説明

木目模様付き構造材料

【課題】木質の雰囲気を感じとることができる木目模様付き構造材料を提供する。
【解決手段】構造材Aの表面に木目模様塗膜1が形成され、その上面に保護用塗膜2が形成されている。木目模様塗膜1は、塗装された塗膜が半乾きの状態でハケ状物で掻取って多数本の筋を付けたものである。構造材Aの表面に塗料を塗り、塗料が半乾きの状態でハケ状物で掻取り、その上面に保護塗装をし、乾燥させる。構造材の表面の木目模様が構造材を木質材料であるかのように見せるので、木質材の温かみのある雰囲気を演出できる。また、保護塗料によって木目模様が保持されるので、長期にわたって木質材の雰囲気を演出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木目模様付き構造材料に関する。柱や梁、枠体等の構造材としてスチール、アルミニウム等の金属材料、樹脂、木質合板等が用いられているが、本発明はこのような構造材料に関する。
【背景技術】
【0002】
構造材としての金属材料は、地色のまま使うか、単色の塗装をするのが普通である(非特許文献1)。したがって、金属が有する機能美を演出するには向いているが、木材が持つような温かみを演出することはできない。したがって、建築デザインとしては、当り前に使われている金属製品と同様のデザインにしかならない。
【0003】
また、樹脂材料も単色塗装しただけであると、無機質な感じがするだけである。さらに木質材料であっても合板の場合は、木目が消えてしまっているので、木目模様が醸し出す自然と共に存在する感覚を味わうことができない。
【0004】
しかし、以上のような金属材料や樹脂材料、合板等であっても、木目の自然さが感じられ、木質のような温かみを演出できれば、変化のあるデザインが可能となり、建築物をはじめとする構造体のデザイン性が向上するので好都合である。
【0005】
【非特許文献1】絵とき建築材料 平成7年2月20日 第1版第8刷発行 著者:早川潤ら 発行者:株式会社オーム社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、木質の雰囲気を感じとることができる木目模様付き構造材料を提供することを目的とする。また、木目模様の塗装方法と塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の木目模様付き構造材料は、構造材の表面に木目模様塗膜が形成され、その上面に保護用塗膜が形成されていることを特徴とする。
第2発明の木目模様付き構造材料は、前記木目模様塗膜は、塗装された塗膜が半乾きの状態でハケ状物で掻取って多数本の筋を付けたものであることを特徴とする。
第3発明の構造材への木目模様塗装方法は、構造材の表面に塗料を塗り、該塗料が半乾きの状態でハケ状物で掻取り、その上面に保護塗装をし、乾燥させることを特徴とする。
第4発明の木目模様塗装装置は、構造材を保持するテーブルと、該テーブル上の構造材に沿ってハケ状物を移動させる移動機構とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、構造材の表面に形成された木目模様が構造材を木質材料であるかのように見せるので、木質材の温かみのある雰囲気を演出できる。また、保護塗料によって木目模様が保持されるので、長期にわたって木質材の雰囲気を感じさせることができる。
第2発明によれば、塗膜が半乾きの状態であると適度な粘性を有しているので、ハケ状物で掻取ったとき細かな多数本の筋が明瞭に付く。またこの筋は自然な木目に近い模様のデザインになるので、木目模様としての完成度が高くなる。
第3発明によれば、構造材の表面に塗った塗料が半乾きの粘性のある状態でハケ状物で掻取ると、その跡が多数本の筋になり自然な木目に近い模様になる。ついで保護塗装をして乾燥させると木目模様が固定されるので、簡単に、品質の高い木目模様を形成できる。
第4発明によれば、テーブルで構造材を保持して、移動機構でハケ状物を移動させるので、能率よく木目模様の塗装を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1の(A)図は本発明の一実施形態に係る構造材料の斜視図、同(B)図は断面図である。
図1の構造材Aは柱状であるが、本発明が適用される構造材としては、このような形状に限らず、どのような形状にも適用される。構造材の材料としては、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属材料の外、樹脂材料や木目を失っている合板などに適用できる。
また、図では構造材Aの一面にのみ木目模様塗膜1が施されているが、二面あるいは三面に形成してもよく、全面に形成してもよい。
【0010】
前記木目模様塗膜1は、構造材Aの表面に形成された一般塗膜に付けられた多数本の筋によって、木目模様に見えるものである。この一般塗膜を形成する塗料としては、あらゆる種類の塗料をとくに制限なく用いることができる。この木目模様1の表面には保護塗膜2が形成されている。
前記木目模様塗膜1の下面(つまり構造材Aの直表面)に下地塗膜3を形成しておくとよい。下地塗膜3を形成しておくと、木目模様塗膜1を掻き取る際に、下地塗膜3と木目模様塗膜1の2種類の異なる模様からなる木目を形成することができる。そして、下地塗膜3と木目模様塗膜1の色を互いに変えて組合わせることで、色調を無限に増やせるという利点がある。また、保護塗膜2を形成しておくと、木目模様塗膜1を保護して耐候性が高まるという利点がある。
【0011】
つぎに、本発明の塗装方法を、図2に基づき説明する。
(1)構造材Aの前処理として、油等の除去を行う(101)。
(2)下地塗装を手塗りまたは電着塗装等により行う(102)。
なお、この下地塗装は必須ではなく、構造材の材質や用途等によっては省略してもよい。図1(B)に示す符号3は、この下地塗装で形成された下地塗膜である。
(3)一般塗装をする(103)。
塗装方法は手塗り、エアーガン、ドブ漬け等の任意の方法をとれる。
塗料の種類には、とくに制限がなく、どのような塗料を用いてもよいが、半乾きの状態で、適度な粘性が現出するものであればよい。図1(B)に示す符号2は、この一般塗装で形成された塗膜であり、この塗膜に後述する筋が形成される。
【0012】
(4)ハケ状物で塗膜を掻き取る(104)。
この工程は、前記(3)で塗装した塗膜が半乾きの状態で行う。
半乾きの状態とは、ハケで掻き取ったとき塗膜に多数の筋が付く程度の粘性がある状態をいう。塗り始めで流動性が高いときは、ハケで掃いても後で塗料が流れて筋が消えてしまう。また塗り終り後に時間が経って硬化が進むと、ハケで掃いても筋が付かなくなる。よって、ハケで掃いた後の筋が消えることがなく、かつ筋が付く間という意味の半乾き状態、つまり適度な粘性のある状態でハケで掻き取らなくてはならない。
【0013】
塗膜の掻き取りに使うハケは、一般塗装に使うハケが最適である。ハケの手の硬度にも柔らかいのと硬いのとがあるが、塗膜に筋が付けばよく、どの程度の硬度のハケを使うかは塗料の種類や付けたい木目模様の筋の大小等によって適宜選択すればよい。また、塗装に使うハケ以外の物であっても、塗膜に筋を付けることが可能なら本発明に使用できる。例えば、そのような物として、掃除用のハケやタワシ、ブラシ、のこぎり状の歯のある金物などを例示できる。本明細書では、このようなハケ以外の物を含めてハケ状物という。
粘性のある塗膜をハケ状物で掻き取ると、細かな多数本の筋が明瞭に付き、またその筋は自然な木目に近い模様のデザインになるので、木目模様としての完成度が高くなる。
【0014】
(5)保護塗装をする(105)。
この工程は前記(4)で形成した木目模様塗膜1の筋の上に、保護用の塗装をするものである。この保護塗装には、透明なクリアー塗装のほか、有色の塗装を使用してもよい。
このように形成された保護塗膜2は木目模様を保持されるので、長期にわたって木質材の雰囲気を演出できる。
(6)乾燥させる(106)。
一般塗装と保護塗装をした後で乾燥させることにより全ての塗膜を固定する。
この乾燥工程を終えると木目模様が固定されるので、簡単に、品質の高い木目模様を形成できる。
【0015】
以上の塗装方法によれば、構造材Aの表面の木目模様が金属耐Aを自然の木質材料であるかのように見せるので、木質材の温かみのある雰囲気を演出できる。
【0016】
つぎに、具体的な木目模様形成方法を説明する。
図3に示す方法は、ハケ10を手で持って塗膜1を掻き取る方法である。この方法では、ハケ10の押し具合、左右へのブレ具合を自由に変えて、任意のデザインの木目模様を付けることができる。
【0017】
図4は第1実施形態に係るネジ棒式の塗装装置を示している。
11はネジ棒でモータ12で回転駆動され、ネジ棒11にはナットを内蔵したスライダ13が取付けられ、このスライダ13にハケ10が保持されるようになっている。構造材Aはテーブル15上に載せられる。
構造材A上に一般塗装をし、ハケ10の押圧力を適宜に調節して、スライダ13を移動させると、塗膜上に多数の筋の付いた木目模様塗膜1を形成することができる。
【0018】
図5は第2実施形態に係るナライ方式の塗装装置を示している。
テーブル15、スライダ13、ハケ10は図4と同様である。21はスライダ13の左右動を案内するナライカムで、スライダ13は引張スプリング23で常時ナライカム21に当接するように付勢されている。22はスライダ13の上下動を案内するナライカムで、スラダ13は自重で常時ナライカム22に当接するようになっている。スライダ13の移動は、手動または適宜の押し引き機構により行う。
この装置を用いる場合は、塗膜上の筋に左右方向の変化を与えたり、筋の溝深さに深浅の違いを付けることができるので、より自然な木目模様塗膜1を付けることができる。
【0019】
図6は第3実施形態に係る数値制御方式の塗装装置を示している。
テーブル15、スライダ13、ハケ10は図4と実質同一である。また、長手方向の移動機構は、ネジ棒11とモータ12からなるネジ棒式のものを示しているが、これに限るものではない。
これに加えて、左右の微動機構30を構成するネジ棒31とモータ32、上下の微動機構40を構成するネジ棒41とモータ42を設けている。これらの各モータ12,32,42は数値制御装置により制御された方向と量だけ回転する。このため、ハケ10に左右方向の変化を与えたり、筋の溝深さに深浅の違いを付けることができるので、より自然な木目模様塗膜1を付けることができる。
【0020】
上記の各装置によると、木目模様の形成を自動化できるので、能率のよい作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)図は本発明の一実施形態に係る構造材料の斜視図、(B)図は断面図である。
【図2】本発明の製法の工程図である。
【図3】本発明の製法の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る塗装装置の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る塗装装置の斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る塗装装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
A 構造材
1 木目模様塗膜
2 保護塗膜
3 下地塗膜
10 ハケ
11 ネジ棒
12 モータ
15 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材の表面に木目模様塗膜が形成され、その上面に保護用塗膜が形成されている
ことを特徴とする木目模様付き構造材料。
【請求項2】
前記木目模様塗膜は、塗装された塗膜が半乾きの状態でハケ状物で掻取って多数本の筋を付けたものである
ことを特徴とする木目模様付き構造材料。
【請求項3】
構造材の表面に塗料を塗り、
該塗料が半乾きの状態でハケ状物で掻取り、その上面に保護塗装をし、乾燥させる
ことを特徴とする構造材への木目模様塗装方法。
【請求項4】
構造材を保持するテーブルと、
該テーブル上の構造材に沿ってハケ状物を移動させる移動機構とからなる
ことを特徴とする木目模様塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−168191(P2008−168191A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2063(P2007−2063)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000121899)横井鋼業株式会社 (2)
【出願人】(507009700)有限会社大林テクノ産業 (1)
【Fターム(参考)】