説明

木質添え飾りおよびその製造方法

【課題】細かな細工も簡単でメリハリのある美しい木質添え飾りならびにその製造方法を提供できるようにすることを目的とする。
【解決手段】節句飾りに添えて飾られる木質添え飾りであって、板状木質素材の一面(表面)からレーザー光を所望するパターンに沿って照射し、照射した部分の板状の木質素材の少なくとも1部を焼失させるとともに、レーザー光の照射側面の未照射部分と残存する照射部分の少なくともいずれか一方に、透明若しくは着色透明樹脂層を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質添え飾りおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飾り部材、例えば端午の節句の鎧兜や武者人形に添えて家紋や武将の花押を入れた衝立、あるいは飾り板を設けることがよく行われている。
こうした衝立や飾り板は、その表面に彫刻を施して凹凸を形成するようにしてあるがこうした場合、手作業であることから、手間がかかる上、均一な製品を製作することができないという問題があった。
【0003】
また、透かし模様を形成する場合には、鑿やコッピングソー(弓鋸)で形成するために、細かな細工が難しく、こうした場合でも手間がかかる上、均一な製品を製作することができないという問題があった。
しかも、コッピングソーで形成する場合、切り口が毛羽立ってしまい、見苦しくなることから、その部分の仕上げがさらに必要となり、生産性がさらに低下してしまうという問題もある。
【0004】
そこで、鑿やコッピングソーを使用することなく、竹や合板に透かし模様を形成するもの(特許文献1)が先に提案されている。
この先の提案にかかるものは、竹製あるいは木製あるいはコルク製あるいはパーチクルボードからなる基板に、レーザー加工で紋様を形成したコースターを製作するために、例えばレーザー光発生手段から出力されるレーザー光を、シート状レーザー光形成手段により、光の進行方向に垂直な所定方向に拡張させたシート状のレーザー光とし、このシート状のレーザー光をプリズム等で下方側に垂下させ、集光手段を通してシート状レーザー光を幅方向に集束させるように構成されたCO2レーザー光加工装置で、台上に載せられている竹や合板等の加工対象物に対して集束させたレーザー光を当てて加工するようにしたもので、ものによっては加工した後、燻蒸加工により黒色にするようにしたものである。
【0005】
因みに、CO2レーザーは、波長が10.6μmの遠赤外線で、可視光がおよそ0.4〜0.7μmであるため、人間の目には見えず、連続発信とパルス発信が可能である。
一方、レーザー発振機の効率(レーザー媒質に投入されたエネルギーに対する出力レーザー光のエネルギーの比率)が10〜20%とYAGレーザーの2〜4%に比べてかなり高く、大出力による高能率加工が可能であるため、木質添え飾りのような細かな細工には不向きであるという問題があった。
【0006】
また、製造された竹製のコースター等を燻蒸すると、全体が黒くなり、メリハリのないものとなり、木質添え飾りには不向きなものになってしまうという問題もある。
加えて、製造されたコースター等を燻蒸するだけでは、レーザー光で切断ならびに切削して炭化した部分の固定手段にならず、触れると手が汚れたり、置かれた周囲を汚してしまうおそれがあり、この点でも木質添え飾りには不向きなものになってしまうという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて提案されたもので、細かな細工も簡単でメリハリのある美しい木質添え飾りならびにその製造方法を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる木質添え飾りは、主として節句飾りに添えて飾られる木質添え飾りであって、板状木質素材の一面(表面)からレーザー光を所望するパターンに沿って照射し、照射した部分の板状の木質素材の少なくとも1部を焼失させるとともに、レーザー光の照射側面の未照射部分と残存する照射部分の少なくともいずれか一方に、透明若しくは着色透明樹脂層を形成したことを最も主要な特徴とするものである。
尚、本発明の木質添え飾りは、例えばひな壇の一部にはめ込んで使用されるものも含むものである。
【0009】
本発明にかかる木質添え飾りでは、板状木質部材が桐であって、レーザー光により所望するパターンの透かし模様にしてあること、木質飾り部材が、自立手段を設けた節句用飾りであるもの、自立手段が、一対の木質飾り部材を蝶番で連結されて折り畳み可能な衝立若しくは木質飾り部材の裏面に支え部材を設けて形成されていることも特徴とするものである。
【0010】
本発明にかかる木質添え飾りの製造方法は、節句飾りに添えて飾られる木質添え飾りの製造方法であって、加工台に板状木質素材をセットし、セットされた板状木質素材の表面に近接して当該板状木質素材と相対的にX軸方向およびY軸方向に移動可能なレーザー光照射器を、記憶装置に記憶された所望の加工パターンにしたがって移動制御させることにより、レーザー光が照射された部分の少なくとも1部を焼失させて板状木質素材を所望する加工パターンに形成した後、当該形成された加工パターンの少なくともレーザー光が照射された部分に透明若しくは着色透明樹脂層を形成するようにしたことを最も主要な特徴とするものである。
【0011】
また、木質添え飾りおよびその製造方法におけるレーザー光がYAGレーザー光であることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、板状木質素材の一面(表面)からレーザー光を所望するパターンに沿って照射し、照射した部分の板状の木質素材の少なくとも1部を焼失させるとともに、レーザー光の照射側面の未照射部分と残存する照射部分の少なくともいずれか一方に、透明若しくは着色透明樹脂層を形成するようにしてあるので、表面の木質色とレーザー光で炭化した色とのコントラストが透明若しくは着色透明樹脂層を通して表面から視認することができ、立体感に優れ、仕上がりも美しい木質添え飾りを、手間をかけることなく簡単に製造することができる利点がある。
【0013】
加えて、レーザー光で炭化した部分は、透明若しくは着色透明樹脂層により固定されていることから、炭化した部分による手や周辺が汚れることを防止することができる利点もある。
【0014】
レーザー光がYAGレーザー光である場合、このYAGレーザーは、波長が1.06μmの近赤外線であり、CO2レーザーより波長が短いため、集光性が良いことから、微細加工を行うことができる。
これにより、例えば花押のように、撥ね上げた筆のかすれ具合も美しく、且つ忠実に再現することができる利点がある。
【0015】
特に、板状木質素材が10mm以下の桐では透かし模様で上述の花押を形成することができ、10mmを越えた厚みの桐や密度の高い硬質木材にするとレーザー光で所定の深さの模様にして浮き上がった模様を形成することができる利点がある。
【0016】
また、レーザー光がYAGレーザー光である場合、このYAGレーザーは、レーザー発振器と加工ヘッドとをフレキシブルな光ファイバーで連結することができるので、加工ヘッドを小型にして応答性を良くし、ディテールに優れた花押もその生産性を向上させることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は本発明にかかる木質添え飾りを作成するレーザー加工装置の概略図である。
【図2】はレーザー加工装置で形成された本発明にかかる透かし模様の木質添え飾りの斜視図である。
【図3】はレーザー加工装置で形成された本発明にかかる透かし模様の木質添え飾りの別の形態を締めす斜視図である。
【図4】はレーザー加工装置で形成された透かし模様を有する一対の素材(木質添え飾り)を使って開閉可能な衝立風に形成された木質添え飾りの斜視図である。
【図5】はレーザー加工装置により形成されたくぼみで模様を形成された本発明にかかる木質添え飾りの斜視図である。
【図6】はレーザー加工装置により形成されたくぼみで模様を形成された本発明にかかる木質添え飾りの一部分を拡大した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる木質添え飾りおよびその製造方法を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の木質添え飾りを製作する為のレーザー加工装置の概略図であって、図中符号1はレーザー加工装置を全体的に示す。
このレーザー加工装置1は、加工用の板状木質素材2を載置固定する載置台3と、載置台3の板状木質素材2の上面に近接した状態で移動するレーザー光照射ヘッド5と、このレーザー光照射ヘッド4からのレーザー光の照射を開始するとともに、レーザー光照射ヘッド4をX軸及びY軸方向に移動操作する制御装置5と、レーザー光照射ヘッド4にフレキシブルな光ファイバー6を介してレーザー光を供給するレーザー光発生装置7とからなる。
【0019】
上記載置台3は、板状木質素材2を固定するベッド8とこのベッド8の左右両側縁にスライドレール9、9を設け、このスライドレール9、9上を走行用モータ10によりX軸方向に移動操作される摺動ビーム11を設け、このスライドビーム11上を摺動用モータ12によりY軸方向に移動操作されるスライダ13を備え、このスライダ13にレーザー光照射ヘッド4が上下昇降可能に取り付けられて形成されている。
【0020】
そして、これら走行用モータ10及び摺動用モータ12を駆動制御するとともに、加工用のレーザー光を断続する制御装置5は、所望するパターンを入力可能な記憶部14と、この記憶部14に書き込まれた図形に従って上記両モータ10、12を制御する駆動制御部15と、記憶部14に書き込まれた図形と上記両モータ10、12が駆動制御されて移動するレーザー光照射ヘッド4にレーザー光発生装置7から供給されるレーザー光を断続制御するレーザー光制御部16とからなる。
【0021】
上記レーザー光発生装置7は、ケーシング17の内部にイットリウム(Yttrium)、アルミニウム(Aluminum)・ガーネット(Garnet)の結晶からなる発振器となる媒体(YAGロッド)18とその両端部に設けた共振器19、19と、媒体に光を当てる強力な光を発生するフラッシュランプ若しくはアークランプ(光源)20を内装してなる。
そして、レーザー光発生装置7は、フラッシュランプ若しくはアークランプ20の強い光を媒体18に当て、ここで励起、発振したものを共振器19、19で共振させることにより、エネルギー密度を高めた後、加工用のレーザー光として取り出すようになっている。
【0022】
上記のように構成されたレーザー加工装置1で節句の兜飾りや武者飾りのそばに添えて設ける木質添え飾り21を製作する手順を次に説明する。
先ず、所望するパターン(デザイン)を制御装置5の記憶部14に記憶させ、載置台3のベッド8には板状木質素材21である厚さ約9ミリの板状の桐材を固定する。
次に、レーザー光照射ヘッド4を加工開始点である原点(図示せず)に位置させて、制御装置5を起動させる
【0023】
この制御装置5の起動で、レーザー光制御部16の信号によりフラッシュランプ若しくはアークランプ20で発生させた強い光が媒体18にあたり、ここで励起、発振し、共振器19、19で共振してエネルギー密度が高められて形成されたレーザー光がフレキシブルな光ファイバー6でレーザー光照射ヘッド4に供給される。
これと同時に、制御装置5の起動により走行用モータ10と摺動用モータ12が、記憶部14に入力されているパターンに従って駆動制御されるので、載置台3のベッド8に固定されている板状の桐材2は、からのレーザー光によりライン状に切断されて、例えば図2に示すような形状の板状木質素材2や、記憶部14に入力されているパターンが、内部に亀甲模様を施した四角な枠に「伊達政宗」の花押を施した模様である場合、図3に示すように、そのデザインがその通り、忠実に再現される。
【0024】
加工された板状木質素材2の表面ならびにレーザー光による切り口部分22に塗布による透明な樹脂層若しくは着色透明な樹脂層を形成すると、ここに木質添え飾り21が完成する。
斯くして製作された本例のように板状木質素材2が白っぽい肌の桐である場合、木質添え飾り21は、レーザー光による切り口部分22が炭化してこげ茶乃至黒色になっており、表面の白い木肌とのコントラストが鮮やかで立体感のある高品位のものにすることができる。
また、記憶部14にタッチペンやスキャナーにより入力すると、特に図2に示すような筆の撥ね上げてできるかすれ具合の微妙な表現も忠実に再現することができる。
特にYAGレーザーのように、レーザー光発生装置7とレーザー光照射ヘッド4がフレキシブルな光ファイバー6で連結されている場合にはレーザー光照射ヘッド4の移動の応答性が良く生産性も高いものとなる。
【0025】
尚、本発明にいうところの木質添え飾り21は、単品で飾るものに限られず、例えば図4に示すように、矩形に形成されたものを蝶番23で連結することにより、開閉可能な衝立型にすることもできる。
この例では、木質添え飾り21の一部にエッチングやレーザー加工により透かし模様を施した金属製飾りをはめ込んである
また、上記実施の形態では、板状木質素材2を厚さ約9ミリの板状の桐材にすることにより透かし模様にしてあるが、これを、10mmを越えた厚みの桐や密度の高い硬質木材にすると、レーザー光で、図5及び図6に示すような、切削を所定の深さにして浮き上がった模様を形成することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1・・・レーザー加工装置
2・・・板状木質素材
3・・・載置代
4・・・レーザー光照射ヘッド
5・・・制御装置
6・・・光ファイバー
7・・・レーザー光発生装置
8・・・ベッド
9・・・スライドレール
10・・・走行用モータ
11・・・摺動ビーム
12・・・摺動用モータ
13・・・スライダ
14・・・記憶部
15・・・駆動制御部
16・・・レーザー光制御部
17・・・ケーシング
18・・・媒体
19・・・共振器
20・・・フラッシュランプ若しくはアークランプ(光源)
21・・・木質添え飾り
22・・・切り口部分
23・・・蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
節句飾りに添えて飾られる木質添え飾りであって、板状木質素材の一面(表面)からレーザー光を所望するパターンに沿って照射し、照射した部分の板状の木質素材の少なくとも1部を焼失させるとともに、レーザー光の照射側面の未照射部分と残存する照射部分の少なくともいずれか一方に、透明若しくは着色透明樹脂層を形成したことを特徴とする木質添え飾り。
【請求項2】
板状木質部材が桐であって、レーザー光により所望するパターン透かし模様にしてあることを特徴とする請求項1に記載の木質添え飾り。
【請求項3】
木質飾り部材が、自立手段を設けた節句用飾りである請求項1または請求項2に記載の木質添え飾り。
【請求項4】
自立手段が、一対の木質飾り部材を蝶番で連結されて折り畳み可能な衝立若しくは木質飾り部材の裏面かに支え部材を設けて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の木質添え飾り。
【請求項5】
節句飾りに添えて飾られる木質添え飾りの製造方法であって、加工台に板状木質素材をセットし、セットされた板状木質素材の表面に近接して当該板状木質素材と相対的にX軸方向およびY軸方向に移動可能なレーザー光照射器を、記憶装置に記憶された所望の加工パターンにしたがって移動制御させることにより、レーザー光が照射された部分の少なくとも1部を焼失させて板状木質素材を所望する加工パターンに形成した後、当該形成された加工パターンの少なくともレーザー光が照射された部分に透明若しくは着色透明樹脂層を形成するようにしたことを特徴とする木質添え飾りの製造方法。
【請求項6】
請求項1の木質添え飾りおよび請求項5における木質添え飾りの製造方法におけるレーザー光がYAGレーザー光であるもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167883(P2011−167883A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32183(P2010−32183)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(393012253)赤瀬産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】