説明

木質材料からのアルデヒド類および揮発性有機化合物の放出を低減させるための方法

本発明は、リグノセルロース含有破砕物から木質材料を製造する方法であって、木質材料から揮発性有機化合物、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドの放出が低減される方法に関する。具体的には、本発明は、揮発性有機化合物およびアルデヒド類の放出が低減された木質材料の製造方法であって、製造された木質材料から揮発性有機化合物およびアルデヒド類、特にホルムアルデヒドの放出を抑制する、所定の化合物の組合せが使用される方法に関する。さらに本発明は、本方法により製造可能である木質材料、特にOSBボード、パーチクルボードおよびMDFボードに関する。最後に本発明は、木質材料の処理において、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドおよび揮発性有機化合物の放出を低減させるに適した組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、リグノセルロースを含有する破砕物から木質材料を製造する方法に関し、その木質材料は、揮発性有機化合物(VOC)、ここでは特にアルデヒド類のみならずホルムアルデヒドの低減された放出を有するものである。具体的には、本発明は、揮発性有機化合物および任意にホルムアルデヒドの放出が低減された木質材料を製造するための方法に関し、その際、製造された木質材料からの揮発性有機化合物およびホルムアルデヒドの放出を抑制する化合物の所定の組合せが使用される。さらに本発明は、本方法を用いて製造可能な木質材料、特にOSBボード、パーチクルボードおよびMDFボードに関する。最後に本発明は、木質材料の処理に際しホルムアルデヒド並びに揮発性有機化合物の放出を減少させるに適した組成物、およびその対応する用途を提供する。
【0002】
先行技術
木材および木材破砕物のようなリグノセルロースまたはリグノセルロース含有物質並びにそれから製造される、木質材料ボードのような木質材料は、とりわけ揮発性有機化合物(VOC)およびホルムアルデヒド等の高揮発性有機化合物(VVOC)を含んでいる。揮発性有機化合物としては、ガスクロマトグラムでの滞留時間がC6(ヘキサン)ないしC16(ヘキサデカン)にある全ての揮発性有機物が包含される。高揮発性有機化合物には、とりわけギ酸およびホルムアルデヒドが挙げられる。先に述べた用語「アルデヒド」とは、別段の記載がないかぎり、揮発性化合物だけでなく他のすべてのアルデヒド類、特にホルムアルデヒドを含む。
【0003】
揮発性有機化合物および高揮発性有機化合物は、リグノセルロース類の種類および状態例えば木またはリグノセルロースの破砕物の材質、貯蔵期間、貯蔵条件に依存して、化学組成および量が異なって存在する。これらのVOCは、リグノセルロース類(例えば木材)の抽出物または転化生成物から本質的に生じる。その顕著な代表例は、アルファ−ピネン、ベータ−ピネン、デルタ−3−カレンである。なかでも、これらの成分は針葉樹の木に存在する。例えば木材および破砕物の貯蔵および処理中に生じる転化生成物は、例えばペンタナールおよびヘキサナールである。なかでも、主にパーチクルボード、中密度ファイバーボード(MDF)またはOSBボードが製造される針葉樹木は、揮発性有機テルペン系化合物およびアルデヒド類の生成をもたらす多量の樹脂および脂質を含んでいる。一部これらの物質は、リグニン、セルロースおよびヘミセルロース等の木材の主成分の分解によっても生成する。VOC、およびホルムアルデヒド等のアルデヒド類は、木質材料を製造するための特定の接着剤を使用するによっても生成し得る。
【0004】
パーチクルボード、ファイバーボードおよびOSBボードを含むあらゆる木質材料がホルムアルデヒドならびにVOCおよびアルデヒド類を室内の空気中へ放出することは周知の事実である。すでに述べたように、これらの放出は、木材内の化学分解によるだけでなく、使用されたホルムアルデヒド含有接着剤の化学分解によっても引き起こされる。VOC放出の場合、もっぱら木材が関係する遊離が生じ、これらは、テルペン類等の易揮発性の木材成分または酢酸等の化学分解生成物のいわゆる一次放出、およびいわゆる二次または三次放出例えば、ペンタナール等の高級アルデヒド、もしくは高級カルボン酸に分けられる。これらの分解生成物は、脂肪酸の他、リグニン、セルロースおよびヘミセルロース等の木材成分の長期にわたる酸化過程によって生じる。
【0005】
現在OSBボード、中密度ファイバーボード等の木質材料の製造に使用されている接着剤には、尿素−ホルムアルデヒド接着剤(UF接着剤)、メラミン−尿素−フェノール−ホルムアルデヒド接着剤(MUPF接着剤)またはメラミン−尿素−ホルムアルデヒド接着剤(MUF接着剤)等のアミノプラスト接着剤が含まれる。木質材料で典型的に使用される更なる接着剤には、ジイソシアネート基剤の接着剤(PMDI)、ポリウレタン系接着剤、フェノール−ホルムアルデヒド系接着剤(PF接着剤)および/またはタンニン−ホルムアルデヒド系接着剤(TF接着剤)、またはそれらの混合物が含まれる。ファイバーボードの領域では、例えば、主にアミノプラスト接着剤が使用されている。VOCおよびホルムアルデヒドの遊離は、木質材料の製造中ばかりでなく、その製造後または使用中にも起きる。ファイバーボードの製造では、例えば、リグノセルロース含有物質の熱加水分解に際し木材の化学的部分分解が生じる。それによって生じる、アルデヒドおよび酸類等の易揮発性化合物は、後の製造過程でまたは製造後に木質材料を使用する際に放出される。これらはまた、接着特性にマイナスの作用をもたらすと同時に、製造された木質材料の性質に悪影響を与えることがある。
【0006】
前述の諸理由から、本発明の課題は、化学添加剤を利用する際に、木質材料からVOC放出(特にアルデヒド)および好ましくはホルムアルデヒドの放出を低レベルに抑えることであった。その際、複雑な技術の適合化または転化手段を避けるには、木質材料の技術的製造工程を出来る限り少なくすべきである。さらに、工程での化学的障害も少なくしなければならない。通常のホルムアルデヒド含有接着剤を使用する場合、高温および高圧下でその硬化が生じる。さらに重要な特徴は、酸または塩基の存在の尺度としてのpH値、およびpH値の変動(例えば硬化剤の添加による)に抗する抵抗の尺度としての緩衝能である。例えば、酸硬化性のアミノプラスト接着剤では5ないし6、またはアルカリ硬化性のPF接着剤ではpH8〜9の範囲、または中性硬化性のPMDI接着剤では6〜8の範囲にある必要なpH値の変動、および存在する緩衝能の変動は出来るだけ回避せねばならない。さらに、全期間、すなわち製造期間および製造後における木質材料の長期の使用中においてアルデヒドおよびVOCの放出を少なく抑えることが本発明の課題である。
【0007】
発明の説明
前記課題は、特定の組成物をリグノセルロース含有破砕物に添加し、VOC類およびアルデヒド類との反応によって、これらの化合物がその破砕物から放出しないかまたはその破砕物より製造された木質材料から放出しないように改変することにより解決される。そこで生じる化合物は非常に高分子量なので、もはや全く揮発性でなくなるとともに長期間のVOC放出またはアルデヒド放出に寄与しなくなる。
【0008】
ここで、前述のように、木質材料のpH値および緩衝能は重要な役割を果たす。従って、処理中ばかりでなく完成された木質材料のpH値および緩衝能を適切な値に保って木質材料の使用期間中にVOC類およびアルデヒド類への転化を出来る限り少なくすることが重要である。pH値は、使用した接着剤に応じて、5〜6の範囲または6〜9の範囲に設定されることが好ましい。すなわち例えば、本発明による添加剤の添加により確保される至適pH値範囲では、VOC放出の低減が可能であるだけでなく、この系は、pH値の変化の際に生じるような処理方法への悪影響、例えば、接着剤の早期硬化、不十分な硬化、貧弱な接着品質を与えない。
【0009】
ここで、後述するように、それぞれ異なる群i)ないしiv)の2群から選ばれる少なくとも2つの成分を添加すると、前記の不利点が減じられるかまたは抑えられることがわかった。この混合物によって、pH値および緩衝能が技術的に有効なレベルに達し得るが、生産工程の障害または木質材料成分の後の化学分解はない。先行技術、例えばWO2007/012350またはDE10160316では、単一成分(重亜硫酸塩)だけが使用され、これは、完成した木質材料の成分並びに製造過程中での個々の成分のpH値および緩衝能を変化させるのに対し、少なくとも2成分のこの組合せによればpH値の変化が制限される。
【0010】
pH値に悪影響を及ぼす、すなわちpH値をシフトさせる結果接着剤にとっての至適pH領域からかけはなれてしまうところの1つの成分または混合物の、VOC類およびアルデヒド類のスカベンジャーとしての使用のそれぞれの場合、以下の不利点を伴う。すなわち、実際の結合工程、例えばホットプレスに先立って、早期硬化または使用接着剤の阻害という危険がある。さらに、特に8を超えるアルカリ性pH値を有する亜硫酸塩溶液または5未満の酸性pH値を有する重亜硫酸塩溶液が使用される場合、ホットプレス中での不十分な硬化という危険がある。最後に、木質材料中に残存する遊離のまたは潜在性の酸および/またはアルカリ溶液の影響下での加水分解によって、接着剤の、および/または木材成分および/または木材中の含有成分の化学分解という危険がある。
【0011】
WO2007/012350の更なる欠点は、重亜硫酸塩がリファイナーの前に木材チップへ添加されるので、ファイバーボードに限定されることである。一方、本発明は全ての木質材料に適用することができる。この方法の更なる欠点はリファイナー中への投入である。そうするとSO2の蒸発および圧搾水による損失が特に高くなるからである。WO2007/012350はもっぱらホルムアルデヒドに係わるのであるが、驚くべきことに、少なくとも2の成分の添加によって、揮発性有機化合物の放出を効果的に低減し得ることが見いだされた。
【0012】
これに対して本発明では、破砕物の破砕後、例えば繊維ではリファイナーの後に始めて添加剤の添加が行われる。好ましくは、添加剤の適用は接着剤の導入直後に行われる。従ってこの添加剤が木材の蒸解に資することはない。
【0013】
それぞれ異なる群i)ないしiv)のうちの2つの群から選ばれる少なくとも2成分の組み合せにより、これらの問題を低減し得る。従って、本発明の本質的な利点は、VOCおよびホルムアルデヒド等のアルデヒド類の放出を低減させるため、pH値を安定化し緩衝能を維持することにある。
【0014】
群i)ないしiv)は、以下の通りである。
【0015】
群i)は、例えば一般式MeHSO3またはMe(HSO32[式中、Meはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを示す]の、亜硫酸水素塩、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシウム等を含む。
【0016】
好ましくは亜硫酸水素塩として、亜硫酸水素ナトリウムまたは亜硫酸水素アンモニウム、特に亜硫酸水素アンモニウムが使用される。
【0017】
群ii)の化合物である亜硫酸塩は、亜硫酸塩類、例えば一般式MeSO3またはMe(SO32[式中、Meは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンもしくはアンモニウムイオンを示し、場合によっては、亜硫酸アルカリ金属もしくは亜硫酸アンモニウムの場合のように2つのMeイオンが存在する]の化合物を含む。好適な亜硫酸塩は、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウムであり、特に好ましくは亜硫酸アンモニウムである。
【0018】
群i)およびii)の諸成分、亜硫酸水素塩および亜硫酸塩は、例えばホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物と迅速に反応し、例えば難溶性の亜硫酸水素ホルムアルデヒドまたは亜硫酸ホルムアルデヒド付加化合物の生成を伴う。その結果、非常に効果的かつ短期間にそれらの放出が低減される。さらに、前記成分は抗酸化特性を有するので、酸化により生じるVOC放出を抑制することができる。これらの成分は、幅広い緩衝作用を有し、木質材料のpH値および硬化した接着剤を安定化し、木質材料ならびに接着剤の加水分解を抑制することができる。亜硫酸塩ならびに亜硫酸水素塩成分は、例えばテルペン類、脂肪または脂肪酸中に含まれるような孤立二重結合と、還元またはこれらの化合物との付加により、更に反応する。
【0019】
本発明の方法における好ましい態様において、少なくとも1つの亜硫酸水素塩ならびに少なくとも1の亜硫酸塩が破砕物に添加される。その際に使用される塩類は、亜硫酸水素アンモニウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウム、または亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸アンモニウムである。亜硫酸アンモニウム/亜硫酸水素アンモニウムの組合せを使用することが特に好ましい。
【0020】
亜硫酸塩と亜硫酸水素塩の適切な組合せによって、所望のpH値が得られ、その範囲でバッファーとして作用する。従って、特に中性領域で緩衝能を示すためには、例えば亜硫酸塩/亜硫酸水素塩の等モル混合物が有利である。特に、亜硫酸アンモニウム/亜硫酸水素アンモニウムの1:1混合物が特に適していることが証明された。しかしながら、更なる工程処理に最適なpH値が得られるならば、1:3ないし3:1の範囲において他の組合せも可能である。これは、使用接着剤を前もって適切に測定(例えば、ゲル化時間の測定、硬化時間の測定)することによって容易に実施可能である。
【0021】
群iii)は、尿素、およびモノメチロール尿素、メチレン尿素等の尿素誘導体を含む。好ましくは尿素が使用される。
【0022】
同様に、尿素はホルムアルデヒドと反応し、モノおよびジメチロール尿素の生成を伴う。これらの反応は非常にゆっくり進むため、長期にわたって木質材料中のホルムアルデヒド誘導体を減少させる。しかし尿素の単独使用は、ホルムアルデヒドとの反応が非常にゆっくり起こり、平衡反応であるため、ホルムアルデヒドが後の時点でも放出され得るので、有効ではない。
【0023】
さらなる好ましい態様では、群iii)の1成分と群i)およびii)からの少なくとも1成分との組合せが、本発明の方法において破砕物に添加される。ホルムアルデヒドおよびVOCに対する添加された諸成分の反応様式および反応時間が異なるため、短期および長期にわたるVOCおよびホルムアルデヒドの放出を変えることができ、かくして木質材料の特性が最適化される。
【0024】
群iv)は、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウムを含む。好ましくは、水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムが使用される。さらなる好適な水酸化物には、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが含まれる。群iv)の水酸化物成分は、主にpH値の調節のために必要とされるが、UF接着剤、MUF接着剤、MUPF接着剤等の酸硬化性接着剤の加水分解を抑制することができる。好ましい態様では、破砕物に、それぞれ異なる群i)およびii)それぞれから少なくとも1つの成分、尿素および/または水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属もしくは水酸化アンモニウムが添加される。その結果、得られた木質材料の緩衝能が最適となり、特に好ましいpH値が達成される。従って、木質材料およびそこに含まれる接着剤の分解過程が長期にわたって低減される。
【0025】
特に好ましくは、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および場合によっては尿素または尿素誘導体の組合せが添加される。
【0026】
好ましくは、少なくとも1種の亜硫酸水素塩を絶対乾燥(絶乾)リグノセルロースに対して0.1重量%の量で添加される。亜硫酸水素塩の量は、絶対乾燥リグノセルロースに対して好ましくは0.1重量%〜5重量%である。また亜硫酸塩の量は、絶対乾燥リグノセルロースに対して少なくとも0.1重量%、例えば0.1重量%〜5重%である。好ましくは、0.2重量%〜1.5重量%の亜硫酸塩または亜硫酸水素塩の量が用いられ、例えば、絶対乾燥木材に対して、1%を伴う約50%の固形分を有する混合物が計量投入される。尿素の量は、絶対乾燥リグノセルロースに対して好ましくは0.5重量%〜5重量%である。水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属および水酸化アンモニウムの量は、絶対乾燥リグノセルロースに対して好ましくは0.1重量%〜3重量%の範囲内にある。
【0027】
更に、本発明は、木質材料を処理するためおよびそれに含まれる揮発性有機化合物(VOC)およびアルデヒド類ならびにホルムアルデヒドの放出を低減させるための、以後スカベンジャー溶液とも称される、組成物であって、
i)亜硫酸水素塩、
ii)亜硫酸塩
の各々からの少なくとも1種の成分を含み、
場合によってはiii)および/またはiv):
iii)尿素および尿素誘導体、
iv)水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属もしくは水酸化アンモニウム
からの少なくとも1種の成分がさらに添加される組成物に関する。
【0028】
亜硫酸塩または亜硫酸水素塩は、好ましくはナトリウムおよびアンモニウムから誘導されるものである。水酸化物化合物は、好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0029】
さらなる好ましい態様は、上記タイプの組成物であって、少なくとも1種の亜硫酸水素塩および亜硫酸塩が尿素および/または尿素誘導体と組合せて使用される組成物に関する。
【0030】
上記スカベンジャー溶液は、あらゆる木質材料の製造に際して使用され、その添加は、接着ドラム、ブローライン接着または乾燥接着等の結合剤計量のための業務用装置で本発明の方法に基づいて実施される。さらに、本発明に基づくと、ノズルを介したマットへの前記溶液の添加は、加熱圧縮の直前に可能である。添加剤は、接着剤と混合されるのではなく、接着剤の適用の前後に、加熱圧縮の直前に破砕物に添加されることが好ましい。その際、この添加剤は、ホルムアルデヒド含有接着剤に限定されることなく、木質材料に関して使用される他のあらゆる熱可塑性または熱硬化性の接着剤(例えばPMDI等)に及ぶ。
【0031】
特に好ましくは、
0ないし90重量%の亜硫酸アンモニウム
0ないし90重量%の亜硫酸水素アンモニウム
0ないし90重量%の亜硫酸水素ナトリウム
0ないし90重量%の亜硫酸ナトリウム
0ないし90重量%の尿素
0ないし10重量%の水酸化ナトリウム
を含み、前記の群i)およびii)からの成分が少なくとも0.1重量%の量で存在する組成物である。
【0032】
最後に、本発明は、本発明の方法により得られる木質材料を提供する。これらの木質材料は、揮発性有機化合物、特にはホルムアルデヒドを含むアルデヒド類の放出量の減少が際立っている。ここでは特に、HDFもしくはMDF等のファイバーボード、またはOSBボードである。
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
低放出性HDFの製造
既知の方法に従ってHDFボードを製造したが、その際、本発明による木質材料に、直接、亜硫酸アンモニウム溶液(35%強度)と亜硫酸水素アンモニウム溶液(70%強度、SO2部分45%)の1:1混合物をブローライン中の分離ノズルを介して計量投入した。表1に、EN120またはEN717−2に基づいて定量されたホルムアルデヒド放出の測定値を示す。
【表1】

【0035】
表1から分かるように、各ホルムアルデヒド値は明らかに減少する。
【0036】
実施例2
低放出性パーチクルボードの製造
既知の方法に従ってパーチクルボードを製造した。その際、亜硫酸アンモニウム溶液(35%強度)と亜硫酸水素アンモニウム溶液(70%強度、SO2部分45%)の1:1混合物を、ブローライン中の分離ノズルを介して計量投入した。その際、接着剤100kg当り溶液4kgを投入した。さらに、絶対乾燥木材を基準に0.5重量%の尿素を添加した。最後に、試料のホルムアルデヒド放出をEN120に従っておよびJIS A 5908によるデシケーター法により定量した。表2にそれらの値を示す。
【表2】

【0037】
表2から、ホルムアルデヒド放出は顕著に減少し得ることが明らかである。
【0038】
実施例3
低放出性OSBの製造
既知の方法に従って、OSBボードを製造した。その際、本発明の木質材料では、絶対乾燥木材に対して硫化アンモニウム溶液(Ammoniumsulfidloesung)(35%強度)と硫化水素アンモニウム溶液(Ammoniumhydrogensulfidloesung)(70%強度)の1:1混合物を1%の量で粉砕物に計量投入した。この溶液を、接着層(Coil社、カナダ)を介して、被覆層のストランドおよび中間層のストランドに添加した。被覆層の接着剤(MUPF接着剤)および中間層の接着剤(PMDI)は、分離ノズルを介して計量投入した。
【0039】
表3に、DINおよびEN ISO16000に従って定量したアルデヒド放出の測定値を示す。
【0040】
これと比較するために本発明の組成物で処理しない対照のボードでの結果を表4に示す。
【表3】

【表4】

【0041】
28日間を通してVOCの総量を比較する場合、以下の値が得られた。
【表5】

【0042】
一連の実施例から明らかなように、本発明によれば、本発明の組成物を用いてVOC放出およびホルムアルデヒド放出を著しく低減させることが可能である。こうして得られた木質材料は、後の使用にあってVOC放出の低減、特にアルデヒド放出の低減を特徴とする。また、ホルムアルデヒド放出も低減している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース含有破砕物を提供する工程、
接着剤を提供する工程、
前記リグノセルロース含有破砕物と前記接着剤とを混合する工程、
熱処理しながら前記混合物をプレスする工程
を含む、リグノセルロースから木質材料を製造する方法であって、揮発性有機化合物(VOC)ならびにホルムアルデヒドの放出を低減するために、前記加圧の前で解繊もしくはチップ化の後に、前記破砕片産物に、i)およびii)の群からそれぞれ選ばれる少なくとも1つの成分の組合せを添加し、場合によっては群iii)およびiv)からの少なくとも1つの成分をさらに添加することを特徴とし、前記群i)ないしiv)は、
i)亜硫酸水素塩、
ii)亜硫酸塩、
iii)尿素または尿素誘導体、
iv)水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属または水酸化アンモニウム
である該方法。
【請求項2】
前記破砕物に、群i)亜硫酸水素塩および群ii)亜硫酸塩それぞれからの少なくとも1つの成分と、群iii)尿素または尿素誘導体からの少なくとも1つの成分との組合せを前記加圧の前に添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記木質材料が、木材チップ、木材ストランドおよび木質繊維から製造されることを特徴とする、請求項1ないし2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記木質材料が、木質ボード、特にパーチクルボード、MDFボードおよびOSBボード等のファイバーボードであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
亜硫酸水素塩として、亜硫酸水素アンモニウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウムが添加され、亜硫酸塩として、亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸アンモニウムが添加されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アミノプラスト接着剤を用いる場合、5〜9の範囲内のpH値、好ましくは6〜8の範囲を有する、亜硫酸水素アンモニウムと亜硫酸アンモニウムの組合せを添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
亜硫酸塩の量が、絶対乾燥リグノセルロースを基準に0.1重量%ないし5重量%の固形分であることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
亜硫酸水素塩の量が、絶対乾燥リグノセルロースを基準に0.1重量%ないし5重量%の固形分であることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
尿素の量が、絶対乾燥リグノセルロースを基準に0.5重量%ないし5重量%の固形分であることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属および水酸化アンモニウムの量が、絶対乾燥リグノセルロースを基準に0.1重量%ないし3重量%の固形分であることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法により得られる木質材料。
【請求項12】
木質材料が、ファイバーボード、特にHDFボードおよびMDFボードである請求項11に記載の木質材料。
【請求項13】
木質材料が、パーチクルボードである請求項11に記載の木質材料。
【請求項14】
木質材料が、OSBボードである請求項11に記載の木質材料。
【請求項15】
群i)およびii)
i)亜硫酸水素塩、
ii)亜硫酸塩
それぞれからの少なくとも1つの成分と、
iii)場合によっては尿素ならびに尿素誘導体、並びに
iv)場合によっては水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属または水酸化アンモニウム
を含む、揮発性有機化合物(VOC)およびホルムアルデヒドの放出を低減させるために木質材料を処理するための組成物。
【請求項16】
前記組成物が、少なくとも1種の亜硫酸水素塩および少なくとも1種の亜硫酸塩を、尿素および/または尿素誘導体との組合せで含むことを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記亜硫酸水素塩が、亜硫酸水素アルカリもしくは亜硫酸水素アンモニウムであり、前記亜硫酸塩が、亜硫酸アルカリもしくは亜硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項15または16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
成分として、
0ないし90重量%の亜硫酸アンモニウム、
0ないし90重量%の亜硫酸水素アンモニウム、
0ないし90重量%の亜硫酸水素ナトリウム
0ないし90重量%の亜硫酸ナトリウム、
0ないし90重量%の尿素、
0ないし10重量%の水酸化ナトリウム
を含み、少なくとも前記群i)およびii)それぞれからの少なくとも1つの成分が少なくとも0.1重量%で存在することを特徴とする請求項19ないし24のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−506122(P2011−506122A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520476(P2010−520476)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006584
【国際公開番号】WO2009/021702
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(501206633)クロノテック・アーゲー (6)
【氏名又は名称原語表記】Kronotec AG
【Fターム(参考)】