説明

木炭の水分散体および該分散体を主成分とするインキ組成物

【課題】原材料の精製等を必要とせず、滲みが小さく、ゆで卵製造時の色の溶出や、卵白への色の浸透がなく、かつ、印字濃度の高い卵殻印刷用インクジェットインキを提供することにある。
【解決手段】(a)成分の食品添加物である木炭を、(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて酸化することにより、(b)成分の水中に分散させたことを特徴とする木炭の水分散体と、該分散体を主成分とする全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物、および、該分散体または該インキ組成物をインクジェット印刷用に調整した、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインクジェットインキを用いてインクジェット方式により印刷することを特徴とする卵殻への印刷方法、および該印刷方法により印刷された卵に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品添加物木炭の水分散体、および、該分散体を主成分とする食品パッケージ等、食品関連の印刷全般を行うインキ、特に卵殻表面にマーキングを行うのに適したインクジェットインキ組成物、およびこれを用いた卵殻表面へのマーキング方法、ならびにマーキングした卵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの産業分野で環境問題が叫ばれている。特に食品関連分野では食品そのものは勿論のこと、その製造環境、物流体制、包装、品質保証にまで環境対応の要求が増大している。食品のなかでも生鮮食品である卵については品質保証期限の明記が義務付けられており、パッケージに製造年月日や品質保証期限を印刷したり、別途紙に印刷したりしたものを添付するような方法が採られている。
【0003】
パッケージに製造年月日や品質保証期限を印刷したり、別途紙に印刷したりしたものを添付するような方法では、一般家庭の冷蔵庫等のように、一旦パッケージから取り出してしまうと、卵1個1個の製造年月日や品質保証期限がわからなくなるという問題があり、これらの情報を卵殻に直に印刷することが行われはじめている。
【0004】
卵殻への印刷方法としては、高速かつ非接触で卵殻破損の危険のないインクジェット方式が好ましく、インキとしては、用途の性質上、全ての構成成分が、水、食品、食品添加物、食品添加物と同等と評価できる安全性であるものであることが必須条件である。さらに、ゆで卵製造時に色が溶出したり、卵白に色が浸透したりしないことが好ましい。
【0005】
これらの条件を満足するインキとして、例えば、特開2000−191969号、特開2000−297239号において精製した鉄クロロフィリンナトリウム、精製した銅クロロフィリンナトリウム、または、精製したクロロフィリンナトリウムから選択される少なくとも一種および水を含むインクジェットインキが開示されているが、これら組成物の作製には精製に時間とコストを費やし、印字濃度は必ずしも満足できる濃さのものではなかった。さらに、溶液型インキであるため、卵殻の様な多孔質な表面上では滲みが大きいという問題も抱えている。
【0006】
以上に述べたように、卵殻印刷用のインクジェットインキとしては、原材料の精製 等を必要とせず、滲みが小さく、煮沸条件下での色抜けがなく、かつ、印字濃度の高いものの出現が望まれているのである。
【特許文献1】特開2000−191969号公報
【特許文献2】特開2000−297239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、滲みが小さく、ゆで卵製造時の色の溶出や、卵白への色の浸透がなく、かつ、印字濃度の高い卵殻印刷用インクジェットインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、(a)食品添加物である木炭を、(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて酸化したものを、(b)成分の水中に分散させたことを特徴とする木炭の水分散体を主成分とし、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物を提供するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木炭の水分散体、および、該水分散体を主成分とするインキ、および、インクジェットインキは、全ての構成成分が、食品添加物、食品、水の何れかに属するものであり、卵殻へのインクジェット印刷をはじめとした食品関連分野で、高範囲への利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
すなわち、本発明は、(a)成分の食品添加物である木炭を、(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて酸化したものを、(b)成分の水中に分散させたことを特徴とする木炭の水分散体と、該分散体を主成分とする全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物、および、該分散体または該インキ組成物をインクジェット印刷用に調整した、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインクジェットインキを用いてインクジェット方式により印刷することを特徴とする卵殻をはじめとした食品関連製品への印刷方法、および該印刷方法により印刷された卵をはじめとする印刷物に関するものである。
【0011】
溶液型のインキは、卵殻の様な多孔質な表面上では滲みが大きく、この滲み性を改良すべく、発明者らは食品添加物である油溶性染料を食品添加物である水溶性溶剤中で微細な粒子とする乳化状態のインキを調整することを考案した。しかし、乳化タイプのインキよりもさらに耐滲み性、印字濃度の改良を目指し、検討を続けた結果、顔料分散型のインキが上記条件を満足させるに最も相応しいとの結論に達し、本発明を考案するに至った。
【0012】
本発明の、(a) 成分の食品添加物である木炭を(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて酸化したものを、(b)成分の水中に分散させたことを特徴とする木炭の水分散体とは、(a)
成分の食品添加物である木炭を(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて酸化することにより、木炭粒子表面にカルボキシル基等を導入し、木炭の食品添加物としての本質的な性質を変化させること無く、親水性を付与させ、水に分散させたものである。また、本発明の、全ての構成成分が食品添加物、食品の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物とは、卵殻印刷等の食品に関わる印刷に用いることを目的として調製されたものであり、コンティニュアス、オンデマンド何れの方式に対しても対応可能なインクジェットインキを調製することが可能である。
【0013】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明木炭の水分散体(a)成分の食品添加物である木炭とは、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成7年法律第101号)附則第2条第4項に規定する既存添加物名簿(平成8年4月16日厚生省告示第120号)に収載されており、天然添加物として使用実績が認められ品目が確定している「既存添加物」に属するものであり、イネ科マダケ(Phyllostachys
bambusoides SIEB. et ZUCC.)若しくはイネ科モウソウチク(Phyllostachys heterocycla MITF.)の茎又はカバノキ科シラカバ(Betula
platyphylla SUKAT. var. japonica HARA)、チョウセンマツ(Pinus koraiensis SIEB. et ZUCC.)、ブナ科ウバメガシ(Quercus
phylliraeoides)等の幹枝又は種子を炭化して得られたもの等である。
【0014】
本発明木炭の水分散体(a)成分の食品添加物である木炭を具体的に説明すると、ナラ、クヌギ、カシ、ファルカタ等の木材を400〜700℃で炭化させた黒炭、ウバメガシ、カシ等を800℃以上の温度で炭化させた白炭、鋸屑や樹皮等を粉砕して高圧力で圧縮形成したオガライトを700〜1000℃の温度で炭化させたオガ炭、マダケ、モウソウチク等を650〜750℃の温度で炭化させた竹炭等を挙げることができ、これらのなかから単独、あるいは、2種以上を併用して用いることができるが、分散性を考慮すると、低温で炭化させた硬度の低い黒炭や竹炭が好ましい。高温で炭化させた白炭やオガ炭、また、竹炭でも800℃以上の高温で炭化させたものは硬度が高く、黒炭や通常の竹炭と比較すると酸化工程における粉砕に大きなエネルギーを要するという問題がある。また、(a)成分の食品添加物である木炭は、粉砕に要するエネルギーを考慮すると事前に粉砕されているものを用いることが好ましく、具体的には平均粒径が5μm以下のものが好ましく、平均粒径が3μm以下のものがより好ましい。
【0015】
本発明木炭の水分散体(a)成分の食品添加物である木炭は、合計で最終インキ中に0.5〜25重量%の範囲で含まれることが好ましく、最終インキ中に1〜15重量%の範囲で含まれることが特に好ましい。含有量が0.5重量%未満だと、印字濃度が不十分であり、含有量が25重量%より大きくなると、インキ粘度が高くなり、通常のインクジェット印刷装置では印刷が不能となったり、印刷インキの分散安定性が低下したり等の問題が発生し易くなる。
【0016】
本発明木炭の水分散体(b)成分の水は、本発明 (a)成分の食品添加物である木炭の、(c)成分の次亜塩素酸塩による酸化反応の溶媒、ならびに本発明 (a)成分の食品添加物である木炭を分散させるための分散媒として用いられるものであり、イオン交換樹脂、かつ/または、RO膜等により脱イオンを行い、電気伝導度を好ましくは200μS/cm以下、より好ましくは20μS/cm以下まで脱イオンを行った脱イオン水が好ましい。イオン、特にカルシウムイオンの様な2価のカチオンを含む水を用いると、場合によって分散体の分散安定性を低下させる危険性が高く、好ましくない。
【0017】
本発明木炭の水分散体(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液とは、本発明 (a)成分の食品添加物である木炭を酸化するための酸化剤として用いられるものであり、有効塩素濃度等は特に限定されるものではない。
【0018】
本発明請求項1記載の(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて(a)成分の食品添加物である木炭を(b)成分の水中で液相酸化する工程について詳しく説明する。本発明請求項1記載の本発明(b)成分の次亜塩素酸塩溶液を用いて本発明(a)成分の食品添加物である木炭を水中で液相酸化する工程とは、本発明(a)成分の食品添加物である木炭を液相酸化する事により分散に十分な極性基、具体的にはカルボキシル基を付与させるために行われるものであり、本発明(a)成分の食品添加物である木炭表面の全ての被酸化基、具体的にはアルキル基、アルデヒド基を酸化する事が望ましく、反応は50〜100℃の範囲で加熱して行うことが好ましい。
【0019】
本発明請求項1記載の(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて本発明(a)成分の食品添加物である木炭を水中で液相酸化する工程における本発明(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液の使用量は(a)成分の食品添加物である木炭を安定な分散状態とするまで、表面の被酸化基、具体的にはアルキル基、アルデヒド基を酸化するのに必要な量であることが好ましく、これは、本発明(a)成分の食品添加物である木炭の種類と、露出している被酸化基の量に依存するが、(a)成分の食品添加物である木炭100重量部に対して、1000重量部以上、好ましくは2000重量部以上、さらに好ましくは4000重量部以上である。
【0020】
本発明(a) 成分の食品添加物である木炭はカーボンブラックと比べ、硬度が高く、本発明(c)成分の次亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化反応においても十分な物理的粉砕を事前、かつ/または、酸化反応時に行うことが望ましい。具体的には事前に(a)
成分の食品添加物である木炭をビーズミル等で粉砕を行った後、(c)成分の次亜塩素酸ナトリウム溶液で酸化反応を行うことにより、より分散性の良好な分散体を得ることができる。また、一旦(c)成分の次亜塩素酸ナトリウムを用いて表面を酸化した(a)
成分の食品添加物である木炭をビーズミル等で物理的に粉砕し、新たな被酸化面を露出させたうえで、再度酸化反応を行うことも有効である。具体的には適当量の(c)成分の次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した反応液を、ビーズミル等で粉砕し、さらに
(c)成分の次亜塩素酸ナトリウム溶液で酸化反応を行うことにより、より分散性の良好な分散体を得ることができる。また、ビーズミルによる粉砕を行いながら、(c)成分の次亜塩素酸ナトリウム溶液で酸化反応を行うことも可能である。
【0021】
本発明請求項1記載の酸化による表面処理を行った木炭を含むスラリーからは、遠心分離法、かつ/または、デカンテーション法により、木炭を含まない反応上澄み液を除去した後、残りの木炭を含むスラリーを脱イオン水により稀釈することにより、安定な木炭の分散体を得ることができる。酸化反応終了後の反応液は、酸化反応に使用した次亜塩素酸ナトリウムと等モルの塩化ナトリウムが含まれており、該塩化ナトリウムの影響で、この段階では木炭の分散状態は安定ではない。遠心分離法、かつ/または、デカンテーション法により反応上澄み液を除去するということは、上澄み液中に溶解した塩化ナトリウムを除去することであり、分散体の安定性向上を目的に行われるものである。なお、遠心分離法を用いれば、デカンテーションと比較し、より多くの反応上澄み液、すなわち塩化ナトリウムを除去することができ、より好ましい。
【0022】
遠心分離法、かつ/または、デカンテーション法により反応上澄み液を除去したスラリーは、水を添加することで木炭の分散体となるが、残存する塩化ナトリウムの影響で分散状態は安定ではない。該分散体の分散状態を安定化させるには、限外濾過やイオン交換樹脂処理等により、分散体中に残存する塩化物イオンやナトリウムイオンをはじめとするイオン類を除去することが好ましく、分散液の電気伝導度を好ましくは1mS/cm以下、より好ましくは0.2mS/cm以下とすることで、安定な分散体を得ることができる。
【0023】
次に本発明請求項2記載の木炭の水分散体を主成分とする、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物について説明する。本発明請求項2記載の木炭の水分散体を主成分とする、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物とは、本発明請求項1記載の木炭分散体に食品添加物、食品の何れかに属する水溶性溶剤、保湿剤、浸透剤、界面活性剤、防腐剤等を添加して調製されるもので、用途毎に添加剤の種類、量等は調整できるが、木炭の含有量は好ましくは3〜10%、より好ましくは5〜7%に調整される。
【0024】
本発明請求項2記載の木炭の水分散体を主成分とする、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物を調製するにあたり用いられる水溶性溶剤、保湿剤、浸透剤、界面活性剤、防腐剤を具体的に説明すると、水溶性溶剤、保湿材、浸透剤としては、エタノール、プロピレングリコール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、アセトンのなかから選ばれたもの2種以上をインキ粘度に適合する範囲で混合したものが挙げられるが、インキとしての粘度等を考慮するとエタノール、プロピレングリコール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、および、エタノール、プロピレングリコール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトンのなかから選ばれたもの2種以上をインキ粘度に適合する範囲で混合したものが好ましい。また、該溶剤のうち、グリセリンはインキの保湿剤として、インキに適当量添加することが好ましい。
本発明請求項2記載の木炭の水分散体を主成分とする、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物をインクジェット用途で用いる場合には、ヘッド性能に合致した性状に調製する必要がある。性状はヘッド毎に異なるが、一般的に、粘度を20mPas以下とすることが好ましく、15mPas以下とすることがより好ましい。
【0025】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また文章中「部」とあるのは、重量部を示すもので「%」は特に断わりのない限り重量基準である。
【実施例1】
【0026】
食品添加物である竹炭(協同組合ラテスト製:竹炭パウダーバグ:平均粒径2.72μm)30部に300部の脱イオン水を加え、粒径0.6〜0.8mmのジルコンビーズとともに容器に仕込み、ペイントシェーカーにて2時間粉砕を行った。この事前粉砕液を反応容器に移し、1500部の脱イオン水を加え、80℃まで昇温して、攪拌を行いながら1200部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(和光純薬製:有効塩素濃度5%)を徐々に加え、全量投入後100℃で10時間反応を行った。反応終了後、6000rpmで30分間遠心分離機により上澄み液を除去した。沈殿物に、脱イオン水5000部を加え、これを限外濾過装置で液の電気伝導度が0.2mS/cm以下になるまで脱塩を行った後、木炭含有量20%まで濃縮した。濃縮液を6000rpmで60分間遠心分離機により粗大粒子等を除去し、保留粒子径1.0μmのメンブランフィルターで濾過し、分散体1を得た。
【実施例2】
【0027】
食品添加物である竹炭(協同組合ラテスト製:竹炭パウダーバグ:平均粒径2.72μm)20部と100部の脱イオン水を粒径0.6〜0.8mmのジルコンビーズとともにビーズミルに仕込み、80℃まで昇温して、攪拌を行いながら800部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(和光純薬製:有効塩素濃度5%)を徐々に加え、全量投入後100℃で10時間反応を行った。反応終了後、6000rpmで30分間遠心分離機により上澄み液を除去した後、脱イオン水5000部を加え、これを限外濾過装置で液の電気伝導度が0.2mS/cm以下になるまで脱塩を行った後、木炭含有量20%まで濃縮した。濃縮液を6000rpmで30分間遠心分離機により粗大粒子等を除去し、保留粒子径1.0μmのメンブランフィルターで濾過し、分散体2を得た。
【実施例3】
【0028】
食品添加物である竹炭(協同組合ラテスト製:竹炭パウダーバグ:平均粒径2.72μm)30部に300部の脱イオン水を加え、粒径0.6〜0.8mmのジルコンビーズとともに容器に仕込み、ペイントシェーカーにて2時間粉砕を行った。この事前粉砕液を反応容器に移し、1500部の脱イオン水を加え、80℃まで昇温して、攪拌を行いながら500部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(和光純薬製:有効塩素濃度5%)を徐々に加え、全量投入後100℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応液を容器に移し、粒径0.6〜0.8mmのジルコンビーズを用いてペイントシェーカーで1時間再度粉砕を行った後、反応容器に戻し、80℃まで昇温して、攪拌を行いながら300部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(和光純薬製:有効塩素濃度5%)を徐々に加え、全量投入後100℃で5時間反応を行った。反応終了後、6000rpmで30分間遠心分離機により上澄み液を除去した後、脱イオン水5000部を加え、これを限外濾過装置で液の電気伝導度が0.2mS/cm以下になるまで脱塩を行った後、木炭含有量20%まで濃縮した。濃縮液を6000rpmで30分間遠心分離機により粗大粒子等を除去し、保留粒子径1.0μmのメンブランフィルターで濾過し、分散体3を得た。
【0029】
(比較例1) 食品添加物である竹炭(協同組合ラテスト製:竹炭パウダーバグ:平均粒径2.72μm)12.8部、食品添加物であるイソプロピルアルコール159.5部、食品添加物であるショ糖ステアリン酸エステル界面活性剤(第一工業製薬製:DKエステルO−10,HLB=1)3.1部と、食品添加物であるレシチン(昭和産業製:昭和レシチン)23.6部を粒径0.3mmのジルコニアビーズとともに容器に仕込み、ペイントシェーカーにて10時間分散を行ったが、良好な分散体を得ることはできなかった。
【0030】
(比較例2) 食品添加物である竹炭(協同組合ラテスト製:竹炭パウダーバグ:平均粒径2.72μm)12.8部、脱イオン水159.5部、食品添加物であるショ糖ステアリン酸エステル界面活性剤(第一工業製薬製:DKエステルS−160,HLB=16)3.1部と、食品添加物であるレシチン(昭和産業製:昭和レシチン)23.6部を粒径0.3mmのジルコニアビーズとともに容器に仕込み、ペイントシェーカーにて10時間分散を行ったが、良好な分散体を得ることはできなかった。
【0031】
実施例1〜3で作製した分散体1〜3について、水溶性溶剤、保湿剤、浸透剤、界面活性剤、防腐剤等の添加剤を添加し、固形分としての竹炭含有量6%のインクッジェットインキを調整し、インクジェットプリンターを用いて卵に印字テストを行い、滲み性のチェックを行うとともに、印字後の卵を茹で、熱湯中でのインキの溶出、卵白へのインキの浸透を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)食品添加物である木炭を、(c)成分の食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて酸化して得られたものを、(b)成分の水中に分散させたことを特徴とする木炭の水分散体。
【請求項2】
請求項1記載の木炭の水分散体を主成分とする、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインキ組成物。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の木炭の水分散体またはインキ組成物をインクジェット印刷用に調整した、全ての構成成分が食品添加物、食品、水の何れかに属するものであることを特徴とするインクジェットインキ。
【請求項4】
請求項3記載のインクジェットインキを用いてインクジェット方式により印刷することを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項4記載の印刷方法で印刷された印刷物。
【請求項6】
請求項4記載の印刷方法で印刷された卵。

【公開番号】特開2007−126583(P2007−126583A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321650(P2005−321650)
【出願日】平成17年11月5日(2005.11.5)
【出願人】(591075467)冨士色素株式会社 (24)
【Fターム(参考)】