説明

木構造抽出装置および方法ならびにプログラム

【課題】それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、第1および第2の構造物に対応する木構造を精度よく構築する。
【解決手段】第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、各ノードごとに、各ノードに接続可能な複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから各ノードを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データから検出した特定の構造物を木構造として構築する木構造抽出装置および方法ならびにプログラムに関するものである。特に、近接して位置する複数の特定の構造物、例えば肝臓の門脈と肝静脈のように互いの血管の枝同士が近い位置を絡み合うように走行している構造物に対して構造物ごとに個々に木構造を構築する木構造抽出装置および方法ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓・肺などの臓器において患部を切除する手術を行う際には、例えば肝臓の場合、肝臓のX線CT画像から血管や肝臓実質、腫瘍部分を抽出し、抽出された血管の芯線の位置や血管径等に基づいて、抽出された腫瘍がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって腫瘍に栄養を供給する血管を特定し、その血管の支配領域を切除すべき部分として適切に決定することが求められる。肝臓の切除手術においては、腫瘍に栄養を送っている門脈の部分と、その門脈の部分によって支配される、がん細胞などの注意すべき物質が送られている可能性のある領域を、肝機能を維持できる範囲で適切に切除するためである。このため、術前にどこを切除部位とすべきか綿密にシミュレートすることが重要であり、このシミュレートのために肺や肝臓を走行する血管の中心経路を精度よく抽出することが必要とされている。
【0003】
ここで、CT等で得られた3次元医用画像から気管支等の線状構造を抽出する画像認識技術として、ヘッセ行列を用いた手法が提案されている。具体的には、まず、3次元医用画像に対して多重解像度変換を行った後、各解像度の画像に対してヘッセ行列の固有値解析を行い、線状構造要素を抽出する。この線状構造要素は、固有値解析によって得られる3つの固有値のうち1つだけが0に近いという特徴を有する。次に、各解像度の画像における解析結果を統合することによって、3次元医用画像中の様々なサイズの線状構造要素(血管)を抽出する。そして、最小全域木アルゴリズム等を用いて、抽出された各線状構造要素を連結することにより、3次元医用画像中の管状構造を表す木構造のデータが得られる。なお、最小全域木アルゴリズムによる線状構造要素の連結の際には、各線状構造要素の位置関係や、上記0に近い固有値に対応する固有ベクトルで表される、各線状構造要素の主軸方向に基づいたコスト関数が用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−220742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、肝臓の門脈と肝静脈のように、枝分かれ回数が多く、各血管の枝同士が近い位置を絡み合うように走行している構造物では、特許文献1と同様の手法により門脈などの血管を抽出しようとすると、別の血管である肝静脈の枝を門脈の枝として誤って抽出してしまうことがある。
【0006】
門脈の枝や肺血管の枝は、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる点で、他の血管とは性質が異なる。本発明においては、この性質を利用して、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる複数の血管を従来方法よりも効率よく且つ正確に抽出する木構造抽出装置および方法ならびにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による木構造抽出装置は、それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、前記第1および第2の線状構造物をそれぞれ前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと前記各ノード間を互いに結ぶ複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造として抽出する木構造抽出装置であって、前記第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、前記各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、前記第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記各ノードを接続する木構造作成手段を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明による木構造抽出方法は、それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、前記第1および第2の線状構造物をそれぞれ前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと前記各ノード間を互いに結ぶ複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造として抽出する木構造抽出方法であって、前記第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、前記各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、前記第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記各ノードを接続することを特徴とするものである。
【0009】
本発明による木構造抽出プログラムは、それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、前記第1および第2の線状構造物をそれぞれ前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと前記各ノード間を互いに結ぶ複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造として抽出する木構造抽出プログラムであって、コンピュータを、前記第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、前記各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、前記第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記各ノードを接続する木構造作成手段として機能させることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、第1および第2の線状構造物とは、ノード(節点)とそれを結ぶエッジ(辺)とにより根つき木構造として形状モデル化可能なオブジェクトであるとともに、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物であれば何でもよい。例えば、第1および第2の線状構造物は、肺または肝臓の血管であってよく、さらに第2の線状構造物は1つの線状構造物であってもよく、複数の線状構造物であってもよい。例えば、肺における肺動脈、肺静脈、肝臓における門脈、冠動脈、肝静脈などが考えられる。
【0011】
また、医用画像データとは、たとえばCT、MR、超音波装置、PET―CT、SPECT、4D-CT、OCT、X線撮影装置(CR、DR)により撮像された医用画像データであってもよいし、たとえばボリュームデータ等の3次元画像データであってもよい。
【0012】
本発明において、「木構造を作成する」ために、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれからそれぞれのノードごとに、各ノード間の接続の強さを表す指標値をコストとして算出することにより、各ノード間の接続の強さが強くなるように各ノードを接続できるいかなるスパニング木生成アルゴリズムを適用してもよい。例えば、複数の根からそれぞれ各ノードの走査を行って複数の木構造を作成可能なスパニング木生成アルゴリズムの例としてプリム法を適用することが考えられる。
【0013】
なお、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから各ノードを接続して木構造を作成するとは、従来の方法では、第1(または第2の)根ノードを根として、第1(または第2の)木構造のみについて接続可能な各ノード間のコストを比較して接続を確定することに対し、第1および第2の木構造の両方の根ノードを根として、第1の木構造を構成する各ノードに接続可能なノードついて算出された各コストおよび第2の木構造を構成する各ノードに接続可能なノードについて算出された各コストのうち、最も接続されやすいノードの接続を確定することを意味する。
【0014】
本発明において前記コスト関数は、前記各ノードごとに、該各ノードに前記第1または第2の根ノード側から接続された根ノード側エッジとは異なる該各ノードに接続可能な複数のエッジ間のなす角が大きいほど、前記根ノード側エッジが接続されにくくなるようにさらにコストを重み付けするものであることが好適である。
【0015】
また、起始部は、任意の方法により特定したものであってよく、起始部に基づいて周知の方法により起始部に対応する根ノードを特定してよい。例えば、表示された画像上でマウス等の入力装置により起始部を指定してもよく、起始部が既知である所定の構造物を表す複数の教師データを機械学習することにより、前記起始部を検出する起始部検出手段をさらに備え、かかる起始部検出手段により検出してもよい。なお、教師データを機械学習して根ノードを抽出する周知の種々の方法を用いることができ、例えば、アダブースト(Adaboost)法により教師データにおいて既知である起始部の特徴量に基づいて起始部を検出することが考えられる。
【0016】
上記木構造抽出装置において、第2の根ノードを任意の方法により特定したものであってよい、例えば、マウス等の入力装置によるユーザのマニュアル操作により表示画面上で第2の構造物の起始部を指定し、かかる指定された座標に基づいてその座標値に対応するノードを第2の根ノードとして特定してもよく、第2の根ノードを種々の方法により自動的に抽出して特定してもよい。例えば、前記医用画像データから、前記第1の構造物を前記第1の根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した仮木構造として抽出し、前記抽出した仮木構造において、前記各ノードについて、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという前記第1の構造物の性質に反して前記第1の根ノードに近づく向きに延びる前記エッジに接続されるノードを、前記第2の木構造を構成するノードの候補として検出する第2木構造ノード候補検出手段と、前記検出された第2の木構造を構成するノードの候補に基づいて、前記第2の根ノードを検出する根ノード検出手段とをさらに備えることが好ましい。
【0017】
上記の前記第2木構造ノード候補検出手段は、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす前記角度を、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとの内積により規定するものであることが好ましい。
【0018】
また、上記の第2の根ノード検出に際して、前記第1および第2の構造物の各起始部が互いに近接して位置するものである場合には、前記根ノード検出手段は、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、前記第2の木構造を構成するノードの候補から、前記第1の構造物に対応する根ノードに向かう方向に位置するノードを順に検索することにより前記第2の根ノードを検出するものであってもよい。
【0019】
また、上記根ノード検出手段は、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす前記角度を、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとの内積により規定するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の木構造抽出装置および方法ならびにプログラムによれば、第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから各ノードを接続して木構造を作成するため、それぞれの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を利用して木構造の各ノード間の接続しやすさを再評価して木構造を作成することにより、第1および第2の構造物が互いに近接した部分においても誤って互いのノードが接続されることを抑制し、効率よく且つ正確に第1および第2の木構造を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態における木構造抽出装置の機能ブロック図
【図2】第1の実施形態における肝臓の門脈および肝静脈の木構造候補抽出処理を説明する図
【図3A】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その1)
【図3B】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その2)
【図3C】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その3)
【図3D】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その4)
【図3E】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その5)
【図3F】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その6)
【図3G】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その7)
【図3H】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その8)
【図3I】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その9)
【図3J】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その10)
【図3K】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その11)
【図3L】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その12)
【図3M】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その13)
【図3N】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その14)
【図3O】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その15)
【図3P】第1の実施形態における第1および第2の木構造の作成方法を説明する図(その16)
【図4】第1の実施形態における木構造作成手段の各ノード間のコスト算出方法を説明する図(誤接続された根ノード側エッジに対するコスト算出の例)
【図5】第1の実施形態における木構造作成手段の各ノード間のコスト算出方法を説明する図(正しく接続されるべき根ノード側エッジに対するコスト算出の例)
【図6】抽出された第1および第2の木構造に基づいて表示された肝臓の門脈と肝静脈を表すイメージ図
【図7】第2の実施形態における木構造抽出装置の機能ブロック図
【図8A】第2の実施形態における第2の構造物を構成するノードの候補を検出する方法を説明する図(その1)
【図8B】第2の実施形態における第2の構造物を構成するノードの候補を検出する方法を説明する図(その2)
【図9】第2の実施形態における第2の根ノード検出方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の木構造抽出装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態となる木構造抽出装置1の概略構成図である。なお、図1のような木構造抽出装置1の構成は、補助記憶装置に読み込まれた木構造抽出プログラムをコンピュータ上で実行することにより実現される。このとき、この木構造抽出プログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。図1の木構造抽出装置1は、肝臓における門脈および肺静脈等の線状構造物を表す画像データから門脈(第1の線状構造物)および肺静脈(第2の線状構造物)を表す木構造をそれぞれ作成するものであって、構造物領域検出手段11、木構造候補抽出手段12、木構造作成手段13と表示制御手段14とを備えている。また、本実施形態における木構造抽出プログラムがインストールされたコンピュータは、木構造抽出装置1として機能する本体と、ディスプレイからなる表示装置3とマウスやキーボード等の入力装置4とメモリやハードディスク等から構成される記憶手段2を備えている。
【0023】
構造物領域検出手段11は、画像データにおいて門脈または肝静脈の一部を構成するか否かを判断することにより候補領域Rを検出するものである。なお、画像データ7は、データ記憶手段2に記憶されたたとえば撮影装置もしくは放射線検出装置により撮像された2次元の画像もしくは複数の2次元画像から生成された3次元のボリュームデータからなっている。図2は、門脈または肝静脈を表す領域である血管を、血管の候補領域Rとして抽出し、抽出された血管領域に基づいてグラフ化して木構造の候補を抽出する様子を示す模式図である。
【0024】
ここで、一例として、肝臓における門脈(第1の構造物)および肝静脈(第2の構造物)を例に、ボリュームデータから門脈および肝静脈の候補領域Rを検出する場合について説明する。
【0025】
まず、構造物領域検出手段11は、図2(i)に示すように、ボリュームデータ7を構成するボクセルデータの値に基づいて、門脈の芯線を構成する複数の候補点Sp(p=1〜n:nは候補点の抽出数)の位置を算出する。なお、ここでは、かかる位置の算出に先立って門脈を表す画素であることが既知であるボクセルデータの値を統計等により取得し、そのボクセルデータの値により門脈または肝静脈らしい画素を候補点Spとして判断する。
【0026】
そして、構造物領域検出手段11は、図2(ii)に示すように、候補点を拡張する。さらに、図2(iii)に示すように、拡張された候補点Spの門脈または肝静脈を表す画素値を含む所定の範囲の画素値を有する画像データを、門脈領域または肝静脈領域であると判断し候補領域Rとして抽出する。
【0027】
なお、構造物領域検出手段11は、本実施形態に限られず、候補領域Rcを抽出可能な周知の種々の方法を適用してよい。例えば、候補点周辺のボクセルデータについて門脈らしさ(または肝静脈らしさ)を表す特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいてそのボクセルデータが門脈領域(または肝静脈領域)を表すものであるか否かを判別してもよく、かかる場合、特徴量に基づく判別は、マシンラーニングにより予め取得された評価関数に基づいて行なうことが考えられる。あるいは、構造物領域検出手段11は特開2010−200925号もしくは特許文献1に開示された手法やその他公知の技術により候補領域を検出してもよい。
【0028】
次に、木構造候補抽出手段12は、門脈と肝静脈をそれぞれの起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造の候補として抽出する。本実施形態では、まず、木構造候補抽出手段12は、図2(iii)に示す構造物領域検出手段11が検出した構造物領域Rを取得し、図2(iv)に示すように、取得した構造物領域Rを周知の方法により細線化し、図2(v)に示すように、細線化処理された線を分岐点において分割する。そして、分岐点および端点を複数のノードとして定義するとともに、分割された線分を複数のエッジとして定義して門脈および肝静脈をそれぞれ表す木構造の候補を抽出する。なお、細線化処理された線を分岐点だけでなく、所定の間隔などの所定の条件で分割してもよい。細線化処理された線のうち、ゆるやかな湾曲形状をなす部分を、湾曲に沿って適宜複数の線分に分割できるようにするためである。
【0029】
また、第1および第2の線状構造物を木構造の候補として抽出する方法には、上記方法以外にも、線状構造物を複数のノードと複数のエッジによって定義した木構造の候補として抽出できるものであれば周知のいかなる方法も適用できる。
【0030】
図3Aは、上記木構造候補抽出手段12により抽出された門脈および肝静脈をそれぞれ表す木構造の候補を示すイメージ図である。図3Aに示すように、門脈や肝静脈のように互いに近接した位置を絡み合うように延びる複数の線状構造物を周知の方法により木構造の候補を抽出した場合には、木構造の候補においては、複数の線状構造物が非常に近接した部分において、1つの線状構造物を表す木構造に他の線状構造物を表す木構造のノードが誤って接続されてしまうという問題があった。つまり、図3Aに示すように、本来接続されるべきでない門脈の木構造を表すノードNAi+1に、肝静脈を表す木構造のノードNBj+1がエッジEzにより誤って接続されてしまうことが生じていた。
【0031】
本発明では、門脈および肝静脈のような線状組織における、上記それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的特徴に基づいて、各ノードごとに、各ノード間を結ぶ複数のエッジについて接続されやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、第1および第2の根ノードのそれぞれに基づいて各ノードに接続可能なエッジの重み付けを行うことにより、上記幾何学的な特徴を有さない誤って接続されたエッジEz(誤接続エッジEz)を第1および第2の木構造のいずれにも接続されにくくなるように重み付けする。
【0032】
この重み付けのために、本実施形態においては、上記幾何学的な特徴を、各ノードにおいて、各ノードに接続されるべきエッジのうち、根ノード側に接続される根ノード側エッジ以外の各エッジは、根ノードから離れる方向に向かうという性質と捉え、各ノードにおいて、各ノードに接続されるべきエッジのうち、根ノード側から離れる方向に延びる各エッジは、離れる方向に向かって略同じ向きに向かうというさらなる観点でさらに捉える。ここで略同じとは、例えば、各エッジの延びる方向が反対方向(180度に近い方向)などの極端に異なる方向でないことを意味する。
【0033】
この観点に基づいて、各ノードについて、各ノードと接続可能なノード間を結ぶ複数のエッジについて、根ノード側に接続される根ノード側エッジを除く、根ノード側から離れる方向に延びる各エッジが互いに略同じ方向に延びる場合には、これらの複数のエッジ同士は上記幾何学的性質を満たしているため、各ノードとその根ノード側のノードとは正しく接続されるべきものである可能性が高いと推定する。一方、根ノード側に接続される根ノード側エッジを除く、根ノード側から離れる方向に延びる各エッジが互いに、異なる方向に向かうものである場合には、これらの複数のエッジ同士は上記幾何学的性質を満たさないため、各ノードとその根ノード側のノードとは誤って接続されるべきものである可能性が高いと推定する。
【0034】
そして、上記推定に従って、1つのノードから接続されるべき各エッジが略同じ向きに延びるものであるほど、該ノードの根ノード側エッジが接続されやすくなるように重み付けする。詳細には、根ノードを基準として各ノードから離れる方向に延びる各エッジ間の角度が小さい程該ノードの根ノード側エッジが接続されやすいように根ノード側エッジのコストを設定する。
【0035】
以下、図4および図5を用いて、上記誤って接続された第1および第2の木構造間のエッジが接続されにくくなるよう重み付けされる原理をさらに説明する。図4および5は、図3Aのうち、第1の木構造を構成するノードNAiと第2の木構造を構成するノードNBj+1が誤って接続された部分を一部拡大して表す図である。
【0036】
木構造作成手段13が、ノードNBj+1について、このノードNBj+1に接続可能なノードNBjを結ぶエッジExのコストを決定する場合を説明する。図4に示すように、木構造作成手段13は、第2の根ノードNB0を基準とした根ノード側エッジEx以外の各エッジEy、Ezの互いになす角θaに基づいて根ノード側エッジExの重み付けを行う。本実施形態では、NBj+1からNAi+1へ向かうベクトルとベクトルNBj+1からNBj+2へ向かうベクトルとのなす角θaをNBj+1からNAi+1へ向かうベクトルとベクトルNBj+1からNBj+2へ向かうベクトルの内積により規定する。
【0037】
図5を用いて、ノードNA i+1について、このノードNA i+1に接続可能なノードNBj+1を結ぶエッジEzのコストを決定する場合を説明する。木構造作成手段13は、第1の根ノードNA0を基準とした根ノード側エッジEz以外の各エッジEy、Exの互いになす角θbに基づいても根ノード側エッジEzの重み付けを行う。ここでは、ベクトルNBj+1からNBj+2へ向かうベクトルとベクトルNBj+1からNBjへ向かうベクトルとのなす角θbをベクトルNBj+1からNBj+2へ向かうベクトルとベクトルNBj+1からNBjへ向かうベクトルの内積により規定する。
【0038】
すると、誤って接続された第1の木構造のノードと第2の木構造のノードを結ぶエッジEzはそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的特徴を有さないため、第2の根ノードを基準として、根ノード側エッジEx(上記幾何学的特徴に従っているエッジ)に接続可能なエッジEzとEyのなす角θaよりも、第1の根ノードを基準として根ノード側エッジEz(誤って接続されたエッジ)に接続可能な各エッジEx、Eyのなす角θbは、相対的に大きいものとなる。
【0039】
すなわち、本実施形態では、根ノード側エッジを除く各エッジのなす角が小さい程根ノード側エッジが接続されやすくなるように重み付けを行うため、第1の根ノード(誤って接続された木構造の根ノード)側から接続された根ノード側エッジEzは、根ノード側エッジExよりも接続されにくくなるように重み付けられる。このように、本実施形態のコスト関数によれば、誤って接続された第1の木構造のノードと第2の木構造のノードを結ぶエッジEzはそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的特徴を有さないため接続されにくくなるように重み付けられ、第1および第2の木構造の幾何学的特徴を有するその他のエッジは上記幾何学的性質に従っているため相対的に接続されやすくなるように重み付けられる。
【0040】
なお、本実施形態では、根ノード側エッジから延びる各エッジが複数存在する場合には、各エッジ間の角度のうち最大角度に基づいて根ノード側エッジの重み付けを行うものとする。
【0041】
そして、上述のコスト関数により、木構造作成手段13は、第1および第2の根ノードNA0、NB0から接続可能な各ノードを順次走査し、接続可能な各ノードについてコストを個々に算出する。なお、本実施形態では、医用画像データの表示画像上で、マウス等の入力装置をマニュアル操作することにより指定された門脈および肝静脈のそれぞれ起始部の位置を座標値で取得し、取得した座標値に基づいて門脈の起始部に対応する第1および第2の根ノードNA0、NB0を特定する。
【0042】
そして、本実施形態の木構造作成手段13は、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから各ノード間の接続しやすさを表す指標値をコストとして算出し、上記算出された各コストに基づいて各ノードを再接続して最小全域木アルゴリズムの1種であるプリム法により木構造を作成する。
【0043】
なお、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから各ノードを接続して木構造を作成するとは、従来の方法では、第1(または第2の)根ノードを根として、第1(または第2の)木構造のみについて接続可能な各ノード間のコストを比較して接続を確定することに対し、第1および第2の木構造の根ノードをそれぞれ根として、第1の木構造を構成する各ノードに接続可能なノードついて算出された各コストおよび第2の木構造を構成する各ノードに接続可能なノードについて算出された各コストのうち、最も接続されやすいノードの接続を確定することを意味する。
【0044】
図3Aから図3Pを用いて、第1および第2の根ノードNA0、NB0から順に上記コスト関数により算出されたコストに基づいて、各木構造の接続可能な各ノードを接続する方法を具体的に説明する。図3Aから図3Pにおいては、すでに第1または第2の木構造において、接続を確定した(解決した)ノードを斜線付きの丸で示す。そして、解決したノードに接続可能なまだ接続が確定していない(未解決の)ノードを太線の白丸で示す。各接続可能なノード間には、上記コスト関数によりコストが算出される。図3Aから図3Pにおいては、この算出されたコストを、各ノード間を結ぶエッジごとに数字で示す。なおコストを表す数字の値は、説明のために実際算出した値とは異ならせている。また、図3Aから3Pにおいては、各エッジに対するコストを全て記載しているが、これらは木構造を構成する各ノードを走査する前に全ノード間のコストが算出されていることを示すものではなく、本実施形態では木構造の走査に応じて各ノードごとに接続可能なノード間のコストが順次算出され比較される。
【0045】
図3Aにおいては、第1または第2の木構造において、まずノードNA0、NB0が第1および第2の木構造の根ノードとして確定した状態(解決した状態)であり、ノードNA0、NB0以外の全てのノードはまだ接続が確定しない状態(未解決の状態)である。図3Aに示すように、両根ノードNA0、NB0にはそれぞれ1つずつ接続可能なノードが存在する。木構造作成手段13は、両根ノードNA0、NB0から接続可能な各ノード間を結ぶエッジのコストをそれぞれ算出して比較する。図3Aにおいては、両根ノードNA0、NB0から接続可能な各ノード間のコストは、それぞれ2、2であるため、いずれも同じである。コストが同じ場合、いずれをエッジに接続されるノードの接続関係を先に確定してもよいが、ここでは便宜のため、以下コストが同じ値の時は、右側の木構造のエッジに接続されるノードの接続関係を先に確定する。すると、コストが最小である太矢印で示したノードと第2の根ノードNB0の接続が確定する。(太矢印で示したノードが解決済みとなる。)
【0046】
続いて、図3Bにおいては、先ほど解決済みとなったノード(図3Aにおいて矢印で示したノード)とすでに解決済みである第1の根ノードNA0から接続可能な各ノード(図3B太線丸参照)に対してそれぞれコストを算出して比較する。ずなわち、図3Bにおいて、解決済みとなったノード(図3Aにおいて矢印で示したノードおよび第1の根ノードNA0)のそれぞれと、太線丸で示す各ノードとをそれぞれ結ぶ各太線で示すエッジのコストを算出して比較する。すると、先ほど解決済みとなったノードとこのノードに接続可能なエッジのコストは左から5、4であり、第1の根ノードNA0と第1の根ノードNA0に接続可能なエッジのコストは2であるため、コストが最小である太矢印で示したノードと第1の根ノードNA0の接続が確定する。(太矢印で示したノードが解決済みとなる。)
【0047】
同様に、図3Cにおいて、解決済みとなった2つのノード(図3Aおよび図3Bにおいて、太矢印でそれぞれ示したノード)に接続可能な各ノード(図3C太線丸参照)に対してそれぞれコストを算出して比較する。すなわち、太線で示したエッジのコストを算出して互いに比較する。太線で示したエッジのコストは左から、3、4、5、4であるため、コストが最小である太矢印で示したノードとその図3C右上のノード(解決済みノード)の接続が確定する。
【0048】
以下同様に、図3Dから図3Jまで、第1および第2の木構造のノードの接続が確定していく。
【0049】
次いで、図3Kにおいて、第1の木構造のノードNAi+1が解決済みノードとなっているため、ノードNAi+1と誤って接続可能とされた第2の木構造のノードNBj+1間についても接続しやすさを比較する。つまり、誤って接続された第1の木構造のノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1間を結ぶエッジEzを含む太線で示された各エッジについてコストが算出されて比較される。ここでは、全ての接続可能なノード間においてコストが最小の2である、ノードNAi+1(解決済みノード)と太矢印で示したノードNAi+2の接続が確定する。ノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1間を結ぶエッジEzは、コストが15と大きいため接続されることが抑制される。
【0050】
そして、図3Lから図3Mまで、引き続き、第1および第2の木構造のノードの接続が確定していく。その間も、ノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1間を結ぶエッジEzは、コストが大きいため接続されることが抑制される。
【0051】
ここで、図3MにおいてノードNBj+1とNB j+2との接続が確定し、図3Nにおいては、第2の木構造のノードNBj+1についても解決済みノードとなっている。このため、図3Nにおいては、第2の木構造のノードNBj+1と正しく接続されるべきノードNBj+2との間を結ぶエッジEyを含む、太線で示された各エッジについてコストが算出されて比較される。そして、コストが最小である、ノードNBj+1(解決済みノード)と太矢印で示したノードNBj+2との接続が確定する。ここで、第1の木構造のノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1の両方が解決済みとなっているため、第1の木構造のノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1を含むエッジEzはもはやコスト比較の対象にならない。
【0052】
そして、図3Oにおいても同様に、引き続き、第1および第2の木構造の解決済みノードとこのノードに接続可能な各ノードついてコストが算出されて比較され、太矢印で示すように、コストが最小になる解決済みノードとこのノードに接続可能なノードの接続が確定される。そして、図3Pに示すように、最後のノードについても接続が確定して、本実施形態の木構造作成手段13により第1の木構造T1および第2の木構造T2が作成される。つまり、最終的に、ノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1間を結ぶエッジEzを接続に用いないで、第1および第2の木構造を作成することができる。
【0053】
図6は、上記処理により作成された各木構造T1、T2に基づいて抽出された門脈M1と、肝静脈M2を表す図である。図6に示すように、表示制御手段14は、ディスプレイ3に、木構造作成手段13により作成された木構造T1、T2に基づいて周知の方法により門脈M1および肝静脈M2を表示させる。
【0054】
上記のように本実施形態によれば、それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから各ノードを接続して木構造を作成するため、それぞれの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を利用して木構造の各ノード間の接続しやすさを再評価して木構造を作成することにより、肝臓の門脈と肝静脈のように、枝分かれ回数が多く、各血管の枝同士が近い位置を絡み合うように走行している構造物においても、第1および第2の構造物が互いに近接した部分においても誤って互いのノードが接続されることを抑制し、効率よく且つ正確に第1および第2の木構造を作成することができる。
【0055】
従来のように、各木構造を別々に作成した場合には、第1および第2の木構造の各ノードを誤って結ぶ誤接続エッジEzに接続されにくいように重み付けがされていても、接続されやすいもの順にノードの接続が確定するため、最終的には接続されにくいように重み付けられたノードについても接続が確定されてしまうことが生じていた(誤接続エッジEzによってノード間が接続されて木構造が作成されてしまっていた)。しかしながら、上記方法によれば2つの根ノードに基づいてそれぞれの木構造を作成しているため、第1の木構造のノードNAi+1と第2の木構造のノードNBj+1を結ぶエッジEzについて、一方の木構造の根側から一方の木構造のノードNAi+1について接続しやすさを再評価する際には、接続されにくいよう重み付けされている誤接続エッジEz以外のエッジが優先的に確定することにより一方の木構造のノードNAi+1の接続が確定し、他方の木構造側からノードNBj+1を再評価する際には、一方の木構造側のノードNAi+1の接続が確定している(解決済みになっている)ため、誤接続エッジEzによって結ばれる一方の木構造側のノードNAi+1と他方の木構造のノードNBj+1間については接続されやすさを再評価される対象とならない。このため、誤接続エッジEzによって両木構造を誤って接続することなく、第1および第2の木構造をそれぞれ正確に作成できる。
【0056】
また、それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴を、各ノードにおいて、各ノードに接続されるべきエッジのうち、根ノード側に接続される根ノード側エッジ以外の各エッジは、根ノードから離れる略同じ向きに向かうというさらなる観点として捉え、かかる観点に基づいて上記各ノード間の接続しやすさを重み付けることにより正確に第1および第2の木構造を作成することができる。
【0057】
さらに、第1の実施形態では、一方の根ノード側エッジを除いて、各ノードに接続可能な複数のエッジ同士が互いにほぼ同じ方向に向かうものである程、除かれた一方の根ノード側エッジが接続されやすくなるよう重み付けを行うことにより第1および第2の木構造が接続されることを好適に抑制することができる。
【0058】
さらに、第1の実施形態では、一方の根ノード側エッジを除いて、各ノードに接続可能な複数のエッジ同士が互いにほぼ同じ方向に向かうという特徴を、各ノードに接続可能な複数のエッジ同士の角度によって規定し、かかる角度が小さくなる程、根ノード側エッジEzの接続されやすくなるように重み付けを行うため、簡易かつ好適に上記特徴を各ノードの接続されやすさに重み付けして木構造を作成することができる。また、上記角度を内積により規定することにより、簡易かつ好適に上記特徴を各ノードの接続されやすさに重み付けして木構造を作成することができる。
【0059】
また、木構造を作成するために、第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記それぞれのノードごとに、各ノード間の接続の強さを表す指標値をコストとして算出することにより、各ノード間の接続の強さが強くなるように各ノードを接続できるものであればいかなるスパニング木生成アルゴリズムを適用してもよい。例えば、スパニング木生成アルゴリズムの例としてプリム法を適用することが考えられる。
【0060】
また、第1の実施形態におけるコスト関数に限定されず、本発明におけるコスト関数はそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的特徴に基づいて、この幾何学的な特徴を有さない誤って接続されたエッジEz(誤接続エッジEz)を第1および第2の木構造のいずれにも接続されにくくなるように重み付けするものであればいかなるものでもよい。また、コスト関数による重み付けは、各木構造の走査を実行する前に全ノード間の重み付けを行なってもよく、根ノードから接続可能な各ノードの走査を順次行う際に、その都度コストを算出するものであってもよい。
【0061】
なお、上記第1の実施形態に限られず、一方の根ノード側エッジを除いて、各ノードに接続可能な複数のエッジ同士が互いにほぼ同じ方向に向かうという特徴を表すものであれば、いかなる方法で、上記特徴を規定してよい。また、上記実施形態において、各ノードに接続可能な複数のエッジ同士の角度を、内積に関わらず角度を表す任意の方法で規定してよい。
【0062】
次いで、本発明の第2の実施形態について、図7から図9を用いて説明する。第2の実施形態は、第1の木構造に誤って接続された第2の木構造を構成する第2の木構造ノードの候補を検出し、かかる第2の木構造ノードの候補に基づいて、第2の木構造の根ノードを検出する点において第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。図7は、第2の実施形態の機能ブロック図を表し、図8A、図8Bは、第2の木構造ノードの候補を抽出する処理を説明する図であり、図9は、第2の木構造ノードの候補に基づいて第2の根ノードを検出する処理を説明する図である。
【0063】
図7に示すように、第2の実施形態においては、木構造抽出装置1は、医用画像データから、第1の構造物を前記第1の根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した仮木構造として抽出し、抽出した仮木構造において、各ノードについて、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという第1の構造物の性質に反して第1の根ノードに近づく向きに延びるエッジに接続されるノードを、前記第2の木構造を構成するノードの候補として検出する第2木構造ノード候補検出手段15と、検出された第2の木構造を構成するノードの候補に基づいて、第2の根ノードを検出する根ノード検出手段16を備えた点が第1の実施形態による木構造抽出装置1と異なる。
【0064】
以下、図8Aおよび図8Bを用いて第2木構造ノード候補検出手段15による第2木構造ノード候補の検出方法の原理を説明する。図8Aは、第1の実施形態の木構造候補抽出処理により抽出された門脈および肝静脈をあらわす木構造の候補を表した図である。
【0065】
ここで、肝臓の門脈などの所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的な特徴を、図8Aに示すように、門脈を木構造として表した木構造においては各ノードについて、根ノードNAoと各ノードNAiとを結ぶ線分と、ノードNAiとノードの離れる方向に隣接するノードNAi+1間のエッジとのなす角度θiが所定の角度より小さいという特徴としてさらに捉える。
【0066】
そして、上記角度θiを下記式(1)のように内積によって判断し、式(1)をコスト関数fとして定義する。そして、式(1)を用いて角度θiが小さい程各ノードNAiとノードNAi+1が接続されやすくなるよう、木構造候補抽出手段12に抽出された木構造候補を構成する複数のノードについてコストを個々に算出し、各ノード間の重み付けを行って仮に木構造の候補を作成する。なお、本実施形態では、先述の通りマウス等の入力装置をマニュアル操作することにより指定された起始部の位置を門脈の起始部に対応する根ノードNA0として入力する。
【数1】

【0067】
次いで、第2木構造ノード候補検出手段15は、周知の最小全域木法によりmaxΣfとなるように、最適経路を決定し、第2木構造ノード候補を検出するための木構造を仮木構造として作成する。なお、各ノードのコストを評価するコスト関数に基づいて木構造作成する周知の種々の方法を用いることができ、例えば、周知の最小全域木法や最短路木法などのスパニング木生成アルゴリズムにより、maxΣfとなるように、最適経路を決定し、仮の木構造を作成してもよい。
【0068】
そして、第2木構造ノード候補検出手段15は、図8Bに示すように、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという第1の構造物の性質に反して第1の根ノードに近づく向きにNAk+1と接続されるノードNAkを、第2の木構造を構成するノードの候補として検出する。
【0069】
ここでは、第2木構造ノード候補検出手段15は、上記仮木構造において、式(1)が所定のしきい値以下である場合を、ノードNAkからノードNAk+1に向かう向きが、上記第1の根ノードに近づく向きに向かっていると判断する。なお、本実施形態ではfが−1/2以下の場合ノードNAkからノードNAk+1に向かう向きが、上記第1の根ノードに近づく向きに向かっていると判断するものとする。なお、ノードNA0とノードNAkとを結ぶ線分とノードNAkとノードNAk+1を結ぶエッジとなす角θkがノードNAkからノードNAk+1に向かう向きが、上記第1の根ノードに近づく向きに向かっていると判断するためのしきい値は、例えばθkが90度から180度の範囲になるようにユーザごとに任意に設定してよい。
【0070】
続いて、第2の実施形態における根ノード検出手段16は、第2木構造ノード候補検出手段15により検出された第2の木構造を構成するノードの候補NAkを取得する。そして、第2の実施形態における根ノード検出手段16は、門脈および肝静脈の各起始部が互いに近接して位置するという特徴に基づいて、第1の根ノードと各ノードを結ぶ線分と、各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、第2の木構造を構成するノードの候補から、第1の構造物に対応する根ノードに向かう方向に位置するノードを順に検索することにより第2の根ノードを検出する。
【0071】
以下、図9を用いて根ノード検出手段16による第2の根ノード検出方法の原理を説明する。図9は、第1の実施形態の木構造候補抽出処理により抽出された門脈および肝静脈を表す木構造の候補を表した図である。
【0072】
本発明者は、肝臓においては門脈や肝静脈などの線状構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる幾何学的な特徴、および、門脈および肝静脈の起始部が概ね近接して位置するという更なる特徴に基づいて、図9に示すように、この特徴を、第2の木構造を構成するノードから第1の木構造の根ノードに近づく方向に木構造の候補を検索することにより、第2の木構造の根ノードを検出可能であることに着目した。
【0073】
そして第2の木構造を構成するノードの候補から第1の木構造の根ノードに近づく方向に木構造の候補を検索することを、第2の木構造のノード候補NC0(NAk)を根ノードとして、門脈の根ノードNAoと各ノードNClとを結ぶ線分と、ノードNClとノードNClの離れる方向に隣接するノードNCl+1間のエッジとのなす角度θlが大きくなるように各ノードを検索することにより行うことを見出した。ここでは、根ノード検出手段16は、上記角度を、第1の根ノードと各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとの内積により規定する。
【0074】
そして、上記角度θlを下記式(2)のように内積によって判断し、この式(2)を用いて角度θlが大きくなるように、順にノードNClに接続可能なノードNCl+1を検索することにより、第2の根ノードNB0を検出することができる。
【数2】

【0075】
上記第2の実施の形態によれば、第1の構造物の起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴を利用することにより第2の根ノードNB0を自動的に抽出することができるため、画像データから第2の根ノードNB0を指定するためのユーザの手間を低減でき、効率よく正確に第1および第2の木構造を作成することができる。
【0076】
また、第2木構造ノード候補検出手段15が、医用画像データから、第1の構造物を第1の根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した仮木構造として抽出し、抽出した仮木構造において、各ノードについて、第1の根ノードと各ノードを結ぶ線分と、各ノードとノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという第1の構造物の性質に反して第1の根ノードに近づく向きに延びるエッジに接続されるノードを、第2の木構造を構成するノードの候補として検出するものであるため、誤って接続された可能性のあるノードを効率よく検出でき、効率よく正確に第1および第2の木構造を作成することができる。
【0077】
また、上記第2の木構造ノード候補検出手段15は、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を根ノードと各ノードを結ぶ線分と、各根ノードとノードとの内積により規定することにより、簡易かつ好適に上記特徴を各ノードの接続されやすさに重み付けして木構造を作成することができる。
【0078】
また、根ノード検出手段16によれば、第1および第2の構造物の各起始部が互いに近接して位置するものであり、それぞれ起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるものであるという性質を利用して、第1の根ノードと各ノードを結ぶ線分と各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、第2の木構造を構成するノードの候補から、第1の構造物に対応する根ノードに向かう方向に位置するノードを順に検索するため、第2の根ノードを好適に検出することができる。
【0079】
さらに、上記根ノード検出手段16は、起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる構造物の幾何学的特徴を根ノードと各ノードを結ぶ線分と、各根ノードとノードとの内積により規定することにより、簡易かつ好適に上記特徴を各ノードの接続されやすさに重み付けして第2の根ノードを好適に検出することができる。
【0080】
また、第2木構造ノード候補検出手段15の応用例として式(1)に替えて、所定の構造物を木構造として表した木構造においては根ノードNAoと各ノードNAiとを結ぶ線分と、ノードNAiとノードの離れる方向に隣接するノードNAi+1間のエッジとのなす角度との相対的な角度が小さいという特徴を表すいかなる評価方法を用いてもよい。
【0081】
なお、本第2の実施形態に限られず、上記式(1)は、所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて各ノードと根ノードとの関係を評価することにより各ノード間の接続されやすさを重み付けするものであれば、いかなるものであってもよい。例えば、式(3)に示すように、根ノードと各ノードとを結ぶ線分の長さと、各ノードとそのノードの根ノードから分岐を繰り返しながら離れる方向に隣接するノード間のエッジの長さとの差に基づいて長さの差が小さい程各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであってもよい。
【数3】

【0082】
また、上記第2の実施形態に限定されず、根ノード検出手段16は、第1および第2の構造物の各起始部が互いに近接して位置するものであり、それぞれ起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるものであるという性質を利用して、第2の木構造を構成するノードの候補から、第1の構造物に対応する根ノードに向かう方向に位置するノードを順に検索する方法であれば、いかなる方法を適用してもよい。
【0083】
また、根ノード検出手段16の応用例として式(2)に替えて、所定の構造物を木構造として表した木構造においては根ノードNC0と各ノードNClとを結ぶ線分と、ノードNClとノードの離れる方向に隣接するノードNCl+1間のエッジとのなす角度との相対的な角度が大きいという特徴を表すいかなる評価方法を用いてもよい。
【0084】
また、本第2の実施形態に限られず、上記式(2)は、所定の構造物が1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという幾何学的特徴に基づいて各ノードと根ノードとの関係を評価することにより各ノード間の接続されやすさを重み付けするものであれば、いかなるものであってもよい。例えば、式(4)に示すように、根ノードと各ノードとを結ぶ線分の長さと、各ノードとそのノードの根ノードから分岐を繰り返しながら離れる方向に隣接するノード間のエッジの長さとの差に基づいて長さの差が大きい程各ノードと前記隣接するノードが接続されやすくなるよう重み付けを行うものであってもよい。
【数4】

【0085】
第2の実施形態において、根ノード検出手段16による根ノード検出処理は、必ずしも第2の木構造の「起始部に対応する」根ノードNB0を検出する必要はなく、第2の構造物の部分木の根ノードを検出するものであってもよい。この場合には、検出された第2の構造物の部分木の根ノードと第1の根ノードに基づいて、本発明による木構造作成処理(検出された根ノードを根とする第2の構造物の部分木)を行うことができる。第1および第2の木構造の全体について本発明の木構造作成処理を行わなくても、少なくとも第1および第2の木構造を結ぶエッジを含む第1および第2のそれぞれの部分木に対してさえ本発明の木構造作成処理を実行すれば、第1および第2の木構造を結ぶエッジを接続されにくく重み付けをすることができ、第1および第2の木構造の各ノードを接続されるべきでないエッジにより接続することを抑制して正確に第1および第2の木構造を抽出できるためである。
【0086】
また、上記各実施形態に限定されず、コスト関数fに、各ノード同士の距離が近いほど接続強度が大きくなるようにさらに重み付けを行ってもよく、さらなる周知の重み付け方法を任意に組み合わせてもよい。
【0087】
また、第3の実施形態として、木構造抽出装置1は起始部が既知である門脈を表す複数の教師データを機械学習することにより、門脈の起始部を検出する不図示の起始部検出手段をさらに備え、かかる起始部検出手段により検出された起始部を取得し、取得した起始部に対応する根ノードを、周知の方法により特定して上記木構造作成処理を行ってもよい。この場合、起始部検出手段は、第1または第2の構造物の起始部の両方を検出できるものであることが好ましいが、いずれか1つ以上を検出するものであればよい。第3の実施形態では、アダブースト(Adaboost)法により教師データにおいて既知である起始部の特徴量に基づいて起始部を検出し、画像データの座標系における起始部の座標値を取得する。そして、起始部の座標値に基づいて根ノードを特定する。かかる場合には、起始部の入力のためのマニュアル操作を省略することができるため、より効率よく木構造の作成を行うことができる。また、アダブースト(Adaboost)法により起始部検出を行った場合には、所定の構造物から好適に起始部を検出することができる。なお、第3の実施形態に限定されず、本発明に起始部を抽出する周知の種々の方法を適用可能である。
【0088】
また、ここでは所定の構造物として門脈を基に説明したが、所定の構造物は点とそれを結ぶ候補点とにより木構造として形状モデル化可能なオブジェクトであるとともに1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴を有するものであれば何でもよい。例えば、所定の構造物は、肺または肝臓の血管であってよく、さらには、肺動脈、肺静脈、肝臓における門脈、肝動脈、肝静脈があげられる。
【符号の説明】
【0089】
1 木構造抽出装置
2 データ記憶手段
3 表示装置
4 入力装置
7 画像データ
11 構造物領域検出手段
12 木構造候補抽出手段
13 木構造作成手段
14 表示制御手段
15 木構造ノード候補検出手段
16 根ノード検出手段
M1 門脈(第1の構造物)
M2 肝静脈(第2構造物)
Sp セグメント
f 評価関数
Ev 、Ew 、Ex 、Ey、Ez 各エッジ
NA 、NB、NC ノード
NA0、NB0 第1、第2の根ノード
T1、T2 第1、第2の木構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、前記第1および第2の線状構造物をそれぞれ前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと前記各ノード間を互いに結ぶ複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造として抽出する木構造抽出装置であって、
前記第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、前記各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、前記第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記各ノードを接続する木構造作成手段を備えたことを特徴とする木構造抽出装置。
【請求項2】
前記コスト関数は、前記各ノードごとに、該各ノードに前記第1または第2の根ノード側から接続された根ノード側エッジとは異なる該各ノードに接続可能な複数のエッジ間のなす角が大きいほど、前記根ノード側エッジが接続されにくくなるようにさらにコストを重み付けするものであることを特徴とする木構造抽出装置。
【請求項3】
前記医用画像データから、前記第1の構造物を前記第1の根ノードを含む複数のノードと複数のエッジによって定義した仮木構造として抽出し、前記抽出した仮木構造において、前記各ノードについて、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と、前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという前記第1の構造物の性質に反して前記第1の根ノードに近づく向きに延びる前記エッジに接続されるノードを、前記第2の木構造を構成するノードの候補として検出する第2木構造ノード候補検出手段と、
前記検出された第2の木構造を構成するノードの候補に基づいて、前記第2の根ノードを検出する根ノード検出手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1または2記載の木構造抽出装置。
【請求項4】
前記第2木構造ノード候補検出手段は、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす前記角度を、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとの内積により規定するものであることを特徴とする請求項3記載の木構造抽出装置。
【請求項5】
前記第1および第2の構造物の各起始部が互いに近接して位置するものであり、
前記根ノード検出手段は、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす角度に基づいて、前記第2の木構造を構成するノードの候補から、前記第1の構造物に対応する根ノードに向かう方向に位置するノードを順に検索することにより前記第2の根ノードを検出するものであることを特徴とする請求項3または4記載の木構造抽出装置。
【請求項6】
前記根ノード検出手段は、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとのなす前記角度を、前記第1の根ノードと前記各ノードを結ぶ線分と前記各ノードと該ノードに接続可能なノード間の各エッジとの内積により規定するものであることを特徴とする請求項5記載の木構造抽出装置。
【請求項7】
前記複数の所定の構造物の少なくとも一つについて、前記少なくとも一つの構造物の起始部が既知である該一つの構造物を表す複数の教師データを機械学習することにより、前記少なくとも一つの構造物の起始部を検出する起始部検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の木構造抽出装置。
【請求項8】
前記複数の所定の構造物は、肺の血管であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の木構造抽出装置。
【請求項9】
前記複数の所定の構造物は、肝臓の血管であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の木構造抽出装置。
【請求項10】
それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、前記第1および第2の線状構造物をそれぞれ前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと前記各ノード間を互いに結ぶ複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造として抽出する木構造抽出方法であって、
前記第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、前記各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、前記第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記各ノードを接続することを特徴とする木構造抽出方法。
【請求項11】
それぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びる第1および第2の線状構造物を含む医用画像データから、前記第1および第2の線状構造物をそれぞれ前記起始部に対応する根ノードを含む複数のノードと前記各ノード間を互いに結ぶ複数のエッジによって定義した第1および第2の木構造として抽出する木構造抽出プログラムであって、
コンピュータを、
前記第1および第2の線状構造物のそれぞれ1つの起始部から分岐を繰り返しながら離れる方向に広がって延びるという特徴に基づいて、前記各ノードごとに、該各ノードに接続可能な複数のノード間を結ぶ複数のエッジについて接続しやすさを表すコストを重み付けするコスト関数により、前記第1の木構造の根ノードに対応する第1の根ノードと前記第2の木構造の根ノードに対応する第2の根ノードのそれぞれから前記各ノードを接続する木構造作成手段として機能させることを特徴とする木構造抽出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図3M】
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【図3N】
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【図3O】
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【図3P】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228396(P2012−228396A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98925(P2011−98925)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】