説明

木材処理剤としての長鎖第四級アンモニウム化合物

長鎖第四級アンモニウム化合物、および木材防腐活性剤またはそれらの混合物を含む組成物を開示する。長鎖第四級アンモニウム化合物は、炭素原子数16〜50を有し、1種または2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子と非置換または置換された少なくとも1つのアルキル部分を含む。処理された木材で、防腐剤活性成分の損失を減少させ、または木材の腐食に対する耐性を高めるのに有効な量の上記組成物を木材に含浸させることを含む木材処理の方法を開示する。処理された木材および木材製品は、処理された木材中での防腐剤活性成分の損失を減少させ、または木材の腐食に対する耐性を高めるのに有効な長鎖第四級アンモニウム化合物の処理レベルを含む上記組成物で含浸された木材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、少なくとも1種の炭化水素を含有する長鎖第四級アンモニウム化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長鎖第四級アンモニウム化合物は、種々の木材防腐剤ための添加物として使用可能であり、木材製品のある特性を高める。本用途の長鎖第四級アンモニウム化合物は、殺菌活性がほとんどまたは全くない。本木材防腐処理の2つの利点は:
1)処理された木材が、銅ベースおよび他の木材防腐剤系を含む水および土との接触に曝される場合、防腐剤の損失を減らすこと、
2)木材防腐剤系の生物学的性能を高めること、
である。
【0003】
第四級アンモニウム化合物は、殺生剤、界面活性剤、繊維製品の柔軟剤、帯電防止剤、およびヘアーコンディショナーとして広く使用される。木材防腐および木材保護の分野に関連して、第四級アンモニウム化合物の殺菌特性についての最初の報告の1つが、Dunn、1938(CC.Dunn、Proc.Soc.Exptl.Boil.Med.、37、661、1938)によりなされた。木材防腐剤として第四級アンモニウム化合物の使用についての報告は、1960年代に最初に表された。木材防腐剤として第四級アンモニウム化合物の有効性は、Butcherら(J.A.Butcher、A.F.Preston、およびJ.Drysdale、1977、For.Prod.J.27(7)、19;J.A.Butcher、およびJ.Drysdale、1977、Mat.Und Org.12(4)、271;J.A.Butcher、A.F.Preston、およびJ.Drysdale、1979、N.Z.J.For.Sci.、9(3)、348)で報告された。
【0004】
アルカリ性銅および第四級アンモニウム化合物を含有するACQ(商標)木材防腐剤は、北米(カナダ国特許第1、146、704号明細書、米国特許第4、929、454号明細書)でFindlayおよびRichardsonにより、並びにヨーロッパで(欧州特許第0089958号明細書、国際公開第82/03817号パンフレット) Sundmanにより特許を受けられている。Chemical Specialties Inc.、Charlotte NCは、欧州特許および国際特許出願から生じる特許権を保有する。ACQ(商標)は、北米における第四級アンモニウム−銅木材防腐剤で、Chemical Specialties Inc.、Charlotte NCに、独占的に許諾されたDomtar Inc.の登録商標である。最近になって、種々のカルボン酸アニオンを有する第四級アンモニウム化合物が、欧州特許第0906177号明細書に記載された。
【0005】
第四級アンモニウム化合物の殺菌活性は、それらのアルキル鎖の性質および長さに関係する。ヘキサデシル以上等のより長鎖アルキルが、そうした構造中にほとんどまたは全く殺菌活性を有しない一方で、特に、塩化ジデシルジメチルアンモニウムまたは短鎖ベンジル第四級アンモニウム等の比較的短鎖のアルキル第四級アルキルアンモニウムが、殺菌活性を提供することが見出された。最も有効で且つ木材防腐産業で普通に使用される第四級アンモニウム化合物は、アルキルベンジルジメチルアンモニウム化合物およびジデシルジメチルアンモニウム化合物であった。
【0006】
塩化ジ獣脂ジメチルアンモニウムおよび塩化ジ水素化獣脂ジメチルアンモニウム等の長鎖第四級アンモニウム化合物は、ほとんどまたは全く殺菌活性を有さず、そして繊維製品の柔軟剤、帯電防止剤およびヘアーコンディショナーとして大部分が使用される。最近の特許(欧州特許第1114704号明細書)は、長鎖第四級アンモニウム化合物が、木材処理ために殺菌性第四級アンモニウム化合物と組み合わせて使用される場合の、防水加工特性を記載する。ティッシュペーパーための第四級アンモニウム化合物およびシリコーンバインダーの使用も、欧州特許第0799350号明細書に記載される。
【0007】
第四級アンモニウム化合物を含有する溶媒のない木材防腐剤組成物が、国際公開第09939886号パンフレットに記載された。第四級アンモニウム化合物は、接着剤のための溶解媒介物として働くといわれた。欧州特許第0293556号明細書に、水溶性第四級アンモニウム化合物を含有する木材保護剤が開示される。欧州特許第0293246号明細書は、殺菌活性第四級アンモニウム化合物を含有する組成物を記載する。アミンオキシドが、木材防腐剤組成物(国際公開第0071311号パンフレット)中で使用された。アミンオキシドは、防水特性を有したことを示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属ベース組成物を使用した商業的木材防腐剤処理の供給業者が直面する課題は、処理された木材の使用中の金属成分が潜在的に失われることである。金属の損失で、化学的処理の生物学的有効性を減少させ、そして失った金属を周囲環境内に入らせると予想される。最近の米国特許(米国特許第6、843、837B2号明細書)は、あるビニルベースのポリマーをアミン銅調合物に加えた場合、銅浸出を減少させることができると請求の範囲に記載した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの形態は、長鎖第四級アンモニウム化合物および木材防腐活性剤を含む組成物である。長鎖第四級アンモニウム化合物は、式(1)で表される。
【化1】

【0010】
式中、RおよびRは、炭素原子数1〜4を有し、同一であるかまたは異なるアルキル部分であり、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されており;
は、炭素原子数16〜50を有し、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されている長鎖アルキル部分であり;
は、炭素原子数1〜50を有し、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換のアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル部分であり;
Xは、アニオンであり;そして
nは、1〜3の数である。
【0011】
本発明別の形態は、腐食に対する該木材の耐性を高めるのに有効な量で、上記の組成物を木材または木材製品に含浸させることを含む木材処理の方法である。
【0012】
本発明者らは、以下の高められた処理特性の1つまたは両者を与えるための非殺菌性長鎖第四級アンモニウム化合物と防腐剤系との有効な組み合わせを見出した:
1)銅ベースおよび他の木材防腐剤系を含む防腐剤で処理された木材が、水および土との接触に曝された場合に、防腐剤の損失の削減すること。
2)銅ベースの木材防腐剤系の生物学的性能を高めること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は1種または2種以上の態様に関連して記載される一方、当然のことながら、本発明はこれらの態様に限られない。対照的に、本発明は、請求項の精神および範囲内に含まれるであろう全ての代替、改変、および均等物を含む。
【0014】
検討された木材防腐剤組成物は、上記に記載した式を有する長鎖第四級アンモニウム化合物、並びに金属および/または他の殺菌性成分を含む木材防腐活性剤を含む。
【0015】
第四級アンモニウム化合物は、塩化物等の一価のアニオンXと、以下のように表すこともできる:
【化2】

【0016】
式(2)中、RおよびRは、炭素1〜4を有する置換または非置換の炭化水素鎖である。RおよびRは炭素1〜50を有する炭化水素鎖である。但しRが16炭素未満の炭化水素鎖である場合、Rは、少なくとも16炭素を有する炭化水素鎖であることが好ましい。
【0017】
例えば、式(1)または(2)のいずれかによれば、RおよびRは、メチル、エチル、またはプロピルもしくはブチルの任意の異性体、1種または2種以上のN、O、Sまたはハロゲン原子で非置換または置換であることができる。Rは、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、またはドコシル、獣脂、水素化獣脂、パーム、菜種、ラード、および他の脂肪アルキル原料で、1種または2種以上のN、O、Sまたはハロゲン原子で非置換または置換されていることができる。そうした脂肪酸原料の例は、Kirk−Othmer Encyclpedia of Chemical Technology、4th Ed.、Vol.10、p.267(John Wiley&Sons1993)中の表に列挙された脂肪または油のいずれかから誘導された脂肪酸を含む。その表は、参照により本明細書中に取り込む。Rは、Rで記載されたアルキル部分、またはデシルのいずれかであることができる。好適なアリール部分Rの一例はベンジルである。
【0018】
アニオンXの幾つかの例は、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物);炭酸、重炭酸、水酸化物、ホウ酸、リン酸、または硫酸等の無機オキソアニオン;またはカルボン酸、スルホン酸、メチルサルフェート、またはホスホン酸等の有機アニオンである。nは、1〜3に平均値を有する数である。nの値は、周知技術であり、アニオンの選択で決まる。
【0019】
この発明の1つの特に検討された第四級アンモニウム化合物は、その低コストおよび商業的入手性によるジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウム化合物である。この種の商用材料は、時々「DTDMAC」または「2HT」と呼ばれる。これらは登録商標ではない。ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウム化合物の長鎖アルキル部分RおよびRは、主としてオレイル(C1838)のアルキル鎖長の分配(distribution)を有する。RおよびRの鎖長は、本明細書中では、それぞれの重量平均鎖長と規定される。個々のアルキル部分RおよびRの比率は、炭素原子数16未満であることができるが、第四級アンモニウム化合物の全てのRまたはR部分の炭素の重量平均数が16以上である場合、それは、本目的ための長鎖アルキル部分である。炭素原子数16以上の平均を有する長鎖脂肪酸原料の例は、 Kirk−Othmer Encyclpedia of Chemical Technology、4th Ed.、Vol.10、p.267(John Wiley & Sons 1993)の表に記載された多くの材料である。その表は、参照により本明細書中に取り込む。
【0020】
特に検討されたアニオンは、塩化物、炭酸、重炭酸、酢酸、水酸化物、硫酸メチルまたはカルボン酸を含む。
【0021】
DTDMACは、Akzo Nobelから商標名Arquad(商標)2HTで販売されている。他の好適な商材は:
Arquad 2T、
Arquad M2HTB、
Arquad HTL8、
Arquad M2HTB、
Ethoquad 18/25、
Ethoquad 0/12、
Noxamium S 11 M、
Querton 442、
Tomah Q−18−15、
Ammonyx 856、
Ammonyx KP、
Ammonyx 4、
Aliquat H226、
Aliquat 264、およびこれらの任意の2種または3種以上の組み合わせである。
【0022】
2HT等の長鎖第四級アンモニウム化合物は、周囲温度で水に対する低い溶解度を有する。周囲温度または周囲温度より低い温度で、2HTおよび水混合物は、ゲルまたはペーストとして存在する。2HT/水二成分系の粘度は、アニオンを変更することによって調整できる。40〜100℃に加熱された場合、2HTは、水または水性防腐剤溶液中で透明な溶液として存在する。高温下での水または水性防腐剤溶液への可溶性にもかかわらず、2HTは、木材の構造中で充分に固定されるようである。2HTは、物理的吸収、沈殿、化学的、および物理化学的相互作用を通じて木材構造の内側に固定されると考えられている。
【0023】
本組成物は、木材防腐剤をさらに含む。木材防腐剤は、例えば、有機または無機殺菌剤、殺虫剤、または他の殺生物組成物であることができる。
【0024】
本木材防腐剤は、一般的に錯体、化合物、またはカチオンの形で金属成分を含んでもよい。本明細書で検討されたいくつかの特定の金属成分は、銅、亜鉛、クロミウム、銀、コバルト、アルミニウム、鉄、鉛、スズ、カドミウム、ニッケル、ヒ素、およびホウ素である。それらは、一般的に化学的には、半金属性と見なされるにもかかわらず、ヒ素およびホウ素は、本明細書中では本目的ために"金属性"として規定した。本発明における機能性があるにもかかわらず、状態が制約されることからヒ素はより好ましくない金属である。これらの中で、銅は木材防腐剤中に最も普通に使用される金属であり、そして本明細書中では特に検討された。
【0025】
本調合は、(これらに限られないが) American Wood−Preservers Association (AWPA)基準P5−04およびP8−04中に規定されたもの等の任意の金属成分系の木材防腐剤、および他の木材防腐剤系と連携するように検討された。
【0026】
本明細書中で検討された代表的な防腐剤は、とりわけ:
アルカリ性四級アンモニウム銅(quat)、例えば、
・アルカリ性四級アンモニウム銅タイプC (関連した商業上の例は、Chemical Specialties Inc.、Charlotte、 NCから入手可能なACQ(商標)−タイプC木材防腐剤である)、
四級アンモニウムアミン銅、例えば、
・四級アンモニウムアミン銅タイプD (関連した商業上の例は、Chemical Specialties Inc.、Charlotte、 NCから入手可能なACQ(商標)−タイプD木材防腐剤である)、
アンモニア性ヒ酸銅(KCK)、
アンモニア性カルボン酸銅、
アンモニア性クエン酸銅(CC)、
アンモニア性四級アンモニウム銅、例えば、
・アンモニア性四級アンモニウム銅タイプA(関連した商業上の例は、Chemical Specialties Inc.、Charlotte、 NCから入手可能なACQ(商標)−タイプA木材防腐剤である)、
・アンモニア性四級アンモニウム銅タイプB(関連した商業上の例は、Chemical Specialties Inc.、Charlotte、 NCから入手可能なACQ(商標)−タイプB木材防腐剤)、
アンモニア性ヒ酸銅亜鉛(ACZA)、
酸クロム酸銅(acid copper chromate ACC)、
ヒ酸クロム酸化銅(CCA)、例えば、
・ヒ酸クロム酸化銅タイプA、
・ヒ酸クロム酸化銅タイプB、
・ヒ酸クロム酸化銅タイプC、
塩化クロム酸亜鉛(CZC)、
ビス(ジメチルジチオカルバメート)銅(CDDC)、
HDO銅(ビス−(N−シクロヘキシルジアゼニウムジオキシ)−銅(CXタイプA)
アゾール銅、例えば、
・ホウ素アゾール銅タイプA (CBA−A、アゾール銅タイプ AまたはCA−Aとしても公知である)、
・アゾール銅タイプB(CA−B)、
無機ホウ素、例えば、
・ホウ酸酸化物(SBX)、
・B(ホウ砂)、
・ホウ酸亜鉛(ZB)、
ナフテン酸銅、
オキシン銅、
塩化ジメチルドデシルアンモニウム(DDAC)および塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム(BAC)等のアルキルアンモニウム化合物(AAC)、
4、5ジクロロ−2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOI)、
3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、
クロロサロニル(CTL)、
テブコナゾール(TEB)、
プロピコナゾール(PPZ)、
ヘキサコナゾール、シプロコナゾールおよびディナコナゾール、
クロルピリホス(CPF)、
イミダクロプリド、
ペンタクロロフェノール、
およびこれらの2種または3種以上の任意の組み合わせ、
である。
【0027】
長鎖第四級アンモニウム成分および活性防腐剤成分または成分の組み合わせの任意の好適な比率を、使用可能である。本発明を知る当業者は、所与の用途ために、それぞれの成分の相対的な量を容易に最適化できる。AWPAによって特定された完全な防腐剤の処方における、活性第四級アンモニウム化合物のいくつかの特に検討された重量比率は、組成物の0.1〜10重量%、任意選択的に0.3〜5重量%、任意選択的に約0.8重量%である。木材防腐剤系の好適な比率は、検討された用途およびそうした用途ために指定された化学的残留に基づく濃度に基づくことが好ましい。
【0028】
(木材防腐活性剤も含む)本組成物に照らして、腐食を減少させる木材中の長鎖第四級アンモニウム成分の"有効量"は、試験環境での長鎖第四級アンモニウム成分がない同じ比率の木材防腐活性剤を含有する木材の腐食に比較した、(すなわち少なくとも試験環境中で測定可能な程度まで木材を腐食させるのに充分長い)適切な期間での、木材の腐食を減少させる長鎖第四級アンモニウム成分の最低量として規定される。例えば、例3に関連して以下に論じる表4は、定められた状況下での9ヵ月テストは、測定可能な腐食木材に充分な長さより長く、従って適切なテスト期間であることを示す。表4の9ヵ月テストにおいて、0.8%2HT長鎖第四級アンモニウム成分をACQ(商標)木材防腐活性剤調合物に加えると、(100が腐食なしで0が腐食による破壊である)テスト結果を98.8〜100に上げることによって腐食を減少させた。0.8%2HTは、従って長鎖第四級アンモニウム成分の有効量である。(このテスト結果は、いくつが2HTの最小有効比率であるかを定量化しないが、2HTのより小さい比率は、また有効であることができる。)
【0029】
本組成物に照らして処理された木材中での防腐剤活性成分の損失を減少させる木材中の長鎖第四級アンモニウム成分の"有効量"は、長鎖第四級アンモニウム成分の不存在下で、同じ比率の木材防腐活性剤を含有する木材からの活性成分の損失に比較して、防腐剤活性成分の損失を減少させる長鎖第四級アンモニウム成分の最小量として規定される。
【0030】
着色剤、撥水剤、難燃剤など等の他の添加物も、木材防腐剤組成物に加えてもよい。
【0031】
本木材防腐剤調合物は、技術分野で公知の処理方法のいずれかを使用して木材に適用できる。これらの従来の処理方法は、真空圧力処理、2重真空処理、ディップ処理、スプレー処理(本譲受人に譲り受けされた米国特許第6、569、540号明細書を参照のこと)およびインライン追加処理である。木材防腐剤系も、一連の処理(2つのステップ処理工程)でおよび/または前または後処理ステップとして、単一の組成物として適用可能である。処理溶液を加熱すると、2HT等のいくらかの長鎖第四級アンモニウム化合物を溶液中にさらに溶解させ、望ましい。本明細書中で規定されたような"溶液"は、真溶液、および懸濁液も含む。
【0032】
防腐剤は充分な量で基材に通常適用され、所望の防腐剤終点を生成し、従って実際量は大きく変化できる。一般的に、有効な防腐剤の処理溶液は、約0.1% 〜約15重量%の金属塩、有機化合物等の防腐剤活性成分を含むであろう。所望の防腐剤の残留レベルは、最終的な適用が曝される生物学的危険度および防腐剤化学品の有効度に、同様に依存するであろう。適用の方法、地理的な場所、木材の種など等の他の因子も、必要とされる化学的残留を決定する役割を果たす。
【0033】
しかし、木材の立方フィート(pcf)(0.3〜112Kg/m)当たり、防腐剤活性成分の約0.01〜7lbsで、残留を、維持することが一般的に勧められる。あるいは、この範囲は、約0.01〜約5pcf(0.3〜80Kg/ m)であろう。あるいは、この範囲は、約0.01〜約0.6pcf(0.3〜9.6Kg/ m)であろう。あるいは、この範囲は、約0.01〜約2.5pcf(0.3〜40Kg/ m)、あるいは約0.01〜約0.4pcf(0.3〜6.4Kg/m)であろう。
【0034】
この発明は、ランバー、ティンバーおよび他の普通の商品等の固体の木材製品に適用可能である。また、処理は、ベニヤ板、配向性ストランドボード(OSB)、パーチクルボード、ファイバーボード、および他の木材製品等の工業木材製品に使用可能である。
【実施例】
【0035】
例1
例として2HTを使用した長鎖第四級アンモニウム化合物の水との接触時の、木材防腐剤系で処理された木材表面からの防腐剤の損失における効果を示す。89x39x305mm寸法のサザンイエロー松板を、異なる濃度の2HTを有するかまたは有さないACQ(商標)C2(モノエタノールアミン銅錯体を含有するACQ(商標)木材防腐剤溶液の成分)で処理した。適切な乾燥の後、板を全雨量が20インチ(508mm)に等しい、10日の期間の人工雨に曝した。各板から流れ落ちた水を別々に集め、そして銅濃度をICPで分析した。損失した銅を、1インチの降雨当たり木の材表面の平方センチメートル当たりの銅のマイクログラム(μg/cm/インチ)、または処理された木材中の全銅の充填パーセンテージとして表した。結果を表1並びに図1および2に示す。
表1
【表1】

【0036】
図1のプロットでは、下(1、最小の銅損失)〜上(6、最大の銅損失)を、以下のように大体それらの長さに沿って並べた:
1 ACQ−C2/2HT、1.7/5.0kg/m
2 ACQ−C2/2HT、2.7/5.0kg/m
3 ACQ−C2/2HT、4.3/5.0kg/m
4 ACQ−C2、1.7kg/m
5 ACQ−C2、2.7kg/m
6 ACQ−C2、4.3kg/m
【0037】
データ、特にプロット1に対する4、2に対する5、および3に対する6は、雨1インチあたりの銅の損失が、長鎖第四級アンモニウム化合物、この場合は2HTの存在によってはっきりと減少したことを示す。データは、初期の銅処理レベルより高いレベルで失われるという予想された結果も示す。
【0038】
図2は、10日の期間にわたる20インチの人工雨後の、期間にわたって失われた全銅として表された、同じテストの結果を示す。左の(1)から右の(6)までの棒グラフの結果は次のようである:
1 ACQ−C2、1.7kg/m
2 ACQ−C2、2.7kg/m
3 ACQ−C2、4.3kg/m
4 ACQ−C2/2HT、1.7/5.0kg/m
5 ACQ−C2/2HT、2.7/5.0kg/m
6 ACQ−C2/2HT、4.3/5.0kg/m
図2のデータを表2に示す。
表2
【表2】

【0039】
さらに、図2のデータ、特に棒グラフ1に対する4、2に対する5、および3に対する6は、全損失銅のパーセンテージが長鎖第四級アンモニウム化合物、この場合は2HTの存在により、75%超減少したことを示す。データは、より高いレベルで銅を処理すすると、比例する銅損失より小さい結果となったことも示す。
【0040】
例2
加速温室床土腐食テスト(AWPA基準テスト方法E14)は、2HTが、殺生剤の浸出、この場合は銅、および殺菌性第四級アンモニウム化合物を、はっきりと減少させることを示す。土中接触テストで10年曝露後の活性防腐剤成分で選択された柱を分析した。2HTは、ACQ(商標)木材防腐剤の銅および第四級アンモニウム成分の両方の浸出を減少させることができることを示した。柱の土との接触部分では、ACQ(商標)/2HT木材防腐剤で処理した柱からの銅損失は、ACQ(商標)木材防腐剤単独で処理した柱より33%低い。土表面より上(土との非接触部分)では、銅損失は2HT(図3)の存在により50%超減少した。図3のデータを表3に示す。
表3
【表3】

【0041】
防腐剤の損失を減らすと、処理された木材製品のより長い耐用年数をもたらし、そして防腐剤処理された木材製品の貯蔵および使用の間、潜在的な環境的な恩恵を提供する。
【0042】
例3
上記と同じ加速温室床土腐食テスト(AWPA基準テスト方法E14)は、2HTが、銅ベースの木材防腐剤系、この場合はACQ(商標)木材防腐剤の有効性も高めることができることも示した。この例では、0.8%2HTを追加すると、約10年の野外曝露後にテストされる全ての3つの残留レベルでACQ(商標)木材防腐剤の性能を改善する。結果を表4に示す。
表4.サザン松ミニ柱* (Harrisburg NC)の加速床土腐食テスト
【表4】

【0043】
100の腐食評価は、腐食がないことを意味し、そして0の評価は腐食による破壊を意味する。他の因子が役割を果たせるにもかかわらず、防腐剤の枯渇を2HTによって減らすことは、観察された防腐剤の有効性を高める部分的な原因になれると考えられている。
【0044】
例4
2HTの防腐剤の有効性を高める特性は、標準土ブロック腐食テスト(AWPA基準テスト方法E−10)でも示される。図4に、従来技術によって、36ACQ(商標)木材防腐剤で処理されたサザンイエロー松ブロックを、Postia placentaに曝した後の重量損失を示す。垂直軸は、木材ブロック(負の数は重量増加を示す)の重量損失%であり、そして水平軸は、重量防腐剤/重量木材基準で表された木材ブロック中のACQ(商標)木材防腐剤の残留である。
【0045】
図5は、(本発明によって)36ACQ(商標)/2HTで処理されたサザンイエロー松ブロックをPostia placentaに曝した後の重量損失を示し、図4に外観が類似する。Postia placentaに対するACQ(商標)木材防腐剤の毒性しきい値はこのテスト(図4)では0.7〜0.8%と推定される。ACQ(商標)/2HT木材防腐剤の同じ毒性しきい値は、0.3〜0.4% (図5)と推定される。これらの結果は、処理溶液中で0.8%の2HTは、木材防腐の調査で使用される典型的な銅耐性菌であるテスト菌Postia placentaへのACQ(商標)木材防腐剤の毒性をほぼ倍にできることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、一連の人工雨の間保存された木材サンプルからの銅損失の減少における、長鎖第四級アンモニウム化合物、2HTの効果を説明する例1のデータを示す。
【図2】図2は、10回の降雨による銅の損失を合計して、全銅の充填パーセンテージとして表した例1のデータを示す。
【図3】図3は、処理された5mmの薄い木材の柱と土との10年接触後の、銅の損失における2HTの効果を示す例3のデータを表す。
【図4】図4は、従来技術によって、36ACQ(商標)木材防腐剤で処理されたサザンイエロー松ブロックの、例4中に記載されたPostia placentaに曝露後の重量損失を示す。
【図5】図5は、図4に外観上類似するが、銅木材防腐剤および2HTを含有する組成物の性能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.次式を有する長鎖第四級アンモニウム化合物と、
【化1】

(式中、RおよびRは、炭素原子数1〜4を有し、同一であるかまたは異なるアルキル部分であり、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されており;
は、炭素原子数16〜50を有し、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されている長鎖アルキル部分であり;
は、炭素原子数1〜50を有し、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されているアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル部分であり;
Xは、アニオンであり;そして
nは、1〜3の数である);
B.木材防腐活性剤と、
を含む組成物。
【請求項2】
該木材防腐活性剤が、金属成分系の木材防腐剤を含む請求項1の組成物。
【請求項3】
該木材防腐活性剤が、
塩化ジメチルドデシルアンモニウム(DDAC)、
塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム(BAC)、
4、5−ジクロロ−2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOI)、
3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、
クロロサロニル(CTL)、
テブコナゾール(TEB)、
プロピコナゾール(PPZ)、
ヘキサコナゾール、
シプロコナゾール、
ディナコナゾール、
クロルピリホス(CPF)、
イミダクロプリド、
ペンタクロロフェノール、
またはこれら2種もしくは3種以上の組み合わせ、
を含む請求項1の組成物。
【請求項4】
該アニオンが、ハロゲン化物、無機オキソアニオン、有機アニオン、またはそれらの組み合わせを含む請求項1の組成物。
【請求項5】
該アニオンが、塩化物、炭酸、重炭酸、水酸化物またはそれらの組み合わせを含む請求項1の組成物。
【請求項6】
およびRが、メチルである請求項1の組成物。
【請求項7】
が、炭素原子数16〜22を有するアルキル部分である請求項1の組成物。
【請求項8】
が、獣脂アルキル部分である請求項1の組成物。
【請求項9】
が、獣脂アルキル部分である請求項8の組成物。
【請求項10】
が、水素化獣脂アルキル部分である請求項8の組成物。
【請求項11】
該長鎖第四級アンモニウム化合物が、塩化ジメチルジ(水素化獣脂)アンモニウムを含む、請求項1の組成物。
【請求項12】
該金属成分が、銅を含む請求項1の組成物。
【請求項13】
該組成物が、銅、亜鉛、クロミウム、銀、コバルト、アルミニウム、鉄、鉛、スズ、カドミウム、ニッケルまたはこれらの2種もしくは3種以上の組み合わせを含む請求項1の組成物。
【請求項14】
該木材防腐活性剤が、モノエタノールアミン銅錯体溶液を含む請求項1の組成物。
【請求項15】
該組成物が、アミン銅−長鎖第四級アンモニウム木材防腐剤を含む請求項1の組成物。
【請求項16】
該組成物が、アルカリ性銅−長鎖第四級アンモニウム木材防腐剤を含む請求項1の組成物。
【請求項17】
該長鎖第四級アンモニウム化合物が、0.1〜10重量%の濃度で存在する請求項1の組成物。
【請求項18】
該長鎖第四級アンモニウム化合物が、0.3〜5重量%の濃度で存在する請求項1の組成物。
【請求項19】
該長鎖第四級アンモニウム化合物が、0.8重量%で存在する請求項1の組成物。
【請求項20】
該活性剤が、該組成物と接触した木材を保存するために、有効な濃度で存在する請求項1の組成物。
【請求項21】
該活性剤が、0.02〜10重量%の濃度で存在する請求項1の組成物。
【請求項22】
該活性剤が、0.02〜5重量%の濃度で存在する請求項1の組成物。
【請求項23】
該活性剤が、0.02〜2重量%の濃度で存在する請求項1の組成物。
【請求項24】
該組成物が、殺菌性第四級アンモニウム化合物をさらに含む請求項1の組成物。
【請求項25】
該殺菌性第四級アンモニウム化合物が次式
【化2】

(式中、RおよびRは、炭素原子数1〜3を有し、同一であるかまたは異なるアルキル部分であり、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されており;
は、炭素原子数8〜14の重量平均数を有する、非置換または1種もしくは2種以上のN、O、S、またはハロゲン原子で置換されている、短鎖または中鎖の、飽和またはモノ、ジ、もしくはポリ不飽和アルキル部分であり;
が、炭素原子数で平均8〜12を有するアルキル基、アリール基、アリール置換低級アルキル基を有し、但しRが炭素原子数平均12超を有する場合、Rは、アリール基、アリール置換アルキル基、またはこれらの組み合わせであるという条件で、該低級アルキル基は、炭素原子数1〜3、またはこれらの組み合わせを有する、
Xは、アニオンであり;そして
nは、1〜3の間に平均値を有する数である。)
である請求項24の組成物。
【請求項26】
該殺菌性第四級アンモニウム化合物が、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、炭酸ジデシルジメチルアンモニウム、重炭酸ジデシルジメチルアンモニウム、またはこれらの2種もしくは3種以上の組み合わせを含む請求項25の組成物。
【請求項27】
該殺菌性第四級アンモニウム化合物が、炭酸ジデシルジメチルアンモニウム、重炭酸ジデシルジメチルアンモニウム、またはこれらの組み合わせを含む請求項26の組成物。
【請求項28】
該木材の腐食に対する耐性を高めるのに有効な量で、請求項1の組成物を木材に含浸させることを含む木材処理の方法。
【請求項29】
該防腐剤系中の該活性成分の損失に対する耐性を高めるのに有効な該長鎖第四級アンモニウム化合物の処理レベルを含む請求項1の組成物で含浸された木材を含む、処理された木材。
【請求項30】
腐食に対する該木材の耐性を高めるのに有効な該長鎖第四級アンモニウム化合物の処理レベルを含む、請求項1の組成物で含浸された木材を含む処理された木材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−540412(P2008−540412A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510066(P2008−510066)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016134
【国際公開番号】WO2006/118980
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507361963)バイアンス,リミティド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】