説明

木質系複合材およびその製造方法

【課題】本発明の課題は十分な機械的強度を有する木質系複合材を提供することである。
【解決手段】酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C)で表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)から形成された木質系複合材(M)。該(M)は、表面処理剤(C)を含有する水に、木質系充填材(A0)を浸漬処理した後、乾燥することにより得られる表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練した後、成形して木質系複合材(M)を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質系複合材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉砕された木質系充填材と熱可塑性樹脂との混合物を押出成形して得られる木質系成形体が知られている。この木質系成形体は、相溶化剤として変性ポリオレフィン、特にマレイン酸変成ポリオレフィンが用いられており、ペレット状のマレイン酸変成ポリオレフィン、ポリオレフィン、木質系充填材とを加熱溶融混合する製法が一般的である。
これに対し、特に近年、建築リサイクル法、容器包装リサイクル法および家電リサイクル法など廃棄物の再資源化・再利用を定めた法律が制定されたことを受け、家屋解体時に排出される木材や、製造工程で排出されたり、廃棄家電から回収されたプラスチック屑の様な低品位の原料を用いたとしても、高物性の複合材料が得られる方法が検討されており、従来からのマレイン酸変成ポリオレフィン、ポリオレフィン、木質系充填材との組み合わせの中では、木粉とマレイン酸変性ポリオレフィンを予めゲル化混合する(特許文献1参照)、木粉をポリオレフィンとマレイン酸変性ポリオレフィンの存在下、高温で機械的粉砕処理する(特許文献2参照)等の方法により、木質系充填材の分散性、木質系充填材とオレフィン系合成樹脂との親和性を向上させる方法が提案されている。また、木質系成形体の物性低下の原因が樹脂で覆われない木質系充填材があるためと考え、必要によりロジン系疎水化変性剤により変成処理を施した湿式粉砕された木粉を乾燥後、マレイン酸変成ポリオレフィン、ポリオレフィンと加熱溶融混合する(特許文献3参照)方法等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−271909号公報
【特許文献2】特開2002−225011号公報
【特許文献3】特開2008−87470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木質系複合材は、木質系充填材の配合比率が高くなるにつれ、表面の風合いが樹脂から木質に近づくことから意匠性が向上するが、木質系充填材の分散が悪くなることから木質系複合材としての物性が低下しやすい。これを解決する手段として先の様な提案がなされているが、これらの方法では、製造に特殊な装置や新たな添加剤を必要とすることから製造コストがアップする上、改善効果も十分とは言い難く、特に建築や自動車用の構造材料として用いるためには、更なる機械的強度の向上が望まれている。従って、本発明の課題は、特殊な製造装置を用いることなく製造できる上、十分な機械的強度を有する木質系複合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)から形成された木質系複合材を製造するための木質系充填材(A0)の表面処理剤であって、酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C);木質系充填材(A0)が、表面処理剤(C)で表面処理されてなる木質系充填材(A);木質系複合材(M)を成形してなる木質系成形体;酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C)を含有する水に、木質系充填材(A0)を浸漬処理した後、乾燥することにより得られる表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練した後、成形して木質系複合材(M)を得る木質系複合材の製造方法;酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C)を含有する水に、木質系材料(E)を浸漬処理すると同時に湿式粉砕した後、乾燥することにより得られる表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練した後、成形して木質系複合材(M)を得る木質系複合材の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の木質系複合材(M)から成形される木質系成形体は、特殊な製造装置を用いることなく製造できる上、十分な機械的強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
木質系複合材を製造するために使用される、表面処理されてなる木質系充填材(A)は、
木質系充填材(A0)を本発明の表面処理剤(C)で表面処理されて得られる。
本発明の表面処理剤(C)において、水性乳化物の体積平均粒子径は、通常、1〜1,000nmである。好ましくは、5〜500nmであり、さらに好ましくは10〜100nmである。体積平均粒子径が1〜1,000nmであると、木質系充填材(A0)の処理効果が高く、密着性が良好となる。
体積平均粒子径は、レーザー回折散乱測定装置(例えば堀場製作所製、「LA−750」)により測定することができる。
【0008】
本発明の表面処理剤(C)は酸変性ポリオレフィン樹脂(K)を乳化することにより製造される。
【0009】
酸変性ポリオレフィン樹脂(K)としては、ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリブテン等のポリオレフィン樹脂(K0)に不飽和カルボン酸又は酸無水物(C)をグラフト重合させた樹脂が挙げられる。
【0010】
ポリオレフィン樹脂(K0)は、プロピレン、エチレン、C4〜12のα−オレフィン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系単量体を重合、または共重合して得られるポリオレフィン樹脂(K01)と、オレフィン系単量体を重合して得られたポリマーを熱減成して得られるポリオレフィン樹脂(K02)の2種がある。樹脂の種類としてはポリプロピレンが好ましい。
後者の熱減成法とは、ポリオレフィンの分子鎖を切断してポリオレフィンを低分子量化する方法である。熱減成法によって低分子量化されたポリオレフィンの分子末端には二重結合が導入されているため、不飽和カルボン酸または酸無水物のグラフト量を多くすることができる。このため熱減成により得られるポリオレフィン樹脂が好ましい。
熱減成法には、重合して得られたポリオレフィンを窒素通気下で、(1)有機過酸化物不存在下で、通常300〜450℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成する方法、および(2)有機過酸化物存在下で、通常180〜300℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成する方法が含まれる。これらのうち好ましいのは(1)の方法である。
熱減成法は、例えば特公昭43−9368号公報、特公昭44−29742号公報、特公平6−70094号公報等に記載されている。
【0011】
ポリオレフィン樹脂(K01)の数平均分子量(Mn)は、通常、800〜400,000好ましくは1,000〜30,0000である。(K01)の数平均分子量が1,000〜30,0000であると、(K01)自身の強度が十分であり、かつ酸変性度を高くすることができるため、密着性が良好となる。
また、ポリオレフィン樹脂(K02)の数平均分子量(Mn)は、通常、800〜100,000である。好ましくは、1,000〜30,000であり、さらに好ましくは1,200〜7,000である。(K02)の数平均分子量が800〜100,000であると、(K02)自身の強度が十分であり、かつ酸変性度を高くすることができるため、密着性が良好となる。
【0012】
Mnは高温ゲルパーミィエーションクロマトグラフィー(以下高温GPCと記載。)で測定することができる。
【0013】
ポリオレフィン樹脂(K01)の重合方法としては、公知の方法が用いられる。具体的には、単量体を不活性ガスで置換した耐圧反応容器中に吹き込み、触媒存在下、30〜120℃、0.1〜5MPaで1〜10時間反応させる方法が挙げられる。触媒としては、チーグラ・ナッタ系触媒(三塩化チタン/有機アルミニウムなど)やメタロセン触媒を用いることができるが、メタロセン触媒を用いることが好ましい。メタロセン触媒としては、特開2003−147157号公報や特開平7−118316号公報などに記載の公知のものが使用できる。具体的には、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドやエチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドなどが例示できる。上記のようなジルコニウム化合物に於いてジルコニウム金属をチタン金属、ハフニウム金属に換えた遷移金属化合物を例示することも出来る。また、これらの触媒は、メチルアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物と併用することができる。
【0014】
不飽和カルボン酸または酸無水物について、不飽和カルボン酸として、ジカルボン酸[例えば脂肪族(C4〜24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびメサコン酸)、および脂環式(C8〜24、例えばシクロヘキセンジカルボン酸およびシクロヘプテンジカルボン酸)];3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸[例えば脂肪族ポリカルボン酸(C5〜24、例えばアコニット酸)]が挙げられる。これらの中で好ましいのはマレイン酸である。
【0015】
また、不飽和ポリカルボン酸の無水物としては、上記不飽和ポリカルボン酸の無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水アコニット酸が挙げられる。不飽和カルボン酸または酸無水物は1種単独でも、2種併用してもいずれでもよい。これらの中で好ましいのは無水マレイン酸である。
【0016】
ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸または酸無水物で変性する際のポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸または酸無水物との反応モル比は、好ましくは50/50〜1/99、さらに好ましくは40/60〜2/98、特に好ましくは30/70〜3/97である。このようにして得られた酸変性ポリオレフィン樹脂(K)中の未反応の不飽和カルボン酸または酸無水物は接着性の観点から好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは0〜1重量%、特に好ましくは0〜0.1重量%である。
【0017】
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂(K)には、必要により、α−オレフィン、スチレンおよびスチレン誘導体などを共重合成分に加えることができる。
α−オレフィンとしては、C6〜36の直鎖および分岐鎖を有するα−オレフィンが挙げられる。これらの中で好ましいのは、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、プロピレン三量体、プロピレン四量体およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。スチレンもしくはスチレン誘導体としては、スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレンが挙げられる。これらの中で好ましいのは、スチレンである。これら共重合成分の含有量は、好ましくは0〜50モル%である。
【0018】
ポリオレフィン樹脂(K0)と不飽和カルボン酸または酸無水物とは、ラジカル開始剤の存在下または非存在下のいずれにおいても反応させることができるが、反応性の観点からラジカル開始剤の存在下で反応させるのが好ましい。
ラジカル開始剤としては、例えばアゾ化合物(例えばアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル)および過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)[例えばベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドおよびジクミルパーオキシド]および多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[例えば2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネートおよびt−ブチルパーオキシアリルカーボネート]〕が挙げられる。
これらのうち、反応性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのは単官能過酸化物、とくに好ましいのはジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドおよびジクミルパーオキシドである。
【0019】
ラジカル重合開始剤の使用量は、不飽和カルボン酸または酸無水物の重量に基づいて、0.001〜100重量%、さらに好ましくは0.01〜50重量%、特に好ましくは0.1〜30重量%である。
【0020】
ポリオレフィン樹脂(K0)に不飽和カルボン酸又は酸無水物をグラフトさせる具体的な製造方法には、[1]ポリオレフィン樹脂および不飽和カルボン酸又は酸無水物を加熱溶融、あるいは適当な有機溶媒[C3〜18、例えば炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えばジ−、トリ−およびテトラクロロエタンおよびジクロロブタン)、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンおよびジ−t−ブチルケトン)およびエーテル(例えばエチル−n−プロピルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテルおよびジオキサン)]に懸濁あるいは溶解させ、必要により連鎖移動剤または重合禁止剤を加え、これに必要によりラジカル開始剤[もしくはラジカル開始剤を適当な有機溶媒(上記に同じ)に溶解させた溶液]を加えて加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法および溶液法)、および[2]ポリオレフィン樹脂、不飽和カルボン酸又は酸無水物および必要により連鎖移動剤、重合禁止剤、ラジカル開始剤を予め混合し、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダなどを用いて溶融混練する方法(溶融混練法)が含まれる。これらのうち好ましいのは[1]の方法、さらに好ましいのは溶融法および溶液法である。
【0021】
溶融法での反応温度は、ポリオレフィン樹脂が溶融する温度であればよく、好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0022】
溶液法での反応温度は、ポリオレフィン樹脂が溶媒に溶解する温度であればよく、好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、特に好ましくは120〜180℃である。
【0023】
酸変性ポリオレフィン樹脂(K)の内、好ましいポリオレフィン樹脂(K0)と不飽和カルボン酸又は酸無水物の組み合わせは、ポリプロピレン(PP)とマレイン酸または無水マレイン酸との変性樹脂が挙げられる。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂(K)の酸価は10〜300KOHmg/gであることが好ましい。密着性の観点から、より好ましくは20〜250KOHmg/gであり、さらに好ましくは30〜200KOHmg/gである。
【0025】
酸変性ポリオレフィン樹脂(K)の数平均分子量(Mn)は1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,200〜30,000、さらに好ましくは1,500〜8,000である。(K)の数平均分子量が1,000以上であると(K)自身の強度が十分であるため、また、100,000以下であると成形する際の流動性が良好ため密着性が良好となる
【0026】
酸変性ポリオレフィン樹脂(K)は、カルボン酸の一部または全部を中和し、酸変成ポリオレフィン樹脂の塩とすることが出来る。中和塩を構成する陽イオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、トリエチルアミン、オレイルアミンなどのアルキルアミン、アンモニア等が挙げられる。これらの内、好ましいものは、カリウム、ナトリウムである。
酸変性ポリオレフィン樹脂(K)の中和率は0〜80%であることが好ましく、より好ましくは0〜65%、さらに好ましくは0〜50%である。(K)の中和率が80%以下であると木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)の密着性が良好である。また中和率が20〜80%であると表面処理剤(C)の保存安定性が良好である。
【0027】
酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させて水性乳化物である表面処理剤(C)を製造する際に、界面活性剤(J)を用いて乳化することが好ましい。
(J)としては、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
(1)非イオン性界面活性剤
アルキレンオキシド(以下AOと略記)付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)および高級脂肪酸(C8〜24)等]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(AO付加物およびポリアルキレングリコールの高級脂肪酸モノ−およびジ−エステル);多価アルコール(C3〜60)の高級脂肪酸(C8〜24)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(ツイーン型ノニオニックス等);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;およびポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコールおよびポリアミン(C2〜10)のポリオキシプロピレン誘導体(プルロニック型およびテトロニック型ノニオニックス)];多価アルコール(上記)型ノニオニックス(例えば多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールアルキル(C3〜60)エーテル、および脂肪酸アルカノールアミド);並びに、アミンオキシド型ノニオニックス[例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3)アミンオキシド]。
【0028】
(2)カチオン性界面活性剤
第4級アンモニウム塩型カチオニックス[テトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100)アルキル(C8〜18)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8〜18)ジメチルアンモニウム塩等];トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80)(ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等);アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩(セチルピリジニウム塩等);(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100)(ポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩等);およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)および有機酸(下記)の塩が含まれる];並びにアミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン〔例えば高級脂肪族アミン(C12〜60)、脂肪族アミン(メチルアミン、ジエチルアミン等)のポリオキシアルキレン誘導体[エチレンオキシド(以下EOと略記)付加物等]、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(ステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン等)〕の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩および有機酸(C2〜22)塩。
【0029】
(3)アニオン性界面活性剤
高級脂肪酸(上記)塩(ラウリル酸ナトリウム等)、エーテルカルボン酸[EO(1〜10モル)付加物のカルボキシメチル化物等]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート等)、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステルおよび硫酸化オレフィン;スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α−オレフィン(C12〜18)スルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン(イゲポンT型等)等];並びにリン酸エステル塩等(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート等)。
【0030】
(4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス[アミノ酸型アンフォテリックス(ラウリルアミノプロピオン酸(塩)等)、およびベタイン型アンフォテリックス(アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等)等];硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス[ラウリルアミンの硫酸エステル(塩)、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル(塩)等];スルホン酸(塩)型アンフォテリックス[ペンタデシルスルホタウリン、イミダゾリンスルホン酸(塩)等];並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス等[グリセリンラウリル酸エステルのリン酸エステル(塩)等]。
【0031】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0032】
界面活性剤(J)の好ましいものは、炭素数10〜30のアルキルもしくはアルケニル基を疎水基とする界面活性剤であり、さらに好ましくはオクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクテニルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール等の高級アルコールのEO付加物、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸とポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、ラウリルアミン等の高級アルキルアミンEO付加物、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸とモノエタノールアミン、イソプロパノールアミノ等のアルキルアミンとからなる脂肪酸アミドのEO付加物、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸塩、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクテニルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール等の高級アルコールのアルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、特に好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸のナトリウム、カリウムおよびエタノールアミン塩、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールのアルキル硫酸エステルナトリウム、カリウムおよびエタノールアミン塩およびポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルナトリウム、カリウムおよびエタノールアミン塩が挙げられる
【0033】
本発明の表面処理剤(C)は、必要により界面活性剤(J)を用いて酸変性ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を水中に均一に混合乳化した水性乳化物である。乳化物の濃度には特に限定がないが、(K)と(J)との合計重量が、水性乳化物の重量に対して5〜60重量%になるよう水性乳化物を製造し、更に水を加えて任意に濃度調整して使用することが出来る。また、(J)の添加重量は、(K)に対し、0〜50重量%の範囲である。
【0034】
本発明の表面処理剤(C)の製法を例示すると、(K)と必要により(J)および必要により酸変性ポリオレフィン樹脂を中和するための塩基性物質とを錨型攪拌羽根を有する乳化槽に仕込み、(K)の軟化点以上の温度で混合、乳化することにより得ることができる。
【0035】
乳化時に添加する塩基性物質としては、金属カリウム、金属ナトリウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アルカノールアミン、アルキルアミン、アンモニアなどがあげられる。これらの内好ましいものは、水酸化カルシウム、水酸化カリウムである。
【0036】
本発明の表面処理剤(C)には、必要により、消泡剤、抗菌剤および防腐剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤を用いる場合の添加量は、通常0.5重量%以下である。
【0037】
木質系充填材(A0)には、木片、木粉、木材の破砕物、木材の粉砕物、これらの組み合わせ、等の他、さらに竹、麻、バカス、モミガラ、稲わら等を混合した素材を用いることができ、家具工場や建築現場等で発生する木材の切り屑、廃材の粉砕物、家具や建築用材等の廃棄物の粉砕物、等も用いることができる。粉砕の方法も、特に限定されるものではなく、ロータリークラッシャーやハンマークラッシャーなどの一般的な粉砕機を用いて粉砕されたものでよい。また、粉砕は湿式、乾式を問わない。
(A0)の体積平均粒径は、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μm、更に好ましくは、20〜150μmである。上記平均粒径が500μm以下であると、得られる樹脂成形体の耐衝撃性が良好であり、10μm以上であると成形性が良好である。
体積平均粒子径は、レーザー回折散乱測定装置(堀場製作所製、「LA−750」)により測定した。
【0038】
本発明における表面処理されてなる木質系充填材(A)は、木質系充填材(A0)を必要により水で希釈した表面処理剤(C)に浸漬処理した後、乾燥することにより得ることができる。表面処理剤(C)の添加量は、表面処理剤中の酸変性ポリオレフィン樹脂の割合が、木質系充填材(A0)に対し通常0.01〜20%、好ましくは0.1〜15%、更に好ましくは1〜10%の範囲となる量である。また木質系充填材(A0)と表面処理剤(C)および希釈水合計量との配合比は、木質系材料を分散することができる割合とすればよく、木質系充填材(A0)100重量部に対して表面処理剤(C)および希釈水合計量100〜2000重量部の範囲が好ましい。木質系充填材(A0)に0.01〜20%の範囲に濃度調整された表面処理剤(C)を加え、表面処理剤が木質系充填材の表面に万遍なく行き渡るまで混合した後、乾燥して水を除去することにより行われる。
【0039】
表面処理されてなる木質系充填材(A)は、木質系材料(E)を表面処理剤(C)存在下で湿式粉砕を行い、乾燥処理することによっても得られる。表面処理剤(C)の添加量は、表面処理剤中の酸変性ポリオレフィン樹脂の割合が、木質系材料(E)に対し通常0.01〜20%、好ましくは0.1〜15%、更に好ましくは1〜10%の範囲となる量である。
木質系材料(E)の湿式粉砕は、水により膨潤された(E)を叩くことにより得られる。膨潤には、水以外に親水性有機溶媒を混合して用いることが出来る。親水性有機溶媒としては、エタノール,1−ブタノール,2−プロパノール、等のアルコール系溶剤、2−ブタノン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン、等のケトン系溶剤等、およびこれらの混合物を用いることができる。木質系材料(E)と水および親水性有機溶媒合計量との配合比は、(E)を分散することができる割合とすればよく、(E)100重量部に対して100〜2000重量部の範囲が好ましい。
【0040】
湿式粉砕は、ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、アトリションミル、高速ミキサー、ニーダー等の混練機により行うことができる。この中で特に好ましい混練機はボールミルである。粉砕温度は、高いほど粉砕効率が良くなるが、通常は0〜100℃が好ましい。
木質系充填材(A0)の体積平均粒径は、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μm、更に好ましくは、20〜150μmである。上記平均粒径が500μm以下であると、得られる樹脂成形体の耐衝撃性が良好であり、10μm未満であると熱可塑性樹脂(B)と混練したときの粘度が高くなるため成形が難しくなる。
体積平均粒子径は、レーザー回折散乱測定装置(堀場製作所製、「LA−750」)により測定することができる。
【0041】
本発明の木質系複合材(M)は、上記の方法で得られた表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練した後、成形することにより製造することができる。表面処理されてなる木質系充填材(A)を熱可塑性樹脂(B)と混練し、木質系複合材として加工するためには水分を除去することが好ましい。表面処理されてなる木質系充填材(A)もしくは木質系充填材(A0)の水分の除去は、水分を含む木質系充填材を圧搾して水分を絞り出すことや、水分を揮発させることにより除去することができる。水分を揮発させる場合、湿式粉砕された素材を常圧もしくは減圧条件で加熱するか、フリーズドライにより除去することが出来る。
【0042】
熱可塑性樹脂(B)としてはポリオレフィン[ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリブテン、等],パラフィン,ポリスチレン,ポリアクリロニトリル−スチレン(AS)、ポリアクリロニトリル−ブタジエンースチレン(ABS)、ポリメチルメタアクリレート,ポリ塩化ビニル,ポリアミド(ナイロン),ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンテレフタレート,これらの混合物、等を用いることができる。この中でPPやポリブテン等のポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂は、容易に木質系成形体を成形することができるから好適な樹脂である。
熱可塑性樹脂(B)には、必要に応じて、滑剤、繊維状素材、核剤、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、等の添加剤が含まれていてもよい。
【0043】
木質系複合材(M)に含まれる表面処理されてなる木質系充填材(A)の配合割合は、通常30〜99.9重量%、好ましくは40〜99重量%、更に好ましくは50〜95重量%である。
木質系複合材(M)は、表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)とを混練した後、熱可塑性樹脂(B)の軟化温度以上で押出、射出など加圧を伴う成型法を用いて所定の形状に加工して得ることができる。
木質系複合材(M)を成形して木質系成形体を得るためには、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、注型成形機等を用いることができる。さらに、特開2004−17502号公報に記載されるペレット製造装置等で一旦ペレット化して加工し、形成されたペレットを押出成形等により後成形して木質系成形体を形成してもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。以下において特記しない限り、部は重量部、%、wt%は重量%を表す。
【0045】
<実施例1>
表面処理剤(C−1)
反応容器に、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(P1)[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を窒素雰囲気下に仕込み、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら360℃で80分間熱減成を行い、ポリオレフィン熱減成物を得た。このポリオレフィン熱減成物100部、無水マレイン酸17.3部、およびキシレン100部を反応容器に仕込み、窒素置換後、窒素通気下に130℃まで加熱昇温して均一に溶解させた。ここにジクミルパーオキサイド[商品名「パークミルD」、日油(株)製]0.5部をキシレン10部に溶解させた溶液を10分間で滴下した後、キシレン還流下3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去して酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K−1)を得た。(K−1)は、酸価は50、Mnは2,500であった。撹拌機及び温度調節機能を備えた耐圧反応容器に(K−1)300部、水酸化ナトリウム5.3部(中和率50%に相当)、界面活性剤(J−1)として高級アルコール(オレイルアルコールとセチルアルコールの混合品)のエチレンオキサイド11モル付加物(三洋化成工業株式会社製エマルミン110)100部、水590部を仕込み、150℃で1時間攪拌することにより表面処理剤(C−1)1000部を得た。乳化物の体積平均粒子径は40nmであった。
【0046】
<実施例2>
表面処理剤(C−2)
反応容器に、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(P1)[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を窒素雰囲気下に仕込み、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら360℃で80分間熱減成を行い、ポリオレフィン熱減成物を得た。このポリオレフィン熱減成物100部、無水マレイン酸30部、スチレン17.3部、およびキシレン100部を反応容器に仕込み、窒素置換後、窒素通気下に130℃まで加熱昇温して均一に溶解させた。ここにジクミルパーオキサイド[商品名「パークミルD」、日油(株)製]0.5部をキシレン10部に溶解させた溶液を10分間で滴下した後、キシレン還流下3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去して酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K−2)を得た。(K−2)は、酸価は110、Mnは7,000であった。
撹拌機及び温度調節機能を備えた耐圧反応容器に(K−2)300部、水酸化ナトリウム5.9部(中和率25%に相当)、界面活性剤(J−2)としてオレイン酸ナトリウム30部、水664部を仕込み、150℃で1時間攪拌することにより表面処理剤(C−2)1000部を得た。
乳化物の体積平均粒子径は80nmであった。
【0047】
<実施例3>
表面処理剤(C−3)
撹拌機及び温度調節機能を備えた耐圧反応容器に(K−3)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学株式会社製アドマーQE800、Mn200,000)300部、界面活性剤(J−2)としてオレイン酸ナトリウム100部、水600部を仕込み、170℃で1時間攪拌することにより表面処理剤(C−3)1000部を得た。
乳化物の体積平均粒子径は200nmであった。
【0048】
<実施例4>
木質系複合材(M−1)
2軸ニーダーに体積平均粒径30μmの木質系充填材(A0−1)100部と予め表面処理剤(C−1)7.9重量部を加えておいた水150重量部とを加え、30分間混合することにより、木粉の表面処理を行い、ついで、送風乾燥により、絶乾処理を行った。
木質系充填材(A0−1)は、予めチップ状に調整した木材をインペラーミル(IMP−250;株式会社セイシン企業製)によって粉砕し、篩い分けにより所定の体積平均粒径に調整したものである。以下の木質系充填材(A0)も同様である。
この様に表面処理した木質系充填材(A−1)である絶乾木粉8000重量部と熱可塑性樹脂(B−1)[ポリプロピレン(MFR:30g/10min、サンアロマー株式会社製PM930V)]1800重量部とを、出口部にホットカットペレタイザーを取り付けたコニカル二軸押出成形機で、230℃で混合しながら押し出してぺレット状の木質系複合材(M−1)を調製した。
【0049】
<実施例5>
木質系複合材(M−2)
体積平均粒径120μmの木質系充填材(A0−2)を使用する以外は実施例4と同様にして木質系充填材(A−2)を得た。該(A−2)である絶乾木粉8000重量部と熱可塑性樹脂(B−1)ポリプロピレン1800重量部とを230℃で混合しながら不定形で押し出してコンパウンドの形にした木質系複合材木質系複合材(M−2)を調製した。
【0050】
<実施例6>
木質系複合材(M−3)
湿式粉砕は、直径20mmのアルミナボール25個を加えた500mlのポットにより行った。木質系材料(E−1)(1〜2mmのチップ状に粗粉砕された木材)100重量部に水1500重量部と表面処理剤(C−2)7.9重量部をポットに投入し、回転数250rpmで4時間ボールミルで回転させることにより、木粉の湿式粉砕を行い、ついで、送風乾燥により、絶乾処理(105℃、3時間)を行ない、表面処理されてなる木質系充填材(A−3)を得た。(A−3)の体積平均粒子径は10μmであった。
表面処理されてなる木質系充填材(A−3)8000重量部と熱可塑性樹脂(B−1)ポリプロピレン1800重量部とを230℃で混合しながら不定形で押し出してコンパウンドの形にした木質系複合材(M−3)を調製した。
【0051】
<実施例7>
木質系複合材(M−4)
表面処理剤(C−1)の代わりに表面処理剤(C−3)を使用する以外は実施例4と同様にして木質系充填材(A−3)を得た。該(A−4)である絶乾木粉8000重量部と熱可塑性樹脂(B−1)ポリプロピレン1800重量部とを230℃で混合しながら不定形で押し出してコンパウンドの形にした木質系複合材木質系複合材(M−4)を調製した。
【0052】
<比較例1>
熱可塑性樹脂には、実施例と同じものを、木質系充填材には木質系充填材(A0−1)を用いた。コンパウンド生成用の混練押出機も上記実施例と同じものを用い、スクリューの回転速度も実施例と同じにした。(A0−1)8000重量部と熱可塑性樹脂(B−1)ポリプロピレン1800重量部とを230℃で混合しながら不定形で押し出してコンパウンド、比較木質系複合材(M−1’)を調製した。
【0053】
<比較例2>
熱可塑性樹脂には、実施例と同じものを、木質系充填材には木質系充填材(A0−1)を用いた。コンパウンド生成用の混練押出機も上記実施例と同じものを用い、スクリューの回転速度も実施例と同じにした。(A0−1)8000重量部と酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K−1)190重量部と熱可塑性樹脂(B−1)ポリプロピレン1800重量部とを230℃で混合しながら不定形で押し出してコンパウンド、比較木質系複合材(M−2’)を調製した。
【0054】
<比較例3>
表面処理剤(C−1)の代わりにアルキルケテンダイマー(荒川化学工業株式会社製サイズパインK−287、エマルション)を使用する以外は実施例4と同様にして木質系充填材(A−1’)を得た。該(A−1’)である絶乾木粉8000重量部と熱可塑性樹脂(B−1)ポリプロピレン1800重量部とを230℃で混合しながら不定形で押し出してコンパウンドの形にした木質系複合材木質系複合材(M−3‘)を調製した。
【0055】
<酸価 測定方法>
試料1〜2gを130℃に加熱した熱キシレン20mlに溶解後、フェノールフタレインを加え、0.1mol/L水酸化カリウム・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行って、酸価を求めた。
【0056】
<数平均分子量(Mn) 測定方法>
装 置 :高温GPC(装置名Alliance 型番GPCV2000、メーカーWaters製)
溶 媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム温度 :135℃
【0057】
<体積平均粒子径 測定方法>
水で希釈することにより所定の透過率になるよう濃度調整されたサンプルにて体積平均粒子径を測定した。
装置 :レーザー回折散乱測定装置(LA−750、堀場製作所製)
【0058】
[評価方法]
<曲げ強度>
実施例4〜7及び比較例1〜3で得られたコンパウンドを射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度240℃、金型温度60℃の成型条件で20mm×100mm×9mmに成形し、この成型物について、JIS K7171-1994(プラスチック−曲げ特性の試験方法)に準拠した曲げ強度(曲げ強さ)を測定した。
【0059】
<保存安定性>
試料100gをスクリュー管に入れて20℃、14日間および1ヶ月間保存してから、外観を目視で観察する。
【0060】
試験結果を表1および表2に示す。
【0061】
【表1】

EO:エチレンオキサイド
【0062】

【表2】

*:表面処理されてなる木質系充填材(A−3)の体積平均粒子径
【0063】
表1および表2に示すように、本発明の表面処理剤(C)で表面処理されてなる木質系充填材(A)を用いた実施例4〜7の木質系成形体は、その曲げ強度が、表面処理剤(C)を加えない比較例1、ポリオレフィン樹脂用改質剤を樹脂と木質系充填材(A)に練り込む比較例2、疎水化変性剤で表面処理を行った木粉を用いた比較例3よりも大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の合木質系成形体は、高剛性であることから、各種エクステリア製品、自動車や住宅用内装材等の建材、各種構造材等の用途、例えばデッキ材、手すり、枕木等として適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)から形成された木質系複合材を製造するための木質系充填材(A0)の表面処理剤であって、酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C)。
【請求項2】
水性乳化物の体積平均粒子径が1〜1,000nmである請求項1に記載の表面処理剤(C)。
【請求項3】
酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)の数平均分子量(Mn)が1,000〜100,000であり、かつ酸変成ポリオレフィン樹脂の酸価が10〜300KOHmg/gである請求項1または2に記載の表面処理剤(C)。
【請求項4】
酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を炭素数10〜30のアルキルもしくはアルケニル基を疎水基とする界面活性剤(J)により乳化させてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理剤(C)。
【請求項5】
熱可塑性樹脂(B)がポリオレフィンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理剤(C)。
【請求項6】
木質系充填材(A0)が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理剤(C)で表面処理されてなる木質系充填材(A)。
【請求項7】
木質系充填材(A0)の体積平均粒子径が10〜500μmである請求項6に記載の表面処理されてなる木質系充填材(A)。
【請求項8】
請求項6または7に記載の表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)から形成された木質系複合材(M)。
【請求項9】
請求項8に記載の木質系複合材(M)を成形してなる木質系成形体。
【請求項10】
酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C)を含有する水に、木質系充填材(A0)を浸漬処理した後、乾燥することにより得られる表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練した後、成形して木質系複合材(M)を得る木質系複合材の製造方法。
【請求項11】
酸変成ポリオレフィン樹脂またはその塩(K)を乳化させてなる水性乳化物である表面処理剤(C)を含有する水に、木質系材料(E)を浸漬処理すると同時に湿式粉砕した後、乾燥することにより得られる表面処理されてなる木質系充填材(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練した後、成形して木質系複合材(M)を得る木質系複合材の製造方法。

【公開番号】特開2013−35266(P2013−35266A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216822(P2011−216822)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】