説明

木質化粧床材

【課題】床材の貼り替えを簡単に行える木質化粧床材を提供する。
【解決手段】本発明の木質化粧床材1は、木質基材2と、その木質基材上に積層された表面材3とを備え、木質基材2の裏面が木質系の床下地Gに、接着剤6を介して施工されるものである。木質基材2の裏面に、床材引き剥がし時に床材自身の材破を促進させる裏溝4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅等の建築物におけるフローリング用の木質化粧床材およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での環境保全の要請の高まりに伴って、建築物についても、リフォームによる再利用が推奨されるようになっている。例えばフローリング、すなわち床仕上げに木質系素材を用いた床構造についても、床材の貼り替えによる更新施工が求められることが多くなってきている。
【0003】
特許文献1〜3に示すように、従来、戸建て住宅における木質系の床構造は、木質系の床下地上に、木質化粧床材を糊・釘併用で多数貼り込むことによって施工される。
【0004】
そして、この構成の仕上げ床をリフォームする際には、木質化粧床材を、床下地から引き剥がした後、床下地上に新たな木質化粧床材を貼り込むようにしている。
【0005】
一方、特許文献4に示す木質化粧床材は、木質基材と、その木質基材上にホットメルト系接着剤を介して積層一体化された表面材とを備え、上記と同様に、床下地上に、糊・釘併用で多数貼り込むことによって施工される。
【0006】
そして、床材表面が部分的に損傷したような場合には、損傷している木質化粧床材の木質基材は、床下地に固定したままで、加熱により接着剤を溶融させて表面材のみを木質基材から剥離し、その後、残存する木質床材上に、新たな表面材を接着固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−242312号公報(2頁)
【特許文献2】特開2002−21295号公報(2頁)
【特許文献3】特開2005−155189号公報(図2)
【特許文献4】特開2008−266999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3に示す木質化粧床材では、糊や釘により床下地に強固に接合固定されているため、この既設の床材を床下地から引き剥がすのが非常に困難である。加えて、床材を床下地から引き剥がした際に、床下地も材破して、床下地が材破、損傷してしまい、その材破した床下地を補修、修復するのに多大な労力を必要とし、床材の貼り替えが困難である、という課題を抱えている。
【0009】
また上記特許文献4に示す木質化粧床材では、部分的に表面材を貼り替えることは簡単に行うことができるが、床面全域を貼り替えるような場合には、上記と同様に、床材全体を床下地から引き剥がす必要があり、その引き剥がし作業が困難である上さらに、引き剥がし時に、床下地が材破、損傷してしまい、床下地の補修、修復作業が必要となり、床材の貼り替えが困難である、という同様の課題を抱えている。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、木質系の床下地から簡単に剥がすことができて、貼り替えを簡単に行うことができる木質化粧床材およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0012】
[1]木質基材と、その木質基材上に積層された表面材とを備え、前記木質基材の裏面が木質系の床下地に、接着剤を介して施工されるようにした木質化粧床材であって、
前記木質基材の裏面に、床材引き剥がし時に床材自身の材破を促進させる裏溝が形成されていることを特徴とする木質化粧床材。
【0013】
[1a]前記裏溝の内周面が、床材引き剥がし時に材破起点となる前項1項に記載の木質化粧床材。
【0014】
[1b]前記裏溝の幅が1〜3mmに設定されている前項1または1aのいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0015】
[2]前記接着剤が、再剥離を可能とする再剥離性接着剤によって構成されている前項1に記載の木質化粧床材。
【0016】
[2a]前記接着剤として、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、変性シリコーン系の接着剤の中から選択される1種以上の接着剤が用いられる前項1〜2のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0017】
[2b]前記接着剤として、充填材が多量に配合されたシリル化ウレタン樹脂系接着剤が用いられる前項1〜2aのいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0018】
[3]前記木質基材は、複数の単板が積層された合板によって構成される前項1または2に記載の木質化粧床材。
【0019】
[4]前記木質基材は、4枚以上の単板が積層された合板によって構成されるとともに、
前記裏溝の底面の位置が、前記木質基材における下から1〜3層目の単板の位置に設定されている前項1〜3のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0020】
[4a]前記木質基材は、5プライ合板によって構成される前項4に記載の木質化粧床材。
【0021】
[5]前記裏溝は、床材幅方向に沿って延び、かつ複数並列配置に形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0022】
[5a]前記裏溝のピッチは、10〜60mmに設定されている前項5に記載の木質化粧床材。
【0023】
[5b]前記裏溝は等間隔(等ピッチ)で設けられている前項5または5aに記載の木質化粧床材。
【0024】
[6]前記裏溝は、底面と内側面との間のコーナー部がほぼ直交するコ字状に形成されている前項1〜5のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0025】
[7]前記床下地は、合板、パーティクルボードによって構成されている前項1〜6のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【0026】
[8]前項1〜7のいずれか1項に記載された木質化粧床材が、前記床下地上に前記接着剤を介して複数敷き詰められて構成される木質床構造。
【0027】
[9]前項8に記載された木質床構造における前記木質化粧床材を、既設の木質化粧床材として、その既設の木質化粧床材を新たな木質化粧床材に貼り替える床材貼り替え方法であって、
前記既設の木質化粧床材を前記床下地から引き剥がした後、
前記床下地上に残存付着する前記既設の木質化粧床材の破片を、スクレーパーによって掻き取って除去し、
次いで、前記床下地に新たな木質化粧床材を複数敷き詰めるようにしたことを特徴とする床材貼り替え方法。
【0028】
なお新たな木質化粧床材は、前項1〜7のいずれか1項に記載のの木質化粧床材と同じ構成であっても良いし、異なる構成であっても良い。
【発明の効果】
【0029】
発明[1]の木質化粧床材によれば、材破促進用の裏溝を形成しているため、施工後に引き剥がす際に、床材側が確実に材破することにより、床下地の材破を防止することができる。このため、床材貼り替え前に、面倒な床下地の修復作業を省略でき、床材貼り替え作業を簡単に行うことができる。また本発明の木質化粧床材は、木質基材の裏面である接着面に、裏溝を形成しているため、その分、床下地への接着面積が狭くなる。このため床下地から比較的簡単に引き剥がすことができ、床材貼り替え作業をさらに簡単に行うことができる。
【0030】
発明[2]の木質化粧床材によれば、床材接着用の接着剤の部分で床材を引き剥がすことができるため、床材引き剥がし後に、床下地に残存付着する床材の破片を少量に抑えることができる。このため、その破片の除去作業を容易に行うことができ、床材貼り替え作業を一層簡単に行うことができる。
【0031】
発明[3]の木質化粧床材によれば、床材引き剥がし時に、木質基材における複数の単板の各層間で剥離するため、床下地の材破をより確実に防止でき、より一層床材張り替え作業を簡単に行うことができる。
【0032】
発明[4]〜[7]の木質化粧床材によれば、床材引き剥がし時における床下地の材破をより一層確実に防止でき、なお一層床材張り替え作業を簡単に行うことができる。
【0033】
発明[8]の木質床構造によれば、上記と同様に、床下地の材破を防止でき、床材張り替え作業を簡単に行うことができる。
【0034】
発明[9]の床材貼り替え方法によれば、上記と同様に、床下地の材破を防止でき、床材貼り替え作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1はこの発明の実施形態である木質化粧床材を示す表面図である。
【図2】図2は実施形態の床材を示す裏面図である。
【図3】図3は実施形態の床材を拡大して示す断面図である。
【図4】図4は実施形態の床材を用いて施工された床構造を示す断面図である。
【図5】図5(a)は図1のA−A線断面に相当する断面図であって、実施形態における床材の雄ざね部周辺を拡大してを示す断面図、図5(b)は図1のB−B線断面に相当する断面図であって、雌ざね部周辺を拡大して示す断面図である。
【図6】図6は実施形態における床材の裏溝周辺を拡大して示す断面図である。
【図7】図7はこの発明の床材における裏溝の第1変形例を示す断面図である。
【図8】図8はこの発明の床材における裏溝の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1はこの発明の実施形態である木質化粧床材を示す表面図、図2は裏面図、図3は拡大断面図、図4はその床材を用いて施工された床構造を示す断面図である。
【0037】
これらの図に示すように、木質化粧床材1は、木質基材2と、その木質基材2上に積層一体化された表面材3とを備えている。
【0038】
本実施形態で用いられる木質化粧床材1としては、幅303mm×長さ1818mmの大きさのもの、幅303mm×長さ909mmの大きさのもの、幅145mm×長さ1818mmの大きさのもの、幅145mm×長さ909mmの大きさのものが一般に採用される。
【0039】
本実施形態において、木質基材2は、単板21〜25が5層積層された5プライラワン合板によって構成されており、上下に隣り合う単板21〜25の積層方向が互いに直交するように調整されている。具体的には、木質基材2の下から1,3,5層目の単板21,23,25は、その繊維方向が床材長さ方向に一致し、下から2,4層目の単板22,24は、その繊維方向が床材幅方向に一致するように調整されている。
【0040】
言うまでもなく、本発明においては、木質基材2として、5プライ以外の合板を用いても良いし、合板を構成する単板の繊維方向も限定されるものではない。
【0041】
さらに本発明においては、木質基材2として、合板以外の木質系のものも採用することができる。例えば合板以外の木質系のものとしては、パーチクルボード、集成材、無垢材、繊維板等を用いることができる。さらにこれらの木質系板材や合板のうち、2種以上の板材を組み合わせた複合板を用いるようにしても良い。
【0042】
もっとも本発明においては、木質基材2としては、合板のように積層構造のものを採用するのが好ましい。すなわち合板のような積層構造のものでは、後述するように、木質化粧床材1を床下地Gから引き剥がず際に、木質基材2を構成する単板21〜25の層間で剥離するため、木質化粧床材1を床下地Gを材破させずに、スムーズに引き剥がすことができる。
【0043】
特に本発明においては、後述する裏溝4の深さDを適切な深さに設定するために、木質基材2として、単板の積層数が4枚以上の合板を用いるのが良く、より好ましくは単板の積層枚数が6枚以下の合板を用いるのが良い。
【0044】
表面材3は、柔軟な積層シート(複合シート)によって構成されている。具体的に、表面材3は、軟質合成樹脂製の高比重シート31と、そのシート31上に接着剤を介して積層一体化された軟質の木質繊維板32と、その木質繊維板32上に接着剤を介して積層一体化された化粧層33とを備えている。
【0045】
上記の木質繊維板32としては、比重(密度)が0.35(g/cm3 )以上の、すなわち中質繊維板以上の比重を有するものを用いるのが良く、好ましくは0.7(g/cm3 )以上のもの、より好ましくは0.8(g/cm3 )以上のものを用いるのが良い。すなわちこの比重が小さ過ぎる場合には、硬度を十分に確保することができず、耐落下傷性の低下を来たし、床面上に物品を落下させてしまった際に、凹み傷が生じる恐れがある。
【0046】
高比重シート31としては、例えば軟質の合成樹脂、合成ゴム系樹脂、合成樹脂系ゴム等の合成樹脂(高分子材料)に炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の高比重の無機物粉末や、鉄、鉛等の金属製粉体からある充填材(増量材)が混入された組成物により得られるものを好適に用いることができる。
【0047】
高比重シート31の主成分としての合成樹脂は、複数のものが混合された混合物であっても良く、さらに硬質の合成樹脂が含まれていても良い。
【0048】
さらにこの合成樹脂としては、廃棄後の焼却処理を考慮した場合、有害ガスを発生する塩素を含まないものを用いるのが良い。
【0049】
またこの合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂に配合されるような可塑剤が含まれていないもの、例えば合成ゴム系樹脂、合成樹脂系ゴム等のゴム成分が含まれるもの等を用いるのが良い。すなわち、可塑剤が含まれている場合、床材として長期間使用している間に、可塑剤が徐々に蒸発して吸収し変形するおそれがある。さらに高比重シート31全体に分散している可塑剤が木質繊維板32との接着面に移行し、層間剥離を生じさせるおそれがある。
【0050】
高比重シート31用の具体的な組成物としては、ポリエチレン系樹脂と、エチレン・プロピレン・ラバー(ゴム)と、炭酸カルシウムとが配合されたものを好適例として挙げることができる。
【0051】
また、高比重シート31としては、比重(密度)が1.0〜3.0(g/cm3 )のものを用いるのが良く、好ましくは1.3〜3.0、更に好ましくは1.5〜2.5(g/cm3 )のものを用いるのが良い。すなわちこの比重が小さ過ぎる場合には、敷設施工時の安定性が低下する恐れがある。逆に比重が大き過ぎる場合には、床材自体の高重量化を来たし、施工作業性等、取扱性の低下を来す恐れがある。
【0052】
本実施形態においては、化粧層33としては、天然木や人工杢からなる木質単板、模様印刷樹脂シート、模様印刷紙、表面塗装等、あるいはそれらの組合せにて形成されたものを用いることができる。
【0053】
化粧層33に用いる木質単板は、湿潤単板でも乾燥単板でも良いが、乾燥単板は木質繊維板への積層接着部の水分量変化が少ないので望ましい。
【0054】
本実施形態において、表面材3の各層31〜33の積層接着に用いる接着剤としては、ホットメルト系(反応性ホットメルト系)、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等の溶剤や水等の溶媒を含まない接着剤を用いるのが好ましい。
【0055】
すなわち、接着剤として通常用いられるメラミン系、フェノール系、水性ビニルウレタン系等のものは水分等の溶媒を含むため、その溶媒が木質繊維板に浸透し、接着剤硬化後も溶媒が残留し、有害な反り等の変形を生じる要因となるおそれがあるからである。
【0056】
木質繊維板32や化粧層33の積層接着工程は、熱圧下で及び冷圧下のいずれで行っても良いが、熱圧では、高比重シートが熱にて膨張するため、その膨張を防止できるよう、冷圧で行うのが良い。
【0057】
上記表面材3は、これを予め積層シートとして製作した後、木質基材2上に接着剤を介して重ね合わせ、熱圧により、あるいはコールドプレスにより積層接合一体化して木質化粧床材1用の積層板を形成するものである。
【0058】
また本実施形態において、木質基材2には、その裏面側に複数の裏溝4が切込形成されており、この裏溝4によって、後述する床材引き剥がし時に、床材自体の材破を促進させるようにしている。
【0059】
この裏溝4は、木質化粧床材1の床材幅方向に連続して延び、かつ床材長さ方向に所定の間隔おきに複数並列に配置されている。
【0060】
この裏溝4は、断面四角形状(矩形状)に形成されており、溝幅Wは1〜3mmに設定するのが好ましい。すなわち溝幅Wが狭過ぎる場合には、床下地Gへの接着面積が広くなり易いため、後述の床材貼り替え(リフォーム)時に、木質化粧床材1の引き剥がしや、その後の破片の掻き取り除去が困難になり、床下地Gを材破させてしまう等の不具合が生じるおそれがある。逆に溝幅Wが広過ぎる場合には、溝付け加工に手間取って、床材1の生産性が低下したり、床材自体の強度が低下して、搬送時や施工時等の床材取扱時に割れ等の不具合が発生するおそれがある。
【0061】
裏溝4の溝深さDは、床材の厚みにもよるが、1〜5mmに設定するのが良く、特に木質基材2として5プライ合板を使用している場合には、その合板の下から1〜3層目の単板21〜23の位置に溝底面を配置するのが良く、より一層好ましくは、下から2層目の単板22の位置に溝底面を配置するのが良い。すなわち溝深さDが浅過ぎる場合には、上記と同様に、リフォーム時に、床材引き剥がしや、破片除去が困難になるおそれがある。逆に溝深さDが深過ぎる場合には、床材自体の強度が低下して、床材取扱時に割れ等の不具合が発生するおそれがある。
【0062】
また裏溝4のピッチPは、10〜60mmに設定するのが良く、好ましくは30mm以下に設定するのが良い。すなわち、溝ピッチPが小さ過ぎる場合には、溝付け加工に手間取って、床材1の生産性が低下したり、床材自体の強度が低下して、床材取扱時に割れ等の不具合が発生するおそれがある。逆に、溝ピッチPが大き過ぎる場合には、床下地Gへの接着面積が広くなり易いため、リフォーム時に、床材引き剥がしや、破片除去が困難になるおそれがある。
【0063】
また裏溝4の断面形状は、長方形や正方形等の四角形状に限られず、どのような形状に形成しても良い。例えば裏溝4を、図7に示すように三角形状(V字状)や、図8に示すように底部がV字状に仕上げられた五角形状の他、半円弧状や、U字状に形成するようにしても良い。本発明においては、図7,8に示す形状の裏溝4では、最深部への応力集中により、割れが発生し易く、また半円弧状や、U字状の裏溝4は、溝付け加工が少し困難になるおそれがあるため、本実施形態のように、四角形の裏溝4、詳細には溝側面と溝底面とがほぼ直角に形成されたコ字状の裏溝4を採用するのが好ましい。
【0064】
本実施形態において、裏溝4は、床材1の幅方向に沿って形成しているが、それだけに限られず、本発明においては、裏溝4を、床材1の長さ方向に沿って形成するようにしても良い。
【0065】
もっとも、本発明において、裏溝4の長さ方向は、床材幅方向に一致されるのが好ましい。すなわち裏溝4の方向を、床材長さ方向に一致させた場合には、後述の床材貼り替え時(リフォーム時)に、木質化粧床材1を引き剥がした際に、床下地Gに残存付着する床材1の破片が、床材長さ方向に沿って連続して配置される。この破片は、床材長さ方向に沿うものであるため、長くなってしまい、その長い破片を床下地Gから除去する作業が面倒になるおそれがある。
【0066】
そこで本実施形態のように、裏溝4を床材幅方向に沿って形成した場合には、木質化粧床材1を引き剥がした際に、床下地Gに残存付着する床材1の破片が、床材幅方向に連続して配置される。この破片は、床材幅方向に沿うものであるため、短くなり、その短い破片を床下地Gから除去する作業を容易に行うことができる。従って本実施形態のように、裏溝4は、床材幅方向に沿って形成するのが好ましい。
【0067】
また本発明においては、木質化粧床材1に対し、床材幅方向に沿った裏溝4と、床材長さ方向に沿った裏溝4との双方の裏溝4を形成するようにしても良い。
【0068】
さらに裏溝4を床材幅方向と床材長さ方向とに双方形成するような場合には、幅方向の裏溝4と、長さ方向の裏溝4との構成を異ならせるようにしても良い。具体的には、幅方向の裏溝4は深く、例えば底面位置を木質基材2における下から2層目の単板22の位置に設定し、長さ方向の裏溝4は浅く、例えば底面位置を木質基材2における下から1層目の単板21の位置に設定するようにしても良い。さらに幅方向の裏溝4は幅広に、例えば3mm幅に設定し、長さ方向の裏溝4は幅狭に、例えば1mm幅に設定するようにしても良い。このように幅方向の裏溝4および長さ方向の裏溝4の構成を適宜変更することによって、木質化粧床材1を所望の強度に調整でき、床材取扱時に割れ等の不具合が発生するのを有効に防止することができる。
【0069】
また本発明において、裏溝4は、必ずしも等間隔(等ピッチ)で形成する必要はなく、溝ピッチPを途中で変更したり、溝ピッチPをランダムに設定するようにしても良い。
【0070】
もっとも裏溝4を等間隔で形成する場合には、木質化粧床材1の床下地Gへの取付強度が床材全域にわたって均一となるため、床材1を引き剥がす際に、床材1をバランス良く剥離させることができ、床材1の引き剥がし作業、ひいては床材貼り替え等のリフォームを簡単かつスムーズに行うことができる。
【0071】
図5(a)(b)に示すように本実施形態においては、隣接する床材1,1同士を結合するために、長辺部および短辺部の一方を、雄ざね部(51)に形成されるとともに、短辺部および長辺部の他方を、上記雄ざね部(51)に嵌合結合可能な雌ざね部(52)に形成されている。
【0072】
なお床材1の接合部の構造としては例えば、上記の本ざね接合の他に、相じゃくり接合、相じゃくり実はぎ接合、およびこれらの組合せ等、公知の接合構造を採用することができる。
【0073】
言うまでもなく、隣接する床材1,1の長辺部同士の接合と、短辺部同士の接合とを異なる構造で接合するようにしても良い。
【0074】
また木質化粧床材1の表面側における周縁に、化粧用面取り部11が形成されるとともに、表面における幅方向中間位置に、長さ方向に沿ってV字状の化粧溝12が形成されている。
【0075】
なお本発明の木質化粧床材1においては、裏溝4を閉塞するような裏面材が設けられる構造は好ましくなく、裏溝4を裏面側に開放しておくのが良い。
【0076】
もっとも、本発明においては、木質化粧床材1の裏面側における床下地Gとの接着面(裏溝4以外の領域)には、裏面紙等の裏面シートを積層形成するようにしても良い。この場合、木質化粧床材1に裏溝4を形成する前に、裏面シートを貼着しておき、その後、床材1に対し、溝付け加工して裏溝4を形成することにより、木質化粧床材1の裏面側における裏溝4以外の領域に、裏面シートを残存形成する方法を採用すれば良い。これにより木質化粧床材1の裏面側における裏溝4以外の領域にのみ裏面シートを形成することができる。
【0077】
以上の構成の木質化粧床材1が敷き詰められる木質系の床下地Gとしては、合板、パーティクルボード等を用いることができ、特に合板製のものを好適に用いることができる。さらに合板の中でも、コンパネ(コンクリートパネル)等の耐水合板、OSB(Oriented Strand Board)等の構造用合板をより一層好適に用いることができる。
【0078】
本実施形態において、上記の構成の複数の木質化粧床材1を、いわゆる糊・釘併用工法により床下地Gに敷設施工するものである。すなわち隣接する床材間において、さね接合による接合を行いつつ、床材裏面に塗布した接着剤6を介して床下地Gに接着する。さらに床下地Gに接着した床材1を釘やステープルを用いて床下地Gに固定する。こうして床下地G上の所要領域全域に木質化粧床材1を敷き詰めることにより、床構造(フローリング)を形成するものである。
【0079】
ここで本実施形態においては、後述の床材貼り替え時に既設の木質化粧床材1の除去作業を容易に行えるように、床材1を床下地Gに接着するための接着剤6として、再剥離性接着剤が用いられる。再剥離性接着剤とは、被着体である床材1を床下地Gから再剥離可能とする接着剤の意味で用いられる。
【0080】
この接着剤6としては、シリル化ウレタン樹脂(SUP)系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、変性シリコーン系接着剤等を好適に用いることができる。中でも特に、SUP系接着剤を用いるのが良く、より好ましくは充填剤が多量に配合されたSUP系接着剤を用いるのが良い。このSUP系接着剤としては例えば、コニシ株式会社製の「ボンドSU110(商品名)」を好適例として挙げることができる。
【0081】
充填材が多量に配合されたSUP系接着剤は、強度が小さくて伸び率も小さく、粘り気も少ない状態(さくい状態)となる。従って後述するように、接着剤6の部分において、比較的簡単に、床下地Gから木質化粧床材1を剥ぎ取ることができる。
【0082】
SUP系接着剤に充填される充填材としては、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、シリカ、各種バルーン等を例示することができる。
【0083】
一方、上記のように施工された床構造において、床面全域の床材1を貼り替えるようなリフォーム(床材貼り替え)を行う場合には、まず、糊釘併用で床下地Gに固定された床材1を、バールやテコ等を用いて、釘やステープルを抜き取りつつ、床下地Gから引き剥がす。
【0084】
この引き剥がし時においては、床材接着用に特有構成の再剥離性接着剤6を用いているため、再剥離性接着剤6の部分で剥離させ易くなる。このため、床下地Gを傷付けることなく、床材1をスムーズに引き剥がすことができる。
【0085】
さらに床材1の裏面である接着面に裏溝4を多数形成することにより、床下地Gへの接着面積が狭くなっているため、この点においても、床材1を床下地Gから比較的簡単に引き剥がすことができる。
【0086】
しかも本実施形態において、裏溝4は床材自身の材破を促進するものであるため、接着剤6の部分で剥離しない場合であっても、裏溝4の内周面が材破起点(破壊起点)となって、床材1が材破することにより、床下地Gを材破させることなく、床材1を床下地Gから引き剥がすことができる。
【0087】
その上さらに、本実施形態においては、木質基材2として、複数の単板21〜25が積層された合板を用いているため、床材引き剥がし時に、単板21〜25の各層間に沿ってスムーズに剥離するようになる。従ってこの点からも、床下地Gの材破をより確実に防止しつつ、床材1を床下地Gからより確実に引き剥がすことができる。
【0088】
また本実施形態の床材1は、裏溝4によって床下地Gへの接着面積が狭くなっているため、床材引き剥がし後に、床下地Gに残存付着する床材1の破片を、ごく少量に抑えることができる。
【0089】
さらに本実施形態では、接着剤6の部分で剥離し易いため、床材引き剥がし後に、床下地Gに残存付着する床材1の破片を、より一層少なく抑えることができる。
【0090】
このように本実施形態の木質化粧床材1では、施工後において、床下地Gを傷付けたり、材破させることなく、床材1の破片を少しだけ残存付着させた状態に、床材1を床下地Gから引き剥がすことができる。
【0091】
上記のように床材を引き剥がした後は、スクレーパー等を用いて、床下地Gに少量だけ残存付着した床材破片を掻き取ることにより、床下地Gを一切損傷させずに、床材1を床下地Gから確実に剥離除去することができる。特に本実施形態においては、特有構成の再剥離性接着剤6を用いているため、床下地Gに残存付着した床材破片を、スクレーパー等で掻き取る際に、接着剤6の部分で確実に床材破片を床下地Gから掻き取ることができる。従って、床下地Gを傷付けることなく、床材破片を床下地Gから簡単かつ確実に掻き取って除去することができる。
【0092】
このように本実施形態では、床下地Gを材破させたり、傷付けることなく、既設の床材1を確実に床下地Gから除去することができる。
【0093】
こうして既設の床材1を全て除去した後は、上記と同様に、床下地G上に新たな木質化粧床材を貼り込む。これにより、床材貼り替え等のリフォームが完了する。
【0094】
なお、新たな木質化粧床材としては、本発明の木質化粧床材1と同じ構成のものを用いても良いし、本発明の木質化粧床材1とは異なる構成のものを用いても良い。
【0095】
以上のように、本実施形態の木質化粧床材1によれば、施工後に、全面貼り替え(リフォーム)のために引き剥がす際に、床下地Gを材破させずに、床下地Gから簡単かつ確実に除去することができる。このため、床材除去後に、床下地Gの傷や、材破部分を修復するという面倒な下地修復作業を行わなくとも良い。特に下地修復作業は、異形の凹部や欠損部を平坦に仕上げる、という緻密で繊細な作業であり、作業者にとって多大な労力が必要となるため、この面倒な下地修復作業を省略できることにより、床材貼り替え作業を効率良くスムーズに行うことができ、作業効率を一段と向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
この発明の木質化粧床材は、住宅等における床仕上げ用のフローリングに適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1:木質化粧床材
2:木質基材
21〜25:単板
3:表面材
4:裏溝
6:接着剤
G:床下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材と、その木質基材上に積層された表面材とを備え、前記木質基材の裏面が木質系の床下地に、接着剤を介して施工されるようにした木質化粧床材であって、
前記木質基材の裏面に、床材引き剥がし時に床材自身の材破を促進させる裏溝が形成されていることを特徴とする木質化粧床材。
【請求項2】
前記接着剤が、再剥離を可能とする再剥離性接着剤によって構成されている請求項1に記載の木質化粧床材。
【請求項3】
前記木質基材は、複数の単板が積層された合板によって構成される請求項1または2に記載の木質化粧床材。
【請求項4】
前記木質基材は、4枚以上の単板が積層された合板によって構成されるとともに、
前記裏溝の底面の位置が、前記木質基材における下から1〜3層目の単板の位置に設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【請求項5】
前記裏溝は、床材幅方向に沿って延び、かつ複数並列配置に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【請求項6】
前記裏溝は、底面と内側面との間のコーナー部がほぼ直交するコ字状に形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【請求項7】
前記床下地は、合板、パーティクルボードによって構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の木質化粧床材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された木質化粧床材が、前記床下地上に前記接着剤を介して複数敷き詰められて構成される木質床構造。
【請求項9】
請求項8に記載された木質床構造における前記木質化粧床材を、既設の木質化粧床材として、その既設の木質化粧床材を新たな木質化粧床材に貼り替える床材貼り替え方法であって、
前記既設の木質化粧床材を前記床下地から引き剥がした後、
前記床下地上に残存付着する前記既設の木質化粧床材の破片を、スクレーパーによって掻き取って除去し、
次いで、前記床下地に新たな木質化粧床材を複数敷き詰めるようにしたことを特徴とする床材貼り替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174316(P2011−174316A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40026(P2010−40026)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】