木質パネルの取付構造
【課題】調湿性能を向上でき、必要に応じて、異なる形態で木質パネルを取り付けることができる木質パネルの取付構造を提供する。
【解決手段】本発明は、屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造を対象とする。本発明の取付具5は、壁面設置体6と、パネル1間に配置されるパネル間設置体7とを有する。パネル間設置体7は、径方向の寸法が短い側が短径方向D1、長い側が長径方向D2とする。パネル間設置体7の短径方向両側に、隣り合うパネル1の対向縁部を支持するパネル間近接形態と、パネル間設置体7の長径方向両側に、隣り合うパネル1の対向縁部を支持するパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネル1が取り付けられるよう構成される。
【解決手段】本発明は、屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造を対象とする。本発明の取付具5は、壁面設置体6と、パネル1間に配置されるパネル間設置体7とを有する。パネル間設置体7は、径方向の寸法が短い側が短径方向D1、長い側が長径方向D2とする。パネル間設置体7の短径方向両側に、隣り合うパネル1の対向縁部を支持するパネル間近接形態と、パネル間設置体7の長径方向両側に、隣り合うパネル1の対向縁部を支持するパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネル1が取り付けられるよう構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家屋等の屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造および木質パネル施工用の取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅における室内の壁面構造としては、壁面に壁紙を貼り付けたり、木質パネル(化粧パネル)を複数並べて貼り付けたものが周知である。
【0003】
このうち下記特許文献1に示すように、木質パネルを用いるものは、木材自身が保有する湿度調整機能(調湿機能)によって、快適な居住環境を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−27033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の木質パネルの取付構造のように、木質パネルを単に、壁面に貼り付けるだけでは、木質パネルによる十分な調湿性能を得ることは困難である、という問題を抱えている。
【0006】
その一方、調湿性能を向上させるだけでは、ユーザーの多様なニーズに十分に答えることができず、例えば施工場所や施工目的によって、異なる形態で木質パネルを施工できるような技術の開発も望まれるところである。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、調湿性能を向上できる上さらに、必要に応じて、異なる形態で木質パネルを取り付けることができる木質パネルの取付構造および木質パネル施工用の取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネルの取付構造。
【0010】
[2]前記パネル間設置体は、正面視において横方向を短径方向、縦方向を長径方向とする略長方形に形成されている前項1に記載の木質パネルの取付構造。
【0011】
[3]前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部同士が接触することにより、隣り合う木質パネル間に隙間が形成されないようになっている前項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【0012】
[4]隣り合う木質パネルの対向縁部の各裏面側が、前記取付具によってそれぞれ支持される一方、
隣り合う木質パネルの対向縁部のうち、一方側の対向縁部における表面側に、他方側の対向縁部に向けて突出する庇片が設けられる前項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【0013】
[5]前記他方側の対向縁部における裏面側に、前記一方側対向縁部に向けて突出する下あご片が設けられ、
前記パネル間隔離形態では、前記庇片が前記下あご片の表面側を覆うように配置される前項4に記載の木質パネルの取付構造。
【0014】
[6]木質パネルは、帯板形状を有し、木質パネルが屋内壁面に並列に複数並んで配置される前項1〜5のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【0015】
[7]屋内壁面に沿って複数の木質パネルを並べて施工するに際して、木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための木質パネル施工用の取付具であって、
屋内壁面に設置される壁面設置体と、
その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを備え、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネル施工用の取付具。
【発明の効果】
【0016】
発明[1]の木質パネルの取付構造によれば、木質パネルを壁面から離間した状態に配置しているため、木質パネル全周面における屋内空気との接触面積を大きく確保でき、木質パネルによる屋内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を向上させることができる。
【0017】
さらに本発明は、パネル間の間隔が広くなるパネル間隔離形態と、狭くなるパネル間近接形態とのいずれの形態でも施工できるため、所望の形態での施工が可能となり、汎用性を向上させることができる。
【0018】
発明[2]の木質パネルの取付構造によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0019】
発明[3]の木質パネルの取付構造によれば、パネル間近接形態を選択した際に、パネル間に隙間が形成されないため、意匠性を確実に向上させることができる。
【0020】
発明[4]の木質パネルの取付構造によれば、庇片によって、パネル間の隙間を隠蔽できて、パネル表面側から壁面が不用意にも視認されるのを防止することができる。
【0021】
発明[5]の木質パネルの取付構造によれば、庇片および下あご片によって、パネル間の隙間をより確実に隠蔽できて、パネル表面側から壁面が不用意にも視認されるのを、より確実に防止することができる。
【0022】
発明[6]の木質パネルの取付構造によれば、帯状の木質パネルが並列に複数並んで配置されるため、意匠性の高い壁面構造を形成することができる。
【0023】
発明[7]の木質パネル施工用の取付金具によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図である。
【図2】図2は実施形態の壁面構造を示す側面断面図である。
【図3A】図3Aはパネル間近接形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの分解断面図である。
【図4A】図4Aはパネル間隔離形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの分解断面図である。
【図5】図5は実施形態に適用された取付具を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは実施形態に適用された取付具を縦方向から見た状態での断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態の取付具を横方向から見た状態での断面図である。
【図7】図7は実施形態に適用された取付具を示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は縦方向の端面図、同図(c)は裏面図、同図(d)は横方向の端面図である。
【図8】図8は実施形態に適用された木質パネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図、図2は側面断面図である。
【0026】
両図に示すように、この壁面構造は、一般住宅における室内の壁面(屋内壁面)Wに、多数の木質パネル1が取付具5を介して取り付けられている。なお以下の説明においては、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、後側方向(裏面側方向)とし、壁面Wから遠ざかっていく方向を、前側方向(表面側方向)として説明する。
【0027】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられて構成されている。
【0028】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板状の形状を有している。この木質パネル1は、杉や檜等からなる3枚の板材が、木目方向を交互に直交させるように配置した状態で積層された板材積層体によって構成されている。従って積層された3枚の板材のうち、表面側の板材(表面板材)および裏面側の板材(裏面板材)は木目方向が一致し、表面板材および裏面板材間に配置される中間の板材(中間板材)は表面板材および裏面板材に対し木目方向が直交している。
【0029】
なお本実施形態においては、表面板材および裏面板材の木目方向がパネル長さ方向(横方向)に一致し、中間板材の木目方向がパネル幅方向(縦方向)に一致するように構成されている。
【0030】
図3B,図8等に示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が階段状に切り欠かれることによって、表面側に庇片21が一側方(下方)に突出するように形成され、さらに庇片21の裏面側に中間凹段部22が形成されるとともに、その中間凹段部22の裏面側に裏面凹段部23が形成されている。
【0031】
中間凹段部22および裏面凹段部23間には、パネル長さ方向に連続する切込溝24が形成され、それにより、裏面凹段部23の側端面に、後に詳述する取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部25が形成されている。
【0032】
なお本実施形態において、木質パネル1の一側縁部2は、庇片21、中間凹段部22および裏面凹段部23を含むものである。さらに本実施形態において、一側縁部2の表面側は、庇片21によって構成されるとともに、一側縁部2の裏面側は、嵌合凸部25を含む裏面凹段部23によって構成されている。
【0033】
木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その表面側が切り欠かれることによって、裏面側に下あご片31が他側方(上方)に突出するように形成されるとともに、下あご片31の表面側に表面凹段部32が形成されている。
【0034】
木質パネル1における下あご片31の先端面には、パネル長さ方向に連続する切込溝34が形成され、下あご片31における切込溝34よりも裏面側の部分が、後に詳述するように取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部35として構成されている。
【0035】
なお本実施形態において、木質パネル1の他側縁部3は、下あご片31および表面凹段部32を含むものである。さらに本実施形態において、他側縁部3の表面側は、表面凹段部32によって構成されるとともに、他側縁部3の裏面側は、嵌合凸部35を含む下あご片31によって構成されている。
【0036】
一方図5〜7に示すように、取付具5は、壁面Wに設置される壁面設置体6と、壁面設置体6の前面側(表面側)に一体に形成され、かつ隣り合う木質パネル1,1間に配置されるパネル間設置体7とを備えたPOM(ポリアセタール)等の硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されている。
【0037】
壁面設置体6は、図7(a)に示す正面視において上下方向に対応する横方向D1が、同図の左右方向に対応する縦方向D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0038】
またパネル間設置体7は、同図の正面視において、壁面設置体6に対しサイズが小さい略相似形に形成されている。すなわちパネル間設置体7は、横方向(図7(a)の上下方向)D1が、縦方向(同図の左右方向)D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0039】
さらにパネル間設置体7の前端(表面側)外周には、溝壁部75が外径方向に突出するように形成されている。
【0040】
これにより、壁面設置体6と溝壁部75との間において、パネル間設置体7の横方向両側(図7(a)の上下両側)に、横方向両側に開放された第1嵌合溝71,71がそれぞれ形成されるとともに、パネル間設置体7の縦方向両側(同図の左右両側)に、縦方向両側に開放された第2嵌合溝72,72がそれぞれ形成される。
【0041】
ここで本実施形態においては、図6A,Bに示すように、第1嵌合溝71,71における互いの底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の横方向D1の寸法H1に相当し、第2嵌合溝72,72における底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の縦方向D2の寸法H2に相当することになる。
【0042】
また本発明においては、壁面Wに対し直交し、かつパネル間設置体7の中心(例えば、正面視において、パネル間設置体7における短径方向の中心線と長径方向の中心線とが交差する点、外接円中心、内接中心等)を通過する線分が、軸心として構成され、その軸心に対し直交する方向が径方向として構成されるものである。
【0043】
さらに本実施形態においては、横方向D1が短径方向として構成されるとともに、縦方向D2が長径方向として構成されている。言うまでもなく、横方向D1は、縦方向D2に対し正面視の状態で90°の角度に設定されている。
【0044】
また本実施形態において、横方向D1および縦方向D2は、共に径方向を構成するものである。
【0045】
図5〜7に示すように、取付具5の壁面設置体6の内部には、後面側(裏面側)に開放する裏面側凹部61が形成される。さらに取付具5の前部には、前面側(表面側)に開放し、かつ軸心に沿って、上記裏面側凹部61まで延びるビス取付用筒状凹部51が形成されいている。さらにビス取付用筒状凹部51の底壁部には、上記裏面側凹部61に連通するビス挿通孔52が形成されており、ビス取付用筒状凹部51が、ビス挿通孔52および裏面側凹部61を介して後方(裏面側)に開放されている。
【0046】
なお本実施形態においては、必要に応じて、ビス取付用筒状凹部51およびビス挿通孔52を総称して、ビス取付孔51,52と称する。
【0047】
また本実施形態においては、第1,第2嵌合溝71,72が、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3を支持するための第1,第2パネル支持部として構成されている。
【0048】
本実施形態においては、各木質パネル1が左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて配置されるようにして、壁面Wに施工されるものであり、後に詳述するように各木質パネル1の上下両側縁部2,3が、その両側縁部2,3に沿って所定の間隔おきに配置された複数の取付具5を介して、壁面Wに支持固定されるものである。
【0049】
さらに本実施形態において、各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0050】
なお、本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0051】
本実施形態では、木質パネル1を施工するに際して、木質パネル1が、上下に隣り合うパネル間に隙間が形成されないパネル間近接形態と、適度な隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態においても施工できるようになっている。
【0052】
まず始めに、パネル間に隙間が形成されないパネル間近接形態で施工する場合について説明する。
【0053】
すなわち図3A,3Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の横方向D1が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に挿通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、横方向両側の第1嵌合溝71,71が上下両側に配置されるとともに、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が左右両側に配置される。
【0054】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第1嵌合溝71内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0055】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の横方向一方側(下側)の第1嵌合溝71を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の横方向D1が上下方向に沿って配置される。
【0056】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面Wに沿わせるように配置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0057】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0058】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の横方向D1を上下方向に一致させるように配置し、横方向下側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようする。
【0059】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0060】
このようにパネル間近接形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における横方向両側の第1嵌合溝71,71に支持される。この状態において、パネル間設置体7の横方向寸法H1は短く設定されているため、上下の木質パネル1,1が近接した状態に配置される。具体的には、上側木質パネル1の下側縁部2における庇片21の先端が、下側木質パネル1の上側縁部3における表面凹段部32の側端面に当接し、表面(室内)から見た状態において、上下に隣り合う木質パネル1,1間に隙間が形成されない状態となる。
【0061】
なおこのパネル間近接形態において、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0062】
一方、パネル間に隙間が形成されるパネル間隔離形態で施工する場合、以下に説明するように、上記のパネル間近接形態の場合と比較して、各取付具5を軸心回りに90°回転させた状態にして施工するものである。
【0063】
すなわち図4A,4Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の下側縁部2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の縦方向D2が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に槽通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が上下両側に配置されるとともに、横方向両側の第1嵌合溝71,71が左右両側に配置される。
【0064】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第2嵌合溝72内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0065】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の縦方向一方側(下側)の第2嵌合溝72を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の縦方向D2が上下方向に沿って配置される。
【0066】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面に設置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0067】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0068】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の縦方向D2を上下方向に一致させるように配置し、縦方向下側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようにする。
【0069】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0070】
なお言うまでもなく、本発明において、施工手順は、上記のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0071】
このようにパネル間隔離形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における縦方向両側の第2嵌合溝72,72に支持される。この状態において、パネル間設置体7の縦方向寸法H2は長く設定されているため、上下の木質パネル1,1が離間した状態に配置される。具体的には、上側木質パネル1の下側縁部2における庇片21の先端が、下側木質パネル1の上側縁部3における表面凹段部32の側端面から離間して配置されて、隣り合う木質パネル1,1間に壁面Wに通ずる隙間が形成された状態となる。
【0072】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0073】
以上のように、本実施形態の木質パネルの取付構造によれば、室内の調湿性能を向上させることができる。すなわち木質材は、その表裏両面、左右両側端面および上下両側端面を含む全周面(周囲6面)から、水分(湿気成分)を吸収したり、放出することにより、周辺の湿度を適正に調整するものであるため、木質パネル1の全周面のうち、室内の空気(雰囲気)との接触する面積が大きくなるほど、吸放湿量を多くでき、調湿性能を向上させることができる。
【0074】
そこで本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wから離間した状態に配置するものであるため、木質パネル1の表裏両面を共に室内空気に接触させることができ、木質パネル1の全周面における室内空気(屋内空気)との接触面積を大きく確保することができる。このため各木質パネル1による室内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を十分に確保できて、快適な居住空間を確保することができる。
【0075】
特にパネル間隔離形態においては、隣り合う木質パネル1,1間に、パネル裏面に通じる隙間を形成しているため、その隙間を通って、室内の空気が、パネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面での吸放湿をより確実に行うことができ、より一層調湿性能を向上させることができる。
【0076】
なおパネル間隔離形態では、隣り合う木質パネル1,1において、上側の木質パネル1の下側縁部2における庇片21が、下側の木質パネル1の上側縁部3における表面凹段部32の表面側に配置されて、パネル間の隙間を被覆しているため、室内側からパネル間を通して壁面Wが視認されるような不具合を確実に防止することができる。
【0077】
また本実施形態においては、パネル間に隙間が形成されないパネル間近接形態と、隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態でも施工できるようにしているため、居住者等のユーザーは、施工場所や施工目的に応じて、上記2つの形態の中から、好ましい形態を選択することができる。例えばリビングルーム等の場所では、パネル間近接形態で施工することによって、パネル間に隙間が形成されず、意匠性の高い壁面構造を形成できる一方、寝室等の場所では、パネル間隔離形態で施工することによって、より一層優れた調湿性能が得られ、より一層快適な居住空間を得ることができる。このようにユーザーのニーズ等に合わせて、調湿性能を重視したり、意匠性を重視した壁面構造を形成することが可能であり、選択肢が増えて、汎用性を向上させることができ、高い商品価値を得ることができる。
【0078】
また本実施形態では、パネル間近接形態およびパネル間隔離形態のいずれにおいても1種類の取付具5によって施工できるようにしているため、部品点数の削減によって、コストを削減できる上、部品(取付具5)の種類を間違えたりするようなミスが生じるのも確実に防止でき、パネル施工作業を簡単に行うことができる。
【0079】
さらに本実施形態においては、木質パネル1の構成材料として、杉や檜を用いているため、より一層調湿性能を向上させることができる。すなわち杉や檜は、針葉樹材で比重が小さく、木材の中でも、湿気成分の吸放出機能が大きいため、上記の調湿性能をより向上させることができる。
【0080】
また本実施形態において、例えば、木質パネル1の表面や裏面に溝や凸筋等の凹凸形状を形成することによって、木質パネル1の外表面積をさらに増大させることができ、調湿性能を一層向上させることができる。
【0081】
ところで、本実施形態のパネル取付構造が適用された壁面構造において、液晶テレビ、プラズマテレビ、リアプロジェクションテレビ、有機ELテレビ、FEDテレビ等の薄型テレビのディスプレイパネルを壁掛け状態で取り付けるような場合や、AVシステムのスピーカーを壁掛け状態で取り付けるような場合には、木質パネルと壁面との間の空間(隙間)にテレビ用やスピーカー用等の電気配線を敷設することができる。これにより、スペースの有効利用を図りつつ、配線を隠蔽できて、美観を向上できる上さらに、配線を自在に張りめぐらせることができて、汎用性を向上させることができる。
【0082】
さらに壁掛けされた薄型テレビ等の電気製品の関連機器例えば、テレビチューナー、HDDレコーダー、ステレオチューナー、ステレオアンプ等を木質パネルと壁面との間の空間に収容することも可能であり、それによって、より一層、スペースの有効利用およびデザイン性の向上を図ることができる。
【0083】
なお上記実施形態においては、木質パネル1として帯板形状のものを用いているが、それだけに限られず、本発明において、木質パネルの形状は特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の四角形状のもの、四角形以外の多角形状のもの、異形状のものを用いても良い。さらに異なる大きさの木質パネルを複合して用いるようにしても良い。
【0084】
また上記実施形態においては、ひとつの壁面を仕上げるに際して、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とのいずれか一方のみで施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ひとつの壁面に対し、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とを併用して施工するようにしても良い。例えば木質パネルを1枚毎にパネル間近接形態とパネル間隔離形態とで交互に施工することにより、2枚毎にパネル間に隙間が形成されるように施工しても良い。さらに多数のパネル間のうち、ランダムな位置のパネル間に隙間を形成するようにしても良い。
【0085】
また上記実施形態において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を接触させるようにしているが、それだけに限られず、本発明において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を必ずしも接触させる必要はなく、隣り合う木質パネルの対向縁部の間隔が、パネル間隔離形態の場合よりも狭くなっていれば良い。
【0086】
さらに上記実施形態においては、木質パネルを、その庇片が形成される側の縁部(一側縁部)を上側して施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、庇片が形成される側の縁部(一側縁部)を下側して施工するようにしても良い。
【0087】
また上記実施形態においては、帯板形状の木質パネル1を水平方向(左右方向)に沿わせた状態で、上下方向に並列に並べて複数配置するように施工する場合を例に挙げて説明したが、本発明において、木質パネルの配列方向は限定されるものではない。例えば本発明において、帯板形状の木質パネル垂直方向(上下方向)に沿わせて配置した状態で、横方向に並列に並べて複数配置するように施工しても良い。この場合、木質パネルの配列方向は水平方向(左右方向)となる。
【0088】
また上記実施形態においては、パネル間設置体として、正面視四角形状(長方形)のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、他の形状、例えば5角形以上の多角形のものを用いても良い。
【0089】
また本発明において、一径方向とは、径方向のいずれか一つの方向であり、他の径方向とは一径方向に対し直交し、かつ径方向のいずれか一つの方向である。
【0090】
また上記実施形態においては、木質パネルとして、3枚の板材が積層された板材積層体によって構成されたものを使用しているが、それだけに限られず、本発明においては、木質パネルを1枚の板材によって構成しても良いし、2枚の板材、または4枚以上の板材が積層された板材積層体によって構成するようにしても良い。
【0091】
さらに本発明において、木質パネルは、部分的に、合成樹脂や合成ゴム等の非木質系の部材が含まれていても良い。
【0092】
また取付具の素材はPOM等の高質合成樹脂だけに限られず、取付具を金属等によって構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明の木質パネルの取付構造は、屋内の壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される壁面構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:木質パネル
2:一側縁部(下側縁部、対向縁部)
21:庇片
3:他側縁部(上側縁部、対向縁部)
31:下あご片
5:取付具
6:壁面設置体
7:パネル間設置体
D1:横方向(短径方向)
D2:縦方向(長径方向)
H1:横方向寸法
H2:縦方向寸法
W:壁面(屋内壁面)
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家屋等の屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造および木質パネル施工用の取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅における室内の壁面構造としては、壁面に壁紙を貼り付けたり、木質パネル(化粧パネル)を複数並べて貼り付けたものが周知である。
【0003】
このうち下記特許文献1に示すように、木質パネルを用いるものは、木材自身が保有する湿度調整機能(調湿機能)によって、快適な居住環境を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−27033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の木質パネルの取付構造のように、木質パネルを単に、壁面に貼り付けるだけでは、木質パネルによる十分な調湿性能を得ることは困難である、という問題を抱えている。
【0006】
その一方、調湿性能を向上させるだけでは、ユーザーの多様なニーズに十分に答えることができず、例えば施工場所や施工目的によって、異なる形態で木質パネルを施工できるような技術の開発も望まれるところである。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、調湿性能を向上できる上さらに、必要に応じて、異なる形態で木質パネルを取り付けることができる木質パネルの取付構造および木質パネル施工用の取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネルの取付構造。
【0010】
[2]前記パネル間設置体は、正面視において横方向を短径方向、縦方向を長径方向とする略長方形に形成されている前項1に記載の木質パネルの取付構造。
【0011】
[3]前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部同士が接触することにより、隣り合う木質パネル間に隙間が形成されないようになっている前項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【0012】
[4]隣り合う木質パネルの対向縁部の各裏面側が、前記取付具によってそれぞれ支持される一方、
隣り合う木質パネルの対向縁部のうち、一方側の対向縁部における表面側に、他方側の対向縁部に向けて突出する庇片が設けられる前項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【0013】
[5]前記他方側の対向縁部における裏面側に、前記一方側対向縁部に向けて突出する下あご片が設けられ、
前記パネル間隔離形態では、前記庇片が前記下あご片の表面側を覆うように配置される前項4に記載の木質パネルの取付構造。
【0014】
[6]木質パネルは、帯板形状を有し、木質パネルが屋内壁面に並列に複数並んで配置される前項1〜5のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【0015】
[7]屋内壁面に沿って複数の木質パネルを並べて施工するに際して、木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための木質パネル施工用の取付具であって、
屋内壁面に設置される壁面設置体と、
その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを備え、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネル施工用の取付具。
【発明の効果】
【0016】
発明[1]の木質パネルの取付構造によれば、木質パネルを壁面から離間した状態に配置しているため、木質パネル全周面における屋内空気との接触面積を大きく確保でき、木質パネルによる屋内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を向上させることができる。
【0017】
さらに本発明は、パネル間の間隔が広くなるパネル間隔離形態と、狭くなるパネル間近接形態とのいずれの形態でも施工できるため、所望の形態での施工が可能となり、汎用性を向上させることができる。
【0018】
発明[2]の木質パネルの取付構造によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0019】
発明[3]の木質パネルの取付構造によれば、パネル間近接形態を選択した際に、パネル間に隙間が形成されないため、意匠性を確実に向上させることができる。
【0020】
発明[4]の木質パネルの取付構造によれば、庇片によって、パネル間の隙間を隠蔽できて、パネル表面側から壁面が不用意にも視認されるのを防止することができる。
【0021】
発明[5]の木質パネルの取付構造によれば、庇片および下あご片によって、パネル間の隙間をより確実に隠蔽できて、パネル表面側から壁面が不用意にも視認されるのを、より確実に防止することができる。
【0022】
発明[6]の木質パネルの取付構造によれば、帯状の木質パネルが並列に複数並んで配置されるため、意匠性の高い壁面構造を形成することができる。
【0023】
発明[7]の木質パネル施工用の取付金具によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図である。
【図2】図2は実施形態の壁面構造を示す側面断面図である。
【図3A】図3Aはパネル間近接形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの分解断面図である。
【図4A】図4Aはパネル間隔離形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの分解断面図である。
【図5】図5は実施形態に適用された取付具を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは実施形態に適用された取付具を縦方向から見た状態での断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態の取付具を横方向から見た状態での断面図である。
【図7】図7は実施形態に適用された取付具を示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は縦方向の端面図、同図(c)は裏面図、同図(d)は横方向の端面図である。
【図8】図8は実施形態に適用された木質パネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図、図2は側面断面図である。
【0026】
両図に示すように、この壁面構造は、一般住宅における室内の壁面(屋内壁面)Wに、多数の木質パネル1が取付具5を介して取り付けられている。なお以下の説明においては、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、後側方向(裏面側方向)とし、壁面Wから遠ざかっていく方向を、前側方向(表面側方向)として説明する。
【0027】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられて構成されている。
【0028】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板状の形状を有している。この木質パネル1は、杉や檜等からなる3枚の板材が、木目方向を交互に直交させるように配置した状態で積層された板材積層体によって構成されている。従って積層された3枚の板材のうち、表面側の板材(表面板材)および裏面側の板材(裏面板材)は木目方向が一致し、表面板材および裏面板材間に配置される中間の板材(中間板材)は表面板材および裏面板材に対し木目方向が直交している。
【0029】
なお本実施形態においては、表面板材および裏面板材の木目方向がパネル長さ方向(横方向)に一致し、中間板材の木目方向がパネル幅方向(縦方向)に一致するように構成されている。
【0030】
図3B,図8等に示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が階段状に切り欠かれることによって、表面側に庇片21が一側方(下方)に突出するように形成され、さらに庇片21の裏面側に中間凹段部22が形成されるとともに、その中間凹段部22の裏面側に裏面凹段部23が形成されている。
【0031】
中間凹段部22および裏面凹段部23間には、パネル長さ方向に連続する切込溝24が形成され、それにより、裏面凹段部23の側端面に、後に詳述する取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部25が形成されている。
【0032】
なお本実施形態において、木質パネル1の一側縁部2は、庇片21、中間凹段部22および裏面凹段部23を含むものである。さらに本実施形態において、一側縁部2の表面側は、庇片21によって構成されるとともに、一側縁部2の裏面側は、嵌合凸部25を含む裏面凹段部23によって構成されている。
【0033】
木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その表面側が切り欠かれることによって、裏面側に下あご片31が他側方(上方)に突出するように形成されるとともに、下あご片31の表面側に表面凹段部32が形成されている。
【0034】
木質パネル1における下あご片31の先端面には、パネル長さ方向に連続する切込溝34が形成され、下あご片31における切込溝34よりも裏面側の部分が、後に詳述するように取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部35として構成されている。
【0035】
なお本実施形態において、木質パネル1の他側縁部3は、下あご片31および表面凹段部32を含むものである。さらに本実施形態において、他側縁部3の表面側は、表面凹段部32によって構成されるとともに、他側縁部3の裏面側は、嵌合凸部35を含む下あご片31によって構成されている。
【0036】
一方図5〜7に示すように、取付具5は、壁面Wに設置される壁面設置体6と、壁面設置体6の前面側(表面側)に一体に形成され、かつ隣り合う木質パネル1,1間に配置されるパネル間設置体7とを備えたPOM(ポリアセタール)等の硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されている。
【0037】
壁面設置体6は、図7(a)に示す正面視において上下方向に対応する横方向D1が、同図の左右方向に対応する縦方向D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0038】
またパネル間設置体7は、同図の正面視において、壁面設置体6に対しサイズが小さい略相似形に形成されている。すなわちパネル間設置体7は、横方向(図7(a)の上下方向)D1が、縦方向(同図の左右方向)D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0039】
さらにパネル間設置体7の前端(表面側)外周には、溝壁部75が外径方向に突出するように形成されている。
【0040】
これにより、壁面設置体6と溝壁部75との間において、パネル間設置体7の横方向両側(図7(a)の上下両側)に、横方向両側に開放された第1嵌合溝71,71がそれぞれ形成されるとともに、パネル間設置体7の縦方向両側(同図の左右両側)に、縦方向両側に開放された第2嵌合溝72,72がそれぞれ形成される。
【0041】
ここで本実施形態においては、図6A,Bに示すように、第1嵌合溝71,71における互いの底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の横方向D1の寸法H1に相当し、第2嵌合溝72,72における底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の縦方向D2の寸法H2に相当することになる。
【0042】
また本発明においては、壁面Wに対し直交し、かつパネル間設置体7の中心(例えば、正面視において、パネル間設置体7における短径方向の中心線と長径方向の中心線とが交差する点、外接円中心、内接中心等)を通過する線分が、軸心として構成され、その軸心に対し直交する方向が径方向として構成されるものである。
【0043】
さらに本実施形態においては、横方向D1が短径方向として構成されるとともに、縦方向D2が長径方向として構成されている。言うまでもなく、横方向D1は、縦方向D2に対し正面視の状態で90°の角度に設定されている。
【0044】
また本実施形態において、横方向D1および縦方向D2は、共に径方向を構成するものである。
【0045】
図5〜7に示すように、取付具5の壁面設置体6の内部には、後面側(裏面側)に開放する裏面側凹部61が形成される。さらに取付具5の前部には、前面側(表面側)に開放し、かつ軸心に沿って、上記裏面側凹部61まで延びるビス取付用筒状凹部51が形成されいている。さらにビス取付用筒状凹部51の底壁部には、上記裏面側凹部61に連通するビス挿通孔52が形成されており、ビス取付用筒状凹部51が、ビス挿通孔52および裏面側凹部61を介して後方(裏面側)に開放されている。
【0046】
なお本実施形態においては、必要に応じて、ビス取付用筒状凹部51およびビス挿通孔52を総称して、ビス取付孔51,52と称する。
【0047】
また本実施形態においては、第1,第2嵌合溝71,72が、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3を支持するための第1,第2パネル支持部として構成されている。
【0048】
本実施形態においては、各木質パネル1が左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて配置されるようにして、壁面Wに施工されるものであり、後に詳述するように各木質パネル1の上下両側縁部2,3が、その両側縁部2,3に沿って所定の間隔おきに配置された複数の取付具5を介して、壁面Wに支持固定されるものである。
【0049】
さらに本実施形態において、各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0050】
なお、本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0051】
本実施形態では、木質パネル1を施工するに際して、木質パネル1が、上下に隣り合うパネル間に隙間が形成されないパネル間近接形態と、適度な隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態においても施工できるようになっている。
【0052】
まず始めに、パネル間に隙間が形成されないパネル間近接形態で施工する場合について説明する。
【0053】
すなわち図3A,3Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の横方向D1が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に挿通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、横方向両側の第1嵌合溝71,71が上下両側に配置されるとともに、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が左右両側に配置される。
【0054】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第1嵌合溝71内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0055】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の横方向一方側(下側)の第1嵌合溝71を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の横方向D1が上下方向に沿って配置される。
【0056】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面Wに沿わせるように配置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0057】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0058】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の横方向D1を上下方向に一致させるように配置し、横方向下側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようする。
【0059】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0060】
このようにパネル間近接形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における横方向両側の第1嵌合溝71,71に支持される。この状態において、パネル間設置体7の横方向寸法H1は短く設定されているため、上下の木質パネル1,1が近接した状態に配置される。具体的には、上側木質パネル1の下側縁部2における庇片21の先端が、下側木質パネル1の上側縁部3における表面凹段部32の側端面に当接し、表面(室内)から見た状態において、上下に隣り合う木質パネル1,1間に隙間が形成されない状態となる。
【0061】
なおこのパネル間近接形態において、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0062】
一方、パネル間に隙間が形成されるパネル間隔離形態で施工する場合、以下に説明するように、上記のパネル間近接形態の場合と比較して、各取付具5を軸心回りに90°回転させた状態にして施工するものである。
【0063】
すなわち図4A,4Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の下側縁部2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の縦方向D2が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に槽通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が上下両側に配置されるとともに、横方向両側の第1嵌合溝71,71が左右両側に配置される。
【0064】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第2嵌合溝72内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0065】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の縦方向一方側(下側)の第2嵌合溝72を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の縦方向D2が上下方向に沿って配置される。
【0066】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面に設置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0067】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0068】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の縦方向D2を上下方向に一致させるように配置し、縦方向下側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようにする。
【0069】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0070】
なお言うまでもなく、本発明において、施工手順は、上記のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0071】
このようにパネル間隔離形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における縦方向両側の第2嵌合溝72,72に支持される。この状態において、パネル間設置体7の縦方向寸法H2は長く設定されているため、上下の木質パネル1,1が離間した状態に配置される。具体的には、上側木質パネル1の下側縁部2における庇片21の先端が、下側木質パネル1の上側縁部3における表面凹段部32の側端面から離間して配置されて、隣り合う木質パネル1,1間に壁面Wに通ずる隙間が形成された状態となる。
【0072】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0073】
以上のように、本実施形態の木質パネルの取付構造によれば、室内の調湿性能を向上させることができる。すなわち木質材は、その表裏両面、左右両側端面および上下両側端面を含む全周面(周囲6面)から、水分(湿気成分)を吸収したり、放出することにより、周辺の湿度を適正に調整するものであるため、木質パネル1の全周面のうち、室内の空気(雰囲気)との接触する面積が大きくなるほど、吸放湿量を多くでき、調湿性能を向上させることができる。
【0074】
そこで本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wから離間した状態に配置するものであるため、木質パネル1の表裏両面を共に室内空気に接触させることができ、木質パネル1の全周面における室内空気(屋内空気)との接触面積を大きく確保することができる。このため各木質パネル1による室内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を十分に確保できて、快適な居住空間を確保することができる。
【0075】
特にパネル間隔離形態においては、隣り合う木質パネル1,1間に、パネル裏面に通じる隙間を形成しているため、その隙間を通って、室内の空気が、パネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面での吸放湿をより確実に行うことができ、より一層調湿性能を向上させることができる。
【0076】
なおパネル間隔離形態では、隣り合う木質パネル1,1において、上側の木質パネル1の下側縁部2における庇片21が、下側の木質パネル1の上側縁部3における表面凹段部32の表面側に配置されて、パネル間の隙間を被覆しているため、室内側からパネル間を通して壁面Wが視認されるような不具合を確実に防止することができる。
【0077】
また本実施形態においては、パネル間に隙間が形成されないパネル間近接形態と、隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態でも施工できるようにしているため、居住者等のユーザーは、施工場所や施工目的に応じて、上記2つの形態の中から、好ましい形態を選択することができる。例えばリビングルーム等の場所では、パネル間近接形態で施工することによって、パネル間に隙間が形成されず、意匠性の高い壁面構造を形成できる一方、寝室等の場所では、パネル間隔離形態で施工することによって、より一層優れた調湿性能が得られ、より一層快適な居住空間を得ることができる。このようにユーザーのニーズ等に合わせて、調湿性能を重視したり、意匠性を重視した壁面構造を形成することが可能であり、選択肢が増えて、汎用性を向上させることができ、高い商品価値を得ることができる。
【0078】
また本実施形態では、パネル間近接形態およびパネル間隔離形態のいずれにおいても1種類の取付具5によって施工できるようにしているため、部品点数の削減によって、コストを削減できる上、部品(取付具5)の種類を間違えたりするようなミスが生じるのも確実に防止でき、パネル施工作業を簡単に行うことができる。
【0079】
さらに本実施形態においては、木質パネル1の構成材料として、杉や檜を用いているため、より一層調湿性能を向上させることができる。すなわち杉や檜は、針葉樹材で比重が小さく、木材の中でも、湿気成分の吸放出機能が大きいため、上記の調湿性能をより向上させることができる。
【0080】
また本実施形態において、例えば、木質パネル1の表面や裏面に溝や凸筋等の凹凸形状を形成することによって、木質パネル1の外表面積をさらに増大させることができ、調湿性能を一層向上させることができる。
【0081】
ところで、本実施形態のパネル取付構造が適用された壁面構造において、液晶テレビ、プラズマテレビ、リアプロジェクションテレビ、有機ELテレビ、FEDテレビ等の薄型テレビのディスプレイパネルを壁掛け状態で取り付けるような場合や、AVシステムのスピーカーを壁掛け状態で取り付けるような場合には、木質パネルと壁面との間の空間(隙間)にテレビ用やスピーカー用等の電気配線を敷設することができる。これにより、スペースの有効利用を図りつつ、配線を隠蔽できて、美観を向上できる上さらに、配線を自在に張りめぐらせることができて、汎用性を向上させることができる。
【0082】
さらに壁掛けされた薄型テレビ等の電気製品の関連機器例えば、テレビチューナー、HDDレコーダー、ステレオチューナー、ステレオアンプ等を木質パネルと壁面との間の空間に収容することも可能であり、それによって、より一層、スペースの有効利用およびデザイン性の向上を図ることができる。
【0083】
なお上記実施形態においては、木質パネル1として帯板形状のものを用いているが、それだけに限られず、本発明において、木質パネルの形状は特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の四角形状のもの、四角形以外の多角形状のもの、異形状のものを用いても良い。さらに異なる大きさの木質パネルを複合して用いるようにしても良い。
【0084】
また上記実施形態においては、ひとつの壁面を仕上げるに際して、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とのいずれか一方のみで施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ひとつの壁面に対し、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とを併用して施工するようにしても良い。例えば木質パネルを1枚毎にパネル間近接形態とパネル間隔離形態とで交互に施工することにより、2枚毎にパネル間に隙間が形成されるように施工しても良い。さらに多数のパネル間のうち、ランダムな位置のパネル間に隙間を形成するようにしても良い。
【0085】
また上記実施形態において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を接触させるようにしているが、それだけに限られず、本発明において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を必ずしも接触させる必要はなく、隣り合う木質パネルの対向縁部の間隔が、パネル間隔離形態の場合よりも狭くなっていれば良い。
【0086】
さらに上記実施形態においては、木質パネルを、その庇片が形成される側の縁部(一側縁部)を上側して施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、庇片が形成される側の縁部(一側縁部)を下側して施工するようにしても良い。
【0087】
また上記実施形態においては、帯板形状の木質パネル1を水平方向(左右方向)に沿わせた状態で、上下方向に並列に並べて複数配置するように施工する場合を例に挙げて説明したが、本発明において、木質パネルの配列方向は限定されるものではない。例えば本発明において、帯板形状の木質パネル垂直方向(上下方向)に沿わせて配置した状態で、横方向に並列に並べて複数配置するように施工しても良い。この場合、木質パネルの配列方向は水平方向(左右方向)となる。
【0088】
また上記実施形態においては、パネル間設置体として、正面視四角形状(長方形)のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、他の形状、例えば5角形以上の多角形のものを用いても良い。
【0089】
また本発明において、一径方向とは、径方向のいずれか一つの方向であり、他の径方向とは一径方向に対し直交し、かつ径方向のいずれか一つの方向である。
【0090】
また上記実施形態においては、木質パネルとして、3枚の板材が積層された板材積層体によって構成されたものを使用しているが、それだけに限られず、本発明においては、木質パネルを1枚の板材によって構成しても良いし、2枚の板材、または4枚以上の板材が積層された板材積層体によって構成するようにしても良い。
【0091】
さらに本発明において、木質パネルは、部分的に、合成樹脂や合成ゴム等の非木質系の部材が含まれていても良い。
【0092】
また取付具の素材はPOM等の高質合成樹脂だけに限られず、取付具を金属等によって構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明の木質パネルの取付構造は、屋内の壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される壁面構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:木質パネル
2:一側縁部(下側縁部、対向縁部)
21:庇片
3:他側縁部(上側縁部、対向縁部)
31:下あご片
5:取付具
6:壁面設置体
7:パネル間設置体
D1:横方向(短径方向)
D2:縦方向(長径方向)
H1:横方向寸法
H2:縦方向寸法
W:壁面(屋内壁面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネルの取付構造。
【請求項2】
前記パネル間設置体は、正面視において横方向を短径方向、縦方向を長径方向とする略長方形に形成されている請求項1に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項3】
前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部同士が接触することにより、隣り合う木質パネル間に隙間が形成されないようになっている請求項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項4】
隣り合う木質パネルの対向縁部の各裏面側が、前記取付具によってそれぞれ支持される一方、
隣り合う木質パネルの対向縁部のうち、一方側の対向縁部における表面側に、他方側の対向縁部に向けて突出する庇片が設けられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項5】
前記他方側の対向縁部における裏面側に、前記一方側対向縁部に向けて突出する下あご片が設けられ、
前記パネル間隔離形態では、前記庇片が前記下あご片の表面側を覆うように配置される請求項4に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項6】
木質パネルは、帯板形状を有し、木質パネルが屋内壁面に並列に複数並んで配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項7】
屋内壁面に沿って複数の木質パネルを並べて施工するに際して、木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための木質パネル施工用の取付具であって、
屋内壁面に設置される壁面設置体と、
その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを備え、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネル施工用の取付具。
【請求項1】
屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネルの取付構造。
【請求項2】
前記パネル間設置体は、正面視において横方向を短径方向、縦方向を長径方向とする略長方形に形成されている請求項1に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項3】
前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部同士が接触することにより、隣り合う木質パネル間に隙間が形成されないようになっている請求項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項4】
隣り合う木質パネルの対向縁部の各裏面側が、前記取付具によってそれぞれ支持される一方、
隣り合う木質パネルの対向縁部のうち、一方側の対向縁部における表面側に、他方側の対向縁部に向けて突出する庇片が設けられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項5】
前記他方側の対向縁部における裏面側に、前記一方側対向縁部に向けて突出する下あご片が設けられ、
前記パネル間隔離形態では、前記庇片が前記下あご片の表面側を覆うように配置される請求項4に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項6】
木質パネルは、帯板形状を有し、木質パネルが屋内壁面に並列に複数並んで配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項7】
屋内壁面に沿って複数の木質パネルを並べて施工するに際して、木質パネルを屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に取り付けるための木質パネル施工用の取付具であって、
屋内壁面に設置される壁面設置体と、
その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを備え、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成されたことを特徴とする木質パネル施工用の取付具。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−106131(P2011−106131A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260606(P2009−260606)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]