説明

木質板状建材の塗装方法

【課題】表面に溝部が形成され、表面縁部に面取り部が形成された木質板状建材における溝部と面取り部との色調差を緩和し得る木質板状建材の塗装方法を提供する。
【解決手段】木質基材5Aと表面化粧材4とを積層し、表面には前記木質基材の層内に底部が達するように溝部2が形成され、表面縁部には面取り部3が形成された木質板状建材1の表面1aを塗装する方法であって、スポンジロール11とこのスポンジロールの下流側に配されたリバースロール16とを有した第1塗装部10と、この第1塗装部の下流側に配された第1ゴムロール21を有した第2塗装部20と、この第2塗装部の下流側に配された第2ゴムロール31を有した第3塗装部30とを用い、前記第1塗装部の塗料15よりも前記第2塗装部及び前記第3塗装部の塗料25,35を高濃度にして、前記木質板状建材の表面を塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に溝部が形成され、表面縁部に面取り部が形成された木質板状建材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装材に用いられる板状の建材としては、合板やパーティクルボード、中密度繊維板(Medium Density Fiberboard、MDF)等の木質繊維板などの木質系材料を基材として、その表面に、天然銘木を薄くスライスしたスライス単板や突板等の表面化粧材を貼着した木質板状建材が汎用されている。
上記のような木質板状建材は、表面化粧材と木質基材とを積層一体化した後、切削加工により、表面に溝部(化粧溝)を形成したり、表面縁部に面取り部を形成したりするようにしている。
【0003】
このような木質板状建材は、そのままでは汚れや傷が付きやすいため、また、地色のバラツキを抑えるためなどの理由から、表面には塗装により着色処理がなされるが、上記のように、表面に溝部が形成されている場合には、溝部には塗料が溜まり易いため濃色となり易く、溝部以外の表面と溝部との塗装後の色調が異なるという問題があった。
また、表面化粧材は比較的薄く、通常、溝部の底部は、木質基材の層内にまで達するように形成されており、これにより、溝部の内面(切削面)には、木質基材が露出する。この結果、溝部以外の表面と溝部との塗装後の色調の差異がより一層顕著となる。
【0004】
下記特許文献1では、溝加工床材の溝部の内面に、鱗片状顔料を含む下地処理剤を塗布した後、余剰の下地処理剤を掻き取り、ついで、この溝部を含む表面全体を着色塗料で仕上げ塗装する加工方法が提案されている。このような加工方法によれば、溝部とそれ以外の部分との吸収度が略同一となり、着色塗料を色ムラなく、調和して塗装することができる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したような溝部以外の表面と溝部との塗装後の色調の差異を緩和するには、スプレーやフローコーターにより表面塗装を施すことで、解決することも考えられるが、スプレーによる塗布では、色ムラが生じ易く、また、塗料が飛散し、歩留まりが悪い。また、フローコーターによる塗布では、塗布量の調整が困難であり、表面の木質感が阻害(木目の隠蔽)されてしまう傾向があり、木質感を阻害しないようにロールコーターを用いて塗装を施すことが好ましい。
【0007】
ロールコーターを用いて、溝部以外の表面と溝部との塗装後の色調の差異を緩和するには、低濃度の塗料をスポンジロールで塗布し、その下流側のリバースロールの掻き取りにより溝部に流し込むようにして溝部内面を塗装する。次いで、下流側のゴム系ロールで同塗料を主に溝部以外の表面に塗布することで、表面を塗装し、さらに、その下流側で、表面と溝部との色調の差異を緩和するために、高濃度の塗料により、主に溝部以外の表面を塗装することで、溝部以外の表面と溝部との色調の差異を緩和することも考えられる。
【0008】
しかしながら、このような方法及び上記特許文献1に記載された加工方法では、溝部と溝部以外の表面との色調の差異をある程度は緩和できるものではあったが、上述のように、表面縁部に面取り部が形成されている木質板状建材の表面塗装にこれらの方法を用いた場合には、以下のような問題があった。
すなわち、表面に溝部が形成され、表面縁部に面取り部が形成された木質板状建材の表面全体に、上述のような方法により塗装を施した場合には、溝部には塗料が溜まり易いため、該溝部が濃色となる一方、表面縁部の面取り部には、塗料が付着し難く、この面取り部と溝部との塗装後の色調が異なるという問題があった。
このような表面縁部の面取り部は、例えば、床材や壁材、天井材などのように複数枚の木質板状建材を、隣接する木質板状建材同士を互いに接合するようにして施工対象に対して施工する場合には、これら木質板状建材の端部間の目地溝を構成することとなり、このようなものでは、特に、目地溝を構成する面取り部と溝部との色調差が目立つという問題があった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、表面に溝部が形成され、表面縁部に面取り部が形成された木質板状建材における溝部と面取り部との色調差を緩和し得る木質板状建材の塗装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る木質板状建材の塗装方法は、木質基材と表面化粧材とを積層し、表面には前記木質基材の層内に底部が達するように溝部が形成され、表面縁部には面取り部が形成された木質板状建材の表面を塗装する方法であって、スポンジロールとこのスポンジロールの下流側に配されたリバースロールとを有した第1塗装部と、この第1塗装部の下流側に配された第1ゴムロールを有した第2塗装部と、この第2塗装部の下流側に配された第2ゴムロールを有した第3塗装部とを用い、前記第1塗装部の塗料よりも前記第2塗装部及び前記第3塗装部の塗料を高濃度にして、前記木質板状建材の表面を塗装するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る前記木質板状建材の塗装方法においては、前記木質基材を木質板の表面側に中密度繊維板を積層した構成とし、前記溝部の底部がこの中密度繊維板の層内に達するように形成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る前記木質板状建材の塗装方法によれば、スポンジロールとリバースロールとを有した第1塗装部によって、主に溝部を低濃度の塗料で塗装し、その下流側において第1ゴムロールを有した第2塗装部及び第2ゴムロールを有した第3塗装部によって、主に溝部以外の表面縁部の面取り部を含む表面全体を第1塗装部よりも高濃度の塗料で塗装することができるので、溝部と表面縁部の面取り部との色調差を緩和することができる。すなわち、塗料が溜まり易い溝部は、主に、比較的、低濃度に調整した塗料が第1塗装部によって塗装され、塗料が付着し難い表面縁部の面取り部は、主に、比較的、高濃度に調整した塗料が第2塗装部及び第3塗装部によって塗装されるので、第2塗装部及び第3塗装部の濃度を調整することで、塗料の付着し難い表面縁部の面取り部と、塗料が溜まり易く濃色となる傾向がある溝部との色調差を容易に緩和することができる。
【0013】
本発明に係る前記木質板状建材の塗装方法において、前記木質基材を木質板の表面側に中密度繊維板を積層した構成とし、前記溝部の底部がこの中密度繊維板の層内に達するように形成されたものとすれば、特に溝部内面と溝部以外の部位との色調を合わせることが困難な木質板状建材に対しても本発明を適用することで、溝部と表面縁部の面取り部との色調差を緩和することができる。すなわち、床材や壁材などでは、表面硬度を高めるために比較的硬度の高い中密度繊維板を表面化粧材の下層側に介在させて、表面に溝部の形成がなされる。このようなものでは、溝部の内面に中密度繊維板が露出するため、表面との色調差が顕著となり、また、特に、面取り部についても同様に中密度繊維板が露出するような加工がなされる場合には、塗料が付着し難いことと相俟って着色処理による面取り部の表面隠蔽が十分になされ難く、溝部との色調差が顕著となる傾向がある。本発明によれば、上述のように、表面縁部の面取り部には、第2塗装部及び第3塗装部によって第1塗装部よりも高濃度の塗料が塗布されるので、面取り部にも十分に高濃度の塗料が付着し、着色されるので、溝部との色調差を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る木質板状建材の塗装方法の一実施形態を説明するための概念的な説明図である。
【図2】(a)は、同塗装方法が用いられる木質板状建材の斜視図、(b)は、同塗装方法を用いて塗装した木質板状建材の一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る木質板状建材の塗装方法を用いて塗装される木質板状建材は、図2(a)に示すように、床材1を例示している。
この床材1は、後記する塗装方法を用いて着色塗装処理がなされた後、図2(b)に示すように、複数枚の塗装後の床材1Aを、相互に実接合させて、根太や捨て張り合板等の床下地に敷設されて施工される。
以下、塗装前の床材1の構成の一例についてまず説明する。
【0016】
床材1は、平面視して長方形状とされており、例えば、1尺(303mm)×6尺(1818mm)程度の長尺板状体とされている。また、床材1は、木質基材5Aと、木質基材5Aの表面に貼着された表面化粧材としての突板4とを積層して構成されている(図2(b)も参照)。
突板4は、天然銘木を、厚さが100μm〜1.0mm程度に薄くスライスして形成された薄シート状とされており、本実施形態では、突板4の厚さを、0.2mm程度としている。
【0017】
木質基材5Aは、本実施形態では、木質板層6と、この木質板層6の表面側に積層された中密度繊維板(以下、MDFと略す)層5とからなる。
木質板層6としては、合板やパーティクルボード、インシュレーションボードなどが挙げられる。
MDF層5は、当該床材1の表面硬度を高めるべく積層されており、その厚さは、例えば、表面硬度の確保とコスト的な観点から、1.0mm程度〜5.0mm程度としてもよい。
【0018】
上記した木質板層6を構成する木質板、MDF層5を構成するMDF、及び突板4を構成する突板を接着剤により積層一体化し、必要に応じて所定寸法に裁断等した後、実接合部7,8を切削加工により四周端部に形成する。
これら実接合部7,8は、隣接する床材1A,1A(図2(b)参照)同士を接合する接合部を構成し、図例では、雄実部7と雌実部8とを備えた本実接合構造としているが、雇い実接合や相じゃくり接合構造等の他の接合構造とされたものとしてもよい。
【0019】
また、木質基材5Aの層内(図例では、MDF層5の層内)に底部が達するように溝部2を切削加工により床材1の表面に形成する。換言すれば、溝部2は、その底部が突板4の層内で止まらず、かつ、木質板層6まで達しないような深さに形成されている。また、溝部2は、図例では、断面形状(溝部自体の長手方向に直交する方向の縦断面形状)がV字形状とされている。
この溝部2は、例えば、複数枚の細長状(短冊状)の突板の端部が突き合わせられて木質基材5Aの表面に貼着されているような場合には、その継ぎ目に沿って形成するようにしてもよい。図例では、床材1の長手方向に沿う複数本(図例では2本)の縦溝部と、幅方向に沿う複数本(図例では4本)の横溝部とが形成された例を示している。
これら溝部2の形成箇所や本数は、意匠性等の観点から適宜、選択可能である。
【0020】
また、木質基材5Aの表面四周縁部を含んで切削加工により、床材1の表面四周縁部に、面取り部3を形成する(図2(b)も参照)。この面取り部3の形状は、図例では、表面縁部を斜めに切除したC面取り形状とされており、上記した溝部2の断面形状に合わせた形状とされている。
つまり、本実施形態では、図2(b)に示すように、隣接する床材1A,1A同士が接合された際に、各床材1A,1Aに形成された面取り部3,3によって、これら床材1A,1Aの端部間の目地溝3Aを形成しており、この目地溝3Aの断面形状が溝部2と略同寸同形状となるように面取り部3が形成されている。
上記のように溝部2及び面取り部3が形成された床材1の表面1aには、これらの部位において木質基材5A(図例では、MDF層5)が露出し、突板4の表面色(地色)との色調の不連続性が形成される。本実施形態では、これら溝部2及び面取り部3を含む床材1の表面1aの全面に亘って、後記する着色塗装処理を施すことで、薄塗膜層9を形成し、これら各部位における色調差を緩和するようにしている。
【0021】
尚、これら目地溝3A及び溝部2の断面形状は、図例では、V字形状としているが、U字形状、半円形状、上方に開口した倒コ字形状、逆台形状等、種々の形状としてもよい。
また、図例では、目地溝3Aと溝部2との断面形状を、略同寸同形状としたものを例示しているが、これらが互いに異なる断面形状とされたものとしてもよい。
さらに、これら目地溝3A及び溝部2の深さや幅は、突板4の厚さに応じて、適宜、設定可能であるが、本実施形態のように、床材の場合においては、0.5mm〜1.5mm程度としてもよい。上述のように、0.2mm程度の厚さの突板4を貼着した本実施形態では、これら目地溝3A及び溝部2の深さを0.6mm程度とし、その幅を、1.5mm程度としてもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る木質板状建材の塗装方法に用いられる塗装装置の一例について、図1に基づいて説明する。
図例の塗装装置は、第1塗装部10、第2塗装部20、及び第3塗装部30を塗装方向(搬送方向)下流側に向けてこの順に配置して構成され、これら各塗装部により塗布された塗料を乾燥する乾燥機40をこれらのさらに下流側に配置している。
【0023】
第1塗装部10は、スポンジロール11と、この下流側に配されたリバースロール16とを備え、これら各ロール11,16の下方には、床材1をニップ搬送するための搬送ローラ13,17がこれら各ローラ11,16と間隔を空けて、それぞれ設けられている。
スポンジロール11には、ドクターロール12が圧接されており、塗料タンク14から供給された塗料15の量が調整されながらスポンジロール11に供給される。
このスポンジロール11は、その下方を搬送される床材1に圧接、弾接されて、その適度な変形により、床材1の表面1aに形成された溝部2内に入り込むようにして塗装が可能とされている。
また、このスポンジロール11は、床材1の搬送方向(図1の白抜き矢印の方向)に対して正方向に回転される。
リバースロール16は、このスポンジロール11とは逆方向に回転されており、例えば、鍍金処理が施された金属リバースロールを採用するようにしてもよい。
【0024】
第2塗装部20は、第1ゴムロール21と、その下方に配設された上記同様の搬送ローラ23と、第1ゴムロール21に圧接された上記同様のドクターロール22と、塗料25を供給する塗料タンク24とを備えている。
第3塗装部30は、第2塗装部20と略同様の構成であり、第2ゴムロール31と、その下方に配設された搬送ローラ33と、第2ゴムロール31に圧接されたドクターロール32と、塗料35を供給する塗料タンク34とを備えている。
これら第2塗装部20及び第3塗装部30の各ゴムロール21,31は、その下方を搬送される床材1に圧接、弾接されているが、溝部2内には殆ど入り込まない程度の硬度を有し、床材1の表面1aのうち、主に、溝部2以外の面取り部3を含む表面の塗装が可能とされている。
【0025】
尚、上記した各塗装部10,20,30における各塗料タンク14,24,34からの各塗料15,25,35の供給は、適宜の供給手段によって塗布量に応じた量の供給がなされる。
乾燥機40は、第3塗装部30のローラ対31,33を介して搬送される塗装後の床材1を受け入れ、搬送する搬送コンベア42と、この搬送コンベア42の上方に配設され、搬送コンベア42上に載置または搬送コンベア42上を搬送される床材1の表面1aに対して温風を供給するドライヤー41とを備えている。
【0026】
次に、上記構成とされた塗装装置を用いた本実施形態に係る木質板状建材の塗装方法について説明する。
尚、図1では、床材1に形成された実接合部7,8、溝部2及び面取り部3の図示を省略している。
【0027】
まず、床材1の表面1aに塗布して着色塗装処理するための塗料について説明する。
本実施形態では、各塗装部10,20,30から供給される塗料15,25,35は、着色成分として白色顔料を主成分とした水性合成樹脂着色剤を希釈剤で希釈した水性合成樹脂塗料を用いるようにしている。
上記水性合成樹脂着色剤には、適宜、粘度調整剤や界面活性剤が添加されている。
また、本実施形態では、各塗装部10,20,30の塗料15,25,35は、第1塗装部10の塗料15よりも第2塗装部20及び第3塗装部30の塗料25,35が高濃度となるように濃度調整されている。
【0028】
これら各塗料15,25,35の濃度調整は、上記した水性合成樹脂着色剤を希釈剤によって希釈することで調整され、本実施形態では、着色剤と希釈剤との配合比(着色剤:希釈剤)が、第1塗装部10の塗料15を1:1、第2塗装部20の塗料25を6:1、第3塗装部30の塗料35を8:1となるように調整している。すなわち、本実施形態では、各塗装部10,20,30の各塗料15,25,35の濃度が、上流側から下流側に向けて段階的に順次、高濃度となるように設定している。
【0029】
尚、上記した塗料の着色成分としての顔料または染料の割合は、塗装対象である床材1の表面1a(溝部2及び面取り部3を含む)の地色や、塗装後の所望する色調等に応じて適宜、選択可能であり、本実施形態では、木質感を阻害しないように、白色系の塗料を用いるようにしているが、その他、半透明塗料や淡色系の塗料等としてもよい。
また、上記塗料としては、白色系やその他の水性ステインを、適宜、希釈したものとしてもよい。
さらに、第2塗装部20及び第3塗装部30の各塗料25,35の濃度は、同程度の濃度としてもよい。
さらにまた、上記した着色剤と希釈剤との配合比は、一例であり、塗装対象である床材1の表面1a(溝部2及び面取り部3を含む)の地色や、塗装後の所望する色調等に応じて適宜、選択可能である。
【0030】
上記のように各塗装部10,20,30の塗料15,25,35の濃度調整がなされた塗装装置に、上記のように実接合部7,8、溝部2及び面取り部3が形成された床材1を、その長手方向を搬送方向に沿わせるようにして導入する。
まず、床材1の表面1aには、第1塗装部10のスポンジロール11の塗料15が塗布され、このスポンジロール11の塗料15は、溝部2の内面及び面取り部3を含み、床材1の表面1a全体に亘って塗布される。
次いで、このスポンジロール11の下流側に配されたリバースロール16が床材1の搬送方向に対して逆回転しながら、床材1の表面1aに塗布された塗料15を掻き取るようにして床材1の表面1aに摺接することで、塗料15が溝部2内に流し込まれ、溝部2の内面が着色塗装される。
この第1塗装部10における床材1の表面1aへの塗布は、主に溝部2に対してなされ、溝部2以外の面取り部3を含む床材1の表面1aには、塗料15が低濃度であるとともに、リバースロール16による掻き取りによって薄く塗布された程度である。
【0031】
上記のように主に溝部2に対して着色塗装を施した後、その下流側の第2塗装部20及び第3塗装部30において、主に、溝部2以外の面取り部3を含む床材1の表面1aに対して各ゴムローラ21,31によって各塗料25,35を塗布する。
これら各塗料25,35は、上述のように、第1塗装部10の塗料15よりも高濃度に調整されているので、溝部2以外の床材1の表面1aに対して、十分な着色塗装処理が施される。特に、面取り部3は、傾斜面とされているので、塗料が付着し難いが、これら第2塗装部20及び第3塗装部30による高濃度の塗料25,35が塗布されることで、面取り部3にも十分に高濃度の塗料25,35が付着し、着色される。
尚、上記した各塗装部10,20,30における各塗料15,25,35の塗布量は、塗装対象である木質板状建材の表面物性(染み込み易さ等)や、形成したい塗膜層の膜厚に応じて、適宜、調整可能である。
次いで、上記のように各塗装部10,20,30において着色塗装処理がなされた後、これらの下流側の乾燥機40内へ搬送し、適宜の温度、時間で乾燥させ、図2(b)に示すように、床材1の表面1aの全面に亘って薄塗膜層9が形成された床材1Aが形成される。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る木質板状建材の塗装方法によれば、塗料が溜まり易く濃色となる傾向がある溝部2は、主に、比較的、低濃度に調整した塗料15が第1塗装部10によって塗装され、塗料が付着し難い表面縁部の面取り部3は、主に、比較的、高濃度に調整した塗料25,35が第2塗装部20及び第3塗装部30によって塗装されるので、これら第2塗装部20及び第3塗装部30の濃度を調整することで、床材1の表面縁部の面取り部3と、溝部2との色調差を容易に緩和することができる。
また、面取り部3及び溝部2以外の表面にも面取り部3と同様の着色塗装処理がなされるので、床材1の表面1aの全面において色調差を緩和することができる。
【0033】
さらに、特に、本実施形態では、塗装対象としての木質板状建材1を、木質基材5Aを木質板6の表面側にMDF5を積層した構成とし、溝部2の底部がこのMDF層5の層内に達するように形成されたものとしているので、溝部2の内面と溝部2以外の部位との色調差が大きくなるが、上記着色塗装処理を施すことで、溝部2と表面縁部の面取り部3との色調差を緩和することができる。
また、本実施形態では、塗装対象を、実接合部7,8を有した床材1とし、塗装後に施工された際に、隣接する床材1A,1A同士の面取り部3,3によって目地溝3Aを形成するものとしている。本実施形態によれば、この目地溝3Aと、溝部2との色調差が緩和できるので、施工後の床材1Aの意匠性を向上させることができる。
【0034】
尚、本実施形態に係る木質板状建材の塗装方法を用いて塗装される木質板状建材としては、床材として施工されるものに限られず、相互に端部が接合されて互いの面取り部によって目地溝が形成される壁材や天井材などの他の内装材としてもよい。または、その他の内装パネル材や家具材等にも本実施形態に係る木質板状建材の塗装方法を用いて塗装を施すようにしてもよい。
また、塗装対象としての木質板状建材の構成は、上記した例に限られず、木質基材の表面に表面化粧材を積層一体化し、表面に溝部が形成され、表面縁部に面取り部が形成されたものであればよい。例えば、実接合部を有さないものとしてもよく、また、木質基材の積層構造も合板等の木質板とMDFとを積層したものに限られず、木質板のみやMDFのみによって木質基材が構成されたものとしてもよい。または、MDFに代えて、他の硬質ボードを表面化粧材の下層に介在させたものとしてもよい。
さらに、図例では、木質板状建材の表面縁部の四周の全周に亘って面取り部が形成されたものを例示しているが、少なくとも一辺の表面縁部に面取り部が形成されたものとしてもよい。
【0035】
さらにまた、本実施形態において説明した塗装装置は、一例であり、スポンジロールとこのスポンジロールの下流側に配されたリバースロールとを有した第1塗装部と、この第1塗装部の下流側に配された第1ゴムロールを有した第2塗装部と、この第2塗装部の下流側に配された第2ゴムロールを有した第3塗装部とを有し、これら各塗装部の塗料の濃度調整が可能なものであれば、どのようなものでもよい。
また、乾燥機を設けずに、自然乾燥としてもよく、また、塗料の種類に応じて他の乾燥機を採用するようにしてもよい。例えば、紫外線硬化型塗料を用いる場合には、紫外線照射ランプ等を乾燥機として採用するようにしてもよい。
【0036】
さらに、本発明に係る塗装方法を実行する前に、前処理として、表面研磨を施したり、下塗りを施したりするようにしてもよい。
さらにまた、本発明に係る塗装方法を実行した後に、仕上げ処理として、表面研磨を施したり、クリヤー塗装を施したりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 塗装前の床材(木質板状建材)
1a 床材表面
2 溝部
3 面取り部
4 突板(表面化粧材)
5 MDF層(中密度繊維板)
5A 木質基材
6 木質板層(木質板)
10 第1塗装部
11 スポンジロール
15 第1塗装部の塗料
16 リバースロール
20 第2塗装部
21 第1ゴムロール
25 第2塗装部の塗料
30 第3塗装部
31 第2ゴムロール
35 第3塗装部の塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材と表面化粧材とを積層し、表面には前記木質基材の層内に底部が達するように溝部が形成され、表面縁部には面取り部が形成された木質板状建材の表面を塗装する方法であって、
スポンジロールとこのスポンジロールの下流側に配されたリバースロールとを有した第1塗装部と、この第1塗装部の下流側に配された第1ゴムロールを有した第2塗装部と、この第2塗装部の下流側に配された第2ゴムロールを有した第3塗装部とを用い、前記第1塗装部の塗料よりも前記第2塗装部及び前記第3塗装部の塗料を高濃度にして、前記木質板状建材の表面を塗装するようにしたことを特徴とする木質板状建材の塗装方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記木質基材が木質板の表面側に中密度繊維板を積層した構成とされ、前記溝部の底部がこの中密度繊維板の層内に達するように形成されている木質板状建材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−25162(P2011−25162A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173886(P2009−173886)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】