説明

木質ペレットを使用したフェロニッケル製錬方法

【課題】フェロニッケル製錬において、ロータリーキルンに投入される石炭の一部を木質ペレットで代替することが可能な、木質ペレットを使用したフェロニッケル製錬方法を提供する。
【解決手段】ニッケル酸化鉱をロータリーキルンで焼成する工程、次いで、得られたか焼鉱を電気炉に送り還元を行う工程を含むフェロニッケルの製錬方法であって、
ロータリーキルンでの焼成工程では、ロータリーキルンの原料投入口または原料投入口からか焼鉱排出口の中間で石炭を投入する際に、石炭の少なくとも一部の代替として、ホワイトペレット、バークペレットまたは全木ペレットから選ばれる少なくとも一種の木質ペレットを用いることを特徴とするフェロニッケルの製錬方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロニッケル製錬方法に関し、さらに詳しくは、フェロニッケル製錬において、ロータリーキルンの燃料及び還元剤として使用されている石炭などの化石系炭材を部分的に代替する木質ペレットを使用したフェロニッケル製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェロニッケル製錬では、ニッケル酸化鉱を焼成する工程において、ロータリーキルンが一般的に用いられている。
上記焼成工程では、鉱石及び石炭をロータリーキルンに装入し、水分及び結晶水が除かれたか焼鉱が生成される。石炭は、ロータリーキルンの原料投入口、及び原料投入口からか焼鉱排出口の中間で、投入(以下、投炭と称する場合がある)され、その一部は、ロータリーキルン内で燃焼して燃料として寄与し、残りは、か焼鉱と共に排出され、次工程の電気炉へ送られ、電気炉でFe、Niを溶融還元するための還元剤として寄与している。
【0003】
ロータリーキルンに石炭を投入して、石炭を燃料や還元剤などとして利用する技術については、例えば、特許文献1〜3などに開示されており、広く知られている。
また、通常、ロータリーキルンに投入されるニッケル酸化鉱は、粒度が〜50mm程度、密度が2〜3g/cm程度、含有水分が約20wt%であり、同じく石炭は、粒度が〜50mm程度、密度が1〜2g/cm程度、含有水分が約10wt%である。
前記のニッケル酸化鉱は、長さが約100mのロータリキルンを操業する際には、60℃程度で投入口から投入され、ロータリーキルン内で排出口に向かって徐々に移動しながら、第1ステップとして、ニッケル酸化鉱投入口付近から30m付近までに約200℃に徐々に昇温され、第2ステップとして、およそ80mまでに約900℃になり、最終ステップとしてか焼鉱として排出口から排出される際には、約800℃となっている。
投炭は、前記の第2ステップの範囲で行なわれることが一般的であり、ロータリーキルン内の高温領域を広げるため、ロータリーキルンの原料投入口からか焼鉱排出口の中間の位置から投入されることが好ましいと、されている。
【0004】
一方、フェロニッケル製錬において、上記のように石炭を燃焼させるとCOを排出するが、世界的にもCO排出量の削減が求められており、フェロニッケル製錬においても、CO排出量の削減を指向した操業が求められており、ロータリーキルンに投入される石炭についても、バイオマス、木材チップなど、カーボンニュートラルな材料への代替が社会的に要請されている。
カーボンニュートラルな材料の利用については、例えば、特許文献4には、酸素を遮断した加熱炉(炭化炉)でバイオマスを炭化し、その炭化物を還元炉にて還元剤として使用して溶融金属を製造する技術が公開されているが、バイオマスを別工程(炭化炉)で処理して、炭化物を製造する必要があり、多大なコストが必要なため、好ましくない。
また、例えば、木材チップ(非加工の一般的な木材の切れ端、屑など)を石炭の替わりにロータリーキルンに投入しても、装入物に比べて密度が小さく、着火しやすいため、高温(700〜800℃程度)になった装入物の表面で極めて短時間に燃焼してしまい、発生した熱は、炉内のガス温度を上昇させるに留まり、装入物の温度上昇に寄与し難いばかりか、炭化することが困難なため、次工程の電気炉において、上記した還元剤としても、寄与し難いので、上記の要請には対応できない。
【0005】
さらに、例えば、特許文献5や特許文献6をはじめとする様々な先行技術として、木質ペレット(材木を粉砕して圧縮成形したもの)を利用する技術が開示されているが、保管時に降りかかる雨や、輸送時に船底で接触する水に対する耐水性の問題や、燃焼時に比較的多量に発生する燃えカスの問題などに対応するための技術であって、上記の要請には対応できない。
【0006】
上記のように、フェロニッケル製錬において、CO排出量の削減を指向した操業が求められており、ロータリーキルンに投入される石炭についても、バイオマス、木材チップなど、カーボンニュートラルな材料への代替が要請されているが、従来から提案されたものは、性能的に十分ではなく、種々の問題が懸念されている。
従って、種々の問題などの懸念を払拭し、フェロニッケル製錬において、ロータリーキルンの燃料及び還元剤として使用されている石炭などの化石系炭材を部分的に代替するものとして、木質ペレットなどを使用する技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−141516号公報
【特許文献2】特開平06−271919号公報
【特許文献3】特開2005−351495号公報
【特許文献4】特開2003−64422号公報
【特許文献5】特開2008−7711号公報
【特許文献6】特開2009−114296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、フェロニッケル製錬において、ロータリーキルンに投入される石炭の一部を木質ペレットで代替することが可能な、木質ペレットを使用したフェロニッケル製錬方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、投入するバイオマス燃料である木質ペレットのサイズや密度を適正な特定のものに規定することによって、木質ペレットをフェロニッケル製錬におけるロータリーキルンに投炭する石炭の代替材料として使用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ニッケル酸化鉱をロータリーキルンで焼成する工程、次いで、得られたか焼鉱を電気炉に送り還元を行う工程を含むフェロニッケルの製錬方法であって、
ロータリーキルンでの焼成工程では、ロータリーキルンの原料投入口または原料投入口からか焼鉱排出口の中間で石炭を投入する際に、石炭の少なくとも一部の代替として、ホワイトペレット、バークペレットまたは全木ペレットから選ばれる少なくとも一種の木質ペレットを用いることを特徴とするフェロニッケルの製錬方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記木質ペレットは、直径が5〜10mm、長さが5〜50mmであり、かつ密度が1.0〜1.5g/cmであることを特徴とするフェロニッケルの製錬方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記石炭を投入する際に、前記石炭と木質ペレットとは、別系統の搬送系を用いて個別に投入することを特徴とするフェロニッケルの製錬方法が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記石炭を投入する際に、前記石炭と木質ペレットの投入割合は、木質ペレット1ウエットトン(wt)当り、石炭を0.3〜0.6wt減少して投入することを特徴とするフェロニッケルの製錬方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフェロニッケルの製錬方法によれば、石炭の代替材料として木質ペレットを使用することにより、木質ペレットの代替投入量1ウエットトン(wt)ごとに、約1.0t分のCO排出量を削減できるという顕著な効果を奏する。したがって、その工業的価値は、極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ロータリーキルン操業の一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の木質ペレットを利用したフェロニッケルの製錬方法を詳細に説明する。
【0016】
本発明のフェロニッケルの製錬方法は、好ましい態様として、フェロニッケル製錬の焼成工程にて、石炭と木質ペレットとを、別々の搬送系より個別にロータリーキルンに装入し、ロータリーキルン内で一部を燃焼させて燃料として使用し、残りを電気炉内で鉱石の還元に使用することを特徴とする。また、具体的な好ましい態様として、例えば、図1に示すように、石炭を鉱石と共に、ロータリーキルンの原料投入口から投入し、一方、木質ペレットをロータリーキルン中間位置より投入し、ロータリーキルン内で一部を燃焼させて燃料として使用し、残りを電気炉内で鉱石の還元に使用することを特徴とする。
【0017】
上記木質ペレットには、木の皮を取り除いて造られるホワイトペレット(木質部ペレット)と、木の樹皮のみを用いて造られるバークペレット(樹皮系ペレット)と、木全体で造られる全木ペレットがあり、本発明では、木質ペレットとして、いずれも用いることができる。
【0018】
その理由としては、例えば、石炭の代替となる木質ペレットとして、木の皮の部分を使用していないホワイトペレットを使用する場合、ホワイトペレットが石炭の水分を吸って粉々になり、燃焼時に鉱石とうまく混ざらずに、排ガスへの熱損失が大きくなるという問題があり、また、水分を吸われて乾燥された石炭による発塵がおこるといった問題もあり、これらの問題は、石炭とホワイトペレットを、別々にロータリーキルンに投入することで解決でき、効率よく鉱石と熱交換できると、考察できる。
【0019】
また、ロータリーキルンに投入された木質ペレットは、石炭と同様に、一部は燃焼して燃料として寄与し、残りは、次工程の電気炉に投入されて還元剤として働く。これにより、石炭の代替として、木質ペレットを使用することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明では、好ましい態様として、フェロニッケル製錬の焼成工程にて、木質ペレットをロータリーキルン中間位置より投入し、ロータリーキルン内で一部を燃焼させて燃料として使用し、残りを電気炉内で鉱石の還元に使用することを特徴とするため、木質ペレットは、直径が5〜10mm、長さが5〜50mmであり、かつ密度が1.0〜1.5g/cmであることが好ましい。
一方、ロータリーキルンに投入される石炭は、前記したように、粒度が〜50mm程度、密度が1〜2g/cm程度、含有水分が約10wt%である。
本発明に係る木質ペレットは、ロータリーキルンに投入されるため、上記のサイズや密度が好ましいものである。
【0021】
また、本発明は、フェロニッケル製錬において、ロータリーキルンの燃料及び還元剤として使用されている石炭などの化石系炭材を部分的に代替する木質ペレットを使用したフェロニッケル製錬方法であるが、石炭をロータリーキルンに投入する際には、石炭と木質ペレットの投入割合としては、木質ペレット1ウエットトン(wt)当り、石炭を0.3〜0.6ウエットトン(wt)減少して投入することができる。すなわち、木質ペレットを1トン代替すれば、石炭の使用量を0.3〜0.6トン程度、減少でき、石炭によるCO排出量の削減ができる。これは、木質ペレットの代替投入量1ウエットトン(wt)ごとに、約1.0トン分のCO排出量を削減できることに相当する。
ここで、ウエットトン(wt,またはwet−t)とは、水分を含むバイオマスそのままの重量をトンで表示したものであり、バイオマスの重量表示は、ウエットトンのほかに水分を含まない乾燥重量のdry−t(ドライトン)がある。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
フェロニッケル製錬プロセスに使用しているロータリーキルン設備を用いて、ニッケル酸化鉱の焼成を行い、次に、得られたか焼鉱の溶融還元を電気炉にて行った。
通常、ロータリーキルンには、原料装入口及び装入口と排出口の中間位置(投炭位置)の2箇所から石炭を装入しているが、今回の実施例1では、原料装入口からは石炭を、投炭位置からは木質ペレットを装入して、操業を行った(図1参照。)。
【0024】
これにより、石炭と木質ペレットを混合して投入する必要がなくなり、木質ペレットが石炭の水分を吸収することによる木質ペレットの粉化及び石炭の乾燥による発塵を防ぐことが可能となる。
なお、木質ペレットは、直径6mm、長さ10〜20mm、密度1.2g/cmのニュージーランド産ホワイトペレットを使用し、ロータリーキルンへの装入量は、鉱石の還元に必要な固定炭素量より決定し、石炭3wt/hに替えて、ペレット7.5wt/hを装入した。
【0025】
その結果、ロータリーキルンでは、鉱石中の水分を完全に除去するために、か焼鉱の温度を800℃以上にする必要があるが、今回の試験操業では、給鉱量を低下させることなく、か焼鉱温度を800℃以上に保つことができ、木質ペレットがロータリーキルン中間位置にて熱源として寄与しているといえる。
また、次工程の電気炉では、スラグ中の鉄品位が6〜8%程度になるように還元剤の量を調整しているが、木質ペレット装入前後でスラグ中の鉄品位を比較すると、7%前後で大きな変化は無く、還元剤としても、木質ペレットは、問題なく使用できるといえる。
【0026】
以上の結果より、木質ペレットを、石炭の代替として問題なく使用できることが示された。
したがって、木質ペレット1tの使用につき、石炭使用量を0.4t削減でき、仮に、木質ペレットを年間20,000t使用したとすると、年間8,000tの石炭を削減でき、CO排出量に換算すると、19,000tの削減となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の、ニッケル酸化鉱をロータリーキルンで焼成する工程、次いで、得られたか焼鉱を電気炉に送り還元を行う工程を含むフェロニッケルの製錬方法は、石炭の代替材料として、木質ペレットを使用することにより、木質ペレットの代替投入量1ウエットトン(wt)ごとに、約1t分のCO排出量を削減できるので、その工業的価値は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル酸化鉱をロータリーキルンで焼成する工程、次いで、得られたか焼鉱を電気炉に送り還元を行う工程を含むフェロニッケルの製錬方法であって、
ロータリーキルンでの焼成工程では、ロータリーキルンの原料投入口または原料投入口からか焼鉱排出口の中間で石炭を投入する際に、石炭の少なくとも一部の代替として、ホワイトペレット、バークペレットまたは全木ペレットから選ばれる少なくとも一種の木質ペレットを用いることを特徴とするフェロニッケルの製錬方法。
【請求項2】
前記木質ペレットは、直径が5〜10mm、長さが5〜50mmであり、かつ密度が1.0〜1.5g/cmであることを特徴とする請求項1に記載のフェロニッケルの製錬方法。
【請求項3】
前記石炭を投入する際に、前記石炭と木質ペレットとは、別系統の搬送系を用いて個別に投入することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェロニッケルの製錬方法。
【請求項4】
前記石炭を投入する際に、前記石炭と木質ペレットの投入割合は、木質ペレット1ウエットトン(wt)当り、石炭を0.3〜0.6wt減少して投入することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェロニッケルの製錬方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−225903(P2011−225903A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94112(P2010−94112)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(593213342)株式会社日向製錬所 (18)
【Fターム(参考)】