説明

木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機と運用方法

【課題】効率良く高糖化率となる粉末が得られる、木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を提供する。
【解決手段】円筒容器1を水平にして上下振動させ、その内側で外周面に複数の板厚方向で直線状に突起が付いた厚板円板2が上下振動および円筒内を転動可能な間隙を設けて複数枚挿入し、円筒容器外面を冷却し、円筒容器と厚板円板の間隙に木質系バイオマスチップを供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,木質系バイオマスのセルロースおよびヘミセルロースを酵素で加水分解して単糖に変換し,変換した糖を菌や酵母でエタノールや生分解プラスチックに変換する木質系バイオマス加工品製造に関する。
【背景技術】
【0002】
大聖泰弘/三井物産株式会社編の「バイオエタノール最前線」(工業調査会発行)によると,我国は京都議定書対応で,2012年までに1990年を基準として炭酸ガスの排出量を6%削減する必要がある。
【0003】
その一方策としてバイオマスニッポンの行動の一環として環境省が,乗用車からの排出量を削減するためにカーボンニュートラルな木質系バイオマスから工業的に安価な燃料用エタノールを製造し,ガソリンに3%混合させてE3燃料としたものの全面普及を2012年に,10%混合させてE10燃料のとしたものの全面普及を2020年に達成させるシナリオを策定していることが示されている。
【0004】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,木質系バイオマスから燃料用エタノールを製造する技術開発を行うために「バイオマス高効率転換技術開発」を2001年から2005年にかけて行っている(NEDO報告書バーコード100000836参照)。
【0005】
ここでは濃硫酸による加水分解法を用いて木質系バイオマス中のセルロースを糖に変換している。
【0006】
糖液の回収率が低いこと,酸耐性・耐塩性の酵母の開発が必要なこと,濃硫酸廃液を処理する必要があること等の問題があり,ガソリンと競合できる価格での製造技術はまだ確立できていない。
【0007】
硫酸加水分解法の問題を解決する方法として機械的前処理法と酵素を用いる糖化処理法との組み合わせによるエタノール製造法がある。
【0008】
機械的前処理法について大阪工業試験所の夜久等は,昭和60年度通産省工技院特別研究報告書 “未利用木質資源の有効利用に関する研究”において機械的粉砕法を用いて木質系バイオマスを微粉砕させて酵素で糖化変換を行う方法を報告している。
【0009】
振動式ボールミルを用い,5時間の粉砕処理で酵素糖化が困難な針葉樹の木材多糖の80〜90%が糖化できること,糖化率を高めるための木材の粉砕時には高衝撃力が必要なことを報告している。
【0010】
伊藤等は,社団法人 資源・素材学会の資源・素材2005(室蘭)で“バイオエタノール製造用粉砕処理の研究”を報告している。
【0011】
大きな衝撃力が発生する1本のカッティングロッド媒体の振動ミルを用いて予備粉砕で200μm程度になった杉材粉末4グラムを30分程度粉砕処理して木材多糖類(ホロセルロース)の75%程度を糖化できることを報告している。
【0012】
【特許文献1】特開2004-188339は,ロッド装入粉砕筒とボール装入粉砕筒を組合せて木質材を100μm以下にする振動式粉砕装置を公開している。
【0013】
【特許文献2】特開2004-000823は,高速回転粉砕容器にボールと粉砕試料を装入し,ガイドベーンでボールのみを容器内壁より掻き取り高速で容器内を飛ばして粉砕容器と一緒に回転している試料に衝突させて粉砕を行う装置を公開している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特開2004-188339で公開されている粉砕機では100μm程度の粒径にすることが可能であるが,木質系バイオマスを粉砕して酵素で効率良く糖化するためには,20〜30μm程度まで微細化した後に引き続き高衝撃力を加える粉砕を行う必要があるために粉砕処理時間が5時間以上必要となり,この時間を1時間以内とする課題がある。
【0015】
特開2004-000823で公開されている粉砕機は,高衝撃力が付加できるため木質系バイオマスを1時間程度粉砕して得られた粉末は酵素で糖化変換すると高い糖変換率が達成できる。
【0016】
容器内で飛ばしたボールと固定壁との衝突の他にボール同士の衝突も多少発生するため,容器内で飛ばしたボールの高運動エネルギーを効率よく高衝撃エネルギーに変換できていない課題がある。
【0017】
また,バッチ式処理方式であるため粉砕処理に伴い小さくなった粒径に最適なボール径にできないため粉砕効率を十分上げられない課題がある。
【0018】
夜久等のアカマツの粉砕処理試験では3リットルのポッドで粉砕を行うと72時間で糖化率が最大の62%に,1.8リットルのポッドで粉砕を行うと5.5時間で糖化率が最大の66.8%となり,処理量が大容量になると最大の糖化率に達するまでの処理時間が非常に長くなる課題があった。
【0019】
大容量の粉砕機においても短時間の処理で高糖化率となる粉末を生成する粉砕機の課題解決は,1990年頃になると石油危機が緩和されたために中断している。
【0020】
伊藤等の用いた振動式カッティングロッドミルは,粉砕媒体が1本のロッドで粉砕量も4グラムと少ない事例であり,実際のプラントで用いるための大容量化をどのようにして行うかが課題である。
【0021】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり,木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため,本発明の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,請求項1記載の発明では,複数枚の周辺に突起の付いた厚板円板を組合せて1本のカッティングロッドと同等な機能を発揮する構成としたことを特徴とするものである。
【0023】
従来の振動式カッティングロッドミルを大容量化のために単純にカッティングロッドの長さと外径を大きくした場合,粉砕のために振動させた時にカッティングロッドの両端部のみが容器内壁と衝突して粉砕を行うことになり,粉砕効率が低下する傾向が発生するのに対して本提案の上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,粉砕のために振動させたときに周辺に突起の付いた厚板円板それぞれが独立に容器内壁に衝突するため大容量化を目指して粉砕容器を長くしても粉砕効率が低下しない構成であり,他の方法として粉砕容器径を大きくしても周辺に突起の付いた厚板円板それぞれの径も大きくできるため付加出来る衝撃力も大きくなるために周辺に突起の付いた厚板円板の板厚を薄くしても高衝撃力が確保できるようになり円筒容器の長さを変えなくても粉砕効率が低下しない構成となることを特徴とするものである。
【0024】
請求項2記載の発明では,第1項記載の木質系バイオマスチップ供給側から製品粉末が排出される側に移動するのに従い装入されている厚板円板の外周面に付いた突起の先端幅が狭くなり,突起数も多くなり,円板板厚も薄くなる組合せで1本のカッティングロッドと同等の機能を発揮する構成としたことを特徴とするものである。
【0025】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,供給されたバイオマスチップの粒径が大きな時には直接容器内壁に厚板円板の外周面に付いた突起が衝突しても突起が損傷するのを防ぐ突起構造とし,粉砕が進んで粒径が小さくなった時には厚板円板の外周面に付いた直線状先端突起の先端幅を狭くし,突起数を多くし,円板板厚を薄くして円板枚数を多くして粉砕試料との衝突頻度を増やす構成である。
【0026】
請求項3記載の発明では,第1項記載の厚板円板の外周面に付いた突起の先端部の焼き入れ処理をして硬さを高めた構成としたことを特徴とするものである。
【0027】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,供給されたバイオマスチップおよび粉砕が進んで微細化した粉末の処理中に,直接容器内壁に厚板円板の外周面に付いた突起が衝突しても突起に損傷が発生するのを防ぐための構成である。
【0028】
請求項4記載の発明では,第1項記載の厚板円板に同心状に穴を開け,その穴を厚板円板の材質より比重の大きな材質の物体で塞いだ構成としたことを特徴とするものである。
【0029】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,厚板円板を薄くしても外周面の突起で供給されたバイオマスチップや粉末に必要な大きさの衝撃力を付加できるため,円筒容器長さを一定とした場合厚板円板数を多く装入できるため粉砕媒体と試料の衝突頻度を多くできるようにした構成になっている。
【0030】
請求項5記載の発明では,第1項記載の外周面に突起の付いた厚板円板の少なくとも1面の中心部分が最高で滑らかな凸面となった構成としたことを特徴とするものである。
【0031】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,粉砕処理のために振動させた時,外周面に突起の付いた厚板円板それぞれが,独立に相対振動を起し易い構成で,試料への衝撃力を高く保つことができる構成である。
【0032】
請求項6記載の発明では,第1項記載の円筒容器外面に構成する冷却機構が円筒容器軸方向で冷却温度を調整できる構成としたことを特徴とするものである。
【0033】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,円筒容器内の軸方向の内表面温度を粉砕処理中の試料の含水率が最適になるように温度の制御できる構成である。
【0034】
請求項7記載の発明では,第1項記載の円筒容器外面に構成する冷却機構で円筒容器軸方向の冷却温度を調整して粉砕処理を行うことを特徴とするものである。
【0035】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,円筒容器内の軸方向の内表面温度を制御することで粉砕中の粉末の含水率の調整をすすめ,糖化率が高くなる含水率にする運転方法である。
【0036】
請求項8記載の発明では,第1項記載の円筒容器両端面および円筒外面にノズルを設け,円筒容器内に窒素ガスを供給したり,排出したりする構成としたことを特徴とするものである。
【0037】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,円筒容器内の軸方向の雰囲気ガスの乾燥度を制御できる構成である。
【0038】
請求項9記載の発明では,第1項記載の円筒容器両端面および円筒外面に設けたノズルを利用して,円筒容器内に窒素ガスを供給したり,排出したりして雰囲気ガスの乾き度を制御することを特徴とするものである。
【0039】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,円筒容器内の軸方向で窒素ガスの注入と排出を変えて円筒容器軸方向の乾き度を制御することで粉砕中の粉末の含水率の調整をすすめ,糖化率が高くなる不凍結水を増大させるようにする運転方法である。
【0040】
請求項10記載の発明では,第1項記載の円筒容器を複数体束ねた構成としたことを特徴とするものである。
【0041】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,大容量化のために円筒容器径を大きくする代わりに容器数を増やして粉砕処理量当りの粉砕媒体と固体壁の衝突頻度を多くした構成である。
【0042】
請求項11記載の発明では,振動ミルの粉砕円筒容器内に隔壁を設け,隔壁で隔離される部屋に径の異なるボールを装入した構成としたことを特徴とするものである。
【0043】
従来の振動ボールミルでは隔壁を設けることなく大量の原料処理を同一直径のボールを用いておこなっているが,隔壁を設けて隔壁で構成される粉砕室に原料粒径の大きい時には大きな径のボールを,粒径が小さくなるに従いボールの径も小さくして効果的にボールの衝撃力を粉砕試料に付加できるようにした構成である。
【0044】
請求項12記載の発明では、第11項記載の円筒容器内に内筒を装入した構成としたことを特徴とするものである。
【0045】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,粉砕媒体のボールと固定壁との衝突頻度を増やした構成である。
【0046】
請求項13記載の発明では,第11項記載の円筒容器内の隔壁で構成した粉砕室に複数本のロッドを装入した構成としたことを特徴とするものである。
【0047】
上記構成の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,振動ロッドミルを大容量化するために円筒容器長さが長くなってもロッド長さを短くできる粉砕室を多く設けることにより粉砕媒体のロッドと固定壁との衝突頻度を多くした構成である。
【0048】
隔壁を設けて隔壁で構成される粉砕室に原料粒径の大きい時には大きな径のロッドを,粒径が小さくなるに従いロッドの径も小さくして効果的にロッドの衝撃力を粉砕媒体に付加できるようにした構成である。
【発明の効果】
【0049】
本発明の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機においては,請求項1記載の発明では,複数枚の周辺に突起を付けた厚板円板を円筒容器に装入し,1本のカッティグロッドを装入した場合と同等な粉砕媒体としての機能を発揮するように構成したため,大量の木質系バイオマスチップを処理するために円筒容器の長さを長くしても円筒容器壁と粉砕媒体との衝突頻度は少量処理を行う1本のカッティグロッドと同程度になるために1時間以下の粉砕処理で高糖化率となる粉末を生成する木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を製造することができる。
【0050】
請求項2記載の発明では、第1項記載の発明の周辺に突起を付けた厚板円板で木質系バイオマスチップ供給側の厚板円板の突起先端の幅を厚く・突起数を少なくし,円板の板厚を厚くし,粉末出口側の厚板円板の突起先端の幅を狭く・突起数を多くし,円板板厚を薄くした構成なので,供給された木質系バイオマスチップが高衝撃力で粉砕されて微粉末になるに従って衝撃力を与える衝突頻度が多くなっているために粉砕効率の良い木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を製造することができる。
【0051】
請求項3記載の発明では,第1項記載の発明の厚板円板の周辺に付けた突起の先端部の硬さを高めた構成なので,粉砕処理中に突起の先端と円筒容器内壁とが直接衝突した時に突起に損傷が発生するのを軽減できる木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を製造することができる。
【0052】
請求項4記載の発明では,第1項記載の発明の厚板円板に同心状に開口を設け,その開口部を厚板円板の材質と比較して比重の大きい材質のもので塞ぐ構成なので,厚板円板の板厚を薄くして必要な衝撃力が確保できるため,円筒容器長さが一定の場合,厚板円板枚数を増やすことができるため1時間以下の粉砕処理で高糖化率となる粉末を大量に生成する木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を製造することができる。
【0053】
請求項5記載の発明では,第1項記載の発明の厚板円板の片面を平面とし,他の面の中心部分に滑らか凸面を形成し,凸面と平面が接するように複数枚の厚板円板で1本のカッティグロッドと同等な構成としたもので,大量の木質系バイオマスチップを処理するために振動運動を与えた時に各厚板円板が独立して相対振動運動を起しやすくなるため少量処理を行う1本のカッティグロッドと同様に1時間以下の粉砕処理で高糖化率となる粉末を生成することができる木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機を製造することができる。
【0054】
請求項6記載の発明では,第1項記載の円筒容器外面に構成する冷却機構が円筒容器軸方向で冷却温度を調整できる構成としたことを特徴とするものであるため円筒容器内の軸方向の内表面温度を容易に制御できるため粉砕処理中の試料の含水率が高糖化率粉末を得るために最適になるようすることができる構成である。
【0055】
請求項7記載の発明では,第1項記載の円筒容器外面に構成する冷却機構で円筒容器軸方向の冷却温度を調整して粉砕処理を行うことで円筒容器内の軸方向の内表面温度の制御を行い,粉砕中の粉末の含水率の調整を行い,糖化率が高くなる含水率にさせるような運転を行う。
【0056】
請求項8記載の発明では,第1項記載の円筒容器両端面および円筒外面にノズルを設け,円筒容器内に窒素ガスを供給したり,排出したりする構成としたことにより円筒容器内の軸方向の雰囲気ガスの乾き度を制御できる構成である。
【0057】
請求項9記載の発明では,第1項記載の円筒容器両端面および円筒外面に設けたノズルを利用して,円筒容器内の軸方向位置で窒素ガスの注入と排出を変えて円筒容器軸方向の乾き度を制御し,粉砕中の粉末の含水率の調整をすすめ,糖化率が高くなる含水率にさせる運転を行なう。
【0058】
請求項10記載の発明では,第1項記載の円筒容器を複数体束ねた構成としたことで大容量化のために円筒容器径を大きくする代わりに容器数を増やして粉砕処理量当りの粉砕媒体と固体壁の衝突頻度を大きくした構成である。
【0059】
請求項11記載の発明では,振動ミルの粉砕円筒容器内に隔壁を設け,隔壁で隔離される粉砕室に径の異なるボールを装入した構成としたことで,原料粒径の大きい時には大きな径のボールを,粉砕処理が進んで粒径が小さくなるに従いボールの径も小さくして付加衝撃力を保ちながら衝突頻度を多くして粉砕効率を高めた構成である。
【0060】
請求項12記載の発明では,第11項記載の円筒容器内に内筒を装入した構成としたことで,粉砕媒体のボールと固定壁との衝突頻度を増やし,内筒回りにボールを旋回させる運動を起こさせて衝撃力を大きくなるようにして粉砕処理効率を向上させた構成である。
【0061】
請求項13記載の発明では,第11項記載の円筒容器内の隔壁で構成した粉砕室に複数本のロッドを装入した構成としたことで,振動ロッドミルを大容量化するために円筒容器長さが長くなってもロッド長さを短くできる粉砕室を多く設けることにより粉砕媒体のロッドと固定壁との衝突頻度を増やし,原料粒径の大きい時には大きな径のロッドを,粉砕処理が進んで粒径が小さくなるに従いロッドの径も小さくして付加衝撃力を保ちながら衝突頻度を多くして粉砕処理効率を向上させた構成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明に係る木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の第1の実施の形態を図1に基づき説明する。
【0063】
図1において,本実施の形態は,円筒容器1,複数の突起3付き厚板円板2,厚板円板2の同心状の開口部に厚板円板2の材質と比較して比重の大きい材質の重量調整板4が装着固定され,重量調整板4の片面は平面で,反対の面は中心部分が最も高くなって滑らかな凸形状で,重量調整板4の最外周厚さと厚板円板2の厚さは等しく,両者は段差の無い状態で固定され,隣り合う重量調整板4の平面と凸面が接するように装着され,円筒容器1の側面の片側の一面中央部に滑らかな凸面が形成され,この面と重量調整板4の平面が接するように複数の厚板円板2が装着される状態で構成されている。
【0064】
木質系バイオマスチップ5の供給口側の厚板円板2aの外周部の突起の先端の幅が2mm程度の幅で,バイオマス粉末6の出口側の厚板円板2cの外周部の突起の先端の幅が0.5mm程度の幅で,両者の中間部の厚板円板2bの外周部の突起の先端の幅は2mmから0.5mmまで順番に幅が狭くなるような構造で構成されている。
【0065】
バイオマス粉末6の出口側の厚板円板2cの外周部の突起の切り込みが最も浅く,周方向の突起の数が最も多い構造で構成されている。図示していないが木質系バイオマス供給装置よりバイオマスチップ5が円筒容器1の側面の開口部より供給され,円筒容器1の反対側の側面の開口部よりバイオマス粉末6が連続して取り出せるように構成されている。
【0066】
円筒容器1の円筒部の外周には冷却用のコイル8(別の方式として円筒軸方向で区画されたジャケット構造)が取り付けられ,円筒容器1内壁の温度が円筒容器軸方向位置で制御できるように温度調節水を流せるように構成されている。
【0067】
円筒容器両端面および円筒容器外面の水平方向位置にノズル9が取り付けられ乾燥窒素ガスの注入および円筒容器内窒素ガスの取り出しを行えるように構成されている。
【0068】
円筒容器1内を30分程度の時間をかけてバイオマスチップおよびその粉末が移動するように円筒容器1を加振方向7(重力方向)に振動する機構が取り付けられるように構成されている。
【0069】
このように構成された本実施の形態において,バイオマスチップ5の供給装置より数センチの大きさのバイオマスチップ5を円筒容器1のバイオマスチップ5の供給口(図示せず)より円筒容器1内に導き,円筒容器1を加振方向7(重力方向)に振幅10mm,振動数900rpm程度で加振させて粉砕処理を行う。
【0070】
円筒容器1の振動は,厚板円板2が円筒容器1内を転動しながら容器と相対的な運動を行うように行い,バイオマスチップ5の供給側の厚板円板2aの周辺に付いた突起3の先端の幅は2mm程度と厚く,突起数も少なく,突起高さも高いために数センチの大きさのバイオマスチップ5に高衝撃を付加してこれを細胞レベルの大きさ(長さが200ミクロ,太さが約40ミクロン)程度まで容易に粉砕する。
【0071】
この粉砕が行えるように厚板円板2aの装入枚数は調整する。
【0072】
細胞レベルの大きさから約30ミクロン程度の粒子径まで厚板円板2bの周辺に付いた突起3の先端の幅は1mm程度とし,厚板円板2aの突起数より多い突起数で,板厚も薄くした厚板円板2bを装入して粉砕を行う。
【0073】
粉末粒径が30ミクロン程度に達した後は厚板円板2cの周辺に付いた突起3の先端の幅は0.5mm程度とし,厚板円板2bの突起数より多い突起数で,板厚も薄くした厚板円板2cを装入して粉砕を行う。
【0074】
円筒容器1内の粉砕物の滞留時間としてチップの大きさから約30ミクロンの粒子径になるまでの時間が10分程度で,約30ミクロンの粒子径に到達した後の高衝撃力を加える時間が20分程度になるように円筒容器1へのバイオマスチップ5の供給速度および円筒容器1の長さを調節する。
【0075】
ここでは粉砕処理で粒径の分級を3段階として突起付き厚板円板粉砕媒体例を示したがこの分級に限定されるものではない。
【0076】
円筒容器内径が大きくなると装入可能な厚板円板の外径も大きくできるため突起先端より粉砕試料に付加される衝撃力を揃えた場合,小径の円筒容器の場合に比較して厚板円板の厚さを薄くすることができ,円筒容器長さを固定した条件では厚板円板の枚数が多くなり,粉砕試料と粉砕媒体の衝突頻度を大きくすることができ,短時間の粉砕処理で高糖化率となる粉末を生成できる。
【0077】
一般に入手される原料のバイオマスチップの含水率は15%程度であるが,初期含水率が5%程度の時に生成された粉末の糖化率が最大となること,50%通過粒径でみて30ミクロン程度に粒径が小さくなるまでの粉末の糖化率はあまり大きくないことより厚板円板2aで粉砕処理を開始する時に15%程度の含水率であった試料を厚板円板2bでの粉砕処理が終わるまでに粉砕試料の含水率を5%程度になるようにノズル9より常温の乾燥窒素ガス10を円筒容器1に注入する。
【0078】
円筒容器1の円筒面の水平方向位置に取り付けられたノズル9で厚板円板2a,2bが転動して向ってくる側から乾燥窒素ガスを注入し,離れてゆく側のノズル9から湿った窒素ガスを排気する。
【0079】
厚板円板2a,2bが転動する外側の円筒容器1のコイル8に温水を流して円筒内面温度を上げて粉砕試料を加熱する。
【0080】
ノズル9より排出する窒素ガス温度が40℃程度になるようにコイル8に流す温水量と温度を調整する。
【0081】
厚板円板2cが転動する外側の円筒容器1のコイル8には冷水を流して円筒内面温度を常温に保ち,厚板円板2cが転動して向ってくる側からのノズル9から湿り窒素ガス10を注入し,離れてゆく側のノズル9およびバイオマス粉末6が取り出される端面のノズル9から窒素ガスを排気して,厚板円板2cで試料を粉砕する時の含水率を保持する。
【0082】
本実施の形態によれば,周辺に突起を付け,また同心円状に開口した部分を比重の大きな材料で塞ぎ,その片面を平面とし,多の面の中央部に滑らかな凸部を設ける等を行った複数枚の厚板円板を組合せて1本のカッティグロッドと同等な機能を発揮する粉砕媒体構成し,しかも木質系バイオマスチップ供給側の厚板円板周辺の突起の先端の幅を厚く・突起数を少なく・突起高さを高くし,円板厚さを厚くし,粉末出口側にいくに従って突起の先端の幅を薄く・突起数を多く・突起高さを低くし,円板厚さを薄くした構成としたことで,振動式カッティングロッドミル方式の大容量化対応方式としたもので,小型のワンロッドの場合にはできない粒径の変化に対応して突起形状と数を変える機能,および粒径の変化に対応して含水率を制御できる機能も追加しているためより容易に木質系バイオマスチップを粉砕処理1時間以下で高糖化率になる粉末生成を行なえるようになる。
【0083】
本発明に係る木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の第2の実施の形態を説明する(図面省略)。
【0084】
本実施の形態は,図1に示す厚板円板2を装入した円筒容器1の外径を小さくした複数体を束にしたものを加振装置に取り付けた構成である。
【0085】
このように構成された本実施の形態においての作用は第1の実施の形態と同様である。
【0086】
本実施の形態によれば,粉砕媒体と円筒容器内壁との衝突部が第1の実施の形態より多くなるため大量の試料を粉砕できるようになる。
【0087】
本発明に係る木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の第3の実施の形態を図2に基づき説明する。
【0088】
図2において,本実施の形態は図1と同様であるが円筒容器1内に隔壁11が設けられ,装入される粉砕媒体が異なっている。
【0089】
円筒容器1に隔壁11を複数箇所設け,粉砕室13を複数室構成し,バイオマスチップ5が装入される側の粉砕室13aに最も大きな直径のボールを装入し,バイオマス粉末6が出てくる側の粉砕室13bに最も小さい直径のボール12が装入される構成である。隔壁11には粉砕された試料は通るが,ボールは通らない開口(図示せず)が設けられた構成である。
【0090】
このように構成された本実施の形態においての作用は第1の実施の形態と同様である。
【0091】
本実施の形態によれば,粉砕試料の粉砕の進行に伴い最適なボール径の振動媒体で高衝撃力が高頻度で加えられるようになっている。
【0092】
本発明に係る木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の第4の実施の形態を図3に基づき説明する。
【0093】
図3において,本実施の形態は図1と同様であるが円筒容器1内に内筒15と隔壁14が設けられ,装入される粉砕媒体が異なっている。
【0094】
円筒容器1に複数箇所の隔壁14と内筒15で粉砕室17a,17bを複数室構成し,バイオマスチップ5が装入される側の粉砕室17aに最も大きな直径のボール16を装入し,バイオマス粉末6が出てくる側にゆくに従って粉砕室17bに小さい直径のボール16が装入される構成である。
【0095】
隔壁14には粉砕された試料は通るが,ボールは通らない開口(図示せず)が設けられた構成である。
【0096】
このように構成された本実施の形態においての作用は第1の実施の形態と同様である。
【0097】
本実施の形態によれば,粉砕試料の粉砕の進行に伴い最適なボール径でボール数の振動媒体で高衝撃力が内筒表面と円筒容器内面で加えられるようになっている。
【0098】
本発明に係る木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の第5の実施の形態を図4に基づき説明する。
【0099】
図4において,本実施の形態は図1と同様であるが円筒容器1内に隔壁14が設けられ,装入される粉砕媒体が異なっている。
【0100】
円筒容器1に設けた複数箇所の隔壁18で粉砕室20a,20bを複数室構成し,バイオマスチップ5が装入される側の粉砕室20aに最も大きな直径で最も長いロッド19を装入し,バイオマス粉末6が出てくる側にゆくに従って粉砕室20bに小さい直径で短いロッド19が数多く装入される構成である。隔壁18には粉砕された試料は通るが,ロッドは通らない開口(図示せず)が設けられた構成である。
【0101】
このように構成された本実施の形態においての作用は第1の実施の形態と同様である。
【0102】
本実施の形態によれば,粉砕試料の粉砕の進行に伴い最適なロッド径・ロッド長さ・ロッド数の振動媒体で高衝撃力が加えられるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0103】
間伐材等の木質系バイオマスを用いてエタノール生産規模2万kL/年において,現在商品化されている無機材料処理用の2.6トン/hrの振動ミルの粉砕媒体を本発明の粉砕媒体に交換することにより木質系バイオマスに最適な粉砕が行えるようになり,原材料費を除いたバイオエタノール製造原価が20円/Lにすることが可能となる。
【0104】
自動車用の燃料としてガソリンにバイオエタノールを3%混合したE3燃料を完全普及させるためにはバイオエタノールの必要量は175万kL/年となり,現在ブラジルから収入することが検討されている。
【0105】
本発明を利用することで国産の間伐材等の木質系バイオマスを用いて製造されるバイオエタノールの製造原価はブラジルからの輸入品と十分競争できるようになり,現在林間に放置されている間伐材を資源として利用できるようになるのと同時に林産業の振興に貢献でき,国土の保全にも貢献できるようになる。
【0106】
木質系バイオマスを粉砕して酵素による糖化と酵母によるエタノール発酵を行なって得られるバイオエタノールの製造原価がガソリンの価格と競合できるようになることは,木質系バイオマス粉末から得られる糖を乳酸発酵させて生分解プラスチック製造する時の製造原価を安くすることが可能となり,木質系バイオマスから生分解プラスチックを製造する循環型産業でも利用されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施例。
【図2】本発明の第3実施例。
【図3】本発明の第4実施例。
【図4】本発明の第5実施例。
【符号の説明】
【0108】
1…円筒容器 2…厚板円板
2a…厚板円板 2b…厚板円板
2c…厚板円板
3…突起 4…重量調整板
5…バイオマスチップ 6…バイオマス粉末
7…加振方向 8…コイル
9…ノズル 10…窒素ガス
11…隔壁 12…ボール
13…粉砕室 13a…粉砕室
13b…粉砕室 14…隔壁
15…内筒 16…ボール
17…粉砕室 17a…粉砕室
17b…粉砕室 18…隔壁
19…ロッド 20…粉砕室
20a…粉砕室 20b…粉砕室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒容器を水平にして上下振動をさせたとき,その内側で外周面に複数の板厚方向で直線状に突起が付いた厚板円板が上下振動および円筒内を転動可能となる間隙を設けて複数枚装入した構造と,円筒容器外面に冷却機能を構成した構造と,円筒容器と板厚方向で直線状に突起が付いた厚板円板の間隙に木質系バイオマスチップを供給する機構を設けた構造とを有することを特徴とする木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項2】
請求項1において円筒容器の木質系バイオマスチップを供給する機構側から製品粉末が排出する機構側に行くに従い円筒容器内に設置の厚板円板の外周面に付いた突起先端の幅が狭くなり,突起数が多くなり,円板板厚が薄くなったことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項3】
請求項1において円筒容器内に設置の厚板円板の外周面に付いた突起の先端部を焼入れしたことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項4】
請求項1において円筒容器内に設置の厚板円板に同心状に穴を開け,その穴を円板の材質より比重の大きな材質の物で塞いだことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項5】
請求項1において円筒容器内に設置の厚板円板の少なくとも1面の中心部分が最高の滑らかな凸面となったことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項6】
請求項1において円筒容器外面に構成する冷却機構が円筒容器軸方向で冷却温度が調節できるようになったことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項7】
請求項6における円筒容器外面に構成する冷却機構で円筒容器軸方向に冷却温度を調節して粒径に応じて最適な粉砕雰囲気温度にすることを特徴とする請求項6に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の運用方法。
【請求項8】
請求項1において円筒容器両端面および外面に乾燥度を調節した窒素ガスを供給するノズルおよび排出するノズルを設け,円筒容器内軸方向で雰囲気ガスの乾燥度を調節できるようになったことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項9】
請求項8における円筒容器両端面および外面に設けられたノズルより円筒容器内に乾燥度を調整した窒素ガスを注入あるいは排出し,円筒容器内の雰囲気ガスの乾燥度を粉砕情況に応じて最適にすることを特徴とする請求項8に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機の運用方法。
【請求項10】
請求項1において複数体の円筒容器を束ねた構造となったことを特徴とする請求項1に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項11】
円筒容器内の軸方向位置に複数個の隔壁を設け,隔壁で仕切られた空間にそれぞれ直径の異なるボールを装入し,この円筒容器を水平にして上下振動をさせたとき,その内側でボールが上下振動および円筒内を転動可能となる構造と,円筒容器外面に冷却機能を構成した構造と,円筒容器端面に木質系バイオマスチップを供給する機構および円筒容器内隔壁に粉末通過用の開口を設けた構造とを有することを特徴とする木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項12】
請求項11において円筒容器に内筒を設けた構造となったことを特徴とする請求項11に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。
【請求項13】
請求項11において円筒容器の木質系バイオマスチップを供給する機構側から製品粉末が排出する機構側に行くに従い隔壁で仕切られた空間に装入するロッド径を小さくし,装入ロッド数を多くした構成となったことを特徴とする請求項11に記載の木質系バイオマス粉砕用高衝撃粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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