説明

木質化粧ボードの端面加工方法

【課題】コストを低く抑えて、面取り加工がミスなくできて美麗な角部を形成できる、木質化粧ボードの端面加工法を提供する。
【解決手段】木質基材1の端面Xに強化シート3を接着し、強化シート3を接着した状態で端面Xの角部Yを面取り加工し、端面Xおよびそれに連なる表裏面を覆うように化粧シート5を貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質化粧ボードの端面加工方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
扉やキッチンキャビネットの天板等に使用される木質化粧ボードを低コストで製造するために、木質基材(芯材)としてパーチクルボードを使用することが一般的になされている。また、この木質基材を木質化粧ボードとして成形するために、通例では、化粧シートの貼着工程の前に木質基材の角部の面取り加工工程が実施される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−234248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、芯材として使用するパーチクルボードは、廃材小片を熱圧成型したものであるため、その表裏面および表裏面に近い部分は密度が高く強固であるものの、中央部分は密度が低く比較的もろい。よって、その弱い部分が外部に表れる、切削面である端面は粗く凹凸がある。そのため、端面に直接化粧シートを貼着したとしても、端面の粗雑感が化粧シートを通して表われ、表裏面ほどの平滑感および美観は得られない。また、端面が粗くてもろいため、角部を面取り(アール)加工する際には、アール加工した箇所から中央部分にかけて内部組織が崩れて適正な面取り加工ができないおそれもある。
【0005】
図3(a)(b)は、パーチクルボードを芯材(木質基材)とした木質化粧ボードの面取り加工の2例を示す模式縦断面図である。
【0006】
図3(a)は、R刃を用いたトリミング装置Tで木質基材101の表面Z側の角部Yをアール加工している状態を示している。上記のように、木質基材101の粗く凹凸のある端面Xから表面ZにかけてR刃で加工するため、角部Yの拡大図に示すように、角部Yも端面Xと同様に粗雑感が表れてしまい、アールの曲率やR刃の形状によっては、角部Yが崩れてしまうおそれもある。また、木質基材101の表裏面およびその近傍を除く中央部は非常にもろいため、端面の中央部分はさらに粗雑感がある。
【0007】
また、図3(b)は、パーチクルボード製の木質基材101の表裏面および端面XをMDF(中密度繊維板)製の突板102で覆い、さらに化粧シート103を貼着して製品化した例である。この木質化粧ボード100の形成方法によれば、木質基材101の端面Xに突板102が貼り付けてあるので、端面Xを補強し平滑化することができる。また、MDF製の突板102の一部を櫛歯状に切り込んで、その櫛歯部分102aを角部Yに当てて貼着しているため、櫛歯の各歯の間隙に肉が吸収されて角部Yがアール状となる。したがって、トリミング装置Tを使用せずにアール加工できる点ですぐれている。
【0008】
しかしながら、この方法では、パーチクルボードや合板より高価なMDFを使用しなければならないため製造に高コストを要していた。
【0009】
なお、上記特許文献1に記載された技術は、パーチクルボードの表裏面に貼着された樹脂板に対して面取り加工しているため、上記のような面取りのミスが発生することはないが、高コストとなることが予想される。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、コストを低く抑えて、面取り加工をミスなくできて美麗な角部を形成できる、木質化粧ボードの端面加工法を提供することにある。また、木質化粧ボードの端面を表裏面と同様に平滑、強固に形成することも、本発明の主たる目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の木質化粧ボードの端面加工方法は、木質基材の端面に強化シートを接着し、強化シートを接着した状態で端面の角部を面取り加工し、端面およびそれに連なる表裏面を覆うように化粧シートを貼着することを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、木質基材に対して直接面取り加工する構成ではなく、強化シートを貼着した状態で行うため、面取り加工を確実にきれいにできる。また、木質基材は内部が密度が低くもろくなっているが、その弱い部分が剥き出しになる端面の中央部分が確実に強化シートで覆われるので、端面を強化でき、化粧シートを通して凹凸のない平滑な面を形成できる。
【0013】
請求項2に記載の木質化粧ボードの端面加工方法では、端面に連なる表裏面に対しても強化シートを接着するようにしている。
【0014】
この方法によれば、表裏面にも強化シートが貼着されているので、端面から角部を介して表裏面にかけて均一で平滑な面を形成できる。また、角部を強化シートで保護できるので、面取り加工の際にアール形状が崩れることを防止できる。
【0015】
請求項3に記載の木質化粧ボードの端面加工方法では、強化シートが樹脂含侵した紙からなる。
【0016】
この方法により成形された木質化粧ボードによれば、樹脂含浸紙の特性により端面の硬度を高めることができる。また、樹脂の含浸量を調節することで通気性を良くすることができ、また化粧シートの貼着時に入り込んだ空気を強化シートや、それを通じて木質基材に吸収させることもできる。
【0017】
請求項4に記載の木質化粧ボードの端面加工方法では、強化シートが表裏面に微細凹凸が形成された合成樹脂シートからなる。
【0018】
この方法によれば、化粧シートの貼着時に入り込んだ空気を微細凹凸を通じて外部に出すことができる。また、強化シートの接着時には接着剤が強化シートの裏面の微細凹凸に入り込むのでアンカー効果も期待できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の木質化粧ボードの端面加工方法は、上記のような構成であるため、低コストで、面取り加工がミスなくできて美麗な角部を形成でき、また端面を表裏面と同様に平滑、強固に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の木質化粧ボードの端面加工方法の一例を示した工程流れ図(上流工程)である。
【図2】同工程流れ図(下流工程)である。
【図3】(a)(b)は、従来の木質化粧ボードの面取り加工の2例を示す模式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1および図2は、本発明の木質化粧ボードの端面加工方法の一例を示した工程流れ図である。なお、図1、図2は、それらを合わせて全体工程を示すものである。これらの図において、図中のAは接着剤塗布(塗布後の状態)、Bは強化シートの貼着、Cは面取り加工、Dはエンドカット、Eは化粧シートの貼着の各小工程を示し、各小工程をボードの端面部分の縦断面図で示してある。また、縦断面図の上方に図示があるものは、その小工程に対応した平面図である。図中に示した端面、角部、表面、裏面の各符号X、Y、Z1、Z2は、各小工程における中間製品および製品において共通の符号として使用している。
【0023】
なお、図1に示した接着剤塗布工程Aから、図2に示したエンドカット工程Dまでの一連の工程は、エッジバンダー(縁貼機)を使用して実施することが望ましいが、これには限定されない。
【0024】
本図例に示した方法により成形される木質化粧ボード10(図2の工程E参照)は、その芯材である木質基材1をパーチクルボードとしたもので、この木質基材1の裏面Z2には、あらかじめ裏貼りシート6が貼られている。この裏貼りシート6は、ポリエステル系樹脂フィルム等よりなり、模様はなく、製品として成形後に外観露出されない裏面に貼られ、後述するように、裏貼りシート6の表面には端面近傍を除いて化粧シート5は積層されない。
【0025】
このように裏貼りされた木質基材1は、接着剤塗布工程Aでまず、その切削面である端面Xに、強化シート3を接着するための接着剤が塗布される。接着剤としては、ホットメルト接着剤を好適に使用でき、エッジバンダーに設けらたグルーロール(不図示)を使用して塗布される。
【0026】
ついで、接着層2が形成された端面Xに強化シート3を貼着する(工程B参照)。貼着方法としては、対応した平面図に示すように、端面Xの一方の側部より他方の側部へとローラ21を使用して貼着することが望ましい。また、縦断面図に示すように、上下の角部Yよりも上下にはみ出る程度に強化シート3を貼り付けることが望ましい。
【0027】
強化シート3としては、樹脂含浸紙または表裏面に微細凹凸が形成された合成樹脂シートを使用できる。なお、各シートの詳細については後述する。
【0028】
そして、両角部Y、Yがトリミング装置22によって面取り加工され、それによって端面Xの上下にはみ出た強化シート3は削り取られる(工程C参照)。図例では、R刃22aを用いてアール加工を行っているが、いったんC面取り加工した後にR刃に換えてアール加工を行ってもよいし、C面取り加工だけでもよい。
【0029】
つぎに、端面Xの側部からはみ出た部分を、エッジバンダーに設けられたエンドカット装置(不図示)で切り取る(工程D参照)。
【0030】
こうして端面Xに強化シート3が貼着された木質基材1に対して、ラッピング装置(不図示)を使用して木目等の模様を有した合成樹脂製の化粧シート5を貼着する。化粧シート5は、ボードの表面Z1、端面Xおよび裏面Z2端部を覆うように貼着される(工程E参照)。化粧シート5の貼着には、溶剤タイプの接着剤、PUR接着剤等を好適に使用できる。なお、図2の工程Eにおける符号4は化粧シート5の接着層である。
【0031】
このように、図1、図2に示した端面加工方法によれば、木質基材1に対して直接面取り加工せずに、強化シート3を貼着してから面取りする手法を採用しているため、木質基材1の組織が面取り加工によって壊れることなく面取りをきれいにできる。また、端面Xが強化シート3で覆われているので、密度の低い木質基材1の内部が凹凸として外部に表れる端面Xの中央部分を強化でき、化粧シート5を通して凹凸のない平滑な面に形成できる。
【0032】
なお、図1、図2では図示の都合上、強化シート3の厚みを実際使用するものよりも厚く図示しているが、実際には厚さ0.3〜0.5mm程度のものが好適に使用できる。そのような厚さの強化シート3によれば、面取り加工において角部Yの強化シート3が削り取られて木質基材1が露出するおそれがあるが、その場合でも、強化シート3が堰または土留めとして作用するので、木質基材1の素材が崩壊するおそれはない。よって強固な角部Yを形成できる。また、面取り加工にて強化シート3が削り取られる部分は角部Yのうち表面にきわめて近い部分であり、その部分はそもそも強度が高いため、その部分が露出されても崩壊するようなおそれはない。
【0033】
また、強化シート3は端面Xに連なる表面Z1、裏面Z2に対して貼着してもよく、そうすることで、端面Xから角部Yを介して表裏面にかけて均一で平滑な面を形成でき、また角部Xを確実に強化シート3で保護できるので、面取り加工時に木質基材1の崩れが発生することを確実に防止できる。
【0034】
ついで、強化シート3として使用する樹脂含浸紙および合成樹脂シートについて詳述する。
【0035】
樹脂含浸紙としては例えば、公知の材料であるDAP(ジアリルフタレート)樹脂含浸紙を好適に使用できる。DAP樹脂含浸紙は、公知のDAP化粧板の表面材等に使用される材料であり、表面硬度が高く、耐摩耗性、耐熱性にすぐれているという特徴を有している。
【0036】
したがって、強化シート3がこのような特性を有しているため、木質基材1の端面Xに貼り付けて使用すれば、パーチクルボードの切削面の凹凸による粗雑感を覆い隠して平滑化でき、かつ製品後の端面Xの硬度を高めることができる。
【0037】
また、紙で製されているのでそもそも通気性は良く、樹脂の含浸量を調節することで通気性を適正化することができる。さらに、化粧シート5の貼着時に入り込んだ空気を強化シート3や、それを通じて木質基材1に吸収させることもできる。また、紙であるため接着性もよい。
【0038】
例えば、化粧シート5のラッピング時に入り込んだガス(空気等)や、溶剤タイプの接着剤から放出されるガス(塩化メチレン)等を強化シート3の内部や、木質基材1の内部に逃がすことができ、通気性を高めることできる。
【0039】
一方、合成樹脂シートとしては例えば、エンボス加工、プライマー処理等にて微細凹凸を表裏面に施した合成樹脂シートを好適に使用できる。
【0040】
このように、微細凹凸が形成された強化シート3を使用すれば、化粧シート5のラッピング時に微細凹凸を通じてガスを逃がすことができる。また、製品化後も微細凹凸によりガス等の流通を良くでき、木質基材1が含んでいる湿気も微細凹凸を通じて外部に排出させることができる。また、強化シート3の接着時には接着剤が強化シート3の裏面Z2の微細凹凸に入り込むので接着力も高められる(アンカー効果)。
【0041】
なお、強化シート3の貼着にあたっては上記のように通気性を十分に配慮する必要があるが、強化シート3のみを工夫するだけではなく、化粧シート5の貼着についてPUR接着剤を使用してガスの発生を抑えることが望ましい。
【符号の説明】
【0042】
10 木質化粧ボード
X 端面
Y 角部
Z1 表面
Z2 裏面
1 木質基材
2 (強化シート用)接着層
3 強化シート
4 (化粧シート用)接着層
5 化粧シート
6 裏貼りシート
21 ローラ
22 トリミング装置
22a R刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の端面に強化シートを接着し、該強化シートを接着した状態で端面の角部を面取り加工し、該端面およびそれに連なる表裏面を覆うように化粧シートを貼着することを特徴とする木質化粧ボードの端面加工方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記端面に連なる表裏面に対しても上記強化シートを接着するようにしている木質化粧ボードの端面加工方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記強化シートは、樹脂含侵した紙からなる木質化粧ボードの端面加工方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
上記強化シートは、表面に微細凹凸が形成された合成樹脂シートからなる木質化粧ボードの端面加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−152640(P2011−152640A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13770(P2010−13770)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】