説明

木構造作成装置および方法ならびにプログラム

【課題】医用画像データから、所定の構造物に対応する木構造を精度よく作成する。
【解決手段】医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を起始部に対応する根ノードN0を含む複数のノードNiと複数のエッジEによって定義した木構造の候補として抽出し、抽出した木構造の候補の各ノードNについて、所定の構造物が根ノードから分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて各ノードNiと根ノードN0との関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、木構造の定義を再評価して木構造を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データから検出した特定の構造物を木構造として作成する木構造作成装置および方法ならびにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓・肺などの臓器において患部を切除する手術を行う際には、例えば肝臓の場合、肝臓のX線CT画像から血管や肝臓実質、腫瘍部分を抽出し、抽出された血管の芯線の位置や血管径等に基づいて、抽出された腫瘍がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって腫瘍に栄養を供給する血管を特定し、その血管の支配領域を切除すべき部分として適切に決定することが求められる。肝臓の切除手術においては、腫瘍に栄養を送っている門脈の部分と、その門脈の部分によって支配される、がん細胞などの注意すべき物質が送られている可能性のある領域を、肝機能を維持できる範囲で適切に切除するためである。このため、術前にどこを切除部位とすべきか綿密にシミュレートすることが重要であり、このシミュレートのために肺や肝臓を走行する血管の中心経路を精度よく抽出することが必要とされている。
【0003】
ここで、CT等で得られた3次元医用画像から気管支等の線状構造を木構造として抽出する画像認識技術として、ヘッセ行列を用いた手法が提案されている。具体的には、まず、3次元医用画像に対して多重解像度変換を行った後、各解像度の画像に対してヘッセ行列の固有値解析を行い、線状構造要素を抽出する。この線状構造要素は、固有値解析によって得られる3つの固有値のうち1つだけが0に近いという特徴を有する。次に、各解像度の画像における解析結果を統合することによって、3次元医用画像中の様々なサイズの線状構造要素(血管)を抽出する。そして、最小全域木アルゴリズム等を用いて、抽出された各線状構造要素を連結することにより、3次元医用画像中の管状構造を表す木構造のデータが得られる。なお、最小全域木アルゴリズムによる線状構造要素の連結の際には、各線状構造要素の位置関係や、上記0に近い固有値に対応する固有ベクトルで表される、各線状構造要素の主軸方向に基づいたコスト関数が用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−220742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、肝臓の門脈と肝静脈のように、枝分かれ回数が多く、各血管の枝同士が近い位置を絡み合うように走行している構造物では、特許文献1と同様の手法により門脈などの血管を抽出しようとすると、別の血管である肝静脈の枝を門脈の枝として誤って抽出してしまうことがある。
【0006】
門脈の枝や肺血管の枝は、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる点で、他の血管とは性質が異なる。本発明においては、この性質を利用して、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる血管を従来方法よりも効率よく且つ正確に抽出する木構造作成装置および方法ならびにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における木構造作成装置は、医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出する木構造候補抽出手段と、前記抽出した木構造の候補の各ノードについて、前記所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、前記木構造の定義を再評価して木構造を作成する木構造作成手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明における木構造作成方法は、医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出し、前記抽出した木構造の候補の各ノードについて、前記所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、前記木構造の定義を再評価して木構造を作成することを特徴とするものである。
【0009】
本発明における木構造作成プログラムは、コンピュータを、医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出する木構造候補抽出手段と、前記抽出した木構造の候補の各ノードについて、前記所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、前記木構造の定義を再評価して木構造を作成する木構造作成手段として機能させることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、所定の構造物とは、ノード(節点)とそれを結ぶエッジ(辺)とにより根つき木構造として形状モデル化可能なオブジェクトであるとともに、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物であれば何でもよい。例えば、複数の所定の構造物は、肺または肝臓の血管であってもよく、さらに、肺における肺動脈、肺静脈、肝臓における門脈、冠動脈、肝静脈などが考えられる。
【0011】
また、医用画像データとは、たとえばCT、MR、超音波装置、PET―CT、SPECT、4D-CT、OCT、X線撮影装置(CR、DR)により撮像された医用画像データであってもよいし、たとえばボリュームデータ等の3次元画像データであってもよい。
【0012】
また、所定の構造物を木構造の候補として抽出する方法には、所定の構造物を木構造として抽出できるものであれば周知のいかなる方法も適用でき、例えば、本発明の木構造作成装置が、画像データから所定の構造物の画像的特徴を有する領域を検出し、検出された領域中を細線化して得られた細線を分岐点および所定の距離などにより分割することにより抽出してもよい。
【0013】
「木構造を作成する」とは、それぞれのノードごとに、各ノード間の接続の強さを表す指標値をコストとして算出することにより、各ノード間の接続の強さが強くなるように各ノードを接続できるものであればいかなる木構造作成方法を適用してもよい。例えば、最小全域木法や最短路木法などのスパニング木生成アルゴリズムを適用することが考えられる。
【0014】
上記本発明の木構造作成装置における前記コスト関数は、所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするものであれば、いかなるものであってもよい。例えば、前記根ノードと各ノードとを結ぶ線分と、前記各ノードと該ノードの前記離れる方向に隣接するノード間のエッジとのなす角度に基づいて前記角度が小さい程前記各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであることが好ましい。また、上記本発明の木構造作成装置における前記コスト関数は、前記根ノードと各ノードとを結ぶ線分の長さと、前記各ノードと該ノードの前記離れる方向に隣接するノード間のエッジの長さとの差に基づいて前記長さの差が小さい程前記各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであることが好ましい。
【0015】
また、起始部は、任意の方法により特定したものであってよく、起始部に基づいて周知の方法により起始部に対応する根ノードを特定してよい。例えば、表示された画像上でマウス等の入力装置により起始部を指定してもよく、起始部が既知である所定の構造物を表す複数の教師データを機械学習することにより、前記起始部を検出する起始部検出手段をさらに備え、かかる起始部検出手段により検出してもよい。なお、教師データを機械学習して根ノードを抽出する周知の種々の方法を用いることができ、例えば、アダブースト(Adaboost)法により教師データにおいて既知である起始部の特徴量に基づいて起始部を検出することが考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の木構造作成装置および方法ならびにプログラムによれば、医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造を抽出し、抽出した木構造の各ノードについて、所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするため、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を利用して木構造の定義を再評価して木構造を作成することにより、効率よく且つ正確に木構造を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における木構造作成装置の機能ブロック図
【図2】構造物として検出された肝臓の血管領域の木構造候補抽出処理を説明する図
【図3】本実施形態における各ノード間のコストの算出方法を説明する図
【図4】抽出された肝臓の門脈と肝静脈を表す図
【図5】第2の実施形態における木構造作成装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の木構造作成装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態となる木構造作成装置1の概略構成図である。なお、図1のような木構造作成装置1の構成は、補助記憶装置に読み込まれた木構造作成プログラムをコンピュータ上で実行することにより実現される。このとき、この木構造作成プログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。図1の木構造作成装置1は、肝臓における門脈等の構造物を表す画像データから門脈を表す木構造を作成するものであって、構造物領域検出手段11、木構造候補抽出手段12、木構造作成手段13と表示制御手段14とを備えている。また、本実施形態における木構造作成プログラムがインストールされたコンピュータは、木構造作成装置1として機能する本体と、ディスプレイからなる表示装置3とマウスやキーボード等の入力装置4とメモリやハードディスク等から構成される記憶手段2を備えている。
【0019】
構造物領域検出手段11は、画像データにおいて所定の構造物の一部を構成するか否かを判断することにより候補領域Rを検出するものである。なお、画像データ7は、データ記憶手段2に記憶されたたとえば撮影装置もしくは放射線検出装置により撮像された2次元の画像もしくは複数の2次元画像から生成された3次元のボリュームデータからなっている。図2は、所定の構造物領域である血管を、血管の候補領域Rとして抽出し、抽出された血管領域に基づいてグラフ化して木構造の候補を抽出する様子を示す模式図である。
【0020】
ここで、一例として、所定の構造物が肝臓における門脈であり、ボリュームデータから門脈の候補領域Rを検出する場合について説明する。
【0021】
まず、構造物領域検出手段11は、図2(i)に示すように、ボリュームデータ7を構成するボクセルデータの値に基づいて、門脈の芯線を構成する複数の候補点Sp(p=1〜n:nは候補点の抽出数)の位置を算出する。なお、ここでは、かかる位置の算出に先立って門脈を表す画素であることが既知であるボクセルデータの値を統計等により取得し、そのボクセルデータの値により門脈らしい画素を候補点Spとして判断する。
【0022】
そして、構造物領域検出手段11は、図2(ii)に示すように、候補点を拡張する。さらに、図2(iii)に示すように、拡張された候補点Spの門脈を表す画素値を含む所定の範囲の画素値を有する画像データを、門脈領域であると判断し候補領域Rとして抽出する。
【0023】
なお、構造物領域検出手段11は、本実施形態に限られず、候補領域Rcを抽出可能な周知の種々の方法を適用してよい。例えば、候補点周辺のボクセルデータについて門脈らしさを表す特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいてそのボクセルデータが門脈領域を表すものであるか否かを判別してもよく、かかる場合、特徴量に基づく判別は、マシンラーニングにより予め取得された評価関数に基づいて行なうことが考えられる。あるいは、構造物領域検出手段11は特開2010−200925号もしくは特許文献1に開示された手法やその他公知の技術により候補領域を検出してもよい。
【0024】
次に、木構造候補抽出手段12は、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物(門脈)を起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出する。本実施形態では、まず、木構造候補抽出手段12は、図2(iii)に示す構造物領域検出手段11が検出した構造物領域Rを取得し、図2(iv)に示すように、取得した構造物領域Rを周知の方法により細線化し、図2(v)に示すように、細線化処理された線を分岐点において分割する。そして、分岐点および端点を複数のノードNi(i=1〜m:mは候補点の抽出数)として定義するとともに、分割された線分を複数のエッジEとして定義して木構造の候補を抽出する。なお、細線化処理された線を分岐点だけでなく、所定の間隔などの所定の条件で分割してもよい。細線化処理された線のうち、ゆるやかな湾曲形状をなす部分を、湾曲に沿って適宜複数の線分に分割できるようにするためである。
【0025】
木構造作成手段13は、抽出した木構造の候補の各ノードNi(i=1〜m:mは候補点の抽出数)について、各ノード間の接続されやすさを重み付けすることにより木構造の定義を再評価して木構造Mを作成する。図3を用いて木構造作成手段13により各ノードN間のコストを決定する方法の原理を説明する。図3は、上述の木構造候補抽出処理により抽出された門脈をあらわす木構造の候補を表した図である。
【0026】
ここで、本発明者は、肝臓の門脈などの所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的な特徴を有することに着目した。そして、所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて各ノードと根ノードとの関係を評価することにより各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、木構造の定義を再評価して好適に木構造を作成可能であることを見いだした。
【0027】
本実施形態では、図3に示すように、上記幾何学的特徴を、所定の構造物を木構造として表した木構造においては各ノードについて、根ノードNoと各ノードNiとを結ぶ線分と、各ノードNiと該ノードの離れる方向に隣接するノードNi+1間のエッジEとのなす角度θが小さいという特徴としてさらに捉え、コスト関数を定義した。
【0028】
さらに詳細には、上記角度θを下記式(1)のように内積によって判断し、この式(1)を用いて角度θが小さい程各ノードNiとノードNi+1が接続されやすくなるよう重み付けを行うことにより、上記幾何学的な特徴を木構造の作成に反映した。
【数1】

【0029】
本実施形態では、上記観点に基づいて、角度θが小さい程各ノードNiとノードNi+1が接続されやすくなるように、式(1)をコスト関数fとして定義する。そして、コスト関数fにより、N個のノードについてコストを個々に算出する。なお、本実施形態では、マウス等の入力装置をマニュアル操作することにより指定された起始部の位置を門脈の起始部に対応する根ノードN0として入力する。
【0030】
そして、木構造作成手段13は、上記算出された各コストに基づいて各ノードを再接続してmaxΣfとなるように最小全域木法により木構造を作成する。各ノードのコストを評価するコスト関数に基づいて木構造作成する周知の種々の方法を用いることができ、例えば、周知の最小全域木法や最短路木法などのスパニング木生成アルゴリズムにより、maxΣfとなるように、最適経路を決定し、木構造Mを作成することができる。
【0031】
図4は、上記処理により作成された木構造Mに基づいて抽出された門脈M1と、同様に別途作成された木構造に基づいて抽出された肝静脈M2を表す図である。図4に示すように、表示制御手段14は、ディスプレイ3に、木構造作成手段13により作成された木構造Mに基づいて周知の方法により門脈M1を表示させる。また、本実施形態では、肺静脈についても門脈同様に木構造作成処理を行い、その結果得られた肝静脈M2をディスプレイ3に表示させる。
【0032】
上記第1の実施の形態によれば、肝臓の門脈と肝静脈のように、枝分かれ回数が多く、各血管の枝同士が近い位置を絡み合うように走行している構造物においても、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を利用して木構造の定義を再評価して木構造を作成するため、効率よく且つ正確に木構造を作成することができる。
【0033】
また、上記起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を根ノードと各ノードを結ぶ線分と、各根ノードと根ノードから分岐を繰り返しながら離れる方向に隣接するノードとの内積により規定することにより、簡易かつ好適に上記特徴を各ノードの接続されやすさに重み付けして木構造を作成することができる。
【0034】
また、本実施形態の応用例として、式(1)に替えて、所定の構造物を木構造として表した木構造においては各接続されるべき候補点と、その候補点との端点と根ノードとを結ぶ線分との相対的な角度が小さいという特徴を表すいかなる評価方法を用いてもよい。
【0035】
また、本実施形態に限られず、本発明の木構造作成装置におけるコスト関数は、所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて各ノードと根ノードとの関係を評価することにより各ノード間の接続されやすさを重み付けするものであれば、いかなるものであってもよい。例えば、コスト関数は、式(2)に示すように、根ノードと各ノードとを結ぶ線分の長さと、各ノードとそのノードの根ノードから分岐を繰り返しながら離れる方向に隣接するノード間のエッジの長さとの差に基づいて長さの差が小さい程各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであってもよい。
【数2】

【0036】
上記根ノードと各ノードとを結ぶ線分の長さと、ノードとそのノードの根ノードから分岐を繰り返しながら離れる方向に隣接するノード間のエッジの長さとの差に基づいて、長さの差が小さい程各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行う場合には、簡易かつ好適に上記特徴を各ノードの接続されやすさとして重み付けして木構造を作成することができる。
【0037】
また、上記実施形態に限定されず、コスト関数fに、各ノード同士の距離が近いほど接続強度が大きくなるようにさらに重み付けを行ってもよく、さらなる周知の重み付け方法を任意に組み合わせてもよい。
【0038】
また、第2の実施形態として、図5に示すように、木構造作成装置1は起始部が既知である門脈を表す複数の教師データを機械学習することにより、門脈の起始部を検出する起始部検出手段15をさらに備え、かかる起始部検出手段15により検出された起始部を取得し、取得した起始部に対応する根ノードを、周知の方法により特定して上記木構造作成処理を行ってもよい。第2の実施形態では、アダブースト(Adaboost)法により教師データにおいて既知である起始部の特徴量に基づいて起始部を検出し、画像データの座標系における起始部の座標値を取得する。そして、起始部の座標値に基づいて根ノードを特定する。かかる場合には、起始部の入力のためのマニュアル操作を省略することができるため、より効率よく木構造の作成を行うことができる。また、アダブースト(Adaboost)法により起始部検出を行った場合には、所定の構造物から好適に起始部を検出することができる。なお、第2の実施形態に限定されず、本発明に起始部を抽出する周知の種々の方法を適用可能である。
【0039】
また、ここでは所定の構造物として門脈を基に説明したが、所定の構造物は点とそれを結ぶ候補点とにより木構造として形状モデル化可能なオブジェクトであるとともに1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴を有するものであれば何でもよい。例えば、所定の構造物は、肺または肝臓の血管であってよく、さらには、肺動脈、肺静脈、肝臓における門脈、肝動脈、肝静脈があげられる。
【符号の説明】
【0040】
1 木構造作成装置
7 画像データ
11 構造物領域検出手段
12 木構造候補抽出手段
13 木構造作成手段
14 表示制御手段
15 起始部検出手段
Sp 候補点
根ノード
N ノード
E エッジ
f コスト関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出する木構造候補抽出手段と、
前記抽出した木構造の候補の各ノードについて、前記所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、前記木構造の定義を再評価して木構造を作成する木構造作成手段とを備えたことを特徴とする木構造作成装置。
【請求項2】
前記コスト関数は、前記根ノードと各ノードとを結ぶ線分と、前記各ノードと該ノードの前記離れる方向に隣接するノード間のエッジとのなす角度に基づいて前記角度が小さい程前記各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであることを特徴とする請求項1記載の木構造作成装置。
【請求項3】
前記コスト関数は、前記根ノードと各ノードとを結ぶ線分の長さと、前記各ノードと該ノードの前記離れる方向に隣接するノード間のエッジの長さとの差に基づいて前記長さの差が小さい程前記各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであることを特徴とする請求項1記載の木構造作成装置。
【請求項4】
前記起始部が既知である木構造を表す複数の教師データを機械学習することにより、前記起始部を検出する起始部検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の木構造作成装置。
【請求項5】
前記所定の構造物は、肺の血管であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の木構造作成装置。
【請求項6】
前記所定の構造物は、肝臓の血管であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の木構造作成装置。
【請求項7】
医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出し、
前記抽出した木構造の候補の各ノードについて、前記所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、前記木構造の定義を再評価して木構造を作成することを特徴とする木構造作成方法。
【請求項8】
医用画像データから、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる所定の構造物を前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出する木構造候補抽出手段と、
前記抽出した木構造の候補の各ノードについて、前記所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて前記各ノードと前記根ノードとの関係を評価することにより前記各ノード間の接続されやすさを重み付けするコスト関数を用いて、前記木構造の定義を再評価して木構造を作成する木構造作成手段とを備えたことを特徴とする木構造作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223338(P2012−223338A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92940(P2011−92940)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】