説明

木製可動ルーバ

【課題】 本発明は、充分な強度を保ちながら室内外の様々な条件の開口に取り付けることが可能な木製可動ルーバを提供することにある。
【解決手段】 建物の室内外の開口Lに沿って枠組みするフレーム1a,1b,2,3のうちの各縦框1a,1bの間に、多数の可動翼4を回転可能に軸支し、当該各可動翼4の各々の軸部5には、縦框1a,1b内Sに突入する歯車6をそれぞれ有する一方、該縦框1a,1b内Sにはラック7を上下動自在に備えており、該ラック7は、前記各歯車6とそれぞれ噛合し且つ縦框1a,1b内Sにおける上下動により、各可動翼4の傾斜角度を同期調節できるように形成してあり、前記ラック7は、各歯車6を囲むように配設した補強部材8を介して、前記縦框1a,1b内Sに備えてあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内外の開口に射し込む太陽光や照明による光線の照射を調整するためのルーバに関するものであって、その中でも特に天然木を用いた可動ルーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低コストで大量生産が可能であることから、現在の室内外用建具の主流はアルミ製のものに移行しつつあるが、一方で天然木を適用した木製建具が見直されており、その中でも特に、採光の具合を使用者の好みの状態に調節できる木製可動ルーバが注目を集めている。
【特許文献1】特開2002−47868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
木製建具に可動ルーバを適用する場合には、可動翼の傾斜角度の同期調節を行う機能部分を縦框に格納する都合上、該縦框内に格納用のスペースを設ける必要があり、従って前記スペースを設けた上で建具の強度を確保するために、縦框の幅を広くする必要があった。一方で可動ルーバを適用するアルミ建具では、堅牢なアルミ型材をフレームとして使用しているため、例えば、室内用の三枚引違戸などの比較的框幅の狭い建具に可動翼を適用しても、建具形成時に充分な強度を確保できるが、木製建具の場合には、狭い縦框内に前述の機能部分を格納するスペースを設けると強度が保たれず、可動ルーバの適用を狭めざるを得ないのが現状であった。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであって、充分な強度を保ちながら室内外の様々な条件の開口に取り付けることが可能な木製可動ルーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の木製可動ルーバは、建物の室内外の開口に沿って枠組みするフレームのうちの各縦框の間に、多数の可動翼を回転可能に軸支し、当該各可動翼の各々の軸部には、縦框内に突入する歯車をそれぞれ有する一方、該縦框内にはラックを上下動自在に備えており、該ラックは、前記各歯車とそれぞれ噛合し、且つ縦框内における上下動により各可動翼の傾斜角度を同期調節できるように形成してあり、前記ラックは、各歯車を囲むように配設した補強部材を介して、前記縦框内に備えてあることを特徴とする。
【0006】
ここで前後左右の方向は、木製可動ルーバを正面視した状態を基準としたものである。また本木製可動ルーバの適用箇所は、例えば窓や間仕切り戸等、建物の室内外問わずに利用できるため、前述した前後左右の方向については、本木製可動ルーバの使用形態によって室内、室外、隣室等に当てはめられる。また歯車を囲むように配設した補強部材とは、縦框の強度を確保するのは勿論、ラックの上下動及び各歯車の回転を妨げない形態である必要があることから、例えば縦框の長手方向に沿って上下に連続する筒型、箱型などに形成してあればよい。
【0007】
以上のように形成すると、各可動翼の軸部に有する歯車に噛合して回転力を付与するラックが、縦框内に介在する補強部材の中で上下動することにより、該補強部材は、縦框内で芯材的な役割を果たすと同時に、噛み合った状態にある各歯車及びラックを内部に収めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記補強部材は、縦框内に着脱可能に取り付けてあるので、可動翼の傾斜角度を同期調節するための機能部分(例えば歯車、ラックなど)を補強部材ごと縦框内から取り外し、さらに点検の後には再び補強部材ごと縦框内に取り付けるといった使い方が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、木製建具の縦框の中に、可動翼の傾斜角度の同期調節を行うための機能部分を収める場合であっても、補強部材を介して収めてあることにより、例えば室内用引違戸などの縦框を細くせざるを得ない木製建具であっても、充分な強度を確保した上で可動翼を適用でき、従って、様々な建物の室内外の開口部に対応した木製可動ルーバを提供することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、補強部材を縦框から着脱できることにより、可動翼の傾斜角度の同期調節を行うための機能部分のメンテナンスが容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による木製可動ルーバの実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
本木製可動ルーバの全体の構成は図1のように、建物の室内開口Lに装着する木製のフレームを形成する上桟2と下桟3、そして左右に平行に配置した各縦框1a,1bの間に、上下に等間隔に複数の木製の可動翼4が軸部5を介して縦回転可能に軸支してあり、当該各軸部5の先端にはそれぞれに歯車6を有している。また正面視右側の縦框1aには、該縦框1aの長手方向に沿って延びる凹溝Sを設けてあり、この凹溝Sには、該凹溝Sと一致する矩形筒型の芯材8を着脱自在に取り付けてあり、該芯材8の内部背面側には、ガイド溝Vに沿って上下動するラック7を備えており、このラック7には前記各歯車6が噛合し、ラック7の上下動により各可動翼4の傾斜角度を同期調節するものとなっている。
【0012】
また、芯材8内におけるラック7の上下動については、下桟3の上部に備えた操作レバー9との連動により行われる。具体的には図2(a)(b)に示すように、操作レバー9の左右にスライドする動きを、ラック7の上下の動きに変換するための伝達ユニット10を介在している。この伝達ユニット10の具体的な構成は、例えば図2(a)のように、操作レバー9を右側にスライドすれば、該操作レバー9側の裏面側に有する伝達ラック12と噛合する平歯車13aを時計回りに回し、この平歯車13aと一体的に備えてある駆動笠歯車11aも同時に回る。そして前記駆動笠歯車11aは、伝達ユニット10の右部に軸支した従動笠歯車11bと噛み合っており、この従動笠歯車11bが前記駆動笠歯車11aの回転に伴って反時計回りに回る。そうすると、従動笠歯車11bとシャフトを介して取り付けられる平歯車13bも同時に反時計回りに回転し、さらに前記平歯車13bとラック7とが噛合していることにより、該ラック7が下方に移動し、これに伴って各可動翼4の傾斜角度が、各々立てられた状態から水平となるように同期調節される。
尚、図2(b)は、操作レバー9を左側にスライドした場合の伝達ユニット10の動きを示すものであり、この場合、前述した右側へのスライド時とは反対に、ラック7が上方に移動して各可動翼4が各々水平な状態から立てられた状態となるように同期調節される。
【0013】
次に、本木製可動ルーバの主要部となる芯材8、及び該芯材8の縦框1aとの取付部位の各構成について、以下に説明する。
芯材8は図3のように、縦框1aの凹溝Sと一致した矩形筒型をなすものである。また芯材8を形成する周壁のうちの背面側の周壁14には、ガイド溝Vが設けてあり、このガイド溝Vにはラック7が上下摺動可能に備えられる。さらに芯材8の正面視左側の周壁15には、各可動翼4の軸部5の突出を受け入れる軸受孔17を上下に等間隔に多数設けている。また芯材8と縦框1aとの取り付けについては、該縦框1aの凹溝Sの正面側から芯材8を差し込み、この芯材8の正面視右側の周壁16から突出した軸部5の先端を縦框1a側に設けた受穴18に係合することで、芯材8を縦框1aの凹溝Sから下方に抜け出さないように形成している(図4参照)。
【0014】
また芯材8の縦框1a凹溝Sへの取り付けについては以下のように行うことも可能である。この取付手順では図5に示すように、前記凹溝S内の三方に、芯材8を構成する周壁14,16,19を予め配設し、さらに正面視左側の周壁16の上下に間隔をあけて歯車6を通した各軸部5を突出し、当該各軸部5の先端を縦框1aの各受穴18に係合する一方、当該各周壁14,16,19により三方を囲まれた歯車走行スペースRにおいて各歯車6とラック7とを噛合する。また芯材8の正面視左側の開放部分には、残る1つの周壁15を取り付けるが、この際には、前記各軸部5の他方先端を該周壁15の上下に設けられた各軸受孔17に通し、さらに周壁15の各軸受孔17から突出した各軸部5の他方先端を、対応する各可動翼4の側面に突入して当該各可動翼4を軸支することも可能である。
【0015】
以上のように芯材8を縦框1aの凹溝Sに収めることで図6(a)(b)に示すように、この芯材8の歯車走行スペースRにおいては、正面視左側の周壁14の軸受孔17に突入した軸部5の歯車6がラック7と噛合しており、このラック7の上下動によって歯車6に回転力を付与する一方、芯材8は、縦框1a外側の上下あるいは側部から加わる外力に対し、縦框1aの内側から抗するように配設してあることで、縦框1aの強度を保つことになり、建て込みに際してシビアな建物の室内外の開口において、縦框1aの太さにとらわれない様々な態様の木製可動ルーバを適用できる。
【0016】
図7は本発明の他の実施形態を示すものであり、この木製可動ルーバは、ルーバ本体の内部に減速ユニット20を組み込み、各可動翼4開閉時にツマミ9を比較的軽い力で動かせるように形成したものである。そして、前記減速ユニット20の具体的な構造は図8(a)(b)に示すように、ツマミ9の左右へのスライドと連動するとともに各々が直交して噛み合わされる駆動・従動の各笠歯車11a,11bと、各可動翼4に回転力を付与するラック7を上下する平歯車13bとの間に、大小各4個の径の異なる各減速歯車21a,21b,21c,21dをそれぞれ噛み合わせて構成するものである。このように各減速歯車21a,21b,21c,21dを噛み合わせると、各可動翼4を水平位置から下向きに傾斜する角度となるまで回動させるために、ツマミ9のスライドする距離を長くすることになるが、ツマミ9のスライド時の動きは大幅に軽くなり、その使用感は、ツマミ9のスライド量と各可動翼4の回動する距離とが同一である場合よりも飛躍的に向上することになる。
尚、本実施形態では減速ユニット20の各減速歯車21a,21b,21c,21dのギア比は、可動翼4が水平位置(開いた状態)から傾斜位置(閉じた状態)まで可変する回転距離を1とすれば、ツマミ9のスライドする距離が4となるように設定してあるが、前記ツマミ9をスライドする際の負荷が明らかに軽くなるように感じられるギア比であれば、特にその設定について限定するものではない。
【0017】
また本実施形態のツマミ9は図9のように、正面視した際にルーバ本体の一部に隠れるような構造となっており、具体的には、ルーバ本体における各可動翼4を配置する上側部分と、各可動翼4の回動に係る部位が格納された下側部分との間に指を入れるためのスリット23を設けている。このスリット23の上部側は、下向き凹状の溝24が形成してあり、該溝24内に沿ってツマミ9がスライドすることで減速ユニット20の各減速歯車21a,21b,21c,21dを経てラック7を上下動させ、各可動翼4に回転力を伝達することになる。以上のようにツマミ9を配設すると、本木製可動ルーバは正面視した際、一見可動翼4が所定の角度で固定されたデザインのように映るが、正面視して隠れた箇所にあるツマミ9を左右にスライドさせれば、各可動翼4を開け閉めできることから、デザインの意外性を楽しむといった使い方もできる。
尚、符号22はツマミを溝24位置で支持するアームである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の木製可動ルーバの全体を示す正面図である。
【図2(a)(b)】図1中Aを拡大した説明図である。
【図3】図1中Bを拡大した斜視図である。
【図4】芯材と縦框との取付状態を示す斜視図である。
【図5】同じく、芯材と縦框との取付状態を示す斜視図である。
【図6(a)(b)】図1中のC−C線を断面し、本木製可動ルーバの作動状態を説明した図である。
【図7】本発明の木製可動ルーバの他の実施形態を示す正面図である。
【図8(a)(b)】図7中Eを拡大して示す説明図である。
【図9】図7のF−F線縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1a,1b 縦框(フレーム)
2 上桟(フレーム)
3 下桟(フレーム)
4 可動翼
5 軸部
6 歯車
7 ラック
8 芯材(補強部材)
L 開口
S 凹溝(縦框内)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内外の開口(L)に沿って枠組みするフレーム(1a,1b,2,3)のうちの各縦框(1a,1b)の間に、多数の可動翼(4)を回転可能に軸支し、当該各可動翼(4)の各々の軸部(5)には、縦框(1a,1b)内(S)に突入する歯車(6)をそれぞれ有する一方、該縦框(1a,1b)内(S)にはラック(7)を上下動自在に備えており、該ラック(7)は、前記各歯車(6)とそれぞれ噛合し、且つ縦框(1a,1b)内(S)における上下動により各可動翼(4)の傾斜角度を同期調節できるように形成してあり、
前記ラック(7)は、各歯車(6)を囲むように配設した補強部材(8)を介して、前記縦框(1a,1b)内(S)に備えてあることを特徴とする木製可動ルーバ。
【請求項2】
前記補強部材(8)は、縦框(1a,1b)内(S)に着脱可能に取り付けてあることを特徴とする請求項1記載の木製可動ルーバ。

【図1】
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【図2(a)(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)(b)】
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【図7】
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【図8(a)(b)】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−23760(P2007−23760A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307492(P2005−307492)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(501400367)有限会社ライル (4)
【Fターム(参考)】