説明

木製床材向け防音材施工用接着剤

【課題】木製床材底部に防音材を、強度に優れた状態で接着させ、剥離時には防音材繊維が木製床材に残らず、剥離を容易に行う事ができ、かつ耐水性能に優れた水性接着剤を提供することを課題とする。
【解決手段】水性のエマルジョン樹脂として酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂、アクリル共重合樹脂の何れかの接着成分から選ばれた一つ以上のものを固形分で5〜35重量%と、澱粉系接着成分を固形分で5〜20重量%混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の床材底部に防音材を品質よく接着でき、剥離可能な接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般戸建住宅においては、木製床材が採用されることが多く、床の衝撃音が下階に伝わりやすくなっている為、種々の防音材を木製床材底部に接着し、防音性能を向上させている。また、リサイクル可能な材料であるポリエチレンテレフタレートを紡糸した、ポリエステル繊維綿やポリエステル不織布が防音材として利用され、それらと床面の接着に用いる接着剤には水性のエマルジョン樹脂が使用されている。
【0003】
しかし、水性のエマルジョン樹脂の使用では接着強度、耐水性能には優れるが、剥離時、防音材の内部破壊が起こり、木製床材底面に防音材の繊維が残ってしまう為、耐防火性、施工の容易さ、及びリサイクルにおいて優れたものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、木製床材底部に防音材を、強度に優れた状態で接着させ、剥離時には防音材繊維が木製床材に残らず、剥離を容易に行う事ができ、かつ耐水性能に優れた水性接着剤を提供することを課題とする。
【問題を解決する為の手段】
【0005】
本発明では、水性のエマルジョン樹脂として、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂、アクリル共重合樹脂の何れかの接着成分から選ばれた一つ以上のものを固形分5〜35重量%と、澱粉系接着成分を固形分5〜20重量%混合する事で上記課題を解決した。
【0006】
請求項1の床材は木製である事を特徴とするが、フローリング材に対しては特に効果的に使用できる。
【0007】
請求項1の防音材はポリエステル繊維綿の両面をポリエステル不織布で挟んだものである事を特徴とし、厚み2〜8mm程度のものが好ましい。
【0008】
接着剤の塗布量は固形分で5g〜200g/m程度が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施例を説明する。
【0010】
実施例1
JAS普及合板に属する、一類一等の合板と防音材を接着するものである。
接着剤は固形分50%のエチレン−酢酸ビニル共重合エマルジョン樹脂33%と澱粉糊67%の混合接着剤を使用し、前記合板へ全面塗布し(接着剤の塗布量は固形分で約40g/m)、防音材を貼り付け、自然乾燥した。
塗布後48時間後に防音材を剥がした状態と、その後、一般JAS規格「フローリングの日本農林規格」内の浸漬剥離試験に準じ、行った試験結果を表1に示す。
【0011】
比較例1
接着剤として固形分50%のエチレン−酢酸ビニル共重合エマルジョン樹脂を使用した以外は実施例1と同様の方法で試験を行った。
塗布後48時間後に防音材を剥がした状態と、その後、一般JAS規格「フローリングの日本農林規格」内の浸漬剥離試験に準じ、行った試験結果を表1に示す。
【0013】
比較例2
接着剤として固形分50%のエチレン−酢酸ビニル共重合エマルジョン樹脂8%と澱粉糊92%を使用した以外は実施例1と同様の方法で試験を行った。
塗布後48時間後に防音材を剥がした状態と、その後、一般JAS規格「フローリングの日本農林規格」内の浸漬剥離試験に準じ、行った試験結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
表1に示すように、本発明による実施例1では、防音材を強度に優れた状態で合板に接着させ、剥離時には防音材繊維が合板に残らず、容易に剥離を行う事ができ、かつ耐水性能に優れた接着剤であると言える。これに対して、比較例1では強度に優れた状態で接着を行えるが、剥離時に、防音材が内部破壊を起こしており、合板に防音材繊維が残る。比較例2では、水槽への浸漬中に接着成分が溶解して、防音材が水中で自然に剥離しており、比較例のどちらも、本発明における課題を満たすには至らなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅等の木製床材底部に防音材を接着するものであり、防音材が整合性よく接着し、剥離時には前記木製床材底部に防音材が残る事なく剥離でき、且つ、水の浸漬による接着強度の低下がない事を特徴とする水性樹脂接着剤。
【請求項2】
前記水性樹脂接着剤成分として、エマルジョン接着剤成分と、澱粉系接着剤成分とを含むことを特徴とする請求項1に記載された水性樹脂接着剤。
【請求項3】
前記エマルジョン接着剤成分として、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂、アクリル共重合樹脂の何れかの接着成分から選ばれた一つ以上のものを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載された水性樹脂接着剤。
【請求項4】
請求項2に記載された澱粉系接着剤成分を30〜90重量%含有することを特徴とする水性樹脂接着剤。
【請求項5】
請求項2に記載されたエマルジョン接着剤成分を10〜70重量%含有する事を特徴とする水性樹脂接着剤。

【公開番号】特開2010−37531(P2010−37531A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224077(P2008−224077)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(592226866)株式会社大力 (6)
【Fターム(参考)】