハウジング内の空気循環を外部からコントロールすることを特徴とする。
本発明の木材乾燥室内の循環送風装置は、前記ハウジング内の雰囲気圧力を、木材乾燥室内の圧力よりも高く設定することが好ましく、また、前記ハウジング内に送給する空気の温度を、木材乾燥室内の温度より低く設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の木材乾燥室内の循環送風装置によれば、モータのシャフトと送風ファンのシャフトとを結ぶ連結杆をカバーするハウジング内に入り込んだ前記樹脂成分を、系外に排出し、あるいは進入することを阻止できるので、ハウジングの室内側ベアリングが損傷することもなくなるため、故障のない、長期にわたって安定した性能を発揮できる木材乾燥室内の循環送風装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本発明の木材乾燥室内に設置された循環送風装置を示す模式的な概略断面図である。図2は、木材乾燥室内に設置される循環送風装置の試行例を示す模式的な概略断面図であり、図3は、木材乾燥室の代表的な一例を示す概略縦断面図である。
【0010】
本発明の木材乾燥室内の循環送風装置は、図1に示すように、木材乾燥室1(図3の31に相当)の天面に設置された送風ファン2と、木材乾燥室1の外側に設置したモータ3と、前記送風ファン2のシャフト4とモータ3のシャフト5とを結ぶ連結杆6、およびこの連結杆6を覆うハウジング7とからなり、さらに、このハウジング7には、給気管8および排気管9がそれぞれ連結され、これらの給気管8および排気管9は、木材乾燥室の外側に配置された給排気循環装置(図示せず)に接続されて、この給排気循環装置によってハウジング7内の空気循環がコントロールできるようになっている。
【0011】
ハウジング7は、図1に示すように、その左右側面を連結杆6が貫通した箱体で、木材乾燥室1の内側面に取り付けられ、ハウジング7の左右側面部には、連結杆6を支持し回転を円滑にする室内側ベアリング10と屋外側ベアリング11を有する軸受部がそれぞれ設けられて、連結杆6はハウジング7内で、木材乾燥室1内の雰囲気からは、隔離され密閉された状態となっている。
【0012】
室内側ベアリング10は、木材乾燥室1内に充満する前記樹脂成分等の影響をできるだけ受けないようにするために、ハウジング7の左側面部に取付けられたカバー部材12で覆われており、このカバー材12の連結杆6の軸受け部にはシール材13が装着されて、カバー部材12内は密封性が保持できるようになっている。
【0013】
ハウジング7に連結する給気管8と排気管9は、ハウジング7内の空気循環を円滑にするため、ハウジング7内の対向面に、離間して配置するのがよく、離間して配置できれば、給気管8および排気管9は、ハウジング7の上下面、ないし側面のいずれの位置に連結するようにしてもよい。
【0014】
給気管8および排気管9を、円筒状に形成したハウジング7に対し、ハウジング7の内周接線方向に管口を向けて連結すると、ハウジング7内の空気循環が渦巻き状になるので、空気循環効率がより向上する。その際、円筒状ハウジング7の内周面にらせん状の溝を形成すると、空気循環効率がさらに向上する。
【0015】
ハウジング7には、給気管8から、木材乾燥室の外側に配置された給排気循環装置(図示せず)で、圧力・温度をコントロールされた空気が供給されるようになっており、このハウジング7内に供給された空気は、ハウジング7内を循環して、排気管9より木材乾燥室の外側に排出されて給排気循環装置に戻るようになっている。
給排気循環装置では、排気管9から送られてきた空気を、フィルター等を通過させて浄化し、所望の圧力・温度にコントロールさせて、再び給気管8へ送出する。
【0016】
このように、連結杆6を覆うハウジング7内の空気循環系を、木材乾燥室内の空気循環系から独立させ、木材乾燥室1の外部に配置させた給排気循環装置でコントロールできるようにすることにより、木材乾燥室内の高温多湿の雰囲気下で浮遊する樹脂成分が、たとえ、連結杆6とハウジング7との間隙よりハウジング7内部に入り込んだとしても、樹脂成分が凝結固化する前に、ハウジング7内の空気循環に乗って、前記樹脂成分が排気管9より外部にスムーズに排出されるので、樹脂成分が室内側ベアリング10に入って凝結固化し、室内側ベアリング10を損傷するということがなくなる。
【0017】
本発明の木材乾燥室内の循環送風装置において、前記ハウジング7内の雰囲気圧力を、木材乾燥室1内の圧力よりも高くなるように設定することも好ましい。
木材乾燥室1内よりもハウジング7内の雰囲気圧力が高いと、木材乾燥室1内を浮遊する樹脂成分等が、シール材13を通過してカバー部材12内に入り、さらに、室内側ベアリング10を介してハウジング7内に進入しようとしても、前記圧力差によって、前記樹脂成分等が室内側ベアリング10に入れず、ハウジング7内への進入が阻止される。
この場合の前記圧力差は、例えば、木材乾燥室内の雰囲気圧力が、約−0.02MPa〜約+0.02MPa(約−0.2kgf/cm2〜約+0.2kgf/cm2)の場合には、ハウジング7内の圧力は、約0.01MPa〜約0.05MPa(約0.1kgf/cm2〜約0.5kgf/cm2)が好適である。
【0018】
また、給気管8からハウジング7内に送入させる空気の温度を、木材乾燥室1内の温度より低く設定するのが好ましい。
これは、運転中、連結杆6は、約990rpm〜1800rpmで回転して、ベアリング10、11(軸受け)自体が発熱し、さらに木材乾燥室1内からの伝導熱も加わって軸受部が高温になるが、この部分を別途冷却しようとすると構造が複雑になりコスト高となり易い。そのため、このハウジング7内を循環する空気を木材乾燥室1内の温度より低く保つことにより、前記軸受部への冷却効果を持たせて軸受部の金属疲労を低減させ、ひいてはベアリング10、11(軸受け)の寿命を大幅に延ばす効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の木材乾燥室内の循環送風装置は、木材乾燥操作を長期に安定して行えるので、木材乾燥の技術分野に裨益するところ大である。また、木材乾燥の技術分野のみならず、高温蒸気を使用した湿球温度の安定した確実な制御を必要とするあらゆる分野の循環送風装置として使用できるので、本発明の技術思想を応用できる分野は広い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の木材乾燥室内に設置された循環送風装置を示す模式的な概略断面図である。
【図2】木材乾燥室内に設置される循環送風装置の試行例を示す模式的な概略断面図である。
【図3】木材乾燥室の代表的な一例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1、21、31 木材乾燥室
2、22、32 送風ファン
3、23、33 モータ
4、24 送風ファンのシャフト
5、25 モータのシャフト
6、26 連結杆
7、27 ハウジング
8 給気管
9 排気管
10、20 室内側ベアリング
11 屋外側ベアリング
12 カバー部材
13 シール材
20 ベアリング
30 台車
34 木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材乾燥室内の空気の循環を図るための循環送風装置であって、木材乾燥室内に設けた送風ファンのシャフトと木材乾燥室外に設置したモータのシャフトとを結ぶ連結杆を覆うハウジングに、給気管および排気管をそれぞれ連結させて、前記ハウジング内の空気循環を外部からコントロールすることを特徴とする木材乾燥室内の循環送風装置。
【請求項2】
前記ハウジング内の雰囲気圧力を木材乾燥室内の圧力よりも高く設定することを特徴とする請求項1に記載の木材乾燥室内の循環送風装置。
【請求項3】
前記ハウジング内に送給する空気の温度を、木材乾燥室内の温度より低く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の木材乾燥室内の循環送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−127322(P2007−127322A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319815(P2005−319815)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(597093698)株式会社新柴設備 (6)
【Fターム(参考)】